JP2014037574A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板が質量%で、C:0.081%以上0.250%以下、Si:0.50%以上2.00%以下、Mn:1.00%以上3.00%以下、P:0.05%以下、S:0.003%以下、sol.Al:0.010%以下、N:0.01%以下およびTi:0.004%以上0.100以下を含有する化学組成と、残留オーステナイトを2.0面積%以上含有する鋼組織とを有する。
【選択図】 なし
Description
その結果、残留オーステナイト鋼板に優れた曲げ性を具備させる方法として、鋼板中のSおよびAlの含有量をともに極低量とし、かつTiを含有させることが有効であり、それにより曲げ性が格段に向上することを新たに知見した。この原因は明確ではないが、極低Al領域でTiを含有させることにより、硫化物の形態が展伸性のあるMnSから球状に変化した可能性があり、このMnSの形態変化により、曲げ加工時における割れの起点が減少し、良好な曲げ性を得ることができたものと推察される。
(1)鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、 前記鋼板が、質量%で、C:0.081%以上0.250%以下、Si:0.50%以上2.00%以下、Mn:1.00%以上3.00%以下、P:0.05%以下、S:0.003%以下、sol.Al:0.010%以下、N:0.01%以下およびTi:0.004%以上0.100以下を含有する化学組成と、残留オーステナイトを2.0面積%以上含有する鋼組織と、引張強度が590MPa以上である機械特性と、を有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(A)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブに粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1050℃以上としてから5秒間以内に高圧水デスケーリングを施して仕上熱間圧延に供し、850℃以上で仕上熱間圧延を完了し、5℃/秒以上200℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(D)前記冷延鋼板に、連続溶融亜鉛めっき設備の還元炉において750℃以上900℃以下の2相共存温度域に10秒間以上600秒間以下保持し、350℃以上600℃以下の温度域まで冷却して、この温度域に5秒間以上300秒間以下保持した後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、続いて470℃以上650℃以下の温度域に5秒間以上180秒間以下保持する合金化処理を施す連続溶融亜鉛めっき工程。
(1)C:0.081%以上0.250%以下
Cは、鋼の強度を高める作用を有する元素であり、本発明においては590MPa以上の引張強さを確保するのに重要な元素である。C含有量が0.081%未満では590MPa以上の引張強さを確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.081%以上とする。好ましくは0.095%以上である。一方、C含有量が0.250%超では、靱性や溶接性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は0.250%以下とする。
Siは、フェライト生成元素であり、連続焼鈍においてフェライト生成を促して、後述するMnの作用と相俟ってオーステナイトへのCの濃化を促進することにより、オーステナイトを安定化させる作用を有する。従って、Siは最終製品においてオーステナイトを残留させて良好な延性を確保するのに有効な元素である。Siはまた、固溶強化により鋼の強度を高める作用を有する。Si含有量が0.50%未満では、2.0面積%以上の残留オーステナイト確保することが困難な場合がある。したがって、Si含有量は0.50%以上とする。
Mnは、オーステナイト生成元素であり、連続焼鈍においてオーステナイト生成を促して、上記Siの作用と相俟って、オーステナイトへのCの濃化を促進することにより、オーステナイトを安定化させる作用を有するので、最終製品においてオーステナイトを残留させて良好な延性を確保するのに有効な元素である。また、変態強化により鋼の強度を高める作用を有する。Mn含有量が1.00%未満では、2.0面積%以上の残留オーステナイトを確保することが困難な場合がある。したがって、Mn含有量は1.00%以上とする。
Pは、不純物として含有され、鋼の靱性を劣化させる作用を有する。また、溶融亜鉛めっき後の合金化処理工程において亜鉛と鉄との反応を抑制する。P含有量が0.05%を超えると上記作用による悪影響が顕著となる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。
Sは、不純物として含有され、鋼中に硫化物を形成して加工性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.003%超えると上記作用による悪影響が顕著となる。したがって、S含有量は0.003%以下とする。好ましくは0.0025%以下である。
Alは、脱酸を目的として添加されてもよく、或いは不純物として含有される場合もある。sol.Al含有量が0.010%を超えると、溶融亜鉛めっきを施す際の不めっきや、合金化処理時の処理不足の原因となる。したがって、sol.Al含有量は0.010%以下とする。なお、本発明では、Alと同様に脱酸作用を有するSiを多量に含有するため、Alは添加せずともよい。したがって、sol.Al含有量の下限は特定されず、0%であってもよい。
Nは、不純物として含有され、その含有量が過剰になると曲げ性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.01%以下とする。
Tiは、析出強化やフェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化により、鋼板の強度を高める作用を有する。また、本発明では、鋼板中のAl含有量が少ないが、Ti添加により、スラブ中に固溶するNをTiNとして析出させることで固溶N量を低減し、熱延時のスラブ割れを抑制することができる。Ti含有量が0.004%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Ti含有量は0.004%以上とする。一方、Ti含有量が0.100%超では、炭窒化物の析出が過剰となり、成形性が劣化する。したがって、Ti含有量は0.100%以下とする。
Biは、凝固偏析を軽減することにより、曲げ加工性を向上させる作用を有する。したがって、Biを含有させてもよい。しかし、Bi含有量を0.01%超としても上記作用による効果は飽和して、コスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.01%以下とする。
Nb、V、Cr、Mo、CuおよびNiは、いずれも鋼の焼入れ性を高めて、強度高める作用を有する。CuおよびNiは、溶融亜鉛めっき工程におけるめっき濡れ性を向上させる作用をさらに有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、Nb、V、CrおよびMoについては、これらの元素のいずれかを上記範囲を超えて含有させると、延性の低下が著しくなるとともにコスト的に不利となる。また、Cuについては、上記範囲を超えて含有させると、靭性の低下が著しくなる場合がある。また、Niについては、上記範囲を超えて含有させると、延性に悪影響を及ぼす場合があるとともに、高価な元素であることからコスト的に不利となる。したがって各元素の含有量は上記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Nb:0.03%以上、V:0.03%以上、Cr:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Cu:0.2%以上、Ni:0.02%以上のいずれか満足させることが好ましい。
鋼板の鋼組織は、残留オーステナイトを2.0面積%以上含有するものとする。
合金化溶融亜鉛めっき層の付着量は特に制限されるものではなく、一般的な範囲内でよい。通常は、合金化処理する前の溶融亜鉛めっき層の付着量で30g/m2以上50g/m2以下である。めっき層の組成または合金化度(Fe含有量)についても、一般的な範囲内でよい。Fe含有量は9〜11質量%の範囲内が好ましい。これは、従来から提案されているように、合金化度が低く合金化溶融亜鉛めっき層が純亜鉛(η相)の層が厚くなるとフレーキングが生じやすくなり、一方で合金化度が高くΓ相の層が厚くなるとパウダリングが生じやすくなるからである。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、引張強度が590MPa以上の高強度を有するものとする。引張強度がこれより低いと、高強度鋼板の用途には適用できない。引張強度は好ましくは650MPa以上である。延性は、全伸びが20%以上であることが好ましく、より好ましくは全伸びが22%以上である。
本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、次に述べる方法に従って、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程、および連続溶融亜鉛めっき工程を行うことにより製造することができる。
上記化学組成を有するスラブに粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1050℃以上としてから5秒間以内に高圧水デスケーリングを施して仕上熱間圧延に供し、850℃以上で仕上熱間圧延を完了し、5℃/秒以上200℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする
高圧水デスケーリングを施す前の粗バーの温度が1050℃未満では、ファイアライトが溶融せずスケール剥離性を高めることが困難である。したがって、高圧水デスケーリングを施す前の粗バーの温度は1050℃以上とする。そして、1050℃以上としてから5秒間以内に高圧水デスケーリングを施す。
酸洗および冷間圧延は常法に従って実施すればよい。冷間圧延における圧下率は特に制限されないが、一般には30〜70%の範囲内である。
冷間圧延工程で得られた冷延鋼板を、連続溶融亜鉛めっき設備の還元炉において、750℃以上900℃以下の2相共存温度域に10秒間以上600秒間以下保持し、350℃以上600℃以下の温度域まで冷却して、この温度域に5秒間以上300秒間以下保持した後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、続いて470℃以上650℃以下の温度域に5秒間以上180秒間以下保持する合金化処理を施す。
こうして得られた冷延鋼板に対し、連続溶融亜鉛めっき設備を用いて、表2に示す条件で、溶融亜鉛めっきおよび合金化処理を実施した。すなわち、冷延鋼板を還元炉において表示の還元炉均熱条件(均熱温度および均熱時間)だけ保持した後に、冷却して、表示の中間保持帯保持条件(保持温度および保持時間)にて温度保持した。次いで、鋼板を溶融亜鉛めっき浴(460℃、浴組成:Al濃度0.12〜0.13質量%、Fe濃度0.03〜0.04質量%)に浸漬し、めっき浴出側でガスワイピングにより付着量を片面あたり35〜45g/m2に制御した。めっき後に表示の合金化処理温度まで加熱して表示の時間だけ保持し合金化処理を実施した。
残留オーステナイトの面積率に関しては、鋼板表層より板厚の1/4を化学研磨後、X線回折(XRD−6100,Co管球)を行い、オーステナイトとフェライトの特定格子面ピーク値から回折強度を計算し、残留オーステナイトの面積率の値を求めた。
得られた鋼板に対して、次に示す引張試験および限界曲げ試験を実施した。
各鋼板の圧延直角方向からJIS5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。採取した試験片を用いて、引張強さTSと全伸びElを測定した。
各鋼板の圧延直角方向から幅40mm、長さ200mmの試験片を採取した。試験片形状ならびに試験方法はJIS Z2248に準じた。180°曲げを、密着、板厚の1倍、2倍、3倍および4倍の曲げ半径にて実施し、その割れが発生しない限界板厚に対する曲げ半径を限界曲げ半径とした。この限界曲げ半径が2.0t以内であれば曲げ性は良好であるといえる。
目視観察により、鋼板表面における不めっきおよび合金化過処理ムラの有無を確認した。鋼板全体にめっきが付着し、合金化が均一に進んでいる場合を○、鋼板表面に鉄地が露出した部分が存在し、合金化度にムラがある場合を×とした。
パウダリングの評価に関して、試験片はJIS H0401の方法で採取した100mm径の円盤を用い、試験片を13tonの圧力で60°曲げ加工し、さらに曲げ後の試験片を13tonの圧力で水平に伸ばした後に、接着テープを空気が入らないように試験面に貼り付けて、めっきを剥離し、曲げ部からの剥離幅(mm)を測定した。この剥離幅が12mm以内であれば耐パウダリング性は良好であるといえる。
Claims (4)
- 鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板が、質量%で、C:0.081%以上0.250%以下、Si:0.50%以上2.00%以下、Mn:1.00%以上3.00%以下、P:0.05%以下、S:0.003%以下、sol.Al:0.010%以下、N:0.01%以下およびTi:0.004%以上0.100以下を含有する化学組成と、
残留オーステナイトを2.0面積%以上含有する鋼組織と、
引張強度が590MPa以上である機械特性と、
を有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、Bi:0.01%以下をさらに含有する、請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.5%以下およびNi:1.5%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有する請求項1または請求項2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項3までのいずれかに記載の化学組成を有するスラブに粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1050℃以上としてから5秒間以内に高圧水デスケーリングを施して仕上熱間圧延に供し、850℃以上で仕上熱間圧延を完了し、5℃/秒以上200℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して750℃以下の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(D)前記冷延鋼板に、連続溶融亜鉛めっき設備の還元炉において750℃以上900℃以下の2相共存温度域に10秒間以上600秒間以下保持し、350℃以上600℃以下の温度域まで冷却して、この温度域に5秒間以上300秒間以下保持した後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、続いて470℃以上650℃以下の温度域に5秒間以上180秒間以下保持する合金化処理を施す連続溶融亜鉛めっき工程。
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