JP2017101299A - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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金属組織が、面積率で、ベイナイト50%〜98%、フェライト50%以下および残部が5%以下のセメンタイトからなり、前記フェライトに占める650℃〜800℃で変態するフェライトの割合が20%以下であるとともに、フェライトの平均粒径が10μm以下であるとともに、
機械特性が、引張強さが780MPa〜980MPa未満であり、降伏比が85%以上であるとともに、疲労限が400MPa以上である、熱延鋼板。
(A)鋼片を1100℃〜1300℃に加熱した後、その温度域で30分間以上保持する溶体化処理工程、
(B)1000℃以上で行う粗圧延工程、
(C)最終3パスの累積圧下率を30%以上かつ最終パス仕上げ温度を下記(1)式で規定されるAr3点以上で圧延を完了する、熱間圧延工程、
(D)15℃/秒以上の平均冷却速度で行う冷却工程、および
(E)550℃〜650℃未満の温度域で行う巻取工程。
ただし、(1)式において、[%C]、[%Si]、[%Mn]、[%P]はそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
はじめに必須元素を説明する。
Cは、780MPa以上の引張強さを確保するために、0.05%以上含有する。C含有量は、好ましくは0.06%超であり、さらに好ましくは0.07%以上である。このため、脱炭コストを抑制できる。一方、C含有量が0.15%を超えると、熱延鋼板の延性が劣化するとともにTiC等のMC型炭化物の溶体化温度が上昇し、効率よく析出強化が得られない。このため、C含有量は、0.15%以下であり、好ましくは0.14%以下である。
Siは、固溶強化を得るために0.01%以上含有する。Si含有量は、好ましくは0.02%以上であり、さらに好ましくは0.05%以上である。しかし、Si含有量が0.5%以上であると熱延鋼板の化成処理性やめっき性を損なう。このため、Si含有量は、0.5%未満であり、好ましくは0.20%以下である。
Mnは、固溶強化とともに変態温度を低下させ、MC炭化物の析出制御に重要な元素である。上記効果を得るためにMn含有量は、0.1%以上であり、好ましくは0.2%以上である。しかし、Mn含有量が1.6%を超えると偏析により熱延鋼板の延性や疲労特性の劣化を生じるため、Mn含有量は、1.6%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.4%以下である。
Pは鋼中に不純物として含有され、P含有量は低いほど好ましい。特にP含有量が0.03%を超えると、熱延鋼板の溶接性が劣化するとともに、本発明で重要な焼入性元素であるBと競合偏析するためにBを含有する効果が小さくなり、熱延鋼板の引張強度が不安定となる。このため、P含有量は0.03%以下とする。
Sは鋼中に不純物として含有され、S含有量は低いほど好ましい。特にS含有量が0.02%を超えると、SはTiと結合してTiSを形成し易く、熱延鋼板の高強度に寄与するTiCの量が減少する。このため、S含有量は0.02%以下とする。
Alは、溶鋼の脱酸のために重要な元素であり、Sol.Al含有量が0.001%以上で脱酸効果を奏する。しかし、Sol.Al含有量が0.3%超であると非金属介在物を増大させ、熱延鋼板の延性や疲労特性を劣化させる。このため、Sol.Al含有量は0.001%以上0.3%以下とする。
Nは、不純物として存在し、Tiと結合して粗大なTiNを形成するため、熱延鋼板の引張強度や延性を低下させる。このため、N含有量は0.01%以下とする。
Bは、本発明で最も重要な元素であり、旧オーステナイト粒界に偏析し、鋼の焼入れ性を高める効果を奏し、高温でのフェライト変態を抑制し、MC炭化物の析出温度を低下させることにより、組織強化および析出強化の両面で強化に寄与する。この効果を得るにはB含有量は、2ppm以上であり、好ましくは5ppm以上である。しかし、B含有量が高過ぎてもこの作用は飽和し、熱延鋼板の製造コストが上昇する。このため、B含有量は、40ppm以下であり、好ましくは30ppm以下である。
Tiは、本発明において重要な元素の一つである析出強化元素である。Tiは、Cと結合してTiCを形成し、熱延鋼板の強化に寄与する。この作用により780MPa以上の引張強度を得るために、Ti含有量は、0.05%以上であり、好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは0.15%以上である。しかし、Ti含有量が0.2%を超えると溶体化温度が上昇し、析出物が粗大化して析出強化に寄与する析出物が少なくなり、高強度を得られないことに加え、燃料原単位を大きく低下させるために製造コストが上昇する。このため、Ti含有量は0.2%以下であり、好ましくは0.18%以下である。
Nb,Vは、TiCと同様に、フェライト中でMC炭化物として析出し、鋼の強化に効果的な元素であるが、Nb,Vを過剰に含有すると製造コストの増加を招くとともに、MC炭化物の溶融の再加熱温度の上昇を伴う。よって、Nb含有量は、0.1%以下であり、製造コストの点から0.02%以下であることが好ましく。また、V含有量は、0.2%以下であり、製造コストの点から0.04%以下であることが好ましい。また、鋼の強化効果を効果的に得るためには、Nb含有量は0.01%以上であることが好ましく、V含有量は0.02%以上であることが好ましい。
Cr,Moは、ともに、鋼の焼入れ性を向上させる元素であるが、過剰に含有すると製造コストの増加を招く。このため、Cr含有量は、0.6%以下であり、0.1%以下であることが好ましい。また、Mo含有量は、0.2%以下であり、0.08%以下であることが好ましい。また、焼入れ性の向上効果を確実に得るために、Cr含有量は0.01%以上であることが好ましく、Mo含有量は0.01%以上であることが好ましい。
REM,Mg,Caは、いずれも、破壊の起点となる非金属介在物の形態を変化させ無害化し延性を向上させる作用を有するため1種または2種以上含有してもよい。しかし、REM,Mg,Caを過剰に含有すると、それら自身の介在物を多量に形成し、疲労特性や延性を劣化させる。このため、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する。熱延鋼板の延性の向上効果を効果的に得るためには、REM,Mg,Caをそれぞれ0.0001%以上含有することが好ましい。
(2−1)面積率で、ベイナイト:50%〜98%、フェライト:50%以下、残部:5%以下のセメンタイト
780MPa以上の高強度、優れた疲労特性さらには材質安定性を兼備するには、金属組織を面積率で、ベイナイト50〜98%かつフェライト50%以下とする。
フェライトに占める650〜800℃の高温域で変態するフェライトの割合は、引張強度の安定性に関係する重要なパラメータである。このような高温域で変態するフェライト内には、比較的粗大なTiCや微細なTiCが混在して生成するために、得られる析出強化量にばらつきが生じるようになり、部分的に引張強度を満たすことができない場合がある。したがって、強度を安定させ780MPa以上の引張強さを安定して確保するために、フェライトに占める650℃〜800℃で変態するフェライトの割合は、20%以下であり、好ましくは5%以下である。
フェライトの平均粒径が10μmを超えると、疲労亀裂伝播が容易に進むために所望の疲労特性を得られない。このため、フェライトの平均粒径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。下限は特に規定しないが、通常フェライトの平均粒径は1.0μm以上となる。
(3−1)引張強さ:780MPa以上980MPa未満
引張強さが780MPaを下回る場合は、本発明で要求するような疲労限400MPaを超える疲労特性を確保することが困難となり、疲労特性が要求されるような自動車の足回り部材として望ましくない。また、引張強さが980MPa以上であると、打抜き時の端面損傷が顕著となり、所望の疲労特性を得られず、自動車の足周り部材への適用が困難になる。
降伏比(YR)は、衝突時の部品の耐久性の目安となるパラメータであり、85%以上の降伏比を確保することにより、耐衝突部材への適用も可能である。
本発明では、400MPa以上の高い疲労限を有する。本発明に係る熱延鋼板は、さらに780MPaを超える引張強さと85%以上の降伏比とをさらに兼ね備えることにより、衝突性能が要求される自動車部材や疲労特性の要求される自動車部材へ適用可能である。
(4−1)鋼片:1100℃〜1300℃に加熱
鋼片の加熱温度が1100℃を下回ると、MC炭化物の再溶解が進まず、強化に有効なTiC量が減少するために所望の強度を得ることができない。このため、鋼片の加熱温度は1100℃以上であり、好ましくは1200℃以上である。しかし、鋼片の加熱温度が1300℃を超えるとスケールロスが大きくなることに加え、燃料原単位を悪化させるためコスト上好ましくない。したがって、鋼片の加熱温度は1100℃〜1300℃とする。
上記温度域で30分間以上の溶体化処理を行う。溶体化処理時間が30分間未満であるであると、TiCの再溶解が進まず、所望の強度を得ることができない。溶体化処理時間は、50分間以上であることが好ましく、60分間以上であることがさらに好ましい。
Ar3(℃)=905-455[%C]-38[%Si]-62[%Mn]+472[%P] ・・・・・(1)
ただし、(1)式において、[%C]、[%Si]、[%Mn]、[%P]はそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
仕上げ熱間圧延後に15℃/秒以上の平均冷却速度で冷却を行う。平均冷却速度が15℃/秒を下回ると、高温域で生じるフェライト変態を抑制できないため、MC炭化物の粗大化が進行し、充分な析出強化量を得られずに所望の強度を満たすことができないことがある。
巻取温度が550℃を下回ると、MC炭化物の析出量が不足し、所望の強度が得られない。このため、巻取温度は、550℃以上であり、好ましくは590℃以上である。しかし、巻取温度が650℃以上であると、MC炭化物の粗大化が顕著に生じる過時効状態となり、所望の強度を下回る場合がある。このため、巻取温度は、650℃未満であり、好ましくは640℃以下であり、さらに好ましくは620℃以下である。
試料No.1〜51の熱延鋼板の鋼組織の種類は、ナイタール溶液およびピクラール溶液により試料No.1〜51の熱延鋼板の圧延方向に平行な断面を腐食して、上述した方法により、板厚の1/4位置を光学顕微鏡およびSEMを用いて各組織を特定した。
得られた試料No.1〜51の熱延鋼板を用いて以下に示す試験を行い、引張特性、伸びフランジ性を評価した。
試料No.1〜51の熱延鋼板の圧延平行方向からJIS5号B引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じて行い、降伏点YP、引張強さTS、伸びElを測定した。
試料No.1〜51の熱延鋼板の圧延平行方向から疲労試験の長手方向が平行になるように平面曲げ疲労試験片を採取した。疲労試験方法はJIS Z2275に準じ、シェンク式平面曲げ疲労試験機を用いて測定を行った。試験条件は応力比R=−1、周波数を25Hzで行い、1000万サイクルでの疲労強度を評価し、疲労亀裂を生じなかった応力振幅の値を疲労限とした。
Claims (5)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.05%〜0.15%、
Si:0.01%〜0.5%未満、
Mn:0.1%〜1.6%、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下、
Sol.Al:0.001%〜0.3%、
N:0.01%以下、
B:2ppm〜40ppm、
Ti:0.05%〜0.2%、
Nb:0%〜0.1%、
V:0%〜0.2%、
Cr:0%〜0.6%、
Mo:0%〜0.2%、
REM:0%〜0.1%、
Mg:0%〜0.01%、および
Ca:0%〜0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
金属組織が、面積率で、ベイナイト50%〜98%、フェライト50%以下および残部が5%以下のセメンタイトからなり、前記フェライトに占める650℃〜800℃で変態するフェライトの割合が20%以下であるとともに、フェライトの平均粒径が10μm以下であるとともに、
機械特性が、引張強さが780MPa〜980MPa未満であり、降伏比が85%以上であるとともに、疲労限が400MPa以上である、熱延鋼板。 - 前記化学組成が、Nb:0.01%〜0.1%およびV:0.02%〜0.2%から選ばれた1種または2種を有する請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Cr:0.01%〜0.6%およびMo:0.01%〜0.2%から選ばれた1種または2種を有する請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、REM:0.0001%〜0.1%、Mg:0.0001%〜0.01%およびCa:0.0001%〜0.01%から選ばれた1種以上を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 下記の(A)〜(E)の工程を行う、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
(A)鋼片を1100℃〜1300℃に加熱した後、その温度域で30分間以上保持する溶体化処理工程、
(B)1000℃以上で行う粗圧延工程、
(C)最終3パスの累積圧下率を30%以上かつ最終パス仕上げ温度を下記(1)式で規定されるAr3点以上で圧延を完了する、熱間圧延工程、
(D)15℃/秒以上の平均冷却速度で行う冷却工程、および
(E)550℃〜650℃未満の温度域で行う巻取工程。
Ar3(℃)=905-455[%C]-38[%Si]-62[%Mn]+472[%P] ・・・・・(1)
ただし、(1)式において、[%C]、[%Si]、[%Mn]、[%P]はそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
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