JP2014040628A - 熱間プレス用鋼板および表面処理鋼板とそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.001〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001〜1.0%、Ti:0.050〜0.40%およびN:0.01%以下を含有しり化学組成と、フェライトの平均粒径が7.0μm以下で、未再結晶フェライトを含まない鋼組織とを有する熱間プレス用鋼板ならびにこの鋼板にめっきを施した熱間プレス用表面処理鋼板。上記組成の冷延鋼板にAc3点以上950℃以下の温度域に5秒間以上300秒間以下保持する再結晶焼鈍を施すことにより製造される。
【選択図】 なし
Description
(1)質量%で、C:0.10%以上0.40%以下、Si:0.001%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下、Ti:0.050%以上0.40%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライトの平均粒径が7.0μm以下で、未再結晶フェライトを含まない鋼組織であることを特徴とする熱間プレス用鋼板。
(A)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼材を1100℃以上1300℃以下として熱間圧延を施し、800℃以上1000℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に、酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板とする酸洗・冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac3点以上950℃以下の温度域に5秒間以上300秒間以下保持することにより再結晶焼鈍を施す連続焼鈍工程。
(C:0.10%以上0.40%以下)
Cは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の熱間プレス鋼材の強度を主に決定する、非常に重要な元素である。C含有量が0.10%未満では焼入れ後の強度で900MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.10%以上とする。一方、C含有量が0.40%超では、衝撃特性の劣化が顕著となる。したがって、C含有量は0.40%以下とする。なお、熱間プレス鋼材の量産においては、その機械特性のばらつきを抑制することが好ましく、歩留まりを低減する観点からは、C含有量を0.29%以下とすることが好ましい。さらに、熱間プレス用鋼板の引張強度を低くすることは、生産性の向上に寄与するので、C含有量を0.25%以下とすることが好ましい。
Siは、延性を劣化させることなく、あるいは、延性を向上させて、焼入れ後の熱間プレス鋼材の強度を高める作用を有する元素である。Si含有量が0.001%未満では上記作用を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.001%以上とする。なお、Si含有量を0.05%以上にすると、延性がさらに向上する。したがって、Si含有量は0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が2.0%超では、上記作用による効果は飽和して経済的に不利となるうえに、表面性状の劣化が著しくなる。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の熱間プレス鋼材の強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。Mn含有量が1.0%未満では、その効果が十分でないだけでなく、焼入れ後の強度で900MPa以上の引張強度を確保することが非常に困難となる。したがって、Mn含有量は1.0%以上とする。なお、Mn含有量を1.6%以上にすると、焼入れ後の強度で980MPa以上の引張強度を確保することが容易となる。このため、Mn含有量は1.6%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が3.0%超では、組織が不均一となり、衝撃特性の劣化が顕著となる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。なお、熱間プレス用鋼板の引張強度を低くすることは、生産性の向上に寄与するので、Mn含有量を2.4%以下とすることが好ましい。
Pは、一般には鋼に不純物として含有されるが、固溶強化により強度を高める作用を有するので、積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.05%超では溶接性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。P含有量は好ましくは0.02%以下である。上記作用をより確実に得るには、P含有量を0.003%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼に不純物として含有され、溶接性の観点からは低いほど好ましい。S含有量が0.01%超では、溶接性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.01%以下とする。S含有量は好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.0015%以下である。
Alは、鋼を脱酸して鋼材を健全化する作用を有する元素であり、また、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させる作用を有する元素でもある。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.015%以上である。一方、sol.Al含有量が1.0%超では、溶接性の低下が著しくなるとともに、酸化物系介在物が増加して表面性状の劣化が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は1.0%以下とする。好ましくは0.080%以下である。
Tiは、本発明において重要な元素であり、鋼中に炭化物、窒化物、または炭窒化物である微細な析出物を形成し、熱間プレス鋼材の鋼組織を微細化することが可能となり、その延性を著しく向上させる。さらに、後述するように、熱間プレス用鋼板の鋼組織を適正化することによって、900MPa以上の引張強度を有しながら優れた延性と衝撃特性とを有する熱間プレス鋼材を得ることを可能にする。Ti含有量が0.050%未満では、熱間プレス鋼材の組織が微細にならず、その延性を向上させることができない。したがって、Ti含有量は0.050%以上とする。好ましくは、0.070%以上である。一方、Ti含有量が0.40%超では、鋳造時および熱間圧延時に粗大な炭窒化物が形成されてしまい、低温靭性の劣化が顕著となる。したがって、Ti含有量は0.40%以下とする。好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。
Nは、鋼に不純物として含有され、溶接性の観点からは低いほど好ましい。N含有量が0.01%超では溶接性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
これらの元素は、いずれも鋼の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後の熱間プレス鋼材の強度を安定して確保するために効果のある元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、NbおよびVについては、それぞれ0.4%を超えて含有させると、熱間圧延および冷間圧延が困難になるだけでなく、熱間プレス鋼材の鋼組織が不均一になりやすくなり、衝撃特性の劣化が顕著となる。また、Cr、Mo、CuおよびNiについては、それぞれ1.0%を超えて含有させると、上記作用による効果は飽和して経済的に不利となるうえ、熱間圧延や冷間圧延が困難となる。したがって、各元素の含有量は上記のとおりとする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb:0.003%以上、V:0.003%以上、Cr:0.005%以上、Mo:0.005%以上、Cu:0.005%以上およびNi:0.005%以上の少なくとも一つを満足させることが好ましい。
これらの元素は、いずれも介在物制御、特に介在物の微細分散化に寄与し、低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、いずれも0.01%を超えて含有させると、表面性状の劣化が顕在化する場合がある。したがって、各元素の含有量はそれぞれ上記のとおりとする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の少なくとも一つの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Bは、低温靭性を高める作用を有する元素である。したがって、Bを含有させてもよい。しかし、0.01%を超える量でBを含有させると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。したがって、B含有量は0.01%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Biは、組織を均一にし、衝撃特性を高める作用を有する元素である。したがって、Biを含有させてもよい。しかし、0.01%を超える量でBiを含有させると、熱間加工性が劣化して、熱間圧延が困難になる。したがって、Bi含有量は0.01%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、フェライトの平均粒径が7.0μm以下であって、未再結晶フェライトを含まないという鋼組織を有する。
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、その片面または両面の表面に耐食性の向上等を目的としてめっき層を形成することによって、熱間プレス用表面処理鋼板として用いることもできる。形成するめっき層は、電気めっき層であってもよく、または溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき層および電気Zn−Ni合金めっき層等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融アルミニウムめっき層、溶融Zn−Al合金めっき層、溶融Zn−Al−Mg合金めっき層、および溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき層等が例示される。これらのめっき層の付着量(または厚み)および合金めっき層の場合の合金組成は、この種のめっき鋼板に一般に採用されているものでよい。めっき層は、所望により2層以上設けることもできる。
上記の特徴を有する本発明に係る熱間プレス用鋼板は、熱間圧延、酸洗および冷間圧延、焼鈍、およびめっき鋼板とする場合はめっきの各工程を経て製造される。次に好ましい製造条件について説明する。
上述した化学組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等の常法の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼材とするのが好ましい。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などを採用してもよい。この鋼材に熱間圧延を施して熱延鋼板とする。
熱間プレス鋼材においては、Ti等の微細析出物を分散させることによって、目的とする引張強度が確保されるとともに低温靭性の劣化が抑制される。したがって、熱間圧延に供する段階においてTi等を固溶状態とする必要がある。熱間圧延に供する鋼材の温度が1100℃未満では、Ti等を固溶状態とすることが困難な場合がある。したがって、熱間圧延に供する鋼材の温度は1100℃以上とする。一方、熱間圧延に供する鋼材の温度を1300℃超としても、Ti等を固溶状態とする効果が飽和するだけでなく、スケールロス増加による歩留まりの低下が著しくなる。したがって、熱延鋼板に供する鋼材の温度は1300℃以下とする。
圧延完了温度が800℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、操業が困難となる。したがって、圧延完了温度は800℃以上とする。一方、圧延完了温度が1000℃超では、粒界酸化が顕著となり、表面性状の劣化が著しくなる。したがって、圧延完了温度は1000℃以下とする。
巻取温度が400℃未満では、硬質なベイナイトやマルテンサイトが生成し、その後の冷間圧延が困難となる。したがって、巻取温度は400℃以上とする。好ましくは500℃以上である。一方、巻取温度が700℃超では、粒界酸化が顕著となり、表面性状の劣化が著しくなる。したがって、巻取温度は700℃以下とする。好ましくは680℃以下である。
熱間圧延工程で得られた熱延鋼板は、スケール除去のために常法により酸洗を施された後、冷間圧延に供され、冷延鋼板とされる。
本発明では、MnとTiを多量に含有させているため、加工フェライトの再結晶は著しく抑制される。したがって、熱間プレス用鋼板の鋼組織を微細、かつ均一にするためには、連続焼鈍工程における再結晶焼鈍条件の設定が極めて重要となる。したがって、以下のような連続焼鈍条件にて処理を行うことが、所望の鋼組織の熱間プレス用鋼板、さらに、目標とする機械特性の熱間プレス鋼材を得る観点から好ましい。
再結晶焼鈍温度がAc3点未満では、未再結晶フェライトが残存し、熱間プレス鋼材の延性と衝撃特性が著しく劣化する。したがって、再結晶焼鈍温度は、Ac3点以上とする。好ましくはAc3点+10℃以上である。一方、再結晶焼鈍温度が950℃超になると、焼鈍炉の損傷が顕在化するとともに、生産性が低下する。したがって、再結晶焼鈍温度は950℃以下とする。好ましくは900℃以下である。
鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施す場合には、焼鈍工程において焼鈍後の冷却を460℃以上550℃以下で停止し、焼鈍した鋼板を直ちに溶融めっき浴に浸漬して連続的にめっきを行うことが好ましい。この時の冷却停止温度が460℃未満であると、めっき浴浸入時の抜熱が大きくなり、めっき操業が困難になることがある。冷却停止温度が550℃超である場合にも、めっき操業が困難になることがある。
本発明に係る熱間プレス用鋼板を用いて熱間プレスする場合、熱間プレス条件には特に制限はないが、好ましい条件および操作は次の通りである。
1.熱間プレス用鋼板
表1に示す化学組成を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブとした。得られたスラブを、表2に示す条件(鋳片の再加熱温度および時間、圧延開始温度、完了温度および巻取温度)にて熱間圧延し、2.6mm厚の熱延鋼板を製板した。得られた熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延して、1.2mm厚の冷延鋼板を製板した。
各鋼板から、圧延方向に直角方向が長手方向となるようにJIS5号引張試験片を1個採取し、TS(引張強度)を測定した。
各鋼板の圧延方向および圧延方向に対して直角方向から試験片を採取し、圧延方向断面および圧延方向に対して直角方向断面の組織を電子顕微鏡で観察し、0.08mm2の領域を写真撮影し、画像解析により、フェライトの平均粒径と再結晶フェライトと未再結晶フェライトの面積率を調査した。未再結晶フェライトの面積率が0%である場合を未再結晶フェライト「無」、その面積率が0%超である場合を未再結晶フェライト「有」とした。
上記熱間プレス用鋼板を1.2t×100w×200L(mm)の寸法に切断し、720℃以上、Ac3点未満に10分間加熱し、熱間プレスを行った。熱間プレスは平板金型を用いて実施し、この金型に30秒間保持した後、鋼板を金型に接触させることにより冷却した。冷却速度は約60℃/秒であった。
各鋼材から、圧延方向に対して直角方向が長手方向となるようにJIS5号引張試験片を5個採取し、TS(引張強度)およびEL(全伸び)を測定した。表におけるTSとELはそれらの試験の平均値を示す。さらに、熱間プレスの量産性の指標とし、引張強度のばらつき(5回の試験におけるTS最大値とTS最小値の差)を評価した。引張強度のばらつきは、100MPa以下となる場合を「良好」、100MPa超の場合を「不良」とした。
1.2tの鋼材を4枚積層してねじ止めした後、Vノッチ試験片を作製し、シャルピー衝撃試験に供した。衝撃特性は、0℃での衝撃値が20J/cm2以上となる場合を「良好」とした。それに達しない場合を「不良」とした。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.10%以上0.40%以下、Si:0.001%以上2.0%以下、Mn:1.0%以上3.0%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下、Ti:0.050%以上0.40%以下およびN:0.01%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライトの平均粒径が7.0μm以下で、未再結晶フェライトを含まない鋼組織であることを特徴とする熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.4%以下、V:0.4%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.01%以下を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱間プレス用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.01%以下を含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱間プレス用鋼板。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱間プレス用鋼板の少なくとも片面の表面にめっき層を有することを特徴とする熱間プレス用表面処理鋼板。
- 下記工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする熱間プレス用鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼材を1100℃以上1300℃以下として熱間圧延を施し、800℃以上1000℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に、酸洗および冷間圧延を施して冷延鋼板とする酸洗・冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac3点以上950℃以下の温度域に5秒間以上300秒間以下保持することにより再結晶焼鈍を施す連続焼鈍工程。 - 請求項7に記載の製造方法により得られた熱間プレス用鋼板に、少なくとも片面の表面にめっき層を形成するめっき処理を施すことを特徴とする、熱間プレス用表面処理鋼板の製造方法。
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JP5835624B2 (ja) | 2015-12-24 |
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