JP2014030370A - きのこ類における無胞子性変異の原因遺伝子 - Google Patents

きのこ類における無胞子性変異の原因遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】 担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の、効率的な検出方法又は生産方法。
【解決手段】 担子菌亜門の生物由来の、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、胞子欠損性変異株の検出方法を用いる。
【選択図】 図9

Description

本発明は、胞子欠損性変異株の検出方法等に関する。
食用キノコ類は、我国において特用林産物の主要品目として扱われており、近年では消費嗜好の多様化や健康志向の高まりなどを背景に以前より他種類のキノコが栽培されるようになっている。その中でウスヒラタケは分類学的にはヒラタケ属のキノコで、我国における生産量は他のキノコに比べてまだ多くはないものの、徐々に増加してきている。一方、ヒラタケ属のキノコ全体での世界的な生産量をみると、ツクリタケ(いわゆるマッシュルーム)、シイタケに次ぐ第3位に位置しており、本菌はその主要品目となっている。
近年、キノコ類の生産は大規模化し、温度と湿度が制御された閉鎖空間で管理されるようになった。その結果、栽培過程において子実体(一般に言う"キノコ")より放出される大量の胞子による様々な問題が顕在化してきた。例えば、胞子吸引がアレルギーを引き起こすことで栽培従事者の健康に悪影響を及ぼし、さらには栽培施設の汚染や病害の発生、子実体の発生不良といった商品価値低下の原因ともなっている。ヒラタケ属の胞子により汚染された換気扇の一例を図1に示す。また健康被害や汚染といった問題以外にも栽培品種の莫大な量の胞子が自然界に飛散することによって、栽培種による自然集団の遺伝的多様性の画一化が進行している。特にウスヒラタケを含めたヒラタケ属は、他種と比較して子実体形成の早期から多数の胞子を放出し始めるという特徴があるため、胞子による問題は栽培における大きな障害となり易く、栽培が中止されたケースも見られる。
近年、エリンギは生産量が急激に増加しているが、その栽培面でキノコから飛散する多量の胞子が栽培施設を汚染することによりキノコが立ち枯れとなる問題が起きている。これに対して、特許文献1には、それらの問題に対応するため突然変異によりエリンギの担子胞子形成欠損の有用変異体を作出した旨が記載されている。
また、特許文献2には、ウスヒラタケの胞子欠損性変異株を検出するための特定のプライマーセットが記載されている。
特開2004-24198号公報 特開2010-207111号公報
子実体の生産に伴う大量の胞子飛散に起因する諸問題の解決には、無胞子性の菌株の育成が最も有効であることから、以前より自然あるいは人工的に作られた胞子欠損性変異体を用いた突然変異育種が進められてきた。しかしながら、突然変異育種には膨大な労力や時間を必要とし、育成効率がきわめて低いなど多くの欠点がある。そのため、現在までに我国において商業的に栽培されている無胞子品種はエリンギ、ヤナギマツタケの2品種のみである。
また、上記特許文献1記載の従来技術では、胞子欠損性を確認するための観察は子実体からの胞子の落下に頼る他なかった。即ち、この技術では、子実体の発生には30〜40日を要するとともに、発生環境に結果が大きく依存するため客観的判断が困難であり、発生試験の反復を要するという点で、突然変異育種の選抜方法をさらに改善する余地があった。また、無胞子性変異株を取得する際には、例えば3000-7000株と多くの株の選抜が必要とされることがあり、従来法では多くの労力が必要となっていた。また、上記特許文献2記載の従来技術では、特定のプライマーセットを用いる方法以外では、胞子欠損性変異株を検出する方法は不明であった。また胞子欠損性に関与する遺伝子も不明であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、新規で且つ効率的な担子菌亜門の生物(例えばヒラタケ属のキノコ)の胞子欠損性変異株の検出方法を提供することを目的とする。又は、新規で且つ効率的な胞子欠損性変異株の生産方法を提供することを目的とする。
本願発明者らは、後述する実施例に記載の通り、遺伝子破壊実験を通して、stpp1が胞子形成に関与していることを発見した。この発見から、野生型と変異型が混在した胞子の中から、stpp1が変異、欠損又は機能抑制されている胞子を選抜することで、効率的に胞子欠損性変異株を検出、及び育種できることが明らかになった。また、stpp1を変異、欠損又は機能抑制させることで、効率的に胞子欠損性変異株を生産できることが明らかになった。図2に、本願発明者らが発見した検出法の概要図を一例として示す。
即ち本発明によれば、担子菌亜門の生物において、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、胞子欠損性変異株の検出方法が提供される。後述する実施例では、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖が胞子形成に関与していることが実証されている。このDNA鎖は、BlastXを用いた相同性検索によれば、ミスマッチ修復遺伝子に相同性の高い塩基配列を有している。そのため、この検出方法によって、上記生体分子が変異又は欠損しているものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。また、子実体を発生させることなく菌糸体の段階で胞子欠損性変異株をスクリーニングできるため、突然変異育種の育種年月を大幅に短縮できる。また、この検出方法では、例えば、遺伝子破壊、TILLING法、マイクロアレイ等、種々の手法を胞子欠損性変異株取得のために利用することができる。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物由来の、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出するための検出用試薬が提供される。
また本発明によれば、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異型生体分子又はその一部を含む、担子菌亜門の生物の胞子欠損性の検査用マーカーが提供される。
また本発明によれば、上記検査用マーカーを指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する方法であって、上記生体分子が、上記(a)のDNA鎖である、検出方法が提供される。
また本発明によれば、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子、又はその一部を含む、担子菌亜門の生物の胞子欠損性の検査用マーカーが提供される。
また本発明によれば、上記検査用マーカーの変異又は欠損の有無を指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する方法であって、上記生体分子が、上記(a)のDNA鎖である、検出方法が提供される。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンする工程を含む、胞子欠損性変異株の生産方法が提供される。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物の配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンするためのベクターが提供される。
担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子が、ノックアウト又はノックダウンしている胞子欠損性変異株が提供される。又は、その胞子欠損性変異株から得られる子実体が得られる。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物由来の、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の変異型生体分子が提供される。
また本発明によれば、(h)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(i)配列番号1で示される塩基配列に対して、80%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA鎖、(j)配列番号1で示される塩基配列に対して、1又は複数個の塩基が欠損、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列からなるDNA鎖、(k)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列からなるDNA鎖、及び(l)上記(h)〜(k)のいずれか1つ以上のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の、単離された生体分子が提供される。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、担子菌亜門の生物の胞子に上記のベクターを導入した後、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを、上記ベクターによってゲノムに導入されたマーカーの有無によって一次選抜する工程と、上記一次選抜された胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程と、含む、育種方法が提供される。
また本発明によれば、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、担子菌亜門の生物の胞子に人工変異処理を施して、変異型胞子および未変異型胞子の混在した人工変異処理済の胞子混合物を得る工程と、上記人工変異処理済の胞子混合物を発芽させて得られる一核菌株の単胞子コロニーから抽出したゲノムDNAについて、上記の検出用試薬、又は、上記の検出用試薬を含む検出キットを用いて、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを核酸増幅法によって一次選抜する工程と、上記一次選抜された担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程と、を含む、育種方法が提供される。
図1は、ヒラタケ属の胞子により汚染された換気扇の一例を表した写真である。 図2は、本願発明者らが発見した検出法の概要図の一例である。 図3は、配列番号1で示される塩基配列の前半部分を表した図である。 図4は、配列番号1で示される塩基配列の後半部分を表した図である。 図5は、配列番号2で示される塩基配列の前半部分を表した図である。 図6は、配列番号2で示される塩基配列の後半部分を表した図である。 図7は、stpp1破壊ベクターの構築手順の前半部分の一例を表した概念図である。 図8は、stpp1破壊ベクターの構築手順の後半部分の一例を表した概念図である。 図9は、実施例において、stpp1破壊候補株への遺伝子破壊ベクターの組み込みを確認した結果を示す図である。 図10は、実施例において、stpp1破壊候補株への遺伝子破壊ベクターの組み込みを確認した結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物における、新規の胞子欠損性変異株の検出方法である。この検出方法は、例えば、担子菌亜門の生物の配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、検出方法である。後述する実施例では、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖が胞子形成に関与していることが実証されている。そのため、胞子欠損性変異株を検出する際に、この検出方法によって、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖が変異又は欠損しているものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。また、子実体を発生させることなく菌糸体の段階で胞子欠損性変異株をスクリーニングできるため、突然変異育種の育種年月を大幅に短縮できる。
また、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖は、BlastXを用いた相同性検索によれば、ミスマッチ修復遺伝子に相同性の高い塩基配列を有している。そのため、ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、検出方法によれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。
また、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖が変異又は欠損している場合、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質も変異又は欠損していると考えられる。また、ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子が変異又は欠損している場合、ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質も変異又は欠損していると考えられる。そのため、それら生体分子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、検出方法によれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。なお、生体分子は、例えば遺伝子、DNA鎖、RNA鎖、cDNA、蛋白質を含む。RNA鎖は、例えばmRNAを含む。蛋白質は、例えばmRNAが翻訳されて得られるポリペプチドを含む。また、遺伝子の変異又は欠損の有無を検出する工程を、遺伝子の機能を抑制又はサイレンシングする工程に代えた場合も、本発明の一実施形態に含まれる。
本発明の一実施形態において「ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子」は、ミスマッチ修復遺伝子に同一又は類似の構造を有している遺伝子もしくはDNA鎖を含む。ミスマッチ修復遺伝子は、ミスマッチ修復蛋白質をコードする遺伝子を含む。ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子であるかどうかは、例えば、NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のBLASTで検索することで評価できる。ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子は、必ずしも機能性のミスマッチ修復蛋白質を発現するものでなくてもよく、公知のミスマッチ修復遺伝子に相同性の高い塩基配列を含んでいればよい。本発明の一実施形態のミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子と、公知のミスマッチ修復遺伝子との相同性は、例えば50、60、70、80、90、95、又は100%であってもよく、それらいずれかの値以上、又は範囲内であってもよい。なお遺伝子は、エクソン又はイントロンを含む核酸を含む。また、本発明の一実施形態において「欠損」は、一部欠損又は全部欠損であってもよい。
本発明の一実施形態において「ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子」は、(m)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(n)配列番号1で示される塩基配列に対して、80%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA鎖、(o)配列番号1で示される塩基配列に対して、1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列からなるDNA鎖、(p)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列からなるDNA鎖、からなる群から選ばれる1つ以上のDNA鎖であってもよい。
本発明の一実施形態において「変異型遺伝子」は、野生型遺伝子の塩基配列が変異又は欠損を有しているもの、又は表現型変異を有しているものを含む。本発明の一実施形態において「変異」は、機能欠損変異であってもよい。機能欠損変異は、変異前の遺伝子が有していた特定の機能が、変異後に実質的に無くなる変異を含む。特定の機能が実質的に無くなったことは、表現型に変化が見られたことによって判断してもよい。ここで上記特定の機能は、突然変異前の遺伝子が有している機能であれば、特に限定されるものではない。またこの変異は、ヌル突然変異、ナンセンス突然変異、又はミスセンス変異であってもよい。特に、突然変異後の胞子欠損性変異株を効率的に検出するためには、この変異はヌル突然変異、又はミスセンス変異であることが好ましい。また、本発明の一実施形態において「変異」は、例えば欠損変異、表現型変異、又は胞子欠損性の表現型を誘導する変異であってもよい。表現型変異は、野生型の有する表現型が欠損するか、著しく減少する変異である。またこの「変異」は、例えば、野生型遺伝子の遺伝子内部の一部が欠失している変異、又は野生型遺伝子の遺伝子内部にヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが挿入されることによって生じた変異であってもよい。変異の形態は、本実施形態において例示した変異の形態を組合わせて生じる変異であってもよい。
なお変異又は欠損の有無の検出は、例えば、TILLING (Targeting Induced Local Lesions In Genomes)法で行ってもよい。また、被験遺伝子をPCRで増幅させ、野生型遺伝子を増幅した場合に比べて増幅断片の長さが小さい、又は大きい場合に、変異又は欠損があると評価しても良い。また、被験遺伝子をPCRに供したときの増幅の有無が、野生型遺伝子のときと異なる場合に、変異又は欠損があると評価しても良い。また、被験遺伝子のcDNA内の変異の有無を検出することによって、被験遺伝子自体の変異の有無を評価しても良い。また、被験遺伝子由来の蛋白質の変異の有無を検出することによって、被験遺伝子自体の変異の有無を評価しても良い。なお上記検出方法は、変異の有無の有無を検出する工程に加えて、ミスマッチ修復遺伝子又はその相同遺伝子の機能が抑制されているものを選抜する工程を含んでいてもよい。なお変異又は欠損は、野生型に比べて変異又は欠損を有している場合を含む。
本発明の一実施形態において「胞子欠損性」は、胞子形成能が欠損しているか、著しく減少している状態を示す。例えば、被検体の菌株由来の子実体カサをシャーレ上もしくは黒い紙上に置き、霧吹きで湿室状態にして室温で一晩静置した後に、傘の下の胞子を肉眼で確認することができない場合、その菌株は胞子欠損性を有していると判断できる。但し、このときの胞子形成量は全く無いというものではなくてもよい。例えば、光学顕微鏡 (15x20)で胞子形成量を観察したときに、野生型における胞子形成量の0.1%未満であった場合、被検体の菌株は胞子欠損性を有していると判断してもよい。なお本明細書では、胞子欠損性を無胞子性と称することもある。
本発明の一実施形態において「担子菌亜門の生物」は、ヒラタケ属の生物であっても良い。ヒラタケ属は、キノコの生物学的分類の一種であり、菌界 真菌門 担子菌亜門 真正担子菌綱 帽菌亜綱 ハラタケ目 ヒラタケ科 ヒラタケ属を意味する。また、本実施形態における「ウスヒラタケ」とは、学名:Pleurotus pulmonariusのヒラタケ科 ヒラタケ属のキノコの一種である。ウスラヒラタケの性質は特に限定されないが、一般的な性質を以下に説明する。梅雨期から秋にかけて各種の広葉樹枯れ木上に発生する。よく似たヒラタケは晩秋から春にかけての発生が多い。同じくヒラタケ科 ヒラタケ属のヒラタケとともに食用にされる。一般的に、外観的な特徴としては、傘ははじめ饅頭形で後には開いて半円形になる。また、表面の色は淡灰褐色から淡黄色で湿っているときは弱い粘性がある。また、ひだは柄に垂生し、並び方はやや密、色は白色。また、柄は一般に短く、傘の片側にかたよってつき、色はほとんど白色に近い。また、ヒラタケに比べて傘の厚みは薄く、肉も軟らかい。
本発明の一実施形態は、配列番号1又は2で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列、配列番号1又は2で示される塩基配列に対して1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列、配列番号1又は2で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列、からなる群から選ばれる1つ以上の塩基配列を含む遺伝子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、検出方法である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この検出方法によって、変異又は欠損を有しているものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。なお本発明の一実施形態において「80%以上」は、80、85、90、95、98、又は99%であってもよく、それらいずれかの値以上、又は範囲内であってもよい。また本発明の一実施形態において「複数個」は30、20、10、8、6、4、又は2個であってもよく、それらいずれかの値以下であってもよい。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物の担子菌亜門の生物由来の、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出するための検出用試薬である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この検出用試薬を用いれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。即ち、胞子欠損性の検査用として有用である。
この検出用試薬は、上記変異又は欠損の有無を検出可能なポリヌクレオチドを含んでいてもよい。また、このポリヌクレオチドはプライマー、又はプローブであってもよい。プライマー、又はプローブを用いれば、PCRやマイクロアレイ等の操作によって、簡便に上記変異又は欠損の有無を検出できる。なおこの検出用試薬は、バッファーを含んでいても良い。
本発明の一実施形態において「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドもしくは塩基、又はそれらの等価物が、複数結合した形態で構成されているものを含む。ヌクレオチド及び塩基は、DNA塩基又はRNA塩基を含む。上記の等価物は、例えばDNA塩基又はRNA塩基がメチル化等の化学修飾を受けているもの、又はヌクレオチドアナログを含む。ヌクレオチドアナログは、非天然のヌクレオチドを含む。「塩基配列」とは、ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチド又はその等価物の配列である。塩基配列の記載において、A、T、G、Cは、それぞれアデニン及びその等価物、チミン及びその等価物、グアニン及びその等価物、シトシン及びその等価物を含む。また、TとU (ウラシル)は、用途に合わせて互いに読み替えることが可能である。なお、ポリヌクレオチドはDNA/RNA合成装置を用いて合成可能である。その他、DNA塩基又はRNA塩基合成の受託会社(例えば、インビトロジェン社等)から購入することもできる。
本発明の一実施形態において「プライマー」又は「プライマーセット」は、核酸増幅反応において、鋳型とハイブリダイズし、核酸増幅反応を開始するのに必要なヌクレオチドのことをいう。核酸増幅反応において増幅を所望する鋳型を基に、その鋳型とハイブリダイズし、核酸増幅反応を行えるように、例えば、特異的なPCR法、LAMP法、ICAN法、NASBA法、TMA法、3SR法、TRC法等での生成物(鎖長あるいは配列において)を生成可能なように、好ましくはプライマー自身がその鋳型特異的な配列を含むように、設計される。また、一般的なプライマーは、これに限られないが、通常、15塩基-100塩基、好ましくは15塩基-35塩基の鎖長を有するように設計される。
プライマーは、例えば配列番号3又は配列番号4に示される塩基配列を有していてもよい。または、配列番号3又は配列番号4で示される塩基配列に対して、80%以上の相同性を有する塩基配列を有していてもよい。または、配列番号3又は配列番号4で示される塩基配列に対して、1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列を有していてもよい。または、配列番号3又は配列番号4で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列を有していてもよい。
核酸増幅反応としては、標的の核酸を増幅させる方法として公知のものならば、何れの方法を用いてもよいが、例えば、PCR法、LAMP法、ICAN法、あるいは他の核酸の協奏的核酸増幅方法が用いてもよい。また、増幅産物の検出法としては、核酸を検出するための方法として公知のものならば、何れの方法を用いてもよい。例えば、増幅後の核酸を電気泳動して検出しても、検出可能な標識を結合させた核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション法を用いて検出してもよいが、多数検体処理、自動化、再現性や二次汚染等の点で有利な、以下に記す方法を用いてもよい。例えば、簡便にDNAを検出する方法として、インターカレーター性蛍光色素で標識された核酸プローブを用いることができる。このようなプローブを用いた検出方法は、標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分がその相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計された核酸プローブの存在下、核酸増幅方法を実施し、蛍光特性の変化を測定するもので、この方法により一定温度、一段階かつ密閉容器内で核酸増幅および検出(測定)を同時かつ迅速・簡便に実施することが可能となる。増幅核酸の検出方法は、上記に限られず、例えば、LAMP法では、副産物のピロリン酸マグネシウムによる白濁を指標に検出してもよく、増幅核酸を直接測定しない方法等であっても、それぞれの核酸増幅方法に適用可能な公知の増幅産物検出方法であれば、何れの方法でも用いることができる。
また本発明の一実施形態は、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異型生体分子又はその一部のいずれかを含む、担子菌亜門の生物の胞子欠損性の検査用マーカーである。また本発明の一実施形態は、上記の検査用マーカーを指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する、検出方法である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この検査用マーカーを指標として、変異を有するものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。
また本発明の一実施形態は、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子又はその一部を含む、担子菌亜門の生物の非胞子欠損性の検査用マーカーである。また、本発明の一実施形態は、上記の検査用マーカーの変異又は欠損の有無を指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する検出方法である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この検査用マーカーを指標として、変異又は欠損を有しないものを除外すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンする工程を含む、胞子欠損性変異株の生産方法である。この生産方法によれば、胞子欠損性変異株を生産することができる。
本発明の一実施形態において「ノックアウト」は、ノックアウト前の遺伝子が有していた特定の機能が、ノックアウト後に実質的に無くなる現象を含む。特定の機能が実質的に無くなったことは、表現型に変化が見られたこと、又は遺伝子破壊がおきたこと、などによって判断してもよい。ここで上記特定の機能は、ノックアウト前の遺伝子が有している機能であれば、特に限定されるものではない。本発明の一実施形態において「ノックダウン」は、例えばRNAiや変異導入等によって遺伝子の機能が抑制、又はサイレンシングしている状態を含む。本発明の一実施形態において「RNAi (RNA interference)」とは、siRNA(short interfering RNA)やshRNA(short hairpin RNA)、短鎖または長鎖の1または複数本鎖RNA等によって、標的遺伝子やmRNA等の機能が抑制、又はサイレンシングされる現象である。一般的に、この抑制は配列特異的であり、様々な生物種に存在する。siRNA又はshRNAを用いた場合の、典型的な哺乳類におけるRNAiのメカニズムは以下の通りである。まず、siRNA又はshRNAを発現する(又はコードする)ベクターを細胞に導入する。その後、細胞内でsiRNA又はshRNAが発現した後、siRNA又はshRNAの一本鎖化が起こり、その後RISC(RNA-induced Silencing Complex)を形成する。RISCは取り込まれた1本鎖RNAをガイド分子として、この1本鎖RNAと相補性の高い配列を持つ標的RNA鎖を認識する。標的RNA鎖は、RISC内のAGO2等の酵素によって切断される。その後、切断された標的RNA鎖は分解される。以上がメカニズムの一例である。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンするためのベクターである。このベクターを担子菌亜門の生物の細胞に導入することで、胞子欠損性変異株を生産することができる。即ち、本発明の一実施形態は、上記ベクターを細胞に導入する工程を経て生産された、胞子欠損性変異株を含む。また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子が、ノックアウト又はノックダウンしている胞子欠損性変異株を含む。
ノックアウトする場合には、例えば、後述する実施例に記載のように、遺伝子破壊によって行ってもよい。このとき、ベクターの内部に、配列番号1示される塩基配列を含むDNA鎖、もしくはミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、又はそれらの一部をコードする塩基配列を含んでいても良い。そのような塩基配列を含むベクターは、ゲノム内の配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、もしくはミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、又はそれらの一部と相同組み替えを起こすことで、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、もしくはミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子の機能を抑制することが可能となる。ノックアウト又はノックダウンにおいて、もとの機能が抑制される強度は、80、85、90、95、98、99、99.5%、又は100%であってもよく、それらいずれかの値以上、又は範囲内であってもよい。
ノックアウトに用いるベクターは、例えば、配列番号1で示される塩基配列を含むDNA鎖、もしくはミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、又はそれらの一部をコードする塩基配列を含んでいてもよい。又は、その塩基配列に相補的な塩基配列を含んでいても良い。そのような塩基配列を含むベクターは、ゲノム内の配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、もしくはミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を抑制可能な、siRNA又はshRNAを発現するためのベクターとして利用することが可能である。なおこのとき、ベクターの最適なデザインは、受託会社(例えばタカラバイオ(株))に委託することで得ることができる。
ベクターは、例えば大腸菌由来のプラスミド(例えばpET-Blue)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19)、動物細胞発現プラスミド(例えばpA1-11)、λファージなどのバクテリオファージ、ウイルス等に由来するベクターを用いることができる。これらのベクターは、プロモーター、複製開始点、又は抗生物質耐性遺伝子など、遺伝子発現やベクターのスクリーニングに必要な構成要素を含んでいてもよい。抗生物質耐性遺伝子は、例えばテトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、又はカルボキシン耐性遺伝子等であってもよい。このベクターは遺伝子破壊用ベクター、又は発現ベクターであってもよい。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物由来の、(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、(c)上記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び(d)上記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の変異型生体分子である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この変異型生体分子を胞子欠損性の検査用マーカーとして利用し、変異を有するものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。なお上記変異は、機能欠損変異、又は胞子欠損性の表現型を誘導する変異であってもよい。また変異型生体分子は、例えば変異型DNA鎖、変異型遺伝子、変異型RNA鎖、変異型cDNA、又は変異型蛋白質を含む。また本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る変異型遺伝子を含む核酸、またはその核酸を含む細胞もしくは生物個体を含む。
本発明の一実施形態において「相同性」は、2つもしくは複数間のアミノ酸配列において相同なアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定してもよい。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、相同の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、及びそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られている(例えばBLAST、GENETYX等)。本発明の一実施形態において「相同性」は、特に断りのない限りNCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸配列を比較するときのAlgorithmには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositives又はIdentitiesとして数値化される。なお、相同性は同一性を含む概念であるが、同一性もBLASTにより測定可能である。
本発明の一実施形態において「ストリンジェントな条件」は、例えば以下の条件を採用することができる。(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度を用いる(例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム)、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる(例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)、又は(3)20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションし、次に約37-50℃で1×SSCでフィルターを洗浄する。なお、ホルムアミド濃度は50%又はそれ以上であってもよい。洗浄時間は、5、15、30、60、もしくは120分、又はそれら以上であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに影響する要素としては温度、塩濃度など複数の要素が考えられ、詳細はAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照することができる。
本発明の一実施形態において「結合する」とは、物質間の連結を意味する。連結は共有結合又は非共有結合のいずれであってもよく、例えば、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用、又は親水性相互作用が挙げられる。
本発明の一実施形態において「配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖由来のcDNA」、又は「ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子由来のcDNA」は、配列番号2で示される塩基配列に対して80%以上の相同性をする塩基配列、配列番号2で示される塩基配列に対して1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列、配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列、からなる群から選ばれる1つ以上の塩基配列を含んでいてもよい。
また本発明の一実施形態は、上記の実施形態に係る検出用試薬と、DNAポリメラーゼと、ヌクレオチドと、を含む、担子菌亜門の生物の、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子の、変異又は欠損の有無を検出するための検出キットである。このキットを用いれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。
また本発明の一実施形態は、(h)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、(i)配列番号1で示される塩基配列に対して、80%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA鎖、(j)配列番号1で示される塩基配列に対して、1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列からなるDNA鎖、(k)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列からなるDNA鎖、及び(l)上記(h)〜(k)のいずれか1つ以上のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、からなる群から選ばれる1つ以上の、単離された生体分子である。胞子欠損性変異株を検出する際に、この単離された生体分子を胞子欠損性の検査用マーカーとして利用し、この単離された生体分子が変異又は欠損を有するものを選抜すれば、胞子欠損性変異株を効率的に検出することができる。なお、蛋白質の検出には、抗体、又は標識抗体を用いることができる。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、担子菌亜門の生物の胞子に上記のベクターを導入した後、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを、上記ベクターによってゲノムに導入されたマーカーの有無によって一次選抜する工程を含む、育種方法である。この育種方法は、さらに、上記一次選抜された胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程含んでいてもよい。この育種方法によれば、ミスマッチ修復遺伝子又はその相同遺伝子の、変異型遺伝子をノックアウト又はノックダウンさせているため、胞子欠損性変異株を効率的に一次選抜することができる。そして、あらかじめ一次選抜によって絞り込んだ一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、その二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜すれば済むので、ヒラタケ属キノコの突然変異育種にかかる多大な時間と労力を節減することができる。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、担子菌亜門の生物の胞子に人工変異処理を施して、変異型胞子および未変異型胞子の混在した人工変異処理済の胞子混合物を得る工程と、上記人工変異処理済の胞子混合物を発芽させて得られる一核菌株の単胞子コロニーから抽出したゲノムDNAについて、上記の検出用試薬、又は、上記の検出用試薬を含む検出キットを用いて、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを核酸増幅法によって一次選抜する工程を含む、育種方法である。この育種方法は、さらに、上記一次選抜された担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程を含んでいてもよい。この育種方法では、遺伝子の変異を誘発し、その後発生したミスマッチ修復遺伝子又はその相同遺伝子の、変異型遺伝子を一次選抜のマーカーとして用いることができる。そのため、胞子欠損性変異株を効率的に一次選抜することができる。そして、あらかじめ一次選抜によって絞り込んだ一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、その二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜すれば済むので、ヒラタケ属キノコの突然変異育種にかかる多大な時間と労力を節減することができる。なお人工変異処理は、例えば、紫外線、ガンマ線、X線、イオンビーム等で行ってもよい。また人工変異処理は、ニトロソグアニジンのような変異誘発性の薬剤処理で行ってもよい。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株であって、上記の実施形態に係る育種方法によって、ミスマッチ修復遺伝子又はその相同遺伝子がノックアウト又はノックダウンされている、胞子欠損性変異株である。この胞子欠損性変異株は、胞子欠損性の変異を有しているため、胞子飛散に伴う問題を防止することができる。胞子飛散に伴う問題としては、例えば、胞子の吸引による栽培従事者のアレルギー症状、栽培施設の汚染、病害の発生や子実体の発生不良による生産性・品質低下、栽培品種による自然集団の遺伝的多様性の画一化などを挙げることができる。
また本発明の一実施形態は、担子菌亜門の生物の子実体であって、本発明の実施形態に係る胞子欠損性変異株から得られる、子実体である。この子実体は、胞子欠損性の変異を有しているため、胞子飛散に伴う問題を防止することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>遺伝子破壊実験
遺伝子破壊ベクターの構築 (1週間)→菌体(Pleurotus pulmonarius)の培養 (2週間以上)→プロトプラスト化→PEG法による形質転換(3週間以上)の手順で実験を行った。
なお、本実験で破壊した遺伝子の塩基配列は、配列番号1で示される塩基配列を有する(図3、4)。この遺伝子の塩基配列は、本発明者らが初めて明らかにしたものであり、本発明者らはこの遺伝子をstpp1と命名した。この塩基配列は、AFLP core reagent kit(Invitrogen Corp社製)を用いて作製したAFLPマーカーを用いて、Pleurotus pulmonariusのゲノムライブラリーでのスクリーニングや、ドラフトシーケンスデータベースでの検索の結果得たものである。このstpp1は、BlastXを用いた相同性検索により、ミスマッチ修復蛋白質(mismatch repair protein、MRP)の相同蛋白質をコードしていた。なおこのstpp1のcDNAの配列は、配列番号2で示される塩基配列を有する(図5、6)。
(1)遺伝子破壊ベクター構築
下記の手順で、stpp1破壊ベクターを構築した。概要図を図7、8に示す。
(1−1)使用したプライマー
MRP-F:TGCCATACTCAGCAGGAAC、Tm 56℃、配列番号3
MRP-R:GTGGACGCTGTCATCTCTT、Tm 56℃、配列番号4
(1−2)手順
1. MRP-Fのプライマーと、MRP-Rのプライマーを用いて、野生型ゲノムDNA (31664-S1)をテンプレートに、stpp1の約1.2 kbをPCRで増幅した。
→この断片をMRP-p1とした。なお、31664-S1 はPleurotus pulmonariusのTMIC-31664株を由来とする単胞子分離株のゲノムDNAであり、DNeasy plant mini kit (Qiagen)を用いて調製した。
2. pGEM-T Easy Vector (Promega, Cat.No. A1360)でMRP-p1をTA-cloningした。
→このプラスミドをpGEM/MRP-p1とした。
3.5'末端側及び3'末端側にHindIIIサイトを有する抗生物質耐性遺伝子を含む断片をPCRで増幅した。
→この断片をRh-p1とした。
4. Rh-p1をpGEM-T Easy VectorでTA-cloningした。
→このプラスミドをpGEM/Rh-p1とした。
5. HindIIIでそれぞれのTA-cloningベクターを酵素処理後、ゲル抽出し、断片を回収した。
6. pGEM/MRP-p1のHindIIIサイトを利用してRh-p1を組み込んだ。これによりMRP-p1配列内の100bp程度が失われるが遺伝子破壊には問題ないと思われる。→このプラスミドをpGEM/MRPRとした。
(2)プロトプラスト調製のための培養
以下の通り、培養菌糸を準備した。
(2−1)MYG培地の調整に用いた試薬
マルツエキス (Malt Extract Powder、1 kg、オリエンタル酵母工業株式会社, Cat.No.4220400)
Yeast Extract (Dried Yeast Extract D-3、250 g、Wako, Cat. No. 390-00531)
D(+)-Glucose (10 kg、Wako, Cat. No. 040-00607)
(2−2)MYG培地の調整に用いた試薬の混合比、及び調整条件
マルツエキス:2%
Yeast extract:0.2%
Glucose:2%
DW up to
120℃, 20 min Autoclave
(2−3)手順
1. 20 mlのMYG培地を分注した100 ml三角フラスコに、2-3個のPleurotus pulmonariusの菌糸ブロックを浮かべ、2週間程度培養した。なお、菌糸ブロックは、MYG培地で培養した菌糸をメスで切り取った1-2 mm角を使用した。
2. 培養した菌糸はホモジナイザーを用いて10000 rpm, 10 secの条件で破砕した。
3. ホモジナイズした菌糸を20 mlのMYG培地を分注した100 ml三角フラスコに2 mlずつ分注して4日間培養した。
(3)ウスヒラタケのプロトプラスト調製
以下の通り、培養菌糸からプロトプラストを調製した。
(3−1)必要な道具
Millex-HA Syringe Driven Filter Unit (0.45 μm, 50 Filters, (MILLIPORE, Cat.No. SLHA025OS))
3G2ガラスフィルター (3GP160, 3個入り (SIBATA, Cat.No. SB-1311-3160A))
(3−2)使用酵素
Lysing Enzymes fromTrichoderma harzianum (5 g, (SIGMA, Cat.No. L1412-5G))
(3−3)手順
1. 50 mlチューブに菌体を入れ、3000 rpmで5分間遠心した。
2. DWをチューブに適当に分注して再度遠心した。
3. 0.6Mマンニトールを適当に分注して再度遠心後、薬さじを使って水分を除去し、滅菌済み50 mlコルベンに菌体を移した。
4. 4% Lysing Enzymes fromTrichoderma harzianumを含有する0.6Mマンニトールを調製 (3.0-4.0 ml)し、Millex-HA Syringe Driven Filter Unitを用いて滅菌し、シリンジからダイレクトにコルベンへ分注もしくは滅菌チューブ等に移してから分注した。
5. 約6時間, 28℃にて振盪しながら酵素処理した。
6. 0.6Mマンニトールを20 ml加えて懸濁させる。→酵素反応の停止。
7. 3G2ガラスフィルターでろ過し、菌糸片を除去した。このときピペッティングするとプロトプラストがよく落ちるが、ゴミもよく落ちる。
8. ろ液を2500-3000 rpm, 5 分, 20℃で遠心した。
9. 注意して上澄みを捨て、20 mlの0.6Mマンニトールを加えてプロトプラストを懸濁し、再度遠心した。
10. 上澄みを捨て、5 mlの0.6Mマンニトールを加えて懸濁後、血球計算盤を用いて1 ml濃度を計算した。
(4)PEG法による形質転換
上記で調製したプロトプラストを用いて、以下の通り、PEG法による形質転換を実施した。
(4−1)プラスミド及び細胞
プラスミド:pGEM/MRPR
プロトプラスト:約107個/形質転換1反応あたり
(4−2)PEG buffer
Polyethylene Glycol 4000 (Wako, Cat.No. 162-09115):25%
CaCl2:25mM
Tris-HCl (pH 8.0):25mM
Mannitol:0.5M
(4−3)SMY再生培地(重層用)
Sucrose:1%
Malt extract:1%
Yeast extract:0.4%
Mannitol:0.6M
Agar:0.8%
(4−4)SMY再生培地(プレート用)
Agar:1.5%
他は重層用と同じ
(4−5)手順
1. 上記の濃度に調製したプロトプラスト80 μlに、20 μlの25%PEG buffer、0.4 μg/μlの遺伝子破壊ベクター2.5 μlを添加し、氷上で30分間静置した。
2. 900 μlの25%PEG bufferを添加し、室温にて10分間静置した。この混合液を形質転換Mixとした。
3. 融解して保温しておいた5 mlのSMY再生培地(0.8%)と、形質転換Mixの全量とを十分混合後、10 mlの1.5%寒天含有SMY再生培地(プレート状)上に加えて固化させ、形質転換プレートを調整した。
4. 約15時間後、2 μg/mlのCarboxinを含有する1%寒天培地5 mlを、形質転換プレートに重層し、26℃にて2−3週間培養した。以上の手順により、stpp1破壊候補株を調整した。
(5)遺伝子破壊株のスクリーニング
stpp1破壊候補株について、遺伝子破壊ベクターの組み込みを確認する。
(5−1)使用したプライマー
MRP-F:TGCCATACTCAGCAGGAAC、Tm 56℃、配列番号3
MRP-R:GTGGACGCTGTCATCTCTT、Tm 56℃、配列番号4
(5−2)PCR条件(コンディション)
DW:7.72 μl
10x buffer:1.0 μl
dNTP:0.8 μl
Primer:0.2x 2 μl
Ex Taq:0.08 μl
Total:10 μl
(5−3)PCR条件(サイクル)
1. 94℃:2 min
2. 30 cycles × (94℃:10 sec、56℃:10 sec、72℃:4.0 min)
3. 72℃:10 min
4. 4℃:∞
(5−4)手順
上記(5−2)の反応液を準備後、各stpp1破壊候補株DNAを1 μlずつ添加した。反応後、5 μlを電気泳動に使用した。その結果を図9及び10に示す。#1、2、3、4、及び6サンプルは、野生型において予想される1.2 kbが増幅されたことから、野生型と判定された。#5及び7のサンプルは、標的遺伝子が破壊されたときのみにみられる約3.7 kbの増幅のみが確認できたため、遺伝子破壊株と判明した。図中のWは野生型株(コントロール)、Mはマーカーである。
<実施例2>胞子形成の有無の判定
上記のように遺伝子破壊をPCRで確認した株について、子実体を発生させ、顕微鏡で胞子形成量を観察した。
(2−1)培養
シードを準備するため、MYG培地に菌糸を接種した(培地:MYG斜面培地)。
(2−1)培養・子実体発生
試験管にて培養していたシードを用いてオガクズ培地 (ブナ粉:ヌカ=4: 1、含有水分65%) にて培養した(4週間25℃)。培養後、表面の菌糸を掻き取り、注水1時間ののち、19℃下(明所、相対湿度90±5%)で子実体を発生させた。
(2−3)胞子形成の確認
シャーレ上に子実体カサを置き、霧吹きで湿室状態にして室温で一晩静置した(なお、シャーレに代えて黒い紙を使用することもできる。黒い紙を使用する場合は、上からビーカーをかぶせるなどして湿室状態を保つようにする)。その結果、上記の#1、2、3、4、及び6に対応する株を用いた場合、傘の下が胞子で真っ白になっていた。一方で、上記#5及び7に対応する株を用いた場合、傘の下の胞子は肉眼で確認することができなかった。このことから、上記#5及び7に対応する株は、無胞子性変異株であることが明らかになった。なお、上記#5及び7に対応する株を用いた場合の胞子形成量は、上記の#1、2、3、4、及び6に対応する株を用いた場合の0.04%未満と見なすことができる。なお一般に、無胞子性変異と判定しているものの胞子形成量は光学顕微鏡 (15x20)にて観察した結果に基づき、野生型における胞子形成量の0.1%未満とされている。
なお本願発明者らは、stpp1の遺伝子破壊実験を行う前に、Pleurotus pulmonariusのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子の塩基配列も解読している。そして、stpp1と同様にグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子の破壊を試みたが、表現型に変化は見られなかった。
以上の結果、stpp1が胞子形成に関与していることが明らかになった。このことは、stpp1が変異又は欠損している株を選抜することによって、胞子欠損性変異株の取得ができることを意味している。従来は、胞子欠損性変異株を取得するために膨大な労力や時間を必要としていたが、stpp1に変異を有する株を選抜すれば、子実体を発生させることなく菌糸体の段階で胞子欠損性変異株をスクリーニングでき、非常に効率的に胞子欠損性変異株を取得することができる。また、stpp1の変異又は欠損を、胞子欠損性変異株取得のための指標とすることができるので、例えば、遺伝子破壊、TILLING法、マイクロアレイ等、種々の手法を胞子欠損性変異株取得のために利用することができる。そのため、効率的に又は精度良く胞子欠損性変異株の取得を行うことができる
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

Claims (21)

  1. 担子菌亜門の生物由来の、
    (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、
    (c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び
    (d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出する工程を含む、胞子欠損性変異株の検出方法。
  2. 上記生物は、ヒラタケ属の生物である、請求項1に記載の検出方法。
  3. 上記変異は機能欠損変異であり、且つ胞子欠損性の表現型を誘導する変異である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. 担子菌亜門の生物由来の、
    (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、
    (c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び
    (d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異又は欠損の有無を検出するための検出用試薬。
  5. 上記試薬は、上記変異又は欠損の有無を検出可能なポリヌクレオチドを含む、請求項4に記載の検出用試薬。
  6. 胞子欠損性の検査用である、請求項5に記載の検出用試薬。
  7. (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、
    (c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び
    (d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の、変異型生体分子又はその一部を含む、担子菌亜門の生物の胞子欠損性の検査用マーカー。
  8. 請求項7の検査用マーカーを指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する方法であって、
    前記生体分子が、前記(a)のDNA鎖である、検出方法。
  9. (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、
    (c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び
    (d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子又はその一部を含む、担子菌亜門の生物の胞子欠損性の検査用マーカー。
  10. 請求項9の検査用マーカーの変異又は欠損の有無を指標として、担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株を検出する方法であって、
    前記生体分子が、前記(a)のDNA鎖である、検出方法。
  11. 請求項5に記載の検出用試薬と、
    DNAポリメラーゼと、
    ヌクレオチドと、
    を含む、
    担子菌亜門の生物由来の、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子の、
    変異又は欠損の有無を検出するための検出キット。
  12. 担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンする工程を含む、胞子欠損性変異株の生産方法。
  13. 担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子を、ノックアウト又はノックダウンするためのベクター。
  14. 担子菌亜門の生物において、配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子、又はミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子が、ノックアウト又はノックダウンしている胞子欠損性変異株。
  15. 請求項13のベクターを細胞に導入する工程を経て生産された、請求項14に記載の胞子欠損性変異株。
  16. 請求項14又は15の胞子欠損性変異株から得られる、子実体。
  17. 担子菌亜門の生物由来の、
    (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (b)ミスマッチ修復遺伝子の相同遺伝子、
    (c)前記(a)のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、及び
    (d)前記(b)の相同遺伝子由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の生体分子の変異型生体分子。
  18. 前記(b)の相同遺伝子は、
    (e)配列番号1で示される塩基配列に対して80%以上の相同性をする塩基配列、
    (f)配列番号1で示される塩基配列に対して1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列、
    (g)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸にストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列、
    からなる群から選ばれる1つ以上の塩基配列を含み、
    上記変異は、機能欠損変異であり、且つ胞子欠損性の表現型を誘導する変異である、請求項17に記載の変異型生体分子。
  19. (h)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA鎖、
    (i)配列番号1で示される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA鎖、
    (j)配列番号1で示される塩基配列に対して1又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、もしくは付加している塩基配列からなるDNA鎖、
    (k)配列番号1で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に、ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズする核酸の塩基配列からなるDNA鎖、及び
    (l)前記(h)〜(k)のいずれか1つ以上のDNA鎖由来のRNA鎖、cDNA、もしくは蛋白質、
    からなる群から選ばれる1つ以上の、単離された生体分子。
  20. 担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、
    担子菌亜門の生物の胞子に請求項13に記載のベクターを導入した後、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを、前記ベクターによってゲノムに導入されたマーカーの有無によって一次選抜する工程と、
    前記一次選抜された胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程と、
    を含む、育種方法。
  21. 担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異株の育種方法であって、
    担子菌亜門の生物の胞子に人工変異処理を施して、変異型胞子および未変異型胞子の混在した人工変異処理済の胞子混合物を得る工程と、
    前記人工変異処理済の胞子混合物を発芽させて得られる一核菌株の単胞子コロニーから抽出したゲノムDNAについて、請求項5に記載の検出用試薬、又は、請求項11に記載の検出キットを用いて、胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニーを核酸増幅法によって一次選抜する工程と、
    前記一次選抜された担子菌亜門の生物の胞子欠損性変異を有する一核菌株の単胞子コロニー同士を交配させて二核菌株を作出し、上記二核菌株を培養して得られる子実体の胞子の有無を確認することによって、胞子欠損性変異を有する二核菌株を二次選抜する工程と、
    を含む、育種方法。
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