JP2014034676A - タイヤ用ゴム組成物及び重荷重用タイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】低燃費性、耐摩耗性、加工性、ウェットグリップ性能、及びドライグリップ性能をバランスよく改善したタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いて作製した重荷重用タイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤を含有し、前記ゴム成分は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、変性ブタジエンゴムとを含み、前記ゴム成分100質量%中、前記改質天然ゴムの含有量が45〜95質量%、前記変性ブタジエンゴムの含有量が5〜55質量%であり、前記シリカは、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子を分岐粒子Aとしたとき、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長L1が30〜400nmのものであり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が10〜150質量部であり、前記シランカップリング剤は、特定構造を有する化合物であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【選択図】図2
【解決手段】ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤を含有し、前記ゴム成分は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、変性ブタジエンゴムとを含み、前記ゴム成分100質量%中、前記改質天然ゴムの含有量が45〜95質量%、前記変性ブタジエンゴムの含有量が5〜55質量%であり、前記シリカは、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子を分岐粒子Aとしたとき、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長L1が30〜400nmのものであり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が10〜150質量部であり、前記シランカップリング剤は、特定構造を有する化合物であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【選択図】図2
Description
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた重荷重用タイヤに関する。
近年、燃料代の高騰や環境規制の導入により、車の低燃費化への要求が強くなってきており、タイヤ部材の中でも、特にタイヤにおける占有比率の高いトレッドなどに対して、優れた低燃費性が要求されている。
タイヤ、特にトラック・バスなどに使用される重荷重用タイヤに低燃費性を付与する技術として、タイヤ用ゴム組成物のフィラーとしてシリカを使用し、ポリマーとして天然ゴム中に含まれるタンパク質やゲル分、リン脂質を低減、除去した改質天然ゴム(HPNR)を使用することが知られているが、HPNRとシリカを組み合わせた配合は耐摩耗性が悪化するという問題がある。
これについて、更に変性ブタジエンゴム(変性BR)及び特定のメルカプト系シランカップリング剤を配合することで、低燃費性と耐摩耗性を両立するとともに、良好な加工性も得られることが開示されている(特許文献1参照)。しかし、HPNR、変性BR、シリカ及び特定のシランカップリング剤を配合したゴム組成物は、ドライ、ウェットを問わずグリップ性能が悪化してしまうため、上記の性能を改善する技術が求められている。
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、耐摩耗性、加工性、ウェットグリップ性能、及びドライグリップ性能をバランスよく改善したタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いて作製した重荷重用タイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤を含有し、前記ゴム成分は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、変性ブタジエンゴムとを含み、前記ゴム成分100質量%中、前記改質天然ゴムの含有量が45〜95質量%、前記変性ブタジエンゴムの含有量が5〜55質量%であり、前記シリカは、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子を分岐粒子Aとしたとき、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長L1が30〜400nmのものであり、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が10〜150質量部であり、前記シランカップリング剤は、下記式(1)で示される結合単位Iと下記式(2)で示される結合単位IIとを含む化合物であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
(式中、R1は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R2は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。R1とR2とで環構造を形成してもよい。)
前記改質天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下であることが好ましい。
前記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。
前記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。
前記変性ブタジエンゴムは、下記式(3)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムであることが好ましい。
(式中、R101、R102及びR103は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R104及びR105は、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
前記ゴム組成物は、トレッドに使用されることが好ましい。
本発明は、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する重荷重用タイヤに関する。
本発明は、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する重荷重用タイヤに関する。
本発明によれば、特定の改質天然ゴム、変性ブタジエンゴム、特定形状のシリカ、及び特定のメルカプト系シランカップリング剤を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、耐摩耗性、加工性、ウェットグリップ性能、及びドライグリップ性能をバランスよく改善できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、リン量を低減した改質天然ゴム、変性ブタジエンゴム、特定形状を持つシリカ、及び特定のメルカプト系シランカップリング剤を所定量含むものである。
シリカ配合ゴムのゴム成分としてリン含有量200ppm以下の改質天然ゴムと変性ブタジエンゴムを使用し、シランカップリング剤として前記式(1)で示される特定構造のメルカプト系シランカップリング剤を使用することで、低燃費性と耐摩耗性を両立し、更に良好な加工性を得ることを期待できるものの、ウェットグリップ、ドライグリップ性能のグリップ性能が悪化してしまう。この点について、本発明では、上記成分に加え、シリカとして特定形状のストラクチャーシリカを使用することにより、低燃費性、耐摩耗性、加工性を維持しつつ、悪化したグリップ性能もウェット、ドライ両方の環境において改善効果が発揮される。
特に、通常の天然ゴムと変性ブタジエンゴムと前記式(1)で示される特定構造のメルカプト系シランカップリング剤に特定形状のストラクチャーシリカを配合した場合に比べて、リン含有量200ppm以下の改質天然ゴムと変性ブタジエンゴムに配合した場合、シリカの分散性が顕著に向上し、効率的に低燃費性、耐摩耗性、加工性、ウェットグリップ性能、及びドライグリップ性能を改善し、これらの性能バランスが相乗的に改善される。
前記ゴム組成物において、ゴム成分は、低燃費性と耐摩耗性を両立できるという点から、リン含有量200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR)及び変性ブタジエンゴム(変性BR)を所定量含む。
天然ゴム(NR)中に含まれるリン脂質を低減、除去した天然ゴム(改質天然ゴム)(好ましくはタンパク質やゲル分も除去した改質天然ゴム)は、発熱しにくい性質があるため、NRの使用に比べて、さらなる低燃費化を図ることができる。また、改質天然ゴムを配合した未加硫ゴム組成物は加工性に優れ、特段素練り工程を行わなくても充分な混練りが可能であるため、素練りに伴う天然ゴムの破壊強度などの低下も抑制でき、低燃費性、破壊強度などを効果的に高められる。
上記改質天然ゴム(HPNR)は、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、貯蔵中にゲル量が増加し、加硫ゴムのtanδが上昇して低燃費性が悪化したり、未加硫ゴムのムーニー粘度が上昇して加工性が悪化する傾向があり、低燃費性、加工性、耐摩耗性をバランス良く改善できないおそれがある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、たとえばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向があり、低燃費性、加工性、耐摩耗性をバランス良く改善できないおそれがある。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。20質量%を超えると、ムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向があり、低燃費性、加工性、耐摩耗性をバランス良く改善できないおそれがある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×105rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
改質天然ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
改質天然ゴムの製造方法としては、例えば、特開2010−138359号公報に記載の製法、すなわち、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを得る工程及び得られたケン化天然ゴムラテックスをゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程を含む製法などが挙げられる。具体的には、先ず天然ゴムラテックスをアルカリでケン化処理してケン化天然ゴムラテックスを調製し、次いで、該ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムを、ゴム分に対するリン含有率が200ppm以下になるまで繰り返し水で洗浄し、乾燥する方法などにより改質天然ゴム(ケン化天然ゴム)を製造できる。
上記製造方法によれば、ケン化により分離したリン化合物が洗浄除去されるので、天然ゴムのリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることができる。
ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量は、45質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは68質量%以上である。45質量%未満であると、ゴム強度が低下し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。該改質天然ゴムの含有量は、95質量%以下、好ましくは92質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。95質量%を超えると、変性BRの含有量が少なくなり、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
変性BRとしては、特に限定されず、主鎖、末端のいずれかが変性されたBRでも、両方が変性されたBRでもよい。変性基としては、シリカと相互作用又は反応性を有する窒素含有基などが挙げられる。
変性BRの好適な例の一つとして、下記式(3)で表される化合物により変性されたブタジエンゴム(S変性BR)が挙げられる。S変性BRは、フィラーの分散性を改善する効果が高く、特にシリカの分散を促進することができる。
(式中、R101、R102及びR103は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R104及びR105は、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは3)を表す。)
R101、R102及びR103としては、アルコキシ基が望ましく、R104及びR105としては、アルキル基が望ましい。これにより、低燃費性、耐摩耗性を得ることができる。
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、低燃費性が低下するおそれがある。上記ビニル含量の下限は特に限定されないが、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上であってもよい。1質量%未満であると、耐熱性、耐劣化性が低下するおそれがある。なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
上記式(3)で表される化合物(変性剤)によるBRの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、BRと変性剤とを接触させればよく、アニオン重合によりBRを合成した後、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加し、BRの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法、BR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
変性されるBRとしては特に限定されず、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。また、特表2003−514078号公報などに記載されているランタン系列希土類含有化合物を含む触媒を用いて重合して得られたBRも使用できる。
ゴム成分100質量%中の変性BRの含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性能及び耐摩耗性能を充分に改善できないおそれがある。該変性BRの含有量は、55質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である。55質量%を超えると、HPNRの含有量が少なくなり、ゴム強度が不充分となるおそれがある。
ゴム成分100質量%中のHPNR及び変性BRの合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。70質量%未満であると、低燃費性能及び耐摩耗性能を充分に改善できないおそれがある。
本発明のゴム組成物において、他に使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
本発明で使用するシリカは、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子(以下、分岐粒子Aとする)を有する(以後ストラクチャーシリカと呼ぶ)。分岐粒子Aと接する粒子の構造を分岐構造という。分岐粒子Aとは、分岐粒子の概略説明図である図1における粒子のうちの粒子Aであり、3個以上の他の粒子と接している。なお、ストラクチャーシリカとしては、分岐構造を有するもの(例えば図2)と有さないものが挙げられるが、分岐構造を有さないストラクチャーシリカは、すぐに凝集してしまうため、実質的に存在しない。
ストラクチャーシリカの分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長(図2におけるL1)は、30nm以上、好ましくは40nm以上である。30nm未満では、グリップ性能を充分に改善できない傾向がある。またL1は、400nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。400nmを超えると、ゴムに局所的な歪みが発生してゴム強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
ストラクチャーシリカの平均1次粒子径(D、分岐粒子を含むストラクチャーシリカの概略説明図である図2参照)は、好ましくは5nm以上、より好ましくは7nm以上である。5nm未満では、ゴムに局所的な歪みが発生してゴム強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、Dは、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下である。1000nmを超えると、グリップ性能を充分に改善できない傾向がある。
ストラクチャーシリカの分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均アスペクト比(L1/D)は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。3未満では、グリップ性能を充分に改善できない傾向がある。また、L1/Dは、好ましくは100以下、より好ましくは30以下である。L1/Dが100を超えると、ゴムに局所的な歪みが発生してゴム強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、本発明では、シリカのD、L1及びL1/Dは、加硫ゴム組成物中に分散したシリカを透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。例えば、図2において、粒子を真球とした場合には、L1/Dは5となる。
ストラクチャーシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは12質量部以上である。10質量部未満では、ストラクチャーシリカを含むことによる転がり抵抗、ウェットグリップ性能およびドライグリップ性能の充分な改善効果が得られない傾向がある。また、ストラクチャーシリカの含有量は、150質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。150質量部を超えると、ゴム組成物の剛性が高くなり、加工性及びウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤として、下記式(1)で示される結合単位Iと下記式(2)で示される結合単位Bとを含む化合物を含有する。上記構造のシランカップリング剤を配合することにより、良好な加工性を確保しながら、低燃費性能及び耐摩耗性能を改善できる。
(式中、R1は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R2は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。R1とR2とで環構造を形成してもよい。)
式(1)で示される結合単位Iと式(2)で示される結合単位IIとを含む化合物は、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Iのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位IIはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Iの−C7H15部分が結合単位IIの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Iの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位IIの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは55モル%以下である。また、結合単位I及びIIの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
なお、結合単位I、IIの含有量は、結合単位I、IIがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位I、IIがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位I、IIを示す式(1)、(2)と対応するユニットを形成していればよい。
なお、結合単位I、IIの含有量は、結合単位I、IIがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位I、IIがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位I、IIを示す式(1)、(2)と対応するユニットを形成していればよい。
R1のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Iの繰り返し数(x)と結合単位IIの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位IIのメルカプトシランを、結合単位Iの−C7H15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
上記構造のシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記構造のシランカップリング剤の含有量は、ストラクチャーシリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満では、シリカとのカップリング効果が小さいため、ゴム強度が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、上記構造のシランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
上記ゴム組成物には、前記成分の他に、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の充填剤、オイル又は可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、酸化亜鉛、硫黄、含硫黄化合物等の加硫剤、加硫促進剤等を含有してもよい。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強性が高められ、HPNR、変性BR及びストラクチャーシリカとともに使用することで、本発明の効果が良好に得られる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は20m2/g以上が好ましく、70m2/gがより好ましく、100m2/g以上が更に好ましい。20m2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましい。200m2/gを超えると、カーボンブラックを良好に分散させるのが難しくなる傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上である。5質量部未満では、補強性を充分に改善できないおそれがある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、カーボンブラックを良好に分散させるのが難しくなる傾向がある。また、加工性が低下する傾向もある。
ストラクチャーシリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のカーボンブラックの含有率は、前記性能バランスの点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造され、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの混練機で前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
特に、ストラクチャーシリカが形成された前述の本発明のゴム組成物を容易に製造できるという点から、シリカゾルを、上記ゴム成分などと共にゴム混練装置で混練することが好ましく、具体的には、
(I)上記ゴム成分と、シリカゾルと、必要に応じて、カーボンブラック、上記構造のシランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤、老化防止剤、ワックス等を80〜180℃(好ましくは90〜170℃)で3〜10分間混練するベース練り工程と、
(II)ベース練り工程により得られた混練物と、加硫剤と、加硫促進剤とを30〜100℃(好ましくは40〜85℃)で3〜10分間混練する仕上げ練り工程と、
(III)仕上げ練り工程により得られた未加硫ゴム組成物を150〜190℃(好ましくは160〜180℃)で5〜30分間加硫する加硫工程とを含む製造方法がより好ましい。
(I)上記ゴム成分と、シリカゾルと、必要に応じて、カーボンブラック、上記構造のシランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤、老化防止剤、ワックス等を80〜180℃(好ましくは90〜170℃)で3〜10分間混練するベース練り工程と、
(II)ベース練り工程により得られた混練物と、加硫剤と、加硫促進剤とを30〜100℃(好ましくは40〜85℃)で3〜10分間混練する仕上げ練り工程と、
(III)仕上げ練り工程により得られた未加硫ゴム組成物を150〜190℃(好ましくは160〜180℃)で5〜30分間加硫する加硫工程とを含む製造方法がより好ましい。
シリカゾルの好ましい含有量(シリカ換算)は、上述のストラクチャーシリカと同様である。
なお、ストラクチャーシリカを形成する混練工程(ベース練り工程など)では、ゴムの良溶媒であるトルエン中で各成分を混練りすると、ストラクチャーシリカのL1が過度に長くなりやすい傾向があるため、トルエンを用いずに混練りすることが好ましい。
本明細書において、シリカゾルとは、溶媒にシリカを分散させたコロイド溶液をいう。シリカゾルとしては、特に限定されないが、好適にストラクチャーシリカを形成できるという理由から、細長い形状のシリカが溶媒中に分散したコロイド溶液が好ましく、細長い形状のシリカが有機溶媒中に分散したコロイド溶液(オルガノシリカゾル)がより好ましい。ここで、細長い形状のシリカとは、球状や粒状などの1次粒子が複数個繋がった鎖のような形状のシリカ(2次粒子)を意味する。なお、線状であっても分岐したものであってもよい。
また、シリカを分散させる溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールが好ましく、イソプロパノールがより好ましい。
1次粒子の平均粒子径は、日本電子製透過電子顕微鏡JEM2100FXで撮影した写真において、目視で50個の1次粒子の粒子径(平均直径)を測定し、それらを平均した値を平均粒子径とした。
なお、1次粒子の平均直径は、シリカ(2次粒子)が細長形状である場合、電子顕微鏡写真における、シリカ(2次粒子)の任意の50箇所で測定した太さ(直径)の平均値として求めることができ、シリカ(2次粒子)がくびれを有した数珠状である場合、電子顕微鏡写真における、50個の各数珠の直径の平均値として求めることができる。各数珠に長径と短径がある場合、即ち各数珠が細長状である場合は、短径を測定する。
シリカゾルに含まれるシリカ(2次粒子)の平均粒子径は、好ましくは20〜300nm、より好ましくは30〜150nmである。シリカ(2次粒子)の平均粒子径は動的光散乱法によって測定することができ、具体的には、以下の方法により測定することができる。
シリカ(2次粒子)の平均粒子径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定濃度は、通常5×10−3質量%程度で行った。
シリカ(2次粒子)の平均粒子径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定濃度は、通常5×10−3質量%程度で行った。
上記シリカ(2次粒子)は、例えば、国際公開第00/15552号パンフレットの請求の範囲第2項、及びそれに関する明細書の開示部分に記載の方法、特許第2803134号公報、特許第2926915号公報の請求項2及びそれに関する明細書の開示部分に記載の方法などに準じて製造することができる。
本発明に使用することができる上記シリカ(2次粒子)の具体例としては、日産化学工業(株)製の「スノーテックス−OUP」(平均2次粒子径:40〜100nm)、同「スノーテックス−UP」(平均2次粒子径:40〜100nm)、同「スノーテックスPS−M」(平均2次粒子径:80〜150nm)、同「スノーテックスPS−MO」(平均2次粒子径:80〜150nm)、同「スノーテックスPS−S」(平均2次粒子径:80〜120nm)、同「スノーテックスPS−SO」(平均2次粒子径:80〜120nm)、「IPA−ST−UP」(平均2次粒子径:40〜100nm)、扶桑化学工業(株)製の「クォートロンPL−7」(平均2次粒子径:130nm)などが挙げられる。なかでも、好適にストラクチャーシリカを形成できるという理由から、IPA−ST−UPが好ましい。
本発明のゴム組成物は、重荷重用タイヤ(特にトラック・バス用)のトレッド(キャップトレッド)として好適に使用される。
本発明の重荷重用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどのタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の重荷重用タイヤを製造することができる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどのタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の重荷重用タイヤを製造することができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
(製造例1 アルカリによるケン化処理天然ゴムの作製)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム)を得た。
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム)を得た。
製造例1により得られた固形ゴム(HPNR)及びTSRについて以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、製造例で得られた改質天然ゴム又はTSRのサンプル約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、製造例で得られた改質天然ゴム又はTSRのサンプル約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDCl3に溶解して測定した。
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDCl3に溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
表1に示すように、ケン化処理天然ゴム(HPNR)は、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。また、31P−NMR測定において、HPNRは、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しなかった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR
HPNR(ケン化処理天然ゴム):製造例1
非変性BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(ビニル含量:1質量%)
変性BR:住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(S変性BR(末端変性)、ビニル含量:15質量%、R101、R102及びR103=−OCH3、R104及びR105=−CH2CH3、n=3、前記式(3)参照)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:111m2/g)
シリカA:日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルIPA−ST−UP(細長い形状のイソプロパノール分散シリカゾル(動的光散乱法によって測定されたシリカ(二次粒子)の平均粒子径:40〜100nm)、シリカ含有率:15質量%)(表2に記載の量は、オルガノシリカゾル中のシリカ量を示す。)
シリカB:デグッサ社製のウルトラシルVN3−G(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:デグッサ社製のSi266(スルフィドシラン)
シランカップリング剤2:Momentive社製のA1891(メルカプトシラン)
シランカップリング剤3:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Iと結合単位IIとの共重合体(結合単位I:55モル%、結合単位II:45モル%)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:FLEXSYS(株)製の老化防止剤6C(SANTOFLEX 6PPD)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
NR:TSR
HPNR(ケン化処理天然ゴム):製造例1
非変性BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(ビニル含量:1質量%)
変性BR:住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(S変性BR(末端変性)、ビニル含量:15質量%、R101、R102及びR103=−OCH3、R104及びR105=−CH2CH3、n=3、前記式(3)参照)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:111m2/g)
シリカA:日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルIPA−ST−UP(細長い形状のイソプロパノール分散シリカゾル(動的光散乱法によって測定されたシリカ(二次粒子)の平均粒子径:40〜100nm)、シリカ含有率:15質量%)(表2に記載の量は、オルガノシリカゾル中のシリカ量を示す。)
シリカB:デグッサ社製のウルトラシルVN3−G(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:デグッサ社製のSi266(スルフィドシラン)
シランカップリング剤2:Momentive社製のA1891(メルカプトシラン)
シランカップリング剤3:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Iと結合単位IIとの共重合体(結合単位I:55モル%、結合単位II:45モル%)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:FLEXSYS(株)製の老化防止剤6C(SANTOFLEX 6PPD)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
<実施例及び比較例>
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間、2mm厚の金型でプレスし、加硫ゴム組成物を得た。
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間、2mm厚の金型でプレスし、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物を用いて以下の試験を行い、結果を表2に示した。
(シリカの平均1次粒子径、平均長及び平均アスペクト比)
得られた加硫ゴム組成物中に分散したシリカを透過型電子顕微鏡で観察し、シリカの平均1次粒子径(D)、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長(図2におけるL1)、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均アスペクト比(L1/D)を測定、算出した。なお、数値は、任意の50箇所で測定した平均値とした。
得られた加硫ゴム組成物中に分散したシリカを透過型電子顕微鏡で観察し、シリカの平均1次粒子径(D)、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長(図2におけるL1)、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均アスペクト比(L1/D)を測定、算出した。なお、数値は、任意の50箇所で測定した平均値とした。
(ゴム発熱性能指数)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合の加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が小さいほど低発熱となり、低燃費性能が高いことを示す。
(ゴム発熱性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合の加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が小さいほど低発熱となり、低燃費性能が高いことを示す。
(ゴム発熱性能指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
(耐摩耗性能指数)
岩本製作所製のランボ−ン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/min、負荷荷重3.0kg、かつ落砂量15g/minでスリップ率20%にて試験片(加硫ゴム組成物)の摩耗量を測定した。摩耗量の逆数をとり、比較例1を100として指数表示した。摩耗指数が大きい程、耐摩耗性に優れていることを示す。
岩本製作所製のランボ−ン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/min、負荷荷重3.0kg、かつ落砂量15g/minでスリップ率20%にて試験片(加硫ゴム組成物)の摩耗量を測定した。摩耗量の逆数をとり、比較例1を100として指数表示した。摩耗指数が大きい程、耐摩耗性に優れていることを示す。
(ムーニー粘度指数)
JIS K6300に基づき、100℃にて、上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。比較例1のムーニー粘度を100として、下記計算式により、各配合のムーニー粘度を指数表示した。数値が大きいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
JIS K6300に基づき、100℃にて、上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を測定した。比較例1のムーニー粘度を100として、下記計算式により、各配合のムーニー粘度を指数表示した。数値が大きいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
(加硫速度指数)
JIS K6300に基づき、160℃にて、上記未加硫ゴム組成物の加硫度が95%に達するまでの時間(T95)を測定した。比較例1のT95を100とし、下記計算式により、各配合のT95を指数表示した。数値が大きいほど、加硫速度が大きく、加工性に優れることを示す。
(加硫速度指数)=(比較例1のT95)/(各配合のT95)×100
JIS K6300に基づき、160℃にて、上記未加硫ゴム組成物の加硫度が95%に達するまでの時間(T95)を測定した。比較例1のT95を100とし、下記計算式により、各配合のT95を指数表示した。数値が大きいほど、加硫速度が大きく、加工性に優れることを示す。
(加硫速度指数)=(比較例1のT95)/(各配合のT95)×100
(ウェットグリップ性能)
作製した加硫ゴム組成物から、幅20mmおよび直径100mmの円筒形に成形したゴム試験片を作製し、(株)上島製作所製のフラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を使用して、速度20km/h、荷重4kgf、外気温度30℃、水温25℃の条件下で、湿潤路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読み取った。比較例1の最大摩擦係数を100とし、下記計算式により指数表示した。ウェットグリップ指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れていることを示す。
(ウェットグリップ指数)=(各配合の最大摩擦係数)/(比較例1の最大摩擦係数)×100
作製した加硫ゴム組成物から、幅20mmおよび直径100mmの円筒形に成形したゴム試験片を作製し、(株)上島製作所製のフラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を使用して、速度20km/h、荷重4kgf、外気温度30℃、水温25℃の条件下で、湿潤路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読み取った。比較例1の最大摩擦係数を100とし、下記計算式により指数表示した。ウェットグリップ指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れていることを示す。
(ウェットグリップ指数)=(各配合の最大摩擦係数)/(比較例1の最大摩擦係数)×100
(ドライグリップ性能)
作製した加硫ゴム組成物から、幅20mmおよび直径100mmの円筒形に成形したゴム試験片を作製し、(株)上島製作所製のフラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を使用して、速度20km/h、荷重4kgf、外気温度30℃の条件下で、乾燥路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読み取った。比較例1の最大摩擦係数を100とし、下記計算式により指数表示した。ドライグリップ指数が大きいほど、ドライグリップ性能に優れていることを示す。
(ドライグリップ指数)=(各配合の最大摩擦係数)/(比較例1の最大摩擦係数)×100
作製した加硫ゴム組成物から、幅20mmおよび直径100mmの円筒形に成形したゴム試験片を作製し、(株)上島製作所製のフラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を使用して、速度20km/h、荷重4kgf、外気温度30℃の条件下で、乾燥路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読み取った。比較例1の最大摩擦係数を100とし、下記計算式により指数表示した。ドライグリップ指数が大きいほど、ドライグリップ性能に優れていることを示す。
(ドライグリップ指数)=(各配合の最大摩擦係数)/(比較例1の最大摩擦係数)×100
ゴム成分として改質天然ゴム(HPNR)と非変性BR又は変性BRとを使用した比較例2〜4、更にシランカップリング剤として上記構造の化合物(NXT−Z45)を使用した比較例6では、NR、非変性BR及びカーボンブラックを配合した比較例1に比べて、低燃費性、耐摩耗性、加工性、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能のすべての性能を同時に改善できなかった。これに対し、改質天然ゴム、変性BR、上記構造のシランカップリング剤を含む配合のシリカとしてストラクチャーシリカ(シリカA)を使用した実施例では、すべての性能が向上し、性能バランスを相乗的に改善できることが明らかとなった。
特に、比較例7、実施例1などで示されているように、NRと変性BRにストラクチャーシリカを配合した場合に比べて、HPNRと変性BRに配合した場合、前記性能バランスがより効率的に改善され、相乗効果が顕著に発揮された。
A:分岐粒子といい、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子をいう。
D:平均1次粒子径
L1:分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長
D:平均1次粒子径
L1:分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長
Claims (6)
- ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤を含有し、
前記ゴム成分は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、変性ブタジエンゴムとを含み、
前記ゴム成分100質量%中、前記改質天然ゴムの含有量が45〜95質量%、前記変性ブタジエンゴムの含有量が5〜55質量%であり、
前記シリカは、1つの粒子に対して隣接する粒子が3つ以上の粒子を分岐粒子Aとしたとき、分岐粒子Aを含む分岐粒子間A−Aの平均長L1が30〜400nmのものであり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が10〜150質量部であり、
前記シランカップリング剤は、下記式(1)で示される結合単位Iと下記式(2)で示される結合単位IIとを含む化合物であるタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
- トレッドに使用される請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する重荷重用タイヤ。
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CN106279794A (zh) * | 2015-06-05 | 2017-01-04 | 青岛双星轮胎工业有限公司 | 一种用于载重子午线轮胎胎面的牛筋色橡胶组合物 |
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-
2012
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