JP2014043516A - 変性共役ジエン系重合体組成物及びそれを用いたタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、例えば、車両用タイヤ等の成形品にした場合に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、さらに破壊強度も良好な変性共役ジエン系重合体組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の変性共役ジエン系重合体組成物は、(A)多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体に、該共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する変性剤を反応させて得られる変性共役ジエン系重合体:100質量部、及び(B)平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー:1〜40質量部を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、変性共役ジエン系重合体組成物及びそれを用いたタイヤに関する。
近年、二酸化炭素排出量の抑制等、環境に対する配慮が社会的要請となっている。具体的には自動車に対する低燃費化要求が高まってきている。このような現状から、自動車用タイヤ、特に地面と接するタイヤトレッドの材料として、転がり抵抗が小さい材料の開発が求められてきている。一方、安全性の観点からは、ウェットスキッド抵抗に優れ、実用上十分な耐摩耗性及び破壊特性を有する材料の開発が求められている。
従来、タイヤトレッドの補強性充填剤としては、カーボンブラック、シリカ等のフィラーが使用されている。特にシリカを用いると、低ヒステリシスロス性及びウェットスキッド抵抗性の向上が図られるという利点を有している。
カーボンブラック、シリカ等のフィラーをゴム中に分散させるための技術として以前より、運動性の高いゴム分子(共役ジエン系重合体)末端部に、フィラーとの親和性や反応性を有する官能基を導入する技術が用いられている。当該技術によって、ゴム材中におけるフィラーの分散性を改良し、さらにはゴム分子末端部をフィラーとの結合で封じることによって、ヒステリシスロスを低減化する試みがなされている。
疎水性表面のカーボンブラックに対しては、アミンなどの窒素含有官能基を導入することが効果的とされており、一方、親水性表面のシリカにはシリカ表面のシラノール基と化学結合を起こす官能基を導入することが効果的とされている。例えば、従来においては、グリシジルアミノ基を有する変性剤を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献1参照。)や、グリシドキシアルコキシシランを重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献2参照。)、さらにはアミノ基を含有するアルコキシシラン類を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献3及び4参照。)、及びこれらとシリカとの組成物についての提案がなされている。一方、多官能アニオン重合開始剤を用いてジエン系ゴムの重合を行い、その後に、グリシジルアミノ基等の変性剤によって変性することにより、官能化された重合体末端数を増やして、ジエン系ゴムとシリカとにより構成される組成物の性能、すなわちシリカ分散性を向上させ、ヒステリシスロスを低減化させる技術(例えば、特許文献5参照。)の提案がなされている。
しかしながら、これらの組成物は、耐摩耗性及び破壊特性について改良の余地がある。そこで、近年においては、補強剤としてカーボンナノファイバーの利用が検討されている。例えば、ジエン系合成ゴムに、カーボンナノファイバーを配合して、耐久性及び高寿命性に優れたタイヤ用ゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献6及び7参照。)
国際公開第01/23467号パンフレット 特開平07−233217号公報 特開2001−158834号公報 特開2003−171418号公報 特開2006−306962号公報 特開2004−231861号公報 特開2009−046547号公報
しかしながら、特許文献6及び7に記載のカーボンナノファイバー配合ゴム組成物においては低転がり抵抗性が十分ではない。
本発明の目的は、例えば、車両用タイヤ等の成形品にした場合に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、さらに引張り強度及び引裂き強度(以下あわせて「破壊強度」とも記す。)も良好な変性共役ジエン系重合体組成物を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、多官能性アニオン重合開始剤を用いて重合して共役ジエン系重合体を得て、該共役ジエン系重合体の重合活性末端を特定の官能基を有する化合物で変性することによって得られる変性共役ジエン系重合体に、特定のカーボンナノファイバーを特定量添加した場合に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、引張り強度及び引裂き強度も良好な変性共役ジエン系重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる、重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体に、該共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する変性剤を反応させて得られる変性共役ジエン系重合体:100質量部、及び
(B)平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー:1〜40質量部
を含む変性共役ジエン系重合体組成物。
[2]
シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5〜200質量部含む、[1]に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
[3]
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、酸無水物基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である、[1]又は[2]に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
[4]
前記変性共役ジエン系重合体が、下記式(1)〜(16)からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子団が重合活性末端に結合している変性共役ジエン系重合体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
(上記式(1)〜(16)において、
Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、
1及びR2は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
3は各々独立に炭素数1〜48の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、
n及びmは各々独立に1又は2である。)
[5]
変性共役ジエン系重合体組成物中のバウンドラバー量が20質量%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含む、タイヤ。
本発明によれば、例えば、車両用タイヤ等の成形品にした場合に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、さらに破壊強度も良好な変性共役ジエン系重合体組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
≪変性共役ジエン系重合体組成物≫
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、(A)多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体に、該共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する変性剤を反応させて得られる変性共役ジエン系重合体:100質量部、及び(B)平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー:1〜40質量部を含む。
<(A)変性共役ジエン系重合体>
本実施の形態に用いる(A)変性共役ジエン系重合体は、多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体に、該共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する変性剤を反応させることで得られる。
(A)変性共役ジエン系重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
(多官能アニオン重合開始剤)
まず、変性前の共役ジエン系重合体を得るために用いる多官能アニオン重合開始剤について説明する。多官能アニオン重合開始剤は、ポリビニル芳香族化合物をリチウム化したものを用いることができる。例えば、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させることにより、多官能アニオン重合開始剤を調製できる。
ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させる方法としては、特に限定されず、例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法;有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;有機リチウム化合物とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物と、ポリビニル芳香族化合物と、の2者又は3者の存在下で、有機リチウム化合物を反応させる方法等が挙げられる。それらの中でも、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法;有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法;共役ジエン化合物及びポリビニル芳香族化合物の存在下で有機リチウム化合物を反応させる方法が好ましい。
上記のようにして調製された多官能アニオン重合開始剤は、後述する共役ジエン系化合物の重合に用いられる。また、多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化を図るために、調製の際に系内にルイス塩基を添加することが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
〔ポリビニル芳香族化合物〕
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるポリビニル芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4´−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。それらの中でも、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましい。これらのo−,m−,p−の異性体の混合物であってもよい。工業的利用を行う場合には、これら異性体混合物を用いる方が経済的に有利である。
〔共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物〕
多官能アニオン重合開始剤の調製には、ポリビニル芳香族化合物と共に共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物を用いることもできる。
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。それらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
モノビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。それらの中でも、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物は、移動相としてテトラヒドロフランを用いてGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した多官能アニオン重合開始剤のポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000の範囲内となるように添加することが好ましく、1,000〜10,000となるように添加することがさらに好ましい。
〔有機リチウム化合物〕
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる有機リチウム化合物としては、特に限定されず、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。それらの中でも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
〔溶媒〕
多官能性アニオン重合開始剤の調製に用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
〔ルイス塩基〕
多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化のためには、系内にルイス塩基を添加することが好ましい。ルイス塩基としては、第3級モノアミン、第3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
第3級モノアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等が挙げられる。
第3級ジアミンとしては、例えば、N,N,N´,N´−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N´,N´−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N´,N´−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等が挙げられる。
前記ルイス塩基の中でも、第3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、第3級ジアミンであるN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフランが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤の調製に使用するポリビニル芳香族化合物の量は、有機リチウム化合物のリチウム1モルに対して0.01〜1.0モルの範囲であることが好ましく、0.03〜0.5モルの範囲がより好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する際のポリビニル芳香族化合物の使用量が多いほど、後述する変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、後述するカーボンナノファイバーや無機充填剤の親和性や反応性が向上し、変性共役ジエン重合体組成物における転がり抵抗性能、耐摩耗性及び破壊特性が向上する。かかる観点から、多官能アニオン重合開始剤を調製する際のポリビニル芳香族化合物の使用量が、0.01モル以上であることが好ましく、組成物混練時の加工性を良好なものにする観点から、1.0モル以下であることが好ましい。
また、多官能アニオン重合開始剤を調製する際にルイス塩基を添加する場合は、重合開始剤の調製に用いられる前記溶媒に対して30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することがより好ましい。
反応促進や安定化の効果を十分に発現するためには、ルイス塩基を30ppm以上で添加することが好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製工程における重合溶媒との分離を考慮すると、ルイス塩基を50,000ppm以下で添加することが好ましい。
多官能開始剤を調製する際の温度は、特に限定されないが、10℃〜140℃の範囲が好ましく、35℃〜110℃の範囲がより好ましい。生産性の観点から、10℃以上であることが好ましく、高温による副反応を抑制するために140℃以下であることが好ましい。多官能開始剤を調製する際の反応時間は、反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。
(共役ジエン系重合体)
変性共役ジエン系重合体(A)を構成する共役ジエン系重合体について説明する。共役ジエン系重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させることにより得られる。
重合工程においては、多官能アニオン重合開始剤を、予め所定の反応器で調製しておき、共役ジエン系化合物の重合を行う反応器に供給して重合または共重合反応を行ってもよいし、後述する重合又は共重合を行うための反応器中で多官能アニオン重合開始剤を調製しておいて、この反応器に所定のモノマー類を供給して重合反応を行ってもよい。重合体の大量生産時の生産性や品質安定性の観点からは、予め所定の反応器で多官能アニオン重合開始剤を調製しておき、これを、必要に応じて重合に使用する反応器に供給して、共役ジエン系化合物の重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行うことが好ましい。
共役ジエン系重合体を得る重合は、回分式、又は1個の反応器若しくは2個以上の連結された反応器での連続式等の重合様式により行うことが好ましい。
共役ジエン系重合体を得る際の重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば特に限定されるものではないが、生産性の観点から0℃以上が好ましく、重合終了後の活性末端へ変性反応量を充分に確保する観点から120℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは、20℃〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは30℃〜90℃の範囲である。重合温度は、重合が発熱反応であることを考慮に入れ、さらにはモノマー及び溶媒のフィード温度を調節し、モノマー濃度を制御し、反応器外部からの冷却や加熱を行うことによって制御できる。
〔共役ジエン化合物〕
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。即ち、共役ジエン重合体は単独重合体でもよいし、共重合体であってもよい。
〔芳香族ビニル化合物〕
また、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に、スチレンが好ましい。
〔極性化合物〕
共役ジエン系重合体を製造する際、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、また重合速度の改善等の目的で、下記の極性化合物を添加することが好ましい。
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。これらの極性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
極性化合物の使用量は、得られる変性共役ジエン系重合体組成物の目的等と効果の程度に応じて選択されるが、多官能アニオン重合開始剤中のリチウム1モルに対して0.005〜100モルであることが好ましい。
〔重合溶媒〕
共役ジエン系重合体は所定の溶媒中で重合することが好ましい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が用いられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素系溶媒が挙げられる。
上記した共役ジエン系化合物及び重合溶媒は、それぞれ単独であるいはこれらの混合液を、有機金属化合物を用いて処理しておくことが好ましい。これにより、共役ジエン化合物や重合溶媒に含まれているアレン類やアセチレン類を処理できる。その結果、高濃度の活性末端を有する重合体が得られるようになり、高い変性率を達成できるようになる。
(変性剤)
次に、変性剤について説明する。
本実施の形態に用いる変性剤は、前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する。
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基としては、カーボンナノファーバーとの相互作用による転がり抵抗低減の観点から、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、酸無水物基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
本実施の形態に用いる変性剤としては、下記式(1)〜(16)からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子団を、前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に結合させる変性剤であることが好ましい。
すなわち、前記変性共役ジエン系重合体としては、下記式(1)〜(16)からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子団が重合活性末端に結合している変性共役ジエン系重合体であることが好ましい。このような変性共役ジエン系重合体を含む組成物は、例えば、車両用タイヤ等の成形品にした場合に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、引張り強度及び引裂き強度も良好となる傾向にある。
(上記式(1)〜(16)において、
Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、
1及びR2は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
3は各々独立に炭素数1〜48の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、
n及びmは各々独立に1又は2である。)
上記式(1)〜(16)で表される原子団を、前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に結合させる変性剤としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジンが挙げられる。
また、例えば、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランが挙げられる。
さらに、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシランが挙げられる。
またさらに、例えば、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル) メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシランが挙げられる。
さらにまた、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシランが挙げられる。
また、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシランが挙げられる。
さらに、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(ジエメトキシエチルシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)N−トリメチルシリルアミン化合物、トリス(トリエトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン−1−イル}エチル)ジメチルアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[4−(トリエトキシシリル)ブチル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン等が挙げられる。
さらに、例えば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
またさらに、変性剤としては、例えば、4.4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
中でも、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン、4.4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が好ましい。
上記の変性剤を共役ジエン系重合体に反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団を含む変性剤の残基が結合している変性共役ジエン系重合体が得られる。
上記の変性剤の使用量は、共役ジエン系重合体のリビング末端1当量に対して、好ましくは0.5当量を超え、10当量以下、より好ましくは0.7当量を超え、5当量以下、更に好ましくは1当量を超え、4当量以下である。なお、本実施の形態において、共役ジエン系重合体のリビング末端の量は、重合に使用した有機リチウム化合物の量と該有機リチウム化合物に結合しているリチウム原子の数から算出してもよいし、得られた共役ジエン系重合体の数平均分子量から算出してもよい。
上記変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
(変性共役ジエン系重合体(A)の物性等)
本実施の形態に用いる変性共役ジエン系重合体(A)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、加工性や物性を考慮して10万〜200万が好ましく、15万〜100万がより好ましい。該重量平均分子量は、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを用いたGPCを使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により求めることができる。
また、変性共役ジエン系重合体(A)の変性前の共役ジエン系重合体がポリブタジエンである場合、変性前の共役ジエン系重合体の、共役ジエン結合単位中に占めるビニル結合の割合は、10質量%〜80質量%が好ましい。転がり抵抗性能と耐摩耗性とを改善するためには、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。このとき、共役ジエン結合単位中に占めるシス結合とトランス結合との質量比は、シス結合/トランス結合=1/1.1〜1.5が好ましい。
上述した重合方法により得られる共役ジエン系重合体の活性末端と、上述した変性剤とを反応させることにより、変性共役ジエン系重合体(A)の溶液が得られる。この重合体溶液に、必要に応じて反応停止剤を添加してもよい。反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸等の有機酸;水等が使用できる。
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、必要に応じて重合体に含まれる金属類を脱灰してもよい。脱灰の方法としては、例えば、水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤等を、重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法が用いられる。
さらにまた、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、重合体溶液に酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
変性共役ジエン系重合体(A)を、重合体溶液から取得する方法としては、従来公知の方法を適用できる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が適用できる。
<(B)カーボンナノファイバー>
本実施の形態に用いる(B)カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが挙げられる。カーボンナノチューブは、炭索六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MW'NT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などが適宜用いられる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。また、カーボンナノファイバーは、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒と共に約2300〜3200℃で黒鉛化処理したものを用いてもよい。単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えぱアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭棄表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。なお、(B)カーボンナノファイバーは、(A)変性共役ジエン系重合体と混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエツチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、(A)変性共役ジエン系重合体との接着性やぬれ性を改善することができる。
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物に含まれる(B)カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5〜500nmであり、好ましくは0.4〜250nm、更に好ましくは1〜150nmである。(B)カーボンナノファイバーの平均直径が前記範囲内であると、(A)変性共役ジエン系重合体との混練中に、(B)カーボンナノファイバーが凝集することなく良好に分散し、また(B)カーボンナノファイバーが粉砕され難くなる。
なお、(B)カーボンナノファイバーの平均直径は例えば電子顕微鏡で得られた画像から確認することができる。
変性共役ジエン系重合体組成物における(B)カーボンナノファイバーの含有量は、変性共役ジエン系重合体(A)100質量部に対し、1〜40質量部である。(B)カーボンナノファイバーの含有量が前記範囲内であると、補強性の改善効果が充分に得られ、また、低発熱性が良好となり、コスト面においても好ましい。
(B)カーボンナノファイバーは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
<補強性充填剤>
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対して、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5〜200質量部含むことが好ましい。
(シリカ系無機充填剤)
変性共役ジエン系重合体組成物に含有されるシリカ系無機充填剤としては、SiO2又はSi3Alを構成単位の主成分とする固体粒子を使用することが好ましい。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上を占める成分を意味し、好ましくは70質量%以上を占める成分であり、より好ましくは90質量%以上を占める成分である。
シリカ系無機充填剤の具体例としては、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラスナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。シリカ系無機充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。これらの中で、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できるが、それらの中でも、破壊特性の改良とウェットスキッド抵抗性能との両立がより優れている点から、湿式シリカが好ましい。
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物において、良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170〜300m2/gであることが好ましく、200〜300m2/gであることがより好ましい。
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、変性共役ジエン系重合体(A)100質量部に対し、0.5質量部〜200質量部であることが好ましい。変性共役ジエン系重合体(A)(ゴム成分)100質量部に対するシリカ系無機充填剤の配合量の上限は、好ましくは200質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下であり、さらに好ましくは75質量部以下である。下限は、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、特に好ましくは35質量部以上である。シリカ系無機充填剤の配合量が前記範囲内であると、充填剤の添加効果が発現し、また、シリカ系無機充填剤の分散性が良好となり、得られる組成物の加工性が向上し、かつ機械強度が向上する。
(カーボンブラック)
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカ系無機充填剤以外の補強性充填剤として、カーボンブラックを添加してもよい。
カーボンブラックとしては、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。補強効果に優れる観点から、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの配合量は、変性共役ジエン系重合体(A)100質量部に対し、0.5質量部〜200質量部であることが好ましく、3質量部〜100質量部がより好ましく、5質量部〜50質量部がさらに好ましい。
(金属酸化物及び金属水酸化物)
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に金属酸化物や金属水酸化物を添加してもよい。金属酸化物は、化学式MxOy(Mは金属原子を表し、x,yは各々1〜6の整数を表す。)を構成の主成分とする固体粒子であることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上を占める成分を意味し、好ましくは70質量%以上を占める成分であり、より好ましくは90質量%以上を占める成分である。
金属酸化物として、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。金属酸化物及び金属水酸化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、金属酸化物及び金属水酸化物以外の無機充填剤との混合物も使用できる。
(シランカップリング剤)
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物においては、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、(A)変性共役ジエン系重合体(ゴム成分)とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、(A)変性共役ジエン系重合体(ゴム成分)及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有している。
シランカップリング剤の具体例としては、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対し、0.1質量部〜30質量部が好ましく、0.5質量部〜20質量部がより好ましく、1質量部〜15質量部がさらに好ましい。シランカップリング剤の配合量を上記数値範囲とすることで、十分な配合効果を得ることができるとともに、経済性を良好なものにできる。
<変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法>
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上記各成分を混合することにより製造することができる。
(A)変性共役ジエン系重合体(ゴム成分)と、(B)カーボンナノファイバー、必要に応じてシリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他充填剤、及びシランカップリング剤とを混合する方法については、特に限定されるものではない。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、ゴム成分と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
(バウンドラバー量)
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物中のバウンドラバー量は20質量%以上であることが好ましい。
上述した混練終了後の変性共役ジエン系重合体組成物(ゴム組成物)中のバウンドラバー量は、耐摩耗性及び破壊強度の改善の観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
なお、本実施の形態において、バウンドラバー量は後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
(加硫剤)
本実施の形態の変性共役ジエン重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、特に限定されないが、(A)変性共役ジエン系重合体(ゴム成分)100質量部に対し、0.01質量部〜20質量部であることが好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、例えば、120℃〜200℃であることが好ましく、140℃〜180℃がより好ましい。
(加硫促進剤、加硫助剤)
加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
加硫促進剤の使用量は、特に限定されないが、(A)変性共役ジエン重合体(ゴム成分)100質量部に対し、0.01質量部〜20質量部であることが好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましい。
(ゴム用軟化剤)
本実施の形態の変性共役ジエン重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を配合してもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、加工性の改良を図るために使用される、プロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施の形態において用いるゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、特に限定されないが、変性共役ジエン重合体を含有するゴム成分(A)100質量部に対し、10〜80質量部であることが好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
(その他の添加剤)
本実施の形態の変性共役ジエン重合体組成物には、本実施の形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外の軟化剤や充填剤、さらに耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。充填剤としては、具体的には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。目的とする製品の硬さや流動性を調節するために、必要に応じて配合する軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、アマニ油等が挙げられる。耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤としては、公知の材料を適用できる。
<用途>
本実施の形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述したシリカ系無機充填剤やカーボンブラック、その他補強性充填剤、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、ゴム用軟化剤等の各種配合剤を含むタイヤ用組成物とすることができる。
本実施の形態のタイヤ用組成物は、常法に従い加硫成形することにより、タイヤとすることができる。
本実施の形態のタイヤは、上述の変性共役ジエン系重合体組成物を含む。
以下、本発明について、具体的な実施例と比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、製造例における試料の分析は下記に示す方法により行った。
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に従い、100℃で1分間余熱し、4分後の粘度を測定した。
(2)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び分子量5000の標準ポリスチレン(ポリスチレンはカラムに吸着しない)を含む試料溶液を用いて、ポリスチレン系カラムのGPCとシリカ系カラムのGPCとの両クロマトグラムを、RI検出器を用いて測定し、それらの差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。ポリスチレン系カラムのGPCとシリカ系カラムのGPCとの、どちらも溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
<ポリスチレン系>
ガードカラム:東ソー製、「TSKguardcolumn HHR−H」
カラム:東ソー製、「TSKgel G6000HHR」、「TSKgel G5000HHR」、「TSKgel G4000HHR」
GPC:東ソー製、「HLC8020」
分析条件:オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分。
<シリカ系>
ガードカラム:「DIOL」(4.6×12.5mm 5micron)
カラム:Agilent Technologies社製、「Zorbax PSM−1000S」、「Zorbax PSM−300S」、「Zorbax PSM−60S」
GPC:東ソー製、「CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム」(オートサンプラー「AS−8020」、デガッサー「SD−8022」、ポンプ「CCPS」、カラムオーブン「CO−8020」、示差屈折計「RI−8021」)
分析条件:オーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分。
20mLのTHFに対して10mgの試料を5mgの標準ポリスチレンとともに溶解し、溶液とした。その溶液200μLをGPCに注入してクロマトグラムを測定した。そして、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積を「P1」、標準ポリスチレンのピーク面積を「P2」とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積を「P3」、標準ポリスチレンのピーク面積を「P4」として、変性率(%)は下記計算式により算出した。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(多官能アニオン重合開始剤の調製)
内容積10Lで、攪拌装置及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った。その後、該オートクレーブに、下記表1に示す条件で、乾燥処理を施した1,3−ブタジエン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジビニルベンゼン(DVB)を加え、次いでn−ブチルリチウム(NBL)を加えて、75℃で1時間反応させて、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。
多官能アニオン重合開始剤の調製には、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等を含有し、ジビニルベンゼン濃度が57質量%であるジビニルベンゼン混合物(新日鉄化学製)を用いた。なお、下記表1中のジビニルベンゼン量は、上記市販のジビニルベンゼンが混合物であることから、不純物の含有量を除いて換算したジビニルベンゼン純量である。
〔製造例1〕
内容積10Lで、攪拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用した。予め不純物を除去したブタジエン897g、スチレン315g、シクロヘキサン6346g、極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.017gを反応器へ入れ、反応器内の温度を55℃に保持した。上述のようにして調製した多官能アニオン重合開始剤をリチウム添加量として10.5mmolとなるように反応器に供給して反応を開始した。反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は84℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを5.25mmol添加して、83℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:BHT)を2.1g添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(i))を得た。試料(i)の分析結果を下記表2に示す。
〔製造例2〕
変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを10.5mmol添加し変性反応を実施した以外には製造例1と同様にして、変性成分を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(ii))を得た。試料(ii)の分析結果を下記表2に示す。
〔製造例3〕
変性剤として3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピルトリエトキシシランを21mmol添加し変性反応を実施した以外には製造例1と同様にして、変性成分を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(iii))を得た。試料(iii)の分析結果を下記表2に示す。
〔製造例4〕
変性剤として4.4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンを5.25mmol添加し変性反応を実施した以外には製造例1と同様にして、変性成分を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(iv))を得た。試料(iv)の分析結果を下記表2に示す。
〔製造例5〕
重合に用いた開始剤を、多官能アニオン重合開始剤からn−ブチルリチウムに代え、リチウム添加量として10.5mmolとなるようにn−ブチルリチウムを反応器に供給し、変性剤として4.4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンを5.25mmol添加し変性反応を実施した以外は製造例1と同様にして、変性成分を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(v))を得た。試料(v)の分析結果を下記表2に示す。
〔製造例6〕
変性反応を実施せず、変性反応と同タイミングで適当量のエタノールで重合反応を停止させた以外には製造例1と同様にして、変性成分を持たないスチレン−ブタジエンランダム共重合体(試料(vi))を得た。試料(vi)の分析結果を下記表2に示す。
※変性剤(1)は1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
※変性剤(2)はテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
※変性剤(3)は3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン
※変性剤(4)は4.4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
〔実施例1〕
上記調製した試料A(以下「成分A」とも記す。)等の各成分を下記の方法により混練し、変性共役ジエン系重合体組成物を形成した。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段階の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、表3に示すとおりの割合で、ゴム成分(成分A)、充填剤(シリカ、カーボンナノチューブ)、シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練してゴム組成物を得た。このとき、密閉混練機の温度を制御し、排出温度(配合物)を155℃〜160℃に調整した。
次に、第二段階の混練として、上記第一段階の混練で得たゴム組成物を室温まで冷却後、表3に示すとおりの割合で、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練してゴム組成物を得た。この場合も、混練機の温度制御により排出温度(配合物)を155℃〜160℃に調整した。
第三段階の混練として、上記第二段階の混練で得たゴム組成物を室温まで冷却後、70℃に設定したオープンロールにて、表3に示すとおりの割合で、硫黄、加硫促進剤を加えて混練してゴム組成物を得た。
第三段階の混錬で得たゴム組成物を成形し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫して変性共役ジエン系重合体組成物を得た。得られた変性共役ジエン系重合体組成物の物性を測定した。測定結果を下記表3に示す。
変性共役ジエン系重合体組成物の物性は、下記の方法により測定した。
<バウンドラバー量>
第二段階の混練工程の終了後のゴム組成物約0.2gを約1mm角状に裁断し、試験片を作成した。該試験片を、ハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ、重量を測定した。その後、試験片を、トルエン中に24時間浸せき後、乾燥処理を施し、重量を測定した。非溶解成分の量から充填剤に結合したゴムの量を計算し、充填剤と結合したゴムの割合(バウンドラバー量)を求めた。
<引裂き強度>
JIS K6252に準拠し、23℃恒温室で測定し、比較例1で得られた変性共役ジエン系重合体組成物の測定値を100として、指数化した。数値が大きいほど引裂き強度に優れることを示す。
<引張り強度>
JIS K6251の引張試験法により測定し、比較例1で得られた変性共役ジエン系重合体組成物の測定値を100として、指数化した。指数値が大きいほど引張り強度に優れることを示す。
<耐摩耗性>
アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、比較例1で得られた変性共役ジエン系重合体組成物の測定値を100として、指数化した。指数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
<粘弾性パラメータ>
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータ(tanδ)を測定し、比較例1で得られた変性共役ジエン系重合体組成物の測定値を100として、指数化した。
50℃、周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを転がり抵抗性能(省燃費特性)の指標とした。指数値が大きいほど転がり抵抗性能(省燃費性能)が良好であることを示す。
〔実施例2〜8及び比較例1〜5〕
表3に示す配合割合にて各成分を混練した以外は、実施例1と同様に変性共役ジエン系重合体組成物を製造し、該変性共役ジエン系重合体組成物の物性を評価した。それぞれの評価結果を表3に示す。
[注]
1)シリカ:Degussa社製、商品名「ウルトラジルVN3」
2)カーボンブラック:東海カーボン社製、商品名「シーストKH」
3)カーボンナノチューブA:昭和電工社製VGCF―S(平均直径90nmの多層カーボンナノチューブ)
4)カーボンナノチューブB:昭和電工社製VGCF−X(平均直径9nmの多層カーボンナノチューブ)
5)カーボンナノチューブC:平均直径約600nmの多層カーボンナノチューブ
6)シランカップリング剤:Degussa社製、商品名「Si69」
7)プロセスオイル:ジャパンエナジー社製、商品名「NC140」
8)老化防止剤:N−イソプロピル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン
9)加硫促進剤A:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
10)加硫促進剤B:ジフェニルグアニジン
上記カーボンナノチューブA、B及びCの平均直径は電子顕微鏡で得られた画像から確認した。
上記表3に示すように実施例6及び7と比較例3とを比較すると、変性の効果により、50℃におけるtanδ、耐摩耗性、引裂き強度、引張り強度いずれの性能も改善されることがわかった。更に、実施例6及び7と比較例2との比較により、多官能アニオン重合開始剤を用いて得られた変性共役ジエン系重合体を用いることでこれら性能がより改善されることがわかった。また、カーボンナノチューブとシリカとの配合系において、特にアルコキシシリル基を持つ変性剤で変性した変性共役ジエン系重合体を用いた場合において、50℃におけるtanδが優れ、耐摩耗性、引裂き強度及び引張り強度のバランスのよい変性共役ジエン系重合体組成物が得られることがわかった。
本発明の変性共役ジエン重合体組成物は、転がり抵抗性能、耐摩耗性、破壊強度といった物性バランスに優れているので、自動車の内装・外装品、防振ゴム、ベルト、履物、発泡体、各種工業部品、タイヤ用途等の分野をはじめとする幅広い分野において産業上の利用の可能性がある。

Claims (6)

  1. (A)多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる重合活性末端を持つ共役ジエン系重合体に、該共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する変性剤を反応させて得られる変性共役ジエン系重合体:100質量部、及び
    (B)平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー:1〜40質量部
    を含む変性共役ジエン系重合体組成物。
  2. シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5〜200質量部含む、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
  3. 前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応可能な官能基が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基、カルボキシル基、酸無水物基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
  4. 前記変性共役ジエン系重合体が、下記式(1)〜(16)からなる群より選ばれる少なくとも1個の原子団が重合活性末端に結合している変性共役ジエン系重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
    (上記式(1)〜(16)において、
    Nは窒素原子、Siは珪素原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表し、
    1及びR2は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
    3は各々独立に炭素数1〜48の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、且つ、該炭化水素基は、各々独立に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、炭素数1〜24の炭化水素基を有するイミノ基、シラノール基及び炭素数1〜24のアルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよく、
    4は各々独立に水素原子又は炭素数1〜24の鎖状若しくは環状の炭化水素基を表し、
    n及びmは各々独立に1又は2である。)
  5. 変性共役ジエン系重合体組成物中のバウンドラバー量が20質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含む、タイヤ。
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