以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(変速機の概要)
図1は、第1の実施形態における自動車用の変速機1の概略を示す図である。エンジンEの駆動力を駆動輪に伝達する本実施形態の変速機1は、ミッションケースに保持されたベアリングbに回転自在に軸支され、互いに平行に配されたメインシャフト2(シャフト)およびカウンタシャフト3を備えている。メインシャフト2は、発進クラッチ4を介してエンジンEのクランクシャフトに接続されており、発進クラッチ4を介して伝達されるエンジンEの駆動力によって回転する入力シャフトとして機能する。
メインシャフト2には、メインギヤ10が複数(本実施形態では6つ)装着されている。メインシャフト2に設けられるメインギヤ10の数は特に限定されるものではないが、ここでは、説明の都合上、6つのメインギヤ10を、それぞれ、1速メインギヤ11、2速メインギヤ12、3速メインギヤ13、4速メインギヤ14、5速メインギヤ15、6速メインギヤ16として説明する。メインシャフト2と、1速メインギヤ11、2速メインギヤ12、3速メインギヤ13、4速メインギヤ14、5速メインギヤ15、6速メインギヤ16との間には、それぞれ後述する緩衝機構100が設けられている。
詳しくは後述するが、緩衝機構100は、メインシャフト2に生じるトルクが予め設定されたリミットトルク(設定トルク)未満である場合に、当該メインシャフト2とメインギヤ10とを一体回転させ、メインシャフト2に生じるトルクがリミットトルク以上になると、当該メインシャフト2とメインギヤ10とを相対回転させるものである。
また、カウンタシャフト3には、カウンタギヤ20が複数(本実施形態では6つ)装着されている。ここでは、説明の都合上、6つのカウンタギヤ20を、それぞれ、1速カウンタギヤ21、2速カウンタギヤ22、3速カウンタギヤ23、4速カウンタギヤ24、5速カウンタギヤ25、6速カウンタギヤ26として説明する。
そして、1速カウンタギヤ21は1速メインギヤ11に噛合しており、これら1速メインギヤ11および1速カウンタギヤ21によって、メインシャフト2およびカウンタシャフト3間で動力伝達を行う第1歯車列31を構成している。同様に、2速メインギヤ12および2速カウンタギヤ22によって第2歯車列32が構成され、3速メインギヤ13および3速カウンタギヤ23によって第3歯車列33が構成され、4速メインギヤ14および4速カウンタギヤ24によって第4歯車列34が構成され、5速メインギヤ15および5速カウンタギヤ25によって第5歯車列35が構成され、6速メインギヤ16および6速カウンタギヤ26によって第6歯車列36が構成されている。
これら第1歯車列31〜第6歯車列36は、各メインギヤ11〜16および各カウンタギヤ21〜26のギヤ比を異にしており、本実施形態では、第1歯車列31が最も低速段側となり、第6歯車列36が最も高速段側となっている。
また、カウンタシャフト3には、動力伝達経路を切り換えるセレクタ機構50(50a、50b、50c)が複数設けられている。セレクタ機構50は、当該カウンタシャフト3に対して1速カウンタギヤ21〜6速カウンタギヤ26のいずれかを一体回転させる動力伝達状態、もしくは、当該カウンタシャフト3に対して1速カウンタギヤ21〜6速カウンタギヤ26を相対回転させる切り離し状態(ニュートラル状態)のいずれかを選択可能である。なお、本実施形態では、セレクタ機構50をカウンタシャフト3に設け、緩衝機構100をメインシャフト2に設けているが、これとは逆に、セレクタ機構50をメインシャフト2に設け、緩衝機構100をカウンタシャフト3に設けてもよい。
動力伝達経路として第1歯車列31が選択されている場合、セレクタ機構50aは、カウンタシャフト3に対して1速カウンタギヤ21を一体回転させるとともに、カウンタシャフト3に対して2速カウンタギヤ22を相対回転させる。このとき、セレクタ機構50b、50cは、第2歯車列32〜第6歯車列36を切り離し状態としている。したがって、この場合には、第1歯車列31を介して、メインシャフト2およびカウンタシャフト3間で動力伝達がなされることとなる。
このように、セレクタ機構50によって、ギヤ比を異にする第1歯車列31〜第6歯車列36を切り換えることにより、メインシャフト2からカウンタシャフト3へと動力を変速して伝達することが可能となる。このことからも明らかなように、カウンタシャフト3は、エンジンEから駆動輪への動力伝達経路において、メインシャフト2よりも下流側に位置し、出力シャフトとして機能することとなる。
そして、カウンタシャフト3と駆動輪が接続されており、エンジンEの駆動力は、発進クラッチ4→メインシャフト2→第1歯車列31〜第6歯車列36→カウンタシャフト3を介して矢印の順に駆動輪に伝達されることとなる。
次に、上記したセレクタ機構50、および、緩衝機構100の構成について詳細に説明する。
(セレクタ機構50の構成)
図2は、セレクタ機構50を部分的に示す斜視図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。セレクタ機構50は、カウンタシャフト3に固定され、図2および図3に示すように、これらカウンタシャフト3と一体回転する略円筒状のハブ51を備えている。このハブ51の外周面には、キー溝、より詳細には、第1キー溝51aおよび第2キー溝51bが当該ハブ51の周方向に、交互に、かつ、等間隔で複数形成されている。ここでは、第1キー溝51aおよび第2キー溝51bがそれぞれ6つずつ形成されているが、これら第1キー溝51aおよび第2キー溝51bの数は特に限定されるものではない。
第1キー溝51aおよび第2キー溝51bは、カウンタシャフト3の軸方向に沿って形成されている。これら第1キー溝51aおよび第2キー溝51bは、いずれもハブ51の外周面から中心側、すなわち、開口側から底部側に向かうにつれて、幅(ハブ51の周方向の幅)が徐々に広くなる寸法形状となっている。そして、第1キー溝51aには第1キー52が保持され、第2キー溝51bには第2キー53が保持されている。第1キー52および第2キー53は、いずれもカウンタシャフト3の軸方向に移動自在に、かつ、ハブ51と一体回転するように、それぞれ第1キー溝51aおよび第2キー溝51bに保持されている。
図4は、図2の分解図である。図4に示すように、第1キー52にはリング係合溝52aが形成されており、第2キー53にはリング係合溝53aが形成されている。第1キー52に形成されるリング係合溝52aは、第1キー52が第1キー溝51aに完全に収容された状態で、ハブ51の一端近傍に位置し、第2キー53に形成されるリング係合溝53aは、第2キー53が第2キー溝51bに完全に収容された状態で、ハブ51の他端近傍に位置する。
また、セレクタ機構50は、第1スリーブリング54および第2スリーブリング55を備えている。第1スリーブリング54は、その内周面から当該第1スリーブリング54の中心側に突出する係合片54aを複数有しており、第2スリーブリング55は、その内周面から当該第2スリーブリング55の中心側に突出する係合片55aを複数有している。第1スリーブリング54の係合片54aは、第1キー52のリング係合溝52aと係合可能に構成されており、第1キー52と同数、かつ、周方向に等間隔で配置されている。同様に、第2スリーブリング55の係合片55aは、第2キー53のリング係合溝53aと係合可能に構成されており、第2キー53と同数、かつ、周方向に等間隔で配置されている。
図5は、セレクタ機構50の組み付け過程を示す図である。ハブ51に第1キー52、第2キー53、第1スリーブリング54、第2スリーブリング55を組み付ける際には、まず、ハブ51の第1キー溝51aに第1キー52を収容するとともに、ハブ51の第2キー溝51bに第2キー53を収容する。このとき、第1キー52は、リング係合溝52aが第1キー溝51aから軸方向に突出するように配置しておき、第2キー53は、リング係合溝53aが第2キー溝51bから軸方向に突出するように配置しておく。そして、第1キー52に第1スリーブリング54を挿通させた後、当該第1スリーブリング54を周方向に回転させて、係合片54aを第1キー52のリング係合溝52aに係合させる。同様に、第2キー53に第2スリーブリング55を挿通させた後、当該第2スリーブリング55を周方向に回転させて、係合片55aを第2キー53のリング係合溝53aに係合させる。
この状態で第1キー52および第2キー53を軸方向に移動させて、これら第1キー52および第2キー53を、ハブ51の第1キー溝51aおよび第2キー溝51b内に完全に収容すれば、組み付けが完了して図2に示す状態となる。この状態では、第1スリーブリング54の係合片54aは、ハブ51の第1キー溝51aにも係合しており、第2スリーブリング55の係合片55aは、ハブ51の第2キー溝51bにも係合している。したがって、ハブ51、第1キー52、第2キー53、第1スリーブリング54、第2スリーブリング55は一体回転するとともに、第1スリーブリング54と第1キー52とが一体となって軸方向に移動可能となり、第2スリーブリング55と第2キー53とが一体となって軸方向に移動可能となる。
なお、本実施形態では、第1スリーブリング54と第1キー52とが別体で構成され、第2スリーブリング55と第2キー53とが別体で構成されていることとしたが、第1スリーブリング54および第1キー52、第2スリーブリング55および第2キー53は、それぞれ一体成形されていてもよい。いずれにしても、第1スリーブリング54および第1キー52が一体となって回転および軸方向に移動し、第2スリーブリング55および第2キー53が一体となって回転および軸方向に移動すればよい。
図6は、セレクタ機構50の分解斜視図であり、図7は、セレクタ機構50の組み付け状態を示す斜視図である。上記したように、セレクタ機構50は、カウンタシャフト3にそれぞれ設けられており、メインシャフト2とカウンタシャフト3との間の動力伝達経路を、第1歯車列31〜第6歯車列36のいずれかに切り換える。動力伝達経路の切り換え、すなわち、変速は、第1キー52および第2キー53を軸方向に移動させることで行われる。この第1キー52および第2キー53の移動は、第1スリーブリング54および第2スリーブリング55を介して行われる。
セレクタ機構50は、第1スリーブリング54を軸方向に移動させる第1シフトフォーク56と、第2スリーブリング55を軸方向に移動させる第2シフトフォーク57と、を備えている。第1シフトフォーク56には連係溝56aが形成されており、この連係溝56aに、第1スリーブリング54が約半周に亘って回転自在に収容される。同様に、第2シフトフォーク57には連係溝57aが形成されており、この連係溝57aに、第2スリーブリング55が約半周に亘って回転自在に収容される。
したがって、第1シフトフォーク56を、カウンタシャフト3の軸方向に沿って移動させると、第1スリーブリング54および第1キー52が回転状態を維持したまま軸方向に移動する。同様に、第2シフトフォーク57を、カウンタシャフト3の軸方向に沿って移動させると、第2スリーブリング55および第2キー53が回転状態を維持したまま軸方向に移動することとなる。
そして、第1シフトフォーク56には、カウンタシャフト3の軸方向に移動する第1ロッド58が固定されており、第2シフトフォーク57には、カウンタシャフト3の軸方向に移動する第2ロッド59が固定されている。第1ロッド58および第2ロッド59には、それぞれ、電子制御ユニットECUの制御によって作動するアクチュエータが接続されている。したがって、電子制御ユニットECUがアクチュエータを制御すると、このアクチュエータの作動に伴って、第1キー52および第2キー53が、カウンタシャフト3の軸方向に移動することとなる。
上記のようにして、第1キー52および第2キー53が軸方向に移動した状態では、これら第1キー52および第2キー53の端部が、メインギヤ10またはカウンタギヤ20に係合し、第1キー52または第2キー53を介した動力伝達が実現される。上記したとおり、本実施形態においては、セレクタ機構50aが、カウンタシャフト3において第1歯車列31と第2歯車列32との間に配置され、セレクタ機構50bがカウンタシャフト3において第3歯車列33と第4歯車列34との間に配置され、セレクタ機構50cがカウンタシャフト3において第5歯車列35と第6歯車列36との間に配置される。以下では、カウンタシャフト3において、第1歯車列31を構成する1速カウンタギヤ21と、第2歯車列32を構成する2速カウンタギヤ22との間に配置されるセレクタ機構50aについて説明する。
図6に示すように、1速カウンタギヤ21における2速カウンタギヤ22との対向面には、第1キー52の端部に係合するドグ21aが突設されている。1速カウンタギヤ21のドグ21aは、第1キー52と同数設けられており、1速カウンタギヤ21の周方向に等間隔で配置されている。なお、図6および図7では視認できないが、2速カウンタギヤ22における1速カウンタギヤ21との対向面には、第2キー53の端部に係合するドグ22aが突設されている。このドグ22aは、上記のドグ21aと同一形状をなしており、第2キー53と同数設けられ、2速カウンタギヤ22の周方向に等間隔で配置されている。
図8は、セレクタ機構50の第1キー52、第2キー53およびドグ21a、22aを説明する図である。1速カウンタギヤ21のドグ21aは、図8(b)に示すように、1速カウンタギヤ21の回転方向前方側に位置するリーディング面21afと、回転方向後方側に位置するトレーリング面21arと、を備えている。ドグ21aは、1速カウンタギヤ21の回転方向の幅が、1速カウンタギヤ21側よりも2速カウンタギヤ22側の方が広い、すなわち、先端幅広の形状となっている。
また、2速カウンタギヤ22のドグ22aは、2速カウンタギヤ22の回転方向前方側に位置するリーディング面22afと、2速カウンタギヤ22の回転方向後方側に位置するトレーリング面22arと、を備えている。このドグ22aは、2速カウンタギヤ22の回転方向の幅が、2速カウンタギヤ22側よりも1速カウンタギヤ21側の方が広い、すなわち、先端幅広の形状となっている。
そして、第1キー52は、1速カウンタギヤ21側の端部に、ドグ21aのリーディング面21afに係合可能なリーディング爪52fを備え、また、2速カウンタギヤ22側の端部に、ドグ22aのトレーリング面22arに係合可能なトレーリング爪52rを備えている。リーディング爪52fは、リーディング面21afに面接触状態で係合し、トレーリング爪52rは、トレーリング面22arに面接触状態で係合するように、テーパ状に形成されている。
一方、第2キー53は、1速カウンタギヤ21側の端部に、ドグ21aのトレーリング面21arに係合可能なトレーリング爪53rを備え、また、2速カウンタギヤ22側の端部に、ドグ22aのリーディング面22afに係合可能なリーディング爪53fを備えている。トレーリング爪53rは、トレーリング面21arに面接触状態で係合し、リーディング爪53fは、リーディング面22afに面接触状態で係合するように、テーパ状に形成されている。
そして、図8(a)に示すように、ハブ51は、1速カウンタギヤ21および2速カウンタギヤ22の対向面間に配されており、電子制御ユニットECUがアクチュエータを制御していない場合には、第1キー52および第2キー53がいずれもハブ51の中心にある中間位置に保持される。第1キー52および第2キー53は、ハブ51の中間位置において、いずれもドグ21a、22aと非係合状態となっており、これによってセレクタ機構50aは切り離し状態となる。このように、セレクタ機構50aが切り離し状態にある場合には、1速カウンタギヤ21および2速カウンタギヤ22と、ハブ51すなわちカウンタシャフト3とが相対回転することとなる。
図9は、1速カウンタギヤ21を介した動力伝達状態を説明する図である。図9(a)に示すように、電子制御ユニットECUがアクチュエータを制御して、第1ロッド58および第2ロッド59を1速カウンタギヤ21側にシフトすると、第1キー52および第2キー53が上記の中間位置よりも1速カウンタギヤ21側に移動する。ここで、メインシャフト2に装着された1速メインギヤ11および2速メインギヤ12は、メインシャフト2と一体回転している(図1参照)。
一方で、1速メインギヤ11に常時噛合する1速カウンタギヤ21および2速メインギヤ12に常時噛合する2速カウンタギヤ22は、カウンタシャフト3に相対回転自在に装着されている。したがって、1速カウンタギヤ21および2速カウンタギヤ22は、メインシャフト2と一体となって回転するとともに、カウンタシャフト3に対して相対回転することとなる。
そして、第1キー52および第2キー53が1速カウンタギヤ21側に移動しており、かつ、エンジンEによる車両の加速時には、図9(b)に示すように、1速カウンタギヤ21のドグ21aにおけるリーディング面21afと、第1キー52のリーディング爪52fとが係合する。これにより、メインシャフト2からカウンタシャフト3へと動力が伝達している状態(1速加速状態)となる。なお、このとき、第2キー53とドグ21aとは非係合状態に維持されている。以下において、「加速」とは、エンジンEの駆動力によって車両が加速する状態をいうものであり、例えば、坂を下るときに、自重によって車両が加速する状態をいうものではない。
また、エンジンE側の回転モーメントによる車両の減速(所謂、エンジンブレーキ)時には、図9(c)に示すように、1速カウンタギヤ21のドグ21aにおけるトレーリング面21arと、第2キー53のトレーリング爪53rとが係合し、これによって、メインシャフト2からカウンタシャフト3へと、駆動輪側の慣性力を抑える力が伝達している状態(1速減速状態)となる。なお、このとき、第1キー52とドグ21aとは非係合状態に維持されている。以下において、「減速」とは、エンジンブレーキによる車両の減速状態をいうものであり、例えば、坂を上るときに車両が減速する状態をいうものではない。
図10は、2速カウンタギヤ22を介した動力伝達状態を説明する図である。図10(a)に示すように、電子制御ユニットECUがアクチュエータを制御して、第1ロッド58および第2ロッド59を2速カウンタギヤ22側にシフトすると、第1キー52および第2キー53が上記の中間位置よりも2速カウンタギヤ22側に移動する。そして、車両の加速時には、図10(b)に示すように、2速カウンタギヤ22のドグ22aにおけるリーディング面22afと、第2キー53のリーディング爪53fとが係合し、これによって、メインシャフト2とカウンタシャフト3とが動力伝達状態(2速加速状態)となる。
なお、このとき、第1キー52とドグ22aとは非係合状態に維持されている。また、車両の減速時には、図10(c)に示すように、2速カウンタギヤ22のドグ22aにおけるトレーリング面22arと、第1キー52のトレーリング爪52rとが係合し、これによって、メインシャフト2とカウンタシャフト3とが動力伝達状態(2速減速状態)となる。なお、このとき、第2キー53とドグ22aとは非係合状態に維持されている。
このように、セレクタ機構50aによれば、メインシャフト2と一体となって回転する1速カウンタギヤ21または2速カウンタギヤ22に、第1キー52および第2キー53を飛び込ませることで、エンジンEの駆動力を、メインシャフト2からカウンタシャフト3へと伝達することができる。なお、セレクタ機構50b、50cは、セレクタ機構50aによる動力伝達の態様が上記の説明と同じである。
以上のように、本実施形態のセレクタ機構50によれば、電子制御ユニットECUがアクチュエータを制御することにより、メインシャフト2とカウンタシャフト3との動力伝達経路を、第1歯車列31〜第6歯車列36のいずれかに切り換えることができる。
なお、例えば、上記のように1速や2速に変速する際には、第1キー52および第2キー53と、1速カウンタギヤ21および2速カウンタギヤ22との間に差回転が生じている。本実施形態の変速機1では、セレクタ機構50により、第1キー52および第2キー53と、1速カウンタギヤ21および2速カウンタギヤ22との間に差回転が生じたままの状態で、第1キー52を1速カウンタギヤ21に飛び込ませたり、第2キー53を2速カウンタギヤ22に飛び込ませたりする。
そのため、第1キー52が1速カウンタギヤ21のドグ21aに係合したり、第2キー53が2速カウンタギヤ22のドグ22aに係合したりすると、双方が係合した瞬間に急激なトルク変動(以下、「スパイクトルク」という)が生じる。このように、変速の際にスパイクトルクが生じると、衝撃音や騒音が生じたり、メインシャフト2やカウンタシャフト3に捩じれが生じ、駆動輪やミッションケースに振動が生じたりする。本実施形態では、こうした変速時に生じるスパイクトルクを、上記の緩衝機構100で吸収、緩衝し、騒音や振動等を低減する。
(緩衝機構100の構成)
図11は、第1の実施形態における緩衝機構100の概略断面図である。本実施形態の緩衝機構100は、隣り合う2つのメインギヤ10それぞれに緩衝機能を供する部材が一体的に構成されている。ここでは、メインシャフト2に装着された1速メインギヤ11および2速メインギヤ12に設けられた緩衝機構100について説明するが、3速メインギヤ13および4速メインギヤ14、5速メインギヤ15および6速メインギヤ16にそれぞれ設けられる緩衝機構100も同様の構成となっている。
図11に示すように、1速メインギヤ11(第1ギヤ)および2速メインギヤ12(第2ギヤ)は、メインシャフト2の軸方向に互いに離間した状態で、当該メインシャフト2に対して相対回転自在に装着されている。1速メインギヤ11は、2速メインギヤ12との対向面から突出する円筒状の円環部11aが一体成形されており、この円環部11aの外周面に、第1カップリング部材101が固定されている。
また、第1カップリング部材101は、薄板円形状の平面部101aを備えており、この平面部101aの中心に、1速メインギヤ11の円環部11aが挿通、固定される貫通孔101bが形成されている。また、平面部101aには、2速メインギヤ12側に隆起する円筒状の環状突起部101cが一体成形されている。
そして、平面部101aの外周縁、すなわち、環状突起部101cよりも径方向外方には、メインシャフト2の径方向に窪む保持溝101dが形成されている。この保持溝101dは、平面部101aの周方向に等間隔で複数形成されており、この保持溝101dによって、環状の第1中間リング102が保持されている。第1中間リング102は、メインシャフト2の軸方向に所定の長さを有する環状の部材であり、環状突起部101cに対してメインシャフト2の径方向に対向配置され、1速メインギヤ11と一体回転する。
第1中間リング102は、第1カップリング部材101の保持溝101dに挿通される保持片102aが、周方向に等間隔で複数形成されている。そして、その保持片102aが、第1カップリング部材101の保持溝101dに嵌合されることで保持されており、この保持溝101dと保持片102aとによって、第1カップリング部材101と第1中間リング102とが一体回転することとなる。なお、第1中間リング102は、1速メインギヤ11側の側面から、2速メインギヤ12側の側面に向かうにしたがって、徐々に小径となるように形成されており、第1中間リング102の内周面および外周面が、メインシャフト2の軸方向に対し傾斜する関係を維持している。この第1中間リング102の内周面および外周面がテーパ状の摩擦面となる。
また、メインシャフト2には、当該メインシャフト2と一体回転する第1ハブ103がスプライン係合されている。第1ハブ103は、メインシャフト2と一体回転するとともに当該メインシャフト2の軸方向に移動自在に設けられ、1速メインギヤ11の側面に対向配置される。
この第1ハブ103は、メインシャフト2にスプライン係合される係合部103aが形成された薄板円形状の第1ハブ本体103bと、この第1ハブ本体103bから1速メインギヤ11側に突設するとともに、環状突起部101cに対してメインシャフト2の径方向に対向配置される環状の第1突出部103cと、を備えている。第1突出部103cは、第1中間リング102よりも径方向外方に位置しており、第1中間リング102の外周面に接触している。
さらに、第1ハブ本体103bには、メインシャフト2の軸方向に貫通する保持孔103dが形成されている。この保持孔103dは、第1ハブ本体103bの周方向に等間隔で複数形成されており、この保持孔103dによって、環状の第1インナーリング104が保持されている。第1インナーリング104は、第1中間リング102と同様に、メインシャフト2の軸方向に所定の長さを有する環状の部材であり、第1ハブ本体103bの保持孔103dに挿通される保持片104aが、周方向に等間隔で複数形成されている。この第1インナーリング104は、その保持片104aが、第1ハブ本体103bの保持孔103dに挿通されることで保持されており、この保持孔103dと保持片104aとによって、第1ハブ103と第1インナーリング104とが一体回転することとなる。
なお、第1インナーリング104は、1速メインギヤ11側の側面から、2速メインギヤ12側の側面に向かうにしたがって、徐々に小径となるように形成されており、第1中間リング102の内周面に密着する寸法関係を維持している。すなわち、第1インナーリング104の外周面は第1中間リング102の摩擦面(内周面)に面接触する。
そして、第1ハブ103をメインシャフト2に組み付けた状態では、第1ハブ103の第1突出部103cと、第1カップリング部材101の環状突起部101cとの間に、第1中間リング102および第1インナーリング104が圧接状態で挟持されることとなる。
一方、第1ハブ103を境にして1速メインギヤ11と反対側であって、2速メインギヤ12とメインシャフト2との間には、軸部材111がメインシャフト2と一体回転可能に設けられている。この軸部材111は、メインシャフト2が挿通される挿通孔111aが形成された軸本体部111bを備えており、この挿通孔111aにメインシャフト2が挿通された状態で、軸本体部111bがメインシャフト2にスプライン係合されている。すなわち、軸部材111は、メインシャフト2の軸方向に移動自在に設けられている。
軸本体部111bは、その軸方向の基端側(図11中右側)にフランジ部111cが一体成形されており、このフランジ部111c側が、先端側(図11中左側)よりも大径となっている。
そして、2速メインギヤ12は、軸本体部111bの大径部の外周面に相対回転自在に装着されている。また、2速メインギヤ12は、1速メインギヤ11との対向面から後述する第2ハブ113側に突出する円筒状の円筒部12aを備え、この円筒部12aよりも径方向外方には保持穴12bが形成されている。この保持穴12bは、1速メインギヤ11との対向面の周方向に等間隔で複数形成されており、この保持穴12bによって、環状の第2中間リング112が保持されている。
第2中間リング112は、メインシャフト2の軸方向に所定の長さを有する環状の部材であり、2速メインギヤ12の保持穴12bに嵌入される保持片112aが、周方向に等間隔で複数形成されている。この第2中間リング112は、その保持片112aが、2速メインギヤ12の保持穴12bに嵌入されることで保持されており、この保持穴12bと保持片112aとによって、2速メインギヤ12と第2中間リング112とが一体回転することとなる。なお、第2中間リング112は、2速メインギヤ12側の側面から、1速メインギヤ11側の側面に向かうにしたがって、徐々に小径となるように形成されており、第2中間リング112の内周面および外周面が、メインシャフト2や軸部材111の軸方向に対し傾斜する関係を維持している。この第2中間リング112の内周面および外周面がテーパ状の摩擦面となる。
また、軸部材111の小径部には、当該軸部材111と一体回転する第2ハブ113がスプライン係合されている。この第2ハブ113は、軸部材111と一体回転するとともに当該軸部材111の軸方向に移動自在に設けられ、2速メインギヤ12の側面に対向配置される。
第2ハブ113は、軸部材111にスプライン係合される係合部113aが形成された薄板円形状の第2ハブ本体113bと、この第2ハブ本体113bから2速メインギヤ12側に突設するとともに、円筒部12aに対してメインシャフト2の径方向に対向配置される環状の第2突出部113cと、を備えている。第2突出部113cは、第2中間リング112よりも径方向外方に位置しており、第2中間リング112の外周面に接触している。
さらに、第2ハブ本体113bには、メインシャフト2の軸方向に貫通する保持孔113dが形成されている。この保持孔113dは、第2ハブ本体113bの周方向に等間隔で複数形成されており、この保持孔113dによって、環状の第2インナーリング114が保持されている。第2インナーリング114は、第2中間リング112と同様に、メインシャフト2の軸方向に所定の長さを有する環状の部材であり、第2ハブ本体113bの保持孔113dに挿通される保持片114aが、周方向に等間隔で複数形成されている。この第2インナーリング114は、その保持片114aが、第2ハブ本体113bの保持孔113dに挿通されることで保持されており、この保持孔113dと保持片114aとによって、第2ハブ113と第2インナーリング114とが一体回転することとなる。
なお、第2インナーリング114は、2速メインギヤ12側の側面から、1速メインギヤ11側の側面に向かうにしたがって、徐々に小径となるように形成されており、第2中間リング112の内周面に密着する寸法関係を維持している。すなわち、第2インナーリング114の外周面は第2中間リング112の摩擦面(内周面)に面接触する。
そして、第2ハブ113を軸部材111に組み付けた状態では、第2ハブ113の第2突出部113cと、2速メインギヤ12の円筒部12aとの間に、第2中間リング112および第2インナーリング114が圧接状態で挟持されることとなる。
そして、第1ハブ103と第2ハブ113との間にはリテーナ120が1つ挟持されている。リテーナ120は、メインシャフト2および軸部材111と一体回転するとともに、第1ハブ103における1速メインギヤ11に対向する側と反対側、および、第2ハブ113における2速メインギヤ12と対向する側と反対側に設けられる。
このリテーナ120には、第1ハブ103との対向面に環状突起120aが形成されており、また、第2ハブ113との対向面に環状突起120bが形成されている。そして、環状突起120aの外周には、円錐バネからなる第1弾性部材121が係止されており、また、環状突起120bの外周には、円錐バネからなる第2弾性部材122が係止されている。
第1弾性部材121は、リテーナ120の一方の側面と第1ハブ103との間に介在されており、リテーナ120と第1ハブ103とが離反する方向にメインシャフト2の軸方向に沿って弾性力を作用させている。同様に、第2弾性部材122は、リテーナ120の第1弾性部材121が配された側面の裏側に位置する他方の側面と第2ハブ113との間に介在されており、リテーナ120と第2ハブ113とが離反する方向にメインシャフト2の軸方向に沿って弾性力を作用させている。
次に、上記の構成からなる1速メインギヤ11、2速メインギヤ12および緩衝機構100の組み付け工程について説明する。メインシャフト2は、軸方向に間隔を隔てて複数個所に段部2aが形成されており、1速メインギヤ11が装着される一端側(図11中左側)が、2速メインギヤ12が装着される他端側(図11中右側)よりも大径に構成されている。そして、まず、メインシャフト2にワッシャ123を挿通させるとともに、1速メインギヤ11、第1カップリング部材101、第1中間リング102を順次組み付ける。その後、第1インナーリング104を、第1中間リング102と第1カップリング部材101の環状突起部101cとの間に挟持させ、第1ハブ103をメインシャフト2にスプライン係合させる。
そして、メインシャフト2に、第1弾性部材121、第2弾性部材122が係止されたリテーナ120を挿通させ、2速メインギヤ12、軸部材111、第2中間リング112、第2ハブ113、第2インナーリング114をアセンブリ化してメインシャフト2にスプライン係合させる。このようにして、全ての部品を組み付けたら、最後に、ナット等からなる固定部材124を、2速メインギヤ12側からメインシャフト2に締結させる。これにより、固定部材124と、ワッシャ123が当接するメインシャフト2の段部2aとの間に、各部品が組み付け状態に維持されることとなる。
この組み付け状態では、第1弾性部材121の弾性力によって、第1ハブ103の第1突出部103cと第1中間リング102の外周面、第1中間リング102の内周面と第1インナーリング104の外周面、第1インナーリング104の内周面と第1カップリング部材101の環状突起部101cが、それぞれ圧接状態となる。同様に、第2弾性部材122の弾性力によって、第2ハブ113の第2突出部113cと第2中間リング112の外周面、第2中間リング112の内周面と第2インナーリング114の外周面、第2インナーリング114の内周面と2速メインギヤ12の円筒部12aが、それぞれ圧接状態となる。
すなわち、固定部材124は、メインシャフト2に締結されて軸部材111の軸方向の移動を規制し、第1弾性部材121の弾性力を第1ハブ103に作用させて第1中間リング102と第1インナーリング104との間に圧接力を作用させ、第2弾性部材122の弾性力を第2ハブ113に作用させて第2中間リング112と第2インナーリング114との間に圧接力を作用させる。
具体的に説明すると、上記のように、メインシャフト2には、当該メインシャフト2の一端側(図11中左側)への1速メインギヤ11の移動を規制する段部2aが設けられている。そして、固定部材124の締結力により、軸部材111が第1弾性部材121の弾性力に抗してリテーナ120をメインシャフト2の一端側に押圧した状態となる。
そして、第1弾性部材121の弾性力によってメインシャフト2の一端側へ押圧される第1ハブ103と、段部2aによってメインシャフト2の一端側への移動が規制された1速メインギヤ11との間で、第1中間リング102と第1インナーリング104とが圧接状態に維持される。
このように、本実施形態の緩衝機構100によれば、メインシャフト2の径方向に3つの摩擦面が積層して形成され、各摩擦面に、第1弾性部材121、第2弾性部材122によって、常に、セット荷重が発生することとなる。このセット荷重は、所謂、クラッチトルクを発生させることとなり、このクラッチトルクによって、1速メインギヤ11および2速メインギヤ12がメインシャフト2と一体回転することとなる。なお、このクラッチトルクは、第1弾性部材121、第2弾性部材122のセット荷重を調整することで適宜設定することができる。
また、図11に示すように、リテーナ120のメインシャフト2の軸方向の位置はメインシャフト2の段部2bと、軸部材111とで規制されており、第1弾性部材121、第2弾性部材122それぞれの弾性力は互いに干渉しない。そのため、第1弾性部材121、第2弾性部材122のセット荷重は、それぞれ、個別に設定することが可能となり、メインギヤ10それぞれに関するリミットトルクを容易に調整することができる。
なお、車両の通常走行状態では、緩衝機構100は動力伝達部材として機能しなければならない。したがって、緩衝機構100のクラッチトルクとして設定されるリミットトルクは、通常走行状態において各摩擦面が滑ることのないように、想定される入力トルクに対して、余裕をもって上回るトルク値にする必要がある。
そして、入力トルクが、緩衝機構100のリミットトルク以上となった場合には、各摩擦面が互いに滑ることで、メインシャフト2と1速メインギヤ11および2速メインギヤ12が相対回転する。このように、メインシャフト2に対して1速メインギヤ11および2速メインギヤ12が相対回転することにより、スパイクトルクが生じた場合に、その一部を吸収して衝撃を緩衝するので、騒音や振動を抑制することが可能となる。
しかも、本実施形態の変速機1によれば、メインシャフト2およびカウンタシャフト3の軸方向に隣り合う第1歯車列31および第2歯車列32、すなわち、1速メインギヤ11および2速メインギヤ12の間に、それぞれの緩衝機構100が設けられている。そして、1速メインギヤ11および2速メインギヤ12に設けられた緩衝機構100は、1速メインギヤ11および2速メインギヤ12を動力伝達状態または切り離し状態にするセレクタ機構50aと、軸方向の位置を一致させている。つまり、緩衝機構100は、第1歯車列31および第2歯車列32の間という、そもそもセレクタ機構50aを配するスペースを確保することで必ず生じてしまう空きスペースに設けられるため、緩衝機構100を設けても、変速機1全体が大型化することはない。
また、上記の緩衝機構100によれば、従来の緩衝機構を設けた場合と比べても、特に変速機1全体が大型化することもなく、従来の緩衝機構以上の剛性や緩衝機能を確保することが可能となる。なお、ここでは、1速メインギヤ11および2速メインギヤ12間に設けた緩衝機構100について説明したが、3速メインギヤ13および4速メインギヤ14間、5速メインギヤ15および6速メインギヤ16間に設けた緩衝機構100も上記と同様である。
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、緩衝機構100は、隣り合うメインギヤ10の間に、第1ハブ103、第1カップリング部材101、第1中間リング102、第1インナーリング104、第1弾性部材121、第2ハブ113、第2中間リング112、第2インナーリング114、第2弾性部材122が配置される場合について説明した。第2の実施形態では、隣り合うメインギヤ10の間に、第1ハブ103、第1カップリング部材101、第1中間リング102、第1インナーリング104、第1弾性部材121で構成されるユニット、および、第2ハブ113、第2中間リング112、第2インナーリング114、第2弾性部材122で構成されるユニットのいずれか一方が配される場合について説明する。なお、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図12は、第2の実施形態における自動車用の変速機200の概略を示す図である。第2の実施形態の変速機200は、1速から4速までの変速が可能であって、メインギヤ10は、1速メインギヤ11から4速メインギヤ14まで設けられ、カウンタギヤ20は、1速カウンタギヤ21から4速カウンタギヤ24まで設けられている。
そして、メインギヤ10とカウンタギヤ20によって、第1歯車列31から第4歯車列34までが構成される。第1歯車列31が最も低速段側となり、第4歯車列34が最も高速段側となっており、エンジンEに近い方から、第2歯車列32、第1歯車列31、第4歯車列34、第3歯車列33の順に配されている。
また、カウンタシャフト3には、動力伝達経路を切り換えるセレクタ機構50(50a、50b)が2つ設けられている。
図13は、第2の実施形態における緩衝機構300の概略断面図である。ここでは、2速メインギヤ12が上記の第1ギヤとして機能し、2速メインギヤ12と1速メインギヤ11との間に配されるのが、第1カップリング部材101、第1中間リング102、第1ハブ103、第1インナーリング104、第1弾性部材121となっている。
また、1速メインギヤ11、3速メインギヤ13、4速メインギヤ14は、いずれも第2ギヤとして機能し、1速メインギヤ11と3速メインギヤ13との間、3速メインギヤ13と4速メインギヤ14との間、4速メインギヤ14と固定部材124との間に配されるのが、第2ハブ113、第2中間リング112、第2インナーリング114、第2弾性部材122となっている。ただし、1速メインギヤ11と4速メインギヤ14との間に設けられるユニットにおいては、上記の円筒部12aの代わりに、第1カップリング部材101と同じ構造の第2カップリング部材131が設けられ、この第2カップリング部材131によって、第2インナーリング114が保持されている。
図13に示すように、2速メインギヤ12(第1ギヤ)は、メインシャフト2の段部2aとの間にワッシャ123を挟んで、当該段部2aによってメインシャフト2の一端側(図13中左側)への移動が規制されている。
そして、本実施形態においては、リテーナ120は、第1弾性部材121の弾性力を第1ハブ103に作用させる第1リテーナ120aと、第2弾性部材122の弾性力を第2ハブ113に作用させる第2リテーナ120bと、をそれぞれ別個に備えている。第1リテーナ120aは、2速メインギヤ12と1速メインギヤ11との間に配され、第2リテーナ120bは、1速メインギヤ11と4速メインギヤ14との間、4速メインギヤ14と3速メインギヤ13との間、3速メインギヤ13と固定部材124との間に1つずつ配される。
また、軸部材111は、第2ギヤ(1速メインギヤ11、3速メインギヤ13、4速メインギヤ14)ごとに設けられ、それぞれ、メインシャフト2と一体回転可能、かつ、メインシャフト2の軸方向に移動可能に、メインシャフト2とスプライン結合されている。
第2ユニット302は、上記の軸部材111、第2ギヤ(1速メインギヤ11、3速メインギヤ13、4速メインギヤ14)、第2ハブ113、円筒部12a(第2カップリング部材131)、第2中間リング112、第2インナーリング114、第2弾性部材122、および、第2リテーナ120bで構成される。そして、第2ユニット302は、メインシャフト2の軸方向に複数組連接して配置される。
軸部材111のうち、1速メインギヤ11に設けられた軸部材311は、2速メインギヤ12と1速メインギヤ11との間のメインシャフト2に形成された段部2bに当接しており、メインシャフト2の一端側への移動が規制されている。
軸部材311には径方向に突出したフランジ部311aが形成されており、当該フランジ部311aが第1リテーナ120aに当接している。
また、軸部材111のうち、4速メインギヤ14に設けられた軸部材314は、軸部材311の軸方向の端面311bに当接しており、メインシャフト2の一端側への移動が規制されている。
軸部材314には径方向に突出したフランジ部314aが形成されており、当該フランジ部314aが1速メインギヤ11と4速メインギヤ14との間に配された第2リテーナ120bと当接している。
同様に、軸部材111のうち、3速メインギヤ13に設けられた軸部材313は、軸部材314と環状の間座310を挟んでメインシャフト2の軸方向に連設されている。そのため、軸部材313および間座310はメインシャフト2の一端側への移動が規制されている。
間座310には径方向に突出したフランジ部310aが形成されており、当該突出部310aが3速メインギヤ13と4速メインギヤ14との間に配された第2リテーナ120bと当接している。
固定部材124は、複数組の第2ユニット302のうちもっともメインシャフト2の他端側に位置する第2ユニット302aよりも、さらにメインシャフト2の他端側に締結されて、複数組の第2ユニット302の軸部材111の軸方向の移動を規制する。
具体的に、軸部材313の他端側に、環状の間座315、ベアリングb、ワッシャ316を挟んで固定部材124が締結されている。かかる締結力によって、軸部材111、間座315それぞれのメインシャフト2の軸方向の位置が固定される。同時に、軸部材111、間座315と当接する第1リテーナ120aおよび第2リテーナ120bのメインシャフト2の他端側への移動が規制される。
固定部材124の締結力により、軸部材311が第1弾性部材121の弾性力に抗して第1リテーナ120aをメインシャフト2の一端側に押圧した状態となる。
そして、第1弾性部材121の弾性力によってメインシャフト2の一端側へ押圧される第1ハブ103と、段部2aによってメインシャフト2の一端側への移動が規制された2速メインギヤ12との間で、第1中間リング102と第1インナーリング104とが圧接状態に維持される。
また、固定部材124の締結力により、相対的にメインシャフト2の一端側に位置する第2ユニット302の第2リテーナ120bが、第2ユニット302に対してメインシャフト2の他端側に隣接する他の第2ユニット302の軸部材111によって、メインシャフト2の一端側に押圧される。
例えば、もっとも一端側の第2ユニット302cの第2リテーナ120bは、第2ユニット302cの他端側の隣に配された第2ユニット302bの軸部材314によって、メインシャフト2の一端側に押圧される。
このように、本実施形態の緩衝機構300は、リテーナ120(第1リテーナ120a、第2リテーナ120b)それぞれのメインシャフト2の軸方向の他端側への移動が規制されており、第1弾性部材121、および、複数の第2弾性部材122それぞれの弾性力は互いに干渉しない。そのため、第1弾性部材121、および、複数の第2弾性部材122のセット荷重は、それぞれ、個別に設定することが可能となり、メインギヤ10それぞれに関するリミットトルクを容易に調整することができる。
また、緩衝機構300は、第2ユニット302が3つ設けられ、4つのメインギヤ10に対して緩衝機能を提供するが、それぞれのリミットトルクを規定する第1弾性部材121、および、第2弾性部材122のセット荷重を受ける固定部材124は1つ設けるのみでよい。そのため、緩衝機構300のメインシャフト2の軸方向の大きさを小型化することが可能となる。
上述した第2の実施形態では、第2ユニット302が複数設けられる場合について説明したが、第2ユニット302は1つであってもよい。
また、上述した実施形態では、1速メインギヤ11とは別に第1カップリング部材101を設け、この第1カップリング部材101によって第1中間リング102を保持することとしたが、第1の実施形態の2速メインギヤ12と同様に、別部材を介さずに、1速メインギヤ11によって第1中間リングを直接保持する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、第1ハブ103の第1突出部103cがメインシャフト2の径方向の外側に位置し、環状突出部101cがメインシャフト2の径方向の内側に位置することとしたが、両者の相対位置関係は逆であってもよい。
同様に、上述した実施形態では、第2ハブ113の第2突出部113cがメインシャフト2の径方向の外側に位置し、円筒部12aがメインシャフト2の径方向の内側に位置することとしたが、両者の相対位置関係は逆であってもよい。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。例えば、セレクタ機構50、緩衝機構100、300は、メインシャフト2およびカウンタシャフト3のいずれに配置することも可能である。また、上記実施形態では、セレクタ機構50として、トルク切れを生じることなく変速が可能な構成について説明したが、本発明のセレクタ機構の構成はこれに限定されるものではなく、従来公知のセレクタ機構にも適用することができる。