上記の第一の側面において、炉の強度を受け持つ容器は水平断面が円形であり、形状を円筒型とし、流動層部は少なくとも前記不燃物排出シュートに接する前記炉床の水平面形状及びその上部の前記流動媒体反転壁の水平断面形状は直線とする炉構造であり、内部循環流の流れ方向を前記流動媒体反転壁の直角方向として流動層は矩形の内部循環流の長所を継承する。前記炉の強度を受け持つ容器の水平断面が矩形の場合には、炉の構造強度を受け持つ形状は平板のため、構造強度をもたせるための補強、及び炉内圧の変動を受けさせるための補強が必要であり、部材が多くかつ製作に手間がかかり高価となる。また、現地作業にも手間がかかり多くの工数、日数を要する。容器の形状を円筒型とすることは構造強度上の理想であり、次の効果がある。
構造強度をもたせるための補強、及び炉内圧力の変動を受けさせるための補強は不要であり、部材が少なくかつ製作に手間がかからないので安価となる。また、小型炉の場合は工場完成品として現地へ輸送でき、大型炉の場合には現地組み立て作業も容易で、短期間で組み立てができるので、工程を短縮することができる。工程の短縮は建設コストの低減に効果がある。
排ガスを完全燃焼させる空間であるフリーボードは、十分な排ガスの滞留時間を持たせるため大きな構造物となり、そこで使用される耐火断熱材は大量のものとなる。フリーボード形状の違いによる耐火断熱材の量を比較するため、円形と矩形(正方形)の周長を計算する。矩形の1辺長をL円の半径をrとし水平断面積を同一とすると、L2=πr2なのでL=r√πであり、周長の比は円形:矩形=2πr:4L=2πr:4r√π=√π:2=0.886:1となる。すなわち円形の方が小さくでき、耐火断熱材の量も少なくでき、イニシャルコスト、耐火断熱材の打ち替えコストも安価になる。また、矩形の場合には4隅の角部分は有効に使われないため、実質の差はもっと大きなものとなる。更に表面積が小さくなるので、放熱損失が小さくなる。
そして、流動層部は少なくとも前記不燃物排出シュートに接する前記炉床の水平面形状及びその上部の前記流動媒体反転壁の水平断面形状は直線とし、緩慢流動層中を流動媒体が流動化しつつ下降し、不燃物排出側の活発流動層中を流動媒体が流動化しつつ上昇し、不燃物排出側の活発流動層上部にて流動媒体が流動媒体反転壁で反転して廃棄物投入部へ移動し、緩慢流動層下部にて流動媒体が廃棄物投入部から不燃物排出側へ流動化しつつ移動するような流動媒体の内部循環流を生ぜしめることで、次の作用効果が得られる。
(1)緩慢流動層中で生成する微細化される前の炭化物は、緩慢流動層上に浮遊・堆積せず、流動層内に良好・均一に分散され、活発流動層において炭化物の粉砕・酸化が効率良く行われる。炭化物の酸化により発生する熱量は、流動媒体に速やかに伝達され、廃棄物投入部の緩慢流動層中の廃棄物の乾燥・ガス化の熱源として有効利用される。
(2)流動媒体反転壁によって流動媒体は廃棄物投入部へ津波のように覆い、次に流動媒体は不燃物排出側へ沈降・移動する。この流動媒体の横方向の動きにより、廃棄物は、無破砕に近い状態で炉へ供給することができる。このため、破砕設備を軽度のもの又は省略することができ、破砕用電力を節減できる。廃棄物中の不燃物を排出する不燃物排出シュートは、炉床の周辺部左右に設ける場合と周辺部4辺の内の1辺に1箇所設ける場合がある。大型炉では周辺部左右2箇所とする。
(3)流動媒体が常に一定量横方向に動くことにより、流動媒体が廃棄物を横方向に滞留無く一定量を搬送することができ、廃棄物を層内で拡散することができる。そして、不燃物の排出量も滞留無く一定で最小限の量とすることができるので、廃棄物投入は不燃物排出シュートが2箇所の場合はその間、不燃物排出シュートが1箇所の場合はその対面の緩慢流動層の層上部近傍に投入される。
上記の第二の側面において、廃棄物はまず水分が蒸発して乾燥され、ガス化する。該緩慢流動層の層上部近傍に各種廃棄物がほぼ全量供給されるので、極端な酸素不足の環境下となり、ダイオキシン類及びその前駆体が発生する。なお、ダイオキシン前駆体はダイオキシン類を生成するとされている有機塩素化合物であり、ダイオキシン類が発生するメカニズムからダイオキシン類の濃度と相関が強い。そのため連続的かつ迅速な計測ができないダイオキシン類の間接的な指標としてダイオキシン前駆体モニタが商品化されている。
ここで、発生したダイオキシン類及びその前駆体を、炉上部のフリーボードで二次空気により生成ガス及びチャーを燃焼した熱で分解する方式では、フリーボード空間が広く、ガスの混合・攪拌に限界があり、ダイオキシン類及びその前駆体の高効率分解・燃焼には限界があるため、後工程でバグフイルターに活性炭などを散布したり、触媒装置を新たに設置すると、この活性炭のコストや触媒の費用がランニングコストに大きく影響を与えるが、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス発生・上昇領域のダイオキシン類及びその前駆体発生直後にすなわちフリーボ−ドに至る前でかつダイオキシン類及びその前駆体が拡散する前の該未燃ガス上昇領域にダイオキシン類及びその前駆体高度分解・燃焼に必要な高温場を得るために必要な空気量を供給し、この空気量と前記流動層部に供給する空気量の合計を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の100%以上とすることにより、該領域の温度は900〜1100℃となり、ダイオキシン類及びその前駆体の発生直後でかつ拡散する前に十分な温度でダイオキシン類及びその前駆体を完全に近く分解・燃焼することができる。
なお、フリーボードでの燃焼温度は従来同様850〜1050℃で良い。フリーボードでの燃焼温度の上限を1050℃としているのは、該温度を超えると飛灰によっては粒子の表面が溶融し始め、フリーボード表面や排ガス出口煙道に付着し始めるからである。本発明では、該未燃ガス上昇領域部分の燃焼温度の上限を1100℃としているのは、該部分が流動層部に近いので粒子の表面が溶融し始め付着し始めても流動している低温の流動媒体により洗われること及び排ガス出口煙道までの距離が長いため、フリーボード上昇中に溶融表面が固化するので局部高温が生じ易い通常のフリーボード燃焼より飛灰の付着に対して許容温度が高いためである。
なお、各種廃棄物は雑多で形状も物質も不均一のため、従来の高めの流動層温度では熱反応速度が速く、該未燃ガス発生・上昇領域で発生する未燃ガス量は安定しない。従って、該未燃ガス上昇領域部分の燃焼温度を一定温度になるように供給する空気量をコントロールしようとすると制御が困難であり、むしろ高度な制御は運転が安定しない。後述するように、流動層温度を450〜600℃と低く運転できれば、廃棄物と流動媒体の熱反応速度が緩慢になりガス化・燃焼反応は抑制されるので運転は安定する。そのため、供給する空気量の制御は容易である。
また、ダイオキシン類の分解のために、従来フリーボードでの燃焼温度は850〜1050℃で排ガスの滞留時間2秒以上と定められているが、前述のように、各種廃棄物は雑多で形状も物質も不均一のため、従来の高温の流動層温度では熱反応速度が速く、該未燃ガス発生・上昇領域で発生する未燃ガス量は安定せず、かつ突沸によってフリーボードでの排ガスの滞留時間2秒以下で通過する場合があり、ダイオキシン類は分解しないまま炉を出ることがある。後述するように、流動層温度を450〜600℃と低く運転できれば、廃棄物と流動媒体の熱反応速度が緩慢になりガス化・燃焼反応は抑制されるので突沸は抑制され運転は安定する。そのため、微量のダイオキシン類はフリーボードでの排ガスの滞留時間2秒以下で通過することはない。
一般廃棄物の場合の実験事例では、該未燃ガス上昇領域部分の燃焼温度が900〜1100℃となった時の該未燃ガス上昇領域に供給した空気量は被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の40〜70%の範囲内であった。被燃焼物中に揮発成分が多い場合には廃棄物が投下される層上部の生成ガス及びチャー量が多くなるので空気量は多めに、水分が多い場合には少なめに供給する。流動層部に供給する空気量が被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の30〜60%であり、被燃焼物中に揮発成分が多い場合には層内での燃焼を抑えるために空気量は少なめに、水分が多い場合には層内での燃焼を増やすために空気量は多めに供給する。該未燃ガス上昇領域に供給する空気量と該流動層部に供給する空気量の合計を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の100%以上とし、残りの空気量をフリーボードに供給し、炉全体の総空気比を1.3〜1.4とする。流動層内燃焼が1段目、層上燃焼を2段目、そしてフリーボード燃焼が3段目ということになり、3段燃焼により従来の2段燃焼よりもNOXを低減できる。
ダイオキシン類濃度の分析は費用が高価で、かつ時間を要するため常時監視はできず、年1回の分析が義務付けされている。ダイオキシン類濃度は一酸化炭素濃度と相関があるとされているので、煙突出口の一酸化炭素濃度を常時監視して一酸化炭素濃度は100ppm以下(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施工規則)とされている。また、平成9年1月に厚生省から発表された「ごみ処理に関わるダイオキシン類発生防止等ガイドラインについて」では50ppm以下とされている。このように炉出口の一酸化炭素を低減させるほど炉内で完全燃焼できており、ダイオキシン類も低減できるとされている。
一酸化炭素を低減するには、炉の上部のフリーボードで未燃ガスやチャー(微細炭素粒子)をフリーボードに供給する二次空気で燃焼させ、850℃以上を確保することにより達成される。しかし、一酸化炭素濃度規制値は、自治体などの顧客によっては更に上乗せ規制あるいは目標値として、最近では10ppm以下を要求されるようになっている。従来は、流動層の温度が高いと廃棄物と流動媒体の熱反応速度が速く、雑多で形状も物質も不均一な各種廃棄物の燃焼では流動層内で発生する一酸化炭素濃度は激しく乱れ、高濃度の一酸化炭素濃度を生じさせる。高濃度の一酸化炭素濃度が生じる時は、炉全体の必要酸素が不足する時であり、フリーボードに供給される二次空気では炉全体の必要酸素濃度が維持できないため、一酸化炭素は十分に燃焼できず、一酸化炭素濃度規制値は守れないおそれがある。このような状況において、一酸化炭素濃度規制値を守るために二つの方策が可能である。ひとつはフリーボードの容積を大きくして排ガス量の変動に対してクッション効果をもたせるものである。しかし、この方法はある程度効果はあるがイニシャルコストが高くなる。流動層式焼却炉での二つ目の方策は、流動媒体の温度を低めに設定して廃棄物と流動媒体の熱反応速度を緩慢にすることにより、流動層内で発生する一酸化炭素濃度の乱れを抑え、一酸化炭素濃度を低めで安定させ、フリーボードに供給される二次空気で十分に一酸化炭素を燃焼させて一酸化炭素濃度規制値を守るような運転管理がなされている。しかし、従来の方法ではフリーボードに供給される二次空気はフリーボードの水平断面が大きく広がる部位に供給されるため、未燃ガスやチャーとの接触効率が悪く、多くの空気を必要とし、空気比が高くなりNOXも高くなる。
なお、流動媒体の温度を低めに設定して廃棄物と流動媒体の熱反応速度を緩慢にすることにより、流動層内で発生する一酸化炭素濃度の乱れを抑え、一酸化炭素濃度を低めで安定させることはできるが、流動層部における緩慢流動層部と活発流動層部への空気量の配分を適正にしないと、流動層内でのチャーが完全燃焼し切らない内に一部はフリーボードへ飛散し、一部は流動媒体と不燃物に随伴して不燃物排出シュートから炉外に出される。この時、流動媒体の減温過程でチャーが触媒になってダイオキシン類が再合成される。適正な空気量の配分とは、緩慢流動層における流動化ガスの質量速度を最小流動化質量速度の2〜4倍のうちの低目とし、かつ活発流動層における流動化ガスの質量速度を緩慢流動層における流動化ガスの質量速度の2〜3倍程度のうちの高めとすることである。このことにより廃棄物投入部の緩慢流動層の空気比が低くなり温度を低くすることができ、一方活発流動層の空気比が高くなり流動層内のチャーが良く燃焼するので流動層温度が高くなる。そして活発流動層の流動媒体はその内部循環流により廃棄物投入部の緩慢流動層部へ移動し、廃棄物の乾燥・ガス化の熱源となる。
ダイオキシン類濃度規制は煙突出口のみであり、炉出口の規制はない。そのため通常、ダイオキシン類濃度測定は煙突出口に注目されている。運転中の内部循環型流動層焼却炉において、流動媒体温度を500℃程度として運転したところ、一酸化炭素濃度が連続して1ppm以下という極めて安定した運転ができた。しかし、炉出口のダイオキシン類濃度を測定してみると、一酸化炭素濃度が高い場合よりも高めの数値が測定された。また各所の一般廃棄物焼却炉の分析データを調査すると、炉出口の一酸化炭素濃度が1〜10ppmという低いレベルでも、炉出口のダイオキシン類濃度は0.1〜12ng―TEQ/Nm3と幅広く分布していた。そして炉出口のダイオキシン類濃度が高い程廃熱ボイラ出口のダイオキシン類濃度は増量していた。一例を示すと、炉出口のダイオキシン類濃度約1ng―TEQ/Nm3の場合、廃熱ボイラ出口のダイオキシン類濃度は約6ng―TEQ/Nm3、炉出口のダイオキシン類濃度約12ng―TEQ/Nm3の場合には、廃熱ボイラ出口のダイオキシン類濃度は約46ng―TEQ/Nm3に増量した。すなわち現行の焼却炉システムにおいては、一酸化炭素濃度が1〜10ppmという低レベルの領域では、炉出口の一酸化炭素濃度と炉出口のダイオキシン類濃度との相関は無く参考値でしかない。なお、廃熱ボイラ内でダイオキシン類が再合成されることは良く知られていることであり、塩化銅などの金属塩化物が触媒として作用している。そして未燃炭素としてのチャー及びダイオキシン前駆体の濃度もダイオキシン類再合成に大きく寄与している。このことから、ダイオキシン類及びその前駆体の発生直後に十分な酸素量と高温でダイオキシン類及びその前駆体を高効率に分解・燃焼させることは、緩慢流動層上で発生するチャーも同時に燃焼させることになるので、ダイオキシン類再合成の触媒となるチャー及びダイオキシン前駆体の濃度を低減する効果にも繋がる。
また、従来の焼却炉はほとんどバグフイルターを設置して、ここで活性炭などを噴霧してダイオキシン類を吸着除去し、更に後段にダイオキシン類分解触媒装置を設置して2重に対策を採っている。そのため炉出口のダイオキシン類濃度にはあまり注目していない。しかし、炉出口のダイオキシン類及びその前駆体及びチャーの濃度が高いと、廃熱ボイラ出口のダイオキシン類濃度は増量し、後段のダイオキシン類吸着活性炭の使用量が増え、ダイオキシン類分解触媒装置の触媒の寿命が短くなり早期交換が必要になる。この活性炭と触媒の費用はかなり高価なものである。従って、炉出口でのダイオキシン類濃度規制はなくても、炉出口のダイオキシン類及びその前駆体及びチャーの濃度を低減することは、維持管理費低減に大きな意義をもつ。また、炉出口のダイオキシン類及びその前駆体濃度を低減できれば、炉から飛散して煙道へ導かれバグフイルターで捕集される飛灰中のダイオキシン類濃度も低減できる。飛灰中のダイオキシン類濃度が低減できれば、捕集された灰の処理も容易になる。
上述のように、流動層式焼却炉に係らず、焼却施設全般で炉出口の一酸化炭素濃度を低減する各種の方策が採られてきたが、炉出口のダイオキシン類濃度は参考値であり、これまで炉出口のダイオキシン類濃度の低減策はほとんど検討・実施されていない。その理由のひとつに、活性炭や触媒を安易に使い、結果として安全のための処理費用の増加は止むを得ないとの考え方が基本にあったと考えられる。しかし近年、自治体の焼却施設は、20年間の維持管理費も含めた総括契約が多くなり、維持管理費の低減及び施設の安全性・安定性は企業の死活問題にクローズアップしてきた。そこで、以下に説明する本発明の実施形態によれば、かかる維持管理費の低減と施設の安全性・安定性が提供される。
以下では、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、適用される技術的範
囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における流動層式熱反応炉の図解的な垂直断面図である。図1において、流動層式熱反応炉1は、流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2(図中の太線で示す)、耐火断熱材を支える鉄皮3(図中の太線の長い点線で示す)、鉄皮2と3で囲まれる空間4、耐火断熱材5、外気導入口6、暖気排出口7、散気ノズルを取り付けた炉床8、不燃物排出シュート9、流動媒体反転壁10、フリーボード11、フリーボード二次空気供給口12、廃棄物投入口13、緩慢流動層用の空気室14、活発流動層用の空気室15、緩慢流動層16、活発流動層17を含む。炉床8は、図1の点線で示すように、多数の空気放出穴を備えるベッドで構成され、この空気放出穴に下部からの空気を四方に散らす散気ノズルが取り付けられる。流動層式熱反応炉1は、各種廃棄物18、緩慢流動層用の空気20、活発流動層用の空気21を供給され、燃焼ガス22を排出する。図1の流動層式熱反応炉1は、内部循環型流動層であり、散気ノズルを取り付けた炉床8は炉中央部が最も高く左右の不燃物排出シュート9へ向かって傾斜している。この傾斜角度は15〜20°程度が最適である。散気ノズルを取り付けた炉床8上の流動層は、緩慢流動層16及び活発流動層17を含む。図では緩慢流動層用の空気室14は1室、活発流動層用の空気室15は左右2室としているが、これに限定されるものではなく、炉が大型になれば各室を更に区分けする。流動媒体反転壁10の傾斜角度は35°程度が最適である。なお、流動層を形成する流動媒体は、通常、平均粒子径0.4mm〜0.8mm程度の硅砂を使用する。
図1は流動層式熱反応炉1の流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2は水平断面が円形であるが、緩慢流動層16,活発流動層17の散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10を含む流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の内部断面βの水平断面形状を矩形とする炉構造である。そして、本実施の形態では、廃棄物中の不燃物を排出する不燃物排出シュート9を、散気ノズルを取り付けた炉床8の周辺部左右に設けた例を示す。流動層式熱反応炉の大きなフリーボード11の多大な重量と炉内の圧力変動を受け支える構造強度を受け持つ構造強度鉄皮2を円筒型とすることにより、そのほかに更に構造強度をもたせるための補強、及び炉内圧力の変動を受けさせるための補強は不要である。一方、フリーボード11より下部から流動層部の散気ノズルを取り付けた炉床8までの内部水平断面形状を矩形とするため、フリーボード11より下部の耐火断熱材を支える鉄皮3の流動層部分は平板となるため該部分の耐火断熱材5を支える程度の補強は必要であるが、大きなフリーボード11の多大な重量を支える構造強度を受け持つ必要はないので軽度な補強で済ませることができる。この補強(図示せず)は、流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2から支えても良い。また、フリーボード11より下部の耐火断熱材5を支える鉄皮3を冷却するため、2と3で囲まれる空間4に外気を導入するための外気導入口6及び暖気排出口7を設ける。なお、炉上部に廃熱ボイラを設ける場合のボイラの水平断面は円形でも矩形でも良い。
流動層部の散気ノズルを取り付けた炉床8を矩形とし、炉底中央部の緩慢流動層16中を流動媒体が流動化しつつ下降し、左右の活発流動層17中を流動媒体が流動化しつつ上昇し、不燃物排出シュート9側の活発流動層17上部にて流動媒体が流動媒体反転壁10で反転して廃棄物投入部19へ移動し、緩慢流動層16下部にて流動媒体が廃棄物投入部19から不燃物排出シュート9側へ流動化しつつ移動するような流動媒体の内部循環流を生ぜさせる。
廃棄物投入部19は緩慢流動層16の層上に位置し、この下方の緩慢流動層内が廃棄物乾燥・ガス生成主領域25となる。ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23は、できるだけダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26に近づけて、廃棄物乾燥・ガス生成主領域25の上部のダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26に向けてダイオキシン類分解用燃焼空気24を吹き付ける。ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23を該未燃ガス上昇領域26に近づける理由は、遠くから該空気を吹き付けると空気が該未燃ガス上昇領域26近傍に到着する前に活発流動層17の層上で、吹き付けられた空気中の酸素が燃焼で消費されてダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26まで十分に届かないからである。また、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23は、単に金属管で炉内に突き出すのでは高温及び腐食ガスによる腐食、流動媒体による磨耗の相乗効果により短期間で腐食・磨耗する。その対応のために、流動媒体反転壁10を構成する炉内側に突き出ている側壁にダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23を設置する。
ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23は、運転中の流動層平均表面27の層上部から2m以内、望ましくは1m以内とする。層上部から2m以内、望ましくは1m以内とするのは、ダイオキシン類及びその前駆体発生直後の拡散されていない濃度の高い状態の場所に向けてダイオキシン類分解用燃焼空気24を集中供給するためである。これより高い位置に設置すると、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26の未燃ガスがすでにフリーボード11の大きな空間へ拡散してしまっているので、ダイオキシン類分解用燃焼空気24を効率良く利用できないためである。また、従来の二次空気供給口の出口で高温燃焼した際に、灰分の表面が溶融して、空気の流れに沿った筒状のクリンカが形成されることがあるが、流動層表面近傍であれば、流動媒体の循環流で常時洗われているので筒状のクリンカが成長することはない。なお、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23の段数は本図では1段で記してあるが、その段数と個数は炉の大きさなどで任意に設計される。
流動層部断面α、該流動層部と上方の該フリーボード11をつなぐ流路の断面β、この断面部にダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23が設置される。そしてフリーボード11の断面γとすると、断面積の大きさは、大きい方からγ>α>βとなる。ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26は最も狭い水平断面であり、該断面βより広い断面積を持つ該断面αの活発流動層から上昇する流動層内で発生した未燃ガスや燃焼ガス及びダイオキシン類などが流動媒体反転壁10で反転して該未燃ガス上昇領域26へ送られ該未燃ガス上昇領域26に集中されるに加え、流動媒体反転壁10で反転して津波のように覆ってくる流動媒体、更にダイオキシン類分解用燃焼空気24の吹き込みにより、該断面βの狭い空間は嵐のような激しい混合・撹拌状態の中で、未燃ガスやチャーを瞬時に燃焼し、高温になり、ダイオキシン類及びその前駆体は瞬時に高効率で分解・燃焼する。すなわち、ダイオキシン類分解用燃焼空気24は単なる二次空気の供給とは異なり、ダイオキシン類及びその前駆体を発生直後の濃縮した状態で拡散する前に高効率で分解・燃焼させるという技術思想である。
一部の未燃ガスやチャーは、該断面βの上端からフリーボード11の円形断面γに向けて拡大していく傾斜壁の最下方に設置したフリーボード二次空気供給口12から供給される空気により完全に近く燃焼される。該空気はフリーボードの水平断面が大きく広がる前に供給されるため、未燃ガスやチャーとの接触効率が良く、多くの空気を必要としないので、空気比が低くなりNOXも低くなる。フリーボード二次空気供給口12はダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23の上段に配置されるため流動層表面に配置できないが、従来の二次空気と異なりダイオキシン類分解用燃焼空気24で大部分が燃焼された後のため、燃焼負荷が低く筒状のクリンカが形成されることはない。本方式により、フリーボード11の容積は従来より小さくすることができる。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は矩形で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。また、二次空気供給口12は炉の全周に配置されるが、その個数は炉の大きさなどで任意に設計される。
図2は図1のA−A断面図を示す。廃棄物投入口13から投入された各種廃棄物18は緩慢流動層16の層上の廃棄物投入部19に到着し、沈降しながら乾燥・ガス化し、廃棄物乾燥・ガス生成主領域25を形成する。この廃棄物乾燥・ガス生成主領域25は、最も酸素不足の領域となる。例えば、押込送風機(図示せず)から流動層部に供給する空気量を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の30〜60%の中間値45%とし、流動層断面に占める緩慢流動層16の面積割合を50%として設計し、活発流動層17における流動化ガスの質量速度を緩慢流動層16における流動化ガスの質量速度の2倍となるようダンパ(図示せず)で調整すると、緩慢流動層16の理論燃焼空気量は被燃焼物全体に対して45%の1/3なので、15%となる。更に廃棄物乾燥・ガス生成主領域25は炉幅の1/3程度であるので、その面積も緩慢流動層16の面積の約1/3程度であり、廃棄物乾燥・ガス生成主領域25の燃焼空気量は被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の5%という異常に低い酸素不足の領域となるので熱反応速度は抑制され、緩慢で安定なガス化・燃焼となる。しかし、一方で、該領域25は最もダイオキシン類及びその前駆体が発生することになる。
廃棄物乾燥・ガス生成主領域25では、まず投入された廃棄物のほぼ全量の水分が蒸発し、その後に流動媒体の熱で熱分解ガス化する。すなわち、熱分解ガスは周辺に大量の水蒸気に囲まれているので、蒸し焼きのような状態であり、ミクロ的には流動媒体の温度より低い状況下にある。そのために、廃棄物乾燥・ガス生成主領域25は、最もダイオキシン類及びその前駆体を発生させる領域でもあった。従来、該領域のダイオキシン類及びその前駆体発生源に空気を集中供給する発想がなかったため、ここで発生したダイオキシン類及びその前駆体が、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26となって、フリーボード11へ上昇する。フリーボード11では二次空気供給口12から供給される二次空気により未燃ガス及びチャーを燃焼させる。しかし未燃ガス及び低めの濃度で安定している一酸化炭素は簡単に燃焼するが、フリーボード空間は広く、ガスの混合・攪拌に限界があり、チャーは固形粒子のため完全に近くは燃焼しづらく、またダイオキシン類及びその前駆体は完全に近く分解・燃焼するには至らなかったのである。
そこで以上の、廃棄物乾燥・ガス生成主領域25の燃焼空気量は被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の5%という異常に低い酸素不足の領域となり熱反応速度は抑制されるがダイオキシン類及びその前駆体を多量に発生させること、及びフリーボード空間は広く、ガスの混合・攪拌に限界があり、チャーは固形粒子のため完全に近くは燃焼困難で、またダイオキシン類は完全に近く分解・燃焼するには至らないという従来技術の作用的問題点に鑑み、本発明では、狭い空間である前記流路の未燃ガス発生・上昇領域26に未燃ガス及びチャー、ダイオキシン類及びその前駆体を集中させ、そこに供給する空気量を、被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の40〜70%とし、この空気量と前記流動層部に供給する空気量の合計を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の100%以上とするように空気供給ノズル23から供給することによりダイオキシン類及びその前駆体を発生直後の濃縮した状態で拡散する前に十分な温度でダイオキシン類を完全に近く分解・燃焼することができることを見出した。
図3は図1のB―B断面図を示す。水平断面が円形の流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2の内部に矩形の耐火断熱材5を支える鉄皮3が設置され、設計上必要な厚さを持つ耐火断熱材5で流動層部の炉壁を構成し、不燃物排出シュート9を備えた散気ノズルを取り付けた炉床8で矩形の流動層部を形成する。なお、耐火断熱材5は耐火断熱材を支える鉄皮3側に断熱材、流動層部側を耐火材とする。流動層部の耐火断熱材5を矩形とするため、耐火断熱材5を支える鉄皮3の流動層部分は平板となるため耐火断熱材5を支える程度の補強は必要であるが、大きなフリーボード11の多大な重量を支える構造強度を受け持つ必要はないので軽度な補強で済ませることができる。また、この補強(図示せず)は、流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2から支えても良い。図3の弓形の部分は流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2と耐火断熱材を支える鉄皮3で囲まれる空間4である。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は矩形で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。前記フリーボード11は、前記流路との接続部近傍の矩形形状から上方に向かって円錐形状に広がる特殊な形状であるが、耐火断熱材5はキャスタブルと呼ばれる不定形物であり、セメントのように型枠内に流し込むため成型は容易である。以下の実施例も同様である。
図4は図1のC−C断面を示す。基本的には図1の説明と同じであり、図4は図3の不燃物排出シュート9と図1の流動媒体反転壁10の関係を示すための図である。不燃物排出シュート9は図中の矩形の点線で示す。図4では不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状は直線(a)、及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面形状は直線(b)とし、散気ノズルを取り付けた炉床8の他の2辺の水平面形状は直線(c)、及びその上部の流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状も直線(d)、すなわち散気ノズルを取り付けた炉床8で矩形の流動層部とした実施例である。以降の実施例では不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8及びその上部の流動媒体反転壁10に接しない他の辺の形状は直線と円弧の任意の形状をとられるが、以降全ての実施の形態において少なくとも不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状は直線(a)、及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面形状は直線(b)であり、不燃物排出シュート9とその上部の流動媒体反転壁10の位置関係は本図と同様である。
(第2の実施の形態)
図5は第2の実施の形態の断面図を示す。図1の第1の実施の形態で示したものと同一のものは同一の符号を使用し、その説明は省略する。図1の第1の実施の形態と異なる部分は、流動層部分の流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2と耐火断熱材を支える鉄皮3で囲まれる空間4を小さくするため、流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2の流動層部をフリーボード11部分の直径より小さく絞ったものである。なお、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23及びフリーボード二次空気供給口12の高さ方向の位置及び段数と個数は図1の第1の実施の形態と同様である。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は矩形で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
図6は図5のB−B断面図を示す。流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2の流動層部をフリーボード11部分の直径より小さく絞ることにより、該構造強度鉄皮2と耐火断熱材を支える鉄皮3で囲まれる空間4を小さくすることができるが、流動層部左右の不燃物排出シュート9の耐火断熱材を支える鉄皮3側の4箇所の角が耐火断熱材5を支える鉄皮3との距離が短縮され、必要な耐火断熱機能が損なわれる。わずかな角のために流動層式熱反応炉の構造強度鉄皮2の流動層部の直径を大きくすることは経済的ではないので、不燃物排出シュート9の4箇所の角をカットし、該角と耐火断熱材5を支える鉄皮3との距離をとって、耐火断熱材5の必要厚みをとれるようにしたものである。図2の断面と同様に廃棄物投入部19は緩慢流動層16の中心部であり、内部循環流方向は図5に示されるように不燃物排出シュート9の方向であり、大きな不燃物はほぼ廃棄物投入部19の幅に沿って不燃物排出シュート9の方向に向かうため、大きな不燃物は不燃物排出シュート9の該角には移動しない。そのために、不燃物排出シュート9の4箇所の角をカットし、排出幅を狭めても不燃物の排出機能に影響はない。弓形の部分の説明は図3と同様である。なお、前記4箇所の角に冷却パイプを設置して耐火断熱材5の必要厚みを小さくしても良い。
図7は図5の第2の実施の形態の他の実施例のA−A断面図を示す。図8は、図7のB−B断面図である。図7及び図8において、図5で示したものと同一のものは同一の符号で示し、その説明を省略する。図7において、図5との相違は、図7のB−B断面図を示す図8と共に説明する。図4で説明したと同様に、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面形状は直線であり、他の2辺の散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状は直線である。本実施例では、該炉床8から流動層上部へ向けて直線から円弧へと耐火断熱材5にて流動層傾斜部30を構成したものである。このことにより、図7及び図8に図示していないが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図5で示される流動媒体反転壁10を設置する辺のみとなり構造が簡素化される。なお、流動層傾斜部30の上部の流動層部で、近傍の散気ノズルからの空気による流動の影響を受けない部分は固定層となるため、層上部にはチャーが堆積して、チャーの発熱により流動媒体が表面溶融しアグロメレーションを形成することがある。この対策として、この実施例では、チャー堆積防止空気供給口31から空気を供給し、チャーを堆積させないようにする。チャー堆積防止空気供給口31からの空気の供給は連続でなくても良い。なお、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23及びフリーボード二次空気供給口12の高さ方向の位置及び段数と個数は図1と同様である。また、チャー堆積防止空気供給口31の個数も同様である。廃棄物投入シュート32は、各種廃棄物18が廃棄物投入部19に向けて落下するように耐火断熱材5にて形成される。不燃物排出シュート9の4箇所の角のカット又は冷却パイプの設置は図6と同様であり、以下の実施例でも共通である。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は流動媒体反転壁の辺のみ直線であり他の2辺は円弧であり、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
図9は図5及び図7の構成の他の実施例を示す。図10は、図9のB−B断面図である。図9及び図10において、図7及び図8で示したものと同一のものは同一の符号で示し、その説明を省略する。図7との相違は、図9のB−B断面図を示す図10で説明する。図4で説明したと同様に、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面形状は直線であり、他の2辺の散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面の形状は図中点線で記した直線とする。このことにより、図9及び図10に図示していないが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図5で示される流動媒体反転壁10を設置する辺のみとなり構造が更に簡素化され、耐火断熱材5の形状がシンプルとなる。一方、前記弓形炉床の部分には散気ノズルを設置しないので固定層33となるので、図7及び図8と同様チャー堆積防止空気供給口31から空気を供給する。図7及び図8と同様チャー堆積防止空気供給口31からの空気の供給は連続でなくても良い。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は図8と同様直線と円弧の組み合わせで、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
図11は図10の他の実施例を示す。図11において、図10で示したものと同一のものは同一の符号で示し、その説明を省略する。本実施例では、図11に示すように、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面形状は直線であり、他の2辺の散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状は円弧としたものである。このことにより、図11に図示していんが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図5で示される流動媒体反転壁10の設置する辺のみとなり、構造が簡素化される。また該炉床8は全面流動層となるので図10のチャー堆積防止空気供給口31は不要であり、構造が最も簡素化される。また、炉床の構造が最もシンプルとなる。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は図10と同様直線と円弧の組み合わせで、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
(第3の実施の形態)
図12は第3の実施の形態の流動層式熱反応炉の断面図である。図12の第3の実施の形態は、図1の流動層部分の内部循環流を片側のみとした実施例を示す。本実施例は中小型炉用であり、流動層部分の内部循環流を片側半分とした以外の構造、機能は図1乃至図5の実施の形態と同様である。図12において、図1乃至図11で説明したものと同一のものは同一の符号で示し、その説明を省略する。この実施の形態では、散気ノズルを取り付けた炉床8は廃棄物投入口13の下部が最も高く、不燃物排出シュート9へ向かって傾斜している。本実施例では、廃棄物投入口13の高さ方向の位置を低くすることができるので、廃棄物供給系(図示せず)の高さレベルが低くなり、建屋の高さが低くなり、建設コストが安くなる。また、廃棄物は雑多なものがお互いに絡み合っているので、ある重量を持つ塊にならないと炉内に落下しない。通常この状況を“ドカ落ち”と表現しており特に中小型炉では燃焼が不安定になる。廃棄物投入口13の高さ方向の位置を運転中の流動層平均表面27の層上部に配置することにより、流動媒体反転壁10で反転し廃棄物投入口13へ津波のように覆う流動媒体によって、廃棄物投入口13から炉内へ押し出された廃棄物を連続的に掻き落とすことができるので、廃棄物の均一定量供給ができ中小型炉でもガス化・燃焼が安定する。図12では緩慢流動層用の空気室14及び活発流動層用の空気室15は各々1室としているが、これに限定されるものではない。また、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23及びフリーボード二次空気供給口12の高さ方向の位置及び段数と個数は図1と同様であるが、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23の水平方向の位置は図1と異なる。
図13は図12のB−B断面図を示す。散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状は、不燃物排出シュート9及びその上部の流動媒体反転壁10の対面にある廃棄物投入口13の辺を円弧とし、他の3辺を直線としたものである。廃棄物投入口13の辺の弓形炉床の部分は有効な流動層として活用できるので、緩慢流動層を構成しチャー堆積防止空気供給口31は不要である。ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けての空気供給ノズル23は、廃棄物投入口13の左右からダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26へ向けて設置される。この理由は、これまでの説明のようにチャーや未燃ガス及びダイオキシン類を集中させた状態のまま直ちに燃焼させるために、流動層部分の内部循環流を片側のみとした実施例では、図1のような流動媒体反転壁10を構成する炉内側に突き出ている側壁に設置するより、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域26に近く設置できるからである。
なお、ダイオキシン類を多く含む未燃ガス上昇領域へ向けての空気供給ノズル23の段数は1段で、水平方向の個数は6個で記してあるが、その段数、個数は炉の大きさなどで任意に設計される。以降の実施例も同様である。フリーボード二次空気供給口12も同様である。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は廃棄物投入口13の辺のみ円弧であり他の辺は直線で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
又、図13において、図示していないが廃棄物投入口13の辺の該炉床8の水平面形状を直線とし、流動層上部へ向けて直線から円弧へと耐火断熱材5で流動層傾斜部30を形成することもできる。この場合、流動層傾斜部30の上部の流動層部で、近傍の散気ノズルからの空気による流動の影響を受けない部分は固定層となるが、流動媒体反転壁10から流動媒体が津波のように覆ってくるため流動媒体は常に動いており、チャー堆積防止空気供給口31は不要である。
図14は図13の断面構成の他の実施例を示す。図14において、図13で示したものは同一の符号で示し、その説明は省略する。図14に示すように、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面は直線とし、不燃物排出シュート9と廃棄物投入口13に接しない該炉床8の他の2辺の水平面形状は直線であるが、流動層上部へ向けて直線から円弧へと耐火断熱材5で流動層傾斜部30を形成し、不燃物排出シュート9の対面の廃棄物投入口13に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状を円弧とする炉構造としたものである。このことにより、図14に図示していないが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図12で示される流動媒体反転壁10を設置する辺のみとなり構造が簡素化される。なお、廃棄物投入口13に接する弓形炉床の部分は図13と同様有効な流動層として活用できるので、緩慢流動層を構成しチャー堆積防止空気供給口31は不要である。流動層部傾斜耐火材30を設ける2辺は図8で説明したものと同様チャー堆積防止空気供給口31を設置する。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は流動媒体反転壁の辺のみ直線であり他の辺は円弧(優弧)で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
図15は図14の断面構成の他の実施例を示す。図15において、図13及び図14で示したものは同一の符号で示し、その説明は省略する。図15に示すように、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面は直線とし、不燃物排出シュート9と廃棄物投入口13に接しない他の2辺の散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状を直線とし、不燃物排出シュート9の対面の廃棄物投入口13に接する該炉床8の水平面形状を円弧とする炉構造としたものである。流動層を形成する散気ノズルを取り付けた炉床8は図15の点線で記した直線と不燃物排出シュート9に接する直線と廃棄物投入口13の辺の円弧で囲まれたドーム形であり、半弓形の散気ノズルを取り付けない炉床は固定層33となる。このことにより、図14と同様に図15に図示していないが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図12で示される流動媒体反転壁10を設置する辺のみとなり構造が簡素化される。なお、前記半弓形炉床の部分には散気ノズルを設置しないので固定層となるので、図14同様チャー堆積防止空気供給口31から空気を供給する。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は流動媒体反転壁の辺のみ直線であり他は円弧(優弧)で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
図16は図15の断面構成の他の実施例を示す。図16において、図13乃至図15で示したものは同一の符号で示し、その説明は省略する。図16に示すように、不燃物排出シュート9に接する散気ノズルを取り付けた炉床8の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁10の水平断面は直線とし、他の該炉床8の水平面形状を円弧(優弧)としたものである。このことにより、図14と同様に図16に図示していないが、耐火断熱材を支える鉄皮3は、図12で示される流動媒体反転壁10を設置する辺のみとなり、また該炉床8は全面流動層となるので図15のチャー堆積防止空気供給口31は不要であり、構造が最も簡素化される。また、炉床の構造が最もシンプルとなる。なお、流動層部と上方のフリーボード11をつなぐ流路の断面βの水平断面形状は流動媒体反転壁の辺のみ直線であり他の辺は円弧(優弧)で、フリーボード11の断面γの水平断面形状は円形である。
従来の流動層式廃棄物焼却炉の構造には、炉の水平断面が円形のものと、矩形のものがある。円形構造のバブリング型は内部循環流が無いため緩慢な流動層を形成することができず流動層温度を下げることが困難であること、また炉床全体が活発流動層であるためガス化・燃焼反応が速く燃焼が不安定で一酸化炭素の抑制が困難であり、炉出口のダイオキシン類濃度は高い。また、不燃物の排出能力に劣るが、円形構造は、構造強度及び炉内圧力の変動に対して構造上有利であるため、強度補強部材が不要のため安価である。矩形構造で、緩慢流動層と活発流動層の間で流動媒体の内部循環流を生じさせる公知の内部循環型流動層炉では、廃棄物投入部が流動層温度の低い緩慢流動層でガス化・燃焼反応が遅いためガス化・燃焼が安定で一酸化炭素の抑制が可能であるが、炉出口のダイオキシン類濃度は高い。また、不燃物の排出能力に勝るが、矩形構造は平板のため、構造強度及び炉内圧力の変動に対して構造上不利であるため、強度補強部材が必要のため高価となる。円形構造で、緩慢流動層と活発流動層の間で流動媒体の内部循環流を生じさせる内部循環型流動層炉では、燃焼がバブリング式よりも安定で一酸化炭素の抑制がある程度可能であり、イニシャルコストは低いが炉出口のダイオキシン類濃度は高く、不燃物の排出能力に劣る。
また、従来の流動層式熱反応炉では、まず投入された廃棄物は投入場所近傍の流動層部で該廃棄物のほぼ全量の水分が蒸発し、その後に流動媒体の熱で熱分解ガス化する。すなわち、熱分解ガスは周辺に大量の水蒸気に囲まれているので、蒸し焼きのような状態であり、ミクロ的には流動媒体の温度より低い状況下にあると考えられる。そのために、廃棄物乾燥・ガス生成主領域は、最もダイオキシン類及びその前駆体を発生させる領域でもあった。これまで、該領域のダイオキシン類及びその前駆体発生源に空気を集中供給する発想がなかったため、ここで発生したダイオキシン類及びその前駆体が、ダイオキシン類及びその前駆体を多く含む未燃ガスとなって、フリーボードへ上昇する。フリーボードでは二次空気供給口から供給される二次空気により未燃ガス及びチャーを燃焼させる。しかし未燃ガス及び低めの濃度で安定している一酸化炭素は簡単に燃焼するが、フリーボード空間は広く、ガスの混合・攪拌に限界があり、チャーは固形粒子のため完全に近くは燃焼しづらく、またダイオキシン類及びその前駆体は完全に近く分解・燃焼するには至らなかった。
本発明の効果は、流動層式熱反応炉の強度構造を受け持つ容器は水平断面を円形として強度上かつ熱損出上有利な円筒形状の長所を活かしつつ、流動層部の炉床の少なくとも不燃物排出口に接する炉床の水平面形状及びその上部の流動媒体反転壁の水平断面形状を直線とする炉構造とすることにより、内部循環流の流れ方向を流動媒体反転壁の直角方向として流動層は矩形の内部循環流の長所を継承し、廃棄物の緩慢なガス化・燃焼を得る。そこでダイオキシン類の発生領域を絞り込み、該部分にダイオキシン類分解用燃焼空気量と前記流動層部に供給する空気量の合計を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の100%以上とし、ダイオキシン類の発生直後の拡散されていない濃度の高い状態の場所に向けて十分な酸素量と高温でダイオキシン類及びその前駆体を高効率に分解・燃焼する。結果として施設の建設費、維持管理費が低減できる。
なお、流動層式熱反応炉の強度構造鉄皮の水平断面と流動層の炉床の水平面の形状を異なる形状とした事例は見当たらない。また、廃棄物投入部の上部に二次空気供給ノズルを設置した特許文献は存在するが、あくまでも通常の二次空気を意図しているものであり、本発明のようにダイオキシン類及びその前駆体の発生領域を絞り込み、該部分に二次空気ではなくダイオキシン類分解用燃焼空気を、被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の40〜70%の空気量とし、この空気量と前記流動層部に供給する空気量の合計を被燃焼物全体に対する理論燃焼空気量の100%以上とし、ダイオキシン類及びその前駆体の発生直後の拡散されていない濃度の高い状態の場所に向けて十分な酸素量と高温でダイオキシン類及びその前駆体を高効率に分解・燃焼する思想ではない。本発明のその他の効果又は利点は、以下の通りである。
(1)流動層式熱反応炉の構造強度を受け持つ容器は水平断面が円形であり、形状は円筒型となる。流動層部の散気ノズルを取り付けた炉床の水平面形状は少なくとも不燃物排出口側を直線とする炉構造であるため、耐火断熱材を支える鉄皮の流動層部分は平板となる場合もあるが、大きなフリーボードの多大な重量を支える構造強度を受け持つ必要はないので軽度な補強で済ませることができる。
(2)容器の形状を円筒型とすることは構造強度上の理想であり、構造強度をもたせるための補強、及び炉内圧の変動を受けさせるための補強は不要であり、部材が少なくかつ製作に手間がかかないので安価となる。また、小型炉の場合は工場完成品として現地へ輸送でき、大型炉の場合には現地組み立て作業も容易で、短期間で組み立てができるので、工程を短縮することができる。工程の短縮は建設コストの低減に効果がある。
(3)排ガスを完全燃焼させる空間であるフリーボードは、十分な排ガスの滞留時間を持たせるため大きな構造物となり、そこで使用される耐火断熱材は大量のものとなるが、円筒型の方が耐火断熱材の量を少なくでき、イニシャルコスト、耐火断熱材の打ち替えコストも安価になる。
(4)ダイオキシン分解に関して、従来のガス化溶融システムと同等の性能でありながら、従来の焼却炉並み以下の省エネ、コンパクト化が実現した。
(5)流動層直上でダイオキシン類及びその前駆体が低減され、かつその直後でフリーボードの水平断面が大きく広がる前に二次空気が全量供給されるため、未燃ガスやチャーとの接触効率が良く、多くの空気を必要としないので、空気比が低くなりNOXも低くなる。そのためフリーボードの容積は従来より小さくすることができる。
(6)炉出口のダイオキシン類濃度が低く、かつチャー及びダイオキシン前駆体濃度も低いのでダイオキシン類を再合成させる廃熱ボイラなどの出口のダイオキシン類濃度が低く、後段のバグフイルターでのダイオキシン類吸着活性炭の使用量が低減でき、維持管理費は大幅に低減できる。
(7)炉出口のダイオキシン類濃度が低く、かつチャー及びダイオキシン前駆体濃度も低いのでダイオキシン類を再合成させる廃熱ボイラなどの出口のダイオキシン類濃度も低く、後段のダイオキシン類分解触媒装置の触媒が不要になる。あるいは触媒の寿命が長くなり早期交換が不要になり、維持管理費は大幅に低減できる。
(8)炉出口のダイオキシン類濃度が低く、かつチャー及びダイオキシン前駆体濃度も低いのでダイオキシン類を再合成させる廃熱ボイラなどの出口のダイオキシン類濃度も低く、後段のバグフイルターで捕集される飛灰中のダイオキシン類濃度も低減でき、飛灰中のダイオキシン類濃度を低減できるので、捕集灰の処理が容易になる。
(9)流動層内燃焼から層上燃焼、そしてフリーボード燃焼という3段燃焼により、従来の2段燃焼よりもNOXを低減できる。
(10)少なくとも前記不燃物排出シュートに接する前記炉床の水平面形状及びその上部の前記流動媒体反転壁の水平断面形状は直線として前記内部循環流の流れ方向を前記流動媒体反転壁の直角方向としたことで、流動媒体が常に一定量横方向に動かせ、流動媒体が廃棄物を横方向に滞留無く一定量を搬送することができ、廃棄物を層内で拡散でき、また、不燃物の排出量も滞留無く一定で最小限の量とすることができるので、従来の円筒炉ではできなかった良好な流動媒体の循環流と不燃物の排出に伴う熱損失の低減ができ、従来の矩形炉でできなかったフリーボードにおける燃焼ムラや熱損失について対応できるようになった。