JP2014035993A - ブレーカー及びそれを備えた安全回路並びに2次電池 - Google Patents

ブレーカー及びそれを備えた安全回路並びに2次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】ブレーカーにおいて、外部の温度上昇に対しては敏感に反応し、電流の一時的な増加に対しては過敏に反応しないようにすることにより、安全性と使い勝手の両立を図ると共に、接触抵抗の低減と優れた温度特性の維持を図る。
【解決手段】可動片4が、可動接点3を固定接点21に押圧するための弾性力を発生する弾性部43と、ケース7に埋設されたカバー片8と当接する伝熱部42cを有する。可動片4で発生するジュール熱は、伝熱部42cを介してカバー片8に伝導し、カバー片8から外部に放出され、可動片4の過熱が抑制される。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気機器の2次電池パック等に内蔵される小型のブレーカーに関するものである。
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている(図10及び図11参照)。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
ブレーカーには、温度変化に応じて動作し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片(ベースターミナル)、可動片(可動アーム)、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び可動片の端子が電気機器の電気回路に接続されて使用される。
WO2011/105175号公報
ブレーカーがノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機等の電気機器に用いられる場合、2次電池の放電時にブレーカーに流れる電流は、LCD等の表示装置の明るさ等に応じて変動し、その設定如何によっては、ブレーカー内部の可動片に大きな電流が流れる。また、電気機器の起動時や高度な演算処理の実行時等によりCPUの負荷が一時的に大きくなったときにも、ブレーカー内部の可動片に大きな電流が流れる。ところがブレーカーの小型化を図るために可動片の断面積が小さく設計されている都合上、可動片はある程度大きな電気抵抗を許容せざるを得ない。このような可動片に一時的であっても大きな電流が流れると、可動片において発生するジュール熱が熱応動素子に伝わり、熱応動素子の温度が上昇する。熱応動素子は、自身の温度が作動温度に達すると変形し、固定片と可動片との間の導通を遮断し、電気機器各部への電力の供給が絶たれる。このため、ブレーカーに流れる電流によって熱応動素子が過度に敏感にすると、電気機器各部への電力の供給が頻繁に絶たれることになり、電気機器の使い勝手が阻害される。
一方、2次電池の過充電又は過放電の際には、2次電池の温度すなわちブレーカーの周辺温度が過度に上昇し、熱応動素子の作動温度に達する。この場合は、機器の安全性を確保するために、速やかに熱応動素子を作動させて固定片と可動片との間の導通を遮断する必要がある。すなわち、ブレーカーにおける熱応動素子は、ブレーカー外部の温度上昇に対しては敏感に反応し作動する必要がある反面、ブレーカーに流れる電流の一時的な増加に対してはある程度鈍感に反応する特性が好ましい。
また、ブレーカーには、電気機器への実装時又は電気機器の使用時に、曲げ・撓み・捻り等の種々の応力が加えられることがある。ブレーカーに上述した応力が加えられると、ケースが歪み、固定片に対する可動片の姿勢が変動し、固定接点と可動接点との位置関係が不安定となり、接触抵抗の増大又は温度特性の悪化などの不具合が懸念される。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ブレーカー外部の温度上昇に対しては敏感に反応する反面、ブレーカーに流れる電流の一時的な増加に対しては過敏に反応しないようにすることにより、安全性と使い勝手の両立を図ると共に、接触抵抗の低減と優れた温度特性の維持を図ったブレーカーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容するケースとを備えたブレーカーにおいて、前記ケースには、熱を放出する放熱片が一体に成形され、前記ケースは、前記可動片と前記放熱片との間に介在し、前記可動片と前記放熱片とを結合する結合部を有し、前記可動片は、少なくとも前記可動接点が前記固定接点と接触状態にあるとき前記放熱片と当接して該可動片の熱を伝達する伝熱部を有することを特徴とする。
この発明において、前記ケースは、前記固定片をインサートして成形される第1ケースと、前記放熱片が一体に成形され、第1ケースに装着される第2ケースを有し、前記伝熱部は、前記放熱片と当接して弾性変形し、前記可動片を前記第1ケースの側に付勢することが好ましい。
この発明において、前記可動片は、前記第1ケースと前記第2ケースによって挟み込まれて前記ケースに対して固定される固定部を有し、前記伝熱部は、前記固定部から延出されていることが好ましい。
この発明において、前記伝熱部は、前記弾性部とは独立して前記固定部から延出されていることが好ましい。
この発明において、前記可動片は、前記第1ケースと前記第2ケースによって挟み込まれて前記ケースに対して固定される固定部を有し、前記伝熱部は、前記固定部に形成されていることが好ましい。
この発明において、前記ケースは、前記放熱片を覆うカバー部と、前記カバー部から前記放熱片の一部を露出させるための開孔を有することが好ましい。
また、本発明の電気機器用の安全回路は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
また、本発明の2次電池パックは、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
本発明のブレーカーによれば、可動接点が固定接点と接触状態にあるとき、伝熱部が放熱片と当接して可動片及び両接点間において発生するジュール熱を放熱片に伝達する。そして、放熱片が伝熱部によって伝達された熱を放出することにより、可動片等の発熱が抑制される。これにより、ブレーカーに流れる電流の一時的な増加によって、熱応動素子の温度が作動温度まで上昇し、熱応動素子が過敏に反応し動作することが抑制される。また、可動片と放熱片との間に介在する結合部によって可動片と放熱片とが結合されるので、可動片の及びその周辺部の剛性が高められ、ブレーカーに曲げ・撓み・捻り等の応力が加えられた場合であっても、固定片に対する可動片の姿勢が安定する。これにより、安全性と使い勝手の両立を図りつつ、接触抵抗の低減と優れた温度特性を維持できるようになる。また、結合部が可動片と放熱片との間に介在するので、結合部を挟んで可動片と放熱片との間では、直接的な熱交換が生じない。従って、大きな電流が継続的にブレーカーに流れる状況においては、可動片からカバー片への過度の熱移動が制限されるので、熱応動素子の作動が遅延することを抑制できる。
また、伝熱部が放熱片と当接して弾性変形し、可動片を固定片がインサート成形されている第1ケースの側に付勢する構成によれば、固定接点と可動接点との接触抵抗を減少させて、ジュール熱を低下させることができる。これにより、ブレーカーに流れる電流の一時的な増加によって、熱応動素子の温度が作動温度まで上昇し、熱応動素子が過敏に反応し動作することがより一層抑制される。また、同構成によれば、固定片がインサート成形されている第1ケースに対する可動片の姿勢が安定するので、可動接点と固定接点との位置関係がより一層安定する。
また、第1ケースと第2ケースによって挟み込まれて固定される固定部から伝熱部が延出されている構成によれば、第2ケースにおいて伝熱部と当接する部位すなわち放熱片の形態の自由度を高めることができる。例えば、固定部から離れた場所に伝熱部と当接する放熱部を設けることができる。これにより、ブレーカーの設計自由度を高めることが可能となる。
また、伝熱部が弾性部とは独立して固定部から延出されている構成によれば、弾性部の弾性力と伝熱部の弾性力とをそれぞれ独立して自由に設定できるので、伝熱部の弾性変形が弾性部の姿勢に影響を及ぼすことがない。これにより、可動接点と固定接点との位置関係がより一層安定する。
また、第1ケースと第2ケースによって挟み込まれて固定される固定部に、伝熱部が形成される構成によれば、弾性部の弾性力と伝熱部の弾性力とをそれぞれ独立して自由に設定できるので、伝熱部の弾性変形が弾性部の姿勢に影響を及ぼすことがない。これにより、可動接点と固定接点との位置関係がより一層安定する。
また、ケースは、放熱片を覆うカバー部と、カバー部から放熱片の一部を露出させるための開孔を有する構成によれば、ブレーカーに流れる電流の一時的な増加によって、可動片の温度が急激に上昇した際に、放熱片の開孔から露出されている部分から熱をブレーカーの外部に放出し、熱応動素子が過敏に反応し動作することが抑制される。一方、熱応動素子が変形し、可動接点と固定接点とが一旦非導通状態となった場合には、放熱片を覆うカバー部によって放熱片からブレーカーの外部に放出される熱量を抑制できるので、両接点の非導通状態から導通状態への復帰を遅延させることができる。
また、本発明のブレーカーを備えた安全回路又は2次電池パックによれば、機器の安全性と使い勝手の両立を図ると共に、ブレーカーの通電抵抗の低減と優れた温度特性が得られる安全回路又は2次電池パックを製造できる。
本発明の一実施形態によるブレーカーの構成を示す組み立て斜視図。 通常の充電又は放電状態におけるブレーカーの動作を示す断面図。 過充電状態又は異常時などにおけるブレーカーの動作を示す断面図。 同ブレーカーに適用される可動片の構成を示す斜視図。 放熱片が成形され、カバー部材が放熱片をインサートして成形される工程を時系列で示す断面図。 樹脂ベースに可動片が組み込まれ、カバー部材が装着される様子を時系列で示す断面図。 同ブレーカーの伝熱部の周辺を拡大して示す断面図。 可動片の変形例を示す斜視図。 同可動片の変形例を適用したブレーカーの伝熱部の周辺を拡大して示す斜視図。 本発明のブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。 本発明のブレーカーを備えた安全回路の回路図。
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収納するケース7等によって構成されている。ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72とカバー片(放熱片)8等によって構成されている。
固定片2は、リン青銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部と電気的に接続される端子22が形成され、他端部の近傍にはPTCサーミスター6が載置されている。PTCサーミスター6は、固定片2の他端部の近傍に3箇所形成された凸状のダボ(小突起)の上に載置される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73bから露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に露出されている。
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には外部回路と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に露出される。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。なお、本出願においては、可動片4において、可動接点3が接合されている面(すなわち図1において下側の面)を裏(うら)面、その反対側の面を表(おもて)面として説明している。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、固定部42(アーム状の可動片4の基端に相当)、及び弾性部(第1弾性部)43を有している。固定部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって裏表両面側から挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。樹脂ベース71とカバー部材72には、可動片4の固定部42と当接し、固定部42を固定状態で保持する当接部74と当接部(結合部)79がそれぞれ形成されている。本実施形態では、樹脂ベース71の収納部73の外縁から樹脂ベース71の外壁に亘る領域に当接部74が形成されている。また、カバー部材72において、段部77を含み、可動片4を挟んで当接部74と対向する領域に当接部79が形成されている。固定部42は、その裏面において樹脂ベース71の当接部74と当接し、その表面においてカバー部材72の当接部79と当接する。可動片4は、当接部74及び当接部79によって固定部42の裏表両面から挟み込まれて、ケース7に対して固定される。
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の小突起44が形成されている。小突起44と熱応動素子5とは接触して、小突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図1、図2及び図3参照)。
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通し、樹脂ベース71の突起74aが挿通される貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された斜面47と、樹脂ベース71の位置決め部75と係合される一対の係合部48と、可動片4の長手方向に対して垂直な短手方向に可動片4の一部が切除されたくびれ部49が形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。貫通穴45は、可動片4の長手方向の中心線上に設けられている。斜面47は、可動片4の方向に沿って連続して形成されている。係合部48は、可動片4の短手方向に沿って2箇所に設けられている。
貫通穴45は、可動片4の固定部42に形成されている。固定部42は、弾性部43に対して可動片4の短手方向に幅広に形成されている。これにより、固定部42における可動片4の長手方向に垂直な断面積が、弾性部43における該断面積に対して大きい箇所となる。また、貫通穴45は、平面視で(可動片4の厚み方向に視て)可動片4の短手方向に長い長円形状に形成されている。
係合部48は、くびれ部49の端子41の側の端縁にて形成される。くびれ部49は、固定部42を挟んで弾性部43とは反対側で、固定部42と端子41の間に配設されている。くびれ部49の幅寸法(可動片4の短手方向の長さ寸法、以下同様)は、弾性部43の幅寸法に対して同等以下に設定されているのが望ましいが、少なくとも固定部42及び端子41の幅寸法よりも小さく設定されていればよい。本実施形態におけるくびれ部49は、上記特許文献1における第2弾性部としての機能を有しており、端子41に加えられた外力や衝撃を吸収し、可動接点3の位置を適正に維持する。
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。
ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収納するための収納部73及び可動片4を収納するための開口73a,73bなどが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収納部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
また、樹脂ベース71は、可動片4の貫通穴45に挿通される突起74aと、可動片4を位置決めするための一対の位置決め部75と、可動片4の端子41を外部に露出させるための窓76を有する。突起74aは、貫通穴45に対応し、平面視で長円形状に形成され、樹脂ベース71を補強する。突起74aの高さすなわち突出量は、可動片4の厚みより大きく設定され、カバー部材72の裏面には、突起74aの頂部に対応する凹部が必要に応じて設けられる。位置決め部75は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。本実施形態では、窓76の存在によって、樹脂ベース71の側壁の一部が可動片4のくびれ部49に対応する形状に形成され、位置決め部75を構成する。すなわち、位置決め部75は、くびれ部49の近傍において切除された部分に介在し、樹脂ベース71を補強する。
カバー部材72は、その内壁面から可動片4の段曲げ部46に対応する形状に突出する段部77と、段部77に形成された斜面78(図6参照)とを有する。斜面78は、可動片4の斜面47に対応し、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されている。
カバー部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、図2及び図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材72のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。カバー部材72の天壁(カバー部)72aには、開孔72bが形成されている。開孔72bは、カバー部材72の天壁72aを貫通し、カバー片8の表面の中央部81を露出させる。また、カバー片8は、端子41の側においてカバー部材72の側壁の開孔から突出して露出される突出部82を有する。カバー片8は、ケース7の内部の熱を中央部81及び突出部82からケース7の外部に放出する。
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収納した樹脂ベース71の収納部73を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
図4は、可動片4の構成を示す。可動片4は、固定部42から可動接点3の側に延出された一対の舌状の伝熱部(第2弾性部)42aを有する。一対の伝熱部42aは、弾性部43を挟んで弾性部43と平行に固定部42から延出される。弾性部43と各伝熱部42aとの間には、可動片4を厚み方向に貫通する溝42bが形成され、弾性部43と各伝熱部42aとが分離される。すなわち、各伝熱部42aは、弾性部43とは独立して固定部42から延出される。従って、それぞれが独立して変形可能であり、弾性部43の弾性変形が各伝熱部42aの位置及び姿勢等に影響を及ぼすことがなく、各伝熱部42aの弾性変形が弾性部43の位置及び姿勢等に影響を及ぼすこともない。各伝熱部42aは、可動片4の表面側に隆起し、段曲げされ、その先端部が固定部42及び弾性部43に対して側面視で上方に位置される(図6等参照)。なお、伝熱部42aは、弾性部43と平行に固定部42から延出される形態に限られず、可動片4の短手方向に延出される形態であってもよい。また、貫通穴45の内側に延出される形態であってもよい。この形態においては、伝熱部42aとの干渉を回避するために、突起74aの形状も変更される。
図5は、カバー片8が成形され、カバー部材72がカバー片8をインサートして成形される工程を時系列で示す。図5(a)に示すように、カバー片8を構成する金属片80は、リン青銅等を主成分とする母材をプレス加工にて打ち抜くことにより形成される。この段階では、金属片80は、金属片80を搬送するためのキャリア85と連結されている。また、金属片80には、必要に応じてカバー片8の強度・剛性を高めるため、及び表面積を増大させて放熱効果を高めるためのビード(図示せず)が適宜形成される。図5(b)に示すように、カバー部材72を成型するための金型は、第1金型201及び第2金型202によって構成される。金属片80は、キャリア85を介して把持・搬送されて、第1金型201の載置面201aの上に装填される。第2金型202には、第1金型201の載置面201aの一部(中央部)と対向する位置に、カバー片8を押圧し固定するための押え部202aが形成されている。
図5(c)に示すように、第1金型201に対して第2金型202が相対的に移動して型閉じされると、第1金型201及び第2金型202によってキャビティ空間203が区画される。押え部202aは、第2金型202からキャビティ空間203に突出し、押え部202aの頂部がカバー片8の表面と当接し、型締め時にカバー片8を押圧する。これにより、カバー片8は、載置面201aと押え部202aによって挟み込まれて固定される。また、キャビティ空間203の外部においても、キャリア85が第1金型201及び第2金型202によって固定される。このように複数の箇所で、カバー片8を構成する金属片80が第1金型201及び第2金型202によって固定されるので、樹脂材料を充填する際にも、カバー片8の位置・姿勢が安定する。
第1金型201及び第2金型202によって区画されたキャビティ空間203には、カバー部材72を構成する樹脂材料が充填され、その硬化後にカバー部材72を離型することにより、図5(d)に示すように、カバー片8をインサートしたカバー部材72が得られる。カバー部材72の表面には、押え部202aによって開孔72bが形成され、開孔72bからカバー片8の中央部81が露出される。また、カバー部材72の裏面には、載置面201aによって凹部72cが形成され、凹部72cからカバー片8の裏面が露出される。カバー部材72の端面からは、キャリア85が突出している。そして、キャリア85の一部である突出部82をカバー部材72の側に残して、キャリア85を切断することにより、図5(e)に示すように、カバー部材72が完成する。
図6(a)(b)は、樹脂ベース71に可動片4が組み込まれ、カバー部材72が装着されて溶着される様子を時系列で示す。可動片4は、樹脂ベース71の開口73a,73bに案内されて樹脂ベース71に組み込まれる。このとき、図1に示すように、可動片4に形成されているくびれ部49の両側の係合部48に位置決め部75が係合されると共に、貫通穴45に樹脂ベース71の突起74aが挿通される。また、貫通穴45に突起74aが挿通されることに加え、一対の係合部48と一対の位置決め部75との係合により、樹脂ベース71に対する可動片4の回転が規制され、仮の位置決めが容易に行われる。
この仮の位置合わせの段階では、樹脂ベース71に対する可動片4の位置合わせが正確になされている必要はない。また、可動片4は、後の工程で最終的な位置合わせができるように、樹脂ベース71の上に載置された状態であり、固定されてはいない。なお、樹脂ベース71の開口73a,73b及び突起74aの位置、形状、寸法等は、仮の位置合わせがなされた位置から完全に位置決めされる定位置まで可動片4を案内し易くなるように、可動片4の対応する箇所と相似形に形成されている。
図6(a)に示すように可動片4が樹脂ベース71に組み込まれた後、樹脂ベース71にカバー部材72が装着される。カバー部材72は、樹脂ベース71の開口73aに段部77を挿入し、可動片4の段曲げ部46に段部77を押し当てることで可動片4を位置合わせしながら、樹脂ベース71に装着される。
図6(b)に示すように、カバー部材72が樹脂ベース71の方向(図中白抜き矢印方向)に押圧されると、可動片4の斜面47とカバー部材72の斜面78とが当接する。斜面47及び斜面78は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されているので、なおもカバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されると、可動片4の斜面47はカバー部材72の斜面78によって可動片4の長手方向に押される(付勢される)。その結果、斜面78,47によって力の方向が変換され、可動片4の全体が長手方向すなわち固定片2の存在する矢印A方向に押されて移動する。このとき、斜面47に対向して配設されている一対の係合部48と、斜面78に対向して配設されている一対の位置決め部75とが当接して係合する。これにより、突起74a等によって仮の位置合わせがなされていた可動片4は、樹脂ベース71に対して正確に位置決めされる。すなわち、樹脂ベース71に対して可動片4が組み込まれる際に生じている仮の位置合わせ時の誤差は軽減され、樹脂ベース71に対する可動片4の位置決め誤差を、実質的に樹脂ベース71の位置決め部75と可動片4の係合部48の製造時における寸法誤差程度に留めることができる。
そして、樹脂ベース71にカバー部材72が装着されて超音波溶着されるとき、樹脂ベース71の突起74aの先端がカバー部材72の内壁面と当接し接合される。これに伴い、可動片4が、貫通穴45の周辺すなわち固定部42において、樹脂ベース71及びカバー部材72によって上下方向から強固に接合される。これにより、可動片4が、樹脂ベース71に対して定位置(あるべき位置)で固定される。なお、カバー部材72が樹脂ベース71に溶着され、可動片4が固定された後も、斜面47と斜面78とは当接状態を維持し、可動片4は、矢印A方向に押され続ける。また、これに伴い、位置決め部75と係合部48とは係合状態を維持し、樹脂ベース71に対する可動片4の位置及び姿勢は、正常に維持され続ける。
樹脂ベース71にカバー部材72が装着され、樹脂ベース71がカバー部材72の方向に押圧されながら、樹脂ベース71又はカバー部材72のいずれか一方又は両方に超音波振動が付与されると、樹脂ベース71とカバー部材72との当接部位(主として、樹脂ベース71及びカバー部材72の周縁部)は摩擦熱により溶着し、樹脂ベース71とカバー部材72とが一体化され、ケース7を構成する。このとき、カバー部材72の当接部79は、可動片4の固定部42の表面と溶着により結合し、結合部となる。一方、カバー片8は、カバー部材72とインサート成形により強固に結合されているので、当接部79を介して可動片4の固定部42とカバー片8とが間接的に結合されていることになる。ここでいう結合とは、例えば、当接部79と固定部42とが単に接触し、両者の間に摩擦力が生じている状態ではなく、当接部79と固定部42との接触面において剪断によるずれが生じないように結び付けられている状態を意味する。当接部79とカバー片8との接触面においても同様である。なお、可動片4においてカバー部材72と結合している部位は固定部42のみであり、その他の部位はカバー部材72と結合しておらず、伝熱部42aとカバー片8とは互いに熱交換が可能な当接状態にある。
図7は、樹脂ベース71にカバー部材72が溶着された後における伝熱部42aの周辺を拡大して示す。本実施形態においては、樹脂ベース71及びカバー部材72の周縁部を除いて、樹脂ベース71当接部79とカバー部材72との間には、収納部73を構成する空間又は可動片4が存在する。可動片4は、その裏面側で樹脂ベース71の当接部74と当接し溶着され、表面側でカバー部材72の当接部79と当接し溶着される。すなわち、樹脂ベース71の当接部74とカバー部材72の当接部79とは、窓76の近傍において可動片4の裏面側又は表面側で、直接溶着されることはない。これにより、溶着前後における当接部74及び当接部79の厚み寸法の変化が抑制され、樹脂ベース71及びカバー部材72に対する可動片4の姿勢が安定する。可動片4の裏面側又は表面側で、樹脂ベース71の当接部74及びカバー部材72の当接部79を構成する樹脂同士が溶融し、流動することがないからである。
また、カバー部材72の当接部79が可動片4の固定部42とカバー片8との間に介在しているので、可動片4の固定部42とカバー片8との間では、直接的な熱交換が生じない。従って、何らかの理由により継続的に大きな電流がブレーカー1に流れたとき、可動片4からカバー片8に大量の熱が過度に速く移動することを抑制できる。これにより、熱応動素子5の迅速な作動が必要とされる場合において、その作動が遅延することを抑制できる。なお、可動片4からカバー片8への熱の移動速度は、伝熱部42aとカバー片8との接触面積に依存するため、伝熱部42a及びカバー片8の形状を適宜設定することにより調整可能である。
また、可動片4は、伝熱部42aにおいてカバー片8と接触している。これにより、伝熱部42aが、可動片4及び両接点3、21間において発生するジュール熱をカバー片8に伝達する。本実施形態において、カバー片8は、可動片4と同等のリン青銅等を主成分とする金属板によって形成されているので、伝熱部42aを介して熱的に接触している可動片4及びカバー片8を一つの熱容量体とみなすことができ、可動片4を含むブレーカー1内部の熱容量が実質的に増加したものと考えることができる。これにより、ブレーカー1に流れる電流が一時的に変動する場合であっても、ブレーカー1内部の急激な温度変化が抑制される。特に、ブレーカー1に流れる電流が一時的に増加する場合においても、熱応動素子5を含むブレーカー1内部の急激な温度上昇が抑制される。
また、伝熱部42aを介してカバー片8に伝達された熱は、カバー片8を伝導し、カバー部材72の外部に露出している中央部81及び突出部82からケース7の外部に放出される。これにより、ブレーカー1内部の温度上昇が抑制され、ブレーカー1に流れる電流の一時的な増加によって、熱応動素子5の温度が作動温度まで上昇し、熱応動素子5が過敏に反応することが抑制される。また、この状態で、ブレーカー1の外部温度が熱応動素子5の作動温度まで上昇すると、その熱はカバー片8の中央部81及び突出部82から可動片4の伝熱部42a及び小突起44を介して熱応動素子5に伝導し、直ちに熱応動素子5が作動して、ブレーカー1は図3に示した非導通状態になる。これにより、機器の安全性は確保される。
また、可動片4とカバー片8との間に介在する当接部79によって可動片4とカバー片8とが結合されるので、可動片4及びその周辺部の剛性が高められ、可動片4とカバー片8との間で剪断変形が実質的に発生することがなく、ブレーカー1に曲げ・撓み・捻り等の応力が加えられた場合であっても、固定片2に対する可動片4の姿勢が安定する。これにより、安全性と使い勝手の両立を図りつつ、接触抵抗の低減と優れた温度特性を維持できるようになる。
また、図7において、溶着前の伝熱部42aの原形は、破線で示される。図6(b)に示す状態からカバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されると、伝熱部42aの先端部は、カバー部材72にインサート成形されているカバー片8の裏面と当接する。なおもカバー部材72が押圧されると、伝熱部42aは、カバー片8によって図7において下方に押圧され、可動片4の長手方向(可動片4の先端方向)に僅かに伸張しながら実線に示すように弾性変形する。
固定接点21と可動接点3との接触抵抗を減少させるためには、弾性変形によって生じた応力を用いて可動片4を付勢し保持する構成が有効である。本実施形態においては、伝熱部42aの弾性変形によって可動片4が付勢される。そして、固定部42から可動接点3の側に離れた位置に伝熱部42aとカバー片8との当接部位が形成されているため、伝熱部42aによって付勢された可動片4には、図中反時計回りにモーメントが発生する。このモーメントは、可動接点3を固定接点21に押し付けるように作用し、固定接点21と可動接点3との接触抵抗を減少させて、ジュール熱を低下させることができる。これにより、ブレーカー1に流れる電流の一時的な変動によって、熱応動素子5の温度が作動温度まで上昇し、熱応動素子5が過敏に反応し動作することがより一層抑制される。
また、ケース7に対する可動片4の姿勢を安定させるためにも、弾性変形によって生じた応力を用いて可動片4を付勢し保持する構成が有効である。本実施形態においては、上述のごとく可動片4を付勢することにより発生する反時計回りのモーメントは、固定部42における弾性部43の側を当接部74に押し付け、固定部42における端子41の側を当接部79に押し付けるように作用し、ケース7に対する可動片4の姿勢が安定する。仮に、当接部74、固定部42及び当接部79の間に上下方向に僅かに隙間が生じていても、伝熱部42aが発生するモーメントを上回る時計回りのモーメントが可動片4に付与されない限り、ケース7に対する固定部42の姿勢が変動する虞はない。これにより、可動接点3と固定接点21との位置関係がより一層安定し、接触抵抗の低減と優れた温度特性を維持できるようになる。
また、本実施形態においては、伝熱部42aが弾性変形することにより、ケース7に対する可動片4の姿勢を安定させるので、構造上、当接部74、固定部42及び当接部79に強い圧縮応力を付与する必要がなく、そのため、ケース7に残留する応力が緩和される。すなわち、伝熱部42aが弾性変形によってより大きい応力を負担することにより、ケース7に残留する応力を緩和する。このように、もともとケース7に残留する応力が小さくなるので、高温等の過酷な条件下でブレーカー1を実装しなければならない場合であっても、残留応力の解放に伴って生ずるケース7の歪みを減少させることができる。これにより、通電時における安定した抵抗値と良好な温度特性を得ることが可能となる。
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、可動接点3が固定接点21と接触状態にあるとき、伝熱部42aがカバー片8と当接して可動片4及び可動接点3と固定接点21の間において発生するジュール熱をカバー片8に伝達する。そして、カバー片8が伝熱部42aによって伝達された熱をケース7外部に放出することにより、可動片4等の発熱が抑制される。これにより、ブレーカー1に流れる電流の一時的な増加に対して、熱応動素子5が過敏に反応し動作することが抑制される。また、可動片4とカバー片8との間に結合部として介在する当接部79によって可動片4とカバー片8とが結合されるので、可動片4の及びその周辺部の剛性が高められ、ブレーカー1に曲げ・撓み・捻り等の応力が加えられた場合であっても、固定片2に対する可動片4の姿勢が安定する。これにより、安全性と使い勝手の両立を図りつつ、接触抵抗の低減と優れた温度特性を維持できるようになる。また、当接部79が可動片4の固定部42とカバー片8との間に介在するので、当接部79を挟んで固定部42とカバー片8との間では、直接的な熱交換が生じない。すなわち、当接部79が固定部42からカバー片8を熱的に遮断するので、大きな電流が継続的にブレーカー1に流れる状況においては、可動片4からカバー片8への過度の熱移動が制限され、熱応動素子5の作動が遅延することを抑制できる。
また、伝熱部42aがカバー片8と当接して弾性変形し可動片4を樹脂ベース71の側に付勢するので、固定接点21と可動接点3との接触抵抗を減少させて、ジュール熱を低下させることができる。これにより、ブレーカー1に流れる電流の一時的な増加によって、熱応動素子5の温度が作動温度まで上昇し、熱応動素子5が過敏に反応し動作することがより一層抑制される。また、同構成によって、樹脂ベース71に対する可動片4の姿勢が安定する。一方、樹脂ベース71には固定片2がインサート成形されているので、固定片2に対する可動片4の姿勢が安定し、可動接点3と固定接点21との位置関係がより一層安定する。
また、ケース7のカバー部材72が、カバー片8を覆う天壁72aと、天壁72aからカバー片8の中央部81、突出部82を露出させるための開孔72b等を有するので、ブレーカー1に流れる電流の一時的な増加によって、可動片4の温度が急激に上昇した際に、カバー片8の開孔72b等から露出されている中央部81、突出部82から熱をブレーカー1の外部に放出し、熱応動素子5が過敏に反応し動作することが抑制される。一方、熱応動素子5が変形し、可動接点3と固定接点21とが一旦非導通状態となった場合には、カバー片8を覆う天壁72aによってカバー片8からブレーカー1の外部に放出される熱量を抑制できるので、可動片4、熱応動素子5ひいてはPTCサーミスター6の温度が維持され、PTCサーミスター6の高抵抗によって非導通状態を容易に保持することができる。また、PTCサーミスター6を省いた構成においては、可動接点3と固定接点21の非導通状態から導通状態への復帰を遅延させることができる。
また、樹脂ベース71とカバー部材72によって挟み込まれて固定される固定部42から伝熱部42aが延出されているので、カバー部材72において伝熱部42aと当接する部位すなわちカバー片8の形態の自由度を高めることができる。例えば、本実施形態においては、カバー片8を伝熱部42aが延出されている方向に沿って形成することにより、カバー片8の熱容量を適正化すると共に、カバー部材72を効果的に補強して、ケース7の剛性・強度を高めることができる。
また、固定部42から伝熱部42aが延出されていること、及び可動片4とカバー片8とが伝熱部42aを介して熱的に接触していることから、可動片4を含むブレーカー1内部の熱容量が増加する。これにより、ブレーカー1に流れる電流が一時的に増加する場合においても、熱応動素子5を含むブレーカー1内部の急激な温度上昇が抑制される。また、板状のカバー片8が熱応動素子5及び可動片4の上方を覆うように配置されているので、ブレーカー1に継続的に大きな電流が流れる場合に、可動片4等から発生するジュール熱が熱応動素子5の周辺に溜められる。また、開孔72b及びカバー片8(突出部82)の形状・寸法を適宜設定することにより、カバー片8の熱容量やケース7外部に露出する部分の面積をそれぞれ変更し、カバー片8の放熱特性を調整できる。これにより、ブレーカー1に流れる電流が一時的に増加する場合と、継続的に大きな電流が流れる場合の熱応動素子5の作動特性を最適化することができる。
また、本実施形態においては、弾性部43の弾性変形を容易にするために、固定部42の幅寸法(ブレーカー1の短手方向の寸法)に対して弾性部43の幅寸法が小さく設定されている。伝熱部42aが、この弾性部43を挟んで弾性部43と平行に固定部42の両端から延出されており、カバー部材72の凹部72cに収容されているので、伝熱部42aを設けたことがブレーカー1の小型化を阻害することもない。
また、伝熱部42aが弾性部43とは独立して固定部42から延出されているので、弾性部43の弾性力と伝熱部42aの弾性力とをそれぞれ独立して自由に設定でき、伝熱部42aの弾性変形が弾性部43の姿勢に影響を及ぼすことを回避することができる。これにより、可動接点3と固定接点21との位置関係がより一層安定する。
(変形例)
図8は、可動片4の変形例である可動片4Aの構成を示す。可動片4Aは、固定部42に伝熱部42cを有する点で、図4等に示した可動片4とは異なる。この変形例においても、可動片4は、固定部42が当接部74及び当接部79によって固定部42の裏表両面から挟み込まれることにより、ケース7に対して固定される。
伝熱部42cは、固定部42における弾性部43の根元近傍部分が可動片4の表面側に隆起するように湾曲し、平面視でなだらかな円弧状に形成されている。伝熱部42cは、弾性部43の根元近傍に限らず、固定部42の一部において可動片4の表面側に隆起するように突出していればよい。さらには、伝熱部42cは、弾性部43(特にその根元近傍)において、弾性部43と連続的に形成されている形態であってもよい。このような形態であっても、伝熱部42cの存在によって、弾性部43の機能は妨げられない。
伝熱部42cは、固定部42がカバー部材72と樹脂ベース71とによって挟み込まれて、表裏から圧縮応力を受けたとき弾性変形する。本実施形態においては、伝熱部42cは、弾性変形し易いように、可動片4の短手方向に沿って、固定部42の端縁から端縁に亘って形成されている。伝熱部42cが発生する弾性力は、ケース7に対する可動片4の姿勢を保持するように機能する。本実施形態においては、伝熱部42cは、カバー部材72の当接部79と当接して弾性力を発生し、可動片4の固定部42を樹脂ベース71の当接部74の側に付勢して(固定部42を当接部74に押し付けて)、可動片4の姿勢を保持する。伝熱部42cは、可動片4の長手方向に沿って形成されていてもよい。
図9は、樹脂ベース71にカバー部材72が溶着された後における伝熱部42cの周辺を拡大して示す。同図において、溶着前の伝熱部42cの原形は、破線で示される。図6(b)に示す状態からカバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されると、伝熱部42cの頂部は、カバー部材72の当接部79と当接する。なおもカバー部材72が押圧されると、伝熱部42cは、当接部74と当接部79によって挟まれて圧縮応力を受け、可動片4の長手方向(可動片4の先端方向)に僅かに伸張しながら実線に示すように弾性変形する。また、超音波振動に伴う摩擦によって当接部79を構成する樹脂材料が溶融・流動し、伝熱部42cに沿う形状に成形され、伝熱部42cの頂部がカバー片8と当接し、両者の間で熱伝達が可能となる。また、固定部42のうち伝熱部42cの頂部を除く部分は、当接部79と溶着により結合されることにより、当接部79を介してカバー片8と間接的に結合される。なお、当接部79は、予め伝熱部42cに対応する形状に成形されていてもよい。
溶着時においては、カバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されることに起因して、当接部74及び当接部79並びに伝熱部42cには、相応の圧縮応力が発生する。本実施形態にあっては、伝熱部42cが破線で示した原形から実線で示した形状に弾性変形することにより、当接部74及び当接部79に発生する応力が逃されるため、溶着後に当接部74及び当接部79に残留する応力が緩和される。すなわち、伝熱部42cが弾性変形によって、より大きい応力を負担することにより、当接部74及び当接部79に残留する応力を緩和する。
本変形例の可動片4Aを備えたブレーカー1によっても、可動接点3が固定接点21と接触状態にあるとき、伝熱部42cがカバー片8と当接して可動片4及び可動接点3と固定接点21の間において発生するジュール熱をカバー片8に伝達する。そして、カバー片8が伝熱部42cによって伝達された熱をケース7外部に放出することにより、可動片4等の発熱が抑制される。これにより、ブレーカー1に流れる電流の一時的な増加に対して、熱応動素子5が過敏に反応し動作することが抑制される。また、可動片4とカバー片8との間に結合部として介在する当接部79によって可動片4とカバー片8とが結合されるので、可動片4の及びその周辺部の剛性が高められ、ブレーカー1に曲げ・撓み・捻り等の応力が加えられた場合であっても、固定片2に対する可動片4の姿勢が安定する。これにより、安全性と使い勝手の両立を図りつつ、接触抵抗の低減と優れた温度特性を維持できるようになる。
また、伝熱部42cがカバー片8と当接して弾性変形し可動片4を樹脂ベース71の側に付勢することにより得られる効果、及びカバー部材72の開孔72b等からカバー片8の中央部81、突出部82を露出させることにより得られる効果についても、可動片4を備えたブレーカー1と同様である。
また、樹脂ベース71とカバー部材72によって挟み込まれて固定される固定部42に、伝熱部42cが形成されているので、弾性部43の弾性力と伝熱部42cの弾性力とをそれぞれ独立して自由に設定できる。これにより、伝熱部42cの弾性変形が弾性部43の姿勢に影響を及ぼすことがなく、可動接点3と固定接点21との位置関係がより一層安定する。
また、弾性部43とは別に、ケース7のカバー部材72と当接するように設けられた伝熱部42cの発生する弾性力によって、可動片4のケース7に対する姿勢が適正に保持される。これにより、可動片4の先端部に設けられている可動接点3とケース7に設けられている固定接点21との位置関係が安定し、通電時における両接点の接触抵抗が低減されると共に、ブレーカー1の温度特性が良好に維持される。
また、伝熱部42cが弾性変形することにより、伝熱部42cの周辺領域に発生する応力が伝熱部42cに逃されるため、ケース7に残留する応力が緩和される。すなわち、伝熱部42cが弾性変形によってより大きい応力を負担することにより、ケース7に残留する応力を緩和する。このように、もともとケース7に残留する応力が小さくなるので、過酷な条件下でブレーカー1を実装しなければならない場合であっても、残留応力の解放に伴って生ずるケース7の歪みを減少させることができる。これにより、ブレーカー1の小型化を図りつつ、ケース7の歪みを減少させて、通電時における安定した抵抗値と良好な温度特性を得ることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも可動接点3が固定接点21と接触状態にあるとき、可動片4が、カバー片8と当接して可動片4の熱を伝達する伝熱部42a又は伝熱部42cを有していればよい。また、伝熱部42a及び伝熱部42c等、複数の伝熱部を有する構成であってもよい。
また、本発明は、上記変形例の他、種々の変形が可能である。例えば、伝熱部42a又は伝熱部42cの形態は、カバー片8と当接して可動片4の熱を伝達する形態であれば、図4又は図8に示したものに限られない。また、伝熱部42a若しくは伝熱部42cに加えて、又は伝熱部42a若しくは伝熱部42cに替えて、カバー片8に可動片4の側に突出し可動片4と当接する伝熱部を設けた構成であってもよい。この構成によれば、カバー片8に設けられた伝熱部が可動片4の固定部42を樹脂ベース71の側に付勢する。
さらにまた、金属材料によって形成される可動片4は、それ自身で伝熱性を有しているので、その一部を弾性力を発生する板ばね状の伝熱部として機能させるように構成してもよい。この場合、必要に応じて、可動片4の一部を屈曲、湾曲、段曲げ又は折返したり、樹脂ベース71の一部を凹状に形成することにより、伝熱部が弾性変形するための空間を形成したり、カバー片8に伝熱部と当接する部位を形成してもよい。すなわち、少なくとも可動接点3が固定接点21と接触状態にあるとき、可動片4の伝熱部とカバー片8とが熱的に接触する構成であればよく、例えば、カバー部材72に小突起、フラップ状の部位等を設けて、これらと可動片4の伝熱部とが熱交換できるように接触する等の変形例が存在することを妨げない。また、伝熱部の弾性変形を容易にするために、伝熱部の周縁に可動片4を厚み方向に貫通する溝等を形成してもよい。このような伝熱部によっても、可動片4において発生するジュール熱がカバー片8に伝導され、ケース7の外部に放出される。また、可動片4は樹脂ベース71又はカバー部材72の側に付勢されてその姿勢が安定し、固定接点21に対する可動接点3の相対的な位置が安定する。
また、図1等においては、可動片4は、貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49の構成を有する形態であるが、これらの構成うちのいずれか又は全てが廃されていてもよい。例えば、貫通穴45を廃する場合は、樹脂ベース71の突起74aも廃される。また、段曲げ部46、斜面47が廃される場合は、可動片4は平面状に形成され、樹脂ベース71の当接部74及びカバー部材72の当接部79が平坦な形状となる。この構成においては、段曲げ部46及び斜面47を廃することにより、可動片4及び樹脂ベース71の長手方向の寸法を小さくして、ブレーカー1のさらなる小型化を図ることができる。なお、可動片4の段曲げ部46及び斜面47は、必要に応じて樹脂ベース71の外部に設けられていてもよい。また、係合部48及びくびれ部49が廃される場合は、可動片4は、固定部42から端子41に亘って等幅に形成され、これに伴い樹脂ベース71の位置決め部75の形状も変更される。
また、樹脂ベース71とカバー部材72との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状(膠状)の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材72等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって可動片4が挟まれて保持される形態であればよい。この場合、一方が第1ケース、他方が第2ケースとなる。
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、一体化された可動片に伝熱部が形成されることになり、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能である。また、本発明は、例えば特開2006−331705号公報又は特開2003−115246号公報に示されるような、可動片(バイメタル)の両端に固定接点(第1の接点)及び可動接点(第2の接点)を有する形態にも適用することができる。さらにまた、第1の電極と第2の電極の間にPTCサーミスターが設けられていてもよい。
また、特開2005−203277号公報に示されるような、固定部42又はその近傍において、可動片4が端子41の側と可動接点3の側に構造的に分離されている形態に、本発明を適用してもよい。この場合において、伝熱部42a又は伝熱部42cは、端子41の側と可動接点3の側のうち、いずれの側に形成されていてもよく、また、端子41の側と可動接点3の側とが溶接等によって固定されていてもよい。
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図10は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図11は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。
1 ブレーカー
2 固定片
3 可動接点
4 可動片
4A 可動片
5 熱応動素子
7 ケース
8 カバー片(放熱片)
21 固定接点
42 固定部
42a 伝熱部
42c 伝熱部
71 樹脂ベース(第1ケース)
72 カバー部材(第2ケース)
72a 天壁(カバー部)
72b 開孔

Claims (8)

  1. 固定接点を有する固定片と、
    弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
    温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、
    前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容するケースとを備えたブレーカーにおいて、
    前記ケースには、熱を放出する放熱片が一体に成形され、
    前記ケースは、前記可動片と前記放熱片との間に介在し、前記可動片と前記放熱片とを結合する結合部を有し、
    前記可動片は、少なくとも前記可動接点が前記固定接点と接触状態にあるとき前記放熱片と当接して該可動片の熱を伝達する伝熱部を有することを特徴とするブレーカー。
  2. 前記ケースは、前記固定片をインサートして成形される第1ケースと、前記放熱片が一体に成形され、第1ケースに装着される第2ケースを有し、
    前記伝熱部は、前記放熱片と当接して弾性変形し、前記可動片を前記第1ケースの側に付勢することを特徴とする請求項1に記載のブレーカー。
  3. 前記可動片は、前記第1ケースと前記第2ケースによって挟み込まれて前記ケースに対して固定される固定部を有し、
    前記伝熱部は、前記固定部から延出されていることを特徴とする請求項2に記載のブレーカー。
  4. 前記伝熱部は、前記弾性部とは独立して前記固定部から延出されていることを特徴とする請求項3に記載のブレーカー。
  5. 前記可動片は、前記第1ケースと前記第2ケースによって挟み込まれて前記ケースに対して固定される固定部を有し、
    前記伝熱部は、前記固定部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のブレーカー。
  6. 前記ケースは、前記放熱片を覆うカバー部と、前記カバー部から前記放熱片の一部を露出させるための開孔を有することを特徴とする1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレーカー。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路。
  8. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする2次電池パック。
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