JP5035297B2 - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、例えば自動車や産業機器の構造部材の素材に好適な、高い降伏比と良好な延性とを具備する高強度熱延鋼板およびその製造方法に関する。
連続熱間圧延によって製造される、いわゆる熱延鋼板は、比較的安価な構造材料として、例えば自動車や産業機器の構造部材の素材として広く用いられている。近年、自動車等の軽量化を目的として、各種構造部材の素材に用いられる鋼板について高強度化が進められており、これらの熱延鋼板についても高強度化が進められている。
ところで、一般に、鋼板は引張強度を高めると延性等の加工性が低下することから、引張強度を高めつつ良好な加工性を確保する方法として、主相となるフェライトに残留オーステナイト相、マルテンサイト相、ベイナイト相、析出相などの第2相を混在させた複相鋼板が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、第2相が主として残留オーステナイト相である残留オーステナイト鋼板として、C:0.16〜0.30%未満(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.5〜3.0%、Si+Mn:1.5超〜6.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.10%、およびFeを主成分として含み、さらに必要に応じCa:0.0005〜0.01%またはREM:0.005〜0.05%を含有し、ミクロ組織としてフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3相で構成され、かつフェライト占積率(V)とフェライト粒径(d)の比(V/d)が7以上で2μm以下の残留オーステナイト占積率が5%以上であり、降伏比(YR):60%以上、強度−延性バランス(引張強さ×全伸び):2000kgf/mm・%以上、穴拡げ比(d/d0):1.1以上、一様伸び:10%以上の特性を具備する、成形性に優れた高降伏比型熱延高強度鋼板とその製造方法に係る発明が開示されている。
また、特許文献2には、第2相がマルテンサイト相である鋼板として、C:0.03〜0.2%、Mn:0.5〜2.0%を含み、さらに、SiとAlの内の1種もしくは2種の合計量が0.02〜4.0%、P:0.02〜0.2%、Cr:0.02〜1.0%の少なくとも1種以上を含み、残部はFeおよび不可避的成分からなり、マルテンサイト占積率が3〜30%、且つ該マルテンサイトの平均結晶粒径が5μm以下であり、鋼板の特性として、加工硬化指数が0.13以上、降伏比が75%以下、引張強さ×全伸びが18000以上、穴拡げ性が1.2以上である自動車用高強度鋼板に係る発明が開示されている。
また、鋼板の引張強度を高めつつ良好な加工性を確保する方法としては、鋼板の鋼組織を微細化することも有効であると考えられており、このような観点からも幾つかの鋼板に係る発明も開示されている。
特開平5−171345号公報 特開平11−61327号公報
上述したように、近年、自動車等の軽量化のために各種構造部材の素材に用いられる鋼板について高強度化が進められている。ここで、自動車の足廻り部品、バンパー部品、衝撃吸収用部材などに用いられる熱延鋼板には、高い引張強度の他にも、軽量性、優れた耐久性さらには衝撃吸収性能などの観点から、高い降伏比を備えることが望まれている。また、複雑な形状への成形加工に耐え得るだけの良好な延性を備えることも必要とされている。
このような背景から、上述したように、従来技術においては各種方法による鋼板の高強度化が検討されているものの、これらの従来技術には以下に示す課題が存在する。
特許文献1により開示された発明のように、第2相を主として残留オーステナイト相とすると、鋼板の引張強度を効率的に高めることは困難である。高強度化のみに着目すればCやSiなどの含有量を高めることが考えられるが、溶接性の劣化が著しくなったり、遅れ破壊に対するリスクが高まったりするため、これらの元素の含有量は実用上制約される。したがって、特許文献1により開示された発明において780MPa以上の引張強度を確保することは実用上困難である。
また、特許文献2により開示された発明のように第2相をマルテンサイト相とすると、鋼板の降伏比の低下を招いてしまう。このため、特許文献2により開示された発明において780MPa以上の引張強度を確保しつつ0.70超の高い降伏比を確保することは困難である。上述したように、自動車の足廻り部品、バンパー部品、衝撃吸収用部材などに用いられる熱延鋼板には、軽量化、優れた耐久性や衝撃吸収能などの観点から高い降伏比を備えることが要求されるため、特許文献2により開示された発明をこれらの用途に供する鋼板に適用することは好ましくない。
本発明は、これらの従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、780MPa以上の高い引張強度を有するとともに、0.70以上の高い降伏比と、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が20000MPa・%以上という良好な延性とを有する、熱延鋼板およびその製造方法を提供することを第1の目的とし、このような熱延鋼板を、諸特性を害する程度の過剰な合金元素の含有を伴わずに、提供することを第2の目的とする。
本発明者らは、複相組織の高強度熱延鋼板について、高い降伏比と良好な延性とを具備させる方法について鋭意検討を行った。その結果、以下に列記する知見が得られた。
(A)Hall−Petchの法則に従い、結晶粒の微細化とともに降伏応力および降伏比は増加する。
(B)主相であるフェライトの平均粒径を2.0μm以下と微細にした鋼組織に、マルテンサイト相や残留オーステナイト相の硬質第2相を含有させると、延性が飛躍的に向上する。
(C)この場合において、マルテンサイト相や残留オーステナイト相の硬質第2相を微細化することにより、延性が一層向上する。
(D)上記鋼組織を有する複相鋼板は、熱間圧延過程での組織制御により製造することができる。すなわち、熱間加工されたオーステナイトからのフェライト変態により、微細なフェライト相を形成させることができ、残部を低温でマルテンサイト変態させることによりマルテンサイト相としたり、もしくは変態させずにオーステナイト相のまま残存させて残留オーステナイト相としたりすることができる。
(D)従来技術におけるフェライト相とマルテンサイト相とからなる複相熱延鋼板の製造方法は、通常、熱間圧延後の冷却過程で鋼組織の一部をフェライト変態させた後に、所定の冷却速度で焼き入れることによって残部をマルテンサイト変態させるものである。このように製造された複相熱延鋼板は、板厚方向に均質な複相組織を有し、降伏比が低い。
(E)しかし、所定の化学組成を有する鋼板を安定オーステナイト域で多パス圧延し、かつ、表層部にせん断歪を与えると、加工オーステナイトの圧延下部組織は微細し、さらに圧延の極直後に急冷却を施して所定の温度域に保持すると、上記の微細な圧延下部組織がフェライトの核生成サイトとなって微細なポリゴナルフェライト粒が形成され、残部には炭素が多量に濃縮してオーステナイトが安定化する。これにより、鋼板の表層部にはマルテンサイトの他に残留オーステナイトを含有する微細な鋼組織が形成される。
(F)このような微細なポリゴナルフェライトに挟まれた残留オーステナイトは極めて安定であり、マルテンサイトへの変態が著しく抑制される。これは、微細粒による3次元的な拘束力の影響で、Ms点が室温以下まで低下したためと考えられる。
(G)鋼板表層部に形成された残留オーステナイト相は、鋼板の降伏比を高めるとともに、TRIP効果により延性を向上させる作用を有する。
(H)すなわち、所定の化学組成を有する鋼板に所定の条件で熱間圧延を施すことにより、鋼板の板厚中心部を、主としてフェライト相とマルテンサイト相とからなる鋼組織として、高い引張強度と良好な延性とを確保するとともに、鋼板の表層部を、残留オーステナイト相を含有する鋼組織とすることにより、板厚中心部の組織による低降伏比化を補償して高い降伏比を実現し、さらに、より一層延性を高めることができる。
(I)このような鋼組織を有する鋼板は、引張変形過程における歪の集中が分散され、複相組織を基本としながら、従来の残留オーステナイト鋼を凌駕するほどの強度−延性特性を示す。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、鋼板の表層部を微細なフェライト相を主相として残留オーステナイト相を含有する鋼組織とし、鋼板の板厚中心部を主として微細なフェライト相とマルテンサイト相とから構成される鋼組織とすることによって、従来技術によっては得られなかった高い降伏比と良好な延性とを有する高強度熱延鋼板を得られるという技術思想に基づくものである。
本発明は、C:0.1%以上0.2%以下、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.3%以上1.0%未満、Cr:0.1%以上0.6%以下およびN:0.001%以上0.008%以下を含有し、さらに、Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚方向の深さが100μmである表層部の鋼組織が、体積率で、残留オーステナイト:2%以上15%以下およびマルテンサイト:3%以上19%未満を含有し、残部がフェライトからなるとともに、フェライトの平均粒径が1.5μm未満であり、鋼板表面から板厚方向の深さが板厚の1/4以上である板厚中心部の鋼組織が、体積率で、マルテンサイト:10%以上45%以下および残留オーステナイト:2%以下を含有し、残部がフェライトからなるとともに、マルテンサイトの平均粒径が1.5μm以下、フェライトの平均粒径が2.0μm以下であり、引張強度:780MPa以上、降伏比:0.70以上、引張強度と破断伸びとの積であるTS×El値が20000MPa・%以上である機械特性を有することを特徴とする熱延鋼板である。
別の観点からは、本発明は、上記化学組成を有するスラブに[Ae点−50(℃)]以上[Ae点+50(℃)]以下の温度域で圧延を完了する多パス熱間圧延を施して熱延鋼板となし、この熱延鋼板を、圧延完了後0.4秒間以内に600℃/秒以上の平均冷却速度で700℃以下の温度域まで冷却し、次いで600℃以上700℃以下の温度域に0.4秒間以上5秒間以内保持し、その後100℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却することを特徴とする上記の本発明に係る熱延鋼板の製造方法である。
本発明によれば、諸特性を害する程度の過剰な合金元素の含有を伴わずに、780MPa以上の高い引張強度を有するとともに、0.70以上の高い降伏比と、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が20000MPa・%以上という良好な延性とを有する高強度の熱延鋼板が得られる。本発明に係る熱延鋼板を例えば自動車用部材等に適用すれば、それらの部材の衝突安全性を一段と改善することが可能になる。
図1は、断面急変型引張試験片の形状を示す図面である。 図2は、実施例における板厚中心部におけるマルテンサイト相の平均粒径と、TS×El値との関係を示すグラフである。 図3は、実施例における表層部における残留オーステナイト体積率と、TS×El値との関係を示すグラフである。
はじめに、本発明に係る熱延鋼板の鋼組織および化学組成を説明する。
1.鋼組織
(1)鋼板表面から板厚方向の深さが100μmである表層部における鋼組織
表層部における鋼組織は、体積率で、残留オーステナイト:2%以上15%以下およびマルテンサイト:3%以上19%未満を含有し、残部がフェライトからなるとともに、フェライトの平均粒径が1.5μm未満であるものとする。
表層部における鋼組織は、鋼板に高い降伏比と良好な延性とを具備させるために決定される。すなわち、後述する板厚中心部は高い引張強度を確保することを目的に複相組織とするのであるが、斯かる鋼組織は降伏比を低下させてしまう。このため、表層部の鋼組織を制御することにより、降伏比を高めるととともに、延性を一層向上させるのである。
(a)体積率
残留オーステナイト相の体積率が2%未満では、目的とする降伏比や延性が得られない場合がある。したがって、残留オーステナイト相の体積率は2%以上とする。一方、残留オーステナイト相の体積率が15%超では、残留オーステナイト相の安定性が低下してしまい、目的とする延性が得られない場合がある。したがって、残留オーステナイト相の体積率は15%以下とする。
マルテンサイト相の体積率が3%未満では、目的とする強度および延性が得られない場合がある。したがって、マルテンサイト相の体積率は3%以上とする。一方、マルテンサイト相の体積率が19%以上では目的とする延性が得られない場合がある。したがって、マルテンサイト相の体積率は19%未満とする。
残部はフェライト相である。
(b)平均粒径
フェライト相の平均粒径が1.5μm以上では、変形時にフェライト相に歪みが集中するため、目的とする良好な延性が得られない場合がある。したがって、フェライト相の平均粒径は1.5μm未満とする。
本発明に係る熱延鋼板は、鋼板表面から板厚方向の深さが100μmである表層部が、以上の体積率および平均粒径を有する鋼組織を有する。
(2)鋼板表面から板厚方向の深さが板厚の1/4以上である板厚中心部の鋼組織
板厚中心部における鋼組織は、体積率で、マルテンサイト:10%以上45%以下および残留オーステナイト:0%以上2%以下を含有し、残部がフェライトからなるとともに、マルテンサイトの平均粒径が1.5μm以下、フェライトの平均粒径が2.0μm以下であるものとする。
板厚中心部における鋼組織は、鋼板に高い引張強度と良好な延性とを具備させるために決定される。すなわち、効果的に引張強度を向上させることができるとともに、良好な延性を確保することを可能とするマルテンサイトを第2相とし、フェライト相とマルテンサイト相を微細なものとするのである。
(a)体積率
マルテンサイト相の体積率が10%未満では、目的とする引張強度が得られない場合がある。したがってマルテンサイトの体積率は10%以上とする。一方、マルテンサイト相の体積分率が45%超では、延性の低下が著しくなる。したがって、マルテンサイトの体積率は45%以下とする。
残留オーステナイト相の体積率が2%超では、目的とする引張強度が得られない場合がある。したがって残留オーステナイト相の体積率は2%以下とする。板厚中心部における残留オーステナイト相は必須ではないので、残留オーステナイト相の体積率の下限は特に規定しない。すなわち0%であっても構わない。
残部はフェライト相である。
(b)平均粒径
マルテンサイト相の平均粒径が1.5μm超では、目的とする引張強度や延性が得られない場合がある。したがってマルテンサイト相の平均粒径1.5μm以下とする。
フェライト相の平均粒径が2.0μm超では、目的とする引張強度が得られない場合がある。したがって、板厚中心部におけるフェライト相の平均粒径は2.0μm以下とする。
なお、マルテンサイト相およびフェライト相の体積率は、SEM像やEBSD解析による2次元画像から3次元体積分率に換算して求められる。また、残留オーステナイト相の体積分率は、X線回折試験によって求められる。また、マルテンサイト相およびフェライト相の平均粒径は、SEM像やEBSD解析による2次元画像から求められる公称粒径である。
本発明に係る熱延鋼板は、鋼板表面から板厚方向の深さが板厚の1/4以上である板厚中心部が、以上の体積率および平均粒径を有する鋼組織を有する。
2.化学組成
[C:0.1%以上0.2%以下]
C含有量が0.1%未満では、表層部および板厚中心部において所定量のマルテンサイト相を確保することができずに、また、表層部において所定量の残留オーステナイト相を確保することができずに、目的とする引張強度、延性または降伏比が得られない場合がある。したがって、C含有量は0.1%以上とする。一方、C含有量が0.2%超では、マルテンサイト相や残留オーステナイト相の体積率が過剰となり、目的とする延性が得られない場合がある。したがって、C含有量は0.2%以下とする。
[Mn:1%以上3%以下]
Mnは、焼入れ性を高める作用を有する元素であり、目的とするマルテンサイトや残留オーステナイトの体積率を確保するうえで重要な元素である。Mn含有量が1%未満では、焼入れ性向上作用が不十分となり、目的とするマルテンサイトや残留オーステナイトの体積率を確保することが困難となり、目的とする強度および延性を確保することが困難となる場合がある。したがって、Mn含有量は1%以上とする。好ましくは、1.5%以上である。一方、Mn含有量が3%を超えると、第2相分率が過大となりかえって延性が低下したり、溶接性を阻害したりする。したがって、Mn含有量は3%以下とする。好ましくは、2.5%以下である。
[SiおよびAlの合計含有量:0.3%以上1.0%未満]
SiおよびAlは、マルテンサイトを生成させるために有用な元素である。フェライトの生成を促進し、炭化物の生成を抑制することにより、マルテンサイトを確保する作用を有する。さらに、固溶強化により鋼の強度を高める作用と脱酸により鋼を健全化する作用を有する。SiおよびAlの合計含有量が0.3%未満では上記作用による効果を得ることが困難となる場合がある。したがって、SiおよびAlの合計含有量は0.3%以上とする。SiとAlとは同種の性質を有し、互いに他を代替することができるので、SiおよびAlのそれぞれの含有量の下限は規定しない。ただし、鋼の強化能はSiの方がAlよりも高いので、AlよりSiを積極的に使用することが好ましい。したがって、Si含有量は0.3%以上とすることが好ましい。一方で、Alは鋼中に窒化物や酸化物を形成することにより、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する。したがって、Al含有量は0.001%以上とすることが好ましい。一方、SiおよびAlの合計含有量が1.0%以上では、鋼の脆化が著しくなる場合がある。したがって、SiおよびAlの合計含有量は1.0%未満とする。好ましくは、Si含有量が0.7%以下であり、Al含有量が0.1%以下である。
[Cr:0.1%以上0.6%以下]
Crは、オーステナイトを安定化してマルテンサイトを確保する作用があるとともに鋼を強化する作用を有する元素である。Cr含有量が0.1%未満では、所望の強度が得られない場合がある。したがって、Cr含有量は0.1%以上とする。一方、Cr含有量が0.6%を超えると、フェライト変態が過剰に抑制されてしまい、目的とするフェライト体積率を確保することが困難となる。したがって、Cr含有量は0.6%以下とする。
[N:0.001%以上0.008%以下]
Nは、Tiおよび/またはNbと結合して鋼中に窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素である。N含有量が0.001%未満では、鋼中に形成される上記窒化物の量が過少であるために、上記作用による効果が不十分となって結晶粒の粗大化が生じる場合がある。したがって、N含有量は0.001%以上とする。一方、N含有量が0.008%を超えると、鋼中に形成される窒化物が粗大となり、鋼板の延性に悪影響を及ぼす。したがって、N含有量は0.008%以下とする。
[Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下の1種または2種]
TiおよびNbは、鋼中に窒化物を形成して結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素であるので、1種または2種を含有させる。しかしながら、TiまたはNbの含有量が0.05%を超えると、粗大な窒化物を形成して鋼板の延性の低下が著しくなったり、フェライト変態が抑制されて目的とするフェライト体積率を確保することができなかったりする。したがって、Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下の1種または2種を含有させる。上記作用による効果を確実に得るには、Tiを0.002%以上またはNbを0.01%以上含有させることが好ましい。
上述した以外の残部はFeおよび不純物である。
3.製造方法
次に、本発明に係る熱延鋼板の製造方法の一例を、説明する。
上記化学組成を有するスラブに[Ae点−50(℃)]以上[Ae点+50(℃)]以下の温度域で圧延を完了する多パス熱間圧延を施して熱延鋼板となし、この熱延鋼板を、圧延完了後0.4秒間以内に600℃/秒以上の平均冷却速度で700℃以下の温度域まで冷却し、次いで600℃以上700℃以下の温度域に0.4秒間以上5秒間以内保持し、その後100℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却する。
すなわち、上記鋼組織は、所定の温度域で圧延を完了する多パス熱間圧延を施すことにより、オーステナイト中に加工歪を確実に加え、圧延の極直後に急冷却を施してオーステナイトの再結晶を抑制し、所定の温度域に保持することによりフェライト変態を促進させることにより得ることが好ましい。
多パス熱間圧延の圧延完了温度が[Ae点−50(℃)]未満では、圧延過程でフェライト変態が生じてしまい、目的とする鋼組織を得られなくなる場合がある。したがって、多パス熱間圧延の圧延完了温度は[Ae点−50(℃)]以上とすることが好ましい。一方、多パス熱間圧延の圧延完了温度が[Ae点+50(℃)]超では、圧延により鋼板に加えた加工歪が容易に解放されてしまい、上記鋼組織を得られない場合がある。したがって、多パス熱間圧延の圧延完了温度は[Ae点+50(℃)]以下とすることが好ましい。
圧延完了後から700℃以下の温度域に急冷却するのに要する時間が0.4秒間超であったり、平均冷却速度が600℃/秒未満であったりすると、圧延により鋼板に加えた加工歪が解放されてしまい、上記鋼組織を得られない場合がある。したがって、圧延完了後0.4秒間以内に600℃/秒以上の平均冷却速度で700℃以下の温度域まで冷却することが好ましい
上記急冷却後は、フェライト変態が進行する600℃以上700℃以下の温度域に保持するが、フェライト変態を確実に進行させるために、上記温度域に保持する時間を0.4秒間以上とすることが好ましい。一方、上記温度域に保持する時間が5秒間を超えると、延性に悪影響を及ぼす炭化物が析出するため、上記温度域に保持する時間は5秒間以下とすることが好ましい。
上記保持後は、フェライト変態しなかった残部のうち、鋼板表層部に形成された安定な残留オーステナイト相を除いてマルテンサイト変態させるために、100℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却することが好ましい。
このようにして、本発明により、上記鋼組織と、諸特性を害する程度の過剰な合金元素の含有を伴わない化学組成とを有し、780MPa以上の高い引張強度と、0.70以上の高い降伏比と、引張強度と全伸びとの積であるTS×El値が20000MPa・%以上という良好な延性とを兼ね備える高強度の熱延鋼板を提供することができる。
実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼A、BおよびCからなるスラブ(厚さ:35mm、幅:170mm、長さ:75mm)を供試材として、試験用熱間圧延機を用いて試験を行った。鋼AおよびBは請求項に係る本発明で規定する化学組成を満足する鋼であり、鋼Cは請求項に係る本発明で規定する化学組成を満足しない鋼である。
Figure 0005035297
いずれのスラブも炉内温度1250℃の加熱炉に1時間保持した後、3〜4パスの粗熱間圧延を施した、さらに3パスの仕上圧延を施して、鋼板サンプルとした。サンプルの仕上厚さはいずれも2mmであった。圧延条件を表2に示す。
Figure 0005035297
得られた鋼板について鋼組織の観察および引張試験を行って機械特性を調査した。各評価方法を以下に列記する。
(a)フェライトおよびマルテンサイトの体積率および粒径
鋼板の圧延方向に平行な板厚断面について、表層部および板厚中心部をSEMにより3000倍の倍率で撮影し、得られたSEM2次元画像から、体積率および粒径を測定し、粒径については平均値を求めた。
(b)残留オーステナイト相の体積率
機械研磨により現出させて化学研磨により加工層を除去した、鋼板表面から板厚方向の深さが100μmの面、板厚の(1/4)である面および板厚中心面についてX線回折試験を行い、オーステナイト量を定量分析した。
(c)機械特性
JIS5号引張試験片を用いて、引張試験を行い、0.2%耐力、引張強度、破断伸びを求めた。また0.2%耐力と引張強度の比を降伏比として求めた。
(d)静動差
試験番号3〜6、13および14について、図1に示す、平行部の幅10mm、ゲージ長20mmの断面急変型引張試験片を用い、高速衝撃引張試験装置を用いて、歪速度0.0025/秒と1000/秒で試験を行い、引張強度の差を静動差とした。自動車の強度部材においては高速走行中に衝突した場合に受けるひずみ速度が1000/秒に達する場合があり、高速変形下での動的強度の向上が求められるが、この静動差が大きいことは、衝突時に高強度を保障することを意味するため、衝突安全性が高いことを示す。
結果を表3にまとめて示す。また、図2は、実施例における板厚中心部におけるマルテンサイト相の平均粒径と、TS×El値との関係を示すグラフであり、図3は、実施例における表層部における残留オーステナイト量と、TS×El値との関係を示すグラフである。
Figure 0005035297
表3における試験番号1、5、6、8、9、13〜15は、本発明の条件を満足する発明例であり、試験番号2〜4、7、10〜12、16は、本発明の条件を満足しない比較例である。
試験番号1、5、6、8、9、13〜15は、780MPa以上の高い引張強度と、0.70以上の高い降伏比と、TS×El値が20000MPa・%以上という良好な延性とを兼ね備えている。さらに、静動差の評価を行った試験番号5、6、13および14は、試験番号3および4に比して非常に高い静動差特性を示した。
これに対し、試験番号2〜4、7、10〜12は、降伏比および/またはTS×El値が低かった。また、試験番号16は引張強度が780MPa未満であり、TS×El値が低かった。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.1%以上0.2%以下、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.3%以上1.0%未満、Cr:0.1%以上0.6%以下およびN:0.001%以上0.008%以下を含有し、さらに、Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    鋼板表面から板厚方向の深さが100μmである表層部の鋼組織が、体積率で、残留オーステナイト:2%以上15%以下およびマルテンサイト:3%以上19%未満を含有し、残部がフェライトからなるとともに、前記フェライトの平均粒径が1.5μm未満であり、
    鋼板表面から板厚方向の深さが板厚の1/4以上である板厚中心部の鋼組織が、体積率で、マルテンサイト:10%以上45%以下および残留オーステナイト:2%以下を含有し、残部がフェライトからなるとともに、前記マルテンサイトの平均粒径が1.5μm以下、前記フェライトの平均粒径が2.0μm以下であり、
    引張強度:780MPa以上、降伏比:0.70以上、引張強度と破断伸びとの積であるTS×El値が20000MPa・%以上である機械特性を有することを特徴とする熱延鋼板。
  2. 請求項に記載の化学組成を有するスラブに[Ae点−50(℃)]以上[Ae点+50(℃)]以下の温度域で圧延を完了する多パス熱間圧延を施して熱延鋼板となし、前記熱延鋼板を、前記圧延完了後0.4秒間以内に600℃/秒以上の平均冷却速度で700℃以下の温度域まで冷却し、次いで600℃以上700℃以下の温度域に0.4秒間以上5秒間以内保持し、その後100℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
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