JP2014016531A - 共焦点顕微装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シングルアパーチャーと同レベルの空間分解能を維持することができて、試料の複数点からの光のそれぞれのスペクトルを一度に取得することができ、その結果、試料の分布測定を高分解能かつ高速に実行できる共焦点顕微装置を提供すること。
【解決手段】試料Sの測定領域にライン状ビームを照射して測定領域からのラマン光のスペクトル情報を取得する共焦点顕微装置であって、測定領域にライン状ビームを照射するライン照射光源20と、測定領域内に焦点面を合わせて配置された対物レンズ32と、対物レンズ32により集光された光を結像する結像レンズ34と、結像レンズ34の結像面上に配置された複数の開孔38を有するマルチアパーチャー36と、マルチアパーチャー36を通過した光を検出して開孔38毎の通過光のスペクトル情報を取得するスペクトル取得手段50,60とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は共焦点顕微装置、特に試料の測定領域内の複数点からの光に基づいてそれぞれのスペクトルを取得することにより、成分等の分布測定を行うことができる装置の改良に関し、例えば、ラマン分光装置、蛍光分光装置、赤外分光装置などが適用範囲に入る。
従来、共焦点光学系の顕微装置を用いて、試料の1点にレーザー光をピンポイントで照射し、その1点からのラマン光または蛍光のスペクトルを高い空間分解能で得ることが行なわれてきた。具体的には、一対の対物レンズと結像レンズ、および、シングルアパーチャーを用いて、対物レンズで試料からの光を集光して、結像レンズによりその像を形成し、結像位置にシングルアパーチャーの開孔部を合わせる。この際、対物レンズの焦点以外からの光はアパーチャーで遮断されることから、アパーチャーを通過する光を検出することによって高い空間分解能でその光のスペクトルを測定することができる(特許文献1)。
これに対して、測定時間の短縮という観点から、レーザー光をライン状に照射して試料の広い面積からラマン光を一度に発生させて、細長いスリットからなるスリットアパーチャーを用いることにより、ライン状に発生したラマン光を複数本のスペクトルとして測定する装置も開発されている(非特許文献1)。
特開平9−72848号公報(図4)
"RAMAN−11"、11頁、[online]、ナノフォトン株式会社、[平成24年5月16日検索]、インターネット〈URL:http://www.nanophoton.jp/products/raman-11/img/raman11.pdf〉
しかし、非特許文献1の測定装置は1つの細長いスリット孔からなるスリットアパーチャーを用いるので、空間分解能がある程度犠牲にならざるを得ない。試料の微小部位からのラマン光等を測定する際に、シングルアパーチャーであれば、対物レンズの光軸に直交する面において高い空間分解能が得られ、さらに、その光軸方向においても高い空間分解能での測定が可能になる。これに対してスリットアパーチャーの場合、そのスリット孔の幅方向と長さ方向とで寸法が異なるので、スリット孔の幅方向においてはシングルアパーチャーと同レベルの空間分解能が得られるものの、スリット孔の長さ方向においては空間分解能が維持されない。
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題はシングルアパーチャーと同レベルの空間分解能を維持することができ、かつ、試料の複数点からの光のそれぞれのスペクトルを一度に取得することができ、その結果、試料の所定の測定領域についての分布測定を高分解能かつ高速に実行できる共焦点顕微装置を提供することにある。
前記目的を達成するために本発明にかかる共焦点顕微装置は、
試料の測定領域に光を照射して前記測定領域からの光のスペクトル情報を取得する共焦点顕微装置であって、
前記測定領域に光を照射する試料照射手段と、
前記測定領域内に焦点面を合わせて配置された対物レンズと、
前記対物レンズにより集光された光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの結像面上に配置された複数のアパーチャーを有するマルチアパーチャーと、
前記マルチアパーチャーを通過した光を検出してアパーチャー毎の通過光のスペクトル情報を取得するスペクトル取得手段と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、対物レンズと結像レンズおよびマルチアパーチャーによる多点の共焦点光学系が構成されるので、対物レンズの焦点(共焦点とも呼ぶ)にある試料の微小部位からの光は、対物レンズと結像レンズを介して、結像レンズの焦点で結像し、そこに配置されたアパーチャーを通過する。この際、そのアパーチャーが試料の微小部位以外からの光を遮断するので、微小部位からの光を高い空間分解能で検出することができる。同様に、対物レンズの同一焦点面上にある他の微小部位(焦点を除く)からの光も、多点の共焦点光学系によって、この微小部位に対応する結像レンズの焦点面上(結像レンズの焦点を除く)で結像する。その結像位置に他のアパーチャーがあればそれを通過して、高い空間分解能で検出される。
このように、マルチアパーチャーが複数のアパーチャーを有することによって、各アパーチャーと1対1で対応する試料の微小部位からの光が、それぞれ対応するアパーチャー位置で結像することになり、アパーチャーの数に対応する試料の複数の微小部位からの光が、それぞれシングルアパーチャーと同じ空間分解能で検出されることになる。これらのアパーチャーを通過した光をそれぞれ検出して、各アパーチャーの通過光のスペクトル情報を得て、コンピューターにて画像として再構成することにより、試料の所定の測定領域についての分布測定を高分解能かつ高速に実行することができる。なお、必ずしも結像レンズの焦点位置にアパーチャーが配置されている必要は無く、結像レンズの焦点面上に複数のアパーチャーが配置されていれば足りる。
また本発明において、前記マルチアパーチャーの複数のアパーチャーは線状に配列されており、前記スペクトル取得手段は、
前記複数のアパーチャーの各通過光を光学的に平行光束にする平行光生成部と、
前記平行光束を波長ごとに分散する分散部と、
前記分散された光を受光する多素子型の2次元アレイ検出部と、を有し、
前記分散された光の波長ごとの光路を含む面を分散面とすると、前記複数のアパーチャーの通過光ごとに生成される平行光束の分散面が互いに平行となるように、前記マルチアパーチャーに対する前記分散部の姿勢が定められていることが好適である。
このような構成によれば、線状配列された複数のアパーチャーの通過光が、平行光生成部で互いに平行な平行光束になって分散部に入射する。そして分散部で分散されたそれぞれの光束の分散面が、互いに平行になる状態で、2次元アレイ検出部に受光される。その結果、各アパーチャーの通過光は、それぞれ高い空間解像度を保ったまま、他のアパーチャーの通過光から独立した状態で、2次元アレイ検出部に受光され、波長ごとの光強度が検出されることになる。すなわち、複数のアパーチャーに対応する複数のスペクトル情報が、スペクトルの質が落ちることなく一度に出力され、試料の複数の微小部位からの光のスペクトル情報を高い品質で、まとめて取得することができる。
また本発明において、さらに、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点に対して、これら複数点の配列方向に直交する方向に前記試料を移動する可動ステージを備えることが好適である。
このような構成によれば、複数のアパーチャーを線状配列したマルチアパーチャーおよび2次元アレイ検出部を用いれば、線状に分布する試料の複数点からの光のスペクトル情報を取得できるので、さらに、可動ステージによる試料の移動位置ごとにスペクトル情報を取得することによって、面単位でスペクトル情報を取得することができる。
また本発明において、前記試料照射手段は、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点を少なくとも含む線状の測定領域を照射する線状照射手段であることが好適である。あるいは、前記試料照射手段は、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点からなる前記測定領域をそれぞれ点状に照射する多点照射手段であることが好適である。
ここで、前記多点照射手段は、例えば、複数の点光源を有する多点光源と、前記複数の点光源からの光をそれぞれ平行光束にする平行光生成レンズと、前記対物レンズと前記結像レンズの間に配置された光束分割素子と、を有し、前記光束分割素子は、前記平行光生成レンズからの各平行光束を反射して前記対物レンズ側に反射するとともに、前記対物レンズからの光の一部を透過するものであることが好ましい。
これらの構成によれば、光源からの光ビームを使って試料を線状に照射(いわゆるライン照射)すること、または試料を多点照射することができるので、複数のアパーチャーに対応する試料の複数点が線状に分布している場合には、線状照射または多点照射によってこれらの複数点を効率的に照射することができる。その結果、光ビームの利用効率が高めるだけでなく、必要以上に試料に光ビームを照射して試料を損傷してしまうことを抑制することができる。
以上説明したように本発明に係る共焦点顕微装置によれば、複数のアパーチャーを有するマルチアパーチャーを用いて、これらのアパーチャーの通過光に基づいてスペクトル情報を取得することとしたので、各アパーチャーの通過光に基づくスペクトル情報についてはシングルアパーチャーで取得した場合と同レベルの空間分解能が維持されていて、かつ、試料の複数点からの光のスペクトル情報を一度に取得することができる。その結果、試料の所定の測定領域についての分布測定を高分解能かつ高速に実行することができる。
第1実施形態に係る共焦点顕微装置の概略的な全体構成の説明図である。 前記共焦点顕微装置に用いる線状照射手段の各種機構の説明図である。 前記共焦点顕微装置で高い空間分解能が可能となることの説明図。 前記共焦点顕微装置で用いる分光器とCCD検出器の概略構成図である。 前記共焦点顕微装置で用いるCCD検出器のビニングの方法の説明図。 第2実施形態に係る共焦点顕微装置の概略的な全体構成の説明図である。 前記共焦点顕微装置に用いるマルチ光源の具体的構成例の説明図である。 前記共焦点顕微装置で用いるマルチアパーチャーの変形例を示す図。 前記実施形態に係る共焦点顕微装置の全体構成の変形例を示す図である。
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
第一実施形態
図1に、本発明における共焦点顕微装置の一実施形態である顕微レーザーラマン分光光度計(以下、ラマン分光装置10と呼ぶ)の概略構成図を記載する。そのラマン分光装置10は、試料Sにレーザー光を照射したときに当該試料Sからのラマン散乱光(ラマン光)を集光してラマンスペクトルを取得するための装置であり、主要構成として、線状照射手段(ライン照射光源20)と、共焦点光学手段30と、可動ステージ40と、スペクトル取得手段としての分光器50およびCCD検出器60とを備えている。
まず、共焦点光学手段30について説明する。共焦点光学手段30は、一対のレンズ(対物レンズ32と結像レンズ34)およびマルチアパーチャー36から構成される。対物レンズ32は、試料Sの測定領域内に焦点面を合わせて配置され、試料Sにライン照射光源20からのライン状ビームを集光させる役目と、照射された試料Sからのラマン光を集光する役目がある。結像レンズ34は、この対物レンズ32と同じ光軸上に配置され、対物レンズ32により集光されたラマン光を後段のマルチアパーチャー36の位置に結像させる。マルチアパーチャー36は複数の開孔(アパーチャー)38を有しており、これら複数の開孔38は結像レンズ34の結像面上に線状に配列されている(図中のX方向)。個々の開孔38の形状は、測定に応じて円形、楕円形、四角形などから適宜選択できるようになっている。
次に、ライン照射光源20は、ビーム整形部22、コリメータレンズ(平行光生成レンズ)24、ビームスプリッタBS(光束分割部)を有する。ビームスプリッタBSに代えてダイクロイックミラーDMを用いてもよい。ビーム整形部22はライン状ビームを出射する。コリメータレンズ24は、その焦点位置がビーム整形部22の出射開口26に位置するように設けられ、出射開口26からのライン状ビームを平行光にして、ビームスプリッタBSに入射させる。ビームスプリッタBSは、コリメータレンズ24からの各平行光束を対物レンズ32に向けて反射するとともに、対物レンズ32からの光の一部を透過する。このビームスプリッタBSは、試料にライン状ビームを効率よく当てて、かつ、共焦点光学部30が試料からのラマン光を効率よく集光できるようにするためのもので、一対のレンズ(対物レンズ32と結像レンズ34)間に設けられ、ビーム整形部22からのビームの入射面が一対のレンズの光軸と45度で交わる姿勢になっている。
このようなライン照射光源20によって、ビーム整形部22からのライン状ビームは、まず、コリメータレンズ24で平行光とされてビームスプリッタBSを反射する。そして、対物レンズ32を介して試料を照射する。コリメータレンズ24と対物レンズ32の組合せによって、ビーム整形部22の出射開口26からのライン状ビームは、試料においてライン状の像Iを形成することになる。本発明では、この照射光による結像Iの領域を指して試料の測定領域と呼ぶものとする。
可動ステージ40は、X−Y平面に平行な載置面を有し、載置面に置かれた試料SをY方向(紙面に垂直な方向)に移動させる。なお、可動ステージ40の移動方向は少なくともY方向を含むものであればよく、X−Yの2軸ステージでも、X−Y−Zの3軸ステージでもよい。マルチアパーチャー36の複数の開孔38の配列方向がX方向であるので、それぞれの開孔38に対応する試料Sの測定領域の複数点(例えばA〜Cで示す)の配列方向もX方向になっている。可動ステージ40を使って試料をY方向に移動させれば、移動前後で複数点A〜Cの配列がY方向にオフセットされることになるので、試料を面単位で効率的に分布測定(マッピング測定)することができる。
図2を用いて、ビーム整形部22の具体的な構成について、同図(A)のビーム拡張型と、同図(B)のビーム走査型とに分けて説明する。ビーム拡張型では、シリンドリカルレンズ22aなどを利用して、ビームのスポット状の断面をライン状に拡張させてから、出射開口26より放出するタイプである。出射開口26から放出されるビームの断面形状はZ方向に伸びるライン状となっているので、試料Sにおける結像IはX方向に伸びるライン状となる。また、同図(B)のビーム走査型では、スポット状の断面のビーム自体をそのまま放出するが、ガルバノミラー22bなどを駆動させることにより、出射開口内でのビームの放出位置を変化させて、ビームの光路を平行に移動させるタイプである。ビーム整形部22からのスポット状のビームは、前方のコリメータレンズ24の入射面を線状(Z方向)に走査するので、試料Sにおいて形成されるビームの像についても線状(X方向)に伸びた像Iになる。なお、図1において、照射ビームの結像Iが線状に延びる方向と、マルチアパーチャー36の複数の開孔38の配列方向とは一致している。
ライン照射光源20によりビームが照射される線状の領域(測定領域)からのラマン光について詳しく説明する。まず、図3は、マルチアパーチャー36を通過するラマン光について従来のスリットアパーチャー136との違いを説明する図である。
試料の測定領域からのラマン光は、共焦点光学手段30によって、アパーチャーの位置で結像する。同図(A)、(B)では、試料の測定領域が共通していて、スリットアパーチャー136であっても、マルチアパーチャー36であっても、ラマン光の像Iの大きさは同じとする。ここで、アパーチャーの開孔38,138を太線で示す。孔形状は、スリットアパーチャー136の場合は長方形で、マルチアパーチャー36の場合は円形とする。また、図1の測定領域内の点A〜Cで示した試料の微小部位に対応する各アパーチャー36,136での領域を、塗り潰した円形A〜Cで示す。各微小部位からのラマン光は回折するため、アパーチャー36,136でのラマン光の結像に干渉(エアリーディスク)が生じる。図3には、回折によってラマン光の結像が拡張していることを、ラマン光の強度分布(ピーク形状)で示す。例えば、ピーク波形AXは、試料の微小部位Aから発生したラマン光がアパーチャーで結像した際のX方向の光強度分布を示し、同様に、ピーク波形AYはY方向の光強度分布を示す。試料の微小部位Aは開孔38,138のサイズよりも小さいが、その微小部位Aからのラマン光のアパーチャー位置での結像Iは、開孔38,138のサイズよりも拡張されていることを模式的に表わした。
同図(A)のスリットアパーチャー136の場合、Y方向はスリットの幅方向であるから、開孔138によるラマン光の通過領域は狭く、開孔138を通過するラマン光を検出することによって、Y方向については高い空間分解能が得られる。しかし、X方向はスリットの長手方向であるから、開孔138によるラマン光の通過領域は広くなってしまい、例えばピーク波形AXにピーク波形Bxの一部が重なっている状態のまま開孔138を通過してしまう。このようなクロストークのある通過光を検出してしまうため、X方向についての空間分解能は低い。
これに対して、同図(B)の本発明のマルチアパーチャー36の場合、円形の開孔38の直径と、スリット開孔138の幅とが等しいので、Y方向については同じレベルの高い空間分解能が得られる。X方向については、マルチアパーチャー36の個々の開孔38が各ピーク波形AX〜CXの中心付近だけを通過させて、クロストークが生じている部分のラマン光を通過させないので、X方向においても高い空間分解能が得られる。開孔38を通過したラマン光の強度分布をピーク波形A’X〜C’Xで示した。
図4に、マルチアパーチャー36を通過したラマン光が、分光器50によって分光され、CCD検出器60によって波長ごとに光強度が検出されるまでの流れの一例を記載した。
分光器50は、公知の分散型分光器を利用できる。従来の分光器では入射光の取り込み口に、細長い孔からなる入射スリットを用いる場合が多い。しかし、本実施形態においては、分光器50の入射光の取り込み口に、上述のマルチアパーチャー36を使用するとよい。分光器50は、マルチアパーチャー36の複数の開孔38を通過した複数の光束を互いに平行にする前段ミラー(平行光生成部)52と、この前段ミラー52からの複数の平行光束を回折する回折格子(分散部)54と、回折格子54からの回折光を後段のCCD検出器60において結像させる後段ミラー(結像部)56とを有する。
ここで、回折格子54で分散された光の波長ごとの光路を含む面を分散面とする。マルチアパーチャー36の複数の開孔38の各通過光によって形成される複数の分散面が複数の開孔38の配列方向に直交するように、マルチアパーチャー36と回折格子54の位置関係が定められている。それぞれの開孔38を通過したラマン光は、回折格子54によってそれぞれ波長ごとの分散光の状態になり、後段ミラー56により二次元アレイ検出部であるCCD検出器60の受光面で結像する。複数の開孔38の配列方向(X方向)に対して、各ラマン光の分散面(YZ面)が直交関係にあるので、CCD検出器60の受光面への入射の際に、隣接する通過光の分散面同士が干渉し合うことなく、それぞれ独立状態で受光されることになる。図4の受光面上にて太線で囲んだ素子列(例えば60a)から、1本分のスペクトル線が検出される。結果として、CCD検出器60はマルチアパーチャー36の開孔38毎の通過光のスペクトル情報をスペクトルの質を落とすことなく取得することができる。
以降、CCD検出器60に関して、素子列を幾つかのトラックに分けて1回の露光処理で複数本のスペクトル情報をまとめて取得する技術について概要を説明する。
<トラック分け>
図5(A)のようにCCD検出器60の受光面と前述の各ラマン光の分散面との交線近傍に並んでいる素子列によって、1本分のスペクトル情報が検出される。同図の場合、4行分の素子列を1つのトラックとして、4行ごとにトラックを区切っている。従って、受光面は、上記の受光面と分散面の交線ごとに複数のトラックに区分され、同図(B)のようにトラックごとにスペクトル情報を取得する。
<ビニング処理>
CCD検出器60は、受光面全体でラマン光を一斉に受光(露光)した後、露光を止めて、トラック単位でビニング処理を実行する。ビニング処理とは、いくつかの素子を1区画の素子群とみなしてその区画にある素子の電荷をまとめて読み出す処理のことであり、実質的に電荷を読み出す素子の総数が少なくなるので、フレームレートが向上する。特に、微弱光であるラマン光の検出においては、複数画素に蓄積された電荷をまとめて読み出すので好適である。図5(A)に示した露光状態のイメージのように、Y方向の素子列を4列ごとにトラックを区切った場合、その4列分の電荷をビニング処理すればよい。マルチアパーチャー36の開孔38の数が変更された場合は、開孔38の数に合わせて受光面のトラックの区切り方を変えてビニング処理を実行するとよい。4列ごとのビニング処理で1本分のスペクトル情報が得られるので、全てのトラックについてビニング処理を完了すれば、同時に複数本のスペクトル情報を取得することができる。
本実施形態によれば、マルチアパーチャー36が複数の開孔38を有することによって、各開孔38と1対1で対応する試料Sの微小部位からの光が、その対応する開孔38の位置で結像することになり、開孔38の数に対応する試料Sの複数の微小部位からの光が、それぞれシングルアパーチャーと同じ空間分解能で検出されることになる。これらの開孔38を通過した光をそれぞれ検出して、各通過光のスペクトル情報を得て、コンピューターにて画像として再構成することにより、試料Sの所定の測定領域についての分布測定を高分解能かつ高速に実行することができる。
また、線状配列された複数の開孔38の通過光が、複数の開孔38の配列方向とは直交する方向にそれぞれ分散され、CCD検出器60により分散光が波長ごとに検出される。その結果、各開孔38の通過光は、それぞれ高い空間解像度を保ったまま、他の開孔38の通過光から独立してCCD検出器60に受光され、複数の開孔38に対応する複数のスペクトル情報となってまとめて出力されることになる。よって、線状配列された複数の開孔38に対応する試料Sの複数の微小部位からの光のスペクトル情報をまとめて、スペクトルの質を落とすことなく取得することができる。
第二実施形態
図6に、本発明における共焦点顕微装置の第二の実施形態であるラマン分光装置210の概略構成図を記載する。同図において、ラマン分光装置210は、前述の第一実施形態のラマン分光装置10に対して、試料照射手段の構成が大きく相違するもので、その他の構成は略同様である。
試料照射手段としてマルチ光源(多点照射手段)220を使用する。マルチ光源220は、出射開口から同時に複数のスポット状ビームを出射する。例えば、試料Sの複数点が、マルチアパーチャー236の複数の開孔238に対応している点である場合、試料Sの複数点にだけスポット状ビームを照射することができる。マルチ光源220は、複数の点光源を有する多点光源222と、複数の点光源からの光をそれぞれ平行光束にするコリメータレンズ(平行光生成レンズ)224と、一対のレンズ(対物レンズ232と結像レンズ234)の間に配置された光束分割素子(ビームスプリッタBSまたはダイクロイックミラーDM)と、を有する。図6には、複数の点光源からの光束によって試料で結ばれた複数の像Iを示す。
多点光源222として図7(A)左に示すようなバンドルファイバー222aを利用してもよい。バンドルファイバー222aは複数の光ファイバーを束ねたものであるが、各光ファイバーの端面をマルチ光源220の複数の点光源として配列することで、各光ファイバーの端面から放射されるビームがコリメートレンズ224で平行光束にされ、BS、対物レンズ232を介して、試料Sの複数点で結像する。図7(A)右には、光源が円形断面である場合に、マルチアパーチャー236に結像するラマン光を示す。図中の太線で描いた円形Iが、ラマン光の結像であり、その内部の塗り潰した円形がアパーチャーの開孔238である。
図8(A)左に示すような偏光保持ファイバーを用いたバンドルファイバー222bでもよい。この場合は各光ファイバーの断面形状が楕円形になる。図8(A)右には、光源が楕円形断面である場合に、マルチアパーチャー236に結像するラマン光を示す。図中の太線で描いた楕円形Iが、ラマン光の結像であり、その内部の塗り潰した楕円形がアパーチャーの開孔238である。
本実施形態によれば、光源からの光ビームを使って試料を多点照射することができるので、複数のアパーチャーに対応する試料の複数点が線状に分布している場合には、多点照射によってこれらの複数点を効率的に照射することができる。その結果、光ビームの利用効率が高めるだけでなく、必要以上に試料に光ビームを照射して試料を損傷してしまうことを抑制することができる。
なお、本発明の共焦点顕微装置は、試料Sからのラマン光のスペクトル情報を取得する装置に限られず、試料Sからの蛍光を集光して蛍光スペクトルを取得する蛍光分光光度計にも同様に適用できる。
また、本発明において試料照射手段は、赤外光源からの光を干渉計で干渉波の状態にした上で、干渉計からの赤外干渉波を試料の測定領域に照射するものでもよい。この試料照射手段を用いれば、本発明の共焦点顕微装置を赤外光のマルチチャンネル検出器を用いた赤外分光光度計として利用できる。
また、図5には、マルチアパーチャーの変形例を示す。同図(A)のように楕円形の開孔338を長手方向に2つ配列したマルチアパーチャー336でもよく、同図(B)のように正方形の開孔438を線状に配列したマルチアパーチャー436でもよい。測定内容に応じて、マルチアパーチャーの開口部の数を任意に選択するとよい。同じ測定内容であっても、マルチアパーチャーの開口部の数を増減させることによって、超高速測定モード(開孔数が少ない)から高空間分解能測定モード(開孔数が多い)までを多段階にモード切替できるようにしてもよい。様々なバリエーションでの測定を実施することができる。
また、図9に示すように、光路上の複数位置にアパーチャー536,538を配置することによって、装置の調整を容易にすることができる。同図の位置Aにスリットアパーチャー538を配置し、位置Bにマルチアパーチャー536を配置する。この場合、少なくとも分光器の入口である位置Bには、本発明のマルチアパーチャー536を配置する。位置Aにも、マルチアパーチャーを配置しても構わない。
10 顕微レーザーラマン分光光度計(共焦点顕微装置)
20 ライン照射光源(線状照射手段)
22 ビーム整形部
24 コリメータレンズ(平行光生成レンズ)
26 出射開口
30 共焦点光学手段
32 対物レンズ
34 結像レンズ
36 マルチアパーチャー
38 開孔部
40 可動ステージ
50 分光器
52 前段ミラー(平行光生成部)
54 回折格子(分散部)
56 後段ミラー(結像部)
60 CCD検出器(2次元アレイ検出部)
220 マルチ光源(多点照射手段)
222 多点光源
224 コリメータレンズ(平行光生成レンズ)
236 マルチアパーチャー
238 開孔部
BS ビームスプリッタ(光束分割部)
DM ダイクロイックミラー(光束分割部)
S 試料

Claims (6)

  1. 試料の測定領域に光を照射して前記測定領域からの光のスペクトル情報を取得する共焦点顕微装置であって、
    前記測定領域に光を照射する試料照射手段と、
    前記測定領域内に焦点面を合わせて配置された対物レンズと、
    前記対物レンズにより集光された光を結像する結像レンズと、
    前記結像レンズの結像面上に配置された複数のアパーチャーを有するマルチアパーチャーと、
    前記マルチアパーチャーを通過した光を検出してアパーチャー毎の通過光のスペクトル情報を取得するスペクトル取得手段と、を備えることを特徴とする共焦点顕微装置。
  2. 請求項1記載の共焦点顕微装置において、
    前記マルチアパーチャーの複数のアパーチャーは線状に配列されており、
    前記スペクトル取得手段は、
    前記複数のアパーチャーの各通過光を光学的に平行光束にする平行光生成部と、
    前記平行光束を波長ごとに分散する分散部と、
    前記分散された光を受光する多素子型の2次元アレイ検出部と、を有し、
    前記分散された光の波長ごとの光路を含む面を分散面とすると、前記複数のアパーチャーの通過光ごとに生成される平行光束の前記分散面が互いに平行となるように、前記マルチアパーチャーに対する前記分散部の姿勢が定められていることを特徴とする共焦点顕微装置。
  3. 請求項2記載の共焦点顕微装置において、さらに、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点に対して、これら複数点の配列方向に直交する方向に前記試料を移動する可動ステージを備えることを特徴とする共焦点顕微装置。
  4. 請求項2または3記載の共焦点顕微装置において、前記試料照射手段は、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点を少なくとも含む線状の前記測定領域を照射する線状照射手段であることを特徴とする共焦点顕微装置。
  5. 請求項2または3記載の共焦点顕微装置において、前記試料照射手段は、前記線状に配列された複数のアパーチャーに対応する前記試料の複数点からなる前記測定領域をそれぞれ点状に照射する多点照射手段であることを特徴とする共焦点顕微装置。
  6. 請求項5記載の共焦点顕微装置において、前記多点照射手段は、複数の点光源を有する多点光源と、前記複数の点光源からの光をそれぞれ平行光束にする平行光生成レンズと、前記対物レンズと前記結像レンズの間に配置された光束分割素子と、を有し、
    前記光束分割素子は、前記平行光生成レンズからの各平行光束を反射して前記対物レンズ側に反射するとともに、前記対物レンズからの光の一部を透過するものであることを特徴とする共焦点顕微装置。
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