JP2014014750A - NOxの分解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】排ガス中におけるような低濃度のNOxを容易に分解することができるNOxの分解方法を提供する。
【解決手段】卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させる接触工程、及び前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程を含み、前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解することを特徴とするNOxの分解方法が提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、NOxの分解方法に関し、より詳しくは卑金属とゼオライトからなるNOx触媒を用いたNOxの分解方法に関する。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx:NOやNO2の総称)を浄化する技術として、NOx吸蔵還元型触媒(NSR:NOx storage reduction)や尿素選択還元型NOx触媒(Urea−SCR:Selective catalytic reduction)等のNOx触媒を使用した浄化方法が知られている。
NSR触媒を使用した浄化方法では、常時はリーン空燃比の下で燃焼が行われ、この間、排ガス中のNOxは例えばNO2に酸化されて硝酸塩としてNSR触媒に吸蔵される。そして、NSR触媒のNOx吸蔵能力が飽和に近づくと、排ガスの空燃比を一時的にリッチにすることでNSR触媒からNOxが放出され、次いで、放出されたNOxが排ガス中に含まれる炭化水素(HC)や他の還元剤等と反応して還元浄化される。一方で、Urea−SCR触媒を使用した浄化方法では、尿素を加水分解させることで得られるアンモニアを還元剤として使用し、それによって排ガス中のNOxが窒素に還元浄化される。
上記のとおり、NSR触媒及びUrea−SCR触媒のいずれの触媒を用いた浄化方法においても、排ガス中のNOxを還元剤等と反応させる必要があり、このような反応によってNOxが還元浄化される。しかしながら、Urea−SCR触媒による浄化方法では、還元剤として用いられるアンモニアの一部は必ずしもNOxの還元反応には寄与せずに未反応のまま外部へ排出されてしまう虞がある。したがって、Urea−SCR触媒による浄化方法においては、一般的には、このようなアンモニアの排出を防ぐための手段をさらに設けることが必要である。
また、NSR触媒を使用した方法では、上記のとおり、NOxを還元浄化する前のステップとして当該NOxをいったんNO2等に酸化することが必要であり、それゆえ工程が複雑である。なお、Urea−SCR触媒を使用した方法においても、NOxの還元を促進させるという観点から、一般的には当該Urea−SCR触媒の排ガス上流側に酸化触媒が設けられ、内燃機関から排出されるNOx中の多くの部分を占めるNOの一部をNO2に酸化するようにしている。しかしながら、このようなNOxの酸化反応は、排ガス中のNOxが非常に低濃度であることから、平衡的には有利であるにもかかわらず、その反応速度が極めて遅いことが一般的に知られている。それゆえ、触媒化学的に言うと、このようなNOxの酸化反応は、特にNSR触媒によるNOx還元浄化プロセスにおいては律速段階となっている。
そこで、本発明は、還元剤等を用いた従来の複雑なNOxの浄化方法とは異なる新規の方法であって、排ガス中におけるような低濃度のNOxを容易に分解することができるNOxの分解方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させる接触工程、及び
前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程
を含み、前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解することを特徴とする、NOxの分解方法。
(2)前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解してN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
(3)前記NOx含有ガスがNOを含むことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)マイクロ波を吸収して発熱する材料を用いないで実施されることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)前記卑金属が、Cu、Fe、Co、Mn、Ni、Cr、Zn、Ga、In、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)前記ゼオライトが、MFI、FAU、LTA、OFF/ERI、MOR、LTL、FER、*BEA、BEC、CON、MSE、MEL、MTW、MEI、MWW、RHO、BOG、SZR、CHA、DDR、EMT、SOD、AEI、AEL、AEN、AET、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFI、AFX、ANA、CAN、GIS、GME、HEU、JBW、KFI、LAU、LEV、MAZ、MER、MFS、MTT、PHI、SFG、TUN、TON、UFI、VET、VFI、VNI、及びVSVの構造を有するゼオライトから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)前記NOx触媒が、Cu−MFI、Fe−FAU、Fe−LTA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)前記マイクロ波照射工程が、周波数が200MHz〜20GHzであるマイクロ波を100〜2000Wの出力で照射することによって実施されることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9)自動車の内燃機関から排出される排ガス中のNOxを分解するのに用いられることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)Cuをイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNO含有ガスと接触させる接触工程、及び
前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程
を含み、前記マイクロ波の照射により前記NO含有ガス中のNOを直接分解してN2を生成させることを特徴とする、NOの分解方法。
本発明の方法によれば、触媒成分としての卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させ、次いで当該NOx触媒に単にマイクロ波を照射することで、従来公知のNOの浄化方法とは異なり、HCやアンモニア等の還元剤を何ら必要とすることなしに、NOx含有ガス中のNOx、特にはNOを分解することができ、より具体的にはこのような分解反応によってN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることができる。また、本発明の方法は、特に卑金属としてCu及び/又はFe等、好ましくはCuを使用した場合には、排ガス中のNOを段階的にではなく直接的にN2に分解浄化することが可能であるため、NOxの酸化、吸蔵及び還元といった複雑なプロセスを必要とする従来のNSR触媒等を用いたNOx浄化方法と比較しても非常に有利である。さらに、本発明の方法によれば、高温下での外部加熱を必要とせずに、NOの分解反応を進行させることができるので、例えば、内燃機関の冷間始動時等の低温下においても排ガス中のNOxを確実に分解することが可能である。
本発明のNOxの分解方法を模式的に示した図である。 (a)は種々のFeイオン交換ゼオライト触媒に関するFe担持量とNO吸着量の関係を示すグラフであり、(b)は各ゼオライトの細孔の大きさを細孔壁を構成する酸素原子によって模式的に表した図である。 Fe−LTA触媒に関する赤外分光(IR)の分析データに基づいて作成したFeに対するNOの吸着状態を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。 (a)はNO分解反応によってNOからN2Oが生成する際のポテンシャルエネルギーの変化を示す図であり、(b)は当該NO分解反応の進行に伴う2個のNO分子の状態の変化を示す図である。 マイクロ波を利用したNOの分解反応において使用した実験装置の模式図である。 実施例1並びに比較例1及び2の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。 実施例2並びに比較例3及び4の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。 実施例3並びに比較例5〜10の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。
以下、本発明の方法は、理解を容易にするため、自動車のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のNOxを分解する場合について詳しく説明される。しかしながら、本発明の方法は、このような特定の用途に何ら限定されるものではなく、工場排ガスの浄化等、幅広い用途において適用できることは言うまでもない。
本発明のNOxの分解方法は、卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させる接触工程、及び前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程を含み、前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解することを特徴としている。
排ガス中のNOxを浄化する技術としては、先に述べたとおり、NSR触媒やUrea−SCR触媒等を用いたものが公知でありそして実用化されている。しかしながら、理想的には、排ガス中に含まれるNOx、特にはNOをNOx触媒によって分解、好ましくはN2とO2に直接的に分解できることが望ましい。このような直接分解によるNOxの浄化方法は、HCやアンモニア等の還元剤を必要としないことから、従来のNSR触媒やUrea−SCR触媒等によるNOxの浄化方法に比べてコスト的にも環境的にも非常に優れた技術である。
しかも、このような直接分解によるNOxの浄化方法は、例えば、NSR触媒を用いたNOxの浄化方法とは異なり、NOxの酸化、吸蔵及び還元といった複雑なプロセスを何ら必要としない。特に、NOxの酸化反応は、先に述べたとおり、その反応速度が極めて遅いことが一般的に知られており、それゆえこのような酸化反応を必要としないNOの直接分解によるNOx浄化方法は、従来のNSR触媒等を用いたNOx浄化方法と比較して非常に有利な方法であると言える。しかしながら、NOの直接分解は熱力学的には十分可能な反応であるにもかかわらず、排ガス中のNOxが低濃度であることや、さらには直接分解によって生成した酸素又は酸素イオン等によって活性種である触媒金属が被毒(いわゆる酸素被毒)されてしまうといった問題があることから、排ガス中のNOの直接分解に対して安定して高い活性を示す触媒はこれまでのところ見出されていない。
本発明者は、触媒成分としての卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させ、次いで当該NOx触媒に単にマイクロ波を照射することにより、NOx含有ガス中のNOx、特にはNOを分解することができ、より具体的にはこのような分解反応によってN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることができることを見出した。また、本発明者による実験では、特に卑金属としてFeを使用したNOx触媒について、上記の分解反応を繰り返し行った場合にいわゆる酸素被毒によるNO分解活性の多少の低下が検出されたものの、このような繰り返しの使用によってもNOx触媒のNO分解活性をある程度維持できることが確認された。
図1は、本発明のNOxの分解方法を模式的に示した図である。図1を参照すると、まず、第1ステップ(すなわち、本発明の方法における接触工程)において、NOx含有ガス中に含まれる低濃度のNOがNOx触媒1と接触し、次いでこのNOが当該NOx触媒1を構成するゼオライト2のケージ内に進入して当該ケージ内に存在する卑金属(図示せず)上に吸着すると考えられる。その結果として、本発明の方法の第1ステップにおいて、NOx含有ガス中に含まれる低濃度のNOをゼオライト2のケージ内に濃縮することができる。次に、第2ステップ(すなわち、本発明の方法におけるマイクロ波照射工程)において、NOが吸着したNOx触媒1にマイクロ波3を照射することによりエネルギーが印加される。これによって卑金属上に吸着したNOの分解反応が進行し、例えば、以下の式(1)で表されるNOの直接分解が進行して、図1に示すように窒素(N2)と酸素(O2)が生成するか、及び/又は以下の式(2)で表されるような分解反応が進行して一酸化二窒素(N2O)と酸素(O2)が生成すると考えられる。
2NO → N2 + O2 (1)
2NO → N2O + 1/2O2 (2)
本発明の方法によれば、NOx触媒において触媒成分として含まれる卑金属としては、NOやNO2等からなるNOx、特にはNOに対して吸着活性を示すものであればよく、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、又はそれらの組み合わせを使用することができ、好ましくは卑金属としてはCu及び/又はFeを使用することができる。卑金属としてCu及び/又はFe等、特にはCuを使用した場合には、上記式(1)で表されるNOの直接分解を進行させることができるので、排ガス中のNOxを段階的にではなく直接的にN2に分解浄化することが可能である。
なお、使用される卑金属の種類やゼオライトの種類等により、上記式(1)の反応によるNOの直接分解が必ずしも進行しない場合がある。しかしながら、このような場合であっても、本発明に方法によれば、上記式(2)の反応によってNOx含有ガス中のNOxを少なくともN2Oに分解することが可能である。このようにして得られたN2Oは、NOと比較するとその分解性が高いため、本発明の方法によって排ガス中のNOxを少なくともN2Oにまで分解することで、その後の加熱及び/又は触媒等を用いた追加の操作によって比較的容易にN2OをN2まで分解浄化することが可能である。
NOからN2Oの生成については、上記式(2)以外にも、例えば、以下の式(3)に示すようなNOの不均化反応が可能性として考えられる。
3NO → N2O + NO2 (3)
しかしながら、後で具体的に示すとおり、本願の実施例では、マイクロ波を利用したNOの分解反応においてNO2の生成がほとんど検出されなかった。したがって、本発明の方法においては、上記式(3)の反応はほとんど進行しないか又は全く進行しないものと考えられる。
本発明の方法においては、触媒成分として用いられる上記の卑金属に加えて又はそれに代えて、白金(Pt)等の貴金属を使用することも可能である。しかしながら、排ガス浄化触媒の技術分野において触媒成分として一般的に用いられる貴金属、特に白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)等の白金族元素は、自動車の排ガス規制の強化とともに使用量が増加しており、それゆえ資源の枯渇が懸念されている。このため、当技術分野では、白金族元素の使用量を減らすとともに、将来的には、当該白金族元素の役割を他の金属等で代替することが必要とされている。したがって、白金族元素を他の金属で代替するという観点から言えば、本発明の方法において用いられるNOx触媒の触媒成分は1種又は複数種の卑金属のみから構成することが好ましい。実際、本発明の方法によれば、Pt、Pd及びRh等の白金族元素を何ら使用することなしに、排ガス中のNOxを分解、さらには浄化することができるので、従来のNOx浄化方法に比べても非常に有利である。
本発明の方法によれば、上記の卑金属が担持される触媒担体としては、排ガス中のNOxをその結晶構造中に取り込むのに十分な細孔径を有しかつ当該卑金属を担持するのに十分なイオン交換量を有するゼオライトであればよく、特に限定されないが、例えば、MFI、FAU、LTA、OFF/ERI、MOR、LTL、FER、*BEA、BEC、CON、MSE、MEL、MTW、MEI、MWW、RHO、BOG、SZR、CHA、DDR、EMT、SOD、AEI、AEL、AEN、AET、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFI、AFX、ANA、CAN、GIS、GME、HEU、JBW、KFI、LAU、LEV、MAZ、MER、MFS、MTT、PHI、SFG、TUN、TON、UFI、VET、VFI、VNI、及びVSVの構造を有するゼオライトから選択される少なくとも1種を使用することができる。好ましくは、上記の卑金属が担持される触媒担体としては、MFI、FAU及びLTAの構造を有するゼオライトから選択される少なくとも1種を使用することができる。
なお、本発明の方法において用いられるNOx触媒は、上記のゼオライトに触媒成分である卑金属を従来公知のイオン交換法において担持することにより調製することができる。このようにして調製されたNOx触媒によれば、ゼオライト中のイオン交換サイトに存在する卑金属上にNOx、特にはNOを選択的に吸着させることができる。一方で、例えば、触媒担体として排ガス浄化触媒の技術分野において一般的に用いられるアルミナ(Al23)等の金属酸化物を使用し、これに上に挙げた卑金属を従来公知のいわゆる含浸、蒸発・乾固等において担持した触媒では、触媒成分である卑金属が酸化物の状態でアルミナ等の触媒担体上に存在することになるため、排ガス中のNOxを十分に吸着することができない場合がある。
これとは対照的に、本発明の方法において用いられるNOx触媒では、ゼオライト中のイオン交換サイトにイオンの状態で存在する配位不飽和な卑金属によって排ガス中のNOxを選択的に吸着させることができ、例えばNOxに対して酸素が過剰に存在するような条件下においても当該NOxを選択的に吸着させることが可能である。その結果として、本発明の方法において用いられるNOx触媒によれば、本発明の方法の第1ステップにおいて、排ガス中に低濃度で存在するNOxを当該NOx触媒のゼオライトケージ内に確実に濃縮することができ、そして以降の第2ステップにおいてNOxの分解反応をより起こりやすい状態にすることが可能である。
本発明の方法において用いられるNOx触媒としては、上に挙げた卑金属とゼオライトの任意の組み合わせが可能であり、特に限定されないが、例えば、Cu−MFI、Fe−FAU、Fe−LTA、又はそれらの組み合わせを使用することができる。なお、本発明の方法において用いられるNOx触媒における卑金属の担持量としては、卑金属の種類や、求められるNOxの分解活性、あるいは使用されるゼオライトのイオン交換容量の大きさ等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、一般的には、卑金属は、触媒担体であるゼオライトに対して0.01〜10wt%の量において担持することができる。
本発明の方法によれば、第1ステップ(すなわち接触工程)において、上記のNOx触媒をNO及びNO2等を含むNOx含有ガスと接触させることにより、当該NOx触媒中の卑金属にNOx含有ガス中のNOxを吸着させ、そして触媒担体であるゼオライトのケージ内にNOxを濃縮させた後、第2ステップ(すなわちマイクロ波照射工程)において、このNOxが吸着されたNOx触媒にマイクロ波を照射することによりエネルギーが印加される。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の方法における第1ステップにおいてNOx含有ガス中のNOxをNOx触媒中の卑金属に吸着させそして濃縮することで、当該卑金属の作用によってNOx分子におけるNとOの結合を切れやすくすることができ、しかも複数の吸着NOx分子を互いに近接して存在させることができるので、その結果としてNOxの分解反応において必要とされる活性化エネルギーを下げることができるものと考えられる。
より具体的に説明すると、例えば、NOx含有ガスがNOを含みそしてこのNOを分解してN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させる場合には、先に述べたとおり、以下の式(1)及び/又は(2)で表されるような反応が進行し、すなわち2個のNO分子からN2及び/又はN2Oが生成すると考えられる。
2NO → N2 + O2 (1)
2NO → N2O + 1/2O2 (2)
本発明の方法においては、まず、第1ステップにおいて、NOx触媒をNOx含有ガスと接触させることにより、NOx含有ガス中のNOがNOx触媒の触媒成分である卑金属上に吸着する。そうして吸着されたNOは当該卑金属から電子の供与を受けてNO-となり、その結果としてNとOの結合長さが長くなると考えられる。そして、NとOの結合長さが長くなることでこれらの結合が切れやすくなる。また、本発明の方法においては、このようにしてNOが卑金属上に吸着することで、排ガス中に低濃度で存在するNOをNOx触媒のゼオライトケージ内に濃縮することができるため、上記式(1)及び/又は(2)で表される分解反応において必要とされる2個のNO分子間の距離、特にはこれら2個のNO分子中のN原子とN原子との間の距離を小さくすることができると考えられる。すなわち、本発明の方法によれば、上記のような卑金属上へのNO分子の吸着によって引き起こされる卑金属とNO分子との間の電子的な相互作用や、NOx触媒のゼオライトケージ内におけるNO分子の濃縮等によって上記式(1)及び/又は(2)で表される分解反応がより起こりやすい状態を作り出すことができると考えられ、言い換えると、上記式(1)及び/又は(2)の分解反応において必要とされる活性化エネルギーを下げることができるものと考えられる。
次に、本発明の方法における第2ステップとして、NOが吸着したNOx触媒にマイクロ波を照射することにより、先の第1ステップにおいて低くなった分解反応の活性化エネルギーの壁をマイクロ波照射から印加されるエネルギーによって容易に越えることができるものと考えられる。その結果として、上記式(1)及び/又は(2)で表される分解反応が促進されるので、このようなマイクロ波照射を行わない従来の方法と比較して、NOx含有ガス中のNOからN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを容易に生成させることができるものと考えられる。
排ガス浄化触媒の技術分野では、当該排ガス浄化触媒の触媒性能を十分に発揮できるようにするためにマイクロ波を用いた技術がこれまでに幾つか提案されている(例えば、特開平6−17643号公報及び特開平10−280946号公報を参照されたい)。しかしながら、これらの技術は、例えば、内燃機関の冷間始動時等の低温下においてもより早く排ガス浄化触媒をその活性化温度に到達させるために、マイクロ波を利用して当該排ガス浄化触媒を加熱するというものである。しかも、このような技術を用いた排ガス浄化方法では、マイクロ波によって直接的に排ガス浄化触媒を加熱することはできないため、マイクロ波を吸収して発熱する材料(すなわちマイクロ波吸収発熱材料)を使用することが必要とされる。
例えば、特開平6−17643号公報では、排ガス浄化触媒の上流側に炭化珪素質の多孔体等からなるマイクロ波吸収発熱材料を配置し、これにマイクロ波を照射して加熱することにより、当該マイクロ波吸収発熱材料からの発熱によって内燃機関の冷間始動時における排ガスを加熱して排ガス浄化触媒と接触させることが開示されている。また、特開平10−280946号公報では、排ガス浄化触媒の触媒層に隣接してチタン酸バリウム、ランタン−コバルト酸化物(LaCoO3)、シリコンカーバイト、又は電気伝導性金属酸化物等からなるマイクロ波吸収発熱層を設け、これにマイクロ波を照射することで当該マイクロ波吸収発熱層からの発熱によって排ガス浄化触媒の触媒層を加熱することが開示されている。
すなわち、これらの従来技術では、マイクロ波を照射することによって得られるマイクロ波吸収発熱材料からの発熱を利用して排ガス浄化触媒を間接的に加熱することが開示又は示唆されているにすぎない。したがって、本発明の方法のように、マイクロ波を利用した従来技術において必須の構成要素であるマイクロ波吸収発熱材料を何ら使用することなく、NOx触媒自体にマイクロ波を照射することで、NOx含有ガス中のNOxを分解することができ、特にはNOx含有ガス中のNOxを分解してN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることができるということは極めて意外であり、また驚くべきことである。
また、NOの直接分解に対してこれまで活性があると報告されている触媒では、NOをN2とO2に直接的に分解するためには、数百℃以上、例えば400℃以上、特には600℃以上の外部加熱下で反応を行うことが一般に必要とされる。しかしながら、このような高温下での反応を必要とする方法では、当然ながら、内燃機関の冷間始動時等の低温下において排ガス中のNOxを分解浄化することができない。さらに言えば、上記のような高温下での外部加熱を必要とする反応では、せっかく排ガス中のNOxを触媒上に吸着させたとしても、当該触媒をそのNOx分解活性を示す温度まで加熱している間に、吸着したNOxが脱離してしまう場合がある。それゆえ、従来知られているNOの直接分解による方法では、内燃機関等から排出される排ガス中のNOxを分解することに対して必ずしも十分な効率を達成することはできない。
これとは対照的に、本発明の方法によれば、上記のような高温下での外部加熱を何ら必要とすることなく、NOxが吸着した状態のNOx触媒に単にマイクロ波を照射することにより当該NOxを確実に分解することが可能である。したがって、本発明の方法によれば、例えば、内燃機関の冷間始動時等の低温下においても排ガス中のNOxを確実に分解することが可能であり、また、上記の外部加熱を用いた場合に生じるようなNOxの脱離等の問題もなく、プロセスが非常に効率的である。
本発明の方法におけるマイクロ波照射工程は、一般的には周波数が200MHz〜20GHz、特には1〜4GHzであるマイクロ波を100〜2000W、特には100〜1000Wの出力においてNOx触媒に対して照射することにより実施することができる。本発明の方法によれば、このような周波数及び出力範囲のマイクロ波をNOx触媒に照射することで、容易にNOx含有ガス中のNOxを分解することが可能であり、より具体的にはこのような分解反応によってN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることが可能である。
なお、本発明の方法においては、触媒成分としての卑金属と触媒担体としてのゼオライト、さらにはマイクロ波照射の特定の組み合わせが極めて重要である。例えば、ゼオライトの酸点等はNOxの吸着には寄与しないことから、卑金属が担持されていないゼオライト単独の触媒では排ガス中のNOxを吸着しそして濃縮することができない。また、触媒担体として排ガス浄化触媒の技術分野において一般的に公知のアルミナ(Al23)等の金属酸化物を使用した場合には、排ガス中に低濃度で存在するNOxを十分に濃縮することができないため、たとえこのような触媒にマイクロ波の照射を行ったとしても、高いNOx分解活性を得ることはできない。さらには、卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持したNOx触媒を用いて排ガス中のNOxを吸着しそして濃縮したとしても、マイクロ波を照射しなければ、上で説明したとおりNOxを容易かつ効率的に分解することはできない。
また、本発明の方法を実際に自動車の内燃機関から排出される排ガス中のNOxを分解するのに適用する場合には、当業者に公知の任意の方法によって本発明の方法を適用することが可能である。例えば、マイクロ波照射手段としてのアンテナとマイクロ波発振手段としてのマグネトロンとを備えたマイクロ波発振装置を使用し、当該アンテナを内燃機関の排気通路内に配置されたNOx触媒の上流側排気通路内に配置し、そして排気通路の外部に設けられた上記マグネトロンからマイクロ波を発振して、当該発振されたマイクロ波を同軸ケーブル等を介してアンテナに伝送し、そこからNOx触媒に向けてマイクロ波を照射するようにすればよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[Feイオン交換ゼオライト触媒の検討]
本実験では、本発明の方法において用いられるNOx触媒について以下のとおり検討した。具体的には、触媒成分である卑金属としてFeを使用し、これをイオン交換法により種々のゼオライトに担持したFeイオン交換ゼオライト触媒を調製し、得られたFeイオン交換ゼオライト触媒について、そのFe担持量とNO吸着量の関係を調べた。結果を図2に示す。
図2(a)は、種々のFeイオン交換ゼオライト触媒に関するFe担持量とNO吸着量の関係を示すグラフであり、図2(b)は、各ゼオライトの細孔の大きさを細孔壁を構成する酸素原子によって模式的に表した図である。なお、吸着ガスとしては、NO濃度が1000ppm(Heバランス)のガスを使用した。ここで、図2(a)は、横軸にゼオライト1gあたりのFe担持量(10-5mol・g-1)を示し、縦軸にNO吸着量(10-5mol・g-1)を示している。また、図2(a)中の破線は、参考として、NO分子とFe原子が1:1の関係で吸着した場合におけるFe担持量とNO吸着量の関係を示すものである。
図2(a)を参照すると、ゼオライトに対してFeの担持量を増やすことで、各Feイオン交換ゼオライト触媒においてNO吸着量が増加していることがわかる。しかしながら、触媒担体として比較的細孔径の大きいFAU(フォージャサイト型ゼオライト)を使用した場合には、Fe担持量の増加とともにNO吸着量が増加する傾向が見られたものの、そのNO吸着量自体は他のゼオライトを使用した場合と比較して小さいものであった。一方で、3つのゼオライトの中で最も細孔径が小さいLTA(A型ゼオライト)を使用した場合には、Fe担持量の増加とともにNO吸着量が大きく増加した。しかしながら、Feの担持量が一定の値以上になると、NOの吸着量がほぼ飽和に達することがわかった。また、MFI(ZSM−5)を使用した場合には、同じFe担持量において比較すると、LTAを使用した場合と同様に高いNO吸着量が得られた。しかしながら、MFIはFAUやLTAに比べてイオン交換容量が小さく、それゆえFAUやLTAに比べて担持できるFe量に限界がある。したがって、MFIを使用した場合には、Fe1原子あたりのNO吸着量の観点では高い値を示し、それゆえ高い効率を達成したものの、吸着NOの絶対量の観点で言えば、図2(a)に示すとおり、LTAを使用した場合の方が高い値を示した。
また、図2(a)では、参考として、酸素共存下においてFe−LTA触媒にNOを吸着させた場合、具体的にはNO濃度が1000ppmでかつO2濃度が10%(Heバランス)の吸着ガスを使用して吸着実験を行った場合の結果についても併せて示している(図中の◆印)。図2(a)の結果から明らかなように、NO濃度に対して約100倍の酸素が共存するような条件下においても、酸素非共存下における同じFe担持量のFe−LTA触媒と同等か又はそれ以上のNO吸着量を達成することができた。すなわち、Feイオン交換ゼオライト触媒を使用することで、酸素の存在によってNOの吸着が阻害されるか又は影響を受けることなく、排ガス中におけるような低濃度のNOを選択的に吸着できることがわかった。
[Fe−LTA触媒のNO吸着特性]
上記の実験において最も高いNO吸着活性が得られたFe−LTA触媒について、そのNO吸着特性を調べた。具体的には、Fe−LTA触媒をNO含有ガスと接触させてそれを赤外分光(IR)によって調べ、さらに得られた分析データに基づいて理論計算を行った。その結果を図3に示す。
図3は、Fe−LTA触媒に関する赤外分光(IR)の分析データに基づいて作成したFeに対するNOの吸着状態を示す図であり、図3(a)は側面図であり、図3(b)は上面図である。図2(a)に示したNO吸着量の測定結果から、Fe−LTA触媒全体としてはFe1原子に対して1分子未満のNOしか吸着させることができなかったものの、特に図3(a)を参照すると、実際にはFe1原子に対してNO2分子が吸着しているFe種が存在していることがわかる。そして、理論計算の結果から、図中に示す吸着NO分子はFeからの電子供与によって負に帯電していることもわかった。このことは、NとOの結合長さが長くなってこれらの結合が切れやすくなっており、すなわちNOの分解反応が比較的起こりやすい状態になっていることを意味している。さらに、理論計算の結果からFeに吸着した2個のNO分子中のN原子とN原子との間の距離が1.632Åであることもわかった。
次に、以下のNO分解反応によってNOからN2Oが生成する際のポテンシャルエネルギーの変化を図4に示す。
2NO → N2O + O
図4(a)は、NO分解反応によってNOからN2Oが生成する際のポテンシャルエネルギーの変化を示す図であり、図4(b)は、当該NO分解反応の進行に伴う2個のNO分子の状態の変化を示す図である。具体的には、図4(b)は、図4(a)からの矢印において示すとおり、図4(a)のエネルギー曲線の特定の位置におけるNO分子の状態を示している。また、図4(b)におけるNO分子の状態図の上に示す数値は、2個のNO分子中のN原子とN原子との間の距離(単位:Å)を表すものである。参考として、気相中におけるNO分子の二量体に関するN原子間の距離は1.94Åである。ここで、図4(a)及び(b)を参照すると、最初、2個のN原子間の距離が1.865Åである場合には、遷移状態との間のエネルギー差が約200kJ/mol(活性化エネルギーに相当)であるのに対し、NO分子同士が互いに近づくにつれてその値が減少することがわかる。すなわち、図4(a)及び(b)は、NO分子同士が互いに近づくにつれて、NO分解反応の活性化エネルギーが小さくなるということを表している。
ここで、先のNO吸着量測定においてFe−LTA触媒に吸着した2個のNO分子に関するN原子間の距離は上記のとおり1.632Åである。したがって、Fe−LTA触媒にNO分子を吸着させることで、2個のNO分子に関するN原子間の距離が気相中におけるNO分子の二量体に関する値(1.94Å)や図4に示す1.865Åよりも小さくなっていることがわかる。すなわち、図3及び4に示す結果等から、本発明の方法の接触工程においてNOxをNOx触媒に吸着させそして濃縮することで、NOx分解反応の活性化エネルギーを低下させて、当該分解反応がより起こりやすい状態を作り出すことができるということがわかる。
[実施例1]
[マイクロ波を利用したFe−LTA触媒によるNO分解]
本実施例では、マイクロ波を利用してFeイオン交換ゼオライト触媒であるFe−LTA触媒によるNOの分解反応を実施した。図5は、マイクロ波を利用したNOの分解反応において使用した実験装置の模式図である。まず、図5に示す実験装置における石英ガラスのセル底部にNOx触媒11としてFe−LTA触媒150mgを充填し、主に脱水を目的とした前処理として300℃で1時間にわたり減圧排気した後、気相部12にNOガス(200〜500Torr)を導入してコック13を閉じ、その後、この実験装置を上部に穴を開けた市販の電子レンジに挿入して約5分間にわたりマイクロ波(周波数2.45GHz、出力730W)を照射した。
また、NOの分解反応で生成する酸素又は酸素イオン等によるNOx触媒の被毒に関する影響を調べるため、上記の反応が終了した後、再度NOを導入してマイクロ波を照射する繰り返し実験を実施した。なお、NOの分解反応によって生成したガスの分析については、上記の実験装置にシリンジ14等を介して接続された四重極型質量分析計(Q−MAS)(ハイデン・アナリティカル社製HPR−20 O型)によって行った。得られた分析結果を図6に示す。
[比較例1(対照実験)]
NOx触媒としてのFe−LTA触媒を充填しなかったこと、及び繰り返し実験を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。
[比較例2(対照実験)]
NOx触媒としてのFe−LTA触媒を充填しなかったこと、マイクロ波の照射を電気炉を用いた外部加熱に変更して当該外部加熱により600℃に加熱した後、その温度を3分間維持したこと、及び繰り返し実験を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして実験を行った。
図6は、実施例1並びに比較例1及び2の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。図6を参照すると、NOの分解反応が生じておらず、それゆえN2が生成していないと考えられるFe−LTA触媒なしの比較例1及び2(マイクロ波照射のみ又は外部加熱のみ)についてはほぼ同じ傾向を示すデータが得られた。一方で、NOx触媒としてFe−LTA触媒を使用した実施例1では、比較例1及び2のデータと比較してN2の分圧における上昇が検出され、それゆえN2の生成を確認することができた。なお、図には示していないものの、Fe−LTA触媒を使用した実施例1において、N2以外にもN2Oが生成することを確認した。また、NO2の生成については明確には確認されなかった。
一方、繰り返し実験については、1回目のNO分解反応と比較して、2回目及び3回目のNO分解反応においてN2の生成が多少減少したものの、2回目と3回目のNO分解反応に関しては、図6の結果から、Fe−LTA触媒がほぼ同等の触媒活性を維持していることがわかる。このように、図6に示す結果からは、NO分解反応で生成した酸素又は酸素イオン等に起因するFe−LTA触媒のいわゆる酸素被毒による触媒活性の顕著な低下は確認されなかった。
[実施例2]
[マイクロ波を利用したCu−MFI触媒によるNO分解]
NOx触媒としてCuイオン交換ゼオライト触媒であるCu−MFI触媒を使用したこと以外は実施例1と同様にして、マイクロ波を利用したNOの分解反応を実施した。
[比較例3(対照実験)]
NOx触媒としてのCu−MFI触媒を充填しなかったこと、及び繰り返し実験を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして実験を行った。
[比較例4(対照実験)]
NOx触媒としてCuを担持していないNa−MFI型ゼオライトを使用したこと、及び繰り返し実験を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして実験を行った。
図7は、実施例2並びに比較例3及び4の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。図7を参照すると、NOの分解反応が生じておらず、それゆえN2が生成していないと考えられる比較例3及び4(Cu−MFI触媒なし又はNOx触媒としてNa−MFI型ゼオライトを使用)についてはほぼ同じ傾向を示すデータが得られた。一方で、NOx触媒としてCu−MFI触媒を使用した実施例2では、比較例3及び4のデータと比較してN2の分圧における顕著な上昇が検出され、それゆえN2の生成を確認することができた。また、このようなN2の生成は、Fe−LTA触媒を使用した実施例1と比較しても顕著なものであった。なお、図には示していないものの、Cu−MFI触媒を使用した実施例2において、N2以外にもN2Oが生成することを確認した。また、NO2の生成については明確には確認されなかった。
一方、繰り返し実験については、1回目のNO分解反応と比較して、2回目及び3回目のNO分解反応においてN2の生成における大きな減少は検出されなかった。それゆえ、このような繰り返し実験によってもCu−MFI触媒の触媒活性が維持され、NO分解反応で生成した酸素又は酸素イオン等に起因するCu−MFI触媒のいわゆる酸素被毒による触媒活性の顕著な低下は確認されなかった。
[実施例3]
[マイクロ波を利用したCu−MFI触媒によるNO分解]
繰り返し実験を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、マイクロ波を利用したCu−MFI触媒によるNOの分解反応を実施した。
[比較例5(対照実験)]
NOx触媒としてのCu−MFI触媒を充填しなかったこと以外は実施例3と同様にして実験を行った。
[比較例6〜10]
[外部加熱を利用したCu−MFI触媒によるNO分解]
マイクロ波の照射を電気炉を用いた外部加熱に変更し、当該外部加熱によってCu−MFI触媒の温度を所定の温度(250℃、300℃、400℃、500℃及び600℃)まで昇温した後、その温度を3分間維持したこと以外は実施例3と同様にして、外部加熱を利用したCu−MFI触媒によるNOの分解反応を実施した。
図8は、実施例3並びに比較例5〜10の各実験に関するN2の生成を示すグラフである。図8を参照すると、NOx触媒としてCu−MFI触媒を使用した実施例3では、N2が生成していないと考えられる比較例5(NOx触媒なし)のデータと比較してN2の分圧における顕著な上昇が検出され、それゆえN2の生成を確認することができた。また、外部加熱を利用した比較例6〜10においても同様にN2の生成を確認した。ここで、図8の結果から明らかなように、本発明の実施例3では、何ら加熱等の操作を行うことなく単にマイクロ波を照射しただけで、400℃及び500℃の高温下で加熱した比較例7及び8と同程度のNOの直接分解によるN2生成を達成することができた。なお、図には示していないものの、実施例3においてはN2以外にもN2Oが生成することを確認した。また、NO2の生成については明確には確認されなかった。さらに、外部加熱を利用した比較例6〜10においても、N2以外にN2Oが生成することを確認した。実施例1〜3におけるNO分解反応では、Fe−LTA触媒に比べて、Cu−MFI触媒においてより高い分解生成物の生成量を達成することができた。これは、Cu−MFI触媒の方がFe−LTA触媒に比べて高いNO吸着活性を有することに起因するものであると考えられる。
1 NOx触媒
2 ゼオライト
3 マイクロ波

Claims (10)

  1. 卑金属をイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNOx含有ガスと接触させる接触工程、及び
    前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程
    を含み、前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解することを特徴とする、NOxの分解方法。
  2. 前記マイクロ波の照射により前記NOx含有ガス中のNOxを分解してN2及びN2Oのうち少なくとも1種のガスを生成させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記NOx含有ガスがNOを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. マイクロ波を吸収して発熱する材料を用いないで実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記卑金属が、Cu、Fe、Co、Mn、Ni、Cr、Zn、Ga、In、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ゼオライトが、MFI、FAU、LTA、OFF/ERI、MOR、LTL、FER、*BEA、BEC、CON、MSE、MEL、MTW、MEI、MWW、RHO、BOG、SZR、CHA、DDR、EMT、SOD、AEI、AEL、AEN、AET、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFI、AFX、ANA、CAN、GIS、GME、HEU、JBW、KFI、LAU、LEV、MAZ、MER、MFS、MTT、PHI、SFG、TUN、TON、UFI、VET、VFI、VNI、及びVSVの構造を有するゼオライトから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記NOx触媒が、Cu−MFI、Fe−FAU、Fe−LTA、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記マイクロ波照射工程が、周波数が200MHz〜20GHzであるマイクロ波を100〜2000Wの出力で照射することによって実施されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 自動車の内燃機関から排出される排ガス中のNOxを分解するのに用いられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. Cuをイオン交換によりゼオライトに担持してなるNOx触媒をNO含有ガスと接触させる接触工程、及び
    前記NOx触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射工程
    を含み、前記マイクロ波の照射により前記NO含有ガス中のNOを直接分解してN2を生成させることを特徴とする、NOの分解方法。
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