JP2014007198A - 結晶シリコン系光電変換装置およびその製造方法 - Google Patents

結晶シリコン系光電変換装置およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】所定の酸化膜を有する単結晶シリコン基板を用いることで、変換特性を向上させる結晶シリコン系光電変換装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一導電型単結晶シリコン基板11を準備する基板準備工程(A)と、一導電型単結晶シリコン基板表面の酸化膜11aを除去する酸化膜除去工程(B)と、一導電型単結晶シリコン基板11を製膜装置に導入する製膜装置導入工程A(C)と、第1真性シリコン系層2もしくは第2真性シリコン系層4の一方を形成するシリコン系層形成工程A(D)と、一導電型単結晶シリコン基板11を反転させる基板反転工程(F)と、第1真性シリコン系層2もしくは第2真性シリコン系層4の他方を形成するシリコン系層形成工程B(G)をこの順に有し、酸化膜除去工程(B)から製膜装置導入工程A(C)までの環境における水蒸気量WAが、6.0g/m3以上11.0g/m3以下に保持される。
【選択図】図2

Description

本発明は、結晶シリコン系光電変換装置およびその製造方法に関する。
結晶シリコン基板を備える結晶シリコン系光電変換装置は、光電変換効率が高く、太陽光発電システムとして広く一般に実用化されている。中でも、単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとは異なるバンドギャップを有する導電型非晶質シリコン系層を有する結晶シリコン系光電変換装置は、ヘテロ接合太陽電池と呼ばれている。
ヘテロ接合太陽電池の中でも、導電型非晶質シリコン系層と結晶シリコン基板との間に、真性の非晶質シリコン系層を有するものは、変換効率の最も高い結晶シリコン系光電変換装置の形態の一つとして知られている。結晶シリコン基板と導電型非晶質シリコン系層との間に、真性の非晶質シリコン系層が製膜されることで、導電型非晶質シリコン系層の製膜による欠陥準位の生成が低減され、かつ結晶シリコン基板表面に存在する欠陥(主にシリコンの未結合手)が水素で終端化処理(パッシベーション)される。また、真性の非晶質シリコン系層の存在によって、導電型非晶質シリコン系層製膜時の、結晶シリコン基板表面へのキャリア導入不純物の拡散を防止することもできる。
一方、従来から、シリコン系層は、大気中にさらすと、大気中の水蒸気と反応して、酸化膜が形成されることが知られている。特許文献1には、光起電力装置に関し、SiGeをi層に含む第1のnip型光電変換素子を形成後に大気に晒して酸化膜を形成することで、第2のnip型光電変換素子のn層へGe等が混入することを防止できる旨が記載されている。
しかしながら、一般に、太陽電池の製造においては、酸化膜の形成を防ぐために低い水蒸気量の雰囲気において各工程が実施されることが良いと考えられてきた。例えば、特許文献2には、CIGS系太陽電池の各製膜工程間の相対湿度を30%以下と低くすることにより、該太陽電池が雰囲気中の湿分(すなわち水分)と反応することを抑制し、太陽電池性能が向上する旨が開示されている。また特許文献3には、薄膜光電変換装置に関し、第1光電変換層形成後、第2光電変換層形成前の雰囲気の湿度(相対湿度)を40%以下とすることで、第1光電変換層/第2光電変換層間の中間層へ水分が吸着することを防止できる旨が記載されている。
特に、ヘテロ接合を有する結晶シリコン系光電変換装置では、例えば特許文献4に記載されているように、非晶質シリコン系層を形成する前に、単結晶シリコン基板上に形成された酸化膜を除去する必要がある。これは、単結晶シリコン基板の表面に酸化膜がある場合、界面特性が低下し、光電変換効率が減少してしまうためである。しかしながら酸化膜を除去した場合も、非晶質シリコン系層形成前に大気中にさらされた場合、大気中の水蒸気と反応して再び酸化膜が出来てしまうため、出来る限り水蒸気にさらさない、すなわち酸化膜除去工程後の環境における水分量は低い方が良い、と考えられてきた。
特開平7−15025 特開2006−203092 特開2011−114290 特開2006−100652
本発明は、所定の酸化膜を有する単結晶シリコン基板を用いることで、結晶シリコン系光電変換装置の変換特性を向上させることを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、結晶シリコン系光電変換装置において、所定の酸化膜を有する単結晶シリコン基板を用いることにより、光電変換特性の向上が可能であることを見出し、本発明を為した。
本発明は、一導電型単結晶シリコン基板の一方の面に第1真性シリコン系層、p型シリコン系層、および透明導電層をこの順に有し、一導電型単結晶シリコン基板の他方の面に第2真性シリコン系層、n型シリコン系層および透明導電層をこの順に有する結晶シリコン系光電変換装置およびその製造方法に関する。
前記結晶シリコン系光電変換装置の製造方法は、前記一導電型単結晶シリコン基板を準備する基板準備工程と、前記一導電型単結晶シリコン基板表面の酸化膜を除去する酸化膜除去工程と、前記一導電型単結晶シリコン基板を製膜装置に導入する製膜装置導入工程Aと、前記第1真性シリコン系層もしくは前記第2真性シリコン系層の一方を形成するシリコン系層形成工程Aと、前記一導電型単結晶シリコン基板を反転させる基板反転工程と、
前記第1真性シリコン系層もしくは前記第2真性シリコン系層の他方を形成するシリコン系層形成工程Bをこの順に有し、前記酸化膜除去工程から前記製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量WAが、6.0g/m3以上11.0g/m3以下に保持されることが好ましい。
前記シリコン系層形成工程Aの後、基板反転工程の前に、製膜装置から基板を取り出す基板取出し工程Aと、前記基板反転工程の後、シリコン系層形成工程Bの前に、前記一導電型単結晶シリコン基板を製膜装置に導入する製膜装置導入工程Bをこの順に有し、前記基板取出し工程Aから前記製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量WBが、7.0g/m3以下に保持されることが好ましい。
前記シリコン系層形成工程Aは、前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の一方を形成する工程、前記シリコン系層形成工程Bは、前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の他方を形成する工程、を有することが好ましい。
前記第1真性シリコン系層および第2真性シリコン系層が、非晶質シリコン系層であることが好ましい。
前記シリコン系層形成工程Aは、前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の一方を形成する工程、前記シリコン系層形成工程Bは、前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の他方を形成する工程、を有することが好ましい。
前記製膜装置は、CVD装置であることが好ましい。
また、本発明における結晶シリコン系光電変換装置は、一導電型単結晶シリコン基板の一方の面に第1真性シリコン系層、p型シリコン系層、および第1透明導電層をこの順に有し、前記一導電型単結晶シリコン基板の他方の面に第2真性シリコン系層、n型シリコン系層および第2透明導電層をこの順に有する結晶シリコン系光電変換装置であって、前記一導電型単結晶シリコン基板は、表面に酸化膜を有する。
前記第1真性シリコン系層および第2真性シリコン系層は、非晶質シリコン系層であることが好ましい。
本発明によれば、これまで少ない方が良いとされてきた、酸化膜除去工程後から製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量を、敢えてある所定範囲にすることによって、変換特性が高い結晶シリコン系光電変換装置を提供することができる。また、基板取出し工程Aから前記製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量を調整することで、より変換特性が高い結晶シリコン系光電変換装置を提供することができる。
本発明の一実施形態による結晶シリコン系光電変換装置の模式的断面図である。 本発明の一実施形態による結晶シリコン系光電変換装置の製造工程を示す概略図である。 本発明の一実施形態による酸化膜付き基板の概略図である。
以下、本発明の実施形態の一例を、図1に示した結晶シリコン系光電変換装置の模式的断面図を用いて説明する。図1の結晶シリコン系光電変換装置において、一導電型単結晶シリコン基板1(以下、基板、単結晶シリコン基板ともいう)の一方の面に第1真性シリコン系層2、他方の面に第2真性シリコン系層4が形成されている。第1真性シリコン系層2および第2真性シリコン系層4のそれぞれの表面には、p型シリコン系層3およびn型シリコン系層5が形成されている。p型シリコン系層3およびn型シリコン系層5のそれぞれの表面には、第1透明導電層6および第2透明導電層8が形成されている。
図1においては、光入射側および裏面側の両方に集電極7,9が形成されている。
本発明における結晶シリコン系光電変換装置の製造方法は、一導電型単結晶シリコン基板を準備する基板準備工程と、前記一導電型単結晶シリコン基板表面の酸化膜を除去する酸化膜除去工程と、前記一導電型単結晶シリコン基板を製膜装置に導入する製膜装置導入工程Aと、前記第1真性シリコン系層2もしくは前記第2真性シリコン系層4の一方を形成するシリコン系層形成工程Aと、前記一導電型単結晶シリコン基板を反転させる工程と、前記第1真性シリコン系層2もしくは前記第2真性シリコン系層4の他方を形成するシリコン系層形成工程Bをこの順に有する。
以下に本発明における結晶シリコン系光電変換装置の製造方法の一実施形態を、図2を用いて説明する。
まず(A)の基板準備工程にて一導電型単結晶シリコン基板1を準備する。この際、基板1の表面には、酸化シリコン膜11a(酸化膜11aともいう)が形成されている。その後、(B)の酸化膜除去工程にて酸化膜を除去する。なお、本発明においては、酸化膜が形成された基板を酸化膜付き基板11、酸化膜除去工程後の基板を酸化膜なし基板12、これらのいずれかを一導電型単結晶シリコン基板1という。
このように酸化膜を除去した基板1を、(C)の製膜装置導入工程Aにより製膜装置に導入し、真空にした後、(D)のシリコン系薄膜層形成工程Aにより前記基板1の一方の面に、第1真性シリコン系層2、p型シリコン系層4を形成する。その後、(E)の基板取出し工程Aにより、製膜装置から取り出し、(E)の基板反転工程により、基板1を反転させる。そして(G)の製膜装置導入工程Bにより、製膜装置に基板を導入して真空にし、(H)のシリコン系層形成工程Bにより、反転させた他方の面を製膜面として、前記第2真性シリコン系層3、n型シリコン系層5を形成する。その後、(I)の基板取出し工程Bにより、基板を製膜装置から取り出す。
まず、一導電型単結晶シリコン基板1について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有しており、導電性を有している。このような不純物を含有する導電型単結晶シリコン基板としては、Si原子に対して電子を導入する不純物(例えば、リン原子)を含有するn型単結晶シリコン基板と、Si原子に対して正孔を導入する不純物(例えば、ホウ素原子)を有するp型単結晶シリコン基板とがある。すなわち、本明細書における「一導電型」とは、n型またはp型のいずれか一方であることを意味する。
このような一導電型単結晶シリコン基板が光電変換装置に用いられる場合、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合が逆接合であることが好ましい。光入射側のヘテロ接合が逆接合であれば、強い電場が設けられ、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、本発明において用いられる一導電型単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
このようにn型単結晶シリコン基板が用いられる場合の結晶シリコン系光電変換装置の構成例としては、光入射側から、集電極7/透明導電層6/p型シリコン系層3/真性シリコン系層4/n型単結晶シリコン基板1/真性シリコン系層4/n型シリコン系層5/透明導電層8/集電極9をこの順に有するものが挙げられる。当該形態においては、n型シリコン系層(n層ともいう)側を裏面側とすることが好ましい。光閉じ込めの観点から、単結晶シリコン基板の表面にはテクスチャ(凹凸構造)が形成されていることが好ましい。
上述のように、一導電型単結晶シリコン基板1は、通常、大気雰囲気下においては、図2(A)のように、表面に厚い酸化膜11aが形成された酸化膜付き基板11として存在するため、この酸化膜11aを(B)の酸化膜除去工程にて除去する。酸化膜を除去する方法としては、特に限定されないが、酸により除去することが好ましく、HF溶液を用いることがより好ましい。
上記のようにして酸化膜を除去した酸化膜なし基板12を用い、(C)のように製膜装置に導入し、真空にする。その後、(D)のシリコン系層形成工程Aにてシリコン系層を製膜する。
ここで、従来では、一導電型単結晶シリコン基板表面の酸化膜は、出来る限り無い方が好ましいと考えられてきた。すなわち酸化膜除去工程後の水蒸気量を出来る限り少なくして酸化膜の形成を抑制することで、変換効率が向上すると考えられてきた。これは、水蒸気量を少なくすることにより、厚いシリコン酸化膜の形成が抑制され、界面欠陥の生成や導電率の低下が抑えられているためと推定される。
しかしながら、本発明においては、敢えて、一導電型単結晶シリコン基板の表面に、所定の酸化膜を有する結晶シリコン系光電変換装置を用いることにより、変換効率が向上することを見出した。すなわち、酸化膜除去工程後に、ある程度水蒸気量の多い環境下にさらすことで、結晶シリコン系光電変換装置、中でも特にヘテロ接合光電変換装置において、これまで好ましいと考えられてきた水蒸気量が少ない環境下にさらした場合よりも、変換効率を向上できることを見出した。
この理由としては、図3に示すように、酸化膜を除去した酸化膜なし基板12を、所定の水蒸気量の環境下にさらすことにより、一導電型単結晶シリコン基板の表面に非常に薄いシリコン酸化膜11bが形成される(図2には図示せず)。すなわち結晶質シリコン基板とその上に形成するシリコン系層との界面に薄い酸化膜が介在する事になり、シリコン系層として特に非晶質シリコン系層を用いた場合、前記酸化膜が、シリコン系層のエピタキシャル成長による結晶化を阻害しているためと推定される。
一般的に、エピタキシャル成長が起きると、結晶/非結晶界面の界面特性が低下してVocが低下し、それに伴いFFも低下すると考えられている。これに対し本発明では、結晶/非結晶(すなわち単結晶シリコン基板/非晶質シリコン系層)の界面に所定の酸化膜を有することで、欠陥密度を抑制でき、それに伴い、VocやFFが向上し、変換効率が向上すると推測される。これは、上述のように、特許文献1の、第一から第二光電変換素子への不純物の混入を抑制するために、第一・第二光電変換素子間の間に酸化膜を形成した薄膜系の光電変換装置とは大きく異なる。
本発明における酸化膜の厚みは、2Å以上10Å以下が好ましい。より変換効率を向上させる観点からは、8Å以下がより好ましく、6Å以下がさらに好ましい。また生産性の観点から、3Å以上がより好ましく、4Å以上がさらに好ましい。
本発明において、前記酸化膜除去工程後から製膜装置に導入する製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量WAは、6.0g/m3以上11.0g/m3以下が好ましい。本発明における「水蒸気量」とは、雰囲気中における温度をT(℃)、温度Tにおける飽和水蒸気量をaT(g/m3)、その雰囲気における湿度(相対湿度)をRH(%)としたとき、
水蒸気量(g/m3)=相対湿度RH(%)×飽和水蒸気量aT(g/m3)/100
を意味する。
なお、本発明においては、酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでの環境における温度をTA、基板取出し工程Aから製膜装置導入工程Bまでの環境における温度をTBという。
Aを6.0g/m3以上11.0g/m3以下とすることにより、単結晶シリコン基板表面に、厚い酸化膜が形成されることに伴う、界面欠陥の増加等の界面特性低下を抑制することが可能となる。変換効率をより向上させる観点から、前記水蒸気量WAは、8.0g/m3以上がより好ましく、また10.0g/m3以下がより好ましい。なお、酸化膜の厚み(すなわち酸化膜の形成し易さや、形成し難さ)は、上記の条件以外に、酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量や温度などを調整することができる。
上記環境下の温度TAや、さらす時間tAは、適宜設定しうるが、例えば、20〜30℃程度の室温付近の環境下にさらした場合、tA=1〜10分程度が好ましく、1〜6分程度が好ましい。室温付近の環境下においては、tAを10分以下にすることで、酸化膜が厚くなりすぎず、太陽電池特性を向上することができる。またこの場合、生産性の観点から、tAは1分以上が好ましい。
本発明においては、図2(C)の製膜装置導入工程Aの後、真空にして、(D)のシリコン系層形成工程Aにより、シリコン系層を形成することが好ましい。ここで本発明における「真空」とは、100Pa以下を意味する。
また前記シリコン系層形成工程Aの後、図2(E)の基板取出し工程Aにより製膜装置から単結晶シリコン基板の取り出しを行い、(F)の基板反転工程により、単結晶シリコン基板を反転(フリップともいう)させる。その後、(E)の再度製膜装置導入工程Bにより導入を行い、真空にした後、前記シリコン系層形成工程Bにより、反転させた他方の面を製膜面として、シリコン系層の形成を実施することが好ましい。
この際、図2(E)の基板取出し工程Aから、(G)の製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量WBは7.0g/m3以下であることが好適である。この理由としては、前記酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでにおいて、すでに薄い酸化膜が形成されているため、水蒸気量WBを少なくすることにより、更なる酸化膜が形成され難くなる、すなわち酸化膜を適度な厚みに保持できるためと考えられる。従って、単結晶シリコン基板表面に、厚い酸化膜が形成されることに伴う、界面欠陥の増加や導電率の低下を抑制することが可能となり、より変換効率の向上が期待できる。WBは6.0g/m3以下がより好ましく、4.0g/m3以下が特に好ましい。
なお、上記基板取出し工程Aから、製膜装置導入工程Bまでの環境において、上記環境下の温度TBや、さらす時間tBは、適宜設定すれば良いが、例えば20〜30℃程度の室温付近にさらした場合、上記tBは、短いほうが好ましく、6分以下が好ましい。
なお、水蒸気量WB、上記環境下の温度TB、時間tBなどは、水蒸気量WAや、その環境下の温度TA、時間tAなどにより、適宜調整することもできる。
なお、本発明における前記シリコン系層形成工程Aもしくはシリコン系層形成工程Bにおいては、少なくとも真性シリコン系層を形成すればよく、真性シリコン系層のみを形成する工程でも、真性シリコン系層及び導電性シリコン系層(n型シリコン系層もしくはp型シリコン系層)の2段形成工程でも構わない。製造の容易性の観点からは、シリコン系層形成工程Aもしくはシリコン系層形成工程Bでは、真性シリコン系層及び導電性シリコン系層の2段形成工程を有することが好ましい。
例えば、「シリコン系層形成工程Aにて真性シリコン系層のみを形成する」とは、シリコン系層形成工程Aにて第一真性シリコン系層を形成し、その後、シリコン系層形成工程Bにて第二真性シリコン系層を形成する(図示せず)ことを意味する。この場合、シリコン系層形成工程Bにおいては、第二真性シリコン系層を形成後にさらにn型シリコン系層を形成してもよい。
また「真性シリコン系層および導電性シリコン系層の2段形成工程」とは、例えば、図2(D)のシリコン系層形成工程Aにて第一真性シリコン系層2およびp型シリコン系層3を形成し、(H)のシリコン系層形成工程Bにて第二真性シリコン系層4を形成することなどを意味する。この際、シリコン系層形成工程Bにて、第二真性シリコン系層を形成後にさらにn型シリコン系層を形成してもよい。なお、シリコン系層形成工程Aにて第二真性シリコン系層4およびn型シリコン系層5、シリコン系層形成工程Bにて第一真性シリコン系層2およびp型シリコン系層3を形成(図示せず)しても良い。
上述のように、単結晶シリコン基板1の表面にはシリコン系層が製膜される。ここでシリコン系層の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。すなわち製膜装置としてCVD装置を用いることが好ましい。
プラズマCVD法によるシリコン系層の形成条件としては、例えば、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cm2が好ましく用いられる。シリコン系層の製膜には、原料ガスとして、SiH4、Si26等のシリコン含有ガスまたは、それらのガスとH2を混合したものが用いられる。p層またはn層を形成するためのドーパントガスとしては、B26またはPH3等が好ましく用いられる。この場合、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、ドーパントガスが予め原料ガスやH2などで希釈された混合ガスを用いることもできる。また、CH4、CO2、NH3、GeH4等の異種元素を含むガスを上記ガスに添加することにより、シリコン系層として、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、シリコンゲルマニウム等のシリコン合金層が製膜されてもよい。
上記の真性シリコン系層2,4は、実質的に真性なノンドープシリコン系薄膜である。単結晶シリコン基板1の表面に真性シリコン系層2,4が形成されることで、導電型シリコン層製膜時の単結晶シリコン基板への不純物拡散が抑制されつつ、単結晶シリコン基板表面のパッシベーションを有効に行うことができる。また、真性シリコン系層の膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
真性シリコン系層2,4は、少なくとも一方が非晶質シリコン系層であることが好ましく、いずれも非晶質シリコン系層であることがより好ましい。また実質的にシリコンおよび水素からなる真性水素化非晶質シリコンであることがさらに好ましい。
真性シリコン系層2,4として、非晶質シリコン系層を用いることにより、上述の、単結晶シリコン基板との界面の欠陥を、より抑制することが可能となる。
真性シリコン系層2,4の膜厚は、3〜16nmであることが好ましく、4nm〜14nmであることがより好ましく、5nm〜12nmであることがさらに好ましい。真性シリコン系層の膜厚を3nm以上とすることで、導電型シリコン系層3,5中の不純物原子の単結晶シリコン基板面への拡散や、単結晶シリコン基板表面のカバレッジ悪化に起因する界面欠陥の増大を抑制することができる。一方、真性シリコン系層の膜厚を16nm以下とすることで、高抵抗化や光吸収ロスの増大による変換特性の低下を抑制することができる。
第1真性シリコン系層2上には、p型シリコン系層3が形成される。p型シリコン系層は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、p型酸化非晶質シリコン層等の非晶質シリコン系層であることが好ましい。非晶質シリコン系層は、微結晶シリコン系層に比して低パワー密度での製膜が可能であるため、不純物原子の単結晶シリコン基板面への拡散が抑制される。非晶質シリコン系層の中でも、不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点では、p型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方で、p型非晶質シリコンカーバイド層あるいはp型酸化非晶質シリコン層はワイドギャップの低屈折率層として光学的なロスを低減できる点において好ましい。
p型シリコン系層3の厚みは、3〜15nmであることが好ましく、4nm〜10nmであることがより好ましく、5nm〜8nmであることがさらに好ましい。導電型層(p型シリコン系層3およびn型シリコン系層5)は、キャリアを透明導電層に取り出すために必要な層であり、その厚みを3nm以上とすることで、キャリア移動の律速を抑制できる。一方、導電型層の厚みを15nm以下とすることで、光吸収ロスなどを抑制することができる。例えば、n型結晶シリコン基板が用いられ、p層側が光入射側である構成のヘテロ接合太陽電池においては、p層の厚みが小さいことが好ましい。
第2真性シリコン系層4上には、n型シリコン系層5が形成される。n型シリコン系層5は、図1に示すように、n型非晶質シリコン系層あるいはn型微結晶シリコン系層の単層により構成されてもよく、複数層により構成されてもよい(図示せず)。中でもn型シリコン系層5は、n型非晶質シリコン系層とn型微結晶シリコン系層の2層により構成されることが望ましい。
n型非晶質シリコン系層としては、隣接層との良好な接合特性が得られやすいことから、n型水素化非晶質シリコン層やn型非晶質シリコンナイトライド層が好ましい。n型微結晶シリコン系層としては、例えばn型微結晶シリコン層、n型微結晶シリコンカーバイド層、n型微結晶シリコンオキサイド層が挙げられる。n層内部の欠陥の生成を抑制する観点からは、ドープ不純物以外の不純物が積極的に添加されていないn型微結晶シリコン層が好適に用いられる。一方で、n型微結晶シリコン系層としてn型微結晶シリコンカーバイド層や、n型微結晶シリコンオキサイド層を用いることで、実効的な光学ギャップを広げることができ、屈折率も低下することから、光学的なメリットが得られる。
n型シリコン系層5の厚みは、5nm〜50nmの範囲が好ましい。n型シリコン系層がn型非晶質シリコン系層とn型微結晶シリコン系層の2層で構成される場合には、n型非晶質シリコン系層の膜厚は5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。n型非晶質シリコン系層の厚みを前記範囲とすることで、その上にn型微結晶シリコン系層を製膜する際のパワー密度を低く抑えることができる。また、n型微結晶シリコン系層の膜厚は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。n型微結晶シリコン系層の厚みを前記範囲とすることで、その上に製膜される透明導電層8の結晶性を向上させることができる。
p型シリコン系層3上およびn型シリコン系層5上には、それぞれ第1透明導電層6および第2透明導電層8が形成される。第1および第2透明導電層の膜厚は、透明性と導電性の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明導電層の役割は、集電極へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよい。140nm以下とすることで、透明導電層自身の吸収ロスなどを抑制でき、光電変換効率の低下等を抑制できると考えられる。透明導電層としては、一般に、透明導電性金属酸化物、例えば酸化インジウムや酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンやその複合酸化物などからなる薄膜が用いられる。中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム錫複合酸化物(ITO)が特に好ましく用いられる。
本発明における透明導電層は、光透過性が高く、かつ低抵抗であることが好ましい。第1透明導電層および第2透明導電層は、いずれも公知の手法により製膜することができる。製膜方法としては、スパッタリング法、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法、熱CVD法、プラズマCVD法、分子線ビームエピタキシー(MBE)法やパルスレーザー堆積(PLD)法などが挙げられる。中でもITO等のインジウム系複合酸化物層の製膜には、スパッタリング法が好適に用いられる。透明導電層製膜時の基板温度は適宜設定すればよいが、200℃以下が好ましい。それ以上の高温となると、シリコン系層から水素が脱離して、ケイ素原子にダングリングボンドが発生し、キャリアの再結合中心となる場合がある。
透明導電層6,8上には、電流取り出しのための集電極7,9が形成されることが好ましい。集電極は、インクジェット、スクリーン印刷、導線接着、スプレー等の公知技術によって作製できるが、生産性の観点からはスクリーン印刷が好ましい。スクリーン印刷法においては、金属粒子と樹脂バインダーからなる導電ペーストをスクリーン印刷によって印刷する工程が好ましく用いられる。集電極としては、例えば、Agペースト、Cu等が材料に用いられる。
少なくとも光入射側の集電極は、太陽電池セルへの光入射面積を大きくするために、櫛形パターン等の形状にパターン化されていることが好ましい。光入射側と反対側の集電極は、パターン化されていてもよく、パターン化されていなくともよい。例えば、光入射側と反対側の金属電極10が透明導電層上の略全面に形成されている場合は、金属電極層が、シリコン基板に吸収されなかった光がセル外に漏れることを抑止する反射層として作用し得る(図示せず)。また、透明導電層と集電極あるいは金属電極層との間に、反射層としてAgやAl等の金属層が形成されていてもよい。
以上のように、本発明においては、光電変換特性が向上した結晶シリコン系光電変換装置を得ることが可能となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
膜厚は、断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。なお、TEM観察によって、真性シリコン系層と導電型シリコン系層との界面を識別することは困難である。そのため、これらの層の膜厚は、TEM観察から求められた各層の合計厚みと製膜時間の比から算出した。また、テクスチャが形成されたシリコン基板表面に形成された層については、テクスチャの斜面と垂直な方向を膜厚方向とした。光電変換装置の光電変換特性は、ソーラーシミュレータを用いて評価した。
水蒸気量は、並板乾湿計(佐藤計量器製作所製)を用いて湿度を測定し、測定した雰囲気内の温度T(℃)における飽和水蒸気量aT(g/m3)をかけた下記の式により求めた。
水蒸気量(g/m3)=相対湿度RH(%)×飽和水蒸気量aT(g/m3)/100
なお、温度T=15、25、35(℃)のとき、飽和水蒸気量は、各々a15=12.8、a25=23.0、a35=39.6(g/m3)として上記式により水蒸気量を求めた。
[実施例1]
実施例1では、図1に模式的に示す結晶シリコン系光電変換装置が製造された。また各工程における雰囲気の温度は25℃であった。
入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコン基板を準備し(基板準備工程)、上記基板がアセトン中で洗浄された。その後、基板が2重量%のHF水溶液に3分間浸漬され、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。次に70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に、シリコン基板が15分間浸漬され、基板表面がエッチングされて、テクスチャが形成された。その後、超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により単結晶シリコン基板1の表面観察を行ったところ、基板表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
次に15ppmのオゾン濃度を有する水溶液に基板を浸して基板表面に付着した不純物を取り込むように基板表面を酸化させた。その後、基板を2重量%のHF水溶液に3分間浸漬させ、基板表面の不純物を酸化膜ごと除去した(酸化膜除去工程)シリコン酸化膜除去後にCVD装置へ導入された(製膜装置導入工程A)。この際、酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量が7.36g/m3、また上記環境下にさらした時間(tA)は5分であった。そして、CVD装置に導入後、60Paまで真空にし、一方の面(入射面側)に、第1真性非晶質シリコン層2が5nmの膜厚で製膜された。製膜条件は、基板温度が150℃、圧力120Pa、SiH4/H2流量比が3/10、高周波パワー密度が0.011W/cm2であった。
第1真性非晶質シリコン層2上にp型非晶質シリコン層3が10nmの膜厚で製膜された(シリコン系層形成工程A)。p型非晶質シリコン層3の製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH4/希釈B26流量比が1/3、高周波パワー密度が0.011W/cm2であった。なお、上記希釈B26ガスとしては、H2によりB26濃度が5000ppmまで希釈されたガスが用いられた。
単結晶シリコン基板1の一方に前記非晶質シリコン層が製膜された後、単結晶シリコン基板1をCVD装置から取り出した(基板取出し工程A)。この際、大気中の水蒸気量は12.5g/m3、また上記環境下にさらした時間(tB)は5分であった。取り出された単結晶シリコン基板1を反転して(基板反転工程)、再びCVD装置に導入し(製膜装置導入工程B)、60Paにした後、単結晶シリコン基板1の他方の面(裏面側)に、第2真性非晶質シリコン層4が5nmの膜厚で製膜された。第2真性非晶質シリコン層4の製膜条件は、第1真性非晶質シリコン層2の製膜条件と同一であった。
第2真性非晶質シリコン層4上にn型非晶質シリコン層5が10nmの膜厚で製膜された(シリコン系層形成工程B)。n型非晶質シリコン層5の製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH4/希釈PH3流量比が1/2、高周波パワー密度が0.011W/cm2であった。なお、上記希釈PH3ガスとしては、H2によりPH3濃度が5000ppmまで希釈されたガスが用いられた。単結晶シリコン基板1の一方に前記非晶質シリコン層が製膜された後、単結晶シリコン基板1をCVD装置から取り出した(基板取出し工程B)。
p型非晶質シリコン層3上およびn型非晶質シリコン層5上のそれぞれに、第1透明導電層6および第2透明導電層8として、インジウム錫複合酸化物(ITO)が100nmの膜厚で製膜された。ITOの製膜には、ターゲットとして酸化インジウムと酸化スズの焼結体(酸化錫含有量が5重量%)が用いられた。キャリアガスとしてアルゴンが100sccmで導入され、基板温度は室温、圧力0.2Pa、高周波パワー密度0.5W/cm2の条件で製膜が行われた。
上記の透明導電層6,8のそれぞれの表面に、集電極7,9として、銀ペーストがスクリーン印刷された。その後、銀ペーストを固化するために、150℃の大気下にて60分間加熱が行われて、櫛形の集電極が形成された。集電極の間隔は2mmとした。
[実施例2〜6、比較例1〜5]
シリコン酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量WAが表1に示すように変更された以外は、実施例1と同様にして太陽電池セルが作製された。
[実施例7〜13]
基板取出し工程Aから製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量WBが表2に示すように変更された以外は、実施例1と同様にして太陽電池セルが作製された。
上記各実施例、および比較例の太陽電池セルの光電変換特性を、ソーラーシミュレータを用いて評価した結果を表1と表2に示す。
水蒸気量WAが6.0g/m3未満の比較例1、2に比べて、WAが6.0g/m3以上の実施例1〜6では、VocとFFが向上し、これに伴い変換効率が向上した。この理由としては、所定の水蒸気量を有する雰囲気において工程を実施することで、単結晶シリコン基板1の表面に非常に薄い酸化膜が形成される、すなわち結晶質シリコン(単結晶シリコン基板1)と、その上に形成する非晶質シリコンとの界面に酸化膜が介在する事になり、酸化膜が結晶界面での非晶質シリコンのエピタキシャル成長を阻害したためと推測される。
また酸化膜がバリア層として機能し、リーク電流を誘導するキャリアの逆流を防いだためと推測される。一方、所定よりも低い水蒸気量において工程を実施した比較例1,2の太陽電池は、酸化膜を有していない若しくは非常に薄いために、エピタキシャル成長を妨害できず、またバリア層として機能しきれなかったと推測される。
また、水蒸気量WAが11.0g/m3より多い比較例3〜5では、WAが11.0g/m3以下の実施例1〜6と比べて、VocとFFが減少し、これに伴い変換効率が低下した。
この理由としては、水蒸気量が多すぎると、単結晶シリコン基板1の表面に厚い酸化膜が形成され、界面欠陥の増加や導電率の低下を招いているためと考えられる。また実施例1〜6のうち、実施例2,3,4の変換効率が特に向上したことから、水蒸気量WAは、8.0g/m3以上、10.0g/m3以下程度が特に好ましいと考えられる。
[実施例7〜13]
実施例7〜13では、基板取出し工程Aから製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量WBが表2に記載の値にて行われた点において、実施例1とは製造方法が異なっていた。それ以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
実施例1、7〜13を比較すると、水蒸気量WBを少なくするにつれて、変換効率が向上した。WBを7.0g/m3以下とした実施例7〜10では、変換効率がより向上した。これは、上述したように、シリコン酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでに薄い酸化膜が既に形成されているため、非晶質シリコンのエピタキシャル成長の阻害効果や、バリア層としての効果が十分得られるためと推測される。
[実施例14〜16]
水蒸気量WA、WBを6.44g/m3で一定にし、製膜時の温度を変更した以外は実施例1と同様にして、太陽電池セルを作製した。得られた太陽電池セルの光電変換特性を、ソーラーシミュレータを用いて評価した結果を表3に示す。
実施例14、15、16では、工程時の温度が各々15、25、35℃と異なるものの、同程度の性能を示した。ここで、温度の違いにより飽和水蒸気量が異なるため、水蒸気量が同程度の実施例14〜16では、雰囲気下の相対湿度が異なる。相対湿度は、15℃においては50.3%(実施例14)、25℃においては28%(実施例15)、35℃においては16.3%となった(実施例16)。
相対湿度が異なるにも拘らず、実施例14〜16の太陽電池性能が同程度になったことから、太陽電池性能は、主に水蒸気量により影響を及ぼされ、特に室温付近においては、温度あるいは湿度にはあまり影響を及ぼされないと考えられる。
[実施例17]
酸化膜除去工程から製膜装置導入工程Aまでの環境下において、上記環境下における時間(tA)を2分とした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池セルを作製した。得られた太陽電池セルの光電変換特性結果を表4に示す。
実施例1と実施例17を比較すると、変換特性が同程度になった。これは、室温付近においては、tAが2〜5分程度では、酸化膜に対し、殆ど影響を及ぼされなかったためと推測される。
以上より、本発明のように、所定の水蒸気量を有する雰囲気下に太陽電池セルをさらすことにより、光電変換特性を向上できることがわかった。
1 一導電型単結晶シリコン基板
11 酸化膜付き基板
11a,b 酸化膜
12 酸化膜なし基板
2 第1真性シリコン系層
3 p型シリコン系層
4 第2真性シリコン系層
5 n型シリコン系層
6,8 透明導電層
7,9 集電極

Claims (7)

  1. 一導電型単結晶シリコン基板の一方の面に第1真性シリコン系層、p型シリコン系層、および第1透明導電層をこの順に有し、前記一導電型単結晶シリコン基板の他方の面に第2真性シリコン系層、n型シリコン系層および第2透明導電層をこの順に有する結晶シリコン系光電変換装置を製造する方法であって、
    前記一導電型単結晶シリコン基板を準備する基板準備工程と、
    前記一導電型単結晶シリコン基板表面の酸化膜を除去する酸化膜除去工程と、
    前記一導電型単結晶シリコン基板を製膜装置に導入する製膜装置導入工程Aと、
    前記第1真性シリコン系層もしくは前記第2真性シリコン系層の一方を形成するシリコン系層形成工程Aと、
    前記一導電型単結晶シリコン基板を反転させる基板反転工程と、
    前記第1真性シリコン系層もしくは前記第2真性シリコン系層の他方を形成するシリコン系層形成工程Bをこの順に有し、
    前記酸化膜除去工程から前記製膜装置導入工程Aまでの環境における水蒸気量WAが、6.0g/m3以上11.0g/m3以下に保持される結晶シリコン系光電変換装置の製造方法。
  2. 前記シリコン系層形成工程Aの後、基板反転工程の前に、製膜装置から基板を取り出す基板取出し工程Aと、
    前記基板反転工程の後、シリコン系層形成工程Bの前に、前記一導電型単結晶シリコン基板を製膜装置に導入する製膜装置導入工程Bをこの順に有し、
    前記基板取出し工程Aから前記製膜装置導入工程Bまでの環境における水蒸気量WBが、7.0g/m3以下に保持される請求項1に記載の結晶シリコン系光電変換装置の製造方法。
  3. 前記第1真性シリコン系層および第2真性シリコン系層が、非晶質シリコン系層である請求項1または2に記載の結晶シリコン系光電変換装置の製造方法。
  4. 前記シリコン系層形成工程Aは、
    前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の一方を形成する工程、
    前記シリコン系層形成工程Bは、
    前記第1真性シリコン系層上にp型シリコン系層、もしくは前記第2真性シリコン系層上にn型シリコン系層の他方を形成する工程、
    を有する請求項1〜3のいずれかに記載の結晶シリコン系光電変換装置の製造方法。
  5. 前記製膜装置が、CVD装置である請求項1〜4のいずれかに記載の結晶シリコン系光電変換装置の製造方法。
  6. 一導電型単結晶シリコン基板の一方の面に第1真性シリコン系層、p型シリコン系層、および第1透明導電層をこの順に有し、前記一導電型単結晶シリコン基板の他方の面に第2真性シリコン系層、n型シリコン系層および第2透明導電層をこの順に有する結晶シリコン系光電変換装置であって、前記一導電型単結晶シリコン基板は、表面に酸化膜を有する結晶シリコン系光電変換装置。
  7. 前記第1真性シリコン系層および第2真性シリコン系層が、非晶質シリコン系層である請求項6に記載の結晶シリコン系光電変換装置。
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