JP2014037098A - ポリスチレン系樹脂積層発泡シート - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも更に軽量で、厚みが薄いとともに、ロースタック性や優れた剛性を有する容器が成形できるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が共押出により積層されてなる、見掛け密度、厚み、全体坪量が特定範囲内のポリスチレン系樹脂積層発泡シートであり、該樹脂層の坪量が3〜15g/mであり、該樹脂層が、ポリスチレン系樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物との混合物から構成されており、該混合物の引張強さ及び引張り破断伸びが特定範囲内であり、該樹脂層表面から厚み方向100μmまでの表面部分について、室温から160℃まで昇温速度10℃/minでの熱機械分析により得られるTMA曲線における、押出方向の収縮率の最大値、及び幅方向の収縮率の最大値が特定範囲内である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートに関し、詳しくは共押出によって製造される積層発泡シートであって、軽量で厚みが薄く、且つロースタック性や優れた剛性を有する容器を成形可能なポリスチレン系樹脂積層発泡シートに関する。
発泡ポリスチレン容器はスーパーマーケットなどで大量に使用されている。かかる発泡容器としては、物流費を低減できることから積み高さの低い容器、即ち、ロースタック性に優れる容器が求められている。また、省資源の観点からさらなる軽量化が求められている。
しかし、従来の発泡ポリスチレンシートを熱成形することで得られる容器は、使用に耐える強度を備えるにはある程度の厚みが必要であり、ロースタック性を向上させるために厚みを薄くすると強度が低下するという問題を有している。
この問題を解決するために、発泡層に非発泡の樹脂層を積層して強度を向上させることが行なわれてきた(特許文献1〜3)。
例えば、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂発泡層の両面にポリスチレン系樹脂を積層することにより強度を確保しつつ、容器の底部や側壁の厚みを薄くすることで積み高さを低くした食品用容器が開示されている。
特許文献2には、Tダイ押出法で発泡層と樹脂層、または発泡層と発泡層を積層し、後工程で二軸延伸することによって、強度物性が向上したポリスチレン系樹脂発泡二軸延伸シートが開示されている。
特許文献3には、二酸化炭素を発泡剤として用いてポリスチレン系樹脂発泡層を形成し、該発泡層の両面に耐衝撃性ポリスチレン樹脂層を共押出法にて積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、二次発泡倍率が1.7倍以下、特定範囲の加熱収縮率を有し、該樹脂層を構成する耐衝撃性ポリスチレンの引張破壊伸びが7%以上であるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが開示されている。
特開2004−175358号公報 特開2009−149054号公報 特開2008−273128号公報
しかしながら、特許文献1の容器は、ロースタック性と剛性を両立させる点で不十分なものであった。即ち、積み高さを低くするためには成形品の肉厚を薄くせざるを得ないが、引用文献1の発泡容器は、発泡層を薄くすると成形品の剛性低下を招くものであった。
また、特許文献2のシートは、一度冷却してから再加熱して二次延伸するため、発泡ポリスチレントレーに使用されるような、0.6mmを超える積層発泡シートの製造は困難であり、得られる容器は剛性に劣るものであった。また、製造工程が二段階となるため生産効率、コストの面で課題が残るものであった。
特許文献3の積層シートは、軽量でありながら、脆さが改善されており、プラグアシスト真空成形が可能なものであり、得られた発泡容器は、剛性に富み、ロースタック性に優れるものであった。
しかし、近年のトレー、容器や一般成形品には、一段と進んだ軽量性、ロースタック性が要求されるようになっており、この観点から、特許文献3の積層シートは課題を残すものであった。さらに、該積層シートは二次発泡倍率が1.7倍以下なのでプラグアシスト真空成形には適するが、積み高さの制御に最適なマッチモールド成形を行うには製造上、課題を残すものであった。
即ち、二次発泡倍率が小さい発泡シートは、金型密着性が低下し、得られる成形品肉厚の寸法精度のばらつきが大きくなることから、成形品を多数重ねた場合に、積み高さが安定しないおそれがあるものであった。更に、二次発泡倍率が小さい発泡シートは、現在多く流通している、蓋と容器を密着させる内勘合タイプの容器を成形しようとすると金型形状を再現することが難しくなり、金型形状の賦形性の観点から課題を残していた。
なお、前記金型密着性が低下するという問題は、成形金型の上型と下型の間隙を小さくすれば、解決できると考えられる。しかし、特許文献3の積層シートでマッチモールド成形を行うには、型間隙を1.0mm以下にしなければならず、現在主流の多数個取りの金型で該型間隙を実現することは、生産効率、コストを考慮すると、製造上の困難性を有していた。
本発明は、前記問題を解決し、従来よりも更に軽量で、厚みが薄いとともに、ロースタック性や優れた剛性を有する容器が成形できるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することを課題とするものである。
本発明によれば、以下に示すポリスチレン系樹脂積層発泡シートが提供される。
[1] ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が共押出により積層されてなる、見掛け密度0.16〜0.28g/cm、厚み0.6〜1.6mm、全体坪量130〜260g/mの、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、
該樹脂層の坪量が3〜15g/mであり、
該樹脂層が、ポリスチレン系樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物との混合物から構成されており、
該混合物の引張強さが30〜40MPaであると共に引張り破断伸びが7%以上であり、
該樹脂層表面から厚み方向100μmまでの表面部分(樹脂層と発泡層とを含む)について、室温から160℃まで昇温速度10℃/minでの熱機械分析により得られるTMA曲線における、押出方向の収縮率の最大値が30〜40%であると共に、幅方向の収縮率の最大値が10〜20%であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[2] 前記スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物中のスチレン成分量が50〜85重量%であることを特徴とする前記1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[3] 前記混合物中の前記スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物の含有量が、5〜40重量%であることを特徴とする前記1又は2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[4] 前記積層発泡シートの160℃における二次発泡倍率の最大値が1.8倍以上であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[5] 前記積層発泡シートの160℃における、幅方向の加熱収縮率が5〜30%であり、押出方向の加熱収縮率が5〜50%であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、単に積層発泡シートともいう。)は、厚みの薄い樹脂層が、共押出法によってポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に発泡層ともいう。)の表面に積層されている、全体厚みが薄く、軽量な積層発泡シートである。また、該樹脂層が、ポリスチレン系樹脂とスチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物との混合物で構成され、特定の引張強さ、引張り破断伸びを有することから、強い延伸を掛けることが可能となり、樹脂層の剛性がさらに向上し、積層発泡シート全体が薄いにもかかわらず、優れた剛性を有する積層発泡シートである。
更に、本発明の積層発泡シートは、得られる容器の積高さを低くできると共に積高さバラつきを小さく、且つ剛性に優れる容器を成形できる積層発泡シートである。また、該積層発泡シートは、二次発泡倍率の最大値が1.8倍以上であることにより、マッチモールド成形による金型形状の賦形性が向上しており、複雑な形状の内勘合タイプの容器の成形が可能なものである。
図1は、熱機械分析(TMA)測定装置の概略説明図である。 図2は、TMA曲線の一例を示す図面である。
以下、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡層と該発泡層の少なくとも片面に積層された樹脂層からなり、該発泡層と該樹脂層とは共押出により積層されたものである。しかも、後述するように、該樹脂層は、ポリスチレン系樹脂とスチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物との混合物から構成されており、該混合物の引張り破断伸びと引張強さの両方が特定範囲にあることから、積層発泡シート製造時の延伸により延伸効果が発現し、素材自体の剛性に加え、さらにシートとしての剛性が向上しているものである。このような樹脂層が発泡層に積層されている、本発明の積層発泡シートは、全体として剛性や成形性に優れるものである。
尚、本発明における発泡層は単一の発泡層であっても複数の発泡層からなるものであってもよい。また樹脂層も、単一の樹脂層であっても複数の樹脂層からなるものであってもよく、発泡層の片面に樹脂層を積層することに限定されるものではなく、発泡層の両面に樹脂層を共押出により積層することもできる。
本発明において、前記樹脂層を構成する樹脂は、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物(以下、単に樹脂(I)ともいう。)と、ポリスチレン系樹脂との混合物(以下、単に、混合物(II)ともいう。)である。
該樹脂層を構成する、スチレン・ブタジエンブロック共重合体としては、スチレンから主として作られる少なくとも2つの重合体ブロック(A)と、ブタジエンから主として作られる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体が挙げられる。また、該樹脂層を構成する樹脂としては、該スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水添物を用いることもできる。具体的には、旭化成ケミカルズ株式会社製アサプレン、アサフレックス、フィリップス社製Kレジンなどが挙げられる。
これらの中でも、スチレン成分量が比較的多いスチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物(樹脂(I))を用いることが好ましい。具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物(樹脂(I))中のスチレンに由来する構造単位(スチレン成分)の含有量の下限は、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物(樹脂(I))中、35重量%が好ましく、50重量%がより好ましく、60重量%がさらに好ましい。一方、該スチレン成分量の上限は、85重量%が好ましく、さらに好ましくは80重量%である。
前記混合物(II)中の樹脂(I)の含有量は、前記混合物(II)を100重量%として、5〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜35重量%、更に好ましくは20〜30重量%である。樹脂(I)の含有量が少なすぎると、脆性の改良ができない虞がある。該含有量が多すぎると、剛性が低下する虞がある。
前記樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレンホモポリマーや、スチレンを主成分とするスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、さらにポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂との混合物等が挙げられる。上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。前記の中でも、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂としては、特にスチレンホモポリマーが好ましい。
一方、本発明における発泡層を構成するポリスチレン系樹脂としては、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂と同様のものが挙げられ、前記の中でも、発泡性に優れ剛性が高く、リサイクル性も良好なスチレンホモポリマーが好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、200℃、剪断速度100sec−1の条件下で、20Pa・s以上10000Pa・s未満が好ましく、より好ましくは100〜5000Pa・sである。特に、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂は、押出発泡が容易となるという観点から、その溶融粘度は、1000〜2000Pa・sであることが好ましい。
なお、前記ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、株式会社東洋精機の溶融粘度測定装置であるキャピラリーレオメーターなどにより測定できる。
また、ビカット軟化点が110℃以上のポリスチレン系樹脂を発泡層に使用することにより、本発明の積層発泡シートの耐熱性を向上させることができる。
なお、樹脂のビカット軟化点はJIS K7206−1999年に従ってA 50法にて求められる値を指す。
なお、本発明の目的、作用、効果が達成される範囲内において、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂や、前記樹脂層を構成する混合物(II)には、その他の重合体を混合してもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体等のスチレン系エラストマーが挙げられ、これらその他の重合体は、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂や樹脂層を構成する前記混合物(II)中、50重量%未満となるように、好ましくは30重量%未満となるように、特に好ましくは0〜10重量%となるように、混合することができる。
本発明においては、前記樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRということがある)が前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRよりも高くなるようにすることが好ましい。そうすることによって、発泡層と樹脂層とをダイ内で積層した後に、MFRの高いポリスチレン系樹脂で構成される樹脂層を冷却しつつ延伸しながら引き取ることが可能になるので、樹脂層の剛性を向上させると共に樹脂層厚みを薄くすることが出来る。逆に樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRが発泡層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRよりも低い場合には、樹脂層の流動抵抗が大きいことにより、木目様のフローマークが発生して商品価値が低下したり、樹脂層の厚みが厚くなるなどの問題が生じる虞がある。
更に、該樹脂層を構成する前記混合物(II)のMFRは、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRよりも大きいことが好ましい。具体的には、樹脂層を構成する該混合物(II)のMFRは5〜20g/10分が好ましく、より好ましくは8〜18g/10minである。該MFRが小さすぎると、積層発泡シート製造時にシートを引取ることが容易ではなくなる。一方、該MFRが大きすぎると、シート引取り時に樹脂層を延伸させて剛性を向上させることが難しくなる虞がある。
一方、樹脂層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRは、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂のMFRよりも大きいことが好ましい。発泡層に高溶融粘度の原料(MFRが低い原料)を使用することによって、発泡層の独立気泡率を高く維持することができ、その結果として積層シートの剛性を向上させることができる。
上記観点から、本発明の発泡層に使用されるポリスチレン系樹脂のメルトフローレートは、0.1〜5g/10minが好ましく、より好ましくは1〜3g/10min、更に好ましくは1〜2g/10minである。
上記のメルトフローレートは、JIS
K 7210(1999)の試験方法A法により測定されるメルトマスフローレイトを意味し、試験温度200℃、荷重5kgの条件を採用する。
前記樹脂層を構成する、混合物(II)の引張強さは30〜40MPaであることを要し、好ましくは35〜39MPaである。該引張強さが上記範囲内であれば、押出機から吐出された積層シートを引取りながら延伸する際に、樹脂層の延伸配向による剛性の向上効果が得られる。該引張強さが小さすぎると剛性の向上効果を得ることが出来ない。一方、該引張強さが大きすぎると、樹脂層の剛性が強くなり過ぎて十分延伸することができない上に、積層発泡シートの引取りが困難となって積層発泡シートが得られなくなるおそれがある。
また、該樹脂層を構成する、混合物(II)の引張り破断伸びは7%以上であることを要し、好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上である。該破断伸びが7%未満の混合樹脂を用いると、押出された積層シートを引き取ることができない虞がある。なお、該引張り破断伸びの上限は、概ね50%であり、好ましくは20%である。
なお、混合物(II)の引張強さとは、混合物(II)を成形して樹脂シートとし、該樹脂シートについて、引張試験(JIS K7161に準拠、試験速度を500mm/分)を行なったときに、試験中に加わった最大引張応力のことをいう。また、混合物(II)の引張破断伸びとは、該樹脂シートについて同引張試験を行なったときに、試験片が破断したときの伸び(%)をいう。
本発明において、前記樹脂層を構成する混合物(II)の引張試験における引張強さと引張破断伸びは、本発明の積層発泡シートの製造を可能にする観点と積層発泡シートの剛性を向上させる観点の両面から重要である。
引張破断伸びが7%以上であっても、引張強さが過度に大きな値を示す場合には、得られる積層発泡シートは、樹脂層の剛性が高すぎるために曲げなどの変形に追従できずに、積層発泡シート表面に折れが発生しやすくなる虞がある。一方、樹脂層を構成する混合物(II)の引張り強さが小さすぎる場合には、製造上の問題は回避されるが、樹脂層の延伸による剛性向上が不十分なため、得られる積層発泡シートの剛性が不十分となるおそれがある。
さらに、引張強さが30〜40MPaである場合であっても、引張破断伸びが小さな値を示す場合には、積層発泡シート製造時に冷却しながら延伸するブローアップの過程で、樹脂層の伸びが不十分となるため、積層発泡シートに裂けが発生する虞がある。
従って、本発明においては、樹脂層を構成する混合物(II)の引張破断伸びと引張強さの両方が、前記要件を満足する場合のみ、積層発泡シートの製造安定性と剛性とのバランスをとることができ、剛性及び成形性に優れた積層発泡シートとなる。
本発明の積層発泡シートの厚みは、0.6〜1.6mmである。該厚みが薄すぎると、剛性が低下し容器として使用できない虞がある。一方、厚すぎると、熱成形により得られる容器が金型再現性を欠く上に、容器とした場合にロースタック性が失われる虞がある。かかる観点から、積層発泡シートの厚みは、0.7〜1.5mmがより好ましい。
該積層発泡シートの全体坪量は130〜260g/mである。該坪量が小さすぎると、剛性が低下し、容器として使用できなくなる虞がある。一方、該坪量が大きすぎると、軽量性が失われる虞がある。この点から、該全体坪量は、150〜240g/mがより好ましく、160〜220g/mが更に好ましい。
該積層発泡シートにおいては、前記樹脂層の坪量は、3〜15g/mである。この範囲の坪量の樹脂層を積層することにより、軽量性を維持しつつ、シートの剛性および成形品の剛性が向上する。
該坪量が小さすぎると、積層発泡シートの表面性が低下したり、剛性の向上という効果が発現しない虞がある。一方、該坪量が大きすぎると、軽量化が望まれる中で、積層発泡シート全体に占める樹脂層の坪量の比率が大きくなりすぎ、樹脂層の剛性が強くなっても、同時に発泡層の重量比率が下がるので(発泡層の坪量が小さくなるので)、内部の発泡層が弱くなって成形時にシートが折れ易くなるおそれがある。したがって、軽量化の観点から、樹脂層の積層重量を少なくして発泡層に樹脂重量を割り当てる必要がある。この観点から、樹脂層の坪量は、5〜14/mが好ましく、6〜12g/mがより好ましい。
該積層発泡シートにおいては、前記発泡層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたものであるが、発泡層の両面に樹脂層を積層することもできる。発泡層の両面に樹脂層が積層されている場合、各々の樹脂層の坪量が3〜15g/mであることが好ましく、より好ましくは5〜14/m、更に好ましくは6〜12g/mである。その際、両面の坪量比は基本的には1対1が好ましいが、それに限定されるものではない。但し、概ね1対2が限度で、好ましくは1対1.5以内である。両面に樹脂層をバランスよく配置することで、薄肉の積層シートであっても十分な剛性を有する積層発泡シートとなる。
本発明の積層発泡シートは、前記樹脂層が押出方向及び幅方向に延伸されていることにより、剛性が向上しているものである。この延伸の程度は、樹脂層表面から厚み方向100μmまでの表面部分(樹脂層と発泡層とを含む)についての熱機械分析を行なうことにより評価することができる。具体的には、樹脂層表面から厚み方向100μmまでの表面部分(樹脂層と発泡層とを含む)について、室温から160℃まで、昇温速度10℃/minでの熱機械分析により得られるTMA曲線において、押出方向の収縮率の最大値(以下、MD方向の表面最大収縮率ともいう。)が30〜40%であると共に、幅方向の収縮率の最大値(以下、TD方向の表面最大収縮率という。)が10〜20%である。上記範囲を満足することにより、剛性に優れると共に成形性に優れる積層発泡シートを得ることができる。
本明細書におけるTMAによる表面最大収縮率の測定は次のようにして行う。
測定対象の積層発泡シートについて、樹脂層の表面から厚み100μmまでの表面部をスライスして、長さ方向20mm、幅5mm、厚さ100μmの試験片を作製(MD方向の表面最大収縮率を測定する時はその試験片の長さ方向を発泡積層シートのMD方向と一致させ、TD方向の表面最大収縮率を測定するときは試験片の長さ方向を積層発泡シートのTD方向(幅)と一致させる)する。次に、図1に示すように、変位を0として支持管と検出棒によってチャック間距離(A)10mm、初期荷重1.0gとして試験片を支持した試料ホルダーを電気炉により25℃から160℃まで昇温速度10℃/minで加熱しながら、検出部によって、収縮によって生じた寸法変化を検出し、横軸を温度、縦軸を寸法変化の変位としてグラフ化し、表面最大収縮率を求めることができる。
図2に、TMA曲線の一例を示す。
MD方向の表面最大収縮率が30〜40%であれば、積層発泡シートの剛性向上効果が得られる。MD方向の表面最大収縮率が大きすぎると、MD方向の延伸が強くなりすぎて、全体の延伸のバランスが崩れ、成形性が低下する虞がある。一方、MD方向の表面最大収縮率が小さすぎると、所望される剛性向上効果が得られない。
なお、MD方向の表面最大収縮率は、前記混合物(II)の成分や配合、ダイリップでのスエルコントロール、発泡積層シートの押出速度と引取速度などに依存する。
TD方向最大収縮率が10〜20%であれば、剛性向上効果が得られる。TD方向の表面最大収縮率が大きすぎると、発泡積層シート全体の収縮率が幅方向に過度になって、全体の延伸のバランスが崩れるおそれがある。一方、TD方向の表面最大収縮率が小さすぎると、所望される剛性向上効果が得られない。なお、TD方向の表面最大収縮率は、前記混合物(II)の成分や配合、吐出後のブローアップ比などに依存する。
なお、本発明においては、押出機内で発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出ダイに導入し積層してから押出す際にダイ内部で延伸を行う方法や、積層された樹脂溶融物がダイから出た後に延伸を行なうなどの方法により、上記の特定の表面最大収縮率を有する積層発泡シートが得られる。該積層発泡シートは、その表層部分の剛性が延伸効果により向上していることから、熱成形、特にマッチモールド成形に適する積層発泡シートとなる。
本発明の積層発泡シートには、熱ラミネートなどにより、前記樹脂層の表面、又は片面にのみ樹脂層が積層されたシートの非積層面側にポリスチレン系樹脂フィルムを積層することにより、意匠性を付与した積層シートを得ることができる。
その場合、ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、14〜25μm以下が好ましい。厚み25μm以下のポリスチレン系樹脂フィルムであれば、フィルム層に接着剤を使用せずに、熱ラミネート法により容易に積層が可能である。
また、二次発泡倍率の変動を抑えるために接着剤を有したフィルムを低温で熱融着することもできる。
なお、前記積層発泡シートに、高密度ポリエチレン樹脂フィルムや直鎖状ポリエチレン樹脂フィルムやポリプロピレン樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム以外の合成樹脂フィルムを熱ラミネートにより積層しても良い。
本発明の積層発泡シート全体の見掛け密度は0.16〜0.28g/cmである。該見掛け密度が小さすぎると、剛性が低下する虞がある。一方、該見掛け密度が大きすぎると、軽量性を失う虞がある。かかる観点から、該見掛け密度は、より好ましくは0.18〜0.26g/cm、更に好ましくは0.19〜0.24g/cmである。
本発明の積層発泡シートの独立気泡率は70%以上であることが好ましい。独立気泡率が低いと、熱成形により得られる容器の剛性が低くなる。かかる観点から、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは83%以上である。
本発明の積層発泡シートの二次発泡倍率の最大値(以下、最大二次発泡倍率ともいう。)は1.8倍以上であることが好ましい。最大二次発泡倍率が1.8倍以上であれば、マッチモールド成形に好適な二次厚みとなる。即ち、マッチモールド成形における、雄型と雌型とを用いて両面から成形品全体を強く押し付けることで、積み高さバラツキの小さい容器を得ることができる。さらに、内勘合容器等の複雑な型形状であっても再現性良く賦形することが可能となる。その結果、得られる容器の積み高さのバラツキが大きくなったり、容器を多数積み上げたときに容器の柱が傾きやすくなる等の問題の発生が防止される。かかる観点から、該最大二次発泡倍率は、1.9倍以上が好ましく、より好ましくは2.0倍以上である。
なお、二次厚みとは、積層発泡シートが成形時に加熱ゾーンで加熱されて、発泡層が二次発泡した後の発泡シートの厚みをいう。
本発明で規定される積層発泡シートの最大二次発泡倍率の上限は概ね3.0倍である。最大二次発泡倍率が高すぎる場合には、成形時にプレスする際に上型と下型の間隙の寸法を超えて弾性回復が起きるため金型形状の再現性が低下しやすく、結果として成形品積み高さを低くすることが出来なかったり、積み高さのコントロールができなくなるおそれがある。上記観点から、最大二次発泡倍率の上限は、好ましくは2.8倍である。
ここで、二次発泡倍率は、加熱後の積層発泡シートの厚みを加熱前の積層発泡シート厚みで割った数値であり下記のとおり測定される。
積層発泡シートの加熱前の厚みは、次のとおり定められる。無作為に積層発泡シートから、縦、横のそれぞれの辺が、積層発泡シートの押出方向(MD)、幅方向(TD)と一致するようにして切り出される一辺260mmの正方形サンプルについて、サンプルの中央から押出方向に±80mm以内で任意に起点を定め、起点から幅方向両側のそれぞれに10mm間隔でそれぞれ7点を定める。起点を含めた合計15点について、小数点第二位まで測定可能な厚みゲージ(例えばPEACOCK製DIAL THICKNESS GAUGE)を用いて積層発泡シート厚みを測定し、その平均値を加熱前の積層発泡シート厚みとする。
加熱後の積層発泡シートの厚みは、次のとおり定められる。加熱前のシート厚みの測定が済んだ各サンプルを、縦300mm、横300mm、厚さ10mmサイズの正方形状の木製枠材であって、中央部に縦200mm、横200mmの正方形状の貫通孔が設けられた木製枠材を2枚用いて、サンプルの中央と木製枠の貫通孔の中央が一致するように積層発泡シートを2枚の木製枠材にて両側から挟み、続いて貫通孔を覆うことなくサンプルおよび木製枠がずれないように木製枠同士をクリップや万力などで強く固定する。このような木製枠材で固定されたサンプルを複数枚用意する。続いて、かかる状態に木製枠中に固定された積層発泡シートサンプル(No1)を、160℃に温度調節された空気循環式オーブン(タバイエスペック株式会社製 品番PERFECT OVEN PH−200)内に入れて4秒間加熱した後、オーブンから気温25℃の部屋に取り出し、放置して冷却する。次に、木製枠中に固定された積層発泡シートサンプル(No2)を、160℃に温度調節された同オーブンに入れて8秒間加熱した後、オーブンから気温25℃の部屋に取り出し、放置して冷却する。次に、木製枠中に固定された積層発泡シートサンプル(No3)を、160℃に温度調節された同オーブンに入れて12秒間加熱した後、オーブンから気温25℃の部屋に取り出し、放置して冷却する。更に、第4、第5、第6、・・・・第n(nは自然数)の各積層発泡シートサンプルについても、順次、同オーブンに入れて16秒間、20秒間、24秒間、・・・・n×4秒間(nは自然数)加熱した後、オーブンから気温25℃の部屋に取り出し、放置して冷却する。このように複数枚の積層発泡シートサンプルに対し4秒ずつ加熱時間を延長して加熱する理由は、後述する積層発泡シートの二次発泡厚みの最大値を確認するためである。
なお、加熱直後の積層発泡シートが木製枠から外れていたり、ずれが認められる場合には、正確な二次発泡厚みを示していないおそれがあるため、同ロットの別の積層発泡シートサンプルを使用して再度測定をやり直すものとする。
次に、冷却後の積層発泡シートサンプルのそれぞれについて、前記加熱前の厚みの測定と同様に、幅方向の15点について積層発泡シート厚みを測定し、各平均値を各規定秒数での加熱後の積層発泡シート厚みとする。
各規定秒数加熱のサンプルにおいて(加熱後の積層発泡シート厚み)/(加熱前の積層発泡シート厚み)を算出することにより、各規定秒数加熱における二次発泡倍率を算出し、得られた各測定値の中の最も大きな値を二次発泡倍率の最大値とする。
前記二次発泡倍率の測定において、加熱温度を160℃とする理由は、連続生産で加熱炉において積層発泡シートが加熱される際の雰囲気温度が約160℃であることによる。
なお、一般的に、発泡層を含む積層発泡シートにおいては、加熱温度(ただし熱成形に適切な温度範囲内であることが前提)が一定の場合、加熱時間が長くなるにつれて二次発泡倍率が大きくなる傾向がある。そして、十分に加熱されるとその二次発泡倍率の増加は止まり、極大値(最大値)を示し、その後は加熱オーバーにより発泡層の気泡の破壊が進んで逆に二次発泡倍率が低下していく傾向がある。
本発明において、前記積層発泡シートの160℃における、押出方向の加熱収縮率(160℃)は5〜50%であることが好ましく、幅方向の加熱収縮率(160℃)は5〜30%であることが好ましい。上記範囲内であれば、加熱成形に際して、収縮力が強すぎて積層発泡シートがクランプから外れることがないので、良好に成形を行なうことができ、金型の形状を良好に賦形することができる。上記観点から、押出方向の加熱収縮率(160℃)は10〜45%であることがより好ましく、幅方向の加熱収縮率(160℃)は、10〜25%であることがより好ましい。
本明細書における積層発泡シートの、160℃での押出方向の加熱収縮率は、積層発泡シートの押出方向の加熱前寸法から積層発泡シートの押出方向の加熱後寸法(160℃、28秒間加熱)を引算して得られた差を積層発泡シートの押出方向の加熱前寸法で除し、100を掛けて求められる値(%)である。一方、積層発泡シートの押出方向と直交する幅方向の加熱収縮率は、積層発泡シートの幅方向の加熱前寸法から積層発泡シートの幅方向の加熱後(160℃、28秒間加熱)寸法を引算して得られた差を積層発泡シートの幅方向の加熱前寸法で除し、100を掛けて求められる値(%)である。なお、上記の加熱条件(時間、温度)とする理由は、連続生産時の加熱炉において積層発泡シートが加熱される場合に近い条件であることによる。
本明細書における積層発泡シートの加熱収縮率は、次のようにして測定される。
まず、積層発泡シートから、縦、横のそれぞれの辺が、発泡層の押出方向、幅方向と一致するようにして一辺200mmの正方形サンプルを切り出す。次に正方形サンプルの一方の面に、MDと平行であって、その面の中央を通るサンプルを縦断する直線(A)を引くと共に、TDと平行であって同面の中央を通るサンプルを横断する直線(B)を引く。直線(A)と直線(B)はそれぞれ200mmの長さの直線となる。そして、直線(A)の長さ(200mm)は、上記積層発泡シートの押出方向の加熱前寸法であり、直線(B)の長さ(200mm)は、上記積層発泡シートの幅方向の加熱前寸法となる。
次に、縦300mm、横300mm、厚さ10mmサイズの正方形状の木製枠材であって、中央部に縦250mm、横250mmの正方形状の貫通孔が設けられた木製枠材を2枚用意する。各木製枠材の一方の面に、直径0.1mmの円形断面の針金を使用して、上記貫通孔上に縦横それぞれ20mm間隔の網状となるように、当該針金をそれぞれ釘で固定する。尚、針金が固定された側の反対側から木製枠材の貫通孔を見ると、針金は縦横に、それぞれ、20mm間隔で12本配列された目の粗い網状を呈している。次に、一方の木製枠材の針金固定側における枠の四隅に、それぞれ縦20mm、横10mm、厚み5mmの木製スぺーサーを固定する。
次に、上記2枚の木製型枠のスペーサーと針金によって形成される空間内(2枚の木製型枠を針金が固定されている側同士を、型枠の四片に設けられたスペーサにより5mmの間隔を保持しながら対向させることにより形成される空間内)に、上記正方形サンプルを枠やスペーサーにより束縛されないように配置し、その状態で上記2枚の木製型枠をクリップや万力などで強く固定する。一方、空気循環式オーブン(例えば、タバイエスペック株式会社製 品番PERFECT OVEN PH−200)の装置内の温度を160℃に、ダンパー開度を20%にそれぞれ設定し、その中に上記2枚の木製型枠に配置された状態の上記正方形サンプルを入れ、28秒加熱した後、オーブンから25℃の部屋に取り出して放置して冷却する。その後、加熱前の直線(A)に対応する直線又は曲線(a)の長さと、加熱前の直線(B)に対応する直線又は曲線(b)の長さをそれぞれ測定する。この場合、直線又は曲線(a)の長さが積層シートの押出方向の加熱後寸法となり、直線又は曲線(b)の長さが積層シートの幅方向の加熱後寸法となる。これらの測定結果に基づいてMDの加熱収縮率とTDの加熱収縮率が計算される。
なお、上記した木製枠材内に正方形サンプルを配置した状態でオーブン内で加熱する理由は、これにより、サンプルの加熱を阻害しないことや(粗い網状の針金の配置)、加熱時にサンプルの収縮を妨げないことや(木製スぺーサーの配置)、収縮時にサンプルを曲がり難くすること(粗い網状の針金と木製スぺーサーの配置)が可能となり、加熱収縮後の寸法の測定が容易となるためである。
次に、本発明の積層発泡シートの製造方法の好ましい例について説明する。
本発明の積層発泡シートは、共押出法により、発泡層の片面又は両面に樹脂層が積層されることにより製造される。具体的には、発泡層形成用押出機の出口に共押出用ダイが取り付けられ、そのダイに樹脂層形成用押出機が連結された装置を用いて、共押出用ダイ内で、発泡層形成用の樹脂溶融物と樹脂層形成用の樹脂溶融物とを積層してから押出発泡することにより、積層発泡シートが製造される。
まず、前記したポリスチレン系樹脂、必要に応じて添加される添加剤等を発泡層形成用押出機に供給し、加熱溶融し混練してから物理発泡剤を圧入して、発泡層形成用樹脂溶融物とする。
一方、前記したポリスチレン系樹脂とスチレン・ブタジエンブロック共重合体またはその水添物(樹脂(I))とを樹脂層形成用押出機に供給し、加熱溶融し混練して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。
前記発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出ダイに導入し、共押出用ダイ内で、発泡層形成用の樹脂溶融物と樹脂層形成用の樹脂溶融物とを合流させて、発泡層形成用の樹脂溶融物の少なくとも片側に樹脂層形成用の樹脂溶融物を積層させ、発泡層形成用樹脂溶融物を発泡させながら共押出を行なうことにより、発泡層の表面に樹脂層を形成し、さらに吐出後に引取りライン速度やブローアップ比を調整することにより、積層発泡シートが得られる。
共押出法により積層発泡シートを形成する方法には、共押出用フラットダイを用いてシート状に共押出発泡させて積層する方法と、共押出用環状ダイを用いて筒状積層発泡体を共押出発泡し、次いで筒状積層発泡体を円柱状冷却装置に沿わせて引取りながら切り開いてシート状の積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、コルゲートと呼ばれる波状模様の発生を抑えることや、積層発泡シートの加熱収縮率を好ましい範囲に制御することができるので、好ましい方法である。なお、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物との積層は、環状ダイ内で行なうことが好ましい。
なお、前記押出機、環状ダイ、円柱状冷却装置、筒状多層発泡体を切開く装置等は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
前記押出機に圧入する発泡剤としては、有機系物理発泡剤、無機系物理発泡剤等を、それぞれ単独で又は2以上組み合わせて用いられる。有機系物理発泡剤としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、メチルクロライド、エチルクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。無機系物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気等の不活性ガス、水が用いられる。また上記の物理発泡剤に化学発泡剤を併用することもできる。該化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、積層発泡シートの二次発泡性を調整する上で、ブタン或いは、ブタンを主成分とする混合発泡剤が好ましく、ブタンの配合割合が70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
本発明においては、前記のとおり、最大二次発泡倍率を1.8倍以上にすることが好ましい。具体的には、上記発泡剤を、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂100重量部当り1.2〜3.0重量部注入することにより、1.8倍以上の最大二次発泡倍率を達成することができる。
また、これら発泡剤は積層シートの加熱収縮率を小さめにコントロールする効果を有している。
前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂と共に押出機に供給される気泡調整剤としては、タルク、シリカ等の無機粉末や、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム或いは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。気泡調整剤の添加量は、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂100重量部当たり、通常は多くても5重量部程度である。
本発明の積層発泡シートを構成する樹脂層は、前記の通り、押出方向、幅方向に延伸されたものである。即ち、該樹脂層は、坪量3〜15g/mの薄いものであるが、延伸し配向されることにより、剛性が向上したものである。
延伸の方法としては、延伸しやすい原料の選択と、延伸可能な装置、製造条件の延伸方法の採用等がある。
延伸しやすい原料としては、前記樹脂層形成用樹脂溶融物がダイ内で容易に薄く伸び、ダイから出た後の低温状況でも良く伸びるものが好ましい。該原料としては、前記したように、ポリスチレン系樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物(樹脂(I))との混合物(II)であって、その引張強さが30〜40MPaであると共に引張り破断伸びが7%以上のものが用いられる。
本発明の積層発泡シートは、前記の通り、MD方向及びTD方向における特定の表面最大収縮率を有するものであり、更にMD方向及びTD方向における特定の加熱収縮率を有することが好ましいものである。このような表面最大収縮率、加熱収縮率を有する積層発泡シートは、積層発泡シートをMD方向及びTD方向に延伸することにより得ることができる。本発明において用いられる延伸方法としては、前記発泡層形成用樹脂溶融物と前記樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出ダイに導入し、ダイ内部で流れ方向(MD)に延ばしながら積層する際のダイ内での延伸方法と、樹脂溶融物がダイから押出された後のMD方向およびTD方向に引き伸ばすころによる、押出後の延伸方法が挙げられる。
ダイ内部で延伸を行う具体的な方法としては、樹脂層形成用樹脂溶融物を発泡層形成用樹脂溶融物に積層した後に、徐々に流路断面積を小さくすることで延伸したり、比較的短時間で流路径を小さくして延伸したりするなどの方法が挙げられ、これらを組み合せて用いることもできる。また、ダイ表面に樹脂の流動性を向上させる特殊コーティングを施すことも有効である。但し、ダイ内部で過度に延伸を行うと、成形時にそりが発生し易くなる虞がある。
該ダイから押出した後の延伸には、MD方向の延伸とTD方向の延伸がある。
ダイから出た後のMD方向の延伸は、樹脂溶融物の吐出速度に対してシートの引取速度を変えることにより行なわれる。ただし、引取速度はシートの坪量に影響するので、目的とするシート坪量の引取速度に最適な吐出速度とする必要がある。該吐出速度はダイ出口の間隙によって調整可能である。
具体的には、引取り速度を変えずにダイ出口の間隙を大きくして吐出速度を小さくし、樹脂溶融物の吐出速度とシートの引取速度との比を変えた場合には、MD方向の延伸が大きくなり、MD方向の表面最大収縮率が大きくなり、MD方向の加熱収縮率も大きくなる。但し、共押出で得られる積層発泡シートはMD方向への歪がかかりやすく、MD方向の表面最大収縮率が大きくなりやすいので注意が必要である。
一方、押出後のTD方向の延伸は、ブローアップ比を変える方法が採用される。これによりTD方向の表面最大収縮率、TD方向の加熱収縮率の調整が可能である。適正なブローアップ比は目的とするシートの構成によって多少変化するが、本発明の範囲のTD方向の表面最大収縮率を得るには、概ねブローアップ比を2.8〜3.2とすることが好ましい。
但し、押出後のMD方向やTD方向への過度な延伸は、積層発泡シートが過度に冷されて非発泡層が破断しやすくなる虞がある。このため、押出後の延伸と、前記ダイ内での延伸を組み合せることによって、薄く、且つ剛性に優れる樹脂層を有する積層発泡シートを得ることが可能となる。
前記ダイ内での延伸と押出後の延伸を組合わせることにより、MD方向の表面最大収縮率を30〜40%、TD方向の表面最大収縮率を10〜20%にすることができる。
また、押出方向の加熱収縮率(160℃)を5〜50%、幅方向の加熱収縮率(160℃)を5〜30%にすることができる。
また、前記積層された樹脂溶融物をダイから押出した後に、樹脂層と発泡層とを共に延伸することで全体の厚みを薄くすることができる。
また、ダイから押出された筒状積層発泡体をマンドレルまで引き取る過程で、発泡層や樹脂層の表面にエアーを吹きつけて冷却することで延伸の程度を強くすることができ、具体的には、エアー温度を低くすること或いは風量を増加させることにより、押出後のMD方向やTD方向への延伸の程度を強くすることができる。
なお、MD方向の延伸の程度は、前記MD方向の表面最大収縮率により評価することができる。例えば、MD方向の延伸の程度が小さくなると、前記MD方向の表面最大収縮率が小さくなる。
なお、TD方向の表面最大収縮率は、MD方向の表面最大収縮率よりも小さくなる傾向がある。
本発明の積層発泡シートは熱成形用途に好適に使用できるものである。その場合、発泡層の片面に樹脂層が積層されたものであっても、発泡層の両面に樹脂層が積層されたものであっても、そのままで熱成形用途に好適に使用可能である。更に、片面に樹脂層が積層された積層発泡シートの非樹脂層面側に樹脂フィルムが積層されたものも同様に熱成形用途に好適に使用可能である。
本発明の積層発泡シートを成形する場合には、真空成形、圧空成形や、これらの応用として、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形等やこれらを組合せた方法等が採用される。
本発明の積層発泡シートは、前記のように特定の表面最大収縮率を有し、該積層発泡シートは、その表層部分の剛性が延伸効果により向上していることから、熱成形により得られる容器は剛性に優れるものである。更に、160℃における二次発泡倍率の最大値が1.8倍以上に調整された積層発泡シートは、前記の各種成形方法の中でも、加熱軟化させた後、雄型及び/又は雌型からなる金型を使用して成形するマッチモールド成形に好適に使用できるものであり、積高さが低く、積高さバラつきが小さく、内勘合タイプなどの複雑な形状を有する容器を得ることができるものである。
以下、本発明の積層発泡シートについて、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
発泡層、樹脂層に用いた原料樹脂を、表1に示した。
(実施例1)
製造装置として、バレル内径115mmの第一押出機と、第一押出機に接続されたバレル内径150mmの第二押出機とからなるタンデム型の発泡層形成用押出機を用い、該第二押出機の出口に共押出用環状ダイ(リップ径210mm、間隙0.40mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイに片面の樹脂層1形成用第三押出機(内径65mm)を連結させた共押出装置を用いた。発泡層の両面に樹脂層1と樹脂層2を積層する場合には、前記樹脂層形成用第三押出機(内径65mm)と樹脂層形成用第四押出機(内径90mm)を前記共押出用環状ダイに連結させた。
表1、2に示す発泡層用ポリスチレン樹脂、気泡核剤としてタルク(ポリスチレン樹脂とタルクの総量に対する重量割合として3.1重量%)を第一押出機に供給して加熱、溶融、混練し、これにイソブタンを表2中に示す量注入し、第二押出機中で発泡に適した樹脂温度に調整して、発泡層形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイ中に導入した。
同時に表1、2に示す樹脂層用の樹脂を第三押出機に供給して、加熱、溶融、混練し、樹脂層1形成用樹脂溶融物とし、共押出用環状ダイに導入した。
共押出用環状ダイ中で、筒状に流動する発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層1形成用樹脂溶融物とを合流させて積層してからダイリップを通して筒状に押出した後、外面側流量1.5m/min、内面側2.3m/minの冷却エアで冷却して、マンドレルを通して引取り、上下二枚に切開いて本発明の積層発泡シートを得た。
吐出量は発泡層形成用樹脂溶融物を200kg/hrとし、発泡層形成用樹脂溶融物150g/mに対し樹脂層1の坪量が10g/mとなるように、第三押出機の吐出量を13.3kg/hrに制御し、このときの引取り速度を10.6m/分に調整して、積層発泡シートを得た。
なお、実施例、比較例における製造条件、積層発泡シートの物性などを表2、3に記す。
(実施例2)
発泡層の坪量、樹脂層1の坪量を表に示した坪量にするため、発泡層形成用樹脂溶融物の吐出量を実施例1と同等、第三押出機の吐出量を12.4kg/hr、引取り速度7.0m/分に調整した以外は実施例1と同様に積層シートを得た。
(実施例3)
樹脂層1の坪量を表に示した坪量にするため、発泡層形成用樹脂溶融物の吐出量は実施例1と同等、第三押出機の吐出量を7.1kg/hr、引取り速度を11.7m/分に調整した以外は実施例1と同様に積層シートを得た。
発泡層の非積層表面にフローマークの兆候が見られたが軽微であり、成形品にすれば問題とならないレベルであった。
(実施例4)
樹脂層1の原料配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に実施して積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性を表2に示す。
(実施例5)
樹脂層1の原料配合割合を変更した以外は、実施例1と同様に実施して積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの物性を表2に示す。
(実施例6)
発泡剤を二酸化炭素:イソブタン=1:1の混合ガス(重量比)とした以外は実施例1と同様に実施した。得られた積層発泡シートの物性を表2に示す
(実施例7)
両面積層構造の積層発泡シートとするために、第3押出機と第4押出機を使用して樹脂層1を発泡層の一方の面、樹脂層2を発泡層の他方の面側に積層した。樹脂層1、2の吐出量をそれぞれ13.3kg/hrとし、引取速度を8.2m/minとし、発泡剤注入量を変更した以外、実施例1と同様に実施した。両面積層したことによって、片面積層シートよりも剛性の向上がみられた。
(実施例8)
実施例1で得た積層発泡シートの非樹脂層側に、ポリスチレン樹脂フィルム(表3に示した)を重ねて、温度200℃にコントロールされた直径400mmのテトラフルオロエチレン製ロールとバックアップロールとの間(間隙0.3mm)を20m/minで通過させることにより、樹脂フィルムを積層シートの(非積層)面に圧着し積層した。
このように、印刷のあるポリスチレン樹脂フィルムを積層することで、意匠性に優れる容器を得ることが可能な積層シートが得られた。
(比較例1)
樹脂層の原料を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様に積層発泡シートを得た。
得られたシートは、曲げ弾性率比が小さく剛性に劣り、樹脂層の積層による強度アップの効果が小さいものであった。
これは、同等の延伸を与えて製造しても、樹脂層を形成する樹脂の選択によって剛性を満足する積層シートが得られないことを表している。
(比較例2)
樹脂層の原料を表1に示すものに変更した以外、実施例1と同様に実施した。比較例1と同様に得られたシートは、曲げ弾性率比が小さく剛性に劣り、樹脂層1の積層による強度アップ効果の小さいものであった。
(比較例3)
ブローアップ比を小さくした以外は、実施例1と同様に実施した。
表層のTD方向の延伸が不十分で、積層発泡シートのTD方向の表面最大収縮率を満足せず、シートの剛性の向上が不十分であった。
また、成形ではMD方向の最大加熱収縮率とTD方向の最大加熱収縮率とのバランスが悪化したことにより、シート引き込みに不具合を生じ、成形品のフランジにシートの重なり皺が発生した。
これは、原料が同一であっても延伸の程度によっては、剛性を満足する積層シートが得られなかったり、熱成形性が低下したりすることを表している。
(比較例4)
樹脂層1の原料を表1に示すものに変更した以外、実施例1と同様に実施した。樹脂(I)を含有していないことから、得られたシートは、曲げ弾性率比が小さく剛性に劣り、樹脂層1の積層による強度アップを果たせなかった。
(比較例5)
樹脂層1、2の原料を表4に示すものに変更した以外、実施例7と同様に実施した。得られた両面積層発泡シートは、同様に、樹脂層を両面に有する実施例7と比較すると、曲げ弾性率比が小さく剛性に劣り、樹脂層1、2の積層による強度アップは不十分であった。


表2〜3における物性、曲げ弾性率、熱成形性、積み高さの測定、評価は次のように行った。
(積層発泡シート厚み、発泡層厚み、樹脂層厚み)
積層発泡シートの厚み、発泡層の厚み、樹脂層の厚みの測定方法としては、積層発泡シートを幅方向に沿って垂直に切断して、その切断面、即ち、幅方向垂直断面において、一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に合計九箇所の地点について顕微鏡写真撮影を行い、得られた各々の写真に基づいて積層発泡シートの厚み、発泡層の厚み、樹脂層の厚みを求め、九箇所の算術平均値をもって各々の厚みとした。
(積層発泡シート坪量、樹脂層坪量、発泡層坪量)
積層発泡シートの坪量、樹脂層の坪量、発泡層の坪量の測定方法としては、積層発泡シートから、積層発泡シートの押出方向(MD方向)と一致する方向に50cm、且つ積層発泡シートのMDと直交する幅方向(TD方向)と一致する方向に50cmの正方形のサンプルを、無作為に複数個所(5箇所以上が好ましい)切り出した。尚、この際、積層発泡シートTD方向の中央部とサンプルTD方向の中央部が一致するようにした。
次に、サンプルの重量を測定し、その測定値を1m当たりの積層発泡シートの重量(g)に換算し、これを積層発泡シートの坪量「t」(g/m)とした。樹脂層の1m当たりの重量である樹脂層の坪量「h」(g/m)は、樹脂層の密度に上記の通り求められる樹脂層の厚みを掛算し、1m当たりの積層発泡シートの重量(g)に換算することによって求めた。また、発泡層の1m当たりの重量(g)である発泡層の坪量(g/m)は、積層発泡シートの坪量「t」(g/m)から樹脂層の坪量「h」(g/m)を引算して各サンプルの坪量を求めた。得られた値の平均値を、積層発泡シート坪量、樹脂層坪量、発泡層坪量とした。
(積層発泡シートの見掛け密度)
積層発泡シートの見掛け密度は、発泡シートの全幅にわたり、上記坪量の測定と同様に、無作為に複数箇所(5箇所以上が望ましい)切り出した、試験片の重量(g)を該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で除した値を単位換算(g/cm)して各サンプルの見掛け密度を求め、得られた値の平均値を見掛け密度とした。
(引張強さ)
混合物(II)の引張強さは、JIS K6923−2(1997)の第3.3項に基づいて、厚み1.5mm±0.1mmに成形し得られた樹脂シートから、JIS K7139−2009年に従って機械加工によってタイプA2試験片の形状にしたものを試験片とし、同JIS K7161に準拠して試験速度を500mm/分として引張試験を行い、試験片について試験中に加わった最大引張り応力として引張強さを求めた。なお、試験は、異なる5つの試験片について行い、計5回で得られた測定値の平均値とした。
(引張り破断伸び)
前記混合物の引張り破断伸びは、前述の引張強さと同様に、JIS K6923−2(1997)の第3.3項に基づいて、厚み1.5mm±0.1mmに成形し得られた樹脂シートから、JIS K7139−2009年に従って機械加工によってタイプA2試験片の形状にしたものを試験片とし、JIS K7161に準拠して試験速度を500mm/分として引張り試験を行い、試験片が破断した時の伸び(%)として引張り破断伸びを求めた。なお、試験は異なる5つの試験片について行い、の計5回で得られた測定値の平均値とした。
(表面最大収縮率)
本明細書におけるTMAによる表面最大収縮率の測定は次のようにして行った。
測定対象の積層発泡シートについて、樹脂層の表面から厚み100μmまでの表面部をスライスして、長さ方向20mm、幅5mm、厚さ100μmの試験片を作製した。MD方向の表面最大収縮率を測定する時はその試験片の長さ方向を発泡積層シートのMDと一致させ、TD方向の表面最大収縮率を測定するときは試験片の長さ方向を積層発泡シートのTD方向(幅)と一致させた。次に、島津製作所(株) 熱機械分析装置(TMA―50)を使用して、変位を0として支持管と検出棒によってチャック間距離(A)10mm、チャックオフセット:3.0g、初期荷重1.0gとして試験片を支持した試料ホルダーを電気炉により25℃から160℃まで昇温速度10℃/minで加熱しながら、検出部によって、該収縮によって生じた寸法変化を検出し、横軸を温度、縦軸を寸法変化の変位としてグラフ化し、表面最大収縮率を求めた。
なお、試験片の数(N)はMD、TDともに5とし、その平均値をMD、TDの表面最大収縮率として採用した。
(曲げ弾性率)
積層発泡シートの曲げ弾性率は、JIS K 7203(1982)に準拠して、積層発泡シートのTD方向について測定し、得られた値を相加平均した値を曲げ弾性率とした。具体的な測定法としては、長さ100mm×幅25mm×積層発泡シートの厚みの試験片用い、支点の先端R=5(mm)、加圧の先端R=5(mm)、支点間距離が30mm、曲げ速度が10mm/分の条件にて測定を行なった。なお、測定には加圧する位置が重ならないように積層シートのTD方向に均等に採取された10個以上の試験片を用い、それぞれの試験片につきTD方向についての測定値を得て、測定値の小さいものから5個の相加平均値を算出し、曲げ弾性率として採用した。
測定値の小さいものを選択する理由は、積層発泡シートのTD方向の不均一性により、積層シートの剛性の評価がTD方向にバラツキをもつ場合を考慮したものである。
なお、同設備で、樹脂層を積層しない、同じ見掛け密度、厚みを持つ単層発泡シートを製造した。具体的には、共押出を実施中に樹脂層の原料供給を止め、押出機の運転を停止することで樹脂層を積層しない単層発泡シートを得た。このとき、シートの厚みが変わることがあるが、発泡層のガス量を変更することで、樹脂層を積層したシートと見掛け密度が同じだが、樹脂層が積層されていない(発泡層のみの)シートとなるように調整した。
本発明の積層発泡シートと、上記方法により得られた単層発泡シートの曲げ弾性率を比較することによって、剛性の向上効果を確認した。具体的には、両者の曲げ弾性率比(積層発泡シート/単層発泡シート)を算出し、その値が大きくなるほど、剛性が向上していると判断できる。例えば、実施例1において、樹脂層を積層しない単層発泡シートの曲げ弾性率315MPaに対し、積層したシートの曲げ弾性率は375MPaとなり、曲げ弾性率比は1.19となるので、単層発泡シートに対して19%剛性が向上していることが認められる。
(熱成形性)
熱成形性は以下の通り評価した。
○・・・成形性良好(成形不具合等なし)
×・・・不具合あり(具体的には、成形品に皺が発生するなどの成形不良が起きた)
なお、成形は、浅野研究所製 品番 FKS−0631−10の成形機を用いてマッチモールド真空成形により、ヒータ温度330℃、加熱時間7秒±1秒の条件において、サイズ縦120mm×横200mm×深さ25mm、スタック部分の側壁厚み1.5mm、積み高さピッチ2.85mmのトレー金型を用いて、熱成形を行なった。金型の上型と下型がつくる最小間隙はスタック部分の1.5mmとした。
(金型再現性)
上記の熱成形を行い、以下の通り評価した。
◎・・・良好
○ ・・・容器の角が少々あまくなる程度である
×・・・型が再現できない
(積み高さ)
それぞれ得られた成形品について、熱成形性、100枚積み高さを測定した。具体的には、平らなところで20枚以上の成形品を積み重ね、(全体の高さー最底部の一枚の高さ)を(積み重ねた枚数―1)で除してスタックピッチを求め、さらに、(スタックピッチ×99+最低部の一枚高さ)の換算を行なって100枚積み高さとした。
積み高さは以下の基準で評価した。
◎・・・300mm以下
○・・・350mm以下
△・・・380mm未満
×・・・380mm以上



Claims (5)

  1. ポリスチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が共押出により積層されてなる、見掛け密度0.16〜0.28g/cm、厚み0.6〜1.6mm、全体坪量130〜260g/mのポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、
    該樹脂層の坪量が3〜15g/mであり、
    該樹脂層が、ポリスチレン系樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物との混合物から構成されており、
    該混合物の引張強さが30〜40MPaであると共に引張り破断伸びが7%以上であり、
    該樹脂層表面から厚み方向100μmまでの表面部分(樹脂層と発泡層とを含む)について、室温から160℃まで昇温速度10℃/minでの熱機械分析により得られるTMA曲線における、押出方向の収縮率の最大値が30〜40%であると共に、幅方向の収縮率の最大値が10〜20%であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
  2. 前記スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物中のスチレン成分量が50〜85重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
  3. 前記混合物中の前記スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水添物の含有量が、5〜40重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
  4. 前記積層発泡シートの160℃における二次発泡倍率の最大値が1.8倍以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
  5. 前記積層発泡シートの160℃における、幅方向の加熱収縮率が5〜30%であり、押出方向の加熱収縮率が5〜50%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。





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