半導体装置の製造プロセスには、種々の処理を施した半導体ウエハ(以下、単にウエハともいう。)を純水又は薬液で洗浄する洗浄工程があり、このような洗浄工程では、複数のウエハを所定の間隔を空けて立てた状態で収容するウエハキャリアと、洗浄液を溜める洗浄槽とを備え、このウエハキャリアを複数のウエハとともに洗浄槽の洗浄液に浸漬した状態でウエハを洗浄する洗浄装置が用いられている。
図9は、従来の洗浄装置を説明する図であり、図9(a)および図9(b)はそれぞれ、この洗浄装置の断面構造として、その内部に配置した半導体ウエハの表面に対して垂直な断面および平行な断面の構造を示している。
この洗浄装置300は、洗浄装置本体300aと、この洗浄装置本体300aの洗浄槽102に配置され、複数のウエハWaを所定の間隔を空けて立てた状態で収容するウエハキャリア120とを有している。
ここで、ウエハキャリア120は、外形四角形形状の箱体であり、その上面および下面が開口した構造となっている。このウエハキャリア120の、ウエハ配列方向と平行な相対向する一対の側壁122は、その下端部122bが互いの離間距離がウエハWaの幅より狭くなるように内側に傾斜した構造となっている。なお、図中、122aは、側壁122の下端部122b以外の側面部であり、対向する一対の側壁の側面部122aは平行になっている。また、124は、ウエハキャリア120の下端側に形成された開口である。
また、この側壁122の側面部122aから下端部122bに跨って、隣接するウエハWaを保持するキャリア溝を形成する線状突部(リブ部)123が、保持するウエハの厚さに合わせた間隔で、ウエハの配列方向に沿って複数形成されている。
また、ウエハキャリア120の、ウエハ配列方向と垂直な相対向する一対の側壁121は平板状の構造となっている。
このような構造のウエハキャリア120では、図9(a)および図9(b)に示すように、ウエハWaは、隣接するリブ部123により形成されるキャリア溝内に挿入され、また、ウエハWaの下部外周端の一部が、ウエハキャリア120の側壁122の下端部122bと当接して保持されることとなる。
また、洗浄装置本体300aは、洗浄液Lを溜める洗浄槽102と、該洗浄槽102の底面102a上に配置され、洗浄液を均等にウエハキャリア120内へ供給するための整流板300と、該洗浄槽102の下側に該洗浄槽102の下端部を囲むように配置され、洗浄槽102の上部開口から溢れた洗浄液を回収する洗浄液回収部材301とを有している。
ここで、整流板300は、複数の貫通孔が洗浄液噴出し孔312として形成された整流板上部310aと、この整流板上部310aの各洗浄液噴出し孔312に連通した洗浄液収容スペース311を形成する整流板下部310bとから構成されており、この整流板下部301bには洗浄液の供給配管303が取り付けられている。
このような構造の洗浄装置300では、洗浄装置本体300aの洗浄槽102内に、ウエハWaを収容したウエハキャリア120をこれが整流板300上に載置されるように配置し、その後、洗浄槽102を洗浄液Lで満たし、さらに洗浄液Lの流れができるよう洗浄液Lを供給配管303から洗浄槽102内に供給する。なお、洗浄槽から溢れた洗浄液は、洗浄液回収部材301により回収して循環させるかあるいは破棄する。
これによりウエハキャリア120に収容されたウエハWaは洗浄液Lにより洗浄されることとなる。
ところで、近年、半導体ウエハの薄膜化が進んでおり、厚さ(例えば625μm)の一般的な半導体ウエハを収容するように設計されたウエハキャリアを、薄膜化されたウエハ(薄膜ウエハ)の洗浄処理などに用いる場合がある。
図10は、通常のウエハを収容するのに用いるウエハキャリアに通常の半導体ウエハより薄い薄膜ウエハを収容した状態を示している。
図10から分かるように、通常のウエハWa(図9参照)を収容するウエハキャリア120に薄膜ウエハWを収容した場合、隣接するウエハを仕切る線状突部(リブ部)123の間隔、言い換えると、隣接するウエハを一定間隔隔てて保持するキャリア溝の幅は、通常のウエハの厚さに応じたものとなっているため、薄膜ウエハWを収容した場合、通常のウエハWa(図9参照)を収容した場合に比べて、線状突部(リブ部)123と薄膜ウエハWとの隙間が大きくなり、薄膜ウエハWはウエハキャリアに収容された状態で大きく傾くこととなる。
この状態で、図11(a)に示すように、ウエハキャリア120を洗浄装置300の洗浄槽に入れてウエハの洗浄を行うと、隣り合うウエハの先端が接触することなり、ウエハが損傷を受ける。
そこで、図11(b)に示すように、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを避けるために、ウエハキャリア120内に薄膜ウエハを収容する際には、薄膜ウエハは、隣接する薄膜ウエハの間隔が広くなるように収容する方法が考えられる。
ところが、この場合、薄膜ウエハはウエハキャリアのキャリア溝毎に収容されるのではなく、一定距離離れた特定のキャリア溝にのみ薄膜ウエハを収容することとなり、この場合、ウエハキャリア120のキャリア溝毎にウエハを収容する場合とは異なり、ウエハキャリア120へのウエハの収容を自動で行うことができず、人がウエハキャリアへのウエハの収容作業を補助する必要が生ずる。
ところで、特許文献1には、ウエハキャリアをウエハが同じ方向に傾くように傾斜させて洗浄装置の洗浄槽内に配置する方法が開示されている。
図12は、この特許文献1に開示の洗浄装置を説明する図である。
この特許文献1に開示の洗浄装置は、洗浄液として純水を溜める洗浄槽1と、純水を槽内に導入する供給部2と、洗浄槽1の上部に設けられたオーバーフロー排出口3と、槽内の下側に設置されたパンチング底板4と、槽底に設けられた排出口5と、パンチング底板4上に配置され、半導体ウエハcを収納しているウエハカセット6を載せる置き台7とを備えている。なお、供給部2には、洗浄槽1の上部一側に沿ってスリット状供給口2aが形成されており、供給部2に供給された純水はこの供給口2aから槽内水平方向へ供給される。また、オーバーフロー排出口3には、斜め上側へ傾けた傾斜壁部3aが形成されており、この傾斜壁部3aの先端を通じて槽内の過剰水がオーバーフローするようになっている。
ここで、置き台7は、複数枚のウエハcを収容するウエハカセット6を所定の角度で位置決め保持可能になっている。すなわち、この置き台7は、ウエハカセット6を載置する載置面(保持面)7aの一方側がその他方側よりも高くなるように、置き台7の底面部を構成する部材の厚さを変化させた構造となっている。このため、多数のウエハcを収納しているカセット6が洗浄槽1に収容されて置き台7上に載置されると、各ウエハcはカセット6内で置き台7の保持面7aの勾配によりウエハ下端を支点として同方向へ傾くこととなる。これにより、全てのウエハcが平行に並ぶことになり、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを回避できる。
以上説明したように、上記従来の洗浄装置では、通常のウエハを収容するウエハキャリア120に薄膜ウエハWを収容してウエハの洗浄を行うと、隣り合うウエハの先端が接触することなり、ウエハが損傷を受けるという問題がある。
また、このようなウエハの接触を避けるために、ウエハキャリア120内に薄膜ウエハを収容する際には、薄膜ウエハを、隣接する薄膜ウエハの間隔が広くなるように収容すると、ウエハキャリアへの薄膜ウエハの収容を自動で行うことができず、ウエハキャリアへのウエハの収容作業に人の補助が必要になるという問題がある。
さらに、上記特許文献1に開示の洗浄装置では、ウエハキャリアを洗浄装置の洗浄槽内で、ウエハが同じ方向に傾くように傾斜させて配置しているので、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを回避できるが、ウエハキャリアが洗浄槽内で傾斜しているため、洗浄槽内でウエハキャリアが占める領域、言い換えると複数のウエハの占める領域の高さ方向の寸法が大きくなり、洗浄槽内に溜める洗浄液の量が増え、半導体装置の製造コストの増大などにつながるといった問題がある。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、通常のウエハを収容するウエハキャリアに通常のウエハより薄いウエハを収容した場合でも、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを回避でき、しかも、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げたり、ウエハキャリアを洗浄槽内で傾けて配置したりする必要のない洗浄装置および洗浄方法を得ることを目的とする。
本発明に係る洗浄装置は、複数のウエハを所定の間隔を空けて立てた状態で収容するウエハキャリアと、洗浄液を溜める洗浄槽とを備え、該ウエハキャリアを該複数のウエハとともに該洗浄槽の洗浄液に浸漬した状態で該ウエハを洗浄する洗浄装置であって、該洗浄槽の底部に配置され、該洗浄液を噴出す洗浄液噴出し孔を形成した整流板を備え、該整流板は、該ウエハキャリア内に収容した複数のウエハが全て、該洗浄液の液面に対して同じ方向に傾くように、該洗浄液を該ウエハの表面に吹き付ける複数の洗浄液噴出し孔を有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明は、上記洗浄装置において、前記整流板の洗浄液噴出し孔は、該洗浄液噴出し孔から噴出される洗浄液が前記ウエハの表面に対して斜めに吹き付けられるように、該洗浄液を噴出す角度を該整流板の表面に対して設定したものであることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記洗浄液噴出し孔から洗浄液を噴出す角度は、前記洗浄槽内に配置されたウエハ表面に対する法線を含む鉛直面内で鉛直方向に対して5°〜45°の範囲内の角度であることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記整流板では、前記複数のウエハの各々で、前記複数の洗浄液噴出し孔からの洗浄液の液流が2以上の箇所に吹き付けられるように、該複数の洗浄液噴出し孔が配列されていることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記ウエハキャリアは、収容される複数のウエハの両側に位置し、該ウエハを挟んで相対向する一対の側壁を有し、該一対の側壁の下端部は、互いの離間距離が該ウエハの幅より狭くなるように該内側に傾斜した構造となっており、該複数のウエハは、該一対の側壁の下端部と当接して該ウエハキャリア内に保持されており、該洗浄液噴出し孔から噴出された液流は、該複数のウエハの各々の、該ウエハキャリアの側壁の下端部と当接する部分より下側の部分に吹き付けられることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記整流板では、前記ウエハキャリア内に収容した複数のウエハの各々に対して、少なくとも1列の洗浄液噴出し孔から噴出された洗浄液の液流が吹き付けられるように、前記複数の洗浄液噴出し孔が、該複数のウエハの配列に合わせて配置されており、各列の洗浄液噴出し孔の個数は同一であることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記ウエハは、厚さが400μm以下の薄膜ウエハであることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記洗浄液噴出し孔は、前記整流板を構成する上面壁に斜めに形成した断面円形の貫通孔であり、1mm〜3mmの範囲の直径を有していることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記洗浄液噴出し孔は、前記整流板を構成する上面壁に斜めに形成したスリット状の貫通孔であり、該スリット状の貫通孔は、前記複数のウエハの各々毎に配置され、該ウエハの表面に沿った方向に延びていることが好ましい。
本発明は、上記洗浄装置において、前記洗浄液は薬液あるいは純水であることが好ましい。
本発明に係る洗浄方法は、複数のウエハを所定の間隔を空けて立てた状態で収容したウエハキャリアを、該複数のウエハとともに洗浄槽に満たされた洗浄液に浸漬して該ウエハを洗浄する洗浄方法であって、該洗浄槽の底部に配置された整流板に形成した洗浄液噴出し孔から洗浄液を、該ウエハキャリア内に収容した複数のウエハが全て該洗浄液の液面に対して同じ方向に傾くように該ウエハの表面に吹き付けるものであり、そのことにより上記目的が達成される。
次に作用について説明する。
本発明においては、複数のウエハを収容するウエハキャリアと、洗浄液を溜める洗浄槽とを備えた洗浄装置において、該洗浄槽の底部に配置され、該洗浄液を噴出す洗浄液噴出し孔を形成した整流板を備え、該整流板を、該ウエハキャリア内に収容した複数のウエハが全て、該洗浄液の液面に対して同じ方向に傾くように、該洗浄液を該ウエハの表面に吹き付ける複数の洗浄液噴出し孔を有する構造としたので、ウエハキャリア内のキャリア溝内に保持されているウエハは、その下端部に整流板の洗浄液噴出し孔から噴出された洗浄液の液流が吹き付けられることとなる。これにより薄膜ウエハはすべて洗浄中、自動的にウエハキャリア内で同じ側に傾斜した状態となり、全ての薄膜ウエハが平行になる。また、洗浄液を薄膜ウエハに対して吹き付けることにより、洗浄効果の向上も期待できる。
このため、通常のウエハを収容するウエハキャリアに通常より薄い薄膜ウエハを収容した場合でも、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げる必要がなく、また、ウエハキャリアを洗浄槽内で傾けて配置する必要がない。
このように、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げる必要がないことから、ウエハキャリアにウエハを収容する処理を手動補助する必要がなく、洗浄処理を清浄でしかも作業効率の高いものとできる。
また、ウエハキャリアを洗浄槽内で傾けて配置する必要がないことから、洗浄槽内には、ウエハキャリアを水平配置することができ、ウエハキャリアを傾けて配置することにともなう洗浄槽に溜める洗浄液の量が増え、半導体装置の製造コストの増大などにつながるといった問題も生じることがない。
また、本発明では、複数のウエハの各々で、複数の洗浄液噴出し孔からの洗浄液の液流が2以上の箇所に吹き付けられるように、洗浄液噴出し孔が配列されているので、薄膜ウエハが洗浄液の液流から一箇所に圧力を受けてねじれたりする方向にモーメントが発生するのを回避できる。
また、本発明では、整流板では、ウエハキャリア内に収容した複数のウエハの各々に対して、少なくとも1列の洗浄液噴出し孔から噴出された洗浄液の液流が吹き付けられるように、複数の洗浄液噴出し孔が、複数のウエハの配列に合わせて配置されており、各列の洗浄液噴出し孔の個数は同一であるので、個々の薄膜ウエハに確実にかつ均等に洗浄液の液流を吹き付けることができ、効果的に薄膜ウエハの傾きを揃えることができる。
以上のように、本発明によれば、通常のウエハを収容するウエハキャリアに通常より薄い薄膜ウエハを収容した場合でも、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを回避でき、しかも、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げたり、ウエハキャリアを洗浄槽内で傾けて配置したりする必要のない洗浄装置および洗浄方法を実現することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による洗浄装置を説明する図であり、図1(a)および図1(b)はそれぞれこの洗浄装置の断面構造として、この洗浄装置内に配置した半導体ウエハの表面に対して実質的に垂直な断面および平行な断面の構造を示している。
この実施形態1の洗浄装置100は、ウエハの洗浄処理を行う洗浄装置本体100aと、この洗浄装置本体100a内に配置され、複数のウエハを所定の間隔を空けて立てた状態で収容するウエハキャリア120とを有している。ここでは、ウエハキャリア120は通常の厚さを有するウエハWa(図9参照)を収容するように設計されたものであり、この実施形態の洗浄装置100は、このウエハキャリア120を、通常のウエハより薄い薄膜ウエハ(以下、単にウエハともいう。)Wを収容するウエハキャリアとして用いることができるように、従来の洗浄装置における整流板310に代わる洗浄液の整流板110を備えたものである。
まず、洗浄装置本体100aについて説明する。
図2は、本発明の実施形態1による洗浄装置の構造を、この洗浄装置内にウエハキャリアを配置していない状態で示す図であり、図2(a)および図2(b)はそれぞれこの洗浄装置の断面構造として、この洗浄装置内に配置した半導体ウエハの表面に対して実質的に垂直な断面および平行な断面の構造を示している。
洗浄装置本体100aは、洗浄液Lを溜める洗浄槽102と、この洗浄槽102の底面102a上に配置され、洗浄液を均等にウエハキャリア120内へ供給するための整流板110と、この洗浄槽102の下側に洗浄槽102の下端部を囲むように配置され、洗浄槽102の上部開口から溢れた洗浄液を回収する洗浄液回収部材101とを有している。
図3は、本発明の実施形態1による洗浄装置における整流板を説明する図であり、この整流板をその表面側から見た一部破断斜視図(図3(a))、およびこの整流板をその裏面側から見た斜視図(図3(b))である。
この整流板110は、断面円形形状の複数の貫通孔が洗浄液噴出し孔112として形成された整流板上部110aと、この整流板上部110aの各洗浄液噴出し孔112に連通した洗浄液の収容スペース111を形成する整流板下部110bとから構成されており、整流板下部101bには、洗浄液の供給配管103が取り付けられている。
ここで、整流板上部110aと整流板下部110bとは一体構造のものを示しているが、これらは別部材の部品として形成して組み合わせたものであってもよい。また、洗浄液噴出し孔から洗浄液を噴出す角度θは、洗浄槽102内でX方向に配置されたウエハ表面に対する法線を含む鉛直面内で鉛直方向(Y方向)に対して5°〜45°の範囲内の角度としている(図7(b)参照)。例えば、洗浄液噴出し孔112から噴出した洗浄液を薄膜ウエハWに吹き付ける角度が浅すぎると、薄膜ウエハの傾きを揃えるのに十分な回転モーメントが発生せず、一方、洗浄液噴出し孔112から噴出した洗浄液を薄膜ウエハWに吹き付ける角度が厚すぎる(つまり垂直に近い角度)とすると、薄膜ウエハが洗浄液の液流から強い圧力を受け、ウエハキャリア内で振動したり、キャリア溝から外れたりするおそれがあり、また洗浄液を洗浄槽内で循環させたり供給したりする洗浄液供給圧が高まり、洗浄液の循環などの設備の改善(洗浄液供給用のポンプの能力アップ)が必要となるおそれがある。また、洗浄液噴出し孔112は、整流板110の上部110aを構成する上面壁に斜めに形成した断面円形の貫通孔であり、1mm〜3mmの範囲の直径を有し、ウエハ毎に一列に配列され、各ウエハでは2箇所以上で洗浄液が吹き付けられるようになっている。洗浄液噴出し孔の直径は、小さすぎると、洗浄液の供給圧が増大することとなり、洗浄液の循環や供給に用いるポンプの出力を増大させる必要があり、逆に、洗浄液噴出し孔の直径は、小さすぎると、洗浄液噴出し孔から噴出す洗浄液の流速が不十分となり、全ての薄膜ウエハの傾きを揃えることができない恐れがある。また、ここでは、洗浄液噴出し孔112の配置間隔(ウエハ表面に平行な方向の配置間隔)は10mm程度としているが、その2倍以上であっても、あるいはその半分程度であってもよい。また、ウエハの配列方向に平行な方向の洗浄液噴出し孔112の配置間隔は、ウエハキャリアに収容可能なウエハの数と、ウエハの配置間隔とによって決まるが、ウエハ表面に平行な方向の洗浄液噴出し孔112の配置間隔と実質的に同じ程度となっている。但し、洗浄液噴出し孔112の配置はこの実施形態1のものに限定されるものではない。
次に、ウエハキャリアについて説明する。
図4は、本発明の実施形態1による洗浄装置で用いるウエハキャリアの構造を、該ウエハキャリアに半導体ウエハを配置していない状態で示す図であり、図4(a)は、半導体ウエハの配列方向に平行な縦断面の構造を示し、図4(b)は、ウエハ配列方向に垂直な縦断面の構造を示している。
ウエハキャリア120は、図9に示す従来の洗浄装置300におけるものと同一である。
つまり、ウエハキャリア120は外形四角形形状の箱体であり、その上面および下面が開口した構造となっている。このウエハキャリア120の、ウエハ配列方向と平行な相対向する一対の側壁122は、それぞれの下端部122bでは離間距離がウエハWの幅(直径)より狭くなるように内側に傾斜した構造となっており、これらの側壁122の下端部122bにウエハの下部外周端が2点で当接するようになっている。
また、一対の側壁122の下端部122b以外の側面部122aは、平行に配置されており、ウエハキャリア120の、ウエハ配列方向と垂直な相対向する一対の側壁121は平板状の構造となっている。
また、この側壁122の側面部122aから下端部122bに跨って、隣接するウエハを保持するキャリア溝を形成する線状突部(リブ部)123が、通常のウエハ厚さに合わせた間隔で、ウエハの配列方向に沿って複数形成されている。
そして、ウエハ配列方向と垂直な相対向する一対の側壁121と、ウエハ配列方向と平行な相対向する一対の一対の側壁122とにより囲まれた領域がウエハ収容領域となっており、ウエハ収容領域の上端側には上部開口が形成され、ウエハ収容領域の下端側には下部開口124が形成されている。
さらに、ここでは、各ウエハの表面に沿って並ぶ洗浄液噴出し孔112の個数は、ウエハ毎に、言い換えると、隣接する線状突起(リブ部)123により形成されるキャリア溝毎に同程度な数としている。ただし、キャリア溝毎に設ける洗浄液噴出し孔112の個数は、異なっていてもよく、例えば、キャリア溝に沿って配列される洗浄液噴出し孔112は、洗浄液の供給配管103の位置などを考慮して、洗浄液噴出し孔の個数がウエハキャリア120の中央部分より両側端部分で多くなるように配置してもよい。
図5は、本発明の実施形態1による洗浄装置で用いるウエハキャリアの構造を、該ウエハキャリアに半導体ウエハを配置した状態で示す図であり、図5(a)は、半導体ウエハの配列方向に平行な縦断面の構造を示し、図5(b)は、ウエハ配列方向に平行な縦断面の構造を示している。
このような構造のウエハキャリア120では、図5(a)および(b)に示すように、ウエハWをウエハキャリア120内のウエハ収容領域に、ウエハWが隣接するリブ部123により形成されるキャリア溝に保持されるよう収容したとき、ウエハWの下部外周端が、ウエハキャリア120の側壁122の下端部122bと2点で当接して支持されることとなる。なお、図7(b)には、この当接位置Spが示されている。
そして、この実施形態1では、図1に示すように、上述した構造の洗浄装置本体100aの洗浄槽102内に、薄膜ウエハWを収容したウエハキャリア120を、整流板110上に位置するように配置し、その後、洗浄槽102が洗浄液で満たされ、しかも洗浄液の流れができるよう洗浄液を供給配管103から洗浄槽102内に供給することにより、ウエハキャリアに収容されたウエハWは洗浄液Lにより洗浄されることとなる。なお、洗浄槽102から溢れた洗浄液は、洗浄液回収部材101により回収して循環させるか、あるいは破棄する。
次に洗浄装置100を用いてウエハを洗浄する手順について説明する。
図6(a)〜図6(d)は、本発明の実施形態1による洗浄装置で半導体ウエハの洗浄を行う手順を説明する平面図である。
まず、図6(a)に示すように、ウエハWを収容していない空のウエハキャリア120(図4(a)および図4(b))を準備し、図6(b)に示すように、このウエハキャリア120内にウエハWを自動で、つまりウエハをウエハキャリア内に充填する装置を用いて収容する(図5(a)および図5(b))。このとき、ウエハWは、ウエハキャリア120内の、隣接する線状突部(リブ部)123により形成される各キャリア溝内に挿入されて保持されることとなる。ここでウエハWは、通常のウエハの厚さ(625μm)に比べて薄い、厚さが400μm以下の薄膜ウエハである。
次に、このように薄膜ウエハWを収容したウエハキャリア120を、ウエハキャリア120が配置されていない洗浄装置本体100a(図6(c)、図2(a)および図2(b))まで移動させる。なお、図6(c)では、洗浄液回収部材101は省略している。続いて、図6(d)に示すように、このウエハキャリア120を、この洗浄装置本体100aの、予め洗浄液で満たした洗浄槽101内にその整流板110上に位置するように配置する(図1(a)および図1(b)参照)。このとき、洗浄槽102には洗浄液が溜まっておらず、ウエハキャリア120を配置した後、洗浄槽102を洗浄液で満たすようにしてもよい。また、ここでは、洗浄槽102には、1つのウエハキャリアのみ配置するスペースを有するものを示しているが、洗浄槽102は、2つ以上のウエハキャリアを配置可能なスペースを有するものであってもよい。
その後、洗浄装置本体100aの洗浄槽102内に洗浄液をその供給配管103から供給することにより、洗浄槽102内の洗浄液Lが循環あるいは入れ替わり、これによりウエハキャリア120に収容されたウエハWは洗浄液Lにより洗浄されることとなる。
図7は、本発明の実施形態1による洗浄装置の動作を説明する図であり、図7(a)は、この洗浄装置内にウエハキャリアを配置して洗浄液を洗浄槽に供給している状態を示し、図7(b)は、図7(a)に示す状態で、ウエハが一定の方向に傾くメカニズムを示している。
つまり、洗浄装置本体100aの洗浄槽102内に洗浄液Lをその供給配管103から供給することにより、ウエハキャリア120内にキャリア溝内に保持されている薄膜ウエハWは、その下端部に整流板110の洗浄液噴出し孔112から噴出された洗浄液の液流Lfが吹き付けられることとなる。これにより薄膜ウエハWには、その外周下端部の、側壁122の下端部122bと当接する当接点Spの周りに回転モーメントが発生し、これにより薄膜ウエハWは、図7(a)、(b)の紙面では右回転する。これにより薄膜ウエハWはすべて、ウエハキャリア120内で側に傾斜した状態となり、全ての薄膜ウエハWの傾斜方向が揃うこととなり、ウエハの洗浄中に、隣接する薄膜ウエハWが接触するのを回避できる。
このように本実施形態1の洗浄装置では、ウエハキャリア120と、洗浄液の洗浄槽102を含む洗浄装置本体100aとを備え、ウエハキャリア120を複数のウエハWとともに洗浄槽102の洗浄液Lに浸漬した状態でウエハWを洗浄する洗浄装置100において、洗浄槽102の底部に配置された整流板110を、ウエハキャリア120内に収容した複数のウエハWが全て、洗浄液Lの液面に対して同じ方向に傾くように、洗浄液をウエハの表面に吹き付ける複数の洗浄液噴出し孔112を有する構造としたので、ウエハWの洗浄中は、洗浄液をその供給配管103から整流板110に供給することにより、ウエハキャリア120内のキャリア溝内に保持されている薄膜ウエハWは、その下端部に整流板110の洗浄液噴出し孔112から噴出された洗浄液の液流Lfが吹き付けられることとなる。
これにより薄膜ウエハWには、その外周下端部の、側壁122の下端部122bと当接する当接点Spの周りに回転モーメントが発生し、これにより薄膜ウエハWはすべて、自動的にウエハキャリア120内で側に傾斜した状態となり、全ての薄膜ウエハWの傾斜方向が揃うこととなる。
従って、通常のウエハを収容するウエハキャリア120に通常より薄い薄膜ウエハWを収容した場合でも、ウエハキャリア120内でのウエハの配置間隔を広げる必要がなく、また、ウエハキャリア120を洗浄槽102内で傾けて配置する必要がない。
このように、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げる必要がないことから、ウエハキャリアにウエハを収容する処理を手動補助する必要がなく、洗浄処理を清浄でしかも作業性の効率の高いものとできる。
また、ウエハキャリア120を洗浄槽102内で傾けて配置する必要がないことから、洗浄槽102内には、ウエハキャリア120を水平配置することができ、ウエハキャリア120を傾けて配置することに伴う洗浄槽102に溜める洗浄液Lの量が増え、半導体装置の製造コストの増大などにつながるといった問題も生じることがない。
また、本実施形態では、複数のウエハWの各々で、複数の洗浄液噴出し孔112からの洗浄液の液流が2以上の箇所に吹き付けられるように、洗浄液噴出し孔112が配列されているので、ウエハが洗浄液の液流から一箇所に圧力を受けてねじれたりする方向にモーメントが発生するのを回避できる。
また、洗浄液噴出し孔112から洗浄液を薄膜ウエハWに対して斜めに噴出すことにより、薄膜ウエハWに対する洗浄液の圧力が高まり、洗浄効果の向上も期待できる。
さらに、本実施形態1では、整流板110では、ウエハキャリア120内に収容した複数のウエハWの各々に対して、1列の洗浄液噴出し孔112から噴出された洗浄液の液流Lfが吹き付けられるように、複数の洗浄液噴出し孔112が、複数のウエハの配列に合わせて配置されており、各列の洗浄液噴出し孔の個数は同一であるので、個々の薄膜ウエハに確実にかつ均等に洗浄液の液流を当てることができ、効果的に薄膜ウエハの傾きを揃えることができる。
なお、本実施形態1では、ウエハキャリア120内に収容した複数のウエハWの各々に対して、整流板110におけるウエハ表面に平行な1列の洗浄液噴出し孔112から噴出された洗浄液の液流Lfが吹き付けられるようにしているが、各ウエハWに対して、整流板110におけるウエハ表面に平行な2列以上の洗浄液噴出し孔112から噴出された洗浄液の液流Lfが吹き付けられるようにしてもよい。
さらに、本実施形態1では、洗浄液噴出し孔112は、整流板110を構成する上面壁に斜めに形成した断面円形の貫通孔としているが、この貫通孔の断面形状はこれに限定されるものではない。
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2による洗浄装置を説明する図であり、この洗浄装置で用いる整流板をその表面側から見た一部破断斜視図である。
この実施形態2による洗浄装置は、実施形態1の洗浄装置100における整流板110に代わる整流板220を備えたものであり、その他の構成は、実施形態1による洗浄装置100におけるものと同一である。
つまり、この実施形態2の洗浄装置の整流板200は、スリット状の複数の貫通孔が洗浄液噴出し孔212として形成された整流板上部210aと、この整流板上部210aの各洗浄液噴出し孔212に連通した洗浄液の収容スペース211を形成する整流板下部210bとから構成されており、整流板下部210bには、洗浄液の供給配管203が取り付けられている。
ここで、洗浄液噴出し孔212を構成するスリット状の貫通孔212は、複数のウエハWの各々毎に配置され、ウエハの表面に沿った方向に延びている。また、洗浄液噴出し孔212から洗浄液を噴出す角度は、実施形態1と同様に洗浄槽102内に配置されたウエハ表面に対する法線を含む鉛直面内で鉛直方向に対して5°〜45°の範囲内の角度としている。また、洗浄液噴出し孔212のスリット幅は、1mm〜3mmの範囲とし、洗浄液噴出し孔212のウエハ配列方向における配置間隔はウエハの配置間隔に応じた間隔となっている。
このような構成の本実施形態2では、実施形態1の洗浄装置と同様に、ウエハキャリア120と、洗浄液の洗浄槽102を含む洗浄装置本体100aとを備え、該ウエハキャリアを該複数のウエハとともに該洗浄槽の洗浄液に浸漬した状態で該ウエハを洗浄する洗浄装置100において、洗浄槽102の底部に配置された整流板210を、ウエハキャリア内に収容した複数のウエハが全て、該洗浄液の液面に対して同じ方向に傾くように、該洗浄液を該ウエハの表面に吹き付ける複数のスリット状の洗浄液噴出し孔2112を有する構造としたので、通常のウエハを収容するウエハキャリアに通常より薄い薄膜ウエハを収容した場合でも、ウエハの洗浄処理中にウエハ同士が接触するのを回避でき、しかも、ウエハキャリア内でのウエハの配置間隔を広げたり、ウエハキャリアを洗浄槽内で傾けて配置したりする必要のない洗浄装置を実現することができる。
なお、本実施形態2では、整流板220を、ウエハキャリア内に収容した複数のウエハWの各々に対して1つの洗浄液噴出し孔212が対向する構成としているが、各ウエハに2以上の洗浄液噴出し孔212が対向し、各ウエハに2以上の洗浄液噴出し孔212から噴出された洗浄液の液流が吹き付けられるようにしてもよい。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。