JP6683292B2 - 鋼板及び鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)質量%で、
C:0.10%超0.55%未満、
Si:0.001%以上3.50%未満、
Mn:4.00%超9.00%未満、
sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.050%未満、
O:0.020%未満、
Cr:0%以上2.00%未満、
Mo:0%以上2.00%以下、
W:0%以上2.00%以下、
Cu:0%以上2.00%以下、
Ni:0%以上2.00%以下、
Ti:0%以上0.300%以下、
Nb:0%以上0.300%以下、
V:0%以上0.300%以下、
B:0%以上0.010%以下、
Ca:0%以上0.010%以下、
Mg:0%以上0.010%以下、
Zr:0%以上0.010%以下、
REM:0%以上0.010%以下、
Sb:0%以上0.050%以下、
Sn:0%以上0.050%以下、及び
Bi:0%以上0.050%以下
を含有し、残部が鉄および不純物からなり、
L断面において、表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相及び10%以上のフェライト相を含有し、
前記フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率が30%以上、70%以下であり、
前記オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγと前記フェライト相における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαが1.2以上であり、
前記フェライト相の平均転位密度が4×1012/m2以上である
ことを特徴とする鋼板。
(2)質量%で、
Cr:0.01%以上2.00%未満、
Mo:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
Ni:0.01%以上2.00%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の鋼板。
(3)質量%で、
Ti:0.005%以上0.300%以下、
Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
V:0.005%以上0.300%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の鋼板。
(4)質量%で、
B:0.0001%以上0.010%以下、
Ca:0.0001%以上0.010%以下、
Mg:0.0001%以上0.010%以下、
Zr:0.0001%以上0.010%以下、及び
REM:0.0001%以上0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板。
(5)質量%で、
Sb:0.0005%以上0.050%以下、
Sn:0.0005%以上0.050%以下、及び
Bi:0.0005%以上0.050%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板。
(6)前記金属組織が、面積率で、5%以上の焼き戻しマルテンサイト相をさらに含有し、マルテンサイト相は15%未満に制限される、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板。
(7)前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
(8)前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
(9)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の成分を有する鋼に熱間圧延を施して熱延鋼板とすること、
前記熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行い、その後、酸洗及び冷間圧延を施して冷延鋼板とすること、
前記冷間圧延における冷間圧延率を30%以上70%以下とすること、
前記冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満保持して焼鈍すること、及び
前記焼鈍後に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施すこと、並びに
前記焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で冷却し、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持すること
を特徴とする鋼板の製造方法。
(10)前記熱処理の温度と前記焼鈍の温度との差が、オーステナイト相分率の差に換算して15%以下相当であることを特徴とする、上記(9)に記載の鋼板の製造方法。
(11)前記熱間圧延が、750℃以上1000℃以下の温度での仕上圧延、及び300℃未満の温度での巻取りを含む、上記(9)または(10)に記載の鋼板の製造方法。
(12)前記焼鈍後に、溶融亜鉛めっき処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、上記(9)〜(11)のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
(13)前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、450℃以上620℃以下の温度域で前記溶融亜鉛めっきの合金化処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、上記(12)に記載の鋼板の製造方法。
本開示の鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各元素の含有量を表す「%」は特に断りがない限り質量%を意味する。
Cは、鋼の強度を高め、オーステナイトを確保するために、極めて重要な元素である。十分なオーステナイト量を得るためには、0.10%超のC含有量が必要となる。一方、Cを過剰に含有すると鋼板の溶接性を損なうので、C含有量の上限を0.55%未満とした。
Siは、セメンタイトの析出を抑制し、オーステナイトの残留を促進する作用を有する。また、Siは、金属組織が焼き戻しマルテンサイトを含む場合に焼き戻しマルテンサイトを強化し、組織を均一化し、加工性を改善するのに有効な元素である。上記効果を得るために、0.001%以上のSi含有量が必要となる。一方、Siを過剰に含有すると鋼板のめっき性や化成処理性を損なうので、Si含有量の上限値を3.50%未満とする。
Mnは、オーステナイトを安定化させ、焼入れ性を高める元素である。また、本開示の鋼板においては、Mnをオーステナイト中に濃化させ、オーステナイトをより安定化させる。室温でオーステナイトを安定化させるためには、4.00%超のMnが必要である。一方、鋼板がMnを過剰に含有すると溶接性、穴広げ性及び延性を損なうので、Mn含有量の上限を9.00%未満とした。
Alは、脱酸剤であり、0.001%以上含有させる必要がある。また、Alは、焼鈍時の二相温度域を広げるため、材質安定性を高める作用も有する。Alの含有量が多いほどその効果は大きくなるが、Alを過剰に含有させると、表面性状、塗装性、及び溶接性などの劣化を招くので、sol.Alの上限を3.00%未満とした。
Pは不純物であり、鋼板がPを過剰に含有すると靭性や溶接性を損なう。したがって、P含有量の上限を0.100%以下とする。P含有量の上限値は、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。本実施形態に係る鋼板はPを必要としないので、Pを実質的に含有しなくてもよく、P含有量の下限値は0%である。P含有量の下限値は0%超または0.001%以上でもよいが、P含有量は少ないほど好ましい。
Sは不純物であり、鋼板がSを過剰に含有すると、熱間圧延によって伸張したMnSが生成し、曲げ性及び穴広げ性などの成形性の劣化を招く。したがって、S含有量の上限を0.010%以下とする。S含有量の上限値は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はSを必要としないので、Sを実質的に含有しなくてもよく、S含有量の下限値は0%である。S含有量の下限値を0%超または0.001%以上としてもよいが、S含有量は少ないほど好ましい。
Nは不純物であり、鋼板が0.050%以上のNを含有すると靭性の劣化を招く。したがって、N含有量の上限を0.050%未満とする。N含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.006%以下である。本実施形態に係る鋼板はNを必要としないので、Nを実質的に含有しなくてもよく、N含有量の下限値は0%である。N含有量の下限値を0%超または0.005%以上としてもよいが、N含有量は少ないほど好ましい。
Oは不純物であり、鋼板が0.020%以上のOを含有すると延性の劣化を招く。したがって、O含有量の上限を0.020%未満とする。O含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はOを必要としないので、Oを実質的に含有しなくてもよく、O含有量の下限値は0%である。O含有量の下限値を0%超または0.001%以上としてもよいが、O含有量は少ないほど好ましい。
(Mo:0%以上2.00%以下)
(W:0%以上2.00%以下)
(Cu:0%以上2.00%以下)
(Ni:0%以上2.00%以下)
Cr、Mo、W、Cu、及びNiはそれぞれ、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、Cr、Mo、W、Cu、及びNiは、鋼板の強度を向上させる元素であるので、含有されてもよい。鋼板の強度向上効果を得るために、鋼板は、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれを0.01%以上含有してもよい。しかしながら、鋼板がこれらの元素を過剰に含有させると、熱延時の表面傷が生成しやすくなり、さらには、熱延鋼板の強度が高くなりすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。したがって、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれの含有量のうち、Crの含有量の上限値を2.00%未満とし、Mo、W、Cu、及びNiのそれぞれの含有量の上限値を2.00%以下とする。
(Nb:0%以上0.300%以下)
(V:0%以上0.300%以下)
Ti、Nb、及びVは、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかし、Ti、Nb、及びVは、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を生成する元素であるので、鋼板の強度向上に有効である。したがって、鋼板は、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有してもよい。鋼板の強度向上効果を得るためには、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を0.005%以上とすることが好ましい。一方で、これらの元素を過剰に含有させると、熱延鋼板の強度が上昇しすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。またNbについては、Nbの含有量を0.300%以下にすると、フェライト相の再結晶化の遅れを抑制することができ、所望の組織をより安定して得ることができる。したがって、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の上限値を0.300%以下とすることが好ましい。
(Ca:0%以上0.010%以下)
(Mg:0%以上0.010%以下)
(Zr:0%以上0.010%以下)
(REM:0%以上0.010%以下)
B、Ca、Mg、Zr、及びREM(希土類金属)は、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、B、Ca、Mg、Zr、及びREMは、鋼板の局部伸び及び穴広げ性を向上させる。この効果を得るためには、B、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの下限値を好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上とする。しかし、過剰量のこれら元素は、鋼板の加工性を劣化させるので、これら元素それぞれの含有量の上限を0.010%以下とし、B、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素の含有量の合計を0.030%以下とすることが好ましい。本明細書にいうREMとは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、REM含有量とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加してREM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
(Sn:0%以上0.050%以下)
(Bi:0%以上0.050%以下)
Sb、Sn、及びBiは、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、Sb、Sn、及びBiは、鋼板中のMn、Si、および/又はAl等の易酸化性元素が鋼板表面に拡散され酸化物を形成することを抑え、鋼板の表面性状やめっき性を高める。この効果を得るために、Sb、Sn、及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上とする。一方、これら元素それぞれの含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するので、これら元素それぞれの含有量の上限値を0.050%以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態に係る鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態に係る鋼板においては、金属組織中のオーステナイト相の量が所定範囲にあることが重要である。オーステナイトは、変態誘起塑性によって鋼板の延性を高める組織である。オーステナイトは、引張変形を伴う張出し加工、絞り加工、伸びフランジ加工、または曲げ加工によってマルテンサイトに変態し得るので、鋼板の強度の向上にも寄与する。これら効果を得るために、本実施形態に係る鋼板は、金属組織中に、面積率で10%以上のオーステナイト相を含有する必要がある。
フェライトは、延性を確保するうえで必須な組織である。金属組織中のフェライト相の面積率は10%以上、好ましくは15%以上である。フェライトの面積率の上限は特に規定しないが、実質的には85%未満である。
焼き戻しマルテンサイト相は硬質相であり、鋼板の強度を確保しつつ、穴広げ性の向上に寄与する。穴広げ性を向上しつつ強度を確保するために、焼き戻しマルテンサイト相の金属組織中の面積率は好ましくは5%以上である。鋼板の強度を重視する場合には、焼き戻しマルテンサイト相の面積率は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。焼き戻しマルテンサイト相の面積率の上限は規定しないが、実質的には80%未満である。金属組織にベイナイト相が含まれることがあるが、ベイナイト相は焼き戻しマルテンサイト相と同様の特徴を有するため、金属組織にベイナイト相が含まれる場合、焼き戻しマルテンサイト相の面積率は焼き戻しマルテンサイト相に加えてベイナイト相も含めて測定される。
マルテンサイト(フレッシュマルテンサイトともいう)相も、その組織中に転位を多く含む硬質相であるが、上記焼き戻しマルテンサイト相とは異なる組織であり、穴広げ性を劣化させ得るため、穴広げ性を確保するためにはマルテンサイト相の金属組織中の面積率を好ましくは15%未満とする。また、マルテンサイト相の金属組織中の面積率を15%未満にすることにより、局部伸びをより向上することができる。金属組織中にマルテンサイト相は含まれなくてもよい。すなわち、マルテンサイト相の金属組織中の面積率は0%でもよい。穴広げ性及び局部伸びを特に必要とする場合は、マルテンサイト相の面積率は10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。
熱間圧延において仕上圧延を行う。仕上圧延開始温度を好ましくは750℃以上1000℃以下とすることが好ましい。仕上圧延開始温度を750℃以上とすることにより、圧延時の変形抵抗を小さくし、組織制御を容易に行うことができる。一方、仕上圧延開始温度を1000℃以下にすることにより、熱延状態での組織の粗大化を防ぐことができ、その後の組織制御ができることに加え、粒界酸化による鋼板の表面性状の劣化を抑制することができる。仕上圧延を行った後冷却、巻取りを行う。巻取温度は、好ましくは300℃未満である。300℃未満で巻き取ることで、熱延板組織をフルマルテンサイト組織とすることができ、熱延鋼板の熱処理及び冷延鋼板の焼鈍工程において、それぞれ、Mn分配とオーステナイト逆変態とを効率的に起こすことが可能となる。すなわち、上記温度での仕上圧延及び上記温度での巻取りを行うことにより、マルテンサイト相の面積率を15%未満に制限しつつ、5%以上の面積率の焼き戻しマルテンサイト相を得ることができ、強度と穴広げ性に優れた鋼板を得ることができる。
得られた熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行う。鋼板のAc1超Ac3未満の二相域の温度範囲内のうち、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度範囲内で熱処理を行うことにより、オーステナイトにMnを分配して、オーステナイトを安定化させて、高い延性を得ることができる。オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度で熱処理を行うことによって、焼鈍後の鋼板のL断面における表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相を含むことができる。オーステナイト相の面積率が20%〜50%となる温度範囲は、鋼板の成分に応じて、オフラインの予備実験で室温から0.5℃/秒の加熱速度で加熱し、加熱中の体積変化から、オーステナイト相分率を測定することで求めることができる。熱処理の温度は、好ましくはオーステナイト相分率で25%〜40%となる温度域に含まれる温度である。熱処理の保持時間の下限は、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。熱処理の保持時間の上限は、好ましくは10時間以内、より好ましくは8時間以内である。
得られた冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満、好ましくは1分間以上5分間以下、保持して焼鈍を行う。上記熱延鋼板の熱処理ですでにMn分配を完了しており、熱処理中にオーステナイト相だった箇所にはMnが濃化しているので、この箇所は、短時間焼鈍でも、すぐにオーステナイト相になりやすく、安定したオーステナイトが得られ、短時間の焼鈍処理で優れた延性が得られる。一方、当該焼鈍においてオーステナイト相分率が20%未満となる温度で熱処理を行うとオーステナイトが十分に得られず、50%超となる温度で熱処理を行うとオーステナイト相からマルテンサイト相に変態しやすくなる。また、焼鈍時間が30秒間未満では、オーステナイトが十分に得られない。好ましくは、オーステナイト相分率が25%〜40%となる温度域で焼鈍する。
焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で100℃以上500℃以下の温度域まで冷却する。焼鈍後の平均冷却速度を2℃/秒以上とすることによって、粒界偏析を抑制し、曲げ性を向上することができる。一方、平均冷却速度を2000℃/秒以下とすることにより、冷却停止した後の鋼板温度分布が均一になるので、鋼板の平坦性を向上させることができる。
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブを得た。
表2及び表3の各例で得られた鋼板について、ミクロ組織観察、引張試験、伸び試験、及び穴広げ試験を実施して、フェライト相(α)、オーステナイト相(γ)、焼き戻しマルテンサイト相(T.M)、マルテンサイト相(F.M)、及び未再結晶フェライト(未結晶α)の面積率、CMnγ/CMnα、降伏点(YP)、引張強度(TS)、伸び(El)、穴広げ性(λ)、降伏伸び(YP−El)、降伏比(YR)、及びTS×Elを評価した。各評価の方法は次のとおりである。表4の各例で得られた鋼板について、表2及び表3の各例で得られた鋼板について行った試験及び評価に加えて、局所伸び試験を実施した。
降伏点(YP)及び降伏伸び(YP−El)は、JIS−Z2241に規定される方法により測定した。なお、降伏点は、降伏現象があるときは下降伏点を意味し、降伏現象がないときは0.2%耐力を意味する。
表2に示す条件で作製した鋼板についての評価結果を表5に示す。25000MPa・%以上のTS×El、2.5%未満のYP−El、及び0.68以上の降伏比(YR)を示す鋼板を、高降伏点、優れた伸び特性、小さい降伏伸び、及び高強度を有する鋼板として評価した。
Claims (13)
- 質量%で、
C:0.10%超0.55%未満、
Si:0.001%以上3.50%未満、
Mn:4.00%超9.00%未満、
sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.050%未満、
O:0.020%未満、
Cr:0%以上2.00%未満、
Mo:0%以上2.00%以下、
W:0%以上2.00%以下、
Cu:0%以上2.00%以下、
Ni:0%以上2.00%以下、
Ti:0%以上0.300%以下、
Nb:0%以上0.300%以下、
V:0%以上0.300%以下、
B:0%以上0.010%以下、
Ca:0%以上0.010%以下、
Mg:0%以上0.010%以下、
Zr:0%以上0.010%以下、
REM:0%以上0.010%以下、
Sb:0%以上0.050%以下、
Sn:0%以上0.050%以下、及び
Bi:0%以上0.050%以下
を含有し、残部が鉄および不純物からなり、
L断面において、表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相及び10%以上のフェライト相を含有し、
前記フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率が30%以上、70%以下であり、
前記オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγと前記フェライト相における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαが1.2以上であり、
前記フェライト相の平均転位密度が4×1012/m2以上であり、
降伏比が0.68以上、引張強度と伸びの積が25000MPa・%以上、降伏伸びが2.5%未満、引張強度が780MPa以上である
ことを特徴とする鋼板。 - 質量%で、
Cr:0.01%以上2.00%未満、
Mo:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
Ni:0.01%以上2.00%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。 - 質量%で、
Ti:0.005%以上0.300%以下、
Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
V:0.005%以上0.300%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼板。 - 質量%で、
B:0.0001%以上0.010%以下、
Ca:0.0001%以上0.010%以下、
Mg:0.0001%以上0.010%以下、
Zr:0.0001%以上0.010%以下、及び
REM:0.0001%以上0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板。 - 質量%で、
Sb:0.0005%以上0.050%以下、
Sn:0.0005%以上0.050%以下、及び
Bi:0.0005%以上0.050%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板。 - 前記金属組織が、面積率で、5%以上の焼き戻しマルテンサイト相をさらに含有し、マルテンサイト相は15%未満に制限される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板。
- 前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
- 前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成分を有する鋼に熱間圧延を施して熱延鋼板とすること、
前記熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行い、その後、酸洗及び冷間圧延を施して冷延鋼板とすること、
前記冷間圧延における冷間圧延率を30%以上70%以下とすること、
前記冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満保持して焼鈍すること、及び
前記焼鈍後に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施すこと、並びに
前記焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で冷却し、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持すること
を特徴とする鋼板の製造方法。 - 前記熱処理の温度と前記焼鈍の温度との差が、オーステナイト相分率の差に換算して15%以下相当であることを特徴とする、請求項9に記載の鋼板の製造方法。
- 前記熱間圧延が、750℃以上1000℃以下の温度での仕上圧延、及び300℃未満の温度での巻取りを含む、請求項9または10に記載の鋼板の製造方法。
- 請求項7に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、前記焼鈍後に、溶融亜鉛めっき処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の鋼板の製造方法。
- 請求項8に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、450℃以上620℃以下の温度域で前記溶融亜鉛めっきの合金化処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、請求項12に記載の鋼板の製造方法。
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