JP2014035041A - エアロゲル粒子を用いた断熱材 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度が高く、断熱材に優れた断熱材を提供する。
【解決手段】断熱材Bは、エアロゲル粒子A及び接着剤を含むエアロゲル層1に表面シート2が貼り付けられたものである。表面シート2におけるエアロゲル層1側の面は、凹凸面3として形成されている。凹凸面3は、好ましくは、表面シート2の凹凸成形、又は、表面シート2に含まれる繊維4の飛び出しにより形成されている。凹凸面3により断熱材Bの強度が高まる。
【選択図】図1
【解決手段】断熱材Bは、エアロゲル粒子A及び接着剤を含むエアロゲル層1に表面シート2が貼り付けられたものである。表面シート2におけるエアロゲル層1側の面は、凹凸面3として形成されている。凹凸面3は、好ましくは、表面シート2の凹凸成形、又は、表面シート2に含まれる繊維4の飛び出しにより形成されている。凹凸面3により断熱材Bの強度が高まる。
【選択図】図1
Description
本発明は、建材などに利用可能なエアロゲル粒子を用いた断熱材に関する。
従来、断熱材として、ウレタンフォームやフェノールフォームなどのフォーム材(発泡性の断熱材)が知られている。フォーム材は、発泡により生じた気泡によって断熱性を発揮するものである。このようなウレタンフォームやフェノールフォームは、一般的に、熱伝導率が空気の熱伝導率よりも高い。したがって、断熱性をより高めるためには、熱伝導率を空気よりも低くすることが有利である。空気よりも低い熱伝導率を達成させる方法として、ウレタンフォームやフェノールフォームなどの発泡させた材料の空隙内にフロンガスなどの熱伝導率の低いガスを充填させる方法などが知られている。しかしながら、空隙内にガスを充填する方法では、経時的に空隙内からガスが漏れ出ていき、熱伝導率が上昇してしまう可能性がある。
近年、ケイ酸カルシウムの多孔体やガラス繊維を10Pa程度の真空状態にしたものなど、真空を利用して断熱性を高める手法が提案されている。しかし、真空による断熱は、真空状態を保つ必要があり、経時的な劣化や製造コストにおいて問題がある。さらに真空を利用して断熱材を形成するにしても、真空を維持するために形状の制約を受け、用途が著しく限定されてしまい、充分に実用化がなされていない。
ところで、常圧でも空気の熱伝導率よりも低い断熱材の材料として、微細多孔質シリカの集合体(いわゆるエアロゲル)が知られている。この材料は、例えば、米国特許第4402927号、米国特許第4432956号、米国特許第4610863号に開示されているような方法で得ることができる。これらの方法によれば、原料としてアルコキシシラン(別にシリコンアルコキシド又はアルキルシリケートとも称する)を用い、シリカエアロゲルを作製することができる。具体的には、シリカエアロゲルは、アルコキシシランを溶媒の存在下で加水分解させて縮重合して得られるシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、溶媒の臨界点以上の超臨界条件で乾燥することによって得ることができる。溶媒としては、例えば、アルコールまたは液化二酸化炭素等が用いられる。そして、エアロゲルが粒子状になったエアロゲル粒子は、熱伝導率が空気よりも低く、断熱材の原料として有用である。
図8は、エアロゲル粒子を用いた断熱材の参考例である。この断熱材Bでは、エアロゲル粒子Aが接着して一体化された板状のエアロゲル層1が、両面から表面シート2によって挟まれた構成を有している。このようにボード化することにより、建材などに使用することができる。
しかしながら、エアロゲル粒子は、非常に軽量であると共に、強度が小さく脆い。そのため、エアロゲル粒子を成形して断熱材を作製したとしても、粒子自体が脆いものであるので、成形物の強度は低くなり、割れたり壊れたりしやすいものとなってしまう。強度を高めるために、補強材などを混合したり接着材料を増加したりすることが考えられるが、その場合、補強材や接着材料によってかえって断熱性が低下するおそれがある。そのため、断熱性が低下することを抑制しつつ成形物の強度を高めて、強度と断熱性能とを両立させることが求められている。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、強度が高く断熱性に優れた断熱材を提供することを目的とするものである。
本発明に係る断熱材は、エアロゲル粒子及び接着剤を含むエアロゲル層に表面シートが貼り付けられた断熱材であって、前記表面シートにおける前記エアロゲル層側の面は、凹凸面として形成されていることを特徴とするものである。
上記断熱材の好ましい一形態にあっては、前記凹凸面は、前記表面シートの凹凸成形により形成されている。
上記断熱材の好ましい一形態にあっては、前記表面シートは繊維を含有するものであり、前記凹凸面を構成する凸部は、前記表面シートのエアロゲル層側の面で飛び出た前記繊維により形成されている。
上記断熱材の好ましい一形態にあっては、前記表面シートは繊維を含有するものであり、前記表面シートに前記接着剤が滲み込んで前記エアロゲル層と前記表面シートとが固着されている。
本発明によれば、エアロゲル層に表面シートが凹凸面で貼り付けられているので、密着性を高めることができ、強度が高く断熱性に優れた断熱材を得ることができる。
エアロゲル(aerogel)は、ゲル中に含まれる溶媒を乾燥により気体に置換した多孔性の物質(多孔質体)である。粒子状のエアロゲルをエアロゲル粒子という。エアロゲルとしては、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲルなどが知られているが、このうちシリカエアロゲルを好ましく用いることができる。シリカエアロゲルは、断熱性に優れ、製造が容易であり、コストも安く、他のエアロゲルよりも容易に得ることができる。なお、ゲル中の溶媒が蒸発などにより失われて、空隙を持つ網目構造となったものをキセロゲル(xerogel)ということもあるが、本明細書におけるエアロゲルは、キセロゲルを含むものであってよい。
図6に、エアロゲル粒子の一例の模式図を示す。図6(a)及び(b)に示すように、このエアロゲル粒子Aはシリカエアロゲル粒子であり、数10ナノオーダー(例えば20〜40nm)の気孔を有するシリカ(SiO2)構造体である。このようなエアロゲル粒子Aは超臨界乾燥などによって得ることができる。エアロゲル粒子Aは、エアロゲル粒子Aを構成する微粒子P(シリカ微粒子)が三次元の網目状に連結することにより形成されている。シリカ微粒子1個の大きさは例えば1〜2nm程度である。図6(c)に示すように、エアロゲル粒子Aの数10ナノオーダーの気孔には気体Gが入り込むことができる。そして、この気孔が空気の成分である窒素や酸素の移動を阻害することにより、熱伝導率を空気よりも低いレベルに低下させることができる。例えば、従来の断熱材における空気が熱伝導率WLFλ 35〜45mW/m・Kであったところ、エアロゲル粒子により熱伝導率WLFλ 9〜12mW/m・Kのレベルまで熱伝導率を低下させることができる。なお、エアロゲル粒子Aは、一般的に、疎水性の性質を有する。例えば、図6(b)に示すシリカエアロゲル粒子では、アルキル基(メチル基:CH3)がケイ素(Si)に結合しており、ケイ素に結合した水酸基(OH)は少ない。したがって、シリカエアロゲル粒子の表面の極性は低い。
図7は、シリカエアロゲル粒子の電子顕微鏡写真である。このシリカエアロゲル粒子は超臨界乾燥法によって得たものである。シリカエアロゲル粒子が三次元の立体網目構造をとることはこの写真からも理解される。なお、エアロゲル粒子Aは、一般的に10nm未満の大きさのシリカ微粒子が線状に連結して網目構造が形成されるものであるが、微粒子の境目が曖昧になったり、シリカ構造(−O−Si−O−)が線状に延びたりして網目構造が形成されていてもよい。
エアロゲル粒子としては、特に限定されるものではなく、一般的な製造方法によって得られたものを用いることができる。代表的なものとして、超臨界乾燥法によって得られるエアロゲル粒子と、水ガラスを利用して得られるエアロゲル粒子とがある。
超臨界乾燥法によって得られるシリカエアロゲル粒子は、液相反応であるゾル−ゲル法によって重合させてシリカ粒子を作製し、溶媒を超臨界乾燥によって除去することにより得ることができる。原料としては、例えば、アルコキシシラン(シリコンアルコキシド又はアルキルシリケートともいう)を用いる。そして、このアルコキシシランを溶媒の存在下で加水分解させて縮重合して得られるシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、溶媒の臨界点以上の超臨界条件で乾燥する。溶媒としては、例えば、アルコールまたは液化二酸化炭素などを用いることができる。このように超臨界条件によって乾燥されることにより、ゲルの網目構造を保持したまま溶媒が除去されて、エアロゲルを得ることができる。エアロゲルが粒子状となったエアロゲル粒子は、溶媒を含むゲルを粉砕して粒子化し、この溶媒を含んだ粒子状のゲルを超臨界乾燥することにより得ることができる。あるいは、エアロゲル粒子は、超臨界乾燥によって得られたエアロゲルのバルク体を粉砕することにより得ることができる。
エアロゲル粒子の原料となるアルコキシシランとしては、特に限定されるものではないが、2官能、3官能又は4官能のアルコキシシランを単独で又は複数種を混合して用いることができる。2官能アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等が挙げられる。3官能アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。4官能アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、アルコシシシランとして、ビストリメチルシリルメタン、ビストリメチルシリルエタン、ビストリメチルシリルヘキサン、ビニルトリメトキシシランなどを用いることもできる。また、アルコキシシランの部分加水分解物を原料に用いてもよい。
アルコキシシランの加水分解と縮重合は、水の存在下で行うことが好ましく、さらに水との相溶性を有し、且つアルコキシシランを溶解する有機溶媒と、水との混合液を用いて行うことが好ましい。このような混合液を溶媒として用いた場合、加水分解工程と縮重合工程を連続して行うことができ、効率よくゲルを得ることができる。その際、生成するポリマーは、上記溶媒を分散媒とするゲル化物(湿潤ゲル)として得られる。水との相溶性を有し、且つアルコキシシランを溶解する溶媒としては、特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールや、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらは一種のみを用いても良いし、二種以上を併用してもよい。
また、アルコキシシランの加水分解と縮重合は、アルコキシシランのアルコキシ基を脱離させて縮合反応を起こさせることが可能な触媒の存在下で行うことが好ましい。このような触媒としては、酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられる。具体的には、酸性触媒としては、例えば、塩酸、クエン酸、硝酸、硫酸、フッ化アンモニウム等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、アンモニア、ピペリジン等が挙げられる。
また、アルコキシシランの反応液中には、適宜の成分を添加してもよい。例えば、界面活性剤、官能基導入剤、などが挙げられる。このような添加成分により、エアロゲル粒子に適宜の機能性を付与することができる。
そして、得られた湿潤ゲルを超臨界乾燥することにより、エアロゲルを得ることができる。その際、湿潤ゲルを切断や粉砕などによってあらかじめ粒子化して、溶媒を含んだ粒子状のゲルを作製し、この粒子状のゲルを超臨界乾燥することが好ましい。それにより、エアロゲル構造を破壊することなく粒子化及び乾燥を行うことができ、エアロゲル粒子を容易に得ることができる。この場合、粒子状のゲルの大きさを揃えておくことにより、エアロゲル粒子の大きさを整えることができる。また、エアロゲルをバルクで得た後に、エアロゲルのバルク体を粉砕機により粉砕することにより、エアロゲル粒子を得るようにしてもよい。なお、得られたエアロゲル粒子はふるいや分級などによって、粒子の大きさをさらに揃えることができる。エアロゲル粒子の大きさが整うと、取扱い性を高めることができるとともに、安定な成形物を得やすくすることができる。
水ガラスを利用して得られるエアロゲル粒子は、例えば、シリカゾルの作製、シリカゾルのゲル化、熟成、ゲルの粉砕、溶媒置換、疎水化処理、乾燥という工程を順番に行う常圧乾燥法により製造することができる。水ガラスは、一般的にケイ酸ナトリウムなどのケイ酸金属塩の高濃度の水溶液である。例えば、ケイ酸金属塩を水に溶かして加熱することで得られる。
シリカゾル作製の原料としては、ケイ酸アルコキシド、ケイ酸アルカリ金属塩等を使用することができる。ケイ酸アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、ケイ酸アルコキシドとして、上記超臨界乾燥法で説明した各種のアルコキシシランを用いてもよい。また、ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。このうち、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムをより好適に用いることができる。
ケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の無機酸により中和する方法か、あるいは対イオンがH+とされている陽イオン交換樹脂を用いる方法により、シリカゾルを作製することができる。これらの方法のうちでも、陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
酸型の陽イオン交換樹脂を用いてシリカゾルを作製するには、陽イオン交換樹脂を充填した充填層に適切な濃度のケイ酸アルカリ金属塩の溶液を通過させることにより行うことができる。あるいは、シリカゾルの作製は、ケイ酸アルカリ金属塩の溶液に、陽イオン交換樹脂を添加、混合し、アルカリ金属を除去した後に濾別するなどして陽イオン交換樹脂を分離することにより行うことができる。その際、陽イオン交換樹脂の量は、溶液に含まれるアルカリ金属を交換可能な量以上であることが好ましい。陽イオン交換樹脂により溶液の脱アルカリ(脱金属)が行われる。
酸型の陽イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系、アクリル系、メタクリル系等で、イオン交換性基としてスルフォン酸基やカルボキシル基が置換されたものを用いることができる。このうち、スルフォン酸基を有する、いわゆる強酸型の陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。なお、陽イオン交換樹脂は、アルカリ金属の交換に使用した後に、硫酸や塩酸を通過させることで、再生処理を行うことができる。
シリカゾルの作製後、シリカゾルをゲル化させ、次いでその熟成を行う。ゲル化及び熟成においては、pHを調整することが好ましい。すなわち、通常、陽イオン交換樹脂によりイオン交換されたシリカゾルのpHは低く、例えば3以下である。このようなシリカゾルを中和して弱酸性から中性のpH領域とすることによりシリカゾルがゲル化する。例えば、シリカゾルのpHを5.0〜5.8、好ましくは5.3〜5.7とすることによってゲル化させることができる。pHの調整は塩基及び酸の添加により行うことができる。塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸アルカリ金属塩などを用いることができる。酸としては、塩酸、クエン酸、硝酸、硫酸などを用いることができる。pH調整後、ゲルを静置して熟成を行う。熟成は、例えば、40〜80℃の温度条件で、4〜24時間程度であってもよい。
熟成工程に引き続き、ゲルを粉砕することが好ましい。このゲルの粉砕により、目的とするエアロゲル粒子を容易に得ることが可能になる。ゲルの粉砕は、例えばヘンシャル型のミキサーにゲルを入れるか、あるいはミキサー内でゲル化させ、ミキサーを適度な回転数と時間で運転することにより行うことができる。
粉砕工程に引き続き、好ましくは、溶媒置換が行われる。この溶媒置換はゲルを乾燥するに際し、乾燥収縮を起こさないよう、ゲルの作製に用いた水などの溶媒を、表面張力の小さな溶媒に置き換えるものである。直接水を表面張力の小さな溶媒に置き換えることは困難なため、通常はこの溶媒置換は、複数の段階、好ましくは2段階で行なわれる。1段目に用いる溶媒の選定基準としては、水、及び2段目の溶媒置換に用いられる溶媒に対して馴染みが良いことが挙げられる。1段目は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を用いることができ、好適には、エタノールを用いることができる。また2段目に用いる溶媒の選定基準としては、引き続き行われる疎水化処理に用いられる処理剤と反応しないこと、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。2段目に用いる溶媒としては、ヘキサン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン等を用いることができ、好適にはヘキサンを用いることができる。もちろん、必要に応じて、上記1段目の溶媒置換と2段目の溶媒置換との間に、更なる溶媒置換を行っても構わない。
溶媒置換の後に、疎水化処理を行うことが好ましい。疎水化処理に用いる処理剤としては、アルキルアルコキシシランやハロゲン化アルキルシランなどを用いることができる。例えば、ジアルキルジクロロシラン、モノアルキルトリクロロシランを好ましく用いることができ、原料コストや反応性を考慮するとジメチルジクロロシランを特に好適に用いることができる。なお、疎水化処理は、溶媒置換の前に行ってもよい。
そして、疎水化処理の後に、濾別して溶媒とゲルとを分離する。次いで、未反応の処理剤を取り除くためにゲルを溶媒で洗浄する。その後、ゲルを乾燥する。乾燥は常圧であってよい。また、加温したり温風を吹き込んだりしてもよい。乾燥は、不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ゲル中の溶媒がゲルからとり除かれ、エアロゲル粒子を得ることできる。
臨界乾燥法によって得たエアロゲル粒子と、水ガラスを利用して得たエアロゲル粒子とは、基本的に同じ構造を有するものである。すなわち、シリカ微粒子が連結し、三次元の網目状となった粒子構造となる。
エアロゲル粒子の形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状であってよい。上記で説明した方法でエアロゲル粒子を得た場合、粒子化するために粉砕等を行っているため、通常、エアロゲル粒子の形状は不定形の形状となる。いわば表面がごつごつした岩状の粒子となる。もちろん、球状やラグビーボール状などの粒子でもよい。また、パネル状、フレーク状、繊維状であってもよい。また、エアロゲル粒子は、成形に用いる原料としては、粒子の大きさが種々のものが混合したものであってよい。成形物においては、エアロゲル微粒子が接着して一体化されるため、粒子の大きさが揃っていなくてもよい。エアロゲル粒子の大きさは、例えば、粒子の最長の長さが50nm以上10mm以下の範囲であってよい。ただし、取扱い性や成形容易性の観点からは、大きすぎる粒子や小さすぎる粒子が混在していない方が好ましい。そのため、エアロゲル粒子は、適度の大きさにそろえることができる。例えば、エアロゲル粒子の最長の長さが1μm以上1mm未満の範囲のミクロンオーダーの粒子であってもよい。あるいは、エアロゲル粒子の最長の長さが100μm以上5mm未満の範囲の1ミリ前後のサイズの粒子であってもよい。あるいは、エアロゲル粒子の最長の長さが1mm以上10mm未満の範囲のミリオーダーの粒子であってもよい。
本発明では、以上で説明したようなエアロゲル粒子を、断熱材を構成する断熱層(中層)として用いる。そのため、熱伝導性が低く断熱性に優れた断熱材を得ることができる。
図1は、エアロゲル粒子を用いた断熱材の実施形態の一例である。本形態の断熱材Bは、エアロゲル粒子A及び接着剤を含むエアロゲル層1に表面シート2が貼り付けられた構成を有する。この断熱材Bは、表面シート2におけるエアロゲル層1側の面が、凹凸面3として形成されている。このように、表面シート2が凹凸面3でエアロゲル層1に貼り付けられると、凹凸によってエアロゲル層1と表面シート2との接着面積が増加するため、接着性が向上し、シートの密着性に優れた壊れにくい断熱材Bを得ることができる。断熱材Bは、いわば、エアロゲル粒子(ナノ多孔質粒子)を接着剤(バインダー)により固め、その上下面を樹脂層、繊維層又は樹脂含浸繊維層などのシート層で挟み込む層状構造をしている。それにより、強度が高く断熱性に優れた積層構造を形成することができる。なお、図1では、接着剤の図示を省略している。
図1においては、エアロゲル層1は、表面シート2との界面において、表面シート2の凹凸面3によって、この凹凸面3に沿った凹凸が形成され、この相互の凹凸が噛み合って接着されている。そのため、エアロゲル層1と表面シート2との密着性を高めることができる。
図1の形態では、凹凸面3は表面シート2の凹凸成形により形成されている。このように、凹凸成形により凹凸を形成する場合、簡単に表面凹凸を形成することができ、エアロゲル層1と表面シート2との密着性を高めることができる。また、規則的な配列の凹凸や、不規則な配列の凹凸など、凹凸形状を適宜の形状に調整することができ、面全体に安定して凹凸を形成することができる。
従来、エアロゲル粒子を接着剤で固めた層は壊れやすいため、繊維層または繊維に樹脂を含浸させた層で挟み込むことにより補強することが行われていたが、密着が不十分で、特にボードの端から割れ、欠けが生じるという問題があった。しかしながら、本形態では、平坦なシートの表面に金型により凹凸をつけたり、あるいはシートの成形の際に予め凹凸をつけたりしておくことによって、容易に凹凸を形成して、エアロゲル層1との密着面積を増やすことができる。そのため、強度が高まった断熱ボードを容易に得ることができる。
表面シート2の凹凸は、凹凸のない平坦なシート材を、金型の上下面に格子状の凹凸をつけてプレスしたり、あるいは網目状の金網を挿入してプレスしたりすることによって形成することができる。プレスは熱プレスであってもよいし、常温プレスであってもよい。また、表面シート2にシワをつけて凹凸を形成することもできる。
また、表面シート2の作製と同時に凹凸をつける場合には、例えば、樹脂組成物などの流動性を有する表面シート2の材料を、表面に凹凸が付いた型に入れて固めることにより凹凸成形を行うことができる。この場合、表面シート2のエアロゲル層1とは反対側の面(外側に配置される面)は、平坦であってもよい。表面シート2の外面が平坦な場合、断熱材Bを薄板化することができる。ただし、表面シート2自体の強度を高めるためには外面にも凹凸があった方が好ましい。
表面シート2の凹凸はリブとしての機能も有することができる。その場合、曲がりにくくなり、壊れにくくなる。例えば、線状に凹凸を設ければ、リブとしての機能を高めることができる。
凹凸面3は凸部3aを設けることによって形成することができる。凸部3aは複数設けられていてよい。また、凸部3aは線状に設けられていてよい。凸部3aが線状になった場合、その断面形状は、矩形状であってもよいし、先細りしてテーパ状となった台形状であってもよいし、先の尖った三角形状であってもよい。
図1の形態では、表面シート2はエアロゲル層1の両面に貼り付けられている。表面シート2は、片面のみに貼り付けられていてもよい。片面積層の場合にも、強度を高める効果を得ることができる。ただし、強度をより高めるためには両面積層の方が好ましい。断熱材Bにおいては、表面シート2の貼り付けにより曲げに対する強度を効果的に高めることができる。
表面シート2は、エアロゲル層1の表面全体を覆うことが好ましい。すなわち、表面シート2の大きさをエアロゲル層1の大きさと同じかやや大きくして、表面シート2でエアロゲル層1の端縁まで覆うものである。それにより、エアロゲル層1の端部が表面シート2で補強されて、エアロゲル層1が端部で欠けたりして断熱材Bが破損することを抑制することができる。
また、表面シート2の上にさらにエアロゲル層1と表面シート2とをこの順で積層することにより、エアロゲル層1に挟まれた表面シート2を中間シートとして構成し、エアロゲル層1を多層構造にして断熱材Bを形成することも好ましい。この場合、断熱材B全体のエアロゲル層1の内部に中間シートが配置されるような層構成になるため、断熱材Bの強度をさらに向上することができる。このような多層構造は、中間シートを介してエアロゲル層1を複数有する構造であり、エアロゲル層1を二つ有する構造だけでなく、三つ以上有する構造であってもよい。ただし、薄板化のためには、エアロゲル層1の積層数は少ない方がよい。なお、多層構造においては、外表面の表面シート2と中間シートとは、接していないようにすることが好ましい。表面シート2と中間シートが接すると熱が伝達する経路(パス)が形成されることになって、断熱性が低下するおそれがある。同様に、断熱性を高めるために、外表面の表面シート2同士、及び、内部の中間シート同士は接していないことが好ましい。
凹凸面3を構成する凸部3aは、エアロゲル層1に食い込んでいてもよい。エアロゲル層1に表面シート2の凸部3aが食い込むと、凸部3aによって強固にエアロゲル層1を支持することができる。そのため、強度が高く断熱性に優れた断熱材Bを得ることができる。このとき、凹凸成形された表面シート2を用いることにより、形成された凸部3aをエアロゲル層1に容易に食い込ませることができる。
図2は、表面シート2に設けられた凹凸面3の凹凸形状の一例であり、凸部3aのパターン形状を実線で示している。凹凸形状は、表面で突出する凸部3aが筋状になったものが好ましい。それにより、エアロゲル層1に、凸部3aで構成された凹凸面3を密着性よく貼り付けることができる。また、筋状の凸部3aは線状に接着性が高まった部分を形成してエアロゲル層1との密着性を高めることができるとともに、凸部3aがリブとして機能することができるため、強度を効果的に高めることができる。もちろん、エアロゲル層1との密着性を高める形状としては、点状の凸部3aを設けるようにしてもよい。また、接触面積を上げる形状としては、溝状に凹部を設けて凹凸を形成するようにしてもよい。しかしながら、筋状の凸部3aによれば、密着性を容易に高めることができ、強度を効率よく向上させることができる。また、凸部3aを食い込ませる場合には、筋状にすることにより食い込みやすくすることができ、食い込んだ筋状の凸部3aでエアロゲル層1を強固に支持して強度を高めることができる。
図2(a)の凹凸面3は、同形状の矩形(長方形又は正方形)が縦横に配列して構成される格子状の凹凸である。凸部3aは縦横にそれぞれ等間隔で並ぶ複数の直線で構成されている。格子状にすることにより、簡単に凹凸を形成することができる。格子状の凹凸は例えば、格子状の網をプレスの成形型と表面シート2との間に挟んでプレスして、表面シート2の網とは反対側の面を盛り上がらせることにより形成することができる。
図2(b)の凹凸面3は、短い直線状(棒状)の凸部3aが複数設けられて構成された凹凸である。棒状の凸部3aは長さが所定の範囲内で形成されている。この凸部3aは、不規則に配置することができる。複数の棒状の凸部3aは、例えば、金属棒などの棒状体をプレスの成形型と表面シート2との間に挟んでプレスして、表面シート2の棒状体とは反対側の面を盛り上がらせることにより形成することができる。
図2(c)の凹凸面3は、波曲線の形状である。この凹凸形状では、一方から他方に向かって波状に延伸する複数の曲線によって凸部3aが形成されている。波曲線にすることにより、割れにくくすることができる。また、波曲線の構造は、結露した水滴が集まって筋に沿って流れやすくなるため、結露対策にも有効である。この形態では、曲線状の波を示しているが、角張った凸凹の波線であってももちろんよい。単に直線を複数設けた場合、強度向上に方向性が発生するおそれがあるが、波形状にする場合、強度向上の方向性をより均一にし、安定して強度を向上することができる。波曲線の凸部3aは、例えば、ワイヤを波形にしたものをプレスの成形型と表面シート2との間に挟んでプレスして、表面シート2のワイヤとは反対側の面を盛り上がらせることにより形成することができる。
図2(d)は、複数の六角形が集合した構造である。この構造は、いわゆる、ハニカム構造、又は、蜂の巣構造と呼ばれるものであってよい。このような六角形構造では、凸部3aが形の変形しにくい強固な構造となるため、表面シート2の強度を効果的に高めることができる。六角形状の凹凸は例えば、ハミカム構造の網をプレスの成形型と表面シート2との間に挟んでプレスして、表面シート2の網とは反対側の面を盛り上がらせることにより形成することができる。
凸部3aの突出高さは、100〜1000μmの範囲にすることができる。凸部3aの高さがこの範囲になることにより、断熱性を低下させることなく、密着性を高めて強度を向上させることができる。
エアロゲル層1は、複数のエアロゲル粒子Aが接着剤により固着することにより形成されている。エアロゲル粒子Aを固着させてエアロゲル層1を形成する接着剤としては、接着性を有する適宜の樹脂(樹脂組成物)を用いることができる。樹脂の主成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、などを挙げることができる。また、樹脂組成物には、樹脂の硬化を促進したり補助したりする成分が含まれていてもよい。例えば、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤などである。エアロゲル層1の厚みは、特に限定されるものではないが、建材として用いるためには、例えば、1〜100mmの厚みの範囲内にすることができる。
表面シート2は、適宜のシート材を用いることができる。紙や金属薄膜などであってもよいが、樹脂シート、繊維シート、樹脂含浸繊維シートが好ましい。木製の板材などを用いてもよいが、断熱材Bの軽量化のためには、シート材が好ましい。また、製造性や取り扱い性のよい巻上げ可能なシート材が好ましい。樹脂シートは加熱圧延されて形成されたシートであってもよいし、樹脂が直接シート状に成形されたものであってもよい。樹脂シートの材料は、PET、アクリル系、などを用いることができる。また、繊維シートは、織布、不織布などを使用することができる。繊維としては、ガラス繊維、有機繊維、合成繊維、パルプ、など適宜の繊維を用いることができる。また、樹脂含浸繊維シートは前記の繊維シートに前記の樹脂を含浸させたものを用いることができる。樹脂含浸繊維シートを用いる場合、未硬化のシートを用いてもよいし、半硬化のシートを用いてもよいし、硬化後のシートを用いてもよい。液状の樹脂組成物が含浸されている場合は、湿潤したシートを用いることになる。表面シート2は、エアロゲルとの親和性が高いものが好ましい。そのため、極性の低い素材で形成された表面シート2を用いるようにしてもよい。
表面シート2は、接着剤によりエアロゲル層1に接着して貼り付けられている。表面シート2は、エアロゲル粒子Aを接着して一体化する接着剤により接着されていてよい。あるいは、エアロゲル粒子Aで構成されるエアロゲル層1と表面シート2との間に、塗布などにより接着剤が導入されて接着されていてよい。あるいは、表面シート2が接着性の樹脂を含むものである場合は、この接着性の樹脂により接着されていてよい。要するに、エアロゲル層1と表面シート2との界面に接着剤が設けられていればよいものである。表面シート2とエアロゲル層1とを接着する接着剤としては、上記で説明したエアロゲル粒子の接着に用いることのできる接着剤を使用することができる。また、上記の接着剤は、表面シート2として繊維含浸シートを用いる場合、繊維シートに含浸させる樹脂として用いることができる。
断熱材Bの好ましい一形態は、表面シート2が繊維4を含有するものであり、表面シート2に接着剤が滲み込んでエアロゲル層1と表面シート2とが固着されている態様である。それにより、表面シート2とエアロゲル層1との密着性を高めるとともに、表面シート2の強化を図ることができ、断熱材Bの強度をさらに高めることができる。図1では、図3の形態のように繊維4を詳細には図示していないが、図1の形態においても、繊維4を含有するシート材を用いることにより、表面シート2の繊維4に接着剤を含浸させることができる。
従来、エアロゲル層1と表面シート2とを接着した断熱材Bにおいては、密着性の不足とともに、シートの強度不足が発生する場合があり、断熱材Bの強度を高めるためには、シート自身の強度アップが望まれていた。そこで、繊維を含有する表面シート2にエアロゲル層1の接着成分が浸透するようにして、表面シート2をエアロゲル層1と一体となって固めるようにする。それにより、表面シート2の強度が効率よく高まるものである。
表面シート2としては、繊維4が長繊維で面方向に配向するシートを使用することが好ましい。それにより、接着剤を滲み込みやすくすることができる。繊維シートは、織布であってもよいし、不織布であってもよい。
接着剤を滲み込ませるためには、表面シート2として、樹脂が含浸されていない繊維シートや、未硬化の樹脂含浸繊維シート、半硬化の樹脂含浸繊維シートを用いることができる。それにより、樹脂を繊維シートに含浸させやすくすることができる。また、未硬化又は半硬化の樹脂含浸繊維シートを用いる場合には、樹脂含浸繊維シートに含浸された樹脂をエアロゲル層1に浸透させて、エアロゲル層1と表面シート2とを接着させてもよい。その場合、エアロゲル層1と表面シート2との界面において相互に樹脂(接着剤)が浸透することにより、さらに密着性を高めることができる。
図3は、エアロゲル粒子を用いた断熱材Bの実施形態の他の一例である。本形態においても、断熱材Bは、エアロゲル粒子A及び接着剤を含むエアロゲル層1に表面シート2が貼り付けられた構成を有する。この断熱材Bは、表面シート2におけるエアロゲル層1側の面が、凹凸面3として形成されている。このように、表面シート2が凹凸面3でエアロゲル層1に貼り付けられると、凹凸によって密着性を高めることができ、断熱材Bの強度を高めることができる。そして、図3(a)及び(b)で示すように、本形態では、表面シート2は繊維4を含有するものであり、凹凸面3を構成する凸部3aは、表面シート2のエアロゲル層1側の面で飛び出た繊維4により形成されている。このように、繊維4により凸部3aを形成すると、繊維4がエアロゲル層1の隙間に入り込んで表面シート2とエアロゲル層1とが接着して一体化するため、表面シート2とエアロゲル層1との密着性を効果的に高めることができる。
繊維4の飛び出しは、例えば、表面シート2のエアロゲル層1と接する面において繊維4を毛羽立たせることにより行うことができる。毛羽立たせはエアロゲル層1と接する片面(内面)だけであってよい。外表面を毛羽立たせると、強度を低下したり、外観を損ねたりするおそれがある。繊維4の毛羽立たせは、例えば、ブラシで擦るなどの方法で行うことができる。製造レベルにおいては、ブラシ状の擦り器具などを用いてよい。これにより、図3(a)に示すような、エアロゲル層1に配設される側の表面で繊維4が飛び出た表面シート2を得ることができる。そして、プレスの際に、繊維4が毛羽立った表面シート2の面をエアロゲル層1側に配置してプレスすることにより、表面から飛び出た繊維4をエアロゲル層1の粒子間の隙間に入り込ませて、表面シート2とエアロゲル層1とを接着することができる。これにより、図3(b)に示すような、凸部3aを構成する繊維4がエアロゲル層1に入り込んだ断熱材Bを得ることができる。なお、繊維4に樹脂に含浸させた樹脂含浸繊維シートの場合には、樹脂を含浸させて固める前に毛羽立たせておくことで、繊維4を表面で飛び出させることができる。
凸部3aを構成する表面で飛び出た繊維4は、繊維4の端部が突き出して飛び出すものであってもよいし、繊維4の中央部が湾曲してループ状に飛び出すものであってもよいし、それらの両方が混在したものであってもよい。繊維4の端部が飛び出している場合、繊維4の端部を粒子の隙間に入りやすくすることができる。また、繊維4の中央部が飛び出している場合、引っ掛けるようにして粒子と繊維4とを絡ませて表面シート2をエアロゲル層1に貼り付けることができる。
凸部3aの突出高さ(飛び出した繊維4における表面シート2の表面と垂直な方向の長さ)は、500〜3000μmの範囲にすることができる。繊維4の飛び出し幅(凸部3aの高さ)がこの範囲になることにより、断熱性を低下させることなく、密着性を高めて強度を向上させることができる。
表面シート2としては、繊維4が長繊維で面方向に配向するシートを使用することが好ましい。それにより、表面シート2から脱落させることなく表面シート2に保持したまま繊維4を飛び出させることができる。また、図4の形態で示すように、接着剤を表面シート2に浸透させる場合には、接着剤を滲み込みやすくすることができる。繊維シートは、織布であってもよいし、不織布であってもよい。
繊維4で構成される凸部3aは、エアロゲル層1に食い込んでいてもよい。エアロゲル層1に表面シート2の繊維4が食い込むと、繊維4によって強固にエアロゲル層1を支持することができる。そのため、強度が高く断熱性に優れた断熱材Bを得ることができる。このとき、繊維4が飛び出た表面シート2を用いることにより、凸部3aを構成する繊維4をエアロゲル層1に容易に食い込ませることができる。
本形態においても、図1の形態で説明したものと同様に、エアロゲル層1と表面シート2とをさらに積層させて、多層構造にすることができる。その場合、中間シートは、両面において繊維4を飛び出せているようにすることが好ましい。それにより、中間シートとその両面に配置されるエアロゲル層1との密着性を高めることができる。
図4は、エアロゲル粒子を用いた断熱材の実施形態の他の一例である。本形態は、図3の構成と概略同じであるが、繊維4を含有する表面シート2に、エアロゲル粒子Aを接着させるための接着剤が滲み込む形態を図示している。図4では、構成を分かりやすくするために、接着剤をドットで表している。
図4(a)で示すように、本形態では、接着剤として接着樹脂5が用いられている。表面シート2は接着樹脂5aが含浸しており、エアロゲル粒子Aは接着樹脂5bと混合されている。これらの接着樹脂5は完全には硬化していない。そして、プレスによりエアロゲル層1と表面シート2とを重ねて硬化させる。このとき、エアロゲル層1側の接着樹脂5bは表面シート2に滲み込んで硬化する。それにより、強固な接着を得ることができる。また、さらに接着樹脂5aもエアロゲル層1に浸透すればより強固な接着を得ることができる。接着剤が硬化することにより、図4(b)に示すような、接着樹脂5が硬化して一体化した断熱材Bを得ることができる。
なお、上記では、樹脂含浸繊維シートを用いた例を説明したが、樹脂の含浸していない繊維シートを用いるとともに、接着剤をエアロゲル層1のみに用いて、プレスの際に、エアロゲル層1の接着剤を繊維4に滲み込ませて積層一体化するようにしてもよい。また、繊維シートの片面に接着剤を塗布し、この面をエアロゲル層1に向けて繊維シートを重ねてエアロゲル層1に貼り付けてもよい。
図5は、断熱材Bの製造の一例である。この製造により、エアロゲル粒子Aを接着剤で接着して一体化させてエアロゲル層1を形成するとともに、このエアロゲル層1の表面に表面シート2を接着させて断熱材Bを形成することができる。なお、この図では、接着剤を省略して記載しているが、エアロゲル粒子A同士及びエアロゲル粒子Aと表面シート2とは、接着剤で接着されていてよい。接着にあたっては、プレス機10を用いる。このプレス機10はプレス下型11とプレス上型12とを備えて構成されている。図5の形態では、表面シート2として、エアロゲル層1側の面が凹凸面3となったものを用いた例を示しているが、両面に凹凸を有するシートを用いた場合も、同様の方法で製造することができる。また、繊維4は図示していないが、繊維を含有するシートを用いる場合も同様の方法で製造することができる。
プレスにあたっては、まず、図5(a)に示すように、プレス下型11に側壁型11bを取り付けて凹部11aを形成した後、この凹部11aの底面に離型シート14を敷き、その上に表面シート2を重ねる。このとき、さらに表面シート2の表面(エアロゲル層1側の面)に接着剤を塗布してもよい。次に、予めエアロゲル粒子Aと接着剤とを容器6などで混合してエアロゲル粒子Aと接着剤との混合物を調製しておき、この混合物を容器6からプレス下型11上の凹部11aに投入する。このとき、プレス下型11は加熱により接着剤の硬化温度以下の温度まで予熱されていることが好ましい。次いで、図5(b)に示すように、薬さじ、ヘラなどの平滑具13により表面を平らにならす。次に、表面が平坦になったエアロゲル粒子Aの上に表面シート2を重ね、さらにその上に、離型シート14を重ねる。このとき、エアロゲル粒子Aに表面シート2を重ねる前に、表面シート2のエアロゲル層1側の面に接着剤をさらに塗布しておいてもよい。それにより、接着性をさらに高めることができる。そして、図5(c)で示すように、プレス上型12を凹部11aに上方から押し込んで挿入し、加熱加圧して押圧(プレス)する。このとき、エアロゲル粒子Aが押し潰されて壊れない程度のプレス圧力で押圧することが好ましい。このプレスにより接着剤によりエアロゲル粒子Aが接着されて一体化する。また、表面シート2とエアロゲル粒子Aとが接着剤により接着されて表面シート2がエアロゲル粒子Aの成形物であるエアロゲル層1と一体化する。そして、プレス終了後に成形物を取り出し、乾燥機で乾燥する。これにより、図5(d)に示すように、エアロゲル粒子Aの成形物(エアロゲル層1)と表面シート2との積層体により構成される断熱材Bが形成される。
プレスの際には、表面シート2に凹凸が形成されているために、表面シート2の凸部3aがエアロゲル粒子Aの隙間に入り込んで、凹凸に沿ってエアロゲル粒子Aに表面シート2を貼り付けることができる。そのため、表面シート2とエアロゲル層1とを密着して一体化することができる。なお、プレス型として凹凸を有する型を用いて、接着させるプレスと同時に表面シート2に凹凸を形成してもよい。ただし、プレスと同時に凹凸を形成する場合、プレス圧が高いとエアロゲル粒子Aを破壊してしまうおそれがあるので、表面シート2には予め凹凸を形成しておく方が好ましい。なお、繊維4を飛び出させて凸部3aを形成する場合には、表面シート2を成形型に入れる前に、予め表面シート2の表面をブラシなどの器具で擦るようにすれば、繊維4を毛羽立たせて凸部3aを形成することができる。
また、プレスの際に、樹脂を含まない繊維シート又は完全に硬化する前の樹脂含浸シートなど、繊維4を含有し、樹脂の浸透が可能なシート材を表面シート2として用いれば、エアロゲル層1を一体化させる接着剤を表面シート2に滲み込ませることができる。それにより、樹脂を浸透させて表面シート2とエアロゲル層1とを密着性高く一体化することができる。
本形態では、断熱材Bは板状の断熱材B(断熱ボード)として形成されている。もちろん、適宜の成形型を用いてプレスすることにより、ボード以外の形状の成形も可能である。この断熱材Bはエアロゲル粒子Aが接着して形成されたエアロゲル層1の両面に表面シート2が貼り付けられた構成を有している。エアロゲルを表面シート2で覆うことにより、断熱材Bの強度を高めることができる。なお、表面シート2はエアロゲル層1の一方の面のみに貼り付けられていてもよいが、強度を高めるためには両面に貼り付けられていることが好ましい。
このように形成された断熱材Bは、断熱性と強度に優れ、建築材料などとして有用なものである。
A エアロゲル粒子
B 断熱材
1 エアロゲル層
2 表面シート
3 凹凸面
3a 凸部
4 繊維
5 接着樹脂
B 断熱材
1 エアロゲル層
2 表面シート
3 凹凸面
3a 凸部
4 繊維
5 接着樹脂
Claims (4)
- エアロゲル粒子及び接着剤を含むエアロゲル層に表面シートが貼り付けられた断熱材であって、前記表面シートにおける前記エアロゲル層側の面は、凹凸面として形成されていることを特徴とする断熱材。
- 前記凹凸面は、前記表面シートの凹凸成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
- 前記表面シートは繊維を含有するものであり、前記凹凸面を構成する凸部は、前記表面シートのエアロゲル層側の面で飛び出た前記繊維により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
- 前記表面シートは繊維を含有するものであり、前記表面シートに前記接着剤が滲み込んで前記エアロゲル層と前記表面シートとが固着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱材。
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