JP2014015089A - エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアバッグの展開膨張に際して基布の結合部分において発生する応力を低減することのできるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ4は、高圧膨張室11と、低圧膨張室12と、それら高圧膨張室11及び低圧膨張室12を連通する連通路14とを有する。エアバッグ4の内部に膨張用ガスを供給するガス供給口5Aが、連通路14の内部に向けて膨張用ガスを噴出する態様で低圧膨張室12の内部に配設される。連通路14は、高圧膨張室11及び低圧膨張室12を連通する連通口の縁部を始点に高圧膨張室11内に向けて延びる形状であり、且つエアバッグ4の展開膨張時において同エアバッグ4の基布10の外縁部に形成された縫い目10Bとガス供給口5Aとの間を遮る形状に形成される。
【選択図】図6

Description

本発明は、車両用のエアバッグ装置に関するものである。
近年、自動車等の車両に、座席に着座した乗員を車両の衝突等の衝撃から保護するためのエアバッグ装置を設けることが多用されている。エアバッグ装置としては、例えば車両の座席に設けられたエアバッグの内部に膨張用ガスを供給することにより、座席に着座した乗員の側方であって同乗員と車両のボディサイド部との間に同エアバッグを膨張展開させるものが知られている。
また、そうしたエアバッグ装置において、エアバッグを複数の膨張室に仕切ることが実用されている。例えば特許文献1に記載の装置では、エアバッグが上下方向において二つの膨張室に仕切られている。そして、エアバッグの展開膨張に際しては、ガス発生器としてのインフレータ(詳しくは、そのガス供給口)から各膨張室の内部に向けて膨張用ガスが噴出する構造になっている。
特開2011−126413号公報
一般に、エアバッグは、一枚の基布を二つに折った状態あるいは二枚の基布を重ね合わせた状態でその外縁部分を結合(例えば縫製や接着)することによって袋形状に形成される。こうしたエアバッグが展開膨張する際には、同エアバッグの内部圧力が、基布の結合部分を離間させるように作用する。そのため、上記基布の結合部分には高い結合力が要求される。
上述した装置では、エアバッグの展開膨張に際して各膨張室の内部に向けて膨張用ガスが噴出するため、同膨張用ガスが膨張室の内部を経て基布の外縁部分、すなわち上記結合部分に到達して吹き付けられるようになる。膨張用ガスは高圧であるため、このとき膨張用ガスが吹き付けられる部分(上記結合部分)に大きな応力が発生してしまう。このようにして上記結合部分に大きな応力の発生を招くことは、エアバッグの信頼性の更なる向上を図る上で好ましくない。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグの展開膨張に際して基布の結合部分において発生する応力を低減することのできるエアバッグ装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、第1膨張室及び第2膨張室を有するエアバッグと、前記エアバッグ内において前記第1膨張室及び前記第2膨張室を連通する連通口と、前記連通口の内部に向けて膨張用ガスを噴出する態様で前記第2膨張室の内部に配設されて、前記エアバッグの内部に膨張用ガスを供給するガス供給口と、前記連通口の縁部を始点に前記第1膨張室内に向けて延び、且つ前記エアバッグの展開膨張時において前記エアバッグの基布の外縁部に形成された結合部分と前記ガス供給口との間を遮る形状で延びる連通路と、を備えることをその要旨とする。
上記装置では、エアバッグの展開膨張に際して、第2膨張室内に配設されたガス供給口から噴出する膨張用ガスが連通口を介して連通路に流入する。そして、この膨張用ガスは上記連通路によって案内されて第2膨張室内から第1膨張室内に流入する。また上記装置では、ガス供給口からの膨張用ガスの噴出方向が上記連通口に指向しており、さらには上記ガス供給口と連通口とを繋ぐ直線を延長した先に配置される前記結合部分にも指向している。そのため、基布の上記結合部分への膨張用ガスの吹き付けに起因して同結合部分に大きな応力が発生することが懸念される。
この点、上記装置では、エアバッグの展開膨張に際して、上記連通口を始点に延びる形状の連通路により、上記ガス供給口と上記結合部分との間が遮られる。そのため、ガス供給口から噴出して連通路内に流入した膨張用ガスの流れが同連通路の内壁に衝突するようになり、この衝突に伴い、同膨張用ガスの流れが有するエネルギが低下するようになる。
このように上記装置によれば、ガス供給口から噴出した膨張用ガスを、その流れが有するエネルギを低下させた上で第1膨張室内に流入させることができる。そのため、第1膨張室内に流入した膨張用ガスが基布の結合部分に吹き付けられるとはいえ、膨張用ガスの流れが連通路によって遮られることなく基布の結合部分に吹き付けられる比較例の装置と比較して、同膨張用ガスの流れが有するエネルギを小さく抑えることができる。したがって上記装置によれば、エアバッグの展開膨張に際して基布の結合部分において発生する応力を低減することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアバッグ装置において、当該装置は、前記エアバッグの展開膨張時において前記第1膨張室に膨張用ガスを優先的に供給するものであり、前記連通路は、前記第1膨張室の展開膨張に際して筒形状になる形状のシートにより形成されて、前記第1膨張室の展開膨張の完了時に前記シートの対向する部分が互いに接近して前記第1膨張室から前記第2膨張室への膨張用ガスの流出を抑制する逆止弁として機能することをその要旨とする。
上記装置では、エアバッグの展開膨張に際して第1膨張室に膨張用ガスが優先的に供給されるとともに、第1膨張室の展開膨張が完了すると逆止弁として機能する連通路によって第1膨張室から第2膨張室への膨張ガスの流出が抑制されるため、第1膨張室の内部圧力が第2膨張室の内部圧力と比較して高くなる。エアバッグでは、その内部圧力が高いものほど、基布の結合部分に要求される結合力が大きくなるため、同結合部分において発生する応力が問題になりやすい。
上記装置によれば、エアバッグの中でも内部圧力が高くなる第1膨張室の内部において、基布の結合部分に生じる応力を小さく抑えることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のエアバッグ装置において、前記エアバッグは、シートにより形成された隔壁によって前記第1膨張室と前記第2膨張室とが区画されてなり、前記連通路は、前記シートによって前記隔壁と一体に形成されてなることをその要旨とする。
上記装置によれば、上記隔壁と連通路とが別体で形成される比較例の装置と比較して、エアバッグを簡素な構造にすることができるため、その製造を容易に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記結合部分が前記基布の外縁に沿う形状に延設されてなり、前記連通路は、前記結合部分の中でも同部分の延設方向における曲率であって且つ前記第1膨張室の内部側から見て凹形状になる方向への曲率が最も小さい部位に、前記第1膨張室の内部に流入する膨張用ガスの流れを指向させる形状に形成されてなることをその要旨とする。
基布の結合部分が同基布の外縁に沿う形状に延設される装置では、同結合部分の延設方向における曲率(詳しくは、第1膨張室の内部側から見て凹形状になる方向への曲率)が大きい部位ほど、膨張用ガスの流れの集中を招き易いために、膨張用ガスの吹き付けに起因して発生する応力が大きくなり易い。
上記装置によれば、上記曲率が最も小さい部位、すなわち膨張用ガスの吹き付けに起因して発生する応力が小さく抑えられる部位に、連通路から第1膨張室内に流入する膨張用ガスが吹き付けられるようになる。そのため、基布の結合部分において発生する応力を好適に低減することができる。
本発明によれば、エアバッグの展開膨張に際して基布の結合部分において発生する応力を低減することができる。
本発明のエアバッグ装置が適用された車両の座席を乗員及びエアバッグとともに示す側面図。 同座席の背もたれに組み込まれたエアバッグ及びインフレータをボディサイド部とともに示す部分平断面図。 図2の状態からエアバッグが背もたれから飛び出して膨張展開した状態を示す部分平断面図。 車両の座席及びボディサイド部の位置関係を乗員及びエアバッグとともに示す正断面図。 車両の座席及びボディサイド部の位置関係を乗員及びエアバッグとともに示す平断面図。 エアバッグを拡大して示す側面図。 同エアバッグを形成する基布及びシートを示す平面図。 エアバッグの他の例を示す側面図。
以下、本発明を車両のエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
図1に示すように、エアバッグ装置1は、車両において乗員Pが着座する座席2の背もたれ2Aに折り畳まれた状態で設けられるエアバッグ4(破線)と、そのエアバッグ4に膨張用ガスを供給するためのインフレータ5と、そのインフレータ5によるエアバッグ4へのガスの供給を制御する制御装置6とを備えている。この制御装置6には車両のボディサイド部等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ7が接続されており、同衝撃センサ7は車両のボディサイド部に加えられた衝撃を検出する。そして、制御装置6は、衝撃センサ7からの検出信号に基づきインフレータ5を作動させてエアバッグ4にガスを供給する。
図2に示すように、背もたれ2Aの内部における車両のボディサイド部8に近い部分には、上記エアバッグ4が折り畳まれた状態で収納されるとともに、そのエアバッグ4に膨張用ガスを供給するための上記インフレータ5が収納されている。このインフレータ5は、背もたれ2Aの骨格をなすフレーム9に対し、上記折り畳まれた状態のエアバッグ4とともに固定されている。そして、こうしたエアバッグ4にインフレータ5から膨張用ガスが供給されると、折り畳まれた状態のエアバッグ4が膨張展開を開始する。これにより図3に示すように、エアバッグ4は、インフレータ5付近の部分を背もたれ2A内に残しつつ同背もたれ2Aから飛び出した状態となる。このようにエアバッグ4は、インフレータ5からの膨張用ガスの供給を通じて膨張する。
そして、図4及び図5に示すように、エアバッグ4は、上記座席2に着座した乗員Pの側方であって同乗員Pと車両のボディサイド部8との間に展開膨張するようになる。図4及び図5から明らかなように、上記エアバッグ4は、座席2に着座した乗員Pの側部における腰や胸といった部位に対応する位置で展開膨張する。
以下、上記エアバッグ4の基本的な構造について説明する。図6に展開膨張前のエアバッグ4の側面構造を示し、図7にエアバッグ4を形成する基布10の平面構造を示す。
図6及び図7に示すように、エアバッグ4は、一枚の基布10を折り目10Aにおいて二つに折って同基布10の外縁部同士を厚さ方向に重ねた状態にするとともに、それら外縁部を縫い目10Bに沿って互いに縫い合わせて結合することによって袋形状に形成されている。なお本実施形態では、上記基布10として、強度が高く可撓性を有する素材(例えばポリエステル糸やポリアミド糸)により形成された織布が用いられる。
エアバッグ4の内部には、同エアバッグ4を乗員P(図1参照)の腰の保護に用いる高圧膨張室11と同乗員Pの胸の保護に用いる低圧膨張室12とに区画するシート13が設けられている。本実施形態では、このシート13として、上記基布10と同一素材の織布が用いられる。
シート13は、一枚の布が上記基布10の折り目10Aに沿って二つに折られて厚さ方向に重ねられた状態で、同基布10における上記折り目10Aから同折り目10Aと向かい合う端部(図6中における右側の端部)まで延びる態様で配設されている。シート13の上記低圧膨張室12側(図6、図7中における上方側)の縁部は、互いに縫い合わされず、それぞれ縫い目13Aに沿って基布10に縫い合わされている。一方、シート13の上記高圧膨張室11側(図6、図7中における下方側)の縁部は、一部を除き基布10に縫い合わされず、その大部分(詳しくは、縫い目13B,13C,13Dの部分)が互いに縫い合わされている。シート13の上記高圧膨張室11側の縁部が互いに縫合される部分のうちの縫い目13Bは、上記基布10の折り目10Aを始点に、低圧膨張室12側の位置から高圧膨張室11の内部に向かって直線状に延びる形状で形成される。一方、縫い目13Cは、基布10における折り目10Aと向かい合う端部(図6中の右側の端部)を始点に、同折り目10Aとほぼ直交する方向に延びる形状で形成される。他方、縫い目13Dは、縫い目13Cの上記折り目10A側(図6中の左側)の端部から連続して延びる形状であり、且つ上記縫い目13Bと間隔を置いてほぼ平行に延びる形状に形成される。
図7は、図6に示すエアバッグ4の基布10の縫い目10Bに沿った縫い合わせ、及びシート13の縫い目13B,13C,13Dに沿った縫い合わせを解いて、折り目10Aを中心に上記基布10及びシート13を開いた状態を示す平面図である。図7に示すように、シート13は、低圧膨張室12側(図7中の上方側)の縁部が縫い目13Aに沿って基布10に縫い合わされている。この基布10及びシート13を折り目10Aを中心に二つに折ることにより、基布10の縫い目10Bを厚さ方向に重ね合わせるとともに、シート13の縫い目13B,13C,13Dを厚さ方向に重ね合わせる。そして、そのようして重なった状態のシート13を縫い目13B,13C,13Dに沿って縫い合わせるとともに、厚さ方向に重なった状態の基布10を縫い目10Bに沿って縫い合わせる。本実施形態では、このようにして基布10及びシート13の縫い合わせを行うことによってエアバッグ4が形成される。
図6及び図7に示すように、シート13における上記縫い目13Cが形成される部分は、低圧膨張室12側の縁部が縫い目13Aにおいて各別に基布10に結合されるとともに高圧膨張室11側の縁部が縫い目13Cにおいて互いに結合されるため、エアバッグ4の内部を高圧膨張室11と低圧膨張室12とに区画する隔壁として機能するようになる。
また、シート13における上記縫い目13B,13Dが形成される部分は、厚さ方向に重ねられた状態のシート13にほぼ平行に延びる形状の二本の縫い目13B,13Dが形成される構造であるため、高圧膨張室11と低圧膨張室12とを連通する通路(連通路14)として機能するようになる。この連通路14は、エアバッグ4の展開膨張時における膨張用ガスの流入によって筒形状になって膨張用ガスが通過する。この連通路14は、シート13における折り目10A寄りの位置に形成されている。
図6に示すように、インフレータ5は、低圧膨張室12の内部における上記折り目10A寄りの位置、言い換えれば上記連通路14の近傍に配設されている。インフレータ5は、詳しくは、そのガス供給口5Aからの膨張用ガスの噴出方向が高圧膨張室11と低圧膨張室12とを連通する連通口(本実施形態では、上記連通路14の低圧膨張室12側の開口)の内部に指向するようになる態様で取り付けられている。
このようにインフレータ5が配置されるため、同インフレータ5から噴出する膨張用ガスによって上記連通路14の内部に、低圧膨張室12側から高圧膨張室11側に向けて流れる膨張用ガスの流れが生じるようになる。そして、これによりインフレータ5から噴出した膨張用ガスが高圧膨張室11に優先的に供給されるようになる。なお、インフレータ5から噴出する膨張用ガスの一部は低圧膨張室12にも供給される。本実施形態では、このようにしてエアバッグ4の内部に膨張用ガスが供給されるため、高圧膨張室11の内部圧力を高くするとともに低圧膨張室12の内部圧力を低くすることができる。
本実施形態の装置は、エアバッグ4の展開膨張に際して、高圧膨張室11が十分に膨張した状態になると、連通路14を構成するシート13の対向する部分(詳しくは、縫い目13Bが形成された部分と縫い目13Dが形成された部分と)が互いに接近する構造になっている。このとき連通路14の通路断面積が小さくなるために、同連通路14が、高圧膨張室11から低圧膨張室12への膨張用ガスの流出を抑制する逆止弁として機能するようになる。これにより、高圧膨張室11の内部圧力を高圧に保持しつつ低圧膨張室12に膨張用ガスを供給することができるようになる。
なお、連通路14を構成するシート13の対向する部分は以下に記載する態様で互いに接近する。エアバッグ4は、その膨張に際して、基布10が湾曲する分だけ車両前後方向(図6中の左右方向)における長さが短くなる。エアバッグ4の内部において高圧膨張室11と低圧膨張室12とが上記シート13によって区画される部分(詳しくは、縫い目13Cが形成される部分)は、同シート13が各膨張室11,12を隔てる隔壁になる態様で基布10を支持しつつ車両前後方向に展開するために、車両前後方向の長さが短くなり難い構造になっている。これに対して、エアバッグ4の内部において上記シート13によって高圧膨張室11と低圧膨張室12とが区画されていない部分、すなわち連通路14が形成されている部分は、各膨張室11,12を隔てる隔壁が形成されないため、エアバッグ4の車両前後方向の長さが短くなり易い構造になる。そのため、上記エアバッグ4(具体的には、高圧膨張室11)の膨張に際しては、主に連通路14が形成された部分の車両前後方向における長さが短くなるように、同エアバッグ4が変形するようになる。そして、このとき連通路14を構成するシート13の対向する部分が互いに接近するようになる。
ここで、本実施形態の装置では、エアバッグ4の展開膨張に際して、その内部圧力が基布10の結合部分(縫い目10Bにおける縫合部分)を離間させるように作用するため、上記基布10の結合部分に高い結合力が要求される。また本実施形態の装置では、エアバッグ4の展開膨張に際して、その内部にインフレータ5のガス供給口5Aから膨張用ガスが噴出する。この膨張用ガスは高温高圧であるため、同膨張用ガスが基布10の外縁部分、すなわち上記結合部分に到達して吹き付けられると、同部分に大きな応力が発生するおそれがある。このようにして上記基布10の結合部分に大きな応力の発生を招くことは、エアバッグ4の信頼性の向上を図る上で好ましくない。
本実施形態の装置では、インフレータ5のガス供給口5Aからの膨張用ガスの噴出方向(図6中に白抜きの矢印で示す方向)が、連通路14の内部に指向しており、さらには上記ガス供給口5Aと連通路14の内部とを繋ぐ直線を延長した先(図中に矢印Eで示す部分)に配置される結合部分にも指向している。そのため、基布10の上記結合部分への膨張用ガスの吹き付けに起因して同結合部分に大きな応力が発生することが懸念される。
こうした実情をふまえて、本実施形態の装置では、前記連通路14が、エアバッグ4の展開膨張時において基布10の外縁部に形成された結合部分(具体的には、縫い目13B)とインフレータ5のガス供給口5Aとの間を遮る形状で延設されている。なお本実施形態では、連通路14の上記低圧膨張室12側の端部が同低圧膨張室12と高圧膨張室11とを連通する連通口として機能する。そして、この連通口を始点に高圧膨張室11の内部に向けて延びる形状で連通路14は形成されている。
(作用)
以下、本実施形態のエアバッグ装置の作用として、高圧膨張室11の膨張時における膨張用ガスの流通態様について説明する。
本実施形態の装置では、エアバッグ4の展開膨張に際して、連通路14により、インフレータ5のガス供給口5Aと基布10の結合部分(具体的には、縫い目10Bが形成された部分)との間が遮られる。そのため、ガス供給口5Aから噴出して連通路14内に流入した膨張用ガスの流れが同連通路14の内壁に衝突するようになり、この衝突に伴い、同膨張用ガスの流れが有するエネルギが低下するようになる。したがって、ガス供給口5Aから噴出した膨張用ガスを、その流れが有するエネルギを低下させた上で高圧膨張室11の内部に流入させることができる。
そのため、高圧膨張室11内に流入した膨張用ガスが基布10の結合部分に吹き付けられるとはいえ、膨張用ガスの流れが連通路によって遮られることなく基布の結合部分に吹き付けられる比較例の装置と比較して、同膨張用ガスの流れが有するエネルギを小さく抑えることができる。したがって、エアバッグ4の展開膨張に際して基布10の結合部分において発生する応力を低減することができる。
ここで、エアバッグでは、その内部圧力が高いものほど、基布の結合部分に要求される結合力が大きくなるため、同結合部分において発生する応力が問題になりやすい。本実施形態の装置は、低圧膨張室12と比較して内部圧力が高い高圧膨張室11の内部に向けて膨張用ガスを流入させる構造であるために、上記応力の発生が問題になりやすいと云える。この点、本実施形態によれば、エアバッグ4の中でも内部圧力が高くなる高圧膨張室11の内部において、基布10の結合部分に生じる応力を小さく抑えることができる。
本実施形態の装置では、高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を区画する隔壁として機能する部分と、高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を連通する連通路14とが、シート13によって一体に形成される。そのため、それら隔壁として機能する部分と連通路14とが各別に形成される比較例の装置と比較して、エアバッグ4を簡素な構造にすることができ、その製造を容易に行うことができる。
なお本実施形態の装置では、インフレータ5のガス供給口5Aから噴出した膨張用ガスが連通路14における縫い目13Bが形成された部分に吹き付けられるため、同部分において応力が発生する懸念がある。この点、上記連通路14は膨張用ガスの通過に際してその流れを偏向する構造であり、膨張用ガスの流れを止める構造ではないため、膨張用ガスが吹き付けられる結合部分において応力が発生するとはいえ、その応力はさほど大きくならない。
本実施形態の装置では、連通路14の内壁に衝突して偏向された膨張用ガスの流れ(図6中に黒塗りの矢印で示す流れ)が、上記基布10の外縁において結合部分の延設方向における曲率が最も小さい部位(具体的には、縫い目10Bが直線状に延びる部分:図中に矢印Fで示す部分)に吹き付けられるようになっている。
高圧膨張室11の内部においては、基布10の結合部分の延設方向における曲率(詳しくは、高圧膨張室11の内部側から見て凹形状になる方向への曲率)が大きい部位ほど、膨張用ガスの流れの集中を招き易いために、膨張用ガスの吹き付けに起因して発生する応力が大きくなり易い。そのため、膨張用ガスの吹き付けに起因して生じる応力を小さく抑えるためには、基布10の結合部分の延設方向における曲率が小さい部位に膨張用ガスが吹き付けられる構造を採用することが好ましい。
この点、本実施形態では、上記曲率が最も小さい部位、すなわち膨張用ガスの吹き付けに起因して発生する応力が小さく抑えられる部位に、連通路14から高圧膨張室11内に流入する膨張用ガスが吹き付けられるようになる。そのため、基布10の結合部分において発生する応力を好適に低減することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)連通路14を、エアバッグ4の展開膨張時において基布10の外縁部に形成された結合部分とインフレータ5のガス供給口5Aとの間を遮る形状で延設した。そのため、高圧膨張室11内に流入した膨張用ガスが基布10の結合部分に吹き付けられるとはいえ、膨張用ガスの流れが連通路によって遮られることなく基布の結合部分に吹き付けられる比較例の装置と比較して、同膨張用ガスの流れが有するエネルギを小さく抑えることができる。したがって、エアバッグ4の展開膨張に際して基布10の結合部分において発生する応力を低減することができる。
(2)エアバッグ4の中でも内部圧力が高くなる高圧膨張室11の内部において、基布10の結合部分に生じる応力を小さく抑えることができる。
(3)高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を区画する隔壁として機能する部分と、高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を連通する連通路14とを、シート13によって一体に形成するようにした。そのため、それら隔壁として機能する部分と連通路14とが別体で形成される比較例の装置と比較して、エアバッグ4を簡素な構造にすることができ、その製造を容易に行うことができる。
(4)連通路14の内壁に衝突して偏向された膨張用ガスの流れが上記基布10の結合部分の延設方向における曲率が最も小さい部位に吹き付けられるように、連通路14を形成した。そのため、基布10の結合部分において発生する応力を好適に低減することができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・インフレータ5をエアバッグ4の外部に設け、同インフレータ5から噴射されたガスを管等によってエアバッグ4内に供給するようにしてもよい。この場合には、エアバッグ4内において膨張用ガスが噴出するガス供給口を、連通路14の内部に向けて膨張ガスを噴出する態様で低圧膨張室12の内部に配置すればよい。
・連通路14(詳しくは、シート13を縫い合わせる縫い目13B,13D)を直線形状で延設することに代えて、若干湾曲した形状で延設するようにしてもよい。
・エアバッグ4を形成するための基布10は、必ずしも折り目10Aで二つに折られて厚さ方向に重ねられるものである必要はない。例えば、二枚の基布を厚さ方向に重ねるとともにその外縁部を互いに縫い合わせることによってエアバッグを形成してもよい。
・シート13は、必ずしも折り目10Aで二つに折られて厚さ方向に重ねられるものである必要はない。例えば、一枚のシートが縫い目13Bに相当する位置で二つに折られて厚さ方向に重ねられるものや、二枚のシートが厚さ方向に重ねられるものなどを、シート13に代えて採用することができる。
・上記実施形態の装置は、連通路14が逆止弁として機能せず、単に高圧膨張室11と低圧膨張室12とを連通する通路として機能する装置にも適用することができる。
・連通路14の内部から高圧膨張室11内に流入する膨張用ガスの流れが、前記基布10の外縁部において結合部分(詳しくは、縫い目10B)の延設方向における曲率が最も小さい部位以外の部位に吹き付けられるようにしてもよい。
・高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を区画する隔壁として機能する部分と、高圧膨張室11及び低圧膨張室12の間を連通する連通路14とを、別体に形成するようにしてもよい。
・図8に示すように、二つに折られた基布20の外縁部同士を縫い合わせた縫い目20Bの一部(図8中に矢印Gで示す部分)を、同基布20の外縁部付近から折り目20A付近まで延ばすことにより、エアバッグ40の内部を高圧膨張室21と低圧膨張室22とに区画する隔壁として機能させるようにしてもよい。図8に示す例では、エアバッグ40の内部に、連通路24を形成するべく、基布20の折り目20Aに沿って二つに折られて厚さ方向に重ねられた状態のシート23が設けられる。このシート23の上記低圧膨張室22側の縁部は、互いに縫い合わされず、それぞれ縫い目23Aに沿って基布20に縫い合わされる。また、シート23には、基布20に縫い合わされず、且つ互いに縫い合わされる部分(詳しくは、縫い目23B,23D)が形成される。縫い目23Bは、上記基布20の折り目20Aを始点に、低圧膨張室22側の位置から高圧膨張室21の内部に向かって直線状に延びる形状で形成される。縫い目23Dの上記高圧膨張室21側の部分は、上記縫い目23Bと間隔を置いてほぼ平行に延びる形状に形成される。縫い目23Dの上記低圧膨張室22側の部分は、基布20の折り目20Aと平行に延びる形状に形成される。図8に示す例では、シート23における上記縫い目23B,23Dが形成される部分が、高圧膨張室21と低圧膨張室22とを連通する連通路24として機能する。
・基布10,20やシート13,23を、互いに縫い合わせることによって結合することに限らず、接着等の他の手法を用いて互いに結合するようにしてもよい。
・本発明は、乗員の側方においてエアバッグを展開膨張させるエアバッグ装置に限らず、乗員の膝部を保護するべく同乗員の下肢の前下方でエアバッグを膨張させるエアバッグ装置等にも適用することができる。
1…エアバッグ装置、2…座席、2A…背もたれ、4,40…エアバッグ、5…インフレータ、5A…ガス供給口、6…制御装置、7…衝撃センサ、8…ボディサイド部、9…フレーム、10,20…基布、10A,20A…折り目、10B,20B…縫い目、11,21…高圧膨張室(第1膨張室)、12,22…低圧膨張室(第2膨張室)、13,23…シート、13A,13B,13C,13D、23A,23B,23D…縫い目、14,24…連通路。

Claims (4)

  1. 第1膨張室及び第2膨張室を有するエアバッグと、
    前記エアバッグ内において前記第1膨張室及び前記第2膨張室を連通する連通口と、
    前記連通口の内部に向けて膨張用ガスを噴出する態様で前記第2膨張室の内部に配設されて、前記エアバッグの内部に膨張用ガスを供給するガス供給口と、
    前記連通口の縁部を始点に前記第1膨張室内に向けて延び、且つ前記エアバッグの展開膨張時において前記エアバッグの基布の外縁部に形成された結合部分と前記ガス供給口との間を遮る形状で延びる連通路と
    を備えるエアバッグ装置。
  2. 請求項1に記載のエアバッグ装置において、
    当該装置は、前記エアバッグの展開膨張時において前記第1膨張室に膨張用ガスを優先的に供給するものであり、
    前記連通路は、前記第1膨張室の展開膨張に際して筒形状になる形状のシートにより形成されて、前記第1膨張室の展開膨張の完了時に前記シートの対向する部分が互いに接近して前記第1膨張室から前記第2膨張室への膨張用ガスの流出を抑制する逆止弁として機能する
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1または2に記載のエアバッグ装置において、
    前記エアバッグは、シートにより形成された隔壁によって前記第1膨張室と前記第2膨張室とが区画されてなり、
    前記連通路は、前記シートによって前記隔壁と一体に形成されてなる
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、
    前記エアバッグは、前記結合部分が前記基布の外縁に沿う形状に延設されてなり、
    前記連通路は、前記結合部分の中でも同部分の延設方向における曲率であって且つ前記第1膨張室の内部側から見て凹形状になる方向への曲率が最も小さい部位に、前記第1膨張室の内部に流入する膨張用ガスの流れを指向させる形状に形成されてなる
    ことを特徴とするエアバッグ装置。
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