JP2014015549A - InP半導体微粒子の製造方法 - Google Patents

InP半導体微粒子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014015549A
JP2014015549A JP2012154658A JP2012154658A JP2014015549A JP 2014015549 A JP2014015549 A JP 2014015549A JP 2012154658 A JP2012154658 A JP 2012154658A JP 2012154658 A JP2012154658 A JP 2012154658A JP 2014015549 A JP2014015549 A JP 2014015549A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
semiconductor fine
fine particles
inp semiconductor
phosphorus source
indium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012154658A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroyuki Sudo
裕之 須藤
Itaru Kamiya
格 神谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Gauken
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Gauken
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Gauken filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2012154658A priority Critical patent/JP2014015549A/ja
Publication of JP2014015549A publication Critical patent/JP2014015549A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Luminescent Compositions (AREA)

Abstract

【課題】大気圧下又は大気圧に近い圧力条件下で実施できるInP半導体微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】インジウム源を含む溶液、及びリン源をそれぞれ準備する準備工程、並びに、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度の前記溶液に、前記リン源を加えることにより、InP半導体微粒子を合成する合成工程、を有することを特徴とする、InP半導体微粒子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、大気圧下又は大気圧に近い圧力条件下で実施できるInP半導体微粒子の製造方法に関する。
量子ドットへの応用が期待される半導体微粒子として、これまでにII−VI族半導体微粒子や、III−V族半導体微粒子等が知られている。これらの半導体微粒子は主に溶液法によって作製され、新規な発光材料としてこれまでにも盛んに研究されている。
半導体微粒子の粒径は、数ナノメートルから十数ナノメートル程度である。このようなナノスケールの粒子は、いわゆる量子サイズ効果により、一般に粒径が小さくなるほどバンドギャップが大きくなり、紫外領域や近紫外領域等の短波長領域における発光を示す。このような半導体微粒子特有の光学特性を活かすべく、圧電素子、電子デバイス、発光素子、レーザー等、さまざまなデバイスへの応用が研究開発されている。
III−V族半導体微粒子の例として、InP半導体微粒子が挙げられる。InP半導体微粒子に関する従来の知見から、当該InP半導体微粒子の表面に存在するリン原子が発光効率の著しい低下を引き起こす要因の1つであることが知られている。
このような発光効率低下の要因を抑制し、従来よりも発光効率を向上させることを目的とした技術として、特許文献1には、インジウム等のIII族金属元素、及び、リン等のV族元素を有するIII−V族化合物の半導体微結晶、並びに、アミノ基を備えるIII−V族化合物の半導体微粒子であって、前記半導体微結晶の表面のV族元素と、所定の分子骨格を有する前記アミノ基の窒素元素とが結合してなるIII−V族化合物の半導体微粒子の技術が開示されている。
特開2009−019067号公報
特許文献1の[0069]には、ホットソープ法においてオートクレーブを用い、高圧条件下にて半導体微粒子を合成することが好ましい旨が記載されている。しかし、このような高圧条件下における反応は一般に実用化が困難であり、特に大スケールの反応において予想外の副反応が進行し、半導体微粒子の収率に悪影響を及ぼしたり、反応設備の設置や稼働に高いコストが費やされたりする。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、大気圧下又は大気圧に近い圧力条件下で実施できるInP半導体微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のInP半導体微粒子の製造方法は、インジウム源を含む溶液、及びリン源をそれぞれ準備する準備工程、並びに、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度の前記溶液に、前記リン源を加えることにより、InP半導体微粒子を合成する合成工程、を有することを特徴とする。
本発明においては、前記準備工程後且つ前記合成工程前に、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、前記リン源の沸点を超える温度の前記溶液に、前記リン源の一部を加えることにより、InP半導体微粒子の核を合成する前処理工程を有し、前記合成工程において、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度である前記InP半導体微粒子の核を含有する反応溶液に、前記リン源の残りの部分を加えることにより、前記InP半導体微粒子の核を成長させることが好ましい。
本発明においては、前記合成工程における前記リン源の沸点以下の温度は、前記リン源の沸点より5〜50℃低い温度であることが好ましい。
本発明においては、前記前処理工程における前記リン源の沸点を超える温度は、前記リン源の沸点より30〜200℃高い温度であることが好ましい。
本発明においては、さらに、前記InP半導体微粒子をコアとし、当該コア表面の一部又は全部にZnSを含むシェルを形成するシェル形成工程を有していてもよい。
本発明においては、さらに、前記InP半導体微粒子をフッ酸処理するフッ酸処理工程を有していてもよい。
本発明においては、得られるInP半導体微粒子のフォトルミネセンススペクトルのピークが、450〜700nmの範囲内に現れることが好ましい。
本発明において、前記インジウム源は、酢酸インジウム(III)、塩化インジウム(III)、臭化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、インジウム(III)アセチルアセトナート、及びインジウム(III)−t−ブトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのインジウム化合物であることが好ましい。
本発明において、前記リン源は、下記一般式(1)、一般式(2)、又は一般式(3)で表される構造を有するリン化合物であってもよい。
Figure 2014015549
(上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、R〜Rはそれぞれ炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。)
Figure 2014015549
(上記一般式(2)中、R〜R10は互いに独立であり、且つ、R〜R10は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(2)中、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
Figure 2014015549
(上記一般式(3)中、R11及びR12は互いに独立であり、且つ、R11及びR12は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(3)中、X及びXは互いに独立であり、且つ、X及びXは、それぞれ塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
本発明においては、前記リン源の沸点は、200〜270℃であってもよい。
本発明においては、前記リン源は、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ジクロロ(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリシリルホスフィン、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つのリン化合物であってもよい。
本発明においては、前記合成工程において、ホットインジェクション法を用いてもよい。
本発明においては、前記前処理工程において、ホットインジェクション法を用いてもよい。
本発明によれば、リン源の沸点以下の温度でInP半導体微粒子を合成することにより、リン源の蒸発を抑制し、大気圧下又は大気圧に近い圧力条件下でInP粒子を収率よく製造できる。
実施例1−実施例3のInP半導体微粒子のフォトルミネセンス発光スペクトルを重ねて示したグラフである。 実施例1及び実施例4のInP半導体微粒子のフォトルミネセンス発光スペクトルを重ねて示したグラフである。 InP半導体微粒子の製造に使用できるホットインジェクション用の反応装置の概略模式図である。 比較例4及び比較例5のInP半導体微粒子のフォトルミネセンス発光スペクトルを重ねて示したグラフである。
本発明のInP半導体微粒子の製造方法は、インジウム源を含む溶液、及びリン源をそれぞれ準備する準備工程、並びに、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度の前記溶液に、前記リン源を加えることにより、InP半導体微粒子を合成する合成工程、を有することを特徴とする。
大気圧付近の比較的低い圧力を利用した半導体微粒子の製造方法は、製造装置の構成が比較的単純であり、製造コストも低く抑えられるため、これまでにも多くの採用例が知られている。
大気圧付近の比較的低い圧力を用いた製造方法においては、通常、半導体微粒子の生成を促すため、反応溶液を加熱し、反応溶液を昇温することが多い。昇温時に反応溶液から蒸発する液体としては、液体原料や溶媒が考えられる。液体原料や溶媒の粘性が低い場合には、蒸気を再度冷却し凝縮させることにより、凝縮した液体を反応容器の壁を伝わせて反応溶液中に落としたり、凝縮した液体を還流装置等から直接反応溶液中に滴り落としたりすることにより、反応溶液中に再度回収することができる。しかし、液体原料や溶媒として粘性の高い液体を用いた場合には、一度蒸発した蒸気を冷却により凝縮させても、凝縮した液体が反応容器の壁に付着し続けたり、還流装置内部に留まり続けたりすることにより、反応溶液中に戻すことが極めて難しいという問題がある。
上述した特許文献1には、ホットソープ法により、超臨界合成用オートクレーブ装置を用いて、高温高圧条件下でInP半導体微粒子の合成を行う実施例が記載されている(特許文献1の明細書の段落[0084]−[0092])。しかし、上述したように、このような高圧下の反応条件は、実用化が非常に困難であるというデメリットがある。
また、特許文献1には、リン源として、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィンを使用する旨の記載がある。しかし、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィンのようないわゆるアミノホスフィンは比較的安全に取り扱えるものの、リン源としての反応性は、トリス(トリメチルシリル)ホスフィンのようないわゆるシリルホスフィンよりも低い。また、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィンの沸点(245℃)は、InP半導体微粒子の合成温度として通常設定される温度(約300℃)よりも50℃以上低い。したがって、既に300℃程度に加熱されたインジウム溶液中にアミノホスフィンを加えたとしても、アミノホスフィンは反応溶液と混ざって熱分解する前に蒸発してしまう。また、アミノホスフィンは一般的に粘性が高いことから、蒸気を冷却して凝縮させたとしても、上述したように反応溶液中に回収することが難しい。その結果、アミノホスフィンを用いた従来のInP半導体微粒子の製造方法においては、反応溶液中のリン源が常に不足することとなり、InP半導体微粒子の収率が悪く、且つInP半導体微粒子の成長も遅く、品質も高くなかった。
上記知見に基づき、本発明者らは、InP半導体微粒子の原料となるリン源の沸点に着目し、InP半導体微粒子の成長速度を促進させ、且つInP半導体微粒子が高収率で得られる方法を模索し、鋭意検討を重ねた。その鋭意努力の結果、本発明者らは、リン源の沸点以下の温度でInP半導体微粒子を合成することにより、大気圧のような比較的低い圧力条件下であっても、リン源の蒸発を抑制しInP半導体微粒子を収率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、(1)準備工程、及び(2)合成工程を有する。本発明は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも、例えば、後述するような前処理工程、ZnS被覆工程、フッ素処理工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)及び(2)、並びにその他の工程について、順に説明する。
1.準備工程
本工程は、インジウム源を含む溶液、及びリン源をそれぞれ準備する工程である。
本発明においてインジウム源とは、InP半導体微粒子の原料の1つであり、インジウム元素を供給できる原料のことを指す。
本発明に使用できるインジウム源は、一般的にInP半導体微粒子の製造に使用されるインジウム源であれば特に限定されない。本発明に使用できるインジウム源としては、例えば、酢酸インジウム(III)(In(CHCO)、塩化インジウム(III)(InCl)、臭化インジウム(III)(InBr)、ヨウ化インジウム(III)(InI)、インジウム(III)アセチルアセトナート(In(CHCOCHCOCH)、及びインジウム(III)−t−ブトキシド(In((CHCO))等が挙げられる。これらのインジウム源は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのインジウム源の中でも、分子内に酸素原子を比較的多く含まないインジウム源である、酢酸インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムを使用することがより好ましい。分子内に酸素原子を多く含みすぎるインジウム源を用いた場合には、反応溶液中に酸化インジウムが副生し、フォトルミネッセンスの発光効率が激減するおそれがある。また、インジウム源は無水物であることが好ましい。
本発明においてインジウム源を含む溶液とは、上述したインジウム源を適宜溶媒に溶かしたものを指す。ここで、当該溶液中においてインジウムは、インジウムイオンとして存在していてもよいし、インジウム源そのものとして存在していてもよいし、インジウム源以外の他のインジウム化合物として存在していてもよい。なお、インジウムが溶液中にインジウムイオンとして存在する場合には、本発明におけるインジウム源を含む溶液とは、インジウムイオン溶液のことを指す。
本発明に使用できる溶媒は、180℃以上、好ましくは300℃以上においても分解することなく液体状態を保持し、InP半導体微粒子の製造に使用できるものであれば特に限定されない。本発明に使用できる溶媒としては、例えば、1−オクタデセン(CH=CH−C1633)、オクタデカン(C1838)、1−ノナデセン(CH=CH−C1735)、イコセン(CH=CH−C1837)、及びトリ−n−オクチルホスフィン(P(n−C17)等が挙げられる。これらの中でも、本発明に使用できる溶媒としては、1−オクタデセン等の炭化水素化合物が好ましい。
本発明に使用できるインジウム源を含む溶液には、インジウムの分散性を高めるため、インジウムに配位できる配位子となる化合物を用いてもよい。なお、ここでいう「インジウムの分散性」とは、インジウム単体の分散性、及びインジウムイオン(In3+)の分散性のいずれも含む。当該配位子となる化合物を用いることにより、当該化合物中の孤立電子対(lone pair)がインジウムに配位する結果、InP半導体微粒子の成長を比較的穏やかに促進させると共に、当該配位子となる化合物の分子構造を適切に選択することにより、インジウムを溶媒中に分散させやすくなる効果を奏する。例えば、ミリスチン酸等の直鎖の炭化水素基を有する化合物を配位子として用いた場合には、インジウムに配位する孤立電子対の反対側に位置する直鎖の炭化水素基により、インジウムが非極性の溶媒中に分散しやすくなる効果を奏する。
当該配位子となる化合物は、インジウムイオンへの配位が適度に強く、且つ、InP半導体微粒子の合成後に容易に除去できるものであれば特に限定されない。当該配位子となる化合物としては、例えば、ミリスチン酸(C1327COH)、パルミチン酸(C1531COH)、ステアリン酸(C1735COH)、オレイルアミン(CAS番号:112−90−3)、及びヘキサデシルアミン(C1633NH)等が挙げられる。
なお、配位子となる化合物を使用した場合には、合成反応を経て得られた反応溶液中において、InP半導体微粒子は、配位子が配位した状態で反応溶液中を分散することとなる。
本発明においてリン源とは、InP半導体微粒子の原料の1つであり、リン元素を供給できる原料のことを指す。
本発明に使用できるリン源は、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下の条件下においても、InP半導体微粒子を合成する原料となるものであれば特に限定されない。
本発明に使用できるリン源としては、例えば、(1)リン原子に芳香族炭化水素基が3つ結合したトリアリールホスフィン類、(2)リン原子にアミノ基が1つ〜3つ結合したアミノホスフィン類、(3)リン原子にシリル基が3つ結合したトリシリルホスフィン類等が挙げられる。これらのうち、(1)本発明のリン源として使用できるトリアリールホスフィン類としては、例えば、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(化学式:[o−CHP、CAS No.6163−58−2、沸点:412℃)等が挙げられる。また、(3)本発明のリン源として使用できるトリシリルホスフィン類としては、トリシリルホスフィン(化学式:(HSi)P、CAS No.15110−33−5、沸点:144℃)等が挙げられる。なお、(2)本発明のリン源として使用できるアミノホスフィン類については後述する。
これらリン源のうち、(1)トリアリールホスフィン類の場合は、リン原子−炭素原子間の共有結合(P−C結合)は比較的安定である。例えば、トリアルキルホスフィン類の例となるが、トリ−n−オクチルホスフィン(P(n−C17)においては、リン原子に対し、炭素原子8個を有する直鎖の炭化水素基が3本結合している。トリ−n−オクチルホスフィンは、上述したホットソープ法における溶媒として使用されるほど耐熱性が高く、具体的には、300℃以上の熱に耐えられる。
また、(3)トリシリルホスフィン類においては、化学構造中のP−Si結合が切れることにより、インジウム源にリンが供給される。トリシリルホスフィン類においては、リン原子−ケイ素原子間の共有結合(P−Si結合)が比較的弱い。したがって、トリシリルホスフィン類は、トリアリールホスフィン類やトリアミノホスフィン類よりも反応性が高い。従来のInP半導体微粒子の合成においては、トリシリルホスフィン類がリン源として使用されていた。しかし、トリシリルホスフィン類は、その反応性の高さゆえに爆発性を有する場合がある。
一方、(2)アミノホスフィン類においては、化学構造中のリン原子−窒素原子間の共有結合(P−N結合)が切れることにより、インジウム源にリンが供給される。アミノホスフィン類におけるP−N結合は、P−C結合よりも弱く、P−Si結合よりも強い。したがって、アミノホスフィン類は、トリアリールホスフィン類よりも反応性が高いものの、トリシリルホスフィン類のような爆発性は示さず、穏やかな反応性を示す。
アミノホスフィン類のような穏やかな反応性を示すリン源は、製造されるInP半導体微粒子の粒度分布を制御できる点で好ましい。例えば、反応性が高すぎるリン源を用いた場合、インジウム源及び当該リン源を混合した瞬間に即時に反応が開始することから、製造されるInP半導体微粒子の粒径は溶液中の濃度分布に影響される結果、当該粒径を所定の範囲内に制御することが困難となるおそれがある。具体的には、反応溶液中のリン源の濃度が高い部分においては粒径が大きすぎるInP半導体微粒子が製造されるのに対し、反応溶液中のリン源の濃度が低い部分においては粒径が小さすぎるInP半導体微粒子が製造されるか、又は全くInP半導体微粒子が製造されない結果、反応溶液全体においてInP半導体微粒子の粒径が著しく不揃いとなる問題が生じる。しかし、反応性が穏やかなリン源を用いることによって、溶液中の濃度分布が適度に均一となり次第InP半導体微粒子の合成反応が始まることから、得られるInP半導体微粒子の粒径のバラつきが抑えられ、InP半導体微粒子の粒度分布が所定の範囲内に収まるように制御できる。
リン源として使用するアミノホスフィン類は、具体的には、下記一般式(1)、一般式(2)、又は一般式(3)で表される構造を有するリン化合物であってもよい。
Figure 2014015549
(上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、R〜Rはそれぞれ炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。)
Figure 2014015549
(上記一般式(2)中、R〜R10は互いに独立であり、且つ、R〜R10は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(2)中、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
Figure 2014015549
(上記一般式(3)中、R11及びR12は互いに独立であり、且つ、R11及びR12は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(3)中、X及びXは互いに独立であり、且つ、X及びXは、それぞれ塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
上記一般式(1)により表される構造を有するリン化合物としては、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(化学式:[(CHN]P、CAS No.1608−26−0、沸点:163℃;以下、TDMAPと称する場合がある。)、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(化学式:[(CN]P、CAS No.2283−11−6、沸点:245℃;以下、TDEAPと称する場合がある。)等のトリアミノホスフィン類が挙げられる。これらトリアミノホスフィンの中でも、上記一般式(1)において、R〜Rがいずれも炭素数2以上の飽和脂肪族炭化水素基である、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン等の嵩高いリン化合物が好ましい。
上記一般式(2)により表される構造を有するリン化合物としては、クロロビス(ジメチルアミノ)ホスフィン(化学式:[(CHN]PCl)、CAS No.3348−44−5、沸点:149℃)等が挙げられる。
上記一般式(3)により表される構造を有するリン化合物としては、ジクロロ(ジメチルアミノ)ホスフィン(化学式:(CHNPCl、CAS No.683−85−2、沸点:150℃)等が挙げられる。
以上述べたリン源は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン原子周りが嵩高いリン源を用いた場合には、リン源の立体障害の大きさに由来し、合成反応の速度が若干遅くなり、反応が比較的穏やかに進行する傾向がある。なお、例えばアミノホスフィンの場合、P−N結合の結合エネルギーはどのアミノホスフィンにおいてもほぼ一定であり、P−N結合が切れる反応速度は決まっているため、アミノホスフィンの分子構造の差は、アミノホスフィンの分解速度そのものにはさほど影響しない。したがって、リン原子周りの嵩高いリン源を使用した場合に合成反応が穏やかに進行する理由は、リン源中のリン原子が成長中のInP微粒子表面に結合した後にリン源が分解されるとした場合、微粒子表面に結合する嵩高いリン源の分子数は、そのリン原子周りの嵩高さにより、微粒子表面に結合する嵩の小さいリン源の分子数と比較して少なくなるためであると考えられる。
本発明においては、大気圧又は大気圧に近い圧力条件において合成反応を進行させるため、反応溶液の温度は180℃以上とする必要がある。したがって、本発明に使用するリン源は、沸点が比較的高いものであることが好ましい。このように比較的高い沸点を有するリン源を用いることにより、リン源を完全に蒸発させることなく合成反応を進行させることができる。
本発明に使用されるリン源は、その沸点により決定されてもよい。本発明に使用されるリン源の沸点は、200℃以上であってもよい。リン源の沸点が200℃未満である場合には、沸点が低すぎるため、InP半導体微粒子を合成できる温度付近まで反応溶液を加熱した際、リン源の多くが蒸発し、反応溶液中にリン源が残らなくなるおそれがある。なお、沸点が270℃を超えるリン源は入手及び合成が困難である。
本発明に使用されるリン源の沸点は、210〜260℃であることが好ましく、220〜250℃であることがより好ましい。すなわち、本発明は、従来は採用し難かった沸点270℃以下のリン源を使用することができる。
リン源は、予め所定の溶媒に溶かし、リン源溶液として合成工程に供してもよい。リン源溶液に使用できる溶媒は、上述したインジウム源を含む溶液に使用できる溶媒と同様のものを使用できる。
2.合成工程
本工程は、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つリン源の沸点以下の温度のインジウム源を含む溶液に、リン源を加えることにより、InP半導体微粒子を合成する工程である。
本工程において、リン源の沸点以下の温度条件下で反応させることにより、リン源の多くを蒸発させずに反応に関与させることができる結果、粒度分布が狭く、粒径が均一なInP半導体微粒子を収率よく合成することができる。
本工程における合成の圧力条件は、大気圧以上且つ0.2MPa(約2気圧)以下である。
本工程における大気圧とは、厳密には1atm(=0.101Mpa)を指す。しかし、後述するホットインジェクション法のように、密閉系でない反応装置により合成する場合には、本工程における大気圧とは、その合成時点における外気圧のことをも指すものとする。
本工程において、0.2MPaを超える圧力条件下で反応を行った場合、上述したホットソープ法のように耐圧容器が必要となる結果、本発明の効果である、耐圧容器を必要とせずにInP半導体微粒子が温和な条件下で合成できる効果を十分享受できなくなるおそれがある。
本工程における合成時の圧力は、0.15MPa以下であることが好ましく、0.11MPa以下であることがより好ましい。
本工程における合成の温度条件は、180℃以上且つ使用されるリン源の沸点以下である。
本工程において、180℃未満の温度条件下で反応を行った場合、リン源の分解が進行しないことによりリン源からリン原子が放出されず、その結果、InP半導体微粒子の合成反応が進行しないおそれがある。本発明においては、上述したように、穏やかに反応するリン源を用いることが好ましいため、所定の温度以上でなければ合成反応が進行しない。しかし、温度が高すぎる場合にはリン源の沸点を超える結果、リン源が蒸発してしまう。本発明は、圧力及び温度を適切に制御することにより、このような合成時の温度に関する背反を克服したものである。
本工程における合成時の温度は、220℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。
本工程において、リン源の沸点以下の温度で合成を行うことにより、リン源が完全に蒸発することがないため、反応溶液中のリン源の全部又は大部分をInP半導体微粒子の合成に使用できる。なお、当該効果の観点から、本発明において、リン源を2種類以上組み合わせて用いる場合には、最も低い沸点をもつリン源の当該沸点を温度の基準とする。
本工程において採用する反応温度は、リン源の沸点よりも5〜50℃低い温度であることが好ましい。反応温度とリン源の沸点との差がわずか5℃未満であるとすると、当該反応温度の条件においては、リン源が全て蒸発し反応溶液中にリン源が残らなくなるおそれがある。一方、反応温度とリン源の沸点との差が50℃を超えるとすると、反応温度がリン源の分解温度よりも極めて低くなるおそれがあり、その結果、合成反応が十分進行せず、InP半導体微粒子の収率が極めて低くなるおそれがある。
本工程における反応温度は、リン源の沸点よりも10〜45℃低い温度であることがより好ましく、15〜40℃低い温度であることがさらに好ましい。
合成工程に費やすべき時間は、目的とするInP半導体微粒子の粒径の大きさに合わせて適宜調節できる。一般的に、InP半導体微粒子の粒径は、合成工程の時間が長くなるにつれて単調増加する。
合成工程の時間は、1〜5時間であることが好ましい。合成工程の時間が1時間未満であるとすると、InP半導体微粒子が十分成長しないおそれがある。また、合成工程の時間が5時間を超えるとすると、原料であるインジウム源やリン源が使いつくされ、既に反応溶液中に残っていない可能性があり、時間的コストが無駄に費やされるおそれがある。
合成工程の時間は1.5〜4.5時間であることがより好ましく、2〜4時間であることがさらに好ましい。
インジウム源とリン源の混合比は、インジウム源:リン源=40mol%:60mol%〜60mol%:40mol%であることが好ましい。インジウム源が多すぎたり、リン源が多すぎたりすると、InP半導体微粒子中の元素組成が所望のものから外れ、目的とするInP半導体微粒子が得られなくなるおそれがある。
なお、インジウム源を含む溶液に配位子となる化合物を混合する場合には、使用するインジウム源を100mol%とした場合、当該配位子となる化合物の添加量は200〜400mol%であることが好ましい。
本工程においては、大気圧下又は大気圧に近い圧力条件下における合成方法の1つとして、ホットインジェクション法を用いてもよい。
図3は、InP半導体微粒子の製造に使用できるホットインジェクション用の反応装置の概略模式図である。図3に示すように、反応装置100は少なくとも反応容器1を備える。反応容器1には、還流装置4及び温度計5が備え付けられていてもよい。還流装置4の例としては、例えば、冷却器が挙げられる。なお、反応装置100は密閉系の装置ではなく、不活性ガスラインと繋がれた装置とし、反応容器1内は予め不活性ガス雰囲気下に置換されているものとする。反応容器1内の圧力は不活性ガスの圧力とほぼ等しくなるため、反応容器1内部の圧力は大気圧よりも高くなる場合がある。また、不活性ガス雰囲気下で合成することにより、反応溶液が酸化されるおそれや、反応溶液中に水分が混入するおそれが少なくなるため、高品質のInP半導体微粒子が製造できる。不活性ガスラインを用いた反応装置の具体的な構成の例としては、図3に示すような還流装置4を用いる場合において、還流装置4の上部に不活性ガスラインをつなぐ構成が挙げられる。
図3に示す反応装置100を用いたホットインジェクション法の具体的な工程は以下の通りである。まず、反応容器1を窒素やアルゴン等の不活性ガスラインに接続し、当該反応容器1内を不活性ガスで置換する。次に、インジウム源を含む溶液を反応容器1の注入口1aから加える。このとき、インジウム源を含む溶液を適宜脱気することにより、酸素及び水分を予め除いてもよい。次に、熱源3を用いて、インジウム源を含む溶液を、上述した180℃以上且つ使用するリン源の沸点以下の範囲内の所定の温度まで昇温する。昇温後、当該インジウム源を含む溶液にリン源を全量加える。リン源を加えた後も、温度をそのまま維持しつつ攪拌し、1〜5時間反応させることにより、InP半導体微粒子が製造できる。
本発明においては、準備工程後且つ合成工程前に、前処理工程を有することが好ましい。前処理工程とは、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、使用するリン源の沸点を超える温度であるインジウム源を含む溶液に、リン源の一部を加えることにより、InP半導体微粒子の核を合成する工程のことである。
このように、反応溶液の温度をリン源の沸点よりも一時的に高くし、リン源の一部を反応溶液中に加える前処理工程を実施することにより、InP半導体微粒子の元となる核(以下、InP核と称する場合がある。)を一度に多く生成し、InP半導体微粒子の成長の開始時期及び成長速度をそろえることができる結果、InP半導体微粒子の粒度分布を狭くし、粒径のバラつきを抑えることができる。前処理工程においてInP核を一度に大量に生成させ、続く合成工程において各InP核を均一な成長速度により成長させることができるため、本製造方法により得られるInP半導体微粒子の粒子数と、粒度分布の両方を制御できる結果、均一な粒径を有するInP半導体微粒子を高収率で製造することができる。なお、前処理工程において生成したInP核の数と、合成工程を経て最終的に得られたInP半導体微粒子の粒子数は、ほぼ一致する。
前処理工程の時間は1〜30分間であることが好ましい。前処理工程に1分も費やさないとすると、InP核が十分な量生成することがなく、したがって、InP半導体微粒子の粒度分布を狭くし、粒径のバラつきを抑える効果が十分享受できなくなるおそれがある。また、前処理工程の時間が30分を超えるとすると、沸点を超える温度条件下にリン源を長時間さらすこととなるため、リン源が蒸発してしまうおそれがある。
前処理工程の時間は3〜20分間であることが好ましく、5〜10分間であることがより好ましい。このように、比較的短時間で前処理工程を終了させ、続く合成工程において反応溶液の温度をリン源の沸点以下の温度に下げることにより、リン源を完全に蒸発させてしまうことなくInP核を生成することができる。
なお、前処理工程を行う場合には、続く合成工程にて、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つリン源の沸点以下の温度であるInP核を含有する反応溶液に、リン源の残りの部分を加える。当該合成工程においては、追加されたリン源によりInP核が成長し、InP半導体微粒子を形成することとなる。
本前処理工程において、リン源の沸点を超える温度条件下で一時的にInP核を合成することにより、反応溶液中の濃度分布の偏りを合成反応初期から是正することができる。なお、当該効果の観点から、本工程において、リン源を2種類以上組み合わせて用いる場合には、前処理工程においてある種類のリン源を添加し、合成工程において他方の種類のリン源を添加する方法を採用するよりは、2種類以上のリン源を予め混合してリン源混合物を調製し、前処理工程及び合成工程のいずれも当該リン源混合物を反応に供することが好ましい。
本前処理工程における反応温度は、使用するリン源の沸点よりも30〜200℃高い温度であることが好ましい。反応温度とリン源の沸点との差がわずか30℃未満であるとすると、当該反応温度の条件においては、リン源が短時間で分解しないおそれがあり、その結果、InP核を所望の量生成できなくなるおそれがある。一方、反応温度とリン源の沸点との差が200℃を超えるとすると、反応温度が高すぎるためリン源の大部分が蒸発するおそれがあり、InP核すら生成できなくなるおそれがある。
本工程における反応温度は、リン源の沸点よりも40〜180℃高い温度であることがより好ましく、リン源の沸点よりも50〜160℃高い温度であることがさらに好ましい。
前処理工程を実施する場合において、本発明に使用されるリン源の総量は、前処理工程に使用されるリン源の量、及び合成工程に使用されるリン源の量の和となる。したがって、これら2工程におけるリン源の量の分配が問題となる。
前処理工程に使用されるリン源の量、及び合成工程に使用されるリン源の量は、リン源の種類や、目的とするInP半導体微粒子の物性によって適宜調製できる。前処理工程の条件が主にInP半導体微粒子の粒子数を決め、合成工程の条件が主にInP半導体微粒子の粒径を決めるものとすると、例えば、粒径の比較的小さいInP半導体微粒子を数多く製造したい場合には、前処理工程に使用されるリン源の量を、合成工程に使用されるリン源の量よりも多くすればよい。一方、例えば、粒子数よりも粒径を重視し、粒径の比較的大きいInP半導体微粒子を製造したい場合には、前処理工程に使用されるリン源の量を、合成工程に使用されるリン源の量よりも少なくすればよい。以上の検討は、各工程において添加されるリン源の量の割合をあくまでも相対的な観点から検討したものであり、製造されるInP半導体微粒子の粒径や粒子数の具体的な値について述べたものではない。
前処理工程に使用されるリン源の量、及び合成工程に使用されるリン源の量は、例えば、前処理工程に使用されるリン源の量:合成工程に使用されるリン源の量=40mol%:60mol%〜60mol%:40mol%としてもよい。
前処理工程において、上述したホットインジェクション法を用いてもよい。前処理工程と合成工程において連続してホットインジェクション法を採用してもよい。このように連続してホットインジェクション法を実施する場合、同一の反応装置を用いたワンポットの合成が可能となる。
合成工程後のInP半導体微粒子に対し、当該InP半導体微粒子をコアとして、当該コア表面にZnSを含むシェルを形成するシェル形成工程を有していてもよい。
ZnSを含むシェルを用いたInPコアの被覆方法としては、公知の方法を採用することができる。ZnSを含むシェルを用いたInPコアの被覆方法の例は以下の通りである。まず、InP半導体微粒子を含む反応溶液中に、酢酸亜鉛などの亜鉛源を室温(15〜30℃)にて加え、攪拌しながら反応溶液を200〜250℃まで昇温させ、Znシェルを形成させる。Znシェルの成長の様子は、フォトルミネセンス発光スペクトルを逐次測定することによりモニターすることが好ましい。フォトルミネセンス発光スペクトルの所定のピーク強度が最大値となり、Znシェルがこれ以上成長しないことを確認した後、1−ドデカンチオールなどの硫黄源を反応溶液に加え、さらに攪拌する。硫黄源を加えてから0.5〜2時間後、反応溶液を室温(15〜30℃)まで自然冷却する。反応溶液にイソプロパノール等の貧溶媒を加えてナノ結晶を析出させた後、適宜分離操作、洗浄などを行うことにより、ZnSを含むシェルを有するInP半導体微粒子が製造できる。
合成工程後のInP半導体微粒子に対し、InP半導体微粒子をフッ酸処理するフッ酸処理工程を有していてもよい。フッ酸処理の詳細は以下の通りである。まず、フッ酸に侵されにくい容器内において、分散媒中に分散したInP微粒子に対し、希釈されたHF溶液又はNHFメタノール溶液を加え、攪拌する。一定時間(例えば10分間)が経過した後、攪拌を止め、分散媒中にメタノール等の貧溶媒を加え、粒子を沈殿させる。回収した粒子を分散媒中に再分散させ、フッ酸処理されたInP半導体微粒子が得られる。
本製造方法により得られるInP半導体微粒子の収率の算出方法は以下の通りである。まず、本製造方法により得られたInP半導体微粒子を含む反応溶液に、アルコール等の貧溶媒を加えることにより、InP半導体微粒子を沈殿させる。当該沈殿物をろ別し、適宜洗浄及び乾燥を行うことにより、InP半導体微粒子を単離する。単離したInP半導体微粒子の質量を測定し、測定収量が求められる。当該測定収量を、インジウム源の使用量及びリン源の使用量から算出した理想収量により除し、さらに100を乗じた値を、その製造方法によるInP半導体微粒子の収率(%)とする。
量子ドットにおいては、一般的に、粒径が大きければ大きいほど、フォトルミネッセンス発光スペクトルのピーク波長(発光波長)が長くなる。
本発明においては、得られるInP半導体微粒子のフォトルミネッセンス発光スペクトルのピークが、450〜700nmの範囲内に現れることが好ましい。このように比較的長い発光波長を有するInP半導体微粒子は、当該発光波長までの光を吸収できるため、当該InP半導体微粒子に入射する光の帯域に幅がある場合でも、十分に広い波長範囲の光を吸収できる。特に、太陽光のピーク波長は500nmであるが、700nmにおいても十分な強度を有する。したがって、特に太陽光を用いた発電デバイスにInP半導体微粒子を応用する場合には、長波長の発光ピークを有するInP半導体微粒子は極めて有用である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
1.InP半導体微粒子の製造方法
[実施例1]
まず、インジウム源として無水酢酸インジウム0.438g(1.5mmol)、溶媒としてオクタデセン20mL、及び配位子となる化合物としてミリスチン酸1.03g(4.5mmol)を混合し、インジウム源を含む溶液を調製した。また、リン源として、下記式(1a)により表される構造を有するトリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(沸点:245℃;以下、TDEAPと称する場合がある。)0.37g(1.5mmol)、及び溶媒としてオクタデセン5mLを混合し、リン源を含む溶液を調製した。調製後のリン源を含む溶液を脱気することにより、リン源を含む溶液中から予め酸素及び水分を除いた。
Figure 2014015549
図3は、InP粒子の製造に用いたホットインジェクション用の反応装置の概略模式図である。図3に示すように、反応装置100は、反応容器1として3つ口フラスコを備える。また、図3に示すように、反応容器1の3つの口の内の1つには、還流装置4として冷却器を接続し、且つ、他の口には、温度計5を備え付けた。さらに、還流装置4の上部にアルゴンガスラインをつないだ(図示せず)。反応容器1の3つの口の内の残り1つを試料の注入口1aとした。
まず、反応容器1内をアルゴンガスで置換した。次に、インジウム源を含む溶液を反応容器1の注入口1aから加えた。インジウム源を含む溶液を脱気することにより、当該溶液中から酸素及び水分を予め除いた。続いて、熱源3を用いてインジウム源を含む溶液を240℃まで昇温した後、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を240℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させ、InP半導体微粒子を合成した(収率20%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、以下の方法によりZnSシェルを被覆した。
まず、InP半導体微粒子を含む反応溶液中に、亜鉛源として無水酢酸亜鉛0.7gを室温(15〜30℃)にて加え、攪拌しながら反応溶液を230℃まで昇温させ、Znシェルを形成させた。Znシェルの成長の様子は、フォトルミネセンス発光スペクトルを1〜2時間ごとに測定することによりモニターした。フォトルミネセンス発光スペクトルの所定のピーク強度が最大値となり、Znシェルがこれ以上成長しないことを確認した後、硫黄源として1−ドデカンチオール0.3gを反応溶液に加え、さらに攪拌した。
1−ドデカンチオールを加えてから1時間後、反応溶液を室温(15〜30℃)まで自然冷却した。反応溶液に貧溶媒としてイソプロパノールを適量加え、ナノ結晶を析出させた後、遠心分離し、ZnSシェルが被覆された実施例1のInP半導体微粒子(以下、実施例1のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[実施例2]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液及びリン源を含む溶液を調製した。また、実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を230℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を230℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させ、InP半導体微粒子を合成した(収率15%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された実施例2のInP半導体微粒子(以下、実施例2のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[実施例3]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液及びリン源を含む溶液を調製した。また、実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を220℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を220℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させ、InP半導体微粒子を合成した(収率10%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された実施例3のInP半導体微粒子(以下、実施例3のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[実施例4]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液及びリン源を含む溶液を調製した。また、実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を300℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を調製した量のうち半量加えて攪拌し、InP半導体微粒子の核を調製した(前処理工程)。リン源溶液を加えて10分後、反応溶液の温度を240℃まで下げ、且つ、当該反応溶液にリン源を含む溶液を残り半量加えて攪拌し、3時間反応させ、InP半導体微粒子の核を成長させた(合成工程。収率35%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された実施例4のInP半導体微粒子(以下、実施例4のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[比較例1]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液及びリン源を含む溶液を調製した。また、実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を260℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を260℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させたところ、InP半導体微粒子が微少量合成できた(収率5%未満)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された比較例1のInP半導体微粒子(以下、比較例1のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[比較例2]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液を調製した。また、リン源として、下記式(1b)により表される構造を有するトリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(沸点:163℃;以下、TDMAPと称する場合がある。)0.24g(1.5mmol)、及び溶媒としてオクタデセン5mLを混合し、リン源を含む溶液を調製した。
実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を240℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を240℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させた。しかし、この反応条件によっては、InP半導体微粒子は合成できなかった。
Figure 2014015549
[比較例3]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液を調製した。また、リン源としてTDMAP 0.24g、及び溶媒としてオクタデセン5mLを混合し、リン源を含む溶液を調製した。
実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を260℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を260℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させた。しかし、この反応条件によっては、InP半導体微粒子は合成できなかった。
[比較例4]
以下、公知文献(C.Li,et al.J.Phys.Chem. C2008,112,20190)を参考にして、InP半導体微粒子を合成した。
まず、インジウム源として無水酢酸インジウム0.8g、リン源としてTDEAP 1.36g、溶媒としてトルエン10mL、及び配位子となる化合物としてドデシルアミン10gを混合し、混合溶液を調製した。
次に、上記混合溶液をオートクレーブに加え、且つ、密閉した。オートクレーブ内を180℃まで昇温し、且つ、0.4MPaまで昇圧し、そのまま24時間反応させることにより、InP半導体微粒子を合成した(収率約60%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された比較例4のInP半導体微粒子(以下、比較例4のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[比較例5]
比較例4と同様に、上記公知文献を参考にして、InP半導体微粒子を合成した。
まず、インジウム源として無水酢酸インジウム0.8g、リン源としてTDMAP 0.9g、溶媒としてトルエン10mL、及び配位子となる化合物としてドデシルアミン10gを混合し、混合溶液を調製した。
次に、上記混合溶液をオートクレーブに加え、且つ、密閉した。オートクレーブ内を180℃まで昇温し、且つ、0.4MPaまで昇圧し、そのまま24時間反応させることにより、InP半導体微粒子を合成した(収率約60%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された比較例5のInP半導体微粒子(以下、比較例5のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
[参考例1]
実施例1と同様に、インジウム源を含む溶液及びリン源を含む溶液を調製した。また、実施例1と同様に、図3に示す反応装置を用い、反応容器1内のアルゴン置換、反応容器1へのインジウム源を含む溶液の導入、及び当該溶液の脱気を行った。
インジウム源を含む溶液を300℃まで昇温し、当該インジウム源を含む溶液にリン源を含む溶液を全量加えた。リン源を含む溶液を加えた後も、温度を300℃に維持したまま反応溶液を攪拌し、3時間反応させ、InP半導体微粒子を合成した(収率40%)。
得られたInP半導体微粒子をコアとして、実施例1と同様の方法によりZnSシェルを被覆し、ZnSシェルが被覆された参考例1のInP半導体微粒子(以下、参考例1のInP半導体微粒子と称する場合がある。)を製造した。
2.フォトルミネッセンス発光スペクトルの測定
実施例1−実施例4、比較例1、比較例4−比較例5、及び参考例1のInP半導体微粒子について、フォトルミネッセンス発光スペクトル(以下、PL発光スペクトルと称する場合がある。)を測定した。測定条件の詳細は以下の通りである。
測定装置:分光蛍光光度計(日立ハイテク社製、型番:F−7000)
測定サンプル:InP半導体微粒子の分散液を適宜希釈し、石英セルに加えて測定に供した。
測定雰囲気:大気下
測定温度:室温
図1は、実施例1−実施例3のInP半導体微粒子のPL発光スペクトルを重ねて示したグラフである。図1は、縦軸にPL発光強度を、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。図1においては、PL発光スペクトルのPL強度の強い順から、実施例1、実施例3、実施例2である。なお、PL発光スペクトルの測定においては、測定サンプルの濃度を精確には揃えなかった。したがって、図1中のPL発光スペクトルのPL発光強度は、必ずしも、実施例1−実施例3のInP半導体微粒子のPL発光強度と比例するものではない。
図1より、実施例1−実施例3のInP半導体微粒子においては、560〜570nmの範囲内に明確で正常なPL発光を観測できることが分かる。具体的には、240℃の温度条件下で合成した実施例1のPL発光スペクトルのピーク波長は571nm、230℃の温度条件下で合成した実施例2のPL発光スペクトルのピーク波長は570nm、220℃の温度条件下で合成した実施例3のPL発光スペクトルのピーク波長は560nmである。これらの結果に、比較例2及び比較例3においてはInP半導体微粒子が合成できなかった結果を合わせて考察することにより、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下の圧力条件下においてInP半導体微粒子を合成する場合には、反応溶液の温度はリン源の沸点以下とすることが必要であり、リン源の沸点を超えた反応温度ではInP半導体微粒子は合成できないことが分かる。また、反応溶液の温度が長いほど、InP半導体微粒子の成長が早くなる結果、PL発光スペクトルのピーク波長が長くなることも分かる。
なお、反応溶液の温度を260℃とした比較例1の場合には、わずかにInP半導体微粒子が合成できたと考えられる。PL発光スペクトルを測定したところ、当該スペクトル中に2つのピークが現れ、そのピーク波長はそれぞれ462nm及び555nmであった。特に、462nmのピーク波長は、上述した実施例1−実施例3のPL発光スペクトルのピーク波長とは100nm以上差があることから、比較例1においては正常なInP粒子が合成できなかったと考えられる。これは、反応溶液の温度(260℃)が、リン源として用いたTDEAPの沸点(245℃)を上回った結果、反応溶液中からリン源の大部分が蒸発し、反応溶液中においてリン源が不足したことによるものと考えられる。
以上の結果から、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下の圧力条件下において300℃未満の温度条件下で高品質のInP粒子を合成するためには、反応溶液をリン源の沸点以下に保持することが必要であることが実証された。
図2は、実施例1及び実施例4のInP半導体微粒子のPL発光スペクトルを重ねて示したグラフである。図2は、縦軸にPL発光強度を、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。図2においては、PL発光スペクトルのPL強度の強い順から、実施例4、実施例1である。なお、PL発光スペクトルの測定においては、測定サンプルの濃度を精確には揃えなかった。したがって、図2中のPL発光スペクトルのPL発光強度は、必ずしも、実施例1及び実施例4のInP半導体微粒子のPL発光強度と比例するものではない。
図2中の白矢印に示すように、240℃の温度条件下でリン源を含む溶液を1回加えた実施例1のPL発光スペクトルのピーク波長は571nmである。これに対し、図2中の黒矢印に示すように、300℃の温度条件下でリン源溶液を一部加え、240℃の温度条件下でリン源溶液の残りを加えた実施例4のPL発光スペクトルのピーク波長は620nmである。また、実施例1に用いたInP半導体微粒子(ZnSシェル未被覆)の合成の収率は20%であるのに対し、実施例4に用いたInP半導体微粒子(ZnSシェル未被覆)の合成の収率は35%である。したがって、実施例4の製造工程は、実施例1の製造工程よりも収率を大幅に改善するものであり、且つ、実施例1と比較してInP半導体微粒子の成長がより促進されたことが分かる。
なお、上述したように、参考例1に用いたInP半導体微粒子(ZnSシェル未被覆)の収率は40%である。この結果は、300℃という高い温度条件下においては、リン源の蒸発よりもInP半導体微粒子の形成の方がより速いことを示す。これに対し、例えば、260℃の温度条件下でリン源溶液を1回加えた比較例1においては、InP半導体微粒子の形成よりもリン源の蒸発の方が速いため、InP半導体微粒子の収率が極めて低い。また、リン源を含む溶液を2回に分けて加えた実施例4よりも、300℃の温度条件下でリン源溶液を1回加えた参考例1の方が、収率は高いことも分かる。
しかし、図2には示されていないが、参考例1のPL発光スペクトルのピーク波長は608nmである。したがって、実施例4のInP半導体微粒子の方が、参考例1のInP半導体微粒子よりもPL発光スペクトルのピーク波長が長い。これらの結果から、リン源を含む溶液を2回に分けて加える方法が、リン源溶液を1回で全量加える方法と比較して、よりInP半導体微粒子の成長速度を速められることが分かる。
図4は、比較例4及び比較例5のInP半導体微粒子のPL発光スペクトルを重ねて示したグラフである。図4は、縦軸に規格化PL発光強度を、横軸に発光波長(nm)をとったグラフである。比較例4及び比較例5のInP半導体微粒子は、上述したように、いずれもソルボサーマル法を用いて、密閉容器中にて高圧条件下で合成されているため、反応溶液中からリン源が完全に蒸発することは考えられない。したがって、比較例4と比較例5を比較することにより、TDEAPとTDMAPの沸点の差による効果を考慮することなく、これら2種類のアミノホスフィンの反応性のみを純粋に比較することができる。
図4に示すように、TDEAPを用いた比較例4のPL発光スペクトルのピーク波長は565nmである。これに対し、図4に示すように、TDMAPを用いた比較例5のPL発光スペクトルのピーク波長は590nmである。図4の結果から、PL発光スペクトルのピーク波長は、TDEAPを用いた場合と、TDMAPを用いた場合とで大きな差は生じず、したがって、比較例4のInP半導体微粒子の平均粒径と比較例5のInP半導体微粒子の平均粒径とは、ほぼ等しいと考えられる。よって、TDEAPとTDMAPは、リン源としての反応性に大きな差はみられないと考えられる。
1 反応容器
1a 反応容器の注入口
2 反応溶液
3 熱源
4 還流装置
5 温度計
100 反応装置

Claims (13)

  1. インジウム源を含む溶液、及びリン源をそれぞれ準備する準備工程、並びに、
    大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度の前記溶液に、前記リン源を加えることにより、InP半導体微粒子を合成する合成工程、を有することを特徴とする、InP半導体微粒子の製造方法。
  2. 前記準備工程後且つ前記合成工程前に、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、前記リン源の沸点を超える温度の前記溶液に、前記リン源の一部を加えることにより、InP半導体微粒子の核を合成する前処理工程を有し、
    前記合成工程において、大気圧以上且つ0.2MPaの圧力以下にて、180℃以上且つ前記リン源の沸点以下の温度である前記InP半導体微粒子の核を含有する反応溶液に、前記リン源の残りの部分を加えることにより、前記InP半導体微粒子の核を成長させる、請求項1に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  3. 前記合成工程における前記リン源の沸点以下の温度は、前記リン源の沸点より5〜50℃低い温度である、請求項1又は2に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  4. 前記前処理工程における前記リン源の沸点を超える温度は、前記リン源の沸点より30〜200℃高い温度である、請求項2又は3に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  5. さらに、前記InP半導体微粒子をコアとし、当該コア表面の一部又は全部にZnSを含むシェルを形成するシェル形成工程を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  6. さらに、前記InP半導体微粒子をフッ酸処理するフッ酸処理工程を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  7. 得られるInP半導体微粒子のフォトルミネセンススペクトルのピークが、450〜700nmの範囲内に現れる、請求項5又は6に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  8. 前記インジウム源は、酢酸インジウム(III)、塩化インジウム(III)、臭化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、インジウム(III)アセチルアセトナート、及びインジウム(III)−t−ブトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのインジウム化合物である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  9. 前記リン源は、下記一般式(1)、一般式(2)、又は一般式(3)で表される構造を有するリン化合物である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
    Figure 2014015549
    (上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、R〜Rはそれぞれ炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。)
    Figure 2014015549
    (上記一般式(2)中、R〜R10は互いに独立であり、且つ、R〜R10は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(2)中、Xは、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
    Figure 2014015549
    (上記一般式(3)中、R11及びR12は互いに独立であり、且つ、R11及びR12は炭素数1以上の飽和脂肪族炭化水素基である。また、上記一般式(3)中、X及びXは互いに独立であり、且つ、X及びXは、それぞれ塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)からなる群より選ばれるハロゲン原子である。)
  10. 前記リン源の沸点は、200〜270℃である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  11. 前記リン源は、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ジクロロ(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリシリルホスフィン、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つのリン化合物である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  12. 前記合成工程において、ホットインジェクション法を用いる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
  13. 前記前処理工程において、ホットインジェクション法を用いる、請求項2乃至12のいずれか一項に記載のInP半導体微粒子の製造方法。
JP2012154658A 2012-07-10 2012-07-10 InP半導体微粒子の製造方法 Pending JP2014015549A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012154658A JP2014015549A (ja) 2012-07-10 2012-07-10 InP半導体微粒子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012154658A JP2014015549A (ja) 2012-07-10 2012-07-10 InP半導体微粒子の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014015549A true JP2014015549A (ja) 2014-01-30

Family

ID=50110538

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012154658A Pending JP2014015549A (ja) 2012-07-10 2012-07-10 InP半導体微粒子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014015549A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016146719A1 (en) * 2015-03-19 2016-09-22 Universiteit Gent Size-tunable nanoparticle synthesis
WO2018084262A1 (ja) * 2016-11-07 2018-05-11 昭栄化学工業株式会社 量子ドットの製造方法および有機ホスフィン

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016146719A1 (en) * 2015-03-19 2016-09-22 Universiteit Gent Size-tunable nanoparticle synthesis
EP3271063B1 (en) * 2015-03-19 2019-12-25 Universiteit Gent Size-tunable nanoparticle synthesis
US10532403B2 (en) 2015-03-19 2020-01-14 Universiteit Gent Size-tunable nanoparticle synthesis
WO2018084262A1 (ja) * 2016-11-07 2018-05-11 昭栄化学工業株式会社 量子ドットの製造方法および有機ホスフィン
CN109923065A (zh) * 2016-11-07 2019-06-21 昭荣化学工业株式会社 量子点的制造方法和有机膦
KR20190082249A (ko) * 2016-11-07 2019-07-09 소에이 가가쿠 고교 가부시키가이샤 양자점의 제조 방법 및 유기 포스핀
KR102331169B1 (ko) 2016-11-07 2021-11-26 소에이 가가쿠 고교 가부시키가이샤 양자점의 제조 방법 및 유기 포스핀
CN109923065B (zh) * 2016-11-07 2022-11-04 昭荣化学工业株式会社 量子点的制造方法和有机膦

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6730474B2 (ja) カドミウムフリー量子ドットナノ粒子
Chen et al. Non-injection gram-scale synthesis of cesium lead halide perovskite quantum dots with controllable size and composition
JP6138287B2 (ja) Iii−v族/カルコゲン化亜鉛合金半導体量子ドット
JP5425201B2 (ja) 半導体量子ドットの合成方法
JP4994599B2 (ja) InP微粒子の製造方法およびその方法で得られたInP微粒子分散液
JP6960109B2 (ja) 量子ドットの製造方法および有機ホスフィン
KR101187663B1 (ko) 인듐포스파이드 양자점 코어 및 인듐포스파이드/황화아연 코어-쉘 양자점 합성 방법
TW201341605A (zh) 高量子產率之InP/ZnS奈米結晶的連續合成
JP5698679B2 (ja) コロイドナノ結晶の低温合成
JP5127890B2 (ja) 微粒子の製造方法および有機カルボン酸インジウムの製造方法
CN110143579B (zh) 一种纳米晶体的制备方法
CN105531804A (zh) 硒化铜纳米粒子的制备
Stan et al. Highly luminescent polystyrene embedded CdSe quantum dots obtained through a modified colloidal synthesis route
Thuy et al. Low temperature synthesis of InP nanocrystals
JP2014015549A (ja) InP半導体微粒子の製造方法
JP5602808B2 (ja) 狭い発光スペクトルを有するナノ粒子の調製
JPWO2018092639A1 (ja) コアシェル粒子、コアシェル粒子の製造方法およびフィルム
WO2018092638A1 (ja) コアシェル粒子、コアシェル粒子の製造方法およびフィルム
Pathipati Vacuum-assisted low-temperature growth of perovskite nanocrystals reaching near-unity photoluminescence quantum yield
KR102081848B1 (ko) 금속 할로겐 페로브스카이트 나노입자 제조방법 및 금속 할로겐 페로브스카이트 나노입자 분산액
US10868222B2 (en) Method of manufacturing gallium nitride quantum dots
KR100842376B1 (ko) 망간 도핑된 황화아연 나노입자의 제조방법
JP2024067183A (ja) 量子ドットの合成方法
Arslanova et al. Synthesis of Cs3Cu2I5 Nanocrystals in a Continuous Flow System
KR20090008096A (ko) 자기적 성질과 광학적 성질을 동시에 갖는 도핑된 양자점과그의 제조방법