JP2014009285A - アクリル系樹脂発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 メタクリル酸を36質量%以上含む重合性モノマーと、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマーを重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体を発泡させて得られることを特徴とするアクリル系樹脂発泡体を提供する。
【選択図】 なし
Description
このようなアクリル系樹脂発泡体は、通常、下記特許文献1に示されているように、アクリル系モノマーを含む重合性モノマーに発泡剤となる尿素と重合開始剤とを混合した重合性溶液を作製し、該重合性溶液を型枠に流し入れ、該型枠ごと加熱して前記アクリル系モノマーを重合させた後、得られた発泡性重合体をさらに高温に加熱することによって尿素を分解させてガス発泡させるような方法が採用されている。また、特許文献1の方法では、得られるアクリル系樹脂発泡体に高い耐熱性を付与することができるという観点から、アクリル系モノマーとして、無水マレイン酸及びメタクリルアミドを含有するものが用いられている。
さらに、本発明によれば、平均気泡径の小さい硬度に優れたアクリル系樹脂発泡体の製造方法を提供することができる。
本実施形態のアクリル系樹脂発泡体の製造方法は、アクリル系モノマーを含む重合性モノマーと、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製する。次に、該重合性溶液を加熱することによって前記重合性モノマーを重合させて発泡性重合体を作製する。そして、該発泡性重合体を前記熱分解型発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させてアクリル系樹脂発泡体を作製する。
以下、重合性溶液の構成成分について説明する。
前記アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸を含有するアクリル系モノマーを用いる。
前記重合性モノマーは、メタクリル酸を36質量%以上含有する。また、該重合性モノマーは、メタクリル酸を、好ましくは40〜60質量%、より好ましくは45〜60質量%含有する。前記重合性モノマーがメタクリル酸を36質量%以上含有することにより、得られるアクリル系樹脂発泡体が耐熱性に優れたものとなるという利点がある。また、前記重合性モノマーがメタクリル酸を36質量%以上含有することにより、得られるアクリル系樹脂発泡体の平均気泡径を小さくすることができるという利点もある。アクリル系樹脂発泡体は、平均気泡径が小さいと硬度が高くなるという利点がある。
また、前記重合性モノマーがメタクリル酸を過剰に含有すると、発泡時に気泡が生成せず、アクリル系樹脂発泡体が得られないおそれがあるため、前記重合性モノマーのメタクリル酸含有量は60質量%以下が望ましい。
また、前記アクリル系モノマーには、該アクリル系モノマーの発泡性重合体を発泡させるのに際して優れた発泡性を発揮させ得る点において、メタクリル酸メチルを含有させることが好ましい。
メタクリル酸、無水マレイン酸、メタクリルアミド、及び、メタクリル酸メチル以外のアクリル系モノマーとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどを含有させてもよい。
なお、本明細書における“(メタ)アクリル”との用語は、“メタクリル”と“アクリル” の何れかを意味している。
なお、上記アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとして、上記アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーをアクリル系樹脂発泡体の改質などを目的として重合性溶液に少量含有させることも可能である。
特に、発泡性の向上に有効となるスチレンモノマーを重合性溶液に含有させることが好ましい。
ただし、スチレンモノマーを過剰に含有させると、硬質さを損なうおそれを有することから重合性モノマーに占めるスチレンモノマーの含有量は20質量%以下とすることが好ましい。
また、前記重合性モノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、スチレン、無水マレイン酸、及び、メタクリルアミドで実質上構成されていることが好ましく、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、スチレン、無水マレイン酸、及び、メタクリルアミドを合計量で、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90〜100質量%含有している。
前記発泡剤としては、熱分解型発泡剤を含む発泡剤を用いる。
前記熱分解型発泡剤は、65℃以上で分解して気体を発生するものであり、100〜180℃で分解して気体を発生するものが好ましい。
前記熱分解型発泡剤としては、尿素、尿素誘導体、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アミドグアニジン、トリメチレントリアミン、パラトルエンスルホンヒドラジン、アゾジカルボンアミド、チオ尿素、塩化アンモニウム、ジシアンジアミド、ジオキサン、ヘキサン、抱水クロラール、クエン酸等が挙げられる。特に尿素、尿素誘導体は、好適な発泡剤である。
前記熱分解型発泡剤は、含有量が少ないと、得られるアクリル系樹脂発泡体の発泡度が低下して軽量性を損なうおそれを有し、逆に過剰であると、重合性溶液中に熱分解型発泡剤を均一に溶解させることが困難となったり、得られるアクリル系樹脂発泡体中に熱分解型発泡剤を残存させ易くなったり、破泡を生じさせたりするおそれを有する。
このようなことから、熱分解型発泡剤は、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に0.5〜30質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましく、熱分解型発泡剤が尿素である場合には、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に1〜15質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましい。
熱分解型発泡剤以外のその他の発泡剤としては、沸点が65℃以上の物理発泡剤(アルコール等)を用いることができ、沸点が65℃〜180℃の物理発泡剤(アルコール等)が好ましい。具体的な例としては、イソプロパノール、シクロペンタノール、エタノール、1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール等のアルコールが挙げられる。物理発泡剤は、単独で用いても効果がなく、熱分解型発泡剤と併用されて効果が発揮される。使用量としては、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に、熱分解型発泡剤との合計量で0.6〜30質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましい。
前記重合開始剤としては、レドックス系重合開始剤、熱分解型開始剤、光分解型開始剤等を用いる。分解温度が高い程、重合性溶液の重合速度の調整が難しいが、重合性溶液の重合速度を調整し易いという観点から、レドックス系重合開始剤、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイドを用いることが好ましい。
また、上記t−ブチルハイドロパーオキサイド以外のレドックス系重合開始剤として利用可能な具体的な物質としては、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。
前記重合開始剤は、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に、0.1〜5質量部となる割合で重合性溶液に含有されることが好ましい。
なお、本実施形態においては、前記重合性溶液には、可塑剤をさらに含有させることができる。
前記可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシル酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、スルホン酸エステル等を用いることができる。
前記フタル酸エステルとしては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。前記アジピン酸エステルとしては、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジブチル等が挙げられる。前記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリオクチル等が挙げられる。前記リン酸エステルとしては、リン酸トリクレシル、リン酸トリアミル、リン酸トリブチル等が挙げられる。前記クエン酸エステルとしては、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル等が挙げられる。前記エポキシ化植物油としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
前記可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、アセチルクエン酸トリブチル等が好適に用いられる。
可塑剤を用いることで、発泡性重合体の発泡性を向上させることができる。一方で、過剰に用いると、アクリル系樹脂発泡体の剛性が低下したり、アクリル系樹脂発泡体の気泡が粗大化したり、発泡時にアクリル系樹脂発泡体が収縮したりすることがあるので、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に、0.1〜20質量部となる割合で重合性溶液に含有されることが好ましく、0.3〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
なお、本実施形態においては、前記重合性溶液には、連鎖移動剤をさらに含有させることができる。
該連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、n−オクチルメルカプタン等を用いる。
前記連鎖移動剤は、少ないと得られる樹脂の分子量が大きくなり、発泡性が低下することがあり、多いと重合時間が延びモノマー成分の硬化に著しく時間がかかることがあるので、重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に、0.01〜1質量部となる割合で重合性溶液に含有されることが好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.08〜0.15質量部が特に好ましい。
なお、本実施形態においては、前記重合性溶液にレドックス系重合開始剤を使用している場合には、還元剤をさらに含有させることができる。還元剤の添加は、重合開始剤からのラジカル発生効率を向上するため重合反応を促進する効果がある。
該還元剤としては、N,N−ジメチルアニリンなどの窒素含有化合物のような、他の化合物を還元する(電子を供与する)ことのできる化合物等を用いることができる。
上記N,N−ジメチルアニリン以外の窒素含有化合物で還元剤として利用可能な具体的な物質としては、トリエチルアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
前記還元剤は、前記重合開始剤の含有量に対して0.1〜5倍の重量割合で重合性溶液に含有されることが好ましい。
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオン、並びに、塩化物イオンをさらに含有させることができる。
前記金属イオンは、いずれも酸化還元電位が正の値のものである。
また、前記金属イオンは、重合性溶液中で、電子を授与するもの、すなわち酸化剤として、または電子を供与するもの、すなわち還元剤としての機能を発揮し、前記重合性モノマーの重合反応の促進に寄与するものである。
一方で前記塩化物イオンは、前記の金属イオンと結合や脱離することにより、前記重合性モノマーの重合反応の促進に寄与するものである。
上記のような塩化物以外としては、例えば、臭化銅、ヨウ化銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、臭化銀などの物質によって重合性溶液に上記のような金属イオンを含有させることができる。
なお、銅、銀、金については、上記のような塩ではなく、金属そのもの、或いは、合金によってそのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
例えば、銅、銅合金(コンスタンタン:銅/ニッケル合金、真鍮:銅/亜鉛合金)、銀、金からなる微粒子、線、メッシュなどを重合性溶液中に混入させることによってこれらのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
これらの塩化物イオン含有物質を重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に0.005〜5質量部となる割合で含有させることができる。
これらを重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に1×10-10〜1×10-2質量部となる割合で含有させることができる。
さらに、本実施形態においては、前記重合性溶液には、脱水剤をさらに含有させることができる。
該脱水剤としては、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム等の硫酸塩、モレキュラーシーブ等のゼオライトが好ましく用いることができる。脱水剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に0.01〜50質量部となる割合で含有させることが好ましい。このような脱水剤は重合性溶液の調製時に混合攪拌して溶液中の水分を脱水した後、ろ過除去することが望ましい。
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、単独モノマー間での重合反応や、急激な重合反応などを抑制するために重合抑制剤をさらに含有させることができる。
前記重合抑制剤としては、アルカリ土類金属塩、即ち、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの塩であって、例えば、ギ酸カルシウムなどを挙げることができ、このような重合抑制剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に0.001〜5質量部となる割合で含有させることができる。前記重合性溶液は、重合抑制剤を含有することにより、重合性モノマーを重合させた際に、過剰に重合してしまうのを抑制することができるという利点がある。
さらに、本実施形態においては、前記重合性溶液には、気泡調整剤をさらに含有させることができる。気泡調整剤の添加は、発泡体中の気泡径の均一性を向上させる効果がある。
該気泡調整剤としては、例えば、アルカリ土類金属塩、金属酸化物、シリカゲル、珪藻土などの粉末状無機物などが挙げられる。
このような気泡調整剤の重合性溶液における含有量は、重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合、0.01〜10質量部となる割合で含有させることができる。
また、本実施形態においては、前記重合性溶液には、前記重合性モノマーと同一或いは異なる重合性モノマーの発泡性重合体を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡体をさらに含有させることができる。
前記アクリル系樹脂発泡体は、前記重合性溶液中の重合性モノマーの重合反応の促進に寄与するものである。
前記アクリル系樹脂発泡体は、前記重合性溶液中の重合性モノマーの合計量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらにより好ましくは5〜10質量部となる割合で重合性溶液に含有される。
前記重合性溶液は、重合性モノマーの合計量100質量部に対して前記アクリル系樹脂発泡体が20質量部以下であることにより、該前記アクリル系樹脂発泡体が重合性モノマーに均一に溶解されやすくなるという利点がある。また、前記重合性溶液は、重合性モノマーの合計量100質量部に対して前記アクリル系樹脂発泡体が0.1質量部以上であることにより、前記重合性溶液中の重合性モノマーの重合が促進されるという利点がある。
本実施形態に係るアクリル系樹脂発泡体は、メタクリル酸を36質量%以上含む重合性モノマーと、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマーを重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体を発泡させて得られるアクリル系樹脂発泡体である。
なお、熱機械分析における耐熱温度は、以下のようにして測定する。
すなわち、7mm(縦)×7mm(横)×2mm(厚み)の直方体状に発泡体を切り出して試験片を作製し、熱機械分析装置を用い、圧縮試験モード(圧子の先端 φ3mm、石英製プローブ)、荷重100mNで、試験片に圧子を厚み方向で当てて30℃から昇温速度 5℃/minで温度を上げていき、試験片の厚みが試験前の試験片の厚みに対して10%収縮した際の温度を測定し、この温度を、TMAにおける耐熱温度とする。
なお、解析前に石英係数設定による補正をする。また、試験片の厚みは測定前に荷重100mNの圧子を試験片に当てて測定する。
平均気泡径が0.3mm以下であることにより、アクリル系樹脂発泡体が硬度に優れるという利点がある。また、平均気泡径が0.1mm以上であることにより、アクリル系樹脂発泡体の光透過性が優れるという利点がある。
なお、平均気泡径は、以下のようにして算出する。
すなわち、アクリル系樹脂発泡体を切断して、切断面厚み方向の外側1/10を除いた部分につき、走査型電子顕微鏡を用いて18倍に拡大して切断面を撮影し、撮影した切断面の画像を用紙上に印刷する。次に、用紙につき任意の線分(長さ60mm)を6箇所引き、この線分に重なる気泡の数から、各線分ごとの平均弦長を次式によって算出する。ただし、線分は、できる限り気泡が接点のみで接しないように引き、接してしまった場合には、気泡数に含めることとする。
平均弦長(t) = 線分の長さ/(気泡数×写真の倍率)
そして、次式により気泡径Dを算出する。
D = t/0.616
そして、各線分ごとに求めた気泡径Dの算術平均値を求め、この算術平均値をアクリル系樹脂発泡体の平均気泡径とする。
なお、見かけ密度は、JIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定する。具体的には、元のセル構造を変えないように切断した10cm3 以上の試験片について、その質量を測定し、次式により見かけ密度を算出する。
見かけ密度(g/cm3 )=試験片質量(g)/試験片体積(cm3 )
即ち、本実施形態に係るアクリル系樹脂発泡体は、重合性モノマーにメタクリル酸を36質量%以上含有させて得られたアクリル系樹脂発泡体であることにより、耐熱性に優れたアクリル系樹脂発泡体となるという利点を有する。また、本実施形態に係るアクリル系樹脂発泡体は、重合性モノマーにメタクリル酸を36質量%以上含有させて得られたアクリル系樹脂発泡体であることにより、平均気泡径が小さいアクリル系樹脂発泡体という利点も有する。なお、アクリル系樹脂発泡体は、平均気泡径が小さいと硬度が高くなるという利点を有する。
アクリル系樹脂発泡体について各種の評価を行った事例を示す。
まず、発泡性重合体、並びに、アクリル系樹脂発泡体に対する評価方法について説明する。
発泡性重合体に割れが生じないよう切断した10cm3 以上の試験片について、その質量を測定し、次式により密度を算出した。
密度(g/cm3 )=試験片質量(g)/試験片体積(cm3 )
アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、JIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定した。具体的には、元のセル構造を変えないように切断した10cm3 以上の試験片について、その質量を測定し、次式により見かけ密度を算出した。
見かけ密度(g/cm3 )=試験片質量(g)/試験片体積(cm3 )
アクリル系樹脂発泡体の耐熱性を調べるため、実施例、及び、比較例の発泡体のTMA(熱機械分析)における耐熱温度を測定した。
具体的には、7mm(縦)×7mm(横)×2mm(厚み)の直方体状に発泡体を切り出して試験片を作製し、熱・応力・歪み測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、商品名「EXSTRAR TMA/SS6100」)を用い、圧縮試験モード(圧子の先端 φ3mm、石英製プローブ)、荷重100mNで、試験片に圧子を当てて30℃から昇温速度 5℃/minで温度を上げていき、試験片の厚みが試験前の試験片の厚みに対して10%収縮した際の温度を測定し、この温度を、TMAにおける耐熱温度とした。
なお、解析前に石英係数設定による補正を行った。また、試験片の厚みは測定前に荷重100mNの圧子を試験片に当てて測定した。
アクリル系樹脂発泡体を切断して、切断面厚み方向の外側1/10を除いた部分につき、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−3000N」)を用いて18倍に拡大して合計4つの切断面を撮影し、撮影した切断面の画像をそれぞれA4用紙上に印刷した。
次に、各A4用紙につき任意の線分(長さ60mm)を6箇所引き、この線分に重なる気泡の数から、各線分ごとの平均弦長を次式によって算出した。ただし、線分は、できる限り気泡が接点のみで接しないように引き、接してしまった場合には、気泡数に含めることとした。
平均弦長(t) = 線分の長さ/(気泡数×写真の倍率)
そして、次式により気泡径Dを算出した。
D = t/0.616
そして、各線分ごとに求めた気泡径Dの算術平均値を求め、この算術平均値をアクリル系樹脂発泡体の平均気泡径とした。
すなわち、得られた発泡体から150mm(縦)×150mm(横)×100mm(厚み)の試験片を作製した。次に、アスカーゴム・プラスチック硬度計A型(高分子計器(株)製)を用いて、この硬度計の加圧面でこの試験片を厚み方向に加圧した。そして、加圧面で試験片を加圧した時から30秒後の測定値を読み取った。測定は6つの試験片に対し行い、その平均値を硬度とした。
メタクリル酸メチル25質量%、メタクリル酸47質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸8.0質量%、メタクリルアミド4.0質量%からなる重合性モノマー100質量部に対して、重合開始剤としてのt−ブチルヒドロパーオキサイド(日油社製「パーブチルH−69」)0.5質量部、塩化物イオン添加用物質としてのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(日油社製「ニッサンカチオンPB−40R」)0.1質量部、重合抑制剤としてのギ酸カルシウム0.2質量部、脱水剤としての硫酸ナトリウム2.0質量部、連鎖移動剤としてのα−メチルスチレンダイマー0.1質量部、発泡剤としての尿素5.0質量部を混合して35℃で加熱撹拌し、濾過して残渣の無機塩を除去し、重合性溶液を作製した。
実施例1の重合性溶液1500gを25mm×200mm×360mmの内法を有するテフロン製の直方体状の型枠に入れた。
そして、重合性溶液を型枠ごと50℃で10時間加熱し、次いで、80℃で3時間加熱することにより発泡性重合体(密度:1.16g/cm3 )を得た。
その後、発泡性重合体を熱風循環炉に入れ、尿素(熱分解温度:135℃)が分解する温度以上に加熱して(具体的には、炉内温度180℃で2時間加熱して)、発泡剤(尿素)を分解、発泡させてアクリル系樹脂発泡体(見かけ密度:0.116g/cm3 )を作製した。
連鎖移動剤であるα−メチルスチレンダイマーの代わりに、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)を用い、重合性モノマー100質量部に対して、フタル酸ジオクチル(DOP)2.0質量部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例1の重合性溶液の代わりに実施例2の重合性溶液を用いたこと、及び、重合性溶液の加熱条件を変更したこと(具体的には、重合性溶液を型枠ごと40℃で25時間加熱して発泡性重合体を得たこと)以外は、実施例1と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
重合性モノマーに占めるメタクリル酸メチルの含有率を36質量%にしたこと、及び、重合性モノマーに占めるメタクリル酸の含有率を36質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例2の重合性溶液の代わりに実施例3の重合性溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
重合性モノマーに占めるメタクリル酸メチルの含有率を12質量%にしたこと、及び、重合性モノマーに占めるメタクリル酸の含有率を60質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例2の重合性溶液の代わりに実施例4の重合性溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
重合性モノマーに占めるメタクリル酸メチルの含有率を47質量%にしたこと、及び、重合性モノマーに占めるメタクリル酸の含有率を25質量%にしたこと以外は、実施例1と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例1の重合性溶液の代わりに比較例1の重合性溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
連鎖移動剤であるα−メチルスチレンダイマーの代わりに、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)を用い、重合性モノマー100質量部に対して、フタル酸ジオクチル(DOP)2.0質量部を混合したこと以外は、比較例1と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例1の重合性溶液の代わりに比較例2の重合性溶液を用いたこと、及び、重合性溶液の加熱条件を変更したこと(具体的には、重合性溶液を型枠ごと43.5℃で21時間加熱して発泡性重合体を得たこと)以外は、実施例1と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
重合性モノマーに占めるメタクリル酸メチルの含有率を57質量%にしたこと、重合性モノマーに占めるメタクリル酸の含有率を14質量%にしたこと、重合性モノマーに占めるスチレンの含有率を13質量%にしたこと、及び、重合性モノマーに占めるメタクリルアミドの含有率を8.0質量%にしたこと以外は、比較例1と同様にして重合性溶液を作製した。
実施例1の重合性溶液の代わりに比較例3の重合性溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡性重合体、及び、アクリル系樹脂発泡体を作製した。発泡性重合体の密度は、1.16g/cm3 であった。アクリル系樹脂発泡体の見かけ密度は、0.116g/cm3 であった。
従って、本発明によれば、従来に比べて、耐熱性に優れたアクリル系樹脂発泡体を提供することができる。
また、本発明の範囲内である実施例1〜4のアクリル系樹脂発泡体は、メタクリル酸の含有率が36質量%未満である重合性モノマーを用いた作製した比較例1〜3のアクリル系樹脂発泡体に比して、平均気泡径が小さい値を示した。それに伴い、高い硬度の値を示していた。
従って、本発明は、平均気泡径が小さく従来よりも硬度の高いアクリル系樹脂発泡体を提供することができるという利点も有している。
Claims (6)
- メタクリル酸を36質量%以上含む重合性モノマーと、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマーを重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体を発泡させて得られることを特徴とするアクリル系樹脂発泡体。
- 前記重合性モノマーは、メタクリル酸メチル14〜36質量%、メタクリル酸36〜60質量%、スチレン10〜20質量%、無水マレイン酸1.0〜10質量%、及び、メタクリルアミド1.0〜10質量%を含有する請求項1に記載のアクリル系樹脂発泡体。
- 熱機械分析における耐熱温度が170℃以上である請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂発泡体。
- 平均気泡径が0.4mm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のアクリル系樹脂発泡体。
- 見かけ密度が0.15g/cm3 以下である請求項1〜4の何れか1項に記載のアクリル系樹脂発泡体。
- メタクリル酸を36質量%以上含む重合性モノマーと、熱分解型発泡剤を含む発泡剤と、重合開始剤とを含有する重合性溶液を作製し、前記重合性モノマーを重合させた後、前記重合によって得られた発泡性重合体を発泡させてアクリル系樹脂発泡体を作製することを特徴とするアクリル系樹脂発泡体の製造方法。
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