[A.第1実施例]
[A−1.装置構成]
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としての排水処理装置800の処理フローを示す説明図である。本実施例の排水処理装置800は、一般家庭等からの排水の浄化処理を行う(このような装置は「浄化槽」とも呼ばれる)。排水処理装置800は、複数のステップを経て浄化処理を行うために、上流側(図1の左側)から順番に、夾雑物除去槽810、嫌気濾床槽820、接触濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850を、収容している。排水処理装置800に流入した排水は、夾雑物除去槽810、嫌気濾床槽820、接触濾床槽830、処理水槽840、消毒槽850で順次処理された後に、排水処理装置800の外部に放流される。以下、各水処理槽を流れる水を「被処理水」あるいは、単に「水」と呼ぶ。また、排水処理装置800には、ブロワ500が接続されている。排水処理装置800は、ブロワ500によって供給される酸素を含むガス(ここでは、空気)を利用して、浄化処理を進行する。
図2は、排水処理装置800を横から見た概略構成を示している。図3は、図2中のA−A断面から下方に向かって見た排水処理装置800の概略構成を示している。図4は、図2中のB−B断面から夾雑物除去槽810側に向かって見た排水処理装置800の概略構成を示している。図5は、接触濾床槽830と処理水槽840と消毒槽850とを示す斜視図である。これらの図中において、Z方向は、鉛直方向の下方から上方へ向かう方向を示し、X方向は、排水処理装置800の長手方向(水平な方向)を示し、Y方向は、X方向とZ方向とのそれぞれと直交する方向(水平な方向)を示している。以下、X方向側を「+X側」とも呼び、X方向の反対方向側を「−X側」とも呼ぶ。Y方向、Z方向についても、同様である。
夾雑物除去槽810(図1)は、排水中の夾雑物を分離する水処理槽である。図2、図3に示すように、夾雑物除去槽810は、排水処理装置800の外壁を成す槽本体801の最上流部に配置されている。流入口802からの排水(汚水とも呼ばれる)は、まず、夾雑物除去槽810に流入する。夾雑物除去槽810は、流入バッフル812等の固液分離手段を有しており、排水中の夾雑物を被処理水から分離する。夾雑物が分離(除去)されたあとの水は、移流開口814を通じて、嫌気濾床槽820に移流する。
嫌気濾床槽820(図1)は、嫌気性微生物による嫌気処理を行う水処理槽である。図2、図3に示すように、嫌気濾床槽820は、嫌気性微生物が付着するための濾材822を有している。嫌気処理によって、被処理水中の有機物が分解される。また、後述するように、嫌気濾床槽820には、接触濾床槽830で好気処理された水(硝酸イオンを含む水(硝化液とも呼ばれる))が、循環エアリフトポンプ860と夾雑物除去槽810とを通じて、流入する。嫌気濾床槽820では、嫌気性微生物に含まれる脱窒菌の働きにより、硝酸イオンから窒素ガスが生成されて、空気中に放出される(いわゆる脱窒)。また、濾材822は、被処理水中の浮遊物を捕捉し得る。
図2、図3に示すように、嫌気濾床槽820の下流側(+X側)の側壁803は、槽本体801を、X方向に対して垂直に、2つに仕切っている(以下、側壁803を「仕切板803」とも呼ぶ)。図3に示すように、仕切板803の下流側(+X側)には、上から見て略U字状に配置された側壁部843、842、844が、固定されている。仕切板803と側壁部843、842、844で囲まれる空間が、処理水槽840に相当する。処理水槽840の下部分849は、いわゆるホッパー構造を有している(以下、この下部分849を「ホッパー部分849」とも呼ぶ)。処理水槽840の周囲の空間(処理水槽840の+Y側と+X側と−Y側との3方向側の空間)は、接触濾床槽830に相当する。
第2側壁部842(図3)は、仕切板803と対向するように、配置されている。第3側壁部843は、第2側壁部842の+Y側の端部と、仕切板803の+Y側の端よりも−Y側の部分とを接続する。第4側壁部844は、第2側壁部842の−Y側の端部と、仕切板803の−Y側の端よりも+Y側の部分とを接続する。以下、仕切板803のうちの第3側壁部843と第4側壁部844との間の部分(処理水槽840の側壁として機能する部分)を、「第1側壁部841」とも呼ぶ。
仕切板803(図2、図3)における嫌気濾床槽820と接触濾床槽830との境界を成す部分には、移流開口824が形成されている。移流開口824は、仕切板803の上部に配置されており、通常時には、水面WL(後述する低水位LWL)は、この移流開口824の途中に位置する。嫌気濾床槽820で処理された水は、移流開口824を通じて、接触濾床槽830に移流する。
接触濾床槽830(図1)は、好気性微生物による好気処理を行う水処理槽である。図2、図4、図5に示すように、接触濾床槽830の下部(移流開口836よりも上)には、格子状の架台839が設けられている。架台839の上には、散気装置834が載置されている。また、架台839(散気装置834)の上には、微生物を担持するための接触材832および好気濾材833が配置されている。以下、接触材832と好気濾材833との全体を、担持部材835と呼ぶ。好気濾材833は、架台839の上に配置され、接触材832は、好気濾材833の上に配置されている。散気装置834と接触材832と好気濾材833とは、処理水槽840の両側(+Y側と−Y側)に配置されている(図3〜図5)。好気濾材833は、さらに、処理水槽840の+X側にも、配置されている(図5)。以下、+Y側と−Y側とに配置された2つの同じ部材を区別する場合に、+Y側の部材の符号の末尾に文字「p」を付加し、−Y側の部材の符号の末尾に文字「m」を付加する。+Y側の接触材832pの下方に配置された好気濾材833を、好気濾材833pとも呼ぶ。−Y側の接触材832mの下方に配置された好気濾材833を、好気濾材833mとも呼ぶ。
散気装置834(図4)には、ブロワ500から、酸素を含むガス(ここでは、空気)が供給される。散気装置834とブロワ500との接続については、後述する。散気装置834は、底面に設けられた複数の孔(図示省略)を有するパイプを用いて構成されている。図5中の矢印は、水の流れを示し、多数の小円BBは、散気装置834によって供給された気泡を示している。図示するように、散気装置834は、酸素を含む気泡BBを、担持部材835に供給する。散気装置834から吐出された多数の気泡BBは、担持部材835(部材832、833)の内部を通過して、水面WLに到達する。担持部材835(部材832、833)に担持された好気性微生物は、気泡BBに含まれる酸素を利用して、被処理水中の有機物を分解する。また、好気性微生物に含まれる硝化菌の働きにより、被処理水に含まれるアンモニウムイオンが酸化されて、亜硝酸イオン、そして、硝酸イオンが生成される(硝化)。硝酸イオンを含む水(硝化液)は、後述する循環エアリフトポンプ860によって、夾雑物除去槽810に移送される。
図5には、接触材832と好気濾材833との概略構成が示されている。接触材832は、多数の波状の凹凸を有する樹脂製の複数の板を所定間隔で並べて配置したものである。接触材832は、図示しない固定具によって、接触濾床槽830内に(具体的には、仕切板803と側壁部843、844とに)固定されている。
好気濾材833は、樹脂製の網状の骨格体を円筒状に構成したものである。架台839と接触材832との間の空間に、多数の円筒状の部材(好気濾材833)が充填されている。また、好気濾材833は、処理水槽840のホッパー部分849(図2)と槽本体801との間の空間にも、充填されている。排水処理装置800が完成した状態では、多数の好気濾材833は、槽本体801と架台839と接触材832と処理水槽840(側壁部843、842、844)とに囲まれている。好気濾材833は、自由な流動を行うことができずに、接触濾床槽830内でほぼ静止している。このように、接触濾床槽830内でほぼ静止しているので、好気濾材833は、接触濾床槽830内に固定されている、ということができる。
また、散気装置834は、好気濾材833の下方に配置されている。散気装置834から吐出された気泡BBは、好気濾材833に接触する。上述したように、好気濾材833は、網状の構造を有している。従って、気泡BBは、網状の好気濾材833によって、細分化される。この結果、酸素溶解効率を向上することができる。このように、担持部材は、網状の構造を有する網状部材(例えば、好気濾材833)を含み、散気装置834は、網状部材の下方に配置されることが好ましい。
図2、図4に示すように、接触濾床槽830で処理された水は、接触濾床槽830の底部と処理水槽840の底部とを連通する移流開口836を通じて、処理水槽840に移流する。
処理水槽840(図1)は、接触濾床槽830から移流した水を一時的に滞留して、水中の固形物(例えば、汚泥や浮遊物質等)を沈降・分離する水処理槽である。図2に示すように、処理水槽840は、ホッパー部分849を有している。ホッパー部分849では、第2側壁部842が鉛直方向に対して傾斜しており、処理水槽840の断面積(水平な断面積)は、処理水槽840の底壁845に近いほど小さい。また、図4に示すように、ホッパー部分849の下部分849Lでは、さらに、第3側壁部843と第4側壁部844とのそれぞれも、鉛直方向に対して傾斜している。この下部分849Lは、いわゆる3面ホッパー構造を有している。処理水槽840中の分離された固形物は、側壁部842、843、844によって、処理水槽840の底部(処理水槽840の上部よりも狭い空間)に集められる。
図2に示すように、仕切板803(第1側壁部841)の下端は、槽本体801の底面に接続されている。一方、図2、図4に示すように、他の側壁部842、843、844の下端は、槽本体801の底面から離れている。側壁部842、843、844の下端と、槽本体801の底面との間の隙間は、移流開口836に相当する。
図2に示すように、処理水槽840には、循環エアリフトポンプ860が設けられている。循環エアリフトポンプ860は、処理水槽840の底部から水面WL(後述する高水位HWL)よりも上まで上方に向かって延びる縦管861を有している。縦管861の上部(高水位HWLよりも上の部分)には、夾雑物除去槽810の水面WLの上方まで、緩い下り勾配で延びる移流管863が接続されている。縦管861の底部側の端は吸入口862を形成している。移流管863の夾雑物除去槽810側の端は排出口864を形成している。循環エアリフトポンプ860は、処理水槽840の底部から夾雑物除去槽810へ、固形物や水(硝化液)を移送(返送)する。上述したように、処理水槽840の下部分849はホッパー構造を有しているので、処理水槽840で分離された固形物は、底部(吸入口862の近傍)の狭い空間に集められる。その結果、分離された固形物の処理水槽840からの除去を容易に行うことができる。なお、循環エアリフトポンプ860は、ブロワ500(図4)によって供給されたガスを利用して、動作する。循環エアリフトポンプ860とブロワ500との接続については、後述する。
消毒槽850(図1)は、被処理水を消毒する水処理槽である。消毒槽850は、処理水槽840の上部に配置されている(図2)。本実施例では、消毒槽850は、放流エアリフトポンプ870を有している。放流エアリフトポンプ870の吸入口872は、処理水槽840内の所定高さ(低水位LWLと呼ぶ)に配置されており、放流エアリフトポンプ870の排出口874は、消毒槽850の上流側に配置されている。処理水槽840の水面WL近傍の水(固形物が分離された水)は、吸入口872から放流エアリフトポンプ870に流入する。水面WLは、低水位LWLまで、下がり得る。放流エアリフトポンプ870に流入した水は、放流エアリフトポンプ870によって、消毒槽850に少しずつ移送される。放流エアリフトポンプ870は、ブロワ500(図4)によって供給されたガスを利用して、動作する。また、消毒槽850は、消毒剤(例えば、固形塩素剤)が充填された薬剤筒854を有している。消毒槽850では、被処理水は消毒剤と接触し、消毒剤によって被処理水が消毒される。消毒された水は、流出口804を通じて、排水処理装置800の外部へ放流される。
一時的に大量の排水が排水処理装置800に流入した場合には(例えば、ピーク流入時)、放流エアリフトポンプ870よりも上流側の水処理槽810、820、830、840の水位WLは、一時的に、通常時の水位(図中の低水位LWL)よりも上昇し得る。図2の実施例では、水位WLは、高水位HWLまで、上昇し得る(高水位HWL以下の水位では、オーバーフローしない)。このように、ピーク流入時には、複数の水処理槽810、820、830、840の水位が一時的に上昇することによって、接触濾床槽830からの単位時間当たりの流出量の増大が抑制される。この結果、接触濾床槽830から未処理の水が流出する可能性を低減できる。このように、放流エアリフトポンプ870は、ピーク流入に起因する接触濾床槽830からの単位時間当たりの流出量の増大を抑制する機構(「ピークカット機構」と呼ぶ)として、動作する。
次に、ブロワ500からのガスの流路について説明する。図4に示すように、槽本体801の上部には、送気口610が設けられている。排水処理装置800の外部では、送気口610には、接続パイプ502を介して、ブロワ500が接続されている。ブロワ500は、駆動部510と、制御部520と、を有している。駆動部510は、ソレノイドと振動子とダイアフラムと圧縮室とを有し(図示省略)、空気を圧送する装置である。駆動部510としては、ダイアフラム式の装置に限らず、ロータリー式等の種々の空気を圧送する装置を採用可能である。制御部520は、駆動部510を制御する装置である。制御部520は、タイマを含み、家庭用電源から電力供給を受けて、駆動部510を間欠運転する(詳細は後述)。
排水処理装置800の内部では、送気口610には、散気バルブ620と、循環バルブ630と、放流バルブ640とが、それぞれ接続されている。
散気バルブ620には、2本の送気パイプ622が接続されている。+Y側の送気パイプ622pは、+Y側の散気装置834pに接続され、−Y側の送気パイプ622mは、−Y側の散気装置834mに接続されている。散気バルブ620は、ブロワ500から供給されたガスを、+Y側の散気装置834pと、−Y側の散気装置834mとに、分配する。ユーザは、散気バルブ620を調整することによって、分配量(バランス)を調整することができる。
循環バルブ630には、送気パイプ632を介して、循環エアリフトポンプ860が接続されている。ユーザは、循環バルブ630を調整することによって、循環エアリフトポンプ860による単位時間当たりの移送量(循環水量)を調整することができる。
放流バルブ640には、図示しない送気パイプを介して、放流エアリフトポンプ870(図2、図3)が接続されている。ユーザは、放流バルブ640を調整することによって、放流エアリフトポンプ870による単位時間当たりの移送量(放流量)を調整することができる。
図6は、散気装置834と架台839との構成を示す概略図である。図中には、上方から下方に向かって見た、散気装置834と架台839と槽本体801と仕切板803と側壁部842、843、844と、接触材832と、が示されている。図示された側壁部842、843、844は、架台839と同じ高さ(ホッパー部分849(図2、図4)の途中の高さ)での断面から下方に向かって見た部分を示している。側壁部842、843、844と、架台839との間の隙間は、好気濾材833(図5)の大きさと比べて十分に小さい。図示された槽本体801と仕切板803とは、架台839よりも上方位置での断面から下方に向かって見た部分を示している。図2、図4に示すように、槽本体801の下半分の部分では、底に近いほど、槽本体801の大きさ(外形)が小さい。架台839と同じ高さでは、槽本体801の外形は図6に示す外形よりも小さく、槽本体801と架台839との間の隙間は、好気濾材833の大きさと比べて十分に小さい。同様に、仕切板803と架台839との間の隙間も、好気濾材833の大きさと比べて十分に小さい。
好気濾材833(図5)は、この架台839の上に配置される。従って、架台839の輪郭の内側の範囲(ハッチングが付された範囲)は、好気濾材833が配置された領域の底部の範囲と同じである。
散気装置834は、ループ部分834aと、直線部分834bと、を有している。ループ部分834aは、処理水槽840から見てY方向に隣接する空間に配置されている。上方から下方に向かって見た場合に、ループ部分834aは、接触材832と重なっている。直線部分834bは、処理水槽840の+X側に配置されており、ループ部分834aから、Y方向と平行に、処理水槽840側に向かって、延びている。直線部分834bは、ホッパー部分849(図2)と槽本体801との間の空間に配置されている。
図6中の黒丸834hは、散気孔を示している。実際には、散気孔834hは、散気装置834の底部に形成されている。図6には、散気装置834を透視して見た散気孔834hが、示されている。図示するように、ループ部分834aには、11個の散気孔834hが、おおよそ均等に配置されている。直線部分834bには、2つの散気孔834hが、配置されている。上方から下方に向かって見た場合に、複数の散気孔834hは、好気濾材833が配置された領域の底部の範囲(架台839の輪郭の内側の範囲(ハッチングが付された範囲))に分散して配置されている。従って、散気装置834は、好気濾材833が配置された領域の底部(すなわち、担持部材835の底部)のほぼ全域に気泡を供給することができるので、好気濾材833、ひいては、接触材832に、気泡が供給されない部分が生じる可能性を低減できる。また、架台839は、接触濾床槽830の底部の全域を覆っている。すなわち、散気装置834は、接触濾床槽830の底部のほぼ全面に亘って、気泡を供給する。
[A−2.実験結果]
次に、試験槽を用いた実験とその結果について説明する。この実験では、接触濾床槽830を間欠ばっ気で運転することによって、生物処理を実現しつつエネルギーを節約することを試みた。具体的には、家庭からの排水を想定して調整された原水を試験槽に流入させ、試験槽からの処理水の水質を測定した。また、接触濾床槽830におけるばっ気(散気)の様子も観察した。図7は、接触濾床槽830におけるばっ気の様子を示す概略図である。図8〜図11は、処理水の水質の測定結果を示すグラフである。横軸は、実験開始日からの経過日数を示し、縦軸は濃度(mg/L)を示している。濃度が測定下限値以下である場合には、濃度をゼロとしてプロットしている。図8は、生物化学的酸素要求量(BOD)を示し、図9は、浮遊物質(SS)を示し、図10は、全窒素(T−N)を示し、図11は、亜硝酸性窒素(NO2−N)、硝酸性窒素(NO3−N)、アンモニア性窒素(NH4−N)を示している。この実験では、おおよそ1週間毎に採水を行って、水質を測定した。
試験槽は、上述した排水処理装置800を、処理対象人員=5人を想定して、実現したものである。例えば、夾雑物除去槽810の容量は、1.048m3であり、嫌気濾床槽820の容量は、1.052m3であり、接触濾床槽830の容量は、0.482m3であり、処理水槽840の容量は、0.237m3であり、消毒槽850の容量は、0.015m3である。嫌気濾床槽820の濾材822の充填率は、おおよそ46%である。接触材832の充填率は、おおよそ16%である。好気濾材833の充填率は、おおよそ57%である。高水位HWLは、低水位LWLよりも、50mm高い。1つの接触材832(図5)の外形は、おおよそ、330mm×500mm×250mmの直方体である。1つの好気濾材833の外形は、直径100mm、高さ100mmの円筒状である。円筒の側壁部分の厚さは15mmである。散気孔834h(図6)の直径は3mmである。
原水は、一般家庭からの排水を想定して調整されている。調整された原水の水質は、以下の通りであった。実験期間内において、平均BODが200mg/L、平均T−Nが45mg/L、平均SSが160mg/Lであった。また、流入水量は、おおよそ1m3/日となるように調整されている。1日の流入パターンは、通常流入(13L/min)と、ピーク流入(59L/min)とを、以下のように組み合わせることによって、設定されている。
時刻:単位時間当たりの流入量: 流入時間 : 流入量
1時: 13L/min : 7.7分間:100L
2時: 13L/min :11.5分間:150L
3時: 13L/min : 6.9分間: 90L
13時: 13L/min : 2.3分間: 30L
14時: 13L/min : 6.9分間: 90L
15時: 59L/min : 4.2分間:250L
16時: 13L/min : 7.7分間:100L
17時: 13L/min : 2.3分間: 30L
18時: 13L/min : 2.3分間: 30L
19時: 13L/min : 3.8分間: 50L
23時: 13L/min : 2.3分間: 30L
24時: 13L/min : 3.8分間: 50L
「時刻」は、通常流入またはピーク流入を行った時刻を示している。「単位時間当たりの流入量」は、排水の単位時間当たりの流入量を示している。「流入時間」は、流入を継続した時間を示している。「流入量」は、排水の流入量を示している。例えば、1時には、通常流入(13L/min)が7.7分間に亘って継続されて、合計100Lの排水が排水処理装置800に流入する。記載の無い時刻には、排水の流入は行われない。
ブロワ500は、以下のように制御された。
第1期間P1( 0日目〜138日目):70L/min、連続運転
第2期間P2(138日目〜207日目):70L/min、60分−ON、10分−OFF
第3期間P3(207日目〜273日目):60L/min、60分−ON、10分−OFF
第4期間P4(273日目〜328日目):60L/min、50分−ON、20分−OFF
第5期間P5(328日目〜 ):60L/min、40分−ON、30分−OFF
ここで、日数は、実験開始からの経過日数である。また、「ON」の時間は、ブロワ500(駆動部510)を連続して駆動させる時間(「連続散気時間」と呼ぶ)を意味し、「OFF」の時間は、ブロワ500(駆動部510)を連続して停止させる時間(「連続停止時間」と呼ぶ)を意味している。例えば、「60分−ON、10分−OFF」は、60分間の連続駆動(散気)と10分間の連続停止(散気停止)とを交互に繰り返すことを示している。
70L/minの風量は、間欠運転(例えば、60分−ON、10分−OFF)を行った場合に、60L/minの風量で連続運転した場合と同等量の酸素を供給できる風量である。以下、風量について説明し、続けて、実験結果について説明する。
理論的な必要風量は、以下のように算出される。まず、目標水質を達成するために必要な酸素量が算出される。例えば、5人の処理対象人員に対応する流入水量が1m3/日であり、流入水の水質が、BOD=200mg/L、T−N=45mg/Lである場合に、BOD≦10mg/L、T−N≦10mg/Lの目標水質を達成するために必要な酸素量が、以下の式に従って算出される。
必要酸素量(kg-O2/d) = a×Lr+b×Sa+c×N
各パラメータa、Lr、b、Sa、c、Nは、以下の通りである。
a : 単位BOD除去あたりの必要酸素量(kg-O2/kg-BOD)
Lr: BOD除去量-脱窒量×3.0 (kg-BOD/d)
b : 単位MLSSあたりの内生呼吸による必要酸素量 (kg-O2/kg-MLSS)
Sa: MLSS量 (kg-MLSS)
c : 単位硝化量あたりの必要酸素量 (kg-O2/kg-N)
N : 硝化量 (kg-N/d)
次に、必要酸素量を得るために必要な総括酸素移動容量係数(「必要KLa」と呼ぶ)が算出される。必要KLaは、例えば、以下の式に従って算出される。
必要KLa(h-1) = Rr/{(CS-CL)×10-3}/24
各パラメータRr、CS、CLは、以下の通りである。
Rr:接触濾床槽の容量あたりの必要酸素量 (kg-O2/m3・d)
CS:20℃における飽和溶存酸素濃度 (g/m3)
CL:接触濾床槽が保持すべき溶存酸素濃度 (g/m3)
次に、総括酸素移動容量係数とばっ気強度との関係を実験的に求める。ここでは、試験槽を用いて、3.5〜8.7の範囲の種々のばっ気強度(m3/m3・h)で、処理水槽840の+Y側と−Y側との2カ所で、接触濾床槽830の総括酸素移動容量係数を測定した。+Y側と−Y側との間の差はほとんど無かった。測定結果の回帰直線を用いて算出された、必要KLaを実現するばっ気強度は、「3.6m3/m3・h」であった。
試験槽の接触濾床槽830の容量は「0.482m3」であるので、上記のばっ気強度(3.6m3/m3・h)を実現する風量は、「29L/min」である。しかし、この理論的な必要風量(ばっ気強度=3.6m3/m3・h)では、接触濾床槽830の散気に偏りが生じる可能性がある、すなわち、担持部材835の一部分において酸素が不足する可能性がある。そこで、接触濾床槽830の全面に亘って安定的にばっ気を行うために、十分な余裕を有するばっ気強度(5.5m3/m3・h)を実現する風量を、設計風量として採用した。現実には、ブロワ500によって供給されるガスの一部は、エアリフトポンプ870、860によって利用される。「60L/min」の風量は、エアリフトポンプ870、860に供給される分を差し引いた上で、ばっ気強度(5.5m3/m3・h)を実現可能である。このように、ばっ気強度(風量)を、理論的なばっ気強度(風量)よりも増大する場合であっても、間欠ばっ気運転を採用することによって、接触濾床槽830の全面に亘る安定的なばっ気を実現しつつ、エネルギーを節約することができる。
なお、循環エアリフトポンプ860による単位時間当たりの循環量は、その循環量が一日継続された場合の1日分の循環水量の合計が、日平均汚水量の4倍〜6倍の範囲内となるように、調整されている。また、放流エアリフトポンプ870による移送量は、高水位HWLまで上昇した水位が、概ね1時間以内に、低水位LWLまで下がるように、調整されている。
次に実験結果について説明する。図7のハッチングが付された領域BAは、上方から下方に向かって見た場合に、上昇する気泡が観察される領域を示している。図7は、ブロワ500の風量が60L/minである場合を示している。図示するように、接触材832が配置された領域の上部(すなわち、担持部材835の上部)のほぼ全域から気泡が上昇することが観察された。従って、接触材832、ひいては、好気濾材833に、気泡が供給されない部分が生じる可能性が低減されている。
なお、接触材832は、接触濾床槽830の上部のおおよそ全域に亘って配置されている。従って、接触濾床槽830の上部のほぼ全域に亘って、上昇する気泡が観察されている。また、図6で説明したように、散気装置834は、好気濾材833が配置された領域の底部のほぼ全域(すなわち、接触濾床槽830の底部のほぼ全域)に亘って、気泡を供給することができる。以上の結果、散気装置834は、担持部材835の全体に亘って、上昇する気泡を供給している、と推定される。このような散気方式は、「全面ばっ気」とも呼ばれている。
次に、図8〜図11に示す水質について説明する。図示するように、間欠ばっ気を開始してからの期間P2〜P5では、連続ばっ気運転を行った第1期間P1と同等の水質が、安定して実現されている。具体的には、5mg/L以下のBODが維持され、5mg/L以下のSSが維持され、おおよそ10mg/LのT−Nが維持された。また、NH4−NとNO2−Nとは、おおよそゼロに維持され、完全硝化が実現された。
また、間欠ばっ気運転を行った期間P3〜P5では、風量を60L/minに維持しつつ、連続散気時間の割合を「60分/70分(0.86)」、「50分/70分(0.71)」、「40分/70分(0.57)」の順番に変更した。このように、連続散気時間の割合を低減した場合であっても、良好な水質を維持できることが確認できた。また、連続散気時間の割合が小さいほど、ブロワ500の消費電力量を小さくすることもできる。また、連続散気時間の割合を低減する場合であっても、風量は60L/minに維持されているので、図7で説明したように、担持部材835に、気泡が供給されない部分が生じる可能性を低減できる。
なお、上述したように、60L/minの風量の連続運転は、5.5m3/m3・hのばっ気強度に対応している。ここで、平均的なばっ気強度が必要最小限のばっ気強度(3.6m3/m3・h)となるような連続運転時間の割合は、3.6/5.5=0.65である。70分周期で間欠ばっ気運転を行う場合には、連続運転時間は、70分×0.65=46分である。第3期間P3と第4期間P4とでは、連続運転時間は、この必要最小限の連続運転時間(46分)を、上回る値(60分、50分)に設定されている。従って、間欠ばっ気運転を行った場合であっても、計算上は十分な量の酸素が供給されているはずであり、実際に、水質の測定結果も良好であった。
第5期間P5では、連続散気時間は、この必要最小限の連続散気時間(46分)を、若干下回る値(40分)に設定されている。この場合には、間欠ばっ気運転を行うことによって、計算上は酸素量が若干不足する可能性がある。実際には、BODが5mg/Lを若干上回る傾向を示し(図8)、T−Nが10mg/Lを若干上回る傾向を示し(図10)、NO3−Nが低減してNH4−Nが5mg/L程度に増大する傾向を示している(図11)。SSは、5mg/L以下に維持された。良好な水質を維持するという観点からは、ばっ気強度は、必要最小限のばっ気強度よりも大きいことが好ましい。
以上のように、ブロワ500が散気装置834に空気を供給することによって、担持部材835に担持される微生物による被処理水の生物処理を実現することができる。さらに、ブロワ500が空気の供給と供給の停止とを交互に繰り返すことによって、空気の供給を停止せずに継続する場合と比べて、エネルギーを節約できる。
[B.第2実施例]
図12、図13は、排水処理装置の別の実施例の構成を示す概略図である。図12は、図2と同様に横から見た排水処理装置800xの概略構成図である。図13は、図3と同様に図12中のA−A断面から下方に向かって見た排水処理装置800xの概略構成図である。排水処理装置800からの変更点は、電解槽900と通電部950とが追加されている点と、移流管863xの排出口864xが電解槽900に設けられている点と、だけである。排水処理装置800xの他の構成は、排水処理装置800の構成と同じである。
電解槽900は、箱形状の水処理槽であり、夾雑物除去槽810の上部に配置されている。電解槽900の下部分は、夾雑物除去槽810内の水面WL(低水位LWL)下に配置されている。電解槽900の底部には開口910が設けられており、電解槽900は、開口910を通じて、夾雑物除去槽810と連通している。電解槽900内の水位は、夾雑物除去槽810内の水位と同じである。
循環エアリフトポンプ860には、第1実施例の移流管863の代わりに、移流管863xが接続されている。移流管863xは、縦管861の上部から電解槽900の水面WLの上方まで、緩い下り勾配で延びている。循環エアリフトポンプ860によって汲み上げられた水や固形物は、電解槽900に移送され、電解槽900の開口910から夾雑物除去槽810に移流する。
電解槽900内には、2つの電極モジュール951、952が配置されている。第1電極モジュール951は、互いに離れて配置された一対の(2枚の)金属電極951a、951bを有し、第2電極モジュール952も、互いに離れて配置された一対の(2枚の)金属電極952a、952bを有している。それらの電極951a、951b、952a、952bは、それぞれ、少なくとも一部が被処理水に浸漬されている。各電極モジュール951、952には、通電するための通電部950が、電気的に接続されている。通電部950は、家庭用電源から電力供給を受けて、金属電極951a、951bの間、および、金属電極952a、952bの間に、電圧を印加する。この結果、被処理水を通じて、金属電極951a、951bの間、および、金属電極952a、952bの間に電流が流れ、金属電極951a、951b、952a、952bのうちの陽極側の金属電極から金属イオンが被処理水に溶出する。
金属イオンの溶出は、被処理水中のリン成分を除去するために行われる。金属イオンとしては、被処理水中のリン成分と反応して水不溶性のリン化合物を生成可能なものを、採用可能である。例えば、鉄イオンやアルミニウムイオンを採用可能である。金属電極951a、951b、952a、952bの材料としては、そのような金属イオンを溶出可能な種々の材料(例えば、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄−アルミニウム合金)を採用可能である。被処理水中のリン成分は、金属イオンと反応して、水不溶性のリン化合物(例えば、リン酸鉄)となる。生成されたリン化合物は、電解槽900から開口910を通じて夾雑物除去槽810に沈降し、夾雑物除去槽810に貯留される。この結果、排水処理装置800xから放流される処理水中の全リン濃度(T−P)を低減できる。
なお、通電部950は、所定時間毎(例えば、24時間毎)に極性を反転させる回路を含むことが好ましい。こうすれば、各電極モジュール951、952毎の2枚の金属電極からおおよそ均等に金属イオンを溶出させることができる。
また、上述したように、ブロワ500は、間欠ばっ気運転を行う。これに伴い、処理水槽840の底部から電解槽900への水や固形物の移送も、間欠的に行われる。そこで、本実施例では、通電部950は、ブロワ500の制御部520に接続されており、制御部520の動作状態を示す信号を制御部520から受信する。通電部950は、受信した信号を利用して、制御部520によるガス供給の制御に同期して、通電を間欠的に行う。具体的には、制御部520がガス供給を行っている時間に、通電部950は通電を行う。従って、電解槽900に移送された水に、適切に、金属イオンを溶出させることができる。また、制御部520がガス供給を停止している時間に、通電部950は通電を停止する。従って、電解槽900に水が移送されない場合に、不必要に金属イオンを溶出することを、抑制できる。また、通電を間欠的に行うので、エネルギーを節約できる。
なお、通電部950による通電の制御と、制御部520によるばっ気の制御と、の間の同期は、厳密でなくてもよい。一般には、通電部950は、ブロワ500がガスを供給している時間の少なくとも一部に、通電を行い、ブロワ500がガスの供給を停止している時間の少なくとも一部に、通電を停止すればよい。また、通電部950は、制御部520に接続されなくてもよい。例えば、通電部950は、タイマを有し、制御部520によるガス供給の制御のタイムスケジュールと同じタイムスケジュールに従って、通電の制御を行えばよい。
また、電解槽900の配置は、任意に設定可能である。例えば、移流管863xの途中に電解槽900を設けてもよい。また、電解槽900からの水の移流先としては、接触濾床槽830よりも上流側の任意の水処理槽を採用可能である。例えば、嫌気濾床槽820を採用してもよい。
[C.変形例]
(1)排水処理装置の構成としては、上記各実施例における構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、生物処理槽(例えば、接触濾床槽830)に設けられる担持部材の種類は、2種類に限らず、1種類、または、3種類以上であってもよい。また、散気装置834としては、パイプに複数の散気孔834hを設けたものに限らず、多数の気泡を生成可能な任意の部材(例えば、多孔質部材)を採用可能である。また、処理フローとしても、図1に示すフローに限らず、他の種々のフローを採用可能である。例えば、生物処理槽(例えば、接触濾床槽830)と処理水槽840との間に、濾過槽が設けられても良い。また、接触濾床槽830の代わりに、微生物を担持するための担持部材(担体)が流動する担体流動槽を採用してもよい。また、生物処理槽の形状としては、図3、図5の接触濾床槽830のように処理水槽840を囲む形状に限らず、種々の形状(例えば、略直方体形状)を採用してもよい。一般には、微生物を担持する担持部材と、酸素を含む気泡を担持部材に供給する散気部と、を有する種々の生物処理槽を採用可能である。いずれの場合も、生物処理槽の散気を間欠的に行うことによって、生物処理を実現しつつ、エネルギーを節約できる。また、生物処理槽に、微生物を担持するためのL種類(Lは1以上の整数)の部材を設ける場合には、L種類の部材の全体が、「担持部材」に対応する。
また、循環エアリフトポンプ860(図2)の吸入口862は、生物処理槽(例えば、接触濾床槽830)の底部に配置されてもよい。一般には、循環エアリフトポンプ860の構成としては、生物処理槽または生物処理槽よりも下流側から、生物処理槽よりも上流側に配置された上流処理槽(例えば、夾雑物除去槽810)へ、水等を移送する構成を採用可能である。こうすれば、生物処理槽で生じたSSを上流処理槽へ移送することができる。いずれの場合も、循環エアリフトポンプ860の吸入口862は、水処理槽の底部に配置されることが好ましい。こうすれば、底部に沈降したSSを効率的に移送することができる。
(2)生物処理槽内に担持部材を固定する場合には、以下の構成を採用することが好ましい。すなわち、散気部(例えば、散気装置834)と担持部材(例えば、担持部材835)とは、上方から下方に向かって見た場合に、ブロワ500が散気部にガスを供給することによって、担持部材が配置された領域の上部のほぼ全域から、気泡が上昇するように、構成されていることが好ましい。こうすれば、気泡が供給されない部分(「無気泡部分」と呼ぶ)が担持部材に生じる可能性を低減できるので、生物処理を適切に実現できる。例えば、上方から下方に向かって見た場合に、散気部(特に散気孔834h)から遠く離れた位置には、担持部材を配置しないことが好ましい。なお、上方から下方に向かって見た場合に、担持部材が配置された領域の上部の80%以上の部分から上昇気泡が観察されれば、「担持部材が配置された領域の上部のほぼ全域から気泡が上昇する」ということができる。ただし、上昇気泡が観察される領域が、担持部材が配置された領域の上部の80%未満であってもよい。
また、図6の散気装置834のように、散気部は、上方から下方に向かって見た場合に、担持部材が配置された領域の底部の範囲に分散して配置された複数の散気孔を有することが好ましい。こうすれば、担持部材の底部のほぼ全域に気泡を供給することができるので、無気泡部分が生じる可能性を低減できる。
また、担持部材が配置された領域内の少なくとも一部の高さにおいて、担持部材が、生物処理槽のほぼ全域に亘って配置されていることが好ましい。換言すれば、旋回流式のように、被処理水が上昇する領域と、被処理水が下降する領域と、のいずれか一方のみに担持部材を配置するのではなく、少なくとも一部の高さでは、生物処理槽の全域に亘って担持部材を配置することが好ましい。こうすれば、生物処理槽の容量を生物処理のために有効利用することができるので、適切な生物処理を実現できる。例えば、図3、図5に示す実施例では、接触材832が配置された領域内においては、少なくとも一部の高さにおいて、接触材832が、接触濾床槽830のほぼ全域に亘って配置されている。なお、担持部材が配置された領域が、生物処理槽内の水平面のうちの80%以上であれば、「担持部材が、生物処理槽のほぼ全域に亘って配置されている」ということができる。
(3)生物処理槽の間欠ばっ気運転のばっ気時(駆動時)の風量としては、生物処理槽内の担持部材が配置された領域の上部のほぼ全域から気泡が上昇するのに十分な風量を採用することが好ましい。こうすれば、無気泡部分が生じる可能性を低減できるので、生物処理を適切に実現できる。特に、担持部材が生物処理槽内に固定されている場合には、無気泡部分が生じると、無気泡部分の自然解消が困難である。従って、無気泡部分が生じることを抑制するためには、担持部材が配置された領域の上部のほぼ全域から気泡が上昇するのに十分な風量を採用することが好ましい。このような風量は、例えば、実験的に決定すればよい。また、このように決定された風量は、好気処理に要する最小限の風量を上回る可能性があるが、間欠ばっ気運転を行うことによって、エネルギーを節約できる。
(4)浄化槽には、ピーク流入に起因する生物処理槽(特に、好気処理槽)からの単位時間当たりの流出量の増大を抑制するピークカット機構を設けることが好ましい。ピークカット機構としては、図2の実施例の放流エアリフトポンプ870に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、浄化槽が、生物処理槽(特に、好気処理槽。例えば、接触濾床槽830)と、浄化槽への流入水(原水とも呼ばれる)を受け入れて、受け入れた水を好気処理槽へ供給するための前段処理部(例えば、夾雑物除去槽810と嫌気濾床槽820との全体)とを有する場合には、前段処理部から好気処理槽(例えば、接触濾床槽830)へ被処理水を少量ずつ移送するエアリフトポンプを採用可能である。また、前段処理部から好気処理槽への単位時間当たりの移流量を制限する堰(例えば、V型堰や小孔)を採用してもよい。このようなピークカット機構を設けることによって、好気処理槽から未処理の水が流出する可能性を低減できる。
図14は、ピークカット機構を有する排水処理槽の別の例を示す概略図である。この排水処理装置1800に、上述の実施例と同様の間欠ばっ気を用いた処理を、適用してもよい。図14には、排水処理装置1800を横から見た、図2と同様の概略構成が示されている。この排水処理装置1800は、上流側(図14の左側)から順番に、流入口1802、沈殿分離槽1810、嫌気濾床槽1820、好気濾床槽1830、処理水槽1840、消毒槽1850、流出口1804を、有している。好気濾床槽1830は、処理水槽1840の+Y方向側に、配置されている。図14では、好気濾床槽1830と処理水槽1840とが、重ねて示されている。
排水は、流入口1802から排水処理装置1800に流入する。沈殿分離槽1810で夾雑物が分離(除去)されたあとの水は、仕切板1819の上部の空いた部分を通じて、嫌気濾床槽1820に移流する。嫌気濾床槽1820には、嫌気性微生物が付着するための濾材1822が設けられている。また、嫌気濾床槽1820には、移送エアリフトポンプ1827が設けられている。移送エアリフトポンプ1827は、嫌気濾床槽1820で処理された水を、継続的に、好気濾床槽1830の上部に移送する。
好気濾床槽1830は、接触曝気部と生物濾過部との2つの部分を有している(図示省略)。接触曝気部は、好気性微生物が付着するための接触材と、接触材よりも下に配置された散気装置と、を有している。生物濾過部は、固形物(浮遊物質(SS)等)を捕捉するための濾過材を有している。好気濾床槽1830に流入した被処理水は、接触曝気部と生物濾過部との間を循環する。
好気濾床槽1830で処理された水は、下部の開口(図示省略)を通じて、処理水槽1840に移流する。処理水槽1840の上部には、消毒槽1850へ水を移送する移送パイプ(図示省略)が設けられている。移送パイプには、堰が設けられている。この堰は、処理水槽1840から消毒槽1850への単位時間当たりの移流量を制限している。消毒槽1850で消毒された水は、流出口1804を通じて、排水処理装置1800の外部へ放流される。
処理水槽1840には、循環エアリフトポンプ1849が設けられている。循環エアリフトポンプ1849は、処理水槽1840の底部から水や固形物を吸入して、沈殿分離槽1810に移送する。好気濾床槽1830の上部には、戻し堰1828が設けられている。移送エアリフトポンプ1827によって好気濾床槽1830に移送された水量のうちの、循環エアリフトポンプ1849による循環水量と、処理水槽1840から消毒槽1850に移流する水量(排水処理装置1800から放流される水量と同じ)とを除いた余剰分の水は、戻し堰1828を通じて、嫌気濾床槽1820に戻る。これらにより、嫌気濾床槽1820から好気濾床槽1830へは、おおよそ一定量ずつ、水が継続的に移送される。
移送エアリフトポンプ1827の吸入口1827iは、低水位LWLxの高さに配置されている。従って、沈殿分離槽1810および嫌気濾床槽1820の最低水位は、この低水位LWLxである。さらに、この排水処理装置1800は、低水位LWLxよりも高い高水位HWLxまで水位が上昇してもオーバーフローが生じないように、構成されている。ピーク流入時には、水位が、低水位LWLxから上昇し得る。水位が上昇した場合、処理水槽1840から消毒槽1850への水の移流が進行することによって、水位は徐々に低水位LWLxまで下降する。このように、低水位LWLxと高水位HWLxとの間で水位が変動した場合であっても、循環エアリフトポンプ1849による循環水量と、図示しない移送パイプを通じて消毒槽1850に移流する水量と、嫌気濾床槽1820から好気濾床槽1830に移送される水量(戻し堰1828から戻される分を除いた実質の水量)と、のそれぞれ(単位時間当たりの水量)は、大きく変動せずに、おおよそ一定の量に維持される。この結果、好気濾床槽1830は、安定な処理を継続することができる。
(5)間欠ばっ気の1周期の時間としては、70分に限らず、種々の時間を採用可能である。例えば、より短い時間(例えば、20〜60分)を採用してもよく、より長い時間(例えば、2〜10時間)を採用してもよい。また、連続停止時間および連続散気時間としても、種々の時間を採用可能である。
1周期の時間としては、半日未満の時間を採用することが好ましい。この理由は、以下の通りである。例えば、活性汚泥を用いる大型の排水処理施設として、ばっ気槽の上流側に設けられた流量調整槽を有するものが利用されている。流量調整槽を用いることによって、流量調整槽からばっ気槽への単位時間当たりの移流量を制御することが可能である。流量調整槽を大型化することによって(例えば、1日分の排水を貯留可能な容量を確保することによって)、ばっ気槽への移流パターンの制御の自由度を高くすることができる。ここで、制御された移流パターンに合わせて、活性汚泥を収容するばっ気槽を間欠ばっ気運転する処理方法を、採用することができる。また、ばっ気槽の活性汚泥量を制御するために、ばっ気槽の下流側に沈殿槽を設け、沈殿槽で回収した汚泥の一部を、ばっ気槽へ返送してもよい。ここで、間欠ばっ気の1周期の時間としては、移流パターンに応じて、種々の時間を採用可能である。ただし、このような処理方法は、微生物を担持するための担持部材を用いずに活性汚泥を用いている点と、大型の流量調整槽を用いている点とにおいて、上記実施例とは異なっている。従って、上記実施例では、これらの差異を考慮して、間欠ばっ気のパラメータ(例えば、1周期の時間)を決定することが好ましい。
家庭用浄化槽は、生物処理槽(特に、好気処理槽。例えば、接触濾床槽830)と、浄化槽への流入水(原水)を受け入れて、受け入れた水を好気処理槽へ供給するための前段処理部(例えば、夾雑物除去槽810と嫌気濾床槽820との全体)とを有している。通常は、前段処理部の構成としては、流入水の単位時間当たりの流入量の変動を完全に吸収可能な大きな水処理槽(例えば、1日分の流入水を貯留可能な流量調整槽)を持たない小型の構成が、採用されている。例えば、図2の夾雑物除去槽810、嫌気濾床槽820のように、前段処理部は、いわゆる押し出し流れによって、被処理水を好気処理槽へ供給する。従って、流入水の単位時間当たりの流入量の変動に応じて、好気処理槽への被処理水の単位時間当たりの供給量(流入量)が変動する。そして、通常は、原水が1日の広範囲に亘って不規則に浄化槽へ流入するので、1日の広範囲に亘って不規則に被処理水が生物処理槽へ流入する。従って、半日以上の長い周期での規則的な間欠ばっ気運転を行う場合には、適切な生物処理ができない可能性がある。例えば、散気を停止している時間内に大量の原水が流入した場合には、生物処理槽へ大量の被処理水が流入するものの、酸素不足によって適切な好気処理ができない可能性がある。従って、被処理水が浄化槽内を通過する間に、間欠ばっ気のサイクルを複数回に亘って繰り返すことが好ましい。通常は、浄化槽の全容量は、日平均汚水量以上であるので、1周期の時間を半日未満にすれば、被処理水が浄化槽を通過する間に少なくとも2回のサイクルを実現することができる。こうすれば、好気処理槽の散気が止まっている間に被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減できる。
また、1周期の時間は、好気処理槽の滞留時間以下であることが好ましい。こうすれば、被処理水が好気処理槽を通過する間に少なくとも1回のサイクルが実現されるので、好気処理槽の散気が止まっている間に被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減できる。例えば、上記の試験槽の接触濾床槽830の滞留時間は11.6時間である。従って、上記の試験槽を採用する場合には、1周期の時間が、11.6時間以下であることが好ましい。
また、好気処理槽、または、好気処理槽よりも下流側から、好気処理槽よりも上流側へ水の一部が移送(循環)される場合には、好気処理槽を通過する水量は、浄化槽へ流入した水量と循環する水量との合計である。例えば、上記の試験槽では、循環エアリフトポンプ860による1日当たりの循環水量の設計値は、流入水量(日平均汚水量)の4〜6倍である。従って、被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減するためには、1周期の時間は、好気処理槽の滞留時間を、好気処理槽を通過する実際の水量(日平均汚水量を1としたときの水量)で割って得られる時間以下であることが好ましい。例えば、上記の試験槽では、接触濾床槽830の滞留時間は11.6時間である。そして、循環水量が流入水量の4倍である場合には、好気処理槽を通過する実際の水量は「5」である。この場合、1周期の時間は、11.6時間/5=2.3時間以下であることが好ましい。こうすれば、被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減できる。
また、連続停止時間は、好気処理槽の滞留時間以下であることが好ましい。こうすれば、好気処理槽の散気が止まっている間に被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減できる。例えば、上記の試験槽の接触濾床槽830の滞留時間は11.6時間である。従って、上記の試験槽を採用する場合には、連続停止時間が11.6時間以下であることが好ましい。
また、好気処理槽、または、好気処理槽よりも下流側から、好気処理槽よりも上流側へ水の一部が移送(循環)される場合には、被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減するためには、連続停止時間は、好気処理槽の滞留時間を、好気処理槽を通過する実際の水量(日平均汚水量を1としたときの水量)で割って得られる時間以下であることが好ましい。例えば、上記の試験槽では、接触濾床槽830の滞留時間は11.6時間である。そして、循環水量が流入水量の4倍である場合には、好気処理槽を通過する実際の水量は「5」である。この場合、連続停止時間は、11.6時間/5=2.3時間以下であることが好ましい。
上述のピークカット機構を有する浄化槽を採用する場合には、間欠ばっ気運転の連続停止時間は、ピークカット機構による滞留時間以下であることが、特に好ましい。ここで、ピークカット機構による滞留時間は、ピークカット機構によって一時的に貯留可能な水量(例えば、低水位LWLと高水位HWLとの間の容量)/日平均汚水量*24時間である。こうすれば、ピーク流入が生じた場合に、好気処理槽の散気が止まっている間に大量の被処理水が好気処理されずに好気処理槽を通過してしまう可能性を低減できる。この結果、適切に好気処理を行うことができる。なお、エアリフトポンプ、堰、小孔等のピークカット機構は、原水の単位時間当たりの流入量の変動を完全には吸収できない場合には、原水の単位時間当たりの流入量の変動に応じて、好気処理槽からの単位時間当たりの流出量は変動し得る。
(6)間欠ばっ気の1周期の時間に対する連続散気時間の割合は、種々の割合に設定可能である。ここで、連続散気時間の割合が小さいほどエネルギーを節約できるが、酸素不足等の不具合が生じる可能性が高くなる。従って、適切に好気処理を実現できる範囲内で、連続散気時間の割合を小さくすることが好ましい。例えば、連続散気時間の割合を、実際に放流水の水質を測定する実験に基づいて、決定してもよい。この代わりに、適切な好気処理を実現可能な連続散気時間を、計算によって求めても良い。例えば、第1実施例で説明した方法に従って、必要KLaを実現するばっ気強度(「必要ばっ気強度」と呼ぶ)を算出する。そして、間欠ばっ気運転を行う場合のばっ気強度の平均値が必要ばっ気強度となるような連続散気時間の割合を、下限値として採用してもよい。例えば、第1実施例では、連続散気時間の割合の下限値は、3.6/5.5=0.65である。適切な好気処理を実現するためには、実際の連続散気時間の割合が、この下限値以上であることが、好ましい。
(7)脱窒を進行させるためには、生物処理槽で好気処理された水を、嫌気処理を行う水処理槽へ返送する(循環させる)エアリフトポンプを設けることが好ましい。例えば、上記の実施例では、循環エアリフトポンプ860は、接触濾床槽830で好気処理された水を、夾雑物除去槽810を通じて、嫌気処理を行う嫌気濾床槽820に、移送している。ここで、構成を簡素化するためには、エアリフトポンプは、生物処理槽の散気装置にガスを供給するガス供給部(例えば、ブロワ500)からのガスの供給を受けて、動作することが好ましい。この場合、間欠ばっ気の連続停止時間の割合が高いほど、エアリフトポンプによる単位時間当たりの移送量(循環水量)が多いことが好ましい。こうすれば、連続停止時間の割合が高い場合であっても、循環水量が不足することに起因して脱窒量が小さくなることを抑制できる。なお、脱窒量が小さくなることを抑制するためには、1日の合計の循環水量が日平均汚水量の2倍以上(より好ましくは、2.5倍以上)となるように、循環水量を調整することが好ましい。
また、担持部材を利用する生物処理槽を採用する場合には、間欠ばっ気運転を行うことによって、脱窒の効果も期待することができる。例えば、活性汚泥法を採用する場合には、処理槽内の微生物分布(汚泥濃度)がおおよそ均一であるので、脱窒を進行するためには、処理槽内の溶存酸素量(DO)をおおよそゼロまで下げることを要していた。一方、担持部材を利用する生物処理槽では、微生物の分布が不均一であるので(担持部材の存在する領域に微生物が偏在しているので)、散気を停止したときに、溶存酸素量(DO)が局所的に低くなって脱窒が進行する可能性がある。従って、連続停止時間が短い場合であっても、局所的に脱窒が進行する可能性がある。
ガス供給部(例えば、ブロワ500(制御部520))は、間欠ばっ気の運転パターンとして、間欠ばっ気の1周期の時間に対する連続停止時間の割合(連続散気時間の割合)が、時刻に応じて変動するパターンを採用してもよい。例えば、浄化槽への流入水量は、一般的には、夜間には比較的少なく、日中には比較的多い。従って、1日のうちの第1期間(例えば、23時から翌朝の6時までの期間)には、残りの期間である第2期間(例えば、6時から23時までの期間)と比べて、間欠ばっ気の1周期の時間に対する連続停止時間の割合が、大きくてもよい。このように、流入水量が少ない第1期間に、散気を停止する時間の割合を大きくすれば、水質の低下を抑制しつつ、エネルギーを節約できる。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。