JP6683292B2 - 鋼板及び鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、含有Mn濃度の高い鋼板及びその製造方法に関係する。
自動車の車体及び部品等の、軽量化と衝突安全性との両方を達成するために、これらの素材である鋼板の高強度化が進められている。一般に、鋼板を高強度化すると、伸びが低下し、鋼板の成形性が損なわれる。したがって、自動車用の部材として高強度鋼板を使用するためには、相反する特性である強度と成形性との両方を高める必要がある。
伸びを向上させるために、これまでに、残留オーステナイト(残留γ)の変態誘起塑性を利用した、いわゆるTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼が提案されている(例えば、特許文献1)。
残留オーステナイトは、Cをオーステナイト中に濃化させることによって、オーステナイトが室温でも他の組織に変態しないようにすることによって得られる。オーステナイトを安定化させる技術として、Si及びAl等の炭化物析出抑制元素を鋼板に含有させて、鋼板の製造段階において鋼板に生じるベイナイト変態の間にオーステナイト中にCを濃化させることが提案されている。この技術では、鋼板に含有させるC含有量が多ければ、オーステナイトがさらに安定化し、残留オーステナイト量を増やすことができ、その結果、強度と伸び特性に優れた鋼板を造ることができる。しかしながら、鋼板が構造部材に使用される場合、鋼板に溶接が行われることが多いが、鋼板中のC含有量が多いと溶接性が悪くなるため、構造部材として使用することに制限がかかる。したがって、より少ないC含有量で、鋼板の成形性と強度との両方を向上することが望まれている。
また、残留オーステナイト量が上記TRIP鋼よりも多く、延性が上記TRIP鋼を超える鋼板として、3.5%以上のMnを添加した鋼(特許文献2)や、4.0%超のMnを添加した鋼(非特許文献1)が提案されている。上記鋼は多量のMnを含有するので、その使用部材に対する軽量化効果も顕著である。しかしながら、伸び特性を高め、衝突特性に最も影響する降伏点を向上しつつ、降伏伸び(YP−El)を抑制する要件は明らかでなかった。
特開平5−59429号公報 特開2013−76162号公報
古川敬、松村理、熱処理、日本国、日本熱処理協会、平成9年、第37号巻、第4号、p.204
したがって、高降伏点、優れた伸び特性、小さい降伏伸び、及び高強度を有する含有Mn濃度の高い鋼板が望まれている。
含有Mn濃度の高い鋼板において、高降伏点、優れた伸び特性、小さい降伏伸び、及び高強度を確保するために、本発明者らは、鋼板中に、面積率で、オーステナイト相を10%以上及びフェライト相を10%以上含ませ、フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率を30%以上、70%以下とし、オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγとフェライト相における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαを1.2以上にし、フェライト相の平均転位密度を4.0×1012/m2以上にすることが有効であると知見した。
本開示の鋼板及びその製造方法は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
本開示の要旨は、以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.10%超0.55%未満、
Si:0.001%以上3.50%未満、
Mn:4.00%超9.00%未満、
sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.050%未満、
O:0.020%未満、
Cr:0%以上2.00%未満、
Mo:0%以上2.00%以下、
W:0%以上2.00%以下、
Cu:0%以上2.00%以下、
Ni:0%以上2.00%以下、
Ti:0%以上0.300%以下、
Nb:0%以上0.300%以下、
V:0%以上0.300%以下、
B:0%以上0.010%以下、
Ca:0%以上0.010%以下、
Mg:0%以上0.010%以下、
Zr:0%以上0.010%以下、
REM:0%以上0.010%以下、
Sb:0%以上0.050%以下、
Sn:0%以上0.050%以下、及び
Bi:0%以上0.050%以下
を含有し、残部が鉄および不純物からなり、
L断面において、表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相及び10%以上のフェライト相を含有し、
前記フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率が30%以上、70%以下であり、
前記オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγと前記フェライト相における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαが1.2以上であり、
前記フェライト相の平均転位密度が4×1012/m2以上である
ことを特徴とする鋼板。
(2)質量%で、
Cr:0.01%以上2.00%未満、
Mo:0.01%以上2.00%以下、
W:0.01%以上2.00%以下、
Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
Ni:0.01%以上2.00%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の鋼板。
(3)質量%で、
Ti:0.005%以上0.300%以下、
Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
V:0.005%以上0.300%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の鋼板。
(4)質量%で、
B:0.0001%以上0.010%以下、
Ca:0.0001%以上0.010%以下、
Mg:0.0001%以上0.010%以下、
Zr:0.0001%以上0.010%以下、及び
REM:0.0001%以上0.010%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板。
(5)質量%で、
Sb:0.0005%以上0.050%以下、
Sn:0.0005%以上0.050%以下、及び
Bi:0.0005%以上0.050%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板。
(6)前記金属組織が、面積率で、5%以上の焼き戻しマルテンサイト相をさらに含有し、マルテンサイト相は15%未満に制限される、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板。
(7)前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
(8)前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板。
(9)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の成分を有する鋼に熱間圧延を施して熱延鋼板とすること、
前記熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行い、その後、酸洗及び冷間圧延を施して冷延鋼板とすること、
前記冷間圧延における冷間圧延率を30%以上70%以下とすること、
前記冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満保持して焼鈍すること、及び
前記焼鈍後に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施すこと、並びに
前記焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で冷却し、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持すること
を特徴とする鋼板の製造方法。
(10)前記熱処理の温度と前記焼鈍の温度との差が、オーステナイト相分率の差に換算して15%以下相当であることを特徴とする、上記(9)に記載の鋼板の製造方法。
(11)前記熱間圧延が、750℃以上1000℃以下の温度での仕上圧延、及び300℃未満の温度での巻取りを含む、上記(9)または(10)に記載の鋼板の製造方法。
(12)前記焼鈍後に、溶融亜鉛めっき処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、上記(9)〜(11)のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
(13)前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、450℃以上620℃以下の温度域で前記溶融亜鉛めっきの合金化処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、上記(12)に記載の鋼板の製造方法。
本開示によれば、高降伏点、優れた伸び特性、小さい降伏伸び、及び高強度を有する含有Mn濃度の高い鋼板を提供することができる。
図1は、鋼板の応力−ひずみ曲線である。 図2は、フェライト単相域及びフェライト/オーステナイト二相域で熱処理した鋼板のMnの分配状態を表すマッピング結果である。
以下、本開示の鋼板の一実施形態の例を説明する。
1.化学組成
本開示の鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。以下の説明において、各元素の含有量を表す「%」は特に断りがない限り質量%を意味する。
(C:0.10%超0.55%未満)
Cは、鋼の強度を高め、オーステナイトを確保するために、極めて重要な元素である。十分なオーステナイト量を得るためには、0.10%超のC含有量が必要となる。一方、Cを過剰に含有すると鋼板の溶接性を損なうので、C含有量の上限を0.55%未満とした。
C含有量の下限値は、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.20%以上である。C含有量の下限値を0.15%以上とすると、金属組織がマルテンサイト及び焼き戻しマルテンサイトを含む場合にマルテンサイト及び焼き戻しマルテンサイトの強度を効果的に高めることができる。C含有量の上限値は、好ましくは0.40%以下、より好ましくは0.35%以下であり、C含有量の上限値を上記範囲にすることによって、鋼板の靭性をより高めることができる。
(Si:0.001%以上3.50%未満)
Siは、セメンタイトの析出を抑制し、オーステナイトの残留を促進する作用を有する。また、Siは、金属組織が焼き戻しマルテンサイトを含む場合に焼き戻しマルテンサイトを強化し、組織を均一化し、加工性を改善するのに有効な元素である。上記効果を得るために、0.001%以上のSi含有量が必要となる。一方、Siを過剰に含有すると鋼板のめっき性や化成処理性を損なうので、Si含有量の上限値を3.50%未満とする。
Si含有量の下限値は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。Si含有量の下限値を上記範囲にすることによって、鋼板の伸び特性をさらに向上することができる。Si含有量の上限値は、好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.00%以下である。
(Mn:4.00%超9.00%未満)
Mnは、オーステナイトを安定化させ、焼入れ性を高める元素である。また、本開示の鋼板においては、Mnをオーステナイト中に濃化させ、オーステナイトをより安定化させる。室温でオーステナイトを安定化させるためには、4.00%超のMnが必要である。一方、鋼板がMnを過剰に含有すると溶接性、穴広げ性及び延性を損なうので、Mn含有量の上限を9.00%未満とした。
Mn含有量の下限値は、好ましくは4.20%超、より好ましくは4.50%以上、さらに好ましくは4.80%以上である。Mn含有量の上限値は、好ましくは8.50%以下、より好ましくは8.00%以下である。Mn含有量の下限値を上記範囲にすることで、安定なオーステナイト相の分率を増やすことができ、Mn含有量の上限値を上記範囲にすることで、靱性劣化をより抑制することができる。
(sol.Al:0.001%以上3.00%未満)
Alは、脱酸剤であり、0.001%以上含有させる必要がある。また、Alは、焼鈍時の二相温度域を広げるため、材質安定性を高める作用も有する。Alの含有量が多いほどその効果は大きくなるが、Alを過剰に含有させると、表面性状、塗装性、及び溶接性などの劣化を招くので、sol.Alの上限を3.00%未満とした。
sol.Al含有量の下限値は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.02%以上である。sol.Al含有量の上限値は、好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.00%以下である。sol.Al含有量の下限値及び上限値を上記範囲にすることによって、脱酸効果及び材質安定向上効果と、表面性状、塗装性、及び溶接性とのバランスがより良好になる。本明細書にいう「sol.Al」は、「酸可溶性Al」を意味する。
(P:0.100%以下)
Pは不純物であり、鋼板がPを過剰に含有すると靭性や溶接性を損なう。したがって、P含有量の上限を0.100%以下とする。P含有量の上限値は、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。本実施形態に係る鋼板はPを必要としないので、Pを実質的に含有しなくてもよく、P含有量の下限値は0%である。P含有量の下限値は0%超または0.001%以上でもよいが、P含有量は少ないほど好ましい。
(S:0.010%以下)
Sは不純物であり、鋼板がSを過剰に含有すると、熱間圧延によって伸張したMnSが生成し、曲げ性及び穴広げ性などの成形性の劣化を招く。したがって、S含有量の上限を0.010%以下とする。S含有量の上限値は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はSを必要としないので、Sを実質的に含有しなくてもよく、S含有量の下限値は0%である。S含有量の下限値を0%超または0.001%以上としてもよいが、S含有量は少ないほど好ましい。
(N:0.050%未満)
Nは不純物であり、鋼板が0.050%以上のNを含有すると靭性の劣化を招く。したがって、N含有量の上限を0.050%未満とする。N含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.006%以下である。本実施形態に係る鋼板はNを必要としないので、Nを実質的に含有しなくてもよく、N含有量の下限値は0%である。N含有量の下限値を0%超または0.005%以上としてもよいが、N含有量は少ないほど好ましい。
(O:0.020%未満)
Oは不純物であり、鋼板が0.020%以上のOを含有すると延性の劣化を招く。したがって、O含有量の上限を0.020%未満とする。O含有量の上限値は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。本実施形態に係る鋼板はOを必要としないので、Oを実質的に含有しなくてもよく、O含有量の下限値は0%である。O含有量の下限値を0%超または0.001%以上としてもよいが、O含有量は少ないほど好ましい。
本実施形態の鋼板は、更に、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Ti、Nb、V、B、Ca、Mg、Zr、REM、Sb、Sn及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。しかしながら、本実施形態に係る鋼板は、Cr、Mo、W、Cu、Ni、Ti、Nb、V、B、Ca、Mg、Zr、REM、Sb、Sn及びBiを含有しなくてもよい、すなわち含有量の下限値は0%であってもよい。
(Cr:0%以上2.00%未満)
(Mo:0%以上2.00%以下)
(W:0%以上2.00%以下)
(Cu:0%以上2.00%以下)
(Ni:0%以上2.00%以下)
Cr、Mo、W、Cu、及びNiはそれぞれ、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、Cr、Mo、W、Cu、及びNiは、鋼板の強度を向上させる元素であるので、含有されてもよい。鋼板の強度向上効果を得るために、鋼板は、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれを0.01%以上含有してもよい。しかしながら、鋼板がこれらの元素を過剰に含有させると、熱延時の表面傷が生成しやすくなり、さらには、熱延鋼板の強度が高くなりすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。したがって、Cr、Mo、W、Cu、及びNiからなる群から選択された1種又は2種以上の元素それぞれの含有量のうち、Crの含有量の上限値を2.00%未満とし、Mo、W、Cu、及びNiのそれぞれの含有量の上限値を2.00%以下とする。
(Ti:0%以上0.300%以下)
(Nb:0%以上0.300%以下)
(V:0%以上0.300%以下)
Ti、Nb、及びVは、本実施形態に係る鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかし、Ti、Nb、及びVは、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を生成する元素であるので、鋼板の強度向上に有効である。したがって、鋼板は、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有してもよい。鋼板の強度向上効果を得るためには、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を0.005%以上とすることが好ましい。一方で、これらの元素を過剰に含有させると、熱延鋼板の強度が上昇しすぎて、冷間圧延性が低下する場合がある。またNbについては、Nbの含有量を0.300%以下にすると、フェライト相の再結晶化の遅れを抑制することができ、所望の組織をより安定して得ることができる。したがって、Ti、Nb、及びVからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの含有量の上限値を0.300%以下とすることが好ましい。
(B:0%以上0.010%以下)
(Ca:0%以上0.010%以下)
(Mg:0%以上0.010%以下)
(Zr:0%以上0.010%以下)
(REM:0%以上0.010%以下)
B、Ca、Mg、Zr、及びREM(希土類金属)は、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、B、Ca、Mg、Zr、及びREMは、鋼板の局部伸び及び穴広げ性を向上させる。この効果を得るためには、B、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素それぞれの下限値を好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上とする。しかし、過剰量のこれら元素は、鋼板の加工性を劣化させるので、これら元素それぞれの含有量の上限を0.010%以下とし、B、Ca、Mg、Zr、及びREMからなる群から選択される1種または2種以上の元素の含有量の合計を0.030%以下とすることが好ましい。本明細書にいうREMとは、Sc、Y、およびランタノイドの合計17元素を指し、REM含有量とは、REMが1種の場合はその含有量、2種以上の場合はそれらの合計含有量を指す。また、REMは一般的には複数種のREMの合金であるミッシュメタルとしても供給されている。このため、個別の元素を1種または2種以上添加してREM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよいし、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
(Sb:0%以上0.050%以下)
(Sn:0%以上0.050%以下)
(Bi:0%以上0.050%以下)
Sb、Sn、及びBiは、本開示の鋼板に必須の元素ではないので含有されなくてもよく、それぞれの含有量は0%以上である。しかしながら、Sb、Sn、及びBiは、鋼板中のMn、Si、および/又はAl等の易酸化性元素が鋼板表面に拡散され酸化物を形成することを抑え、鋼板の表面性状やめっき性を高める。この効果を得るために、Sb、Sn、及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上の元素それぞれの含有量の下限値を好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上とする。一方、これら元素それぞれの含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するので、これら元素それぞれの含有量の上限値を0.050%以下とすることが好ましい。
なお、残部は、鉄および不純物である。不純物としては、鋼原料もしくはスクラップから及び/又は製鋼過程から不可避的に混入するものであり、本実施形態に係る鋼板の特性を阻害しない範囲で許容される元素が例示される。
2.金属組織
次に、本実施形態に係る鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態に係る鋼板の表面から厚みの1/8位置(1/8t部ともいう)における金属組織は、面積率で、10%以上のオーステナイト相及び10%以上のフェライト相を含む。各組織の分率は、熱処理条件によって変化し、降伏点、強度、伸び特性などの材質に影響を与える。要求される材質は、例えば自動車用の部品により変わるため、必要に応じて熱処理条件を選択し、組織分率を制御すればよい。
鋼板の表面から厚みの1/8位置のミクロ組織を観察して、それぞれの組織の面積率を測定することができる。L断面とは、板厚方向と圧延方向に平行に鋼板の中心軸を通るように切断した面をいう。
(鋼板の1/8t部の金属組織中のオーステナイトの面積率:10%以上)
本実施形態に係る鋼板においては、金属組織中のオーステナイト相の量が所定範囲にあることが重要である。オーステナイトは、変態誘起塑性によって鋼板の延性を高める組織である。オーステナイトは、引張変形を伴う張出し加工、絞り加工、伸びフランジ加工、または曲げ加工によってマルテンサイトに変態し得るので、鋼板の強度の向上にも寄与する。これら効果を得るために、本実施形態に係る鋼板は、金属組織中に、面積率で10%以上のオーステナイト相を含有する必要がある。
オーステナイト相の面積率は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。オーステナイト相の面積率が15%以上になると、伸び特性がより高強度まで維持されるようになる。
オーステナイト相の面積率は高いほど、より良好な成形性が得られる。オーステナイト相の面積率の上限は特に規定しないが、実質的には40%である。なお、オーステナイト相の面積率は、後方散乱電子回折(EBSP:Electron Back Scattering pattern)にて測定できる。少なくとも100μm×100μmの範囲を0.1μmピッチで少なくとも8視野測定し、測定値を平均してオーステナイト相の面積率を測定することができる。
(鋼板の1/8t部の金属組織中のフェライトの面積率:10%以上)
フェライトは、延性を確保するうえで必須な組織である。金属組織中のフェライト相の面積率は10%以上、好ましくは15%以上である。フェライトの面積率の上限は特に規定しないが、実質的には85%未満である。
本実施形態に係る鋼板は、好ましくは、表面から厚みの1/8位置(1/8t部ともいう)における金属組織は、面積率で、5%以上の焼き戻しマルテンサイト相をさらに含有し、マルテンサイト相は15%未満に制限される。かかる金属組織により、強度を確保しながら、穴広げ性を得ることができる。
(鋼板の1/8t部の金属組織中の焼き戻しマルテンサイト相の面積率:5%以上)
焼き戻しマルテンサイト相は硬質相であり、鋼板の強度を確保しつつ、穴広げ性の向上に寄与する。穴広げ性を向上しつつ強度を確保するために、焼き戻しマルテンサイト相の金属組織中の面積率は好ましくは5%以上である。鋼板の強度を重視する場合には、焼き戻しマルテンサイト相の面積率は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。焼き戻しマルテンサイト相の面積率の上限は規定しないが、実質的には80%未満である。金属組織にベイナイト相が含まれることがあるが、ベイナイト相は焼き戻しマルテンサイト相と同様の特徴を有するため、金属組織にベイナイト相が含まれる場合、焼き戻しマルテンサイト相の面積率は焼き戻しマルテンサイト相に加えてベイナイト相も含めて測定される。
(鋼板の1/8t部の金属組織中のマルテンサイト相の面積率:15%未満)
マルテンサイト(フレッシュマルテンサイトともいう)相も、その組織中に転位を多く含む硬質相であるが、上記焼き戻しマルテンサイト相とは異なる組織であり、穴広げ性を劣化させ得るため、穴広げ性を確保するためにはマルテンサイト相の金属組織中の面積率を好ましくは15%未満とする。また、マルテンサイト相の金属組織中の面積率を15%未満にすることにより、局部伸びをより向上することができる。金属組織中にマルテンサイト相は含まれなくてもよい。すなわち、マルテンサイト相の金属組織中の面積率は0%でもよい。穴広げ性及び局部伸びを特に必要とする場合は、マルテンサイト相の面積率は10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
金属組織中で、オーステナイト相、マルテンサイト相、焼き戻しマルテンサイト相(ベイナイト相を含む)、及びフェライト相以外の残部は、パーライト、セメンタイト等の組織であることができる。
フェライト相、マルテンサイト相、及び焼き戻しマルテンサイト相の面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察から算出される。鋼板のL断面を鏡面研磨した後に、3%ナイタール(3%硝酸―エタノール溶液)で腐食し、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で、表面から1/8位置における金属組織を観察する。フェライト相(未再結晶フェライト含む)は灰色の下地組織として、マルテンサイトは白色の組織として、判別される。焼き戻しマルテンサイトは、マルテンサイトと同様に白色にみえるが、結晶粒内に下部組織が確認されたものを焼き戻しマルテンサイトと判断する。
フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率は30%以上、好ましくは40%以上である。未再結晶フェライトの面積率が上記範囲内であることにより、降伏点が高い鋼板を得ることができる。未再結晶フェライトが多すぎると延性低下につながるため、面積率の上限は70%とする。未再結晶フェライトの面積率の上限は、より好ましくは60%である。
未再結晶フェライトの面積率は、上述のようにフェライト相の結晶粒を判別した後、この領域に対して、EBSP測定を行い、KAM(Kernel Average Misorientation)値で1°以上の領域を未再結晶フェライト組織として測定することにより算出される。
オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγとフェライト相(未再結晶フェライト相を含むすべてのフェライト相)における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαは1.2以上、好ましくは1.5以上である。CMnγ/CMnαが上記範囲内であることにより、熱処理中にオーステナイト相だった箇所にMnを濃化させるMn分配が十分に得られ、短時間焼鈍でも安定したオーステナイト相が得られて、優れた延性が得られる。一方、CMnγ/CMnαが1.2未満では、Mn分配が十分でなく、オーステナイト相を短時間焼鈍で得ることが困難となる。また、CMnγ/CMnαは、好ましくは2.0未満である。CMnγ/CMnαを2.0未満にすることによって、オーステナイト相が過剰に安定になることを抑制して延性向上効果の低下を抑制することができる。
CMnγ/CMnαは、EBSP、SEM、及び電子線マイクロアナライザ(EMPA)により測定することができる。EBSP及びSEMにより、オーステナイト相及びフェライト相を測定し、EMPAにより、CMnγ及びCMnαを測定して、CMnγ/CMnαを算出することができる。
フェライト相における平均転位密度は4.0×1012/m2以上である。フェライト相における平均転位密度が上記範囲内であることにより、降伏伸びを低減しつつ、降伏強度を増加し、十分な伸びを有する鋼板を得ることができる。
フェライト相における平均転位密度は、好ましくは5×1013/m2以下である。フェライト相における平均転位密度の上限を上記範囲内とすることにより、延性の劣化を抑制し、成形性を維持することができる。
次に、本実施形態に係る鋼板の機械特性について説明する。
本実施形態に係る鋼板の引張強度(TS)は、好ましくは780MPa以上、より好ましくは980MPa以上である。これは、鋼板を自動車の素材として使用する際、高強度化によって板厚を減少させ、軽量化に寄与するためである。また、本実施形態に係る鋼板をプレス成形に供するためには、伸び(El)が優れることが望ましい。その場合、TS×Elは、好ましくは25000MPa・%以上、より好ましくは28000MPa・%以上である。
本実施形態に係る鋼板は、降伏点にも優れており、図1に「A」として示すような応力−ひずみ曲線(SSカーブ)を示す。一方、本開示の方法における熱延鋼板への熱処理、すなわち、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行なわずに、冷延鋼板に短時間焼鈍のみを施して得られる鋼板は、伸びが小さい「C」として示すような応力−ひずみ曲線を示す。
本実施形態に係る鋼板は、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施すことにより、図1に「A」として示すような、応力−ひずみ曲線を示す。参考に、圧下率が0.5%のスキンパス圧延を施したこと以外は同条件で作製した鋼板の場合の応力−ひずみ曲線を「B」として示す。詳しくは後述するが、「B」のような応力−ひずみ曲線を示す鋼板と比較して、「A」に示すような応力−ひずみ曲線を示す鋼板は、降伏点は少し小さいものの、高い引張強度および伸びを維持したまま降伏伸び(YP−El)を抑制することができる。「A」として示すような応力−ひずみ曲線を示す鋼板は、「B」よりも、ひずみを局所化させずに分散させることができる。これにより、局所的な変形を抑制することができる。
本実施形態に係る鋼板の降伏比YR(降伏点YPを引張強度TSで徐したもの)は、好ましくは0.68以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.75以上を示す。そのため、本実施形態に係る鋼板を自動車の素材として使用する際、衝突特性の向上に寄与する。また、本実施形態に係る鋼板の降伏伸び(YP−El)は、好ましくは2.5%未満、より好ましくは1.5%未満を示す。また、本実施形態に係る鋼板は、好ましくは穴広げ性(λ)にも優れ、好ましくは18%以上、より好ましくは22%以上、さらに好ましくは24%以上のλを示す。また、本実施形態に係る鋼板は、好ましくは1.5%以上、より好ましくは1.7%以上、さらに好ましくは2.0%以上の局部伸びを有し、良好な成形性を示す。
本開示の鋼板は上記のように、降伏点が十分高く、高い引張強度を確保し、伸び特性も十分確保され、成形性に優れ、降伏伸びが小さいので、メンバーなどの衝突部位の自動車の構造部品用途に最適である。さらに、本開示の鋼板は含有Mn濃度が高いので、自動車の軽量化にも寄与するので、産業上の貢献が極めて顕著である。
3.製造方法
次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、上述の化学組成を有する鋼を常法で溶製し、鋳造してスラブまたは鋼塊を作製し、これを加熱して熱間圧延を施し、得られた熱延鋼板に、フェライト/オーステナイトの二相域で熱処理を行い、酸洗した後、30%以上70%以下の冷延率で冷間圧延し、次いでフェライト/オーステナイトの二相域で短時間焼鈍を施し、焼鈍後に圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施して製造する。
熱間圧延は、通常の連続熱間圧延ラインで行えばよい。熱間圧延後の熱延鋼板への熱処理は、箱焼鈍炉(BAF)等のバッチ炉または連続焼鈍炉等のトンネル炉で行うことができる。冷間圧延も、通常の連続冷間圧延ラインで行えばよい。本開示の方法においては、焼鈍は、連続焼鈍ラインを用いて行うことができるので、生産性に非常に優れている。
本開示の鋼板の金属組織を得るためには、下記の条件、特に、熱延条件、熱間圧延後の熱延鋼板への熱処理条件、冷間圧延条件、焼鈍条件、及びスキンパス圧延を、以下に示す範囲内で行うことが好ましい。
本実施形態に係る鋼板が上述の化学組成を有する限り、溶鋼は、通常の高炉法で溶製されたものであってもよく、電炉法で作成された鋼のように、原材料がスクラップを多量に含むものでもよい。スラブは、通常の連続鋳造プロセスで製造されたものでもよいし、薄スラブ鋳造で製造されたものでもよい。
上述のスラブまたは鋼塊を加熱し、熱間圧延を行って熱延鋼板を得る。熱間圧延に供する鋼材の温度は、1100℃以上1300℃以下とすることが好ましい。熱間圧延に供する鋼材の温度を1100℃以上にすることにより、熱間圧延時の変形抵抗をより小さくすることができる。一方、熱間圧延に供する鋼材の温度を1300℃以下にすることにより、スケールロス増加による歩留まりの低下を抑制することができる。本願明細書において、温度とは、鋼材の主面中央部の表面温度をいう。
熱間圧延前に上記好ましい温度範囲である1100℃以上1300℃以下の温度域に保持する時間は特に規定しないが、曲げ性を向上させるためには、30分間以上とすることが好ましく、1時間以上にすることがさらに好ましい。また、過度のスケールロスを抑制するために10時間以下とすることが好ましく、5時間以下とすることがさらに好ましい。なお、直送圧延または直接圧延を行う場合であって、加熱処理を施さずにそのまま熱間圧延に供してもよい。
(仕上圧延及び巻取り:750℃以上1000℃以下で仕上圧延及び300℃未満で巻取り)
熱間圧延において仕上圧延を行う。仕上圧延開始温度を好ましくは750℃以上1000℃以下とすることが好ましい。仕上圧延開始温度を750℃以上とすることにより、圧延時の変形抵抗を小さくし、組織制御を容易に行うことができる。一方、仕上圧延開始温度を1000℃以下にすることにより、熱延状態での組織の粗大化を防ぐことができ、その後の組織制御ができることに加え、粒界酸化による鋼板の表面性状の劣化を抑制することができる。仕上圧延を行った後冷却、巻取りを行う。巻取温度は、好ましくは300℃未満である。300℃未満で巻き取ることで、熱延板組織をフルマルテンサイト組織とすることができ、熱延鋼板の熱処理及び冷延鋼板の焼鈍工程において、それぞれ、Mn分配とオーステナイト逆変態とを効率的に起こすことが可能となる。すなわち、上記温度での仕上圧延及び上記温度での巻取りを行うことにより、マルテンサイト相の面積率を15%未満に制限しつつ、5%以上の面積率の焼き戻しマルテンサイト相を得ることができ、強度と穴広げ性に優れた鋼板を得ることができる。
(熱延鋼板の熱処理:オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域で1時間以上保持)
得られた熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行う。鋼板のAc1超Ac3未満の二相域の温度範囲内のうち、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度範囲内で熱処理を行うことにより、オーステナイトにMnを分配して、オーステナイトを安定化させて、高い延性を得ることができる。オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度で熱処理を行うことによって、焼鈍後の鋼板のL断面における表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相を含むことができる。オーステナイト相の面積率が20%〜50%となる温度範囲は、鋼板の成分に応じて、オフラインの予備実験で室温から0.5℃/秒の加熱速度で加熱し、加熱中の体積変化から、オーステナイト相分率を測定することで求めることができる。熱処理の温度は、好ましくはオーステナイト相分率で25%〜40%となる温度域に含まれる温度である。熱処理の保持時間の下限は、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。熱処理の保持時間の上限は、好ましくは10時間以内、より好ましくは8時間以内である。
図2に、熱間圧延後に、二相域でオーステナイト相分率が20%〜50%となる温度範囲の650℃で6時間の熱処理をした場合、及び単相域である500℃で15分間の熱処理をした場合における、鋼板のL断面の表面から厚みの1/8位置におけるMnの分配状態を表すマッピング結果の一例を示す。650℃で熱処理した鋼板では、フェライトからMnが排出され、オーステナイトにMnが濃化する(明色領域)ため、650℃でオーステナイトだった箇所におけるMn濃度は500℃で熱処理した場合よりも高く、650℃でフェライトだった箇所のMn濃度は低くなる。
オーステナイト面積率が20%〜50%となる温度範囲で熱処理を行った後、冷却を行う。これにより、熱処理で得たMn分配状態を維持することができる。
熱延鋼板は、常法により酸洗を施された後に、30%以上70%以下の圧下率で冷間圧延が行われ、冷延鋼板とされる。冷間圧延の圧下率を30%未満とすると、粒径が大きく残りオーステナイト逆変態が遅れてしまい、オーステナイト相を十分得ることができない。また、圧下率を70%超とすると、未再結晶フェライトを十分得ることができない。冷間圧延の圧下率の下限値は好ましくは40%以上である。冷間圧延の圧下率の上限値は好ましくは60%以下である。
冷間圧延の前であって酸洗の前または後に0%超〜5%程度の軽度の圧延を行って形状を修正すると、平坦確保の点で有利となるので好ましい。また、酸洗前に軽度の圧延を行うことより酸洗性が向上し、表面濃化元素の除去が促進され、化成処理性やめっき処理性を向上させる効果がある。
(冷延鋼板の焼鈍:オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域で30秒間以上15分間未満保持)
得られた冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満、好ましくは1分間以上5分間以下、保持して焼鈍を行う。上記熱延鋼板の熱処理ですでにMn分配を完了しており、熱処理中にオーステナイト相だった箇所にはMnが濃化しているので、この箇所は、短時間焼鈍でも、すぐにオーステナイト相になりやすく、安定したオーステナイトが得られ、短時間の焼鈍処理で優れた延性が得られる。一方、当該焼鈍においてオーステナイト相分率が20%未満となる温度で熱処理を行うとオーステナイトが十分に得られず、50%超となる温度で熱処理を行うとオーステナイト相からマルテンサイト相に変態しやすくなる。また、焼鈍時間が30秒間未満では、オーステナイトが十分に得られない。好ましくは、オーステナイト相分率が25%〜40%となる温度域で焼鈍する。
理論に束縛されるものではないが、上記の低い温度且つ短時間で冷延鋼板を熱処理すると、主に回復焼鈍が起こり、再結晶が起こりにくい。このため、未再結晶フェライトが残存して不動転位が消えずに残り、スキンパス圧延前における降伏点が大きくなると考えられる。本開示の方法によれば、スキンパス圧延前において、Mn分配による引張強度(TS)×伸び(El)の改善に加えて、未再結晶フェライトによる高降伏点(YP)を備えた鋼板を得ることができる。
冷間圧延前の熱処理における温度と冷間圧延後の焼鈍における温度との差は、好ましくはオーステナイト相分率の差に換算して15%以下相当、より好ましくは10%以下相当である。冷間圧延前の熱処理における温度と冷間圧延後の焼鈍における温度とはどちらが高くてもよい。冷間圧延前の熱処理における温度と冷間圧延後の焼鈍における温度との差を上記範囲内にすることにより、冷間圧延前の熱処理におけるオーステナイト相分率と冷間圧延後の焼鈍におけるオーステナイト相分率とを近づけることができるので、冷間圧延後の焼鈍において、Mnが濃化した箇所にだけオーステナイトを生成することができる。冷間圧延前の熱処理における温度及び冷間圧延後の焼鈍における温度とは、熱処理プロファイルにおける実質的な最高温度である。
(焼鈍後の冷却条件:平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で冷却し、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持)
焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で100℃以上500℃以下の温度域まで冷却する。焼鈍後の平均冷却速度を2℃/秒以上とすることによって、粒界偏析を抑制し、曲げ性を向上することができる。一方、平均冷却速度を2000℃/秒以下とすることにより、冷却停止した後の鋼板温度分布が均一になるので、鋼板の平坦性を向上させることができる。
冷却停止温度を500℃以下にすることにより、粒界偏析を抑制し、曲げ性を向上することができる。一方、冷却停止温度を100℃以上とすることにより、マルテンサイト変態に伴うひずみ発生を抑制でき、鋼板の平坦性を向上させることができる。
上記冷却の後、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持する。100℃以上500℃以下の温度域に冷却することによって、マルテンサイトが生成し、その後の保持によって、マルテンサイトの自己焼き戻しが生じる。100℃以上500℃以下の温度域における保持時間を10秒間以上とすることにより、オーステナイトへのC分配が十分に進行して、最終熱処理前の組織にオーステナイトを安定に生成させることができ、その結果、最終熱処理後の組織に塊状のオーステナイトが生成することを抑制し、強度特性の変動を抑えることができる。一方、上記保持時間が1000秒間超であっても、上記作用による効果は飽和して、生産性が低下するだけであるため、100℃以上500℃以下の温度域における保持時間は、1000秒以下、好ましくは300秒以下、より好ましくは180秒以下である。
上記保持温度を100℃以上にすることにより、連続焼鈍ラインの効率を向上することができる。一方、保持温度を500℃以下にすることにより、粒界偏析を抑制し、曲げ性を向上することができる。
上記冷却の後、鋼板を室温まで冷却することが好ましい。
焼鈍後の鋼板に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を行う。鋼板の表面に溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっきを施す場合は、めっき後の鋼板に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を行う。延性の低下またはロール荷重の増大の観点から、従来の鋼板の製造においては、スキンパス圧延は一般的に0.5%未満であるところ、本実施形態においては、5.0%以上の圧下率のスキンパス圧延を行うことにより、転位が多く導入され加工硬化するので、通常のスキンパス(圧下率5.0%未満)を行う場合よりも鋼板の降伏伸びを低減しつつ、降伏点を高くする方向に調整することができる。また、本実施形態においては、5.0%以上の圧下率のスキンパス圧延を行うことにより、フレッシュマルテンサイトの増加による降伏伸びの低下を実現しつつ、局部伸びを向上することができる。
圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を行うことにより、図1に「A」として示すような、参考として示した「B」よりも伸びおよび降伏点が若干低くなるものの、降伏点および引張強度を高い水準で確保し、且つ降伏伸びが小さい応力−ひずみ曲線を示す鋼板を得ることができる。この特性を有する鋼板は、衝突時の初期吸収エネルギーが大きく且つより多くのエネルギーを吸収することができる。
圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を行うことにより、フェライト相の平均転位密度を、4.0×1012/m2以上にすることができる。平均転位密度は、フェライト相(未再結晶フェライト相を含むすべてのフェライト相)の不動転位と可動転位との合計転位密度である。
平均転位密度を4.0×1012/m2以上とすることにより、図1に「A」として示すような、「B」よりも伸びおよび降伏点が若干低くなるものの、高い引張強度を維持し、且つ降伏点伸びが小さい応力−ひずみ曲線を示す鋼板を得ることができる。このような特性を有する鋼板は、降伏点(YP)を高い水準に保ちつつ衝突時に変形の局所化を抑制することができるので、大きな初期吸収エネルギーを有し且つより多くのエネルギーを吸収することができる。
好ましくは、スキンパス圧延の圧下率を10.0%以下にする。これにより成形性を十分確保することができる。スキンパス圧延の圧下率を10.0%以下にすることによって、フェライト相の平均転位密度を、5×1013/m2以下にすることができる。
フェライト相の平均転位密度の測定は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いた従来の測定により行うことができる。
上記焼鈍後の冷却は、鋼板にめっきしない場合には、そのまま室温まで行われればよい。また、鋼板にめっきする場合には、以下のようにして製造することができる。
鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、上記焼鈍後の冷却を430〜500℃の温度範囲で停止し、次いで冷延鋼板を溶融亜鉛のめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行う。めっき浴の条件は通常の範囲内とすればよい。めっき処理後は室温まで冷却すればよい。
鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっきを施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合には、鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施した後、鋼板を室温まで冷却する前に、450〜620℃の温度で溶融亜鉛めっきの合金化処理を行う。合金化処理条件は、通常の範囲内とすればよい。
以上のように鋼板を製造することによって、本実施形態に係る鋼板を得ることができる。
本開示の鋼板を、例を参照しながらより具体的に説明する。ただし、以下の例は本開示の鋼板及びその製造方法の例であり、本開示の鋼板及びその製造方法は以下の例の態様に限定されるものではない。
1.評価用鋼板の製造
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブを得た。
得られたスラブを表2に示す仕上温度及び巻取り温度で熱間圧延し、2.6mm厚の熱延鋼板を製板した。得られた熱延鋼板に、表2に示すオーステナイト相分率となる温度及び保持時間で熱処理を行い、次いで酸洗し、さらに、表2に示す冷間圧延率で冷間圧延を施して、1.2mm厚の冷延鋼板を製板した。熱延鋼板の熱処理は、窒素98%及び水素2%の還元雰囲気で行った。以下の表2〜表7に示す「鋼」欄のアルファベット文字は、表1の「鋼」欄に示す鋼種記号の各々に対応する。
得られた冷延鋼板に、表2に示すオーステナイト相分率となる温度及び保持時間で焼鈍を行った。冷延鋼板の焼鈍は、窒素98%及び水素2%の還元雰囲気で行った。
熱延鋼板の熱処理温度と冷延鋼板の焼鈍温度とは、表2に示されるオーステナイト相分率に相当する温度差であった。
焼鈍の温度保持後に、鋼板を、表2に示す平均冷却速度、冷却停止温度、及び保持時間の条件で冷却した。冷却停止温度及び保持時間の数値を記載していない例は、焼鈍後の冷却で、100℃以上500℃以下の温度域において冷却停止および保持を行わず、焼鈍後そのまま室温まで冷却した例を意味する。
一部の焼鈍冷延鋼板については、焼鈍を行った後、焼鈍後の冷却を400℃で停止し、冷延鋼板を400℃の溶融亜鉛のめっき浴に2秒間浸漬して、溶融亜鉛めっき処理を行った。めっき浴の条件は従来のものと同じである。後述する合金化処理を施さない場合、400℃の保持後に、平均冷却速度10℃/秒で室温まで冷却した。
一部の焼鈍冷延鋼板については、溶融亜鉛めっき処理を行った後に、室温に冷却せずに、続いて合金化処理を施した。500℃まで加熱し、500℃で5秒間保持して合金化処理を行い、その後、平均冷却速度10℃/秒で室温まで冷却した。
このようにして得られた焼鈍冷延鋼板に、圧下率が6.0%のスキンパス圧延を施して、鋼板を作製した。
表2に示す条件で作製した鋼板とは別に、表3に示すように、3.0%、9.0%及び12.0%の圧下率(SPM)でスキンパス圧延を施して、鋼板を作製した。ただし、表3の番号102、105、108、111、115は参照用であり、それぞれ表2の番号2、5、10、13、15と同じものである。下記の表5及び表6においても同様である。
表2及び表3に示す条件で作製した鋼板とは別に、表4に示す条件で鋼板(発明例、比較例)を作製した。
2.評価方法
表2及び表3の各例で得られた鋼板について、ミクロ組織観察、引張試験、伸び試験、及び穴広げ試験を実施して、フェライト相(α)、オーステナイト相(γ)、焼き戻しマルテンサイト相(T.M)、マルテンサイト相(F.M)、及び未再結晶フェライト(未結晶α)の面積率、CMnγ/CMnα、降伏点(YP)、引張強度(TS)、伸び(El)、穴広げ性(λ)、降伏伸び(YP−El)、降伏比(YR)、及びTS×Elを評価した。各評価の方法は次のとおりである。表4の各例で得られた鋼板について、表2及び表3の各例で得られた鋼板について行った試験及び評価に加えて、局所伸び試験を実施した。
オーステナイト相の面積率は、後方散乱電子回折(EBSP:Electron Back Scattering pattern)を用いて測定した。鋼板を板厚方向と圧延方向に平行に切断したL断面について、ダイヤモンドバフ研磨及びアルミナ研磨による鏡面研磨を行い、次いで3%ナイタールによりミクロ組織を現出させて、表面から1/8位置における100μm×100μmの範囲を0.1μmピッチで8視野測定し、測定値を平均して算出した。
フェライト相、焼き戻しマルテンサイト相、及びマルテンサイト相の面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察から算出した。上記鏡面研磨及びナイタール処理をしたミクロ組織について、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で、鋼板の幅方向中央の表面から1/8位置における0.2mm×0.3mmの範囲を0.5mm間隔で2視野観察した。面積率は、JIS−G0555点算法で400〜500点を測定して算出した。
フェライト相(未再結晶フェライト含む)は灰色の下地組織として、マルテンサイトは白色の組織として、判別した。焼き戻しマルテンサイトは、マルテンサイトと同様に白色にみえるが、結晶粒内に下部組織が確認されたものを焼き戻しマルテンサイトと判断した。
未再結晶フェライトの面積率は、上述のようにフェライト相の結晶粒を100〜150個判別し、判別した結晶粒に対してEBSP測定を行って各結晶粒のKAM値を算出し、KAM値で1°以上の領域を未再結晶フェライト組織として判断することにより算出した。
CMnγ/CMnαは、EBSP、SEM、及び電子線マイクロアナライザ(EMPA)により測定した。上記鏡面研磨及びナイタール処理をしたミクロ組織について、EBSP及びSEMを用いてオーステナイト相及びフェライト相をそれぞれ10点選択し、加速電圧15kVのEMPAにより、それぞれ10点の平均値をCMnγ及びCMnαとして測定し、CMnγ/CMnαを算出した。
(機械的性質の試験方法)
降伏点(YP)及び降伏伸び(YP−El)は、JIS−Z2241に規定される方法により測定した。なお、降伏点は、降伏現象があるときは下降伏点を意味し、降伏現象がないときは0.2%耐力を意味する。
鋼板の圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張強度(TS)及び伸び(El)を測定し、TS×uELを算出した。引張試験は、JIS5号引張試験片を用いて、JIS Z2241:2011に規定される方法で行った。伸びの測定は、平行部の長さが60mmで、歪を測定する基準となる標点距離が50mmのJIS5号試験片を用いて、JIS Z2241:2011に規定される方法で行った。均一伸びは、最大試験強さ(TS)に到達するまでに得られる伸び(標点間で測定した歪)である。局所伸びの測定は、破断した試験片を突き合せた際の伸び(全伸び)の値から最大荷重点の伸び(均一伸び)の値を引くことにより算出した。
穴広げ性(λ)は次の方法で評価した。鋼板の圧延方向に直角方向から100mm×100mmの穴広げ用試験片を切り出し、クリアランス12.5%でその中央に直径10mmの穴を打ち抜いた。クリアランスは、クリアランス(%)=(金型の穴径−ダイスの直径)/(鋼板の板厚)/2×100で定義される。その穴付き試験片を円錐ポンチで押し出し、穴を広げ、穴縁が内部に割れが進展した時点で試験を停止し、その穴径d(単位mm)を測定した。穴広げ率λ(%)を、λ=100×(d−10)/10の式から算出した。
3.評価結果
表2に示す条件で作製した鋼板についての評価結果を表5に示す。25000MPa・%以上のTS×El、2.5%未満のYP−El、及び0.68以上の降伏比(YR)を示す鋼板を、高降伏点、優れた伸び特性、小さい降伏伸び、及び高強度を有する鋼板として評価した。
表3に示す条件で作製した鋼板についての評価結果を表6に示す。9.0%及び12.0%の圧下率(SPM)でスキンパス圧延を施した鋼板(発明例)は、6.0%の圧下率(SPM)でスキンパス圧延を施した鋼板(発明例)と同様に、高降伏点、良好な伸び特性、及び高強度を維持しながら、非常に小さい降伏伸び(YP−El)を示した。3.0%の圧下率(SPM)でスキンパス圧延を施した鋼板(比較例)は、6.0%の圧下率(SPM)でスキンパス圧延を施した鋼板(発明例)と比較して、降伏点(YP)及び降伏比(YR)は低くなり、大きい降伏伸び(YP−El)を示した。
表4に示す条件で作製した鋼板についての評価結果を表7に示す。表4に示す条件で鋼板を作製することにより、1.5%以上の局部伸びを示しつつ、25000MPa・%以上のTS×El、18%以上の穴広げ率(λ)、及び0.68以上の降伏比(YR)を示す鋼板が得られた。

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C:0.10%超0.55%未満、
    Si:0.001%以上3.50%未満、
    Mn:4.00%超9.00%未満、
    sol.Al:0.001%以上3.00%未満、
    P:0.100%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.050%未満、
    O:0.020%未満、
    Cr:0%以上2.00%未満、
    Mo:0%以上2.00%以下、
    W:0%以上2.00%以下、
    Cu:0%以上2.00%以下、
    Ni:0%以上2.00%以下、
    Ti:0%以上0.300%以下、
    Nb:0%以上0.300%以下、
    V:0%以上0.300%以下、
    B:0%以上0.010%以下、
    Ca:0%以上0.010%以下、
    Mg:0%以上0.010%以下、
    Zr:0%以上0.010%以下、
    REM:0%以上0.010%以下、
    Sb:0%以上0.050%以下、
    Sn:0%以上0.050%以下、及び
    Bi:0%以上0.050%以下
    を含有し、残部が鉄および不純物からなり、
    L断面において、表面から厚みの1/8位置における金属組織が、面積率で、10%以上のオーステナイト相及び10%以上のフェライト相を含有し、
    前記フェライト相の内、未再結晶フェライトの面積率が30%以上、70%以下であり、
    前記オーステナイト相における平均Mn濃度CMnγと前記フェライト相における平均Mn濃度CMnαとの比であるCMnγ/CMnαが1.2以上であり、
    前記フェライト相の平均転位密度が4×1012/m2以上であり、
    降伏比が0.68以上、引張強度と伸びの積が25000MPa・%以上、降伏伸びが2.5%未満、引張強度が780MPa以上である
    ことを特徴とする鋼板。
  2. 質量%で、
    Cr:0.01%以上2.00%未満、
    Mo:0.01%以上2.00%以下、
    W:0.01%以上2.00%以下、
    Cu:0.01%以上2.00%以下、及び
    Ni:0.01%以上2.00%以下
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
  3. 質量%で、
    Ti:0.005%以上0.300%以下、
    Nb:0.005%以上0.300%以下、及び
    V:0.005%以上0.300%以下
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 質量%で、
    B:0.0001%以上0.010%以下、
    Ca:0.0001%以上0.010%以下、
    Mg:0.0001%以上0.010%以下、
    Zr:0.0001%以上0.010%以下、及び
    REM:0.0001%以上0.010%以下
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板。
  5. 質量%で、
    Sb:0.0005%以上0.050%以下、
    Sn:0.0005%以上0.050%以下、及び
    Bi:0.0005%以上0.050%以下
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板。
  6. 前記金属組織が、面積率で、5%以上の焼き戻しマルテンサイト相をさらに含有し、マルテンサイト相は15%未満に制限される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板。
  7. 前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
  8. 前記鋼板の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成分を有する鋼に熱間圧延を施して熱延鋼板とすること、
    前記熱延鋼板に、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて1時間以上の熱処理を行い、その後、酸洗及び冷間圧延を施して冷延鋼板とすること、
    前記冷間圧延における冷間圧延率を30%以上70%以下とすること、
    前記冷延鋼板を、オーステナイト相分率が20%〜50%となる温度域にて、30秒間以上15分間未満保持して焼鈍すること、及び
    前記焼鈍後に、圧下率が5.0%以上のスキンパス圧延を施すこと、並びに
    前記焼鈍の温度保持後に、平均冷却速度2℃/秒以上2000℃/秒以下で冷却し、100℃以上500℃以下の温度域で10秒間以上1000秒間以下保持すること
    を特徴とする鋼板の製造方法。
  10. 前記熱処理の温度と前記焼鈍の温度との差が、オーステナイト相分率の差に換算して15%以下相当であることを特徴とする、請求項9に記載の鋼板の製造方法。
  11. 前記熱間圧延が、750℃以上1000℃以下の温度での仕上圧延、及び300℃未満の温度での巻取りを含む、請求項9または10に記載の鋼板の製造方法。
  12. 請求項7に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、前記焼鈍後に、溶融亜鉛めっき処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の鋼板の製造方法。
  13. 請求項8に記載の鋼板を製造するための鋼板の製造方法であって、前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、450℃以上620℃以下の温度域で前記溶融亜鉛めっきの合金化処理を施し、次いで前記スキンパス圧延を行うことを特徴とする、請求項12に記載の鋼板の製造方法。
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