JP2014001422A - オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Masami Sawada
正美 澤田
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Abstract

【課題】歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びとの積が450MPa以上であり、高歪み速度での高強度化、低歪み速度での延性の向上とが図られたオーステナイト系ステンレス鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.02〜0.30%、Cr:10.0〜25.0%、Ni:3.5〜10.0%、Si:3.0%以下、Mn:0.5%〜5.0%、N:0.10〜0.40%、C+3×N:0.4%以上、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、下記(1)式により規定されるMd30値が0℃以上40℃以下であり、Cr炭化物およびCr窒化物の体積率が1%以下であり、かつ母相の平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板である。
【選択図】図1

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関し、具体的には、例えば自動車や電車等の構造部材として用いるのに適した、衝突相当の高歪み速度域での強度とプレス成形相当の低歪み速度域での延性とを両立したオーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。
近年、環境問題への対応として、自動車や鉄道等の燃費向上が要望されており、この解決策としては、車体の軽量化が非常に効果的である。さらに車体の軽量化には、重量の多くを占める構造部材を形成する素材の軽量化、具体的には素材の薄肉化が有効である。しかしながら、素材の薄肉化は剛性や衝突時の衝撃吸収能を低下させる。そこで、近年では特に構造部材への高強度素材の適用が進んでいる。
例えば、自動車のフロントサイドメンバーなどは、大きく変形せずに衝撃エネルギーを吸収する必要がある。このような小さい歪み域での衝撃吸収能の指標としては、衝突相当の歪み速度1000/sでの10%流動応力が適すると考えられる。また、プレス性の指標としては、プレス相当の歪み速度0.1/sでの一様伸びが適すると考えられる。すなわち、歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びとに優れる材料が構造部材として適するといえる。具体的には、歪み速度1000/sでの10%流動応力と、歪み速度0.1/sでの一様伸びとの積が450MPa以上となる衝撃吸収能とプレス成形性のいずれか、あるいは両方が極めて優れた材料が望ましい。
特許文献1には、Mnを多量に添加し、変形時に加工誘起マルテンサイト変態を起こさせず、オーステナイトの双晶変形によって強度を高めるオーステナイト系ステンレス鋼に係る発明が開示される。しかし、この発明のオーステナイト系ステンレス鋼では、加工誘起マルテンサイト変態を全く起こさせないため、得られる強度および伸びのバランスが不十分な場合がある。具体的には、特許文献1には、実施例として動的引張試験における10%流動応力と静的引張試験における破断のびとが記載されているが、これらの積はいずれも400MPa弱にとどまる。
特許文献2には、低Ni型の自動車構造部材用オーステナイト系ステンレス鋼に係る発明が開示される。しかし、この発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、結晶粒径が数10μmと粗大であるため、自動車構造部材として成形する際に曲げ加工部の表面で亀裂が発生することが多く、構造部材の特性として不十分である。
特開2009−30128号公報 特開2010−196103号公報
構造部材のさらなる軽量化や設計自由度の向上を図るため、現在でも、素材には高歪み速度での高強度化と、低歪み速度での延性の向上が要求されている。このため、特許文献1,2により開示されたオーステナイト系ステンレス鋼であっても、最新の製品に要求される性能を十分に満足できない場合がある。
本発明者らは、一般的に相反する特性である高強度および高延性の両立にあたり、鋼の各種高強度化の手法を検討した結果、各種高強度化の手法のうちで(a)固溶C,固溶Nによる強化、(b)変形時の変態誘起塑性(TRIP効果)による強化、及び(c)結晶粒微細化による強化を活用することにより、高歪み速度での高強度と、低歪み速度での高延性と高次元で両立させることができることを知見し、本発明を完成した。本発明は、以下に列記の通りである。
(1)C:0.02〜0.30%(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する)、Cr:10.0〜25.0%、Ni:3.5〜10.0%、Si:3.0%以下、Mn:0.5%〜5.0%、N:0.10〜0.40%、C+3×N:0.4%以上、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、下記(1)式により規定されるMd30値が0℃以上40℃以下であり、Cr炭化物およびCr窒化物の体積率が1%以下であり、かつ母相の平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板。
Figure 2014001422
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:3.0%以下またはCu:3.0%以下の少なくとも1種を有する(1)項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.50%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する(1)項または(2)項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びとの積が450MPa以上である(1)項から(3)項までのいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
(5)ステンレス鋼素材に熱間圧延を施した後、得られた熱延鋼板に下記(2)式を満足する焼鈍温度T(℃)および焼鈍時間t(sec)で焼鈍を施すことを特徴とする(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
Figure 2014001422
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼板は、歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びとの積が450MPa以上であり、衝撃吸収能とプレス成形性のいずれかあるいは両方を、従来鋼よりも大きく向上でき、高歪み速度での高強度化と、低歪み速度での延性の向上とが図られる。
図1は(2)式を図示したグラフである。 図2は、EPMA線分析による熱延焼鈍板の分析結果を示すグラフであり、図2(a)鋼板3の分析結果を示し、図2(b)は鋼板43の分析結果を示し、図2(c)は鋼板44の分析結果を示す。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼板の化学組成、金属組織および製造方法を説明する。
1.化学組成
(C:0.02〜0.30%)
Cは、固溶強化元素であり、高歪み速度での高強度化に大きく寄与する。Cによる固溶強化は、短範囲障害物を活用した強化であり、強化の歪み速度依存性が大きい。したがって、合金元素による固溶強化、転位による強化、析出物による他の強化と比較して、低歪み速度での延性の劣化が小さく、本発明の目的である高歪み速度での高強度化と低歪み速度での延性との両立に極めて有効である。このため、C含有量は0.02%以上とする。ただし、C含有量が過剰であると、製造過程において粗大な炭化物を生成して、強度および延性のバランスが劣化するので、C含有量は0.30%以下とする。C含有量は、好ましくは0.04%以上0.30%以下であり、さらに好ましくは0.06%以上0.30%以下である。
(Cr:10.0〜25.0%)
Crは、ステンレス鋼の基本元素であり、10.0%以上含有させることにより鋼材の表面に不動態皮膜を形成して耐食性を高める作用を奏する。しかし、Cr含有量が過剰であると、高温でδフェライトが生成し、鋼の熱間加工性が著しく劣化する。そのため、Cr含有量は10.0%以上25.0%以下とする。Cr含有量は、好ましくは15%以上20%以下である。
(Ni:3.5〜10.0%)
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼の基本元素であり、室温で優れた強度および延性のバランスを有するオーステナイト相を安定して得るために、Niを3.5%以上含有させる。しかし、Ni含有量が多過ぎるとオーステナイト相が過剰に安定化し、変形時の加工誘起マルテンサイト変態が抑制され、加工硬化し難くなる結果、伸びが低下する。そのために、Ni含有量は3.5%以上10.0%以下とする。Ni含有量は、好ましくは3.5%以上8%以下である。
(Si:3.0%以下)
Siは、固溶強化元素であり、鋼の高強度化に寄与するとともに、溶製時の脱酸材としても用いられる。しかし、Si含有量が過剰であると、製造過程で粗大なSi化合物が生成され、これらの粗大なSi化合物が熱間加工性及び冷間加工性の劣化を招く。このため、Si含有量は、3.0%以下であり、望ましくは2.8%以下である。
(Mn:0.5〜5.0%)
Mnは、溶製時の脱酸材として用いられる。また、Mnは,オーステナイト安定化元素であり、かつC,Nの固溶限を上げ、多量のC,Nを固溶させる効果があり、他の元素とのバランスを考慮して適量を含有させる。しかし、Mn含有量が過剰であると、製造過程で粗大なMn化合物が生成され、粗大なMn化合物が破壊の起点となって、成形性が劣化する。以上の理由により、Mn含有量は0.5%以上5.0%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.0%以上5.0%以下であり、さらに好ましくは1.5%以上5.0%以下である。
(N:0.10〜0.40%)
Nは、Cと同様に固溶強化元素であり、高歪み速度での高強度化に有効である。固溶Nは、固溶Cと同様に、合金元素による固溶強化、転位による強化、析出物による強化と比較して、低歪み速度での延性の劣化が小さいため、本発明の目的である高歪み速度での高強度化と低歪み速度での延性の向上に極めて有効である。このため、N含有量は0.10%以上とする。ただし、N含有量が過剰であると、製造過程において粗大な窒化物を生成して、強度および延性のバランスが劣化するので、N含有量は0.40%以下とする。N含有量は、好ましくは0.15%以上0.30%以下であり、さらに好ましくは0.20%以上0.25%以下である。
(C+3×N:0.4%以上)
上述したように、C,Nは固溶強化元素であり、高歪み速度での高強度化に大きく寄与する。CとNによる固溶強化は、合金元素による固溶強化、転位による強化、析出物による強化と比較して、低歪み速度での延性の劣化が小さいことから、本発明の目的である高歪み速度での高強度化と低歪み速度での延性の両立のため、C+3×Nを0.4%以上とする。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、必要に応じて以下に説明する任意添加元素をさらに含有していてもよい。
(Mo:3.0%以下またはCu:3.0%以下の一方または両方)
Moは、耐食性の向上に有効な元素であり、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Mo含有量が多過ぎると延性の低下をもたらすため、Mo含有量は、3.0%以下とする。Mo含有量は、好ましくは2.5%以下であり、耐食性向上効果を確実に得るためには0.4%以上含有することが好ましい。
Cuは、冷間加工性や延性の向上に有効であり、必要に応じて含有させてもよい。しかし、Cu含有量が多過ぎると熱間脆性を誘発するため、Cu含有量は3.0%以下とする。Cu含有量は、好ましくは2.5%以下であり、冷間加工性や延性の向上効果を確実に得るためには0.4%以上含有することが好ましい。
(Ti:0.10%以下、Nb:0.50%以下およびV:1.0%以下から選ばれた1種または2種以上)
Ti、NbおよびVは、いずれも、製造過程において、微細な炭化物あるいは窒化物として析出し、ピン止め効果により結晶の粒成長を抑制する効果があるので、必要に応じて含有させてもよい。ただし、これらの元素の含有量が過剰になると、粗大な炭化物や窒化物が生成し、これらが変形時の破壊起点となって成形性を著しく劣化させる。そのために、Ti含有量は0.10%以下とし、Nb含有量は0.50%以下とし、V含有量は1.0%以下とする。好ましくは、Ti含有量は0.05%以下であり、Nb含有量は0.2%以下であり、V含有量は0.5%以下である。また、結晶の粒成長を抑制する効果を確実に得るためには、Tiは0.01%以上、Nbは0.02%以上、Vは0.02%以上、含有することが好ましい。
上述した以外の残部は、Fe及び不純物である。代表的な不純物としては、P:0.05%以下、S:0.03%以下などが例示される。
(Md30値が0℃以上40℃以下)
Md30値は、オーステナイト安定度を示す指標であり、30%の伸び歪みを与えた時に50%がマルテンサイトに変態する加工温度である。Md30値は、上記(1)式により規定される。Md30値を0℃以上40℃以下とすることにより、変形時に適度に加工誘起マルテンサイトが生成し、TRIP効果が発現することで、より優れた強度および延性のバランスが得られる。
2.金属組織
(オーステナイト母相の結晶粒径:10μm以下)
結晶粒の微細化は、鋼の延性の劣化が小さい強化法であり、本発明で対象とするステンレス鋼においても有効な強化手法であることが分かった。また、結晶粒径を小さくし、結晶粒界の密度を上げることにより、変形時に結晶粒界に集中する歪を分散させ、き裂の発生を抑制する効果もある。そこで、オーステナイト母相の結晶粒径を10μm以下とする。オーステナイト母相の結晶粒径は、好ましくは7μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下である。
(Cr炭窒化物の体積率:1.0%以下)
前述のとおり、C,N含有量を増やすことにより、高歪み速度での強度と低歪み速度での延性とのバランスが向上するが、これは、固溶C,Nの場合、高強度化に及ぼす歪み速度依存性が大きいためである。したがって、C、Nを多く添加しても、これらがCr炭化物やCr窒化物として存在したのではこの効果を得られない。ここで、Cr炭化物としてはCr23が挙げられ、Cr窒化物としてはCrN,CrNが挙げられる。ここでいうCr炭化物には、微量のNが固溶したCr23(C,N)を含み、Cr窒化物には微量のCが固溶したCr(C,N),Cr(C,N)を含む。さらに、Cr炭化物,Cr窒化物のように粗大な化合物が存在する場合、Cr炭化物,Cr窒化物自身、あるいはCr炭化物,Cr窒化物と母相との界面がき裂の起点となり易く、延性を顕著に劣化させる。このため、Cr炭化物,Cr窒化物が少ないことが望ましく、具体的には、Cr炭化物およびCr窒化物の体積率を1.0%以下とする。
3.製造方法
本発明は、多くのC、Nを固溶させることにより、優れた強度および延性のバランスを得ることを特徴とする。しかし、例えば特許文献2で開示された、1080℃、60秒間程度の熱延板焼鈍では、熱間圧延時に析出あるいは濃化したC,Nが十分に均一化せず、これらの析出あるいは濃化したC,Nが、その後の固溶化熱処理や焼鈍を経ても残存する場合があり、固溶化熱処理や焼鈍後の冷却過程で、Cr炭化物や窒化物が残存した析出物を核として析出しやすく、C、Nを多く固溶した状態にできない。
本発明者らは、焼鈍温度T(℃),焼鈍時間t(sec)とC,Nの拡散を詳細に検討した結果、熱延板中のC,Nが150μm以上拡散するような焼鈍温度Tおよび焼鈍時間tにより熱延板焼鈍を施すことによって、熱間圧延時に析出あるいは濃化したC,Nが十分に固溶し均一化することが判明した。
ここで、拡散距離λは、(3)式のように拡散係数D,時間tで整理される。さらに、オーステナイト系ステンレス鋼中のNの拡散係数D(m/sec)は、文献(例えば、鋼の物性と窒素 69ページ アグネ技術センター)によると、(4)式により表わされる。
Figure 2014001422
Figure 2014001422
(3)式および(4)式に基づいてNが150μm以上拡散する条件を整理したものが(2)式である。また、(2)式を図示したものが図1である。オーステナイト系ステンレス鋼中のCは、拡散係数がNとほぼ同じであるため、(2)式を満たす焼鈍温度および焼鈍時間の熱延板焼鈍を行えば、Cも十分に拡散し、均一化される。
また、熱延板焼鈍時にC,Nが拡散して均一化されても、冷却速度が遅いと、冷却中にC,NがCr炭化物,Cr窒化物として析出する場合がある。特にCr炭化物,Cr窒化物が析出し易い700℃までは冷却速度を2.0℃/sec以上とすることが好ましい。熱延板焼鈍以後の溶体化処理や焼鈍においても、温度は900℃以上で保持し、保持温度から700℃までの冷却速度は2.0℃/sec以上とすることが好ましい。
表1に示す化学組成の17kgのステンレス鋼塊を溶製した。表1において、鋼種A1〜A25は、化学組成、(C+3×N)量、Md30値がいずれも本発明の範囲を満足する材料であり、鋼種B1〜B14は、化学組成、(C+3×N)量、Md30値の少なくとも1つが本発明の範囲を外れる材料である。
Figure 2014001422
このステンレス鋼鋳塊を切削加工して厚さ45mmの熱間圧延用素材とした。その後に熱間圧延を施して、厚さ6.0mmの熱延鋼板とした後、この熱延鋼板にそれぞれ表2に示す焼鈍温度および焼鈍時間で熱延板焼鈍を施した。
その後、冷間圧延と焼鈍を2〜3回ずつ繰り返して、厚さ1.0mmの冷延板を得た。最後に900〜1000℃で180秒間焼鈍を施した。
Cr炭窒化物の体積率V(%),平均結晶粒径D(μm),歪み速度1000/sでの10%流動応力(10%FS),歪み速度0.1/sでの一様伸び(UEL)は、以下の手法で測定した。
(Cr炭窒化物の体積率)
鋼板を板厚が3/4となるまで化学研磨した後、特性X線をCo―Kα線、2θを30−100(degree)の範囲でX回折測定を行った。検出された回折ピークを用いてCr炭化物およびCr窒化物の体積率Vを算出した。母相のX線回折ピークは、オーステナイト相の(111)面、(200)面、(220)面、および母相のマルテンサイト相の(110)面、(200)面、(211)面からの回折ピークを用いた。炭化物のX線回折ピークとしてCr23の(420)面、(422)面、(440)面からの回折ピーク、窒化物のX線回折ピークとしてCrNの(110)面、(002)面、(111)面および、CrNの(111)面、(220)面、(311)面からの回折ピークを用いた。
同じ相からのピークであっても面によってX線の反射率が異なる。したがって、各ピークの積分強度は、JCPDSカードの各ピークの相対強度で割り、規格化した。
また、各相の構成元素が異なると、それらの構成元素の原子散乱因子(atomic scattering factor)が異なるため、X線の反射率は異なる。しかしながら、X線回折測定に関する代表的な文献である「B.D.Cullity:Elements of X-ray Diffraction,2nd ed.,Addison-Wesley,Massachussets,(1978)」によると、本発明で対象とするステンレス鋼の母相、および炭化物,窒化物の主要元素であるFe,Cr,Ni,Mnの原子散乱因子の差は小さいため、今回の実施例の範囲では、各相の構成元素の差が反射率に及ぼす影響は無視できる。
以上により、Cr炭化物およびCr窒化物の体積率Vは、下記(5)式により表わせる。V、V、Vγ、Vα’は、それぞれCr炭化物、Cr窒化物、オーステナイト相、マルテンサイト相の各面のピークの積分強度をJCPDSカードの相対強度で割った後、その値を足し合わせた値である。
Figure 2014001422
一例を(6)式に示す。ここで、Iγ(hkl)は、X線回折測定で得られたγ(hkl)面からのピークの積分強度、RIγ(hkl)は、JCPDSカードのRIγ(hkl)の相対強度である。
Figure 2014001422
(結晶粒径)
鋼板の圧延方向平行断面を研磨し、硝酸電解腐食後に、走査型顕微鏡で金属組織を撮影した。撮影した写真から得られた公称粒径を母相の平均結晶粒径とした。
(歪み速度1000/sでの10%流動応力,歪み速度0.1/sでの一様伸び)
歪み速度1000/sおよび0.1/sで引張試験を行った。各鋼板について引張試験を3回ずつ行い、それらの平均値を特性値とした。ここでは、衝突相当の高歪み速度の強度として歪み速度1000/sでの10%流動応力を利用するとともに、プレス相当の低歪み速度での延性として歪み速度0.1/sでの一様伸びを測定した。これらの10%流動応力と一様伸びの積を、強度および延性のバランスの指標とした。
表2に、これらの鋼板のCr炭化物およびCr窒化物の体積率V(%),平均結晶粒径D(μm),歪み速度1000/sでの引張試験における10%流動応力,歪み速度0.1/sでの引張試験における一様伸び,およびこれらの積をまとめて示す。
Figure 2014001422
表2における鋼板1〜26は、本発明例の鋼板である。鋼板1〜26におけるMo含有量:0.3%、Cu含有量:0.3%、Ti,Nb,V含有量:0.001%は、いずれも、不純物としての含有量である。
鋼板1〜26は、いずれも、優れた強度および延性のバランスを有する。具体的には、歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びの積が450MPaを超える鋼である。
一方、鋼板27〜44は比較鋼であり、強度および延性のバランスに劣る鋼である。
鋼板27,28は、C含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板29,30は、N含有量が本発明の範囲から外れ、特に鋼板29は(C+3×N)量も本発明の範囲よりも少なくいため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板31,32は、(C+3×N)量が本発明の範囲よりも少なく、特に鋼板31はC含有量およびN含有量のいずれもが本発明の範囲を外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板33,34は、Cr含有量およびMd30値が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板35は、Ni含有量およびMd30値が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板36は、Ni含有量およびMd30値が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板37は、Si含有量およびMn含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板38は、Si含有量、Mn含有量およびTi含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板39は、Mo含有量およびNb含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板40は、Cu含有量およびV含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板41,42は、いずれも、本発明の範囲を満足する化学組成、(C+3×N)量およびMd30値を有するものの、結晶粒径が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。鋼種A1から作製した鋼板1,41,42を比較することにより、結晶粒径を10μm以下にすることにより優れた強度および延性のバランスを得られることが分かる。
さらに、鋼板43,44は、いずれも、本発明の範囲を満足する化学組成、(C+3×N)量およびMd30値を有するものの、冷延焼鈍材のCr炭化物およびCr窒化物の合計の体積率が1%を超えており、強度および延性のバランスに劣る。鋼種A3から作った鋼板3,4,43,44を比較することにより、Cr炭化物およびCr窒化物の合計の体積率を1%以下にすることにより、優れた強度および延性のバランスが得られることがわかる。
図2はEPMA線分析による熱延焼鈍板の分析結果を示すグラフであり、図2(a)鋼板3の分析結果を示し、図2(b)は鋼板43の分析結果を示し、図2(c)は鋼板44の分析結果を示す。
鋼板43,44は、熱間圧延後の熱延板焼鈍の焼鈍温度および焼鈍時間が(2)式を満たさず、図2(a)〜図2(c)の熱延焼鈍板のEPMA分析結果からわかるように、熱延板焼鈍後にC,Nが濃化した領域が存在する。これらが、最終焼鈍後まで残存し、多量のCrの炭化物、窒化物として存在する。
鋼板36は、Ni含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。
鋼板37は、Si含有量およびMn含有量が本発明の範囲から外れるため、強度および延性のバランスに劣る。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.30%、Cr:10.0〜25.0%、Ni:3.5〜10.0%、Si:3.0%以下、Mn:0.5%〜5.0%、N:0.10〜0.40%、C+3×N:0.4%以上、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、下記(1)式により規定されるMd30値が0℃以上40℃以下であり、Cr炭化物およびCr窒化物の体積率が1%以下であり、かつ母相の平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板。
    Figure 2014001422
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:3.0%以下またはCu:3.0%以下の少なくとも1種を有する請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%以下、Nb:0.50%以下およびV:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  4. 歪み速度1000/sでの10%流動応力と歪み速度0.1/sでの一様伸びとの積が450MPa以上である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  5. ステンレス鋼素材に熱間圧延を施した後、得られた熱延鋼板に下記(2)式を満足する焼鈍温度T(℃)および焼鈍時間t(sec)で熱延板焼鈍を施すことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
    Figure 2014001422
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