JP2014034637A - 蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれからなる蒸着用ポリオレフィンフィルム - Google Patents

蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれからなる蒸着用ポリオレフィンフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】フィルムに成形し、金属または金属酸化物を蒸着し、更にヒートシールした際に、ヒートシール後に優れた蒸着強度を呈する蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリプロピレン(成分(A))と、250℃、せん断速度122/秒で測定されるせん断粘度(η)が1〜85Pa・秒であるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))とを含む蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(A)のせん断粘度(η)と250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(B)のせん断粘度(η)および前記組成物中の成分(A)の含有量(φ)と成分(B)の含有量(φ)が下記式(1)を満たす樹脂組成物(但し、前記組成物において、φとφとの合計の重量を100重量部とする。)。0.50≦(η/η)×(φ/φ)≦3.00(1)
【選択図】図1

Description

本発明は、フィルムに成形し、金属または金属酸化物を蒸着し、更にヒートシールした際に、ヒートシールした後に優れた蒸着強度を呈する蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれからなる蒸着用ポリオレフィンフィルム、さらに、かかる蒸着用ポリオレフィンフィルムからなる層と、金属または金属酸化物を含む層とを有する蒸着フィルムに関するものである。
ここで、蒸着フィルムとは、フィルムに金属または金属酸化物を蒸着して得られる、フィルムと金属または金属酸化物を含む層とを有する積層体である。また、蒸着用ポリオレフィンフィルムとは、金属または金属酸化物を蒸着されることで蒸着フィルムとして用いられるポリオレフィンフィルムである。さらに、蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物とは、成形されて蒸着用ポリオレフィンフィルムとなるポリオレフィン系樹脂組成物である。
従来からポリプロピレンフィルムは、包装用途の蒸着フィルムとして用いられている。
例えば、特許文献1には、製膜性、外観、および蒸着強度に優れた金属蒸着フィルムを得ることを目的として、結晶性プロピレン重合体およびメルトフローレート(230℃:21.18N)が15〜70g/10分の非晶性エチレン・α−オレフィン共重合体からなるオレフィン重合体組成物、および該組成物から得られるフィルムが記載されている。
特許文献2には、フィルムと金属蒸着膜との接着力が強固で、二次加工時に蒸着膜の割れが発生しない金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることを目的として、結晶性プロピレン重合体およびエチレン含有量が95〜60重量%、メルトフローレート(230℃:21.18N)が4〜40g/10分の非晶性エチレン・α−オレフィン共重合体からなるオレフィン重合体組成物を用いて得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムが記載されている。
特許文献3には、成型加工性、透明性、剛性、引裂強度、ヒートシール性、耐ブロッキング性、表面傷付き性、蒸着膜の接着性、蒸着面への印刷性、蒸着面へのラミネート性に優れた金属蒸着フィルムを得ることを目的として、メルトフローレートが1〜30g/minのプロピレンランダム共重合体、密度が0.945〜0.980g/cm、メルトインデックス(190℃:21.18N)が1〜1000g/10分、メルトインデックスとプロピレンランダム共重合体のメルトフローレートとの比が1〜1000の高密度ポリエチレン樹脂、および密度が0.910〜0.980g/cm、メルトインデックス(190℃:21.18N)が0.1〜30g/10分、メルトインデックスとプロピレンランダム共重合体のメルトフローレートとの比が0.03〜1のポリエチレン樹脂、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、およびハイドロタルサイト類化合物を含有する金属蒸着フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなる金属蒸着用フィルムが記載されている。
特許文献4には、剛性、耐熱性、柔軟性および耐衝撃性などに優れるとともに、剥離を生じず、食品包装容器等の用途に好適に使用できる金属蒸着積層体を得ることを目的として、プロピレン系樹脂およびプロピレン含有量が50〜95モル%、α−オレフィン含有量が5〜50モル%であり、極限粘度が0.1〜12dl/gであり、分子量分布の狭いプロピレン・α−オレフィン共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物からなる層に、金属蒸着層が形成された金属蒸着積層体が記載されている。
特開平8−217930号公報 特開平9−59454号公報 特開2004−175884号公報 特開2009−149063号公報
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載されている蒸着フィルムにおいても、製袋時のヒートシールにより蒸着強度が低下する場合があり、ヒートシール後の蒸着強度については、さらなる改良が求められていた。かかる状況の下、本発明の目的は、フィルムに成形し、金属または金属酸化物を蒸着し、更にヒートシールした際に、ヒートシール後に優れた蒸着強度を呈する蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれからなる蒸着用ポリオレフィンフィルム、さらに、かかる蒸着用ポリオレフィンフィルムからなる層と、金属または金属酸化物を含む層とを有する蒸着フィルムを提供することにある。
すなわち、本発明は、ポリプロピレン(以下、「成分(A)」と記載することがある。)と、250℃、せん断速度122/秒で測定されるせん断粘度(以下、「η」と記載することがある。)が1〜85Pa・秒であるエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、「成分(B)」と記載することがある。)とを含む蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(A)のせん断粘度(以下、「η」と記載することがある。)と250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(B)のせん断粘度(η)および前記組成物中の成分(A)の含有量(以下、「φ」と記載することがある。)と成分(B)の含有量(以下、「φ」と記載することがある。)が下記式(1)を満たす樹脂組成物(但し、前記組成物において、φとφとの合計の重量を100重量部とする。)に係るものである。

0.50≦(η/η)×(φ/φ)≦3.00 (1)

また、本発明は、前記蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の表層に有することを特徴とする蒸着用ポリオレフィンフィルムに係るものである。
また、本発明は、ポリプロピレン系樹脂材料からなる基材層の一方の表層に前記蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有し、前記基材層のもう一方の表層に、融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料からなる層を有することを特徴とする蒸着用ポリオレフィンフィルムに係るものである。
また、本発明は、前記蒸着用ポリオレフィンフィルムからなる層と、金属または金属酸化物を含む層とを有する蒸着フィルムに係るものである。
本発明によれば、金属または金属酸化物を蒸着し、更にヒートシールした際に、ヒートシール後に優れた蒸着強度を呈する蒸着用ポリオレフィンフィルムが提供される。
図1は、実施例5で作成した蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける成分(B)の分散構造を示す図である。フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面において、フィルム表面から厚み方向に3μmの領域に、成分(B)からなる、長軸が1.5μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在している。 図2は、比較例3で作成した蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける成分(B)の分散構造を示す図である。フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面において、フィルム表面から厚み方向に3μmの領域に、成分(B)からなる、長軸が1.5μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在していない。 図3は、比較例5で作成した蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける成分(B)の分散構造を示す図である。フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面において、フィルム表面から厚み方向に3μmの領域に、成分(B)からなる、長軸が1.5μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在している。
本発明で用いられる成分(A)の具体例としては、
(1)プロピレン単独重合体、
(2)プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体(以下、「プロピレン共重合体(2))と記載する。)が挙げられる。
成分(A)は、好ましくは、プロピレン共重合体(2)であり、より好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体であり、さらに好ましくは、プロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体である。
プロピレン共重合体(2)に含まれるコモノマーに由来する構造単位の含有量としては、プロピレン共重合体(2)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、エチレンの含量は、好ましくは、0.1〜10重量%であり、より好ましくは、1〜8重量%であり、さらに好ましくは、3〜5重量%である(但し、成分(A)の全重量を100重量%とする。)。
プロピレン共重合体(2)がプロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位の含量は、好ましくは、0.1〜10重量%であり、より好ましくは、0.1〜5重量%であり、さらに好ましくは、0.5〜2重量%である(但し、成分(A)の全重量を100重量%とする。)。また、炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造単位の含量は、好ましくは、0.1〜20重量%であり、より好ましくは、1〜10重量%であり、さらに好ましくは、3〜10重量%である(但し、成分(A)の全重量を100重量%とする。)。
炭素数4以上のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテンである。
成分(A)は、マグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒に、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒系を用いてプロピレンを重合して製造される。例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系である。
重合方法としては、不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法や溶媒重合法、液体プロピレンを溶媒として用いる液相重合法、または、気相重合法等が挙げられ、それらを連続的に行う液相−気相重合法等も挙げられる。好ましくは、気相重合法または液相−気相重合法である。
成分(A)の製造において、残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、ポリプロピレンが融解する温度以下の温度で乾燥を行うことが好ましい。例えば、乾燥方法としては、特開昭55−75410号、特許第2565753号公報に記載された方法等が挙げられる。
成分(A)の融解温度は、好ましくは、130〜170℃であり、より好ましくは、135〜170℃であり、さらに好ましくは、140〜170℃である。融解温度が上記範囲にある時、特に蒸着フィルムのヒートシール後の蒸着強度に優れる。
成分(A)の230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)は、好ましくは、2〜12g/10分であり、より好ましくは、4〜12g/10分であり、さらに好ましくは、4〜10g/10分であり、特に好ましくは、5〜9g/10分である。
成分(A)のηは、好ましくは、200〜600Pa・秒であり、より好ましくは、200〜500Pa・秒であり、さらに好ましくは、200〜400Pa・秒である。ηが200Pa・秒以上の場合には、特に蒸着フィルムはヒートシール前の蒸着強度に優れ、ηが600Pa・秒以下の場合には、特に蒸着フィルムは光沢性に優れる。
ηは、内部で試料を溶融するバレルを備えるキャピラリーレオメーターに、直径1mm、長さ40mm、流入角度90°のキャピラリーを装着して測定される。キャピラリーレオメーターで250℃に加熱して溶融させた成分(A)をピストン速度10mm/分(せん断速度122/秒)で押出してせん断粘度を測定し、測定されるせん断粘度をηとする。
MFRを一定の値とし、ηを変化させる方法としては、例えば、成分(A)に長鎖分岐を導入する方法、成分(A)にプロピレン以外のモノマーを導入する方法、成分(A)を製造するための重合に用いる触媒を変えることで成分(A)の分子量分布を変化させる方法、重合により得られたポリプロピレンを過酸化物の存在下で溶融混練することで成分(A)の分子量分布を変化させる方法等が挙げられる。
本発明で用いられる成分(B)は、エチレンと、α−オレフィンの少なくとも1種のコモノマーとの共重合体である。
α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンである。
成分(B)のエチレン含量は、好ましくは55〜99重量%であり、より好ましくは70〜99重量%であり、さらに好ましくは85〜99重量%である。エチレン含量が上記範囲にある時、特に蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に優れる。
成分(B)は、公知の触媒を用いて、公知の重合方法により製造される。
公知の触媒としては、例えば、マグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒に、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒系およびメタロセン系触媒等が挙げられる。
重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法や溶媒重合法、または気相重合法等が挙げられ、それらを連続的に行う液相−気相重合法等も挙げられる。
成分(B)の密度は、好ましくは、0.87〜0.95g/cmであり、より好ましくは、0.89〜0.95g/cmであり、さらに好ましくは、0.90〜0.94g/cmである。成分(B)の密度が0.87g/cm以上の場合には、特にフィルムの光沢性に優れる。成分(B)の密度が0.95g/cm以下の場合には、特に蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に優れる。
成分(B)のηは、1〜85Pa・秒であり、好ましくは、5〜80Pa・秒であり、より好ましくは、10〜70Pa・秒であり、さらに好ましくは、20〜70Pa・秒である。ηが上記範囲を外れる場合には、蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に劣ることがある。
ηは、内部で試料を溶融するバレルを備えるキャピラリーレオメーターに、直径1mm、長さ40mm、流入角度90°のキャピラリーを装着して測定される。キャピラリーレオメーターで250℃に加熱して溶融させた成分(B)をピストン速度10mm/分(せん断速度122/秒)で押出してせん断粘度を測定し、測定されるせん断粘度を、ηとする。
成分(B)の190℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)は、好ましくは、30〜200g/10分であり、より好ましくは、40〜200g/10分であり、さらに好ましくは、40〜150g/10分である。MFRが上記範囲にある場合には、特に蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に優れる。
MFRを一定の値とし、ηを変化させる方法としては、例えば、成分(B)を製造するための重合に用いる触媒を変えることで成分(B)の分子量分布を変化させる方法、重合により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体を過酸化物の存在下で溶融混練することで成分(B)の分子量分布を変化させる方法等が挙げられる。
本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物におけるηとηおよび前記組成物中のφとφは、下記式(1)を満たす(但し、前記組成物において、φとφとの合計の重量を100重量部とする。)。

0.50≦(η/η)×(φ/φ)≦3.00 (1)
(η/η)×(φ/φ)は、好ましくは、0.70〜3.00であり、より好ましくは、0.70〜2.50であり、さらに好ましくは、1.00〜2.00である。(η/η)×(φ/φ)が0.50未満の場合には、蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に劣ることがあり、(η/η)×(φ/φ)が3.00を超える場合には、フィルムは光沢性に劣ることがあり、または蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に劣ることがある。
好ましくは、φは60〜95重量部であり、φは5〜40重量部である。より好ましくは、φは60〜90重量部であり、φは10〜40重量部である。さらに好ましくは、φは75〜90重量部であり、φは10〜25重量部である。φが60重量部以上(すなわち、φが40重量部以下)の場合には、特にフィルムは光沢性に優れ、また蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に優れ、φが95重量部以下(すなわち、φが5重量部以上)の場合には、特に蒸着フィルムはヒートシール後の蒸着強度に優れる。
本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤しては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤等が挙げられ、好ましくは、フェノール系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤である。酸化防止剤の好ましい配合量は、例えばフェノール系酸化防止剤の場合、前記樹脂組成物100重量部に対して0.01〜0.2重量%であり、リン系酸化防止剤の場合、前記樹脂組成物100重量部に対して0.01〜0.1重量%である。
本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物は、フィルムの二次加工性の観点から、アンチブロッキング剤を含むことが好ましい。アンチブロッキング剤としては、好ましくは無機微粒子であり、より好ましくはシリカ微粒子またはアルミノシリケート微粒子である。アンチブロッキング剤の好ましい配合量は、前記樹脂組成物100重量部に対して0.1〜0.5重量%である。
その他の樹脂としては、本発明で用いられる成分(A)および成分(B)以外のポリオレフィン樹脂であり、ポリエチレン、ポリブテン、エラストマー等が挙げられる。エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体やスチレン−イソプレン−スチレン共重合体を水添したスチレン系共重合体エラストマー等が挙げられる。
本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、成分(A)と成分(B)を配合した後、必要に応じて添加剤および/またはその他の樹脂を配合し加熱溶融混合する方法、成分(A)に必要に応じて添加剤および/またはその他の樹脂を配合して加熱溶融混合したペレットと、成分(B)に必要に応じて添加剤および/またはその他の樹脂を配合して加熱溶融混合したペレットを配合して加熱溶融混合する方法等が挙げられる。
加熱溶融混合に用いる装置としては、公知の装置が用いられ、好ましくは、押出機、バンバリーミキサー、バッチ式混練機等が用いられる。加熱溶融混合は窒素やアルゴン等の不活性ガスの存在下で行われることが好ましく、加熱溶融混合の温度は、好ましくは170〜300℃であり、より好ましくは、180〜280℃、さらに好ましくは、200℃〜280℃である。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムは、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる単層フィルムでもあってもよく、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の表層として有する多層フィルムであってもよい。好ましくは、本発明の蒸着フィルム用樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の表層として有する多層フィルムであり、より好ましくは、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を一方の表層に有し、融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料からなる層をもう一方の表層に有する多層フィルムであり、更に好ましくは、ポリプロピレン系樹脂材料からなる基材層の一方の表層に、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有し、前記基材層のもう一方の表層に融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料からなる層を有する多層フィルムである。
本発明の融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料は、プロピレン系重合体に、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加したものである。ヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料に用いられるプロピレン系重合体の具体例としては、プロピレン単独重合体、また、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体(プロピレン共重合体)が挙げられる。好ましくは、プロピレン共重合体であり、より好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体であり、さらに好ましくは、プロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体である。
上記プロピレン共重合体に含まれるコモノマーに由来する構造単位の含有量としては、プロピレン共重合体がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは、1〜10重量%であり、さらに好ましくは、3〜7重量%である(但し、該プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする。)。
プロピレン共重合体がプロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは、0.1〜20重量%であり、より好ましくは、0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは、1〜3重量%である(但し、該プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする。)。また、炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは、0.5〜20重量%であり、より好ましくは、1〜10重量%であり、さらに好ましくは、5〜10重量%である(但し、該プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする。)。
炭素数4以上のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテンである。
ヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料の融解温度は、ヒートシール性または耐熱性に優れる観点から、好ましくは、110〜145℃であり、より好ましくは、120〜145℃であり、さらに好ましくは、130〜140℃である。
ヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料の230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートは、該材料の流動性または製膜性に優れる観点から、好ましくは2〜12g/10分であり、より好ましくは、4〜10g/10分であり、さらに好ましくは、5〜9g/10分である。
本発明の基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料は、プロピレン系重合体に、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加したものである。基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料に用いられるプロピレン系重合体の具体例としては、プロピレン単独重合体、また、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体(プロピレン共重合体)体が挙げられる。好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレン−炭素数4以上のα−オレフィン三元共重合体であり、より好ましくは、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、さらに好ましくは、プロピレン単独重合体である。
上記プロピレン共重合体に含まれるコモノマーに由来する構造単位の含有量としては、プロピレン共重合体がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、エチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは0.1〜5重量%であり、より好ましくは、0.1〜2重量%であり、さらに好ましくは、0.1〜1重量%である(但し、該プロピレン共重合体の全重量を100重量%とする。)。
基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料の融解温度は、蒸着時の耐熱性に優れる観点から、好ましくは、130〜170℃であり、より好ましくは、140〜170℃であり、さらに好ましくは、150〜170℃である。
基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料の230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートは、流動性または製膜性に優れる観点から、好ましくは、2〜12g/10分であり、より好ましくは、4〜10g/10分であり、さらに好ましくは、5〜9g/10分である。
ヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料に用いられるプロピレン系重合体および基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料に用いられるプロピレン系重合体は、マグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒に、有機アルミニウム化合物および必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒系を用いてプロピレンを重合して製造される。例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系である。
重合方法としては、不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法や溶媒重合法、液体プロピレンを溶媒として用いる液相重合法、または、気相重合法等が挙げられ、それらを連続的に行う液相−気相重合法等も挙げられる。好ましくは、気相重合法および液相−気相重合法である。
プロピレン系重合体の製造において、残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、ポリプロピレンが融解する温度以下の温度で乾燥を行うことが好ましい。例えば、乾燥方法としては、特開昭55−75410号、特許第2565753号公報に記載された方法等が挙げられる。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムの厚みは、好ましくは、10〜500μmであり、より好ましくは、10〜100μmである。蒸着用ポリオレフィンフィルムが多層フィルムである場合には、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層の厚みは、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムは、好ましくは、押出機、Tダイ、冷却ロールを備えるTダイフィルム製膜装置を用いて製造される。
蒸着用ポリオレフィンフィルムが単層フィルムである場合、蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機で加熱溶融し、Tダイから押出し、冷却ロールに密着させて冷却固化して製造される。
蒸着用ポリオレフィンフィルムが、ポリプロピレン系樹脂材料からなる基材層の一方の表層に、本発明の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有し、前記基材層のもう一方の表層に融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料からなる層を有する多層フィルムである場合には、蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物を多層Tダイ装置の表層へとつながる押出機で加熱溶融し、基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂材料を多層Tダイ装置の基材層へとつながる押出機で加熱溶融し、ヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料を前記基材層のもう一方の表層へとつながる押出機で加熱溶融し、多層Tダイから共押出し、冷却ロールに密着させて冷却固化して製造される。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムの製造において、押出機およびTダイの設定温度は、製膜性および蒸着フィルムのヒートシール後の蒸着強度に優れる観点から、好ましくは180〜300℃であり、より好ましくは、200〜280℃、さらに好ましくは、230℃〜280℃である。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムの製造において、Tダイリップの間隙は、製膜性および蒸着フィルムのヒートシール後の蒸着強度に優れる観点から、好ましくは0.3〜2.0mmであり、より好ましくは0.7〜1.2mmである。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムの製造において、フィルムの製膜速度は、製膜性および蒸着フィルムのヒートシール後の蒸着強度に優れる観点から、好ましくは10〜200m/分であり、より好ましくは、10〜150m/分、さらに好ましくは20〜100m/分である。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムは、蒸着フィルムのヒートシール後の蒸着強度に優れる観点から、下記の要件(1)および(2)を満たすことが望ましい。
要件(1):本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層の、フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面において、フィルム表面から厚み方向に3μmの領域に、成分(B)からなる、長軸が1.5μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在する。
要件(2):本発明に用いられる蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の、成分(A)と成分(B)の界面の接着強度が10N/15mm以下である。
成分(B)からなるドメインは、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムの断面を、ミクロトームを用い切り出し、ルテニウム酸の蒸気で染色する。染色した断面から、さらにダイヤモンドナイフを用いて超薄切片を切り出す。切り出した超薄切片を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した時、黒く染色された部分が、成分(B)に相当する。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムにおいて、蒸着フィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度に優れる観点から、本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層の、フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面において、フィルム表面から厚み方向に3μmの領域に、好ましくは、成分(B)からなる、長軸が1.5μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在し、より好ましくは、成分(B)からなる、長軸が2.0μm以上、短軸が0.2μm以下のドメインが存在し、さらに好ましくは、成分(B)からなる、長軸が2.0μm以上、短軸が0.1μm以下のドメインが存在する。
成分(A)と成分(B)の界面の接着強度は、成分(A)および成分(B)を厚み0.1mmのシートに成形した後、重ね合わせて190℃にて2秒間ヒートシールを行い、ヒートシールにより融着した部分を、剥離試験機を用いて100mm/分で剥離させることで測定する。成分(A)と成分(B)の界面の接着強度は、好ましくは10N/15mm以下であり、より好ましくは0.05〜8N/15mmであり、さらに好ましくは0.1〜8N/15mmである。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムが上記の要件(1)および(2)を満たすには、(η/η)×(φ/φ)が上記式(1)を満たす蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物を用いることが好ましい。
本発明の蒸着用ポリプロピレンフィルムは、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理などの表面処理を行うことができる。蒸着適性を向上させる目的から、コロナ処理を施したフィルムが好ましい。
本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムは、蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層に金属または金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムとして用いられる。蒸着方法としては、例えば、本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムを高真空下に置き、蒸発した金属または金属酸化物蒸気を導入してフィルム表面に蒸着させる方法が挙げられる。蒸着させる金属としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、ゲルマニウム、すず、セレン等が挙げられる。また、蒸着させる金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。好ましくは、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムであり、より好ましくは、アルミニウムである。アルミニウム蒸着膜の厚みは、通常、100〜1000オングストロームであり、好ましくは、300〜700オングストロ−ムである。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて説明する。なお、発明の詳細な説明および実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)ポリプロピレンのエチレンに由来する構造単位の含有量および1−ブテンに由来する構造単位の含有量(単位:重量%)
エチレンに由来する構造単位の含有量はIRスペクトル測定を行い、高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている(i)ランダム共重合体に関す方法に従って求めた。1−ブテンに由来する構造単位の含有量はIRスペクトル測定を行い、高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第619頁に記載されている方法に従って求めた。
(2)融解温度(単位:℃)
パーキンエルマー社製示差走査熱量計を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下で220℃で溶融させた後、急速に150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融解温度(Tm)とした。なお、本測定法を用いて5℃/分の昇温速度で測定したインジウム(In)の融点は、156.6℃であった。
(3)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210に従って、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。エチレン−α−オレフィン共重合体および高密度ポリエチレンのMFRは、JIS K7210に従って、温度190℃、荷重21.18Nで測定した。
(4)せん断粘度(η、単位:Pa・秒)
東洋精機製キャピログラフ(バレル直径9.55mm)に、直径1mm、長さ40mm、流入角度90℃のキャピラリーを装着し、測定温度250℃、ピストン速度10mm/分(せん断速度122/秒)で試料のせん断粘度を測定した。
(5)密度(g/cm
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って試料の密度を測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
(6)光沢性(グロス、単位:%)
JIS K7105に従って試料の光沢を測定した。
(7)成分(B)の分散構造
蒸着用ポリオレフィンフィルムをエポキシ包埋した。エポキシ包埋したフィルムから、フィルムの製膜方向に対して垂直な方向の断面を、ミクロトームを用い切り出し、ルテニウム酸の蒸気で染色した。染色した断面から、ダイヤモンドナイフを用いて、厚さ0.1μm程度の超薄切片を切り出した。切り出した超薄切片から、本発明の蒸着用ポリオレフィンフィルムにおける蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層の、フィルム表面から厚み方向に3μm、フィルムの厚み方向およびフィルムの製膜方向に対して垂直な方向に垂直な方向に3μmの領域を、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−7650型透過型電子顕微鏡)を用いて、20,000倍の倍率で観察した。透過型電子顕微鏡観察像にて黒く染色された部分を、成分(B)ドメインに相当するものとし、長軸が1.5μm以上、短軸が0.1μm以下のドメインの有無を判定した。
(8)成分(A)と成分(B)の界面の接着強度
温度230℃、圧力10MPa、8分間の熱プレス成形により成形された成分(A)のシート(厚さ0.1mm)と温度170℃、圧力10MPa、8分間の熱プレス成形により成形された成分(B)のシート(厚さ0.1mm)を重ね合わせ、テスター産業株式会社製TP−701B型ヒートシールテスターを用いて幅10mmのヒートシールを上部ヒーター190℃、下部ヒーター55℃、1.0kgf/cmの条件で2秒間行った。ヒートシール後のフィルムを幅15mm×長さ80mm(ヒートシールの幅方向と長辺方向が一致)で切り取り、ORIENTEC社製STA−1225型引張試験機を用いて、引張速度100mm/分で引張試験を行い、剥離進行時のヒートシール部の引張荷重を成分(A)と成分(B)の界面の接着強度とした。
(9)ヒートシール前の蒸着強度(単位:N/15mm)
酢酸エチル、エステル系接着剤の主剤(タケラックA−310;武田薬品製)および硬化剤(タケネートA−3;武田薬品製)を、36:12:1の重量比で混合し、接着剤溶液を作成した。康井精機製卓上型テストコーターを用いて、厚さ15μmの延伸ナイロン基材フィルム(ユニチカ製エンブレム)に接着剤溶液を塗布した後、85℃で乾燥させた。ナイロン基材フィルム上に存在する接着剤の、乾燥後の重量は、3.7g/mであった。片面にアルミニウム蒸着した厚さ30μmのポリオレフィンフィルムの蒸着面と、ナイロン基材フィルムの接着剤塗布面を接触させ、40℃、3kg/cmで圧着させた。圧着後のフィルムを、40℃で2日間、加熱熟成することによりドライラミネーションフィルムを得た。ドライラミネーションフィルムを幅15mm×長さ80mm(製膜方向と長辺方向が一致)で切り取り、ORIENTEC社製STA−1225型引張試験機を用いて、引張速度100mm/分で引張試験を行い、剥離進行時の引張荷重を蒸着強度とした。
(10)ヒートシール後の蒸着強度(単位:N/15mm)
酢酸エチル、エステル系接着剤の主剤(タケラックA−310;武田薬品製)および硬化剤(タケネートA−3;武田薬品製)を、36:12:1の重量比で混合し、接着剤溶液を作成した。康井精機製卓上型テストコーターを用いて、厚さ15μmの延伸ナイロン基材フィルム(ユニチカ製エンブレム)に接着剤溶液を塗布した後、85℃で乾燥させた。ナイロン基材フィルム上に存在する接着剤の、乾燥後の重量は、3.7g/mであった。片面にアルミニウム蒸着した厚さ30μmのポリオレフィンフィルムの蒸着面と、ナイロン基材フィルムの接着剤塗布面を接触させ、40℃、3kg/cmで圧着させた。圧着後のフィルムを、40℃で2日間、加熱熟成することによりドライラミネーションフィルムを得た。ドライラミネーションフィルムを幅15mm×長さ80mm(製膜方向と長辺方向が一致)で切り取り、テスター産業株式会社製TP−701B型ヒートシールテスターを用いて幅20mmのヒートシールを上部ヒーター155℃、下部ヒーター55℃、1.0kgf/cmの条件で0.5秒間行った。ORIENTEC社製STA−1225型引張試験機を用いて、引張速度100mm/分で引張試験を行い、剥離進行時のヒートシール部の引張荷重をヒートシール後の蒸着強度とした。
[参考例1]
ポリプロピレン(A−1)の製造
特開2008−208362号公報の実施例1に記載の触媒を用いて、プロピレンを重合することによって、ポリプロピレン単独重合体(融解温度164℃、MFR9g/10分、せん断粘度278Pa・秒。以下、PP(A−1)と記載)の粉末を得た。PP(A−1)100重量部に対し、水酸化カルシウム(鈴木工業株式会社製)0.002重量部、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.15重量部を添加し、溶融混練してPP(A−1)ペレットを得た。
[参考例2]
ポリプロピレン(A−2)の製造
特開2008−208362号公報の実施例1に記載の触媒を用いて、プロピレン、エチレン、1−ブテンを共重合することによって、ポリプロピレン(プロピレン−エチレン−1−ブテン三元共重合体、エチレン含量0.9重量%、1−ブテン含量3.4重量%、融解温度148℃、MFR7g/10分、せん断粘度350Pa・秒。以下、PP(A−2)と記載)の粉末を得た。PP(A−2)100重量部に対し、水酸化カルシウム(鈴木工業株式会社製)0.007重量部、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.09重量部、スミライザーGP(住友化学株式会社製)0.05重量部を添加し、溶融混練してPP(A−2)ペレットを得た。
[実施例1]
エチレン−α−オレフィン共重合体であるSP50500P(株式会社プライムポリマー製エボリューH、MFR50g/10分、せん断粘度64Pa・秒、密度0.948g/cm)100重量部に対し、スミライザーGP(住友化学株式会社製)0.085重量部を添加し、溶融混練してSP50500Pペレットを得た。
参考例1で得られたPP(A−1)ペレット85重量部と、SP50500Pペレット15重量部を配合し、田辺プラスチックス株式会社製50mmφTダイ製膜装置を用いて、樹脂温度250℃で溶融押出を行った。溶融押出されたものを40℃の冷却水を通水した冷却ロールで冷却して、厚さ30μmの蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、佐藤真空機械工業株式会社製真空蒸着装置を用いてコロナ処理面にアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例2]
PP(1)ペレット85重量部を80重量部に、およびSP50500Pペレット15重量部を20重量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例3]
エチレン−α−オレフィン共重合体であるSP50800P(株式会社プライムポリマー製エボリューH、MFR135g/10分、せん断粘度25Pa・秒、密度0.951g/cm)100重量部に対し、スミライザーGP(住友化学株式会社製)0.085重量部を添加し、溶融混練してSP50800Pペレットを得た。
SP50500PペレットをSP50800Pペレットに変更した以外は、実施例1と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例4]
PP(1)ペレット85重量部を80重量部に、およびSP50800Pペレット15重量部を20重量部に変更した以外は、実施例3と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例5]
SP50500Pペレットをエチレン−α−オレフィン共重合体であるGA804(住友化学株式会社製スミカセンL、MFR50g/10分、せん断粘度85Pa・秒、密度0.930g/cm)に、樹脂温度250℃を240℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。得られたフィルムの成分(B)の分散構造を図1に示した。PP(A−1)とGA804の界面の接着強度は0.1N/15mmであった。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例6]
高密度ポリエチレンであるG1900(京葉ポリエチレン製、MFR17g/10分、密度0.956)3重量部を添加した以外は、実施例5と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例7]
GA804をエチレン−α−オレフィン共重合体であるCX5508(住友化学株式会社製エクセレンFX、MFR75g/10分、せん断粘度30Pa・秒、密度0.890g/cm)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[実施例8]
PP(A−1)ペレットをPP(A−2)ペレットに、SP50500Pペレットをエチレン−α−オレフィン共重合体であるEG8407(デゥポンダウ株式会社製エンゲージ、MFR30g/10分、せん断粘度79Pa・秒、密度0.868g/cm)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[比較例1]
PP(A−1)ペレット85重量部を90重量部に、およびSP50500Pペレット15重量部を10重量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[比較例2]
PP(A−1)ペレット85重量部を90重量部に、およびGA804、15重量部を10重量部に変更した以外は、実施例5と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[比較例3]
GA804を高密度ポリエチレンであるM6910(京葉ポリエチレン製、MFR23g/10分、せん断粘度135Pa・秒、密度0.961g/cm)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。得られたフィルムの成分(B)の分散構造を図2に示した。PP(A−1)とM6910の界面の接着強度は0.1N/15mmであった。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[比較例4]
EG8407をエチレン−α−オレフィン共重合体であるGA701(住友化学株式会社製スミカセンL、MFR8g/10分、せん断粘度159Pa・秒、密度0.920g/cm)に変更した以外は、実施例8と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
[比較例5]
EG8407をエチレン−α−オレフィン共重合体であるA4070S(三井化学株式会社製タフマー、MFR3.6g/10分、せん断粘度605Pa・秒、密度0.870g/cm)に変更した以外は、実施例8と同様の方法で押出加工を行い、蒸着用ポリオレフィンフィルムを得た。用いた蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物の組成を表2、得られたフィルムのグロスを表3に示した。得られたフィルムの成分(B)の分散構造を図3に示した。PP(A−2)とA4070Sの界面の接着強度は12N/15mmであった。
得られたフィルムに、実施例1と同様の方法でアルミニウムを蒸着し、アルミニウム蒸着ポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムのヒートシール前およびヒートシール後の蒸着強度を表3に示した。
Figure 2014034637
Figure 2014034637
Figure 2014034637
表2から、(η/η)×(φ/φ)が0.50未満である比較例1および比較例2、エチレン−α−オレフィン共重合体のせん断粘度が85Pa・秒を上回る高密度ポリエチレンに変更した比較例3、エチレン−α−オレフィン共重合体のせん断粘度が85Pa・秒を上回る比較例4、5では、ヒートシール後の蒸着強度に劣ることが分かる。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン(成分(A))と、250℃、せん断速度122/秒で測定されるせん断粘度(η)が1〜85Pa・秒であるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))とを含む蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物であって、
    250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(A)のせん断粘度(η)と250℃、せん断速度122/秒で測定される成分(B)のせん断粘度(η)および前記組成物中の成分(A)の含有量(φ)と成分(B)の含有量(φ)が下記式(1)を満たす樹脂組成物(但し、前記組成物において、φとφとの合計の重量を100重量部とする。)。

    0.50≦(η/η)×(φ/φ)≦3.00 (1)
  2. 請求項1に記載の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を少なくとも一方の表層に有することを特徴とする蒸着用ポリオレフィンフィルム。
  3. ポリプロピレン系樹脂材料からなる基材層の一方の表層に請求項1に記載の蒸着フィルム用ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有し、前記基材層のもう一方の表層に、融解温度が145℃以下であるヒートシール用ポリプロピレン系樹脂材料からなる層を有することを特徴とする請求項2に記載の蒸着用ポリオレフィンフィルム。
  4. 請求項2または3のいずれかに記載の蒸着用ポリオレフィンフィルムからなる層と、金属または金属酸化物を含む層とを有する蒸着フィルム。
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