JP2011214081A - 冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.06〜0.25%、Si:2.0%以下、Mn:1.5〜3.5%およびAl:2.0%以下を含有し、Si+Alの合計量が0.8〜3.0%である化学組成と、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、体積%でフェライト60%以上、残留オーステナイト3%以上を含有し、残部がベイナイトと10%以下のマルテンサイトとからなり、前記フェライトの平均粒径Dα(μm)が3.0μm以下、前記残留オーステナイトの平均粒径Dγ(μm)が1.0μm以下で、かつ下記式(2)および(3)を満足し、前記残留オーステナイトに占めるアスペクト比2以下の残留オーステナイト粒の体積割合が60%以上である鋼組織を有する冷延鋼板:
1.5≦Dα/Dγ≦12 ・・・ (2)
3≦Dα/Dγ×(Dα+Dγ)≦30 ・・・ (3)
【選択図】 なし
Description
特許文献4に開示された冷延鋼板の製造方法では、微細フェライト組織を得るために、フェライト再結晶温度をA3温度と等価にして焼鈍時のオーステナイト粒を微細にするものであり、そのためにTi、Nbを多量添加し(実施例ではTi+Nb≧0.04%)、それらの微細炭化物によるピン止め効果により再結晶を抑制し、さらにA3℃以上(A3+30)℃以下という非常に狭い温度範囲での焼鈍を必須としている。それゆえ、Ti、Nb炭化物の不均一分布による鋼板組織のばらつきや、製造時の焼鈍温度変動による機械特性の著しい変動が危惧され、材質安定性の面で問題がある。また、焼鈍を二工程で行うために生産性およびコストの両面で問題がある。
(A)熱間圧延直後の急速冷却によりフェライト組織を微細粒化した熱延鋼板を母材として、冷延および焼鈍した場合、フェライト核生成サイトが飛躍的に増大するため、微細フェライト組織を得ることができる。また、急速冷却により得られる熱延鋼板中の微細フェライト組織は、等軸かつフェライト粒内の転位密度が低いため、冷間圧延により導入・蓄積される転位の分布が均一となり、焼鈍後の組織が微細かつ均一となる。一方、低温強加工や連続再結晶によりフェライトを微細化した熱延鋼板を母材とした場合、フェライト中の転位は、密度が高く、分布が不均一となるため、冷間圧延および焼鈍を施した場合に、高転位密度部でフェライトの著しい粗大化が生じてしまい、不均一な混粒組織となる。
化学組成:質量%で、C:0.06%以上、0.25%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.5%以上、3.5%以下およびAl:2.0%以下を含有するとともに、下記式(1)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる;
鋼組織:鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、体積%でフェライト:60%以上および残留オーステナイト:3%以上を含有し、残部がベイナイトと10%以下のマルテンサイトとからなるとともに、前記フェライトの平均粒径Dα(μm)が3.0μm以下、前記残留オーステナイトの平均粒径Dγ(μm)が1.0μm以下であって、かつ下記式(2)および(3)を満足し、さらに前記残留オーステナイトに占めるアスペクト比が2以下の残留オーステナイト粒の体積割合が60%以上である;
0.8≦Si+Al≦3.0 ・・・ (1)
1.5≦Dα/Dγ≦12 ・・・ (2)
3≦Dα/Dγ×(Dα+Dγ)≦30 ・・・ (3)
式(1)中のSiおよびAlは、化学組成における各元素の含有量(質量%)を意味する。
Ti+Nb≦0.02 ・・・ (4)
上記式中のTiおよびNbは、化学組成における各元素の含有量(質量%)を意味する。
本発明において、「フェライトの平均粒径Dα」は、鋼板を圧延方向に切断した板厚断面における鋼板表面から板厚の1/4深さ位置を観察し、切片法により求めたフェライト粒径を1.128倍した値である。
(A)上記化学組成を有するスラブを熱間圧延して(Ar3点+30℃)以上の温度で熱間圧延を完了した後、熱間圧延完了から750℃までの冷却時間を0.4秒間以内かつ冷却停止温度を600℃以上750℃以下の温度域とする水冷却を施し、前記温度域に1秒間以上保持した後、前記水冷却の停止後30秒間以内に650℃以下の温度域で巻き取ることによって熱延鋼板を得る熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板を40%以上90%以下の圧下率で冷間圧延することによって冷延鋼板を得る冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板を700℃以上950℃以下かつオーステナイト相の体積割合が30%以上80%以下となる温度域に加熱し、前記温度域に10秒間以上600秒間以下保持した後、650℃から500℃までの平均冷却速度を5℃/秒以上200℃/秒以下として500℃まで冷却し、300℃以上500℃以下の温度域に30秒間以上保持する、連続焼鈍工程。
C:0.06%以上、0.25%以下
Cは、オーステナイト中に濃化してオーステナイトを安定化する作用を有するので、オーステナイトを室温まで残留させるために必須の元素である。C含有量が0.06%未満では、残留オーステナイトが十分な量に達せず、所望の機械的特性が得られない場合がある。したがって、C含有量は0.06%以上とする。好ましくは0.10%以上である。一方、C含有量が0.25%を超えると、パーライト生成が促進されて、目的とする残留オーステナイトを確保することが困難になる場合がある。また、鋼板の溶接性が著しく劣化する。したがって、C含有量は0.25%以下とする。好ましくは0.20%以下である。
Siは、フェライトの生成を促進するとともにフェライトを固溶強化し、また、オーステナイトからのセメンタイトの析出を遅延させることにより、残留オーステナイトの生成を促進する重要な元素である。しかし、Siの過剰な添加は延性や溶接性の劣化を招くとともに、A3点の著しい上昇を招いて、安定した熱間圧延を困難にする場合がある。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。Si含有量は好ましくは0.5%以上、1.5%以下である。しかし、後述するAlとの合計含有量が確保されれば、Si含有量はより低くてもよい。
Mnは、本発明において重要な元素であり、冷間圧延後の二相域焼鈍時においてフェライトおよびオーステナイトの粒成長を抑制する作用を有し、これにより焼鈍後の鋼組織を微細化する。Mn含有量が1.5%未満では上記作用による効果が十分に得られない場合がある。したがって、Mn含有量は1.5%以上とする。好ましくは1.8%以上、より好ましくは1.9%以上である。一方、Mn含有量が3.5%超では、過度にオーステナイトが安定化されてしまい、焼鈍後においてフェライトの体積割合を60%以上とすることが困難になる場合がある。したがって、Mnの含有量は3.5%以下とする。好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.6%以下である。
Alは、溶鋼の脱酸剤であるとともに、Siと同様に、フェライトの生成を促進し、また、オーステナイトからのセメンタイトの析出を遅延させることにより、残留オーステナイトの生成を促進する重要な元素である。しかし、過剰な添加はSiと同様にA3点の著しい上昇を招いて安定した熱間圧延を困難にする場合がある。したがって、Al含有量は2.0%以下とする。Al含有量は好ましくは0.2%以上、1.5%以下である。しかし、次に述べるSiとの合計含有量が確保されれば、Al含有量はより低くてもよい。
残留オーステナイトの生成を促進するため、共通してその作用を有するSi+Alの合計含有量は0.8%以上とする。Si+Alの合計含有量が0.8%未満では残留オーステナイトの安定性や体積率が不十分となり、所望の機械的特性が得られない場合がある。この合計含有量は好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは1.2%以上、最も好ましくは1.5%以上である。一方、Si+Alの合計含有量が3.0%を超えると、鋼板の溶接性や表面性状を著しく劣化させる場合がある。したがって、Si+Alの合計含有量は3.0%以下とする。この合計含有量は好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.0%以下、最も好ましくは1.9%以下である。
TiおよびNbは、いずれも熱間圧延工程または冷間圧延後の連続焼鈍工程において微細炭化物を生成し、そのピン止め効果によって鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、TiおよびNbの1種または2種を含有させてもよい。しかし、TiおよびNbはフェライトの再結晶を抑制する作用を有するため、それらの合計含有量が0.02%を超えると焼鈍後の鋼組織に冷間圧延ままの加工組織が残存しやすくなり、鋼板の加工性を低下させる場合がある。したがってTiおよびNbの合計含有量は0.02%以下とする。TiおよびNbの上記効果を確実に発揮させるには、一方または両方を合計で0.002%以上含有させることが好ましい。
CaおよびZrは、いずれも介在物の形状を調整して冷間加工性を高める作用を有する。したがって、CaおよびZrの1種または2種を含有させてもよい。一方、Ca含有量が0.01%超、またはZr含有量が0.10%超であると、鋼中の介在物が過剰となり、却って加工性が低下する場合がある。したがって、これらの元素を含有させる場合、Ca含有量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下とし、Zr含有量は0.10%以下、好ましくは0.05%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ca含有量を好ましくは0.0002%以上、より好ましくは0.0005%以上とするか、Zr含有量を好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.01%以上とする。
S:Sは硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量を0.05%以下に抑えるのが望ましい。一段と優れた加工性を確保しようとの観点からは、S含有量を0.008%以下とすることがより好ましく、0.003%以下とすることがさらに一層好ましい。
(B)冷延鋼板の組織
本発明に係る冷延鋼板は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織にも特徴を有する。この位置は鋼板表面と鋼板の板厚中心との中間点であるので、この位置での鋼組織は鋼板の代表的な組織を示している。
3≦Dα/Dγ×(Dα+Dγ)≦30 ・・・ (3)
フェライトは炭素固溶量が小さいため、フェライトの割合を高めることによって、オーステナイト中の炭素量を増し、鋼組織に占める残留オーステナイトの体積割合を高めることができる。フェライトの体積割合が60%未満では、オーステナイト中への炭素濃化が不十分となり、十分な残留オーステナイト体積率を確保できない場合がある。したがって、フェライトの体積割合は60%以上とする。好ましくは70%以上である。フェライトの体積割合が高いほど残留オーステナイトの体積率を効率的に高めることができるので、フェライトの体積割合の上限は特に規定する必要はない。後述する残留オーステナイト以外の組織がすべてフェライトであることが理想的である。
(熱間圧延工程)
上記化学組成を有するスラブを熱間圧延して(Ar3点+30℃)以上の温度で熱間圧延を完了した後、熱間圧延完了から750℃までの冷却時間を0.4秒間以内、かつ冷却停止温度を750℃以下、600℃以上の温度域とする水冷却を施し、前記温度域に1秒間以上保持した後、前記水冷却の停止後30秒間以内に650℃以下の温度域で巻き取ることによって熱延鋼板とする。
熱間圧延の完了温度が(Ar3点+30℃)未満では、鋼板と圧延ロールとの接触によるロール抜熱によって熱間圧延中にフェライトが一部生成し、熱延鋼板に加工フェライト組織が残存する場合がある。このような熱延鋼板に冷間圧延および連続焼鈍を施すと、上記加工フェライト部で異常粒成長が生じてしまい、目的とする微細な鋼組織が得られない場合がある。したがって、熱間圧延の完了温度は(Ar3点+30℃)以上とする。熱間圧延の完了温度の上限は特に規定する必要はないが、ロール抜熱により通常は1100℃以下となる。
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板を40%以上、90%以下の圧下率で冷間圧延することによって冷延鋼板を得る。
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板を700℃以上、950℃以下かつオーステナイト相の体積割合が30%以上、80%以下となる温度域に加熱し、前記温度域に10秒間以上、600秒間以下保持した後、650℃から500℃までの平均冷却速度を5℃/秒以上、200℃/秒以下として500℃まで冷却し、300℃以上、500℃以下の温度域に30秒間以上保持する。
上記平均冷却速度が5℃/秒未満では、フェライトの粒成長が進行して鋼組織が粗大化するだけでなく、パーライトやセメンタイトが生成してしまい、所望の残留オーステナイト体積割合を確保できない場合がある。一方、上記平均冷却速度が200℃/秒超では、冷却ムラによる不均一な組織を生じ、材質安定性が低下する場合がある。良好な材質安定性が要求されるときは、上記平均冷却速度を80℃/秒以下とすることが好ましい。
上記温度域における保持時間が30秒間未満では、オーステナイトへの炭素濃化が不十分となり、マルテンサイトの生成が促進されることによって、目的とする残留オーステナイトの体積割合を確保できない場合がある。
冷延鋼板の鋼組織については、相および組織の特定、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置におけるフェライトの体積割合(Vα)および平均粒径(Dα)、残留オーステナイトの体積割合(Vγ)および平均粒径(Dγ)、全残留オーステナイトに占めるアスペクト比2以下である残留オーステナイトの体積割合(VγAR≦2)、ベイナイトおよびマルテンサイトの体積割合を求めた。
引張特性は各鋼板から圧延方向にJIS Z2201(1998)に記載の5号引張試験片を採取して常温で引張試験を行い、引張強度(TS)と全伸び(El)を測定した。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.06%以上0.25%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.5%以上3.5%以下およびAl:2.0%以下を含有するとともに、下記式(1)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成と、
鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、体積%で、フェライト:60%以上および残留オーステナイト:3%以上を含有し、残部がベイナイトと10%以下のマルテンサイトとからなるとともに、前記フェライトの平均粒径Dα(μm)が3.0μm以下、前記残留オーステナイトの平均粒径Dγ(μm)が1.0μm以下であって、かつ下記式(2)および(3)を満足し、さらに前記残留オーステナイトに占めるアスペクト比が2以下の残留オーステナイト粒の体積割合が60%以上である鋼組織と、
を有することを特徴とする冷延鋼板。
0.8≦Si+Al≦3.0 ・・・ (1)
1.5≦Dα/Dγ≦12 ・・・ (2)
3≦Dα/Dγ×(Dα+Dγ)≦30 ・・・ (3)
式(1)中のSiおよびAlは、化学組成における各元素の含有量(質量%)を意味する。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、TiおよびNbからなる群から選択される1種または2種を、下記式(4)を満足する範囲で含有する、請求項1に記載の冷延鋼板。
Ti+Nb≦0.02 ・・・ (4)
上記式中のTiおよびNbは、化学組成における各元素の含有量(質量%)を意味する。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下およびZr:0.10%以下からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1または2に記載の冷延鋼板。
- 下記工程(A)〜(C)を有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法:
(A)請求項1〜3のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延して(Ar3点+30℃)以上の温度で熱間圧延を完了した後、熱間圧延完了から750℃までの冷却時間を0.4秒間以内かつ冷却停止温度を600℃以上750℃以下の温度域とする水冷却を施し、前記温度域に1秒間以上保持した後、前記水冷却の停止後30秒間以内に650℃以下の温度域で巻き取ることによって熱延鋼板を得る熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板を40%以上90%以下の圧下率で冷間圧延することによって冷延鋼板を得る冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板を700℃以上950℃以下かつオーステナイト相の体積割合が30%以上80%以下となる温度域に加熱し、前記温度域に10秒間以上600秒間以下保持した後、650℃から500℃までの平均冷却速度を5℃/秒以上200℃/秒以下として500℃まで冷却し、300℃以上500℃以下の温度域に30秒間以上保持する、連続焼鈍工程。
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