JP2014037594A - 熱延鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.005〜0.3%、Si:0.02〜3.0%、Mn:0.7〜4.0%、P:0.20%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001〜1.0%、N:0.01%以下を含有する化学組成と、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置で40面積%以上のフェライトと第二相とからなり、D≦7.0および1.0≦D≦8/(100×C×Mn)0.22 (D:フェライトの平均粒径(μm)、CとMnはCとMnの質量%)を満足する鋼組織を有し、かつ板厚中心位置において、I{111}≧1.2およびI{111}−I{100}−I{211}≧−3.2 (I{111}、I{100}、I{211}はそれぞれ{111}、{100}、{211}方位のランダム試料に対する回折X線強度比)を満足するとともに、{211}<011>〜{100}<011>方位群のランダム試料に対する回折X線強度比の値の最大値が8.0以下である集合組織を有する。
【選択図】 なし
Description
自動車の骨格部材であるメンバ(サブフレーム)やリンフォース(補強部材)に適用される高強度鋼板では、延性のみならず、優れた穴広げ性が要求される。また、プレス成形においては種々の変形モードにおける加工性が要求されるため、機械特性の面内異方性の低減も求められる。
質量%で、C:0.005%以上0.3%以下、Si:0.02%以上3.0%以下、Mn:0.7%以上4.0%以下、P:0.20%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、40面積%以上のフェライトと第二相とからなるとともに、下記式(1)および(2)を満足する鋼組織を有し、かつ
板厚中心位置において、下記式(3)および(4)を満足するとともに、{211}<011>〜{100}<011>方位群の回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値の最大値が8.0以下である集合組織を有する、
ことを特徴とする熱延鋼板である:
D≦7.0 (1)
1.0≦D≦8/(100×C×Mn)0.22 (2)
I{111}≧1.2 (3)
I{111}−I{100}−I{211}≧−3.2 (4)
ここで、各記号の意味は次の通りである:
D:前記フェライトの平均粒径(μm)
C:前記化学組成におけるC含有量(質量%)、
Mn:前記化学組成におけるMn含有量(質量%)、
I{111}:{111}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{100}:{100}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{211}:{211}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値。
(1)Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択される1種または2種以上;
(2)Cr:2.0質量%以下、
(3)Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上。
C:0.005%以上0.3%以下
Cは、硬質な第二相を生成させて鋼の強度を高める作用を有する。C含有量が0.005%未満では上記作用による効果を十分に得ることが困難である。したがって、C含有量は0.005%以上とする。好ましくは0.007%以上である。一方、C含有量が0.3%超では、熱間圧延後のフェライト変態が著しく遅延し、第二相の面積率が過大となり、穴拡げ性や延性の低下が著しくなる。さらに、溶接性の劣化が顕著となる。したがって、C含有量は0.3%以下とする。好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは、0.20%以下である。
Siは、フェライト変態を促進するとともに、セメンタイト析出を抑制する作用を有するので、熱間圧延後の冷却過程において未変態オーステナイトへのC濃縮を促進し、冷却後の鋼組織における第二相の硬度を高め、鋼の強度を効率的に高めることを可能にする元素である。Si含有量が0.02%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Si含有量は0.02%以上とする。好ましくは0.04%以上である。一方、Si含有量が3.0%超では、熱間圧延工程における表面酸化により表面性状の劣化が著しくなる場合がある。したがって、Si含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
Mnは、焼入れ性を高める作用を有するので、冷却後の鋼組織における第二相の硬度を高め、鋼の強度を効率的に高めることを可能にする重要な元素である。また、固溶強化により鋼の強度を高める作用も有する。Mn含有量が0.7%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、Mn含有量は0.7%以上とする。好ましくは0.9%以上である。一方、Mn含有量が4.0%超では、熱間圧延後の冷却過程におけるフェライト変態が過度に遅延してしまい、第二相の面積率が過大となる場合がある。したがって、Mn含有量は4.0%以下とする。好ましくは、3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下である。
Pは、不純物として含有される元素であり、鋼板の加工性を低下させる作用を有する。このため、P含有量は0.20%以下とする。好ましくは、0.06%以下、さらに好ましくは0.03%以下、特に好ましくは0.015%以下である。
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼板の加工性を低下させる作用を有する。このため、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは、0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下、特に好ましくは0.001%以下である。
Alは、脱酸により鋼を健全化する作用を有する。sol.Al含有量が0.001%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.02%以上である。一方、sol.Al含有量を1.0%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、いたずらにコスト上昇を招く。したがって、sol.Al含有量は1.0%以下とする、好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下である。
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の加工性を低下させる作用を有する。このため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
Ti、Nb、V、MoおよびBは、炭化物または窒化物として鋼中に析出して鋼の強度を高める作用を有する。同時に、フェライトの粗大化を抑制して鋼組織を微細化する作用も有する。TiおよびNbについては、さらに、オーステナイトの粗大化を抑制して鋼組織をより一層微細化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させると、粗大な炭化物または窒化物により加工性が劣化する。TiおよびNbについては、さらに、再結晶温度の過度な高温化を招き、目的とする集合組織を得ることが困難となる。したがって、TiおよびNbの含有量はそれぞれ0.1%以下とする。それぞれ好ましくは0.06%以下、さらに好ましくは0.03%以下、特に好ましくは0.02%以下、最も好ましくは0.01%以下である。また、VおよびMoの含有量はそれぞれ0.5%以下とする。それぞれ好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.01%以下である。また、Bの含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.001%以下、特に好ましくは0.0005%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.001%以上、Nb:0.001%以上、V:0.01%以上、Mo:0.001%以上、およびB:0.0001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Crは、焼入性を高めることによりマルテンサイトを含有する第二相の生成を促進する作用を有する。したがって、Crを含有させてもよい。しかし、過剰に含有させると、熱間圧延後の冷却過程におけるフェライト変態が過度に遅延してしまい、第二相の面積率が過大となる場合がある。したがって、Cr含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.02%以上とすることが好ましい。
Ca、MgおよびREMは、溶鋼が凝固する過程において生成する酸化物や窒化物を微細化してスラブの健全性を保つ作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、これらの元素が高価であることからいたずらにコストの増加を招く。したがって、これらの元素の含有量はそれぞれ0.01%以下とする。これら元素の含有量は合計で0.005%以下とすることが好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素を0.0002%以上含有させることが好ましい。
本発明に係る熱延鋼板は、鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、40面積%以上のフェライトと第二相とからなるとともに、下記式(1)および(2)を満足する鋼組織を有する。
1.0≦D≦8/(100×C×Mn)0.22 (2)
ここで、各記号の意味は次の通りである:
D:前記フェライトの平均粒径(μm)、
C:前記化学組成におけるC含有量(質量%)
Mn:前記化学組成におけるMn含有量(質量%)
フェライト相は良好な延性を得るために必要である。したがって、フェライト相の面積率は40%以上とする。好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上である。一方、フェライト単相組織の場合には加工硬化率が低下する場合がある。したがって、フェライト相の面積率は97%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは95%以下である。
本発明においてフェライト粒の微細化は重要である。これにより、き裂の発生、進展および連結を抑制して、局部変形能を向上させる。さらに、第二相を微細分散させることにより、加工時の変形を一様化し、加工硬化率を向上させ、延性および穴拡げ性を向上させる。一方、過度の微細化は加工硬化率を低下させて延性を低下させる場合がある。このため、上記式(1)および(2)を満足するものとする。上記式(1)または(2)を満足しないと、良好な延性と穴拡げ性とを得ることが困難となる。なお、下記式(2−1)を満足することがさらに好ましい:
1.0≦D≦7/(100×C×Mn)0.22 (2−1)
本発明に係る熱延鋼板の鋼組織は、板厚中心位置において、下記式(3)および(4)を満足するとともに、{211}<011>〜{100}<011>方位群の回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値の最大値が8.0以下である集合組織を有する。
I{111}−I{100}−I{211}≧−3.2 (4)
ここで、各記号の意味は次の通りである:
I{111}:{111}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{100}:{100}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{211}:{211}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値。
板厚中心位置において{211}<011>〜{100}<011>方位の集合組織が発達すると、特に穴広げ性を低下させる。このため、これらの方位を低減させることにより、穴広げ性を向上させることができる。したがって、これらの方位のX線ランダム強度比の最大値を8.0以下とする。好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.0以下である。低ければ低いほど良いので下限は設けない。
板面方向の{111}が発達すると穴拡げ性が向上し、{100}および{211}が発達すると穴拡げ性が低下する。このため、{111}の発達を促進させ、{100}および{211}の発達を抑制することにより、穴拡げ性を向上させることができる。したがって、上記式(3)および(4)を満足するものとする。上記式(3)に関しては、下記式(3−1)を満足することが好ましく、下記式(3−2)を満足することがさらに好ましい。なお、I{111}は高ければ高いほど好ましいので、I{111}の上限は特に規定しない。また、上記式(4)に関しては、下記式(4−1)を満足することが好ましく、下記式(4−2)を満足することがさらに好ましく、下記式(4−3)を満足することが特に好ましい。なお、「I{111}−I{100}−I{211}」の値は高ければ高いほど好ましいので、「I{111}−I{100}−I{211}」の値の上限は特に規定しない。
I{111}≧1.6 (3−2)
I{111}−I{100}−I{211}≧−3.0 (4−1)
I{111}−I{100}−I{211}≧−2.8 (4−2)
I{111}−I{100}−I{211}≧−2.6 (4−3)
従来の制御冷却制御圧延法やTi、Nbなどを添加して組織の微細化を図る方法では、{100}や{211}が発達してしまい、一方で{111}の発達は抑制されていた。
本発明の熱延鋼板は、鋼組織および集合組織の制御により、優れた延性と穴広げ性を有する。しかし、鋼板の引張強度が小さいと、車体軽量化や剛性向上などの効果が小さい。そのため、鋼板の引張強度(TS)は370MPa以上であることが好ましい。TSはさらに好ましくは490MPa以上、特に好ましくは540MPaである。
上記鋼組織および上記集合組織を有する熱延鋼板の製造方法は特に規定しない。例えば、次に説明する方法を採用することができるが、上述した鋼組織および集合組織を有する熱延鋼板を製造できれば、他の方法により製造してもよい。
ここで、各記号の意味は次の通りである:
t:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間(秒)、
T:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了温度(℃)
こうして製造されうる本発明に係る熱延鋼板は、めっきを施してめっき鋼板としてもよい。めっきは電気めっきおよび溶融めっきのいずれでもよく、めっき種も特に制限はないが、一般的には亜鉛めっきと亜鉛合金めっきとを含む亜鉛系めっきである。めっき鋼板の例としては、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板などが例示される。めっき付着量は一般的な量でよい。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.005%以上0.3%以下、Si:0.02%以上3.0%以下、Mn:0.7%以上4.0%以下、P:0.20%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上1.0%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
鋼板表面から板厚の1/4の深さ位置において、40面積%以上のフェライトと第二相とからなるとともに、下記式(1)および(2)を満足する鋼組織を有し、かつ
板厚中心位置において、下記式(3)および(4)を満足するとともに、{211}<011>〜{100}<011>方位群の回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値の最大値が8.0以下である集合組織を有する、
ことを特徴とする熱延鋼板。
D≦7.0 (1)
1.0≦D≦8/(100×C×Mn)0.22 (2)
I{111}≧1.2 (3)
I{111}−I{100}−I{211}≧−3.2 (4)
ここで、各記号の意味は次の通りである:
D:前記フェライトの平均粒径(μm)
C:前記化学組成におけるC含有量(質量%)、
Mn:前記化学組成におけるMn含有量(質量%)、
I{111}:{111}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{100}:{100}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値、
I{211}:{211}回折X線強度のランダム試料の回折X線強度に対する比の値。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Cr:2.0質量%以下を含有する、請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱延鋼板。
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