JP2013545087A - 脳損傷のバイオマーカー - Google Patents

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Abstract

本発明はバイオマーカーの分野に関する。より具体的には、本発明は脳損傷を診断する際に有用なバイオマーカーに関する。脳損傷は顕性または外傷性脳損傷、さらに無症候性脳損傷(SCI)を含むことができる。1つの実施形態においては、患者のSCIを診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、SCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することを含む。
【選択図】図1

Description

(関連出願の相互参照)
本明細書は、いずれもその全文を参照文献として明細書に援用する2011年1月27日に出願された米国特許仮出願第61/436,956号明細書、2011年1月27日に出願された米国特許仮出願第61/436,955号明細書、および2010年10月14日に出願された米国特許仮出願第61/393,009号明細書の利益を主張するものである。
(政府の利害関係の陳述)
本発明は、第NHLBI 1 R01 HL091759−02号およびNHLBI 5U54HL090515−02号助成金の下で政府の援助によりなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明はバイオマーカーの分野に関する。より具体的には、本発明は脳損傷を診断する際に有用なバイオマーカーに関する。
(電子的に提出された資材の参照文献としての援用)
本明細書は配列表を含む。「P10784−08_Sequence_Listing−ST25.txt.」という標題のASCIIテキストファイルとしてEFS−Webを通じて電子的に提出されている。配列表はサイズが1,947バイトであり、2011年10月13日に作製された。その全体を本明細書に参照文献として援用する。
脳損傷は複雑であると共に重度の多発的臨床転帰をとることがある。脳および脊髄の損傷は頭部外傷、脳卒中、分娩時外傷、心臓手術、心停止および患者が心室補助装置または体外膜型酸素供給(ECMO)による循環器系サポートを必要とすることが原因で発生することがある。さらに、無症候性脳損傷の検出は、特に分娩関連損傷を有する小児および新生児においては困難である。鎌形赤血球症を有する小児は無症候性脳損傷のリスクが高い。小児の無症候性脳損傷を治療しないと顕性脳卒中、神経学的損傷、学習障害および記憶喪失に進行することがある。
残念ながら、理学的検査および画像診断(CTスキャンまたはMRI)などの臨床的手段は、脳損傷を有する乳児、小児または成人を特定するには主観的で、広範に利用できず、敏感度または特異性が不十分で、かつ/または費用が高すぎる。脳損傷、および特に無症候性脳損傷を有する乳児、小児および成人は顕性脳卒中、および認知および運動欠損の発症、および認知症に進行するリスクが有意に高いため、これらの患者を特定する大きな臨床的ニーズがある。
本発明は、少なくとも部分的に、脳および中枢神経系(CNS)損傷後に体液を循環するCNS特異的タンパク質バイオマーカーの発見に基づいている。CNS細胞からのタンパク質の放出または分泌は、小児または成人において、患者の生存、回復および新規または再発性CNS損傷を安定化または予防するための治療法の効果に対する診断的評価/予後評価に有用となることがある。したがって、血中CNSタンパク質の検出は、無症候性および顕性脳損傷を有する小児および成人を特定することによりCNS損傷の診断の正確度を改善し、かつ転帰を改善するための有効性について新規および既存のCNS損傷の治療を判定および実証する手段を提供する。これは、損傷を軽減するための新規プロトコルまたは医薬品(介入)をスクリーニングする手段も提供するであろう。
したがって、1つの態様においては、本発明は脳損傷を有する小児および成人の診断にとって有用なバイオマーカーを提供する。1つの実施形態においては、脳損傷は無症候性脳損傷(SCI)である。他の実施形態においては、脳損傷は顕性脳損傷である。バイオマーカーを用いて患者を診断し、患者の予後を経時的に評価し、または患者の脳損傷の状態を全般的に判定することができる。
具体的な実施形態においては、患者の脳損傷を診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)患者から採取したサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを、脳損傷を有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
より具体的な実施形態においては、患者の無症候性脳損傷(SCI)を診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)患者から採取したサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを、SCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、アストロタクチン1(ASTN1)、脳血管新生阻害物質3(BAI3);カルノシンジペプチダーゼ(CNDP1);ERMIN;グリア線維性酸性タンパク質(GFAP);代謝型グルタミン酸受容体3(GRM3);ケルヒ様タンパク質32(KLH32);メラノーマ抗原ファミリーE,2(MAGE2);ニューレグリン3(NRG3);ニューログラニン(NRGN);乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質(OMG);溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、メンバー12(SLC39A12);レティキュロン1(RTN1);およびメタロチオネイン(MT3)からなる群から選択することができる。
具体的な実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーはNRGNを含む。他の実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーはOMGを含む。さらに他の実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーはMT3を含む。さらなる実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーはさらにGFAPを含む。
他の実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーはNRGN、OMGおよびMT3を含む。バイオマーカーはさらにGFAPを含むことができる。さらに他の実施形態においては、1つまたはそれ以上のバイオマーカーは表1および表2に列挙されたバイオマーカーをさらに含む。
他の実施形態においては、患者の脳損傷を診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、脳損傷を有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
さらに他の実施形態においては、患者のSCIを診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、SCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
代替的な実施形態においては、患者の脳損傷を診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、脳損傷を有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。より具体的な実施形態においては、バイオマーカーパネルはOMGおよびMT3をさらに含む。さらなる実施形態においては、バイオマーカーパネルはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3をさらに含む。
さらなる実施形態においては、患者のSCIを診断するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、SCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。より具体的な実施形態においては、バイオマーカーパネルはOMGおよびMT3をさらに含む。さらなる実施形態においては、バイオマーカーパネルはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3をさらに含む。
他の実施形態においては、患者の脳損傷を診断するための方法は(a)患者から血漿サンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、患者から採取した血漿サンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、脳損傷を有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。より具体的な実施形態においては、バイオマーカーパネルはOMGおよびMT3をさらに含む。代替的に、バイオマーカーパネルはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3をさらに含む。
さらに他の実施形態においては、患者のSCIを診断するための方法は(a)患者から血漿サンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、患者から採取した血漿サンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が診断を提供することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、SCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。より具体的な実施形態においては、バイオマーカーパネルはOMGおよびMT3をさらに含む。代替的に、バイオマーカーパネルはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3をさらに含む。
本発明の他の実施形態においては、患者の脳損傷の状態を判定するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が患者の脳損傷状態を判定することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、脳損傷を有すること、脳損傷がないこと、脳損傷が進行すること、および脳損傷が後退することからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脳損傷状態と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
本発明の具体的な実施形態においては、患者のSCIの状態を判定するための方法は(a)患者からサンプルを採取すること;(b)バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むことを特徴とする、患者から採取したサンプル中のバイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および(c)事前に定義したレベルの1つとの相関が患者のSCIの状態を判定することを特徴とする、バイオマーカーパネルのレベルを、SCIを有すること、SCIがないこと、SCIが進行すること、およびSCIが後退することからなる群から選択される1つまたはそれ以上のSCI状態と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することという段階を含む。
本発明の具体的な実施形態においては、測定の段階はイムノアッセイ、免疫ブロット法、免疫沈降測定法、免疫染色法、定量測定法、免疫蛍光測定法、または化学発光測定法を含む。一定の実施形態においては、サンプルは血液、血漿血清、脳脊髄液(CSF)または尿サンプルである。具体的な実施形態においては、サンプルは血液サンプルである。より具体的な実施形態においては、サンプルは血清サンプルである。
他の態様においては、本発明は患者の脳損傷状態を判定するためのキットを提供する。具体的な実施形態においては、診断キットは患者から生体サンプルを採取するための基材;およびASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3からなる群から選択される1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定する手段を含む。
血漿除去処理、RP−HPLC分離およびMS分析の手法の概要である。 GFAPペプチドのイオンスペクトル表を示す。pepP確率は0.7598でありXCORRは4.016である。このペプチドはSCI患者6例中4例に認められた。 安定期鎌状赤血球症(n=259、HbSSおよびHbSβ、5〜14歳)、健康な小児(n=47)、およびの非鎌状赤血球急性脳卒中患者(患者12例よりサンプル20件)、脳生検実施患者(患者3例よりサンプル6件)、または脳部分切除患者(患者13例よりサンプル22件)における血漿GFAP濃度を示す。点線は、SITTコホートと年齢でマッチングした47例の健康対照の95パーセンタイルを示す。 SCI状態別の安定期鎌状赤血球症における血漿GFAP濃度を示す(SCI陽性n=66;SCI陰性n=145)。点線は、年齢でマッチングした47例の健康対照の95パーセンタイルを示す。 HbSSでありかつ急性脳卒中を呈した11歳の患者における連続血漿GFAPレベルを示す。臨床診断より5時間後に赤血球交換輸血を実施し、新規神経学的欠損のため47時間後に再度実施した。患者の血漿GFAPは、診断より11日後には0.50ng/mLまで上昇したままであり、26日後の最初に予定していた赤血球輸血の直前に正常値0.074ng/mLまで戻った。点線は、年齢でマッチングした47例の健康対照の95パーセンタイルを示す。 血漿GFAPを連続的に追跡したHbSS患者の急性脳卒中の脳診断画像を示す。左:右前頭葉にくさび形低減衰を示す脳卒中の臨床診断直後の非造影頭部CT。右:進展性右前大脳動脈梗塞を示す脳卒中診断より29時間後のFLAIR MRI画像。 体外膜型酸素供給(ECMO)を受けている患者のGFAPレベルの中央値を示す(n=22)。 分娩時神経学的損傷を有する新生児(n=27)および分娩時神経学的損傷のない新生児(n=76)の生後1日目GFAPレベルを示す。数値は平均+SDである。 分娩時神経学的損傷の予測因子としてのGFAPと羊水吸引のROC曲線を提示する。上:妊娠期間とマッチングした生後1日以内のGFAP>0.08ng/mLに関する神経学的損傷のロジスティック回帰。下:神経学的損傷の予測因子としての羊水混濁。 NICU入院時点での新生児血清GRAP(0日目)のロジスティック回帰を示す。 先天性心疾患の修復を目的とした心肺バイパス中の血清GFAPレベルを示すグラフである、n=20。 先天性心疾患の修復を目的とした心肺バイパス中の連続血清GFAPレベルを示すグラフである、n=20。 先天性心疾患の修復を目的とした心肺バイパス中のGFAPレベルを示すグラフである。 評価した22例の患者の人口統計学的および臨床的特性を示す表である。 個々の患者の特性および転帰を示す表である。 個々の患者の特性および転帰を示す表である。 ECMOを受けている急性神経学的損傷を有する小児および急性神経学的損傷のない小児におけるピーク血漿GFAP濃度を示す(n=22)。y軸は対数目盛であることに留意されたい。 Aは、ECMOを受けている急性神経学的損傷を有する小児における連続血漿GFAP濃度を示す(n=7)。Xは小児集中治療室における死亡を表し;塗りつぶしのない四角は最終GFAP測定と時間的に最も近い(24時間以内)急性神経学的損傷の診断時間を示し;点線は正常対照の95パーセンタイルを示す。塗りつぶしのない四角が6個だけであることに留意されたい;1例はGFAP測定を1回のみ実施した後48時間後に頭部超音波検査で診断した(診断24時間前のGFAP測定は行わなかった)。図17Bは、ECMOを受けている急性神経学的損傷のない小児における連続血漿GFAP濃度を示す(n=15)。Xは小児集中治療室における死亡を表し;点線は正常対照の95パーセンタイルを示す。AとBの目盛が異なることに留意されたい。 被験集団の母親および新生児特性を要約した表である。 対照と冷却療法を受けた新生児のGFAPレベル(ng/mL)の箱形図を示す。各箱形図の下の数字は分析に用いることのできたサンプル数である。*は対照と比較したときp<0.05であることを示す。 冷却療法を実施した新生児の特性を示す表である。 脳MRIの結果別に比較した、冷却療法を受けた新生児のGFAPレベル(ng/mL)の箱形図を示す。各箱形図の下の数字は分析に用いることのできたサンプル数である。*はMRI正常新生児と比較したときp<0.05であることを示す。 GFAPレベルおよび神経学的転帰を示す表である。 同定された16種類の特異なTSP−1ペプチドのうち1つのイオンスペクトル表を示す。Log(e)確率は10−8.6であった。このペプチドはSITT患者15例中10例に認められた。 同定された3種類の特異なSELLペプチドのうち1つのイオンスペクトル表を示す。Log(e)確率は10−4.3であった。このペプチドはSITT患者15例中13例に認められた。 年齢でマッチングした(5〜14歳)正常およびSCD小児におけるTSP−1濃度を提示する。 安定期鎌状赤血球症(5〜14歳)における血漿TSP−1濃度を示す。TSP−1含有量はTSP−1濃度/1×10血小板である。*=SCIと非SCI間でp<0.013または0.039。 SCIおよび非SCI SCD小児と、年齢および人種でマッチングした対照におけるELISAで測定したSELL濃度(平均)を示す(上)。同じデータを棒グラフ形式(中)および平均値を表示した点グラフ形式(下)で示す。 ニューログラニンタンパク質の検出に必要な最小量のニューログラニンアプタマーを示すゲルである。 ニューログラニンアプタマーを用いたプルダウン測定の結果を示す。 ABI Sciex Qtrap 4000トリプルクアドラポール質量分析器を用いたニューログラニンシグネチャーペプチドおよび標識標準ペプチドのシグナルを示す。 クマシー染色したPAGEゲル上のHis−NRGNを示す。His−NRGNの予想分子量は8.5Kdである。 マウスモノクローナル抗体30.5.2を用いた組換えNRGNの直接ELISAの標準曲線を示す。濃度範囲は0.002〜10ng/mLである。 ニューログラニンに対する抗ヒトモノクローナル抗体を用いた組換えNRGNの直接ELISAの標準曲線を示す。濃度範囲は75ng/mLである。 先天性心疾患の外科的修復を目的とした心肺バイパスを受けた患者からのニューログラニンおよびGFAPレベルを示すグラフである。
本明細書に記載された具体的な方法および成分等は変更しうるので、本発明はこれらに限定されないことが理解される。本明細書で用いる用語は具体的な実施形態を記載することのみを目的として使用され、本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解すべきである。本明細書および付属の請求項に用いられる単数形「1つの」、「1つの」および「その」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数形の内容を含むことに留意しなければならない。したがって、たとえば1つの「タンパク質」への言及は1つまたはそれ以上のタンパク質への言及であり、かつ当業者に既知の同等物その他を含む。
本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、特に定義しない限り、本発明が属する技術に精通する当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。具体的な方法、機器、および材料が記載されるが、本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料を本発明の実践または試験に用いることができる。
本明細書に引用された全ての公表文献は、全ての雑誌記事、書籍、マニュアル、公開特許明細書、および発行された特許を含めて、その全文を本明細書に参照文献として援用する。さらに、明細書、実施例および付属の請求項に使用された一定の語句の意味が提供される。定義は性質上限定的であることを意図せず、かつ本発明の一定の態様のより明確な理解を提供するのに役立つ。
(I.定義)
用語「脳損傷」は、ある事象によって引き起こされた損傷によって脳が障害される状態を意味する。本明細書で用いる「損傷」は、細胞的または分子的完全性、活性、レベル、堅牢性、状態の変質、またはある事象に起因するその他の変質である。たとえば、損傷は物理的性質、機械的性質、化学的性質、生物学的性質、機能的性質、感染的性質、または他の細胞または分子モジュレーターの性質を含む。事象は、衝突(衝撃による)などの物理的な外傷、または血管の遮断または漏出のいずれかの結果起こる脳卒中などの生物学的異常を含みうる。事象は感染因子による感染であってもよい。当業者は、用語損傷または事象によって包含される数多くの同等の事象を認識する。
より具体的には、用語「脳損傷」は、その病態生理学的基盤とは無関係に、中枢神経障害を引き起こす状態を意味する。「脳損傷」の最も頻度の高い原因には脳卒中および外傷性脳損傷(TBI)がある。「脳卒中」は出血性および非出血性に分類される。出血性脳卒中の例は脳出血、くも膜下出血および大脳動脈奇形に続発する頭蓋内出血である一方、非出血性脳卒中の例は脳梗塞を含む。
用語「外傷性脳損傷」または「TBI」は、物理的な外傷が脳障害を引き起こす際に発生する脳に対する外傷性の損傷を意味する。TBIは、たとえば非開放性頭部損傷または穿通性頭部損傷によって発生する。「非外傷性脳損傷」は、虚血または機械的外力の関与しない脳損傷を指す(例:特に脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳出血、脳感染症、脳腫瘍)。
用語「脳損傷」は無症候性脳損傷、脊髄損傷および無酸素性虚血性脳損傷も意味する。用語「無症候性脳損傷」(SCI)は脳損傷の顕在的臨床的エビデンスを伴わない脳損傷を意味する。実際には脳損傷が存在する時に臨床的エビデンスがない理由は、損傷の程度、損傷の種類、意識レベル、薬物、特に鎮静剤および麻酔剤などである可能性もある。
「脊髄損傷」は、脊髄が脊椎骨折または脱臼による圧迫/挫滅を受けて機能障害を引き起こす状態である。本明細書で用いる用語「無酸素性虚血性脳損傷」は、脳機能の損傷を引き起こす脳組織への酸素供給の遮断を意味し、かつ脳低酸素症を含む。たとえば、無酸素性虚血性脳損傷は巣状脳虚血、全脳虚血、低酸素性低酸素症(すなわち、いずれもこの種の脳低酸素症のリスクの高いダイバー、パイロット、登山家および消防士の場合のように、環境中の酸素が限られているために脳の機能が低下する)、肺の閉塞(例:窒息、絞扼、気管の圧挫による低酸素など)を含む。
本明細書で用いる用語「比較する」は、患者から採取したサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーの割合、レベルまたは細胞内局在が、標準または対照サンプル中の対応する1つまたはそれ以上のバイオマーカーの割合、レベルまたは細胞内局在とどのように関係するか評価することを意味する。たとえば、「比較する」は、患者から採取したサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーの割合、レベルまたは細胞内局在が、標準または対照サンプル中の対応する1つまたはそれ以上のバイオマーカーの割合、レベルまたは細胞内局在と同じであるか、またはこれより多いかまたは少ないか、または異なるか評価することを意味しうる。より具体的には、当該用語は、患者から採取したサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーの割合、レベルまたは細胞内局在が、たとえば無症候性脳損傷(SCI)を有する患者、SCIのない患者と対応する事前に定義したバイオマーカーレベルの割合、レベルまたは細胞内局在と同じであるか、またはこれより多いかまたは少ないか、これと異なるか、またはこれと異なる対応をするか(否か)、またはSCIに対する治療に反応しているか、SCIに対する治療に反応していないか、特定のSCI治療に反応する可能性がある/ないか、または他の疾患または状態を有している/いないか評価することを意味する。具体的な実施形態においては、用語「比較する」は、患者から採取したサンプル中の本発明の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルが、対照サンプル中の同じバイオマーカーのレベル(例:未感染者(unaffected)、標準SCIレベルなどと相関する事前に定義したレベル)と同じであるか、これより多いかまたは少ないか、他と異なるかこれと異なる対応をするか(否か)評価することを意味する。
本明細書で用いる、たとえば患者から採取したサンプル中のモジュレートされた割合、レベル、または細胞内局在などのパラメーターについての用語「示す」または「相関する」(または文脈によっては「示すこと」または「相関すること」または「指示」または「相関」)は、患者がSCIを有することを示しうる。具体的な実施形態においては、パラメーターは本発明の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを含むことがある。具体的な1つまたはそれ以上のバイオマーカー群またはその量のパターンは、患者がSCIを有することを示しうる(すなわちSCIを有する患者と相関する)。他の実施形態においては、具体的な1つまたはそれ以上のバイオマーカー群またはその量のパターンは、非罹患患者と相関しうる(すなわち患者がSCIでないことを示す)。他の実施形態においては、本発明にしたがって用いる「示すこと」または「相関すること」は、診断の評価、SCIまたはSCIの進行の予測、臨床治療の効果の評価、特定の投与法または医薬品に応答しうる患者の特定、治療の経過のモニタリング、およびスクリーニング測定の状況においては抗SCI治療の特定を目的とした標準、対照または比較対象数値とのバイオマーカーレベル間の関係を定量する任意の線形的または非線形的方法によることもある。
用語「患者」、「個人」または「被験者」は、本明細書では互換的に用いられ、かつ哺乳類、具体的にはヒトを意味する。患者は軽度の疾患を有することも、中等度、または重度の疾患を有することもある。患者は治療未経験であることも、あらゆる形態の治療に反応することも、または難治性であることもある。患者は治療を必要とする個人であることも、または具体的な症状または家族歴による診断を必要とする個人であることもある。一部の症例においては、当該用語は、マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯類および霊長類を含むがこれに限定されない実験動物、獣医学的用途、および疾患についての動物モデルの開発における治療を意味することもある。
用語「測定すること」および「判定すること」は全体を通して互換的に用いられ、かつ患者サンプルを採取することおよび/またはサンプル中のバイオマーカーのレベルを検出することを含む方法を意味する。1つの実施形態においては、当該用語は患者サンプルを採取することおよびサンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを検出することを意味する。1つの実施形態においては、用語「測定すること」および「判定すること」は患者サンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを検出することを意味する。測定することは技術上既知の方法および本明細書においてさらに記載する方法によって遂行することができる。用語「測定すること」は、全体を通じて「検出すること」とも互換的に用いられる。
用語「サンプル」、「患者サンプル」、「生物学的サンプル」などは、患者、個人または被験者から採取された多様なサンプルの種類を包含し、かつ診断またはモニタリング測定法において用いることができる。患者サンプルは健康被験者から採取されることもあれば、疾患患者またはSCI関連症状を有する患者から採取されることもある。さらに、患者から採取されたサンプルは分割することが可能であり、また一部のみを診断に用いてもよい。さらに、サンプルまたはその一部は、後で分析するためにサンプルを維持する条件下で保存することができる。当該の定義は、具体的には、血液および他の生物学的由来の液状サンプル(末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、糞便および滑液を含むがこれに限定されない)、生検検体または組織培養などの固形組織サンプル、またはこれに由来する細胞およびその子孫を包含する。具体的な実施形態においては、サンプルは血液サンプルを含む。他の実施形態においては、血清サンプルを使用する。当該の定義は、その取得後に、遠心分離、濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィー、試薬による処理、洗浄または一定の細胞集団の濃縮といった任意の方法で操作されたサンプルを含む。当該用語はさらに臨床サンプルを包含し、かつ培養細胞、細胞上清、組織サンプル、器官なども含む。サンプルは、臨床または病理生検より調製した、病理分析または免疫組織化学分析による試験のために調製したブロックなどの新鮮凍結および/またはホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックも含みうる。
本発明の多様な方法論は、数値、レベル、性質、特徴、特性等を、本明細書において「適切な対照」または「対照サンプル」と互換的に呼ばれる「適当な対照」と比較することを包含する段階を含む。「適当な対照」、「適切な対照」または「対照サンプル」は、比較の目的にとって有用な当業者に周知の任意の対照または標準である。1つの実施形態においては、「適当な対照」または「適切な対照」は、たとえば、正常な形質などを示す対照または正常細胞、器官または患者などの、細胞、器官、または患者において判定される数値、レベル、性質、特徴、特性などである。たとえば、本発明のバイオマーカーは非罹患者(UI)または正常対象者(NC)(本明細書では両用語を互換的に用いる)から採取したサンプル中のレベルを測定しうる。他の実施形態においては、「適当な対照」または「適切な対照」は、患者に対して治療法(例:SCI治療)を実施する前に判定される数値、レベル、性質、特徴、特性などである。さらに他の実施形態においては、転写速度、mRNAレベル、翻訳速度、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞の特徴または特性、遺伝型、表現型などは、治療法を細胞、器官または患者に施行する前、施行中、または施行後に判定することができる。さらなる実施形態においては、「適当な対照」または「適切な対照」は、事前に定義される数値、レベル、性質、特徴、特性などである。「適当な対照」は、患者サンプルをこれと比較することのできるSCIと相関する本発明の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルのプロフィールまたはパターンとすることができる。患者サンプルは陰性対照、すなわちSCIがないことと相関するプロフィールと比較することもできる。
(II.脳損傷バイオマーカーの検出)
(A.質量分析法による検出)
1つの実施形態においては、本発明のバイオマーカーは、気相イオンを検出する質量分析器を用いる方法である質量分析法によって検出しうる。質量分析法の例は、飛行時間型、磁気セクター、四極子フィルター、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電セクター分析器、前記のハイブリッドまたは複合等である。具体的な実施形態においては、質量分析法はマトリクス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型(MALDI−TOF MSまたはMALDI−TOF)を含む。他の実施形態においては、方法はMALDI−TOFタンデム質量分析法(MALDI−TOF MS/MS)を含む。さらに他の実施形態においては、質量分析法は当業者が考慮することのできる他の適切な方法と組み合わせることができる。たとえば、MALDI−TOFは本明細書に記載するようにトリプシン消化およびタンデム質量分析法と共に利用することができる。他の実施形態においては、質量分析法は多重反応モニタリング(MRM)または定量的MRMである。
代替的実施形態においては、質量分析法はたとえば米国特許第6,225,047号および第5,719,060号に記載された表面増強レーザー脱離イオン化すなわち「SELDI」を含む。簡単に説明すると、SELDIは、分析物(本明細書においては1つまたはそれ以上のバイオマーカー)がSELDI質量分析計プローブの表面に捕捉される脱離/イオン化気相イオンスペクトル分析(例:質量分析)の方法を意味する。親和性捕捉質量分析法(表面増強親和性捕捉(SEAC)とも呼ばれる)、およびプローブの表面に化学結合したエネルギー吸収分子を含むプローブ(SENDプローブ)の使用を包含する表面増強ニート脱離(SEND)を含むがこれに限定されない、利用しうるSELDIのいくつかのバージョンがある。他のSELDI法は表面増強感光性付着および放出(SEPAR)と呼ばれ、これは分析物と共有結合し、その後たとえばレーザー光などに露光した後にその部分にある感光性結合が回裂して分析物を放出することのできる表面と結合する部分を有するプローブの使用を包含する(米国特許第5,719,060号を参照)。SEPARおよび他の形態のSELDIは、本発明に準拠して、バイオマーカーおよびバイオマーカーパネルを検出するよう容易に適合化することができる。
他の質量分析法においては、バイオマーカーはバイオマーカーと結合するクロマトグラフィー的性質を有するクロマトグラフィー樹脂上にまず捕捉することができる。たとえば、CM Ceramic HyperD F樹脂などの陽イオン交換樹脂上にバイオマーカーを捕捉し、樹脂を洗浄し、バイオマーカーを溶離し、MALDIによって検出することも可能である。代替的に、この方法に先立ち、陽イオン交換樹脂への適用の前に陰イオン交換樹脂上でサンプルを分画化することも可能である。他の代替法においては、陰イオン交換樹脂上で分画化してMALDIで直接検出することも可能である。さらに他の方法においては、バイオマーカーを、バイオマーカーと結合する抗体を含む免疫クロマトグラフィー樹脂上で捕捉し、樹脂を洗浄して未結合の材料を除去し、樹脂よりバイオマーカーを溶離し、さらに溶離したバイオマーカーをMALDIまたはSELDIで検出することも可能である。
(B.イムノアッセイによる検出)
他の実施形態においては、本発明のバイオマーカーはイムノアッセイによって検出および/または測定することができる。イムノアッセイは、バイオマーカーを捕捉するために抗体などの生体特異的捕捉試薬を必要とする。多くの抗体が市販されている。抗体は、たとえば動物をバイオマーカーによって免疫することなどの、技術上周知の方法によっても生成することができる。バイオマーカーは、その結合特性に基づいてサンプルより分離することができる。代替的に、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が既知の場合は、ポリペプチドを合成し、さらに技術上周知の方法によって抗体を生成するために用いることができる。
本発明は、たとえばELISAを含むサンドイッチイムノアッセイまたは蛍光イムノアッセイ、イムノブロット、ウェスタンブロット(WB)、さらには他の酵素免疫測定法などを含む、従来のイムノアッセイを考慮している。比濁法は、抗体が溶液となっている液相において実施する測定法である。抗原の抗体との結合によって吸光度が変化し、これを測定する。SELDIイムノアッセイでは、バイオマーカーの生体特異的捕捉試薬を、事前に活性化させたプロテインチップアレイなどのMSプローブの表面に結合させる。その後、この試薬によってバイオマーカーをバイオチップ上に特異的に捕捉し、さらに捕捉したバイオマーカーを質量分析法で検出する。
抗体はその多彩な特性より有用であるものの、上記のイムノアッセイの抗体の代わりに任意に用いられる本発明のバイオマーカーと特異的に結合する他の任意の適当な試薬(例:ペプチド、アプタマー、または低分子量有機分子など)が任意に用いられる。たとえば、全てのニューログラニンおよび/または1つまたはそれ以上のその分解生成物と特異的に結合するアプタマーを用いることもあるかもしれない。アプタマーは特定のリガンドと結合する核酸ベースの分子である。具体的な結合特異性を有するアプタマーを作成する方法は、米国特許第5,475,096号;第5,670,637号;第5,696,249号;第5,270,163号;第5,707,796号;第5,595,877号;第5,660,985号;第5,567,588号;第5,683,867号;第5,637,459号;および第6,011,020号に詳述されたように既知である。
(C.電気化学発光分析による検出)
いくつかの実施形態においては、本発明のバイオマーカーはメソスケールディスカバリー(メリーランド州ゲッサーズバーグ)によって開発された電気化学発光測定法によって検出しうる。電気化学発光検出は、電気化学的に刺激されたときに発光する標識を用いる。刺激メカニズム(電気)はシグナル(光)からデカプリングするため、バックグラウンドシグナルは最小である。標識は安定で、非放射性でありかつ簡便な結合化学特性の選択を提供する。約620nmの光を発し、カラークエンチングの問題を解消する。米国特許第7,497,997号;第7,491,540号;第7,288,410号;第7,036,946号;第7,052,861号;第6,977,722号;第6,919,173号;第6,673,533号;第6,413,783号;第6,362,011号;第6,319,670号;第6,207,369号;第6,140,045号;第6,090,545号;および第5,866,434号を参照されたい。米国特許出願公開第2009/0170121号;第2009/006339号;第2009/0065357号;第2006/0172340号;第2006/0019319号;第2005/0142033号;第2005/0052646号;第2004/0022677号;第2003/0124572号;第2003/0113713号;第2003/0003460号;第2002/0137234号;第2002/0086335号;および第2001/0021534号を参照されたい。
(D.バイオマーカーを検出するその他の方法)
本発明のバイオマーカーは、他の適当な方法で検出することができる。この目的のために用いることのできる検出パラダイムは、光学的方法、電気化学的方法(ボルタメトリー法および電流滴定法)、原子間力顕微鏡、およびたとえば多極共鳴分光法などの高周波法を含む。光学的方法の例示は、共焦点および非共焦点顕微鏡に加えて、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率(例:表面プラスモン共鳴法、偏光解析法、共鳴ミラー法、回折格子結合器導波管法または干渉法)である。
さらに、サンプルはバイオチップの手段によって分析しうる。バイオチップは一般に固形基材を含みかつ一般に平面状の表面を有し、その表面に捕捉試薬(吸着剤またはアフィニティ試薬とも呼ばれる)が結合する。バイオチップの表面は、それぞれがそこに結合する捕捉試薬を有するアドレスを指定できる位置を多数含むことが多い。プロテインバイオチップはポリペプチドの捕捉に適合化されたバイオチップである。当技術分野では多くのプロテインバイオチップが記載されている。これらは、たとえばサイファージェンバイオシステムズ社(カリフォルニア州フリーモント)、インビトロジェン社(カリフォルニア州カールズバッド)、アフィメトリクス社(カリフォルニア州フレモング)、Zyomyx(カリフォルニア州ヘイワード)、R&Dシステムズ社(ミネソタ州ミネアポリス)、Biacore(スウェーデン、ウプサラ)およびProcognia(英国、バークシャー)によって製造されるプロテインバイオチップを含む。このようなプロテインバイオチップの例は、以下の特許または公開特許明細書に記載されている:米国特許第6,537,749号、米国特許第6,329,209号、米国特許第6,225,047号、米国特許第5,242,828号、PCT国際公開第00/56934号、およびPCT国際公開第03/048768号。
(III.患者の脳損傷状態の判定)
本発明は、脳損傷を診断するためのバイオマーカーの使用に関する。より具体的には、本発明のバイオマーカーは、たとえば個人、被験者または患者の脳損傷を診断するためなどに、脳損傷状態を判定、認定、および/または評価するための診断検査において使用することができる。具体的な実施形態においては、脳損傷状態は、たとえば個人、被験者または患者のSCIを診断するためなどに、患者の無症候性脳損傷状態すなわちSCI状態を判定することを含むことができる。より具体的には、脳損傷(例:SCIまたは顕性脳損傷)を診断する際に検出しようとするバイオマーカーはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1およびMT3を含むが、これに限定されない。SBDP150、SBDP150i、NSE、SlOOβ、MAP2、MAPI、MAP3、MAP4、MAP5、MBP、Tau、NF−L、NF−M、NF−H、UCH−Ll、NSE、NeuN、CNPase、α−インターネキシン、CB−I、CB−2;ICAM、VAM、NCAM、NL−CAM、AL−CAM、C−CAM;シナプトタグニン、シナプトフィジン、シナプシン、SNAP;CRMP−2、CRMP−I、CRMP−3、CRMP−4 iNOS、およびβlll−チューブリンを含むがこれに限定されない関連技術において既知である他のバイオマーカーを、本明細書に記載するバイオマーカーと組み合わせて用いてもよい。
(A.バイオマーカーパネル)
本発明のバイオマーカーは、患者の脳損傷状態を評価、判定、および/または認定(本明細書では互換的に使用される)するための診断検査において用いることができる。語句「脳損傷状態」は、脳損傷を有していないことを含めた状態の任意の判別可能な発現を含む。たとえば、脳損傷状態は、患者の脳損傷の有無、脳損傷を発症するリスク、脳損傷の病期または重症度、脳損傷の進行(例:経時的な脳損傷の進行)および脳損傷の治療の有効性またはこれに対する反応(例:治療後の脳損傷の臨床的経過観察および監視など)を制限なく含む。この状態に基づき、追加的な診断検査または治療手技または治療法を含むさらなる手順を指示しうる。
状態を正しく予測する診断検査の検出力は、一般に測定法の敏感度、測定法の特異度または受信者動作特性(「ROC」)曲線下面積として測定される。敏感度は、検査が陽性であることで予測された真陽性の百分率である一方、特異性は検査が陰性であることで予測された真陰性の百分率である。ROC曲線は、検査の敏感度を1−特異度の関数として表す。ROC曲線下面積が大きければ、検査的中度がより強力になる。検査の有用性のその他の有用な指標は陽性的中度および陰性的中度である。陽性的中度は、検査が陽性で実際に陽性である者の百分率である。陰性的中度は、検査が陰性で実際に陰性である者の百分率である。
具体的な実施形態においては、本発明のバイオマーカーパネルは種々のSCI状態に少なくともp<0.05、p<10−2、p<10−3、p<10−4またはp<10−5の統計的差を示しうる。これらのバイオマーカーを用いる診断検査は、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8または少なくとも0.9のROCを示しうる。
バイオマーカーは、UI(NCまたは非脳損傷)と脳損傷で存在の仕方が異なり、したがって、脳損傷状態の判定を支援する際に有用である。一定の実施形態においては、本明細書に記載の方法を用いて患者サンプル中のバイオマーカーを測定し、かつたとえば事前に定義したバイオマーカーレベルなどと比較し、かつ脳損傷状態と相関させる。具体的な実施形態においては、測定値は、次に、脳損傷陽性状態を脳損傷陰性状態と識別する関連する診断的量、カットオフ値、または多変量モデルスコアと比較されることがある。診断的量は、その値を上回るかまたは下回るとき患者が特定の脳損傷状態を有すると分類されるバイオマーカーの測定量を表す。たとえば、バイオマーカーが脳損傷時に正常値と比較してアップレギュレートされるとき、診断的カットオフ値を上回る測定量は脳損傷の診断を提供する。代替的に、バイオマーカーが脳損傷時にダウンレギュレートされるとき、診断的カットオフ値にあるかまたはこれ以下の測定量は非脳損傷の診断を提供する。技術上十分に理解されているように、測定法で用いられる特定の診断カットオフ値を調節することにより、診断医の選好に応じて診断測定法の敏感度または特異度を高めることができる。具体的な実施形態においては、具体的な診断カットオフ値は、たとえば種々の脳損傷状態を有する患者から採取した統計的に有意な数のサンプルにおいてバイオマーカーの量を測定し、さらに所望のレベルの敏感度および特異度に適合させるためにカットオフ値を選択することなどによって決定することができる。
実際に、当業者が認識するように、検討中の診断的な問題を改善するために2つまたはそれ以上のバイオマーカーの測定値を用いる多くの方法がある。きわめて単純であるもののしばしば有効な手法においては、サンプルが測定したマーカーのうち少なくとも1つについて陽性である場合、結果は陽性であると推測される。
さらに、一定の実施形態においては、バイオマーカーパネルのマーカーについて測定した数値を数学的に複合し、さらに複合した数値を背景にある診断的問題と相関させる。バイオマーカーの数値は任意の適切な最新の数学的方法によって複合しうる。マーカーの複合値を疾患状態と相関させる周知の数学的方法は、判別分析(DA)(例:線形、二次、正規化DA)、判別関数分析(DFA)、カーネル法(例:SVM)、多次元尺度構成法(MDS)、ノンパラメトリック法(例:k近傍分類法)、PLS(部分最小二乗法)、決定木法(例:論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バッギング法)、一般化線型モデル(例:ロジスティック回帰)、主成分法(例:SIMCA)、一般化加法モデル、ファジー論理法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズム法のような方法を用いる。当業者は、本発明のバイオマーカー複合値を評価する適切な方法を問題なく選択するであろう。1つの実施形態においては、たとえば脳損傷を診断するためなどに本発明のバイオマーカー複合値を相関させる際に用いられる方法は、DA(例:線形、二次、正規化判別分析)、DFA、カーネル法(例:SVM)、MDS、ノンパラメトリック法(例:k近傍分類法)、PLS(部分最小二乗法)、決定木法(例:論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング法)、または一般化線型モデル(例:ロジスティック回帰)、および主成分法から選択される。これらの統計学的方法に関する詳細は以下の参照文献で確認される:Ruczinski他、12 J. OF COMPUTATIONAL AND GRAPHICAL STATISTICS 475-511(2003);Friedman, J. H., 84 J. OF THE AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION 165-75(1989);Hastie, Trevor, Tibshirani, Robert, Friedman, Jerome『統計的学習の要素―Springer統計学シリーズ』(2001);Breiman, L., Friedman, J. H., Olshen, R. A., Stone, C. J. 『分類および回帰木』California: Wadsworth(1984);Breiman, L., 45 MACHINE LEARNING 5-32(2001); Pepe, M. S.,『分類および評価を目的とした医学的検査の統計学的評価、オックスフォード統計科学シリーズ28』(2003);およびDuda, R. O., Hart, P. E., Stork, D. G.,『パターン分類』(第2版)Wiley Interscience(2001)。
(B.脳損傷発症リスクの判定)
具体的な実施形態においては、本発明は患者が脳損傷を発症するリスクを判定するための方法を提供する。バイオマーカーの百分率、量またはパターンは、たとえば高、中、低などの多様なリスク状態の特徴である。脳損傷を発症するリスクは、関連バイオマーカーを測定し、その後それらを分類アルゴリズムに投入するか、または参照値、すなわち具体的なリスクレベルと関連する事前に定義したバイオマーカーのレベルまたはパターンと比較することによって判定する。
(C.脳損傷の重症度の判定)
他の実施形態においては、本発明は患者の脳損傷の重症度を判定するための方法を提供する。脳損傷の各等級または病期は、特徴的なバイオマーカーのレベルまたはバイオマーカー群の相対的レベル(パターン)を有する可能性がある。脳損傷の重症度は、関連バイオマーカーを測定し、その後それらを分類アルゴリズムに投入するか、または参照値、すなわち具体的な病期と関連する事前に定義したバイオマーカーのレベルまたはパターンと比較することによって判定する。
(D.脳損傷の予後の判定)
1つの実施形態においては、本発明は患者の脳損傷の経過を判定するための方法を提供する。脳損傷の経過は、脳損傷の進行(悪化)および脳損傷の後退(改善)を含む、脳損傷状態の経時的変化を意味する。バイオマーカーの量または相対的な量(例:パターン)は経時的に変化する。たとえば、バイオマーカー「X」が脳損傷に伴って増加することがある一方で、バイオマーカー「Y」が脳損傷に伴って減少することもある。したがって、脳損傷または非脳損傷に向かうこれらのバイオマーカーの経時的な増加または減少の傾向は、状態の経過を示す。このため、本方法は、患者の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを、たとえば1回目および2回目などの少なくとも2つの測定時に測定し、かつ変化があれば比較することを包含する。脳損傷の経過はこれらの比較に基づいて判定する。
(E.患者の管理)
脳損傷状態を認定する方法の一定の実施形態においては、方法は状態に基づく患者の治療を管理することをさらに含む。そのような管理は、脳損傷状態を判定することに続く医師または臨床家の措置を含む。たとえば、医師が脳損傷の診断を下す場合、その後に一定のモニタリング法を実施するであろう。本発明の方法を用いた脳損傷の経過の評価は、その後一定の脳損傷治療法を必要とすることもある。代替的に、非脳損傷の診断の後で、患者が罹患していることもありうる具体的な疾患を判定するためにさらなる検査を行うこともありうる。また、診断検査の結果が脳損傷に関する結論に至らない場合はさらなる検査を要請することもある。
(F.医薬品の治療効果の判定)
他の実施形態においては、本発明は医薬品の治療効果を判定するための方法を提供する。これらの方法は医薬品の臨床試験を実施する際、および医薬品を使用している患者の進行をモニタリングする際に有用である。治療法または臨床試験は、医薬品を特定の投与法で投与することを包含する。投与法は、医薬品の1回投与または医薬品の経時的複数回投与を包含しうる。医師または臨床研究者は、患者または被験者に対する医薬品の効果を投与の過程に渡ってモニタリングする。医薬品が病状に対して薬理学的影響を有する場合、本発明の1つまたはそれ以上のバイオマーカーの量または相対量(例:パターンまたはプロフィール)は、非脳損傷プロフィールに変化しうる。したがって、投与クール中、患者における1つまたはそれ以上のバイオマーカーの経過を追跡することができる。これにより、本方法は薬物療法を受ける患者の1つまたはそれ以上のバイオマーカーを測定すること、およびバイオマーカーレベルを(例:種々の脳損傷状態に対応する事前に定義したバイオマーカーレベルとの比較により)患者の脳損傷状態と相関させることを包含する。本方法の1つの実施形態は、たとえば1回目および2回目など、薬物療法クール中の少なくとも2つの測定時に1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを判定し、かつバイオマーカーのレベルに変化があれば比較することを包含する。たとえば、1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルは医薬品の投与の前後、または医薬品の投与中の異なる2つの測定時に測定することができる。治療法の効果はこれらの比較に基づいて判定する。治療が有効である場合は1つまたはそれ以上のバイオマーカーは正常に向かう傾向である一方、治療が無効である場合は1つまたはそれ以上のバイオマーカーは脳損傷を示す傾向であろう。
(G.脳損傷状態を認定するための分類アルゴリズムの生成)
一部の実施形態においては、「既知のサンプル」などのサンプルを用いて生成したデータはその後分類モデルを「トレーニング」するために用いることができる。「既知のサンプル」とは事前に分類されたサンプルである。分類モデルを形成するために用いるデータは「トレーニングデータセット」と呼ぶことができる。分類モデルを形成するために用いる「トレーニングデータセット」は生データを含むこともあれば、または事前に処理したデータを含むこともある。分類モデルは、一旦トレーニングすれば未知のサンプルを用いて生成したデータにおけるパターンを認識することができる。分類モデルはその後未知のサンプルを分類に分類するために用いることができる。これは、たとえば特定の生物学的サンプルが一定の生物学的状態と関連するか否か予測する際など(例:疾患対非疾患)に有用となることがある。
分類モデルは、データ中に存在する客観的パラメーターに基づいてデータの本体を分類に区分することを試みる任意の適当な統計学的分類または学習法を用いて形成することができる。分類法は教師付きであることも、または教師なしであることもある。教師付き分類および教師なし分類のプロセスの例は、その教示を参照文献として本明細書に援用するJain、“Statistical Pattern Recognition: A Review”, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, January 2000に記載されている。
教師付き分類においては、既知のカテゴリーの例を含むトレーニングデータが学習メカニズムに提示され、この学習メカニズムが各既知の分類を定義する1つまたはそれ以上の関係群を学習する。その後新規データを学習メカニズムに適用し、学習メカニズムは次に学習した関係を用いて新規データを分類する。教師付き分類プロセスの例は、線形回帰プロセス(例:多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PSL)回帰および主成分回帰(PCR))、二分決定木(例:CARTなどの帰納的分配プロセス)、バックプロパゲーションネットワークなどのアーティフィシャルニューラルネットワーク、判別分析(例:ベイズ分類またはフィッシャー分析)、ロジスティック分類、およびサポートベクター分類(サポートベクターマシン)を含む。
他の教師付き分類法は帰納的分配プロセスである。機能的分配プロセスは、未知のサンプルから派生したデータを分類するために帰納的分配木を用いる。帰納的分配プロセスについてのさらなる詳細はPaulse他の米国特許出願公開第2002 0138208(A1)号「質量スペクトルを分析するための方法」に提供される。
他の実施形態においては、作製される分類モデルは教師なし学習法によって形成することができる。教師なし分類では、トレーニングデータセットが派生したスペクトルを事前に分類することなく、トレーニングデータセット中の類似性に基づいて分類の学習を試みる。教師なし学習モデルはクラスター分析を含む。クラスター分析は、そのメンバーが理想的には互いに非常に類似し、かつ他のクラスターのメンバーとは非常に異なっていなければならない「クラスター」または群へのデータの分割を試みる。次に、データ項目間の距離を測定し、かつ互いにより近いデータ項目と共にクラスター間の距離を測定する何らかの距離測定法を用いて類似性を測定する。クラスター化法はMacQueenのK−平均アルゴリズムおよびKohonenの自己組織化マップアルゴリズムを含む。
生物学的情報を分類する際の使用を目的として仮定された学習アルゴリズムは、たとえばPCT国際出願公開第01/31580号(Barnhill他、「生物学的システムにおけるパターンを特定するための方法および装置およびその使用方法」)、米国特許出願公開第2002/0193950号(Gavin他、「方法または質量スペクトルを分析すること」)、米国特許出願公開第2003/0004402号(Hitt他、「生物学的データからの隠れたパターンに基づく生物学的状態間を識別するためのプロセス」)、および米国特許出願公開第2003/0055615号(ZhangおよびZhang、「生物学的発現データを処理するためのシステムおよび方法」)などに記載されている。
分類モデルは、任意の適当なデジタルコンピュータ上で形成し、かつ使用することができる。適当なデジタルコンピュータは、Unix、Windows(登録商標)またはLinux(登録商標)ベースのオペレーティングシステムなどの任意の標準的なまたは専用のオペレーティングシステムを用いたマイクロ、ミニまたは大型コンピュータを含む。質量分析計を利用する実施形態においては、使用するデジタルコンピュータは、目的のスペクトルを作製するために用いる質量分析計と物理的に分離していることもあれば、または質量分析計と接続していることもある。
本発明の実施形態によるトレーニングデータセットおよび分類モデルは、デジタルコンピュータによって実行または使用されるコンピュータコードによって具現することができる。コンピュータコードは、光学または磁気ディスク、スティック、テープなどの任意の適当なコンピュータ読み取り可能メディアに保存することができ、かつR、C、C++、visual basicなどを含む任意の適当なコンピュータプログラミング言語で書くことができる。
上記の学習アルゴリズムは、すでに発見されたバイオマーカーのための分類アルゴリズムを開発するため、および新規バイオマーカーバイオマーカーを確認するためのいずれにも有用である。一方、分類アルゴリズムの方は、単独でまたは組み合わせて用いられるバイオマーカーのための診断値(例:カットオフポイント)を提供することにより、診断検査のための基盤を形成する。
(H.脳損傷バイオマーカーの検出のためのキット)
他の態様においては、本発明は脳損傷状態を認定するためのキットであって、当該キットが本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために用いられるキットを提供する。具体的な実施形態においては、キットはASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3を含むがこれに限定されない本発明のバイオマーカーに対する抗体を含むELISAキットとして提供される。
ELISAキットは、その上にバイオマーカー捕捉試薬が結合しているチップ、マイクロプレート(例:96ウェルプレート)、ビーズ、または樹脂などの固形支持体を含みうる。キットは、抗体などのバイオマーカーを検出するための手段、およびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ウサギヤギIgG抗体などの二次抗体−シグナル複合体およびHRPの基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)をさらに含みうる。
脳損傷状態を認定するためのキットは、膜が、NC膜およびPVDF膜を含む、その上に抗体が固定されている膜、およびたとえば金粒子結合抗体などのような検出するための手段を含む免疫クロマトグラフィストリップとして提供されうる。キットは、サンプルアプリケーションパッド、グラスファイバーフィルター上に一時的に固定された金粒子結合抗体、その上に抗体バンドおよび二次抗体バンドが固定されたニトロセルロース膜および吸着剤パッドが、血清の連続的毛管流を維持するよう、その上に連続的な様式で配置されたプラスチックプレートを含みうる。
一定の実施形態においては、患者は、患者から採取した血液または血清をキットに加えること、および抗体とコンジュゲートした関連バイオマーカーを検出すること、具体的には(i)患者から血液または血清を採取すること;(ii)患者の血液から血清を分離すること;(iii)患者由来の血清を診断キットに適用すること;および、(iv)抗体とコンジュゲートしたバイオマーカーを検出することという段階を含む方法によって診断することができる。この方法においては、抗体は患者の血液と接触させられる。サンプル中にバイオマーカーがあれば、抗体はサンプル、またはその一部分と結合するであろう。他のキットまたは診断の実施形態においては、患者より血液または血清を採取する必要はない(すなわち、それはすでに採取されている)。さらに他の実施形態においては、サンプルは組織サンプルまたは臨床サンプルを含んでもよい。
キットは、捕捉試薬と洗浄液の組み合わせにより、固形支持体上にバイオマーカーを捕捉し、後でたとえば抗体または質量分析計などにより検出することが可能となる、洗浄液または洗浄液を作製するための指示を含むことができる。さらなる実施形態においては、キットは適切な操作パラメーターについての指示をラベルまたは別にした説明書の形態で含むことができる。指示書は、たとえばサンプルの捕集方法、プローブの洗浄方法または具体的な検出すべきバイオマーカーなどについての情報を消費者に与えうる。さらに他の実施形態においては、キットは、較正用標準物質として使用するために、バイオマーカーサンプルの入った1つまたはそれ以上の容器を含むことができる。
当業者は、さらに手を加えることなく、前述の記載を用いて本発明を最も完全な程度まで利用できると考えられる。以下の実施例は例示的でのみあって、いかなる様式であっても残る開示を制限していない。
以下の実施例は、当業者に対し、本明細書に記載および主張される化合物、組成物、物品、機器、および/または方法をどのように作製および評価するかについて完全な開示および記載を提供するために提示され、かつ純粋に例示的であることを意図し、かつ発明者がその発明と見なすものの範囲を限定することを意図していない。数値(例:量、温度など)については正確さを確保するよう努力しているが、本明細書では一部の誤りまたは逸脱を説明すべきである。特に指示しない場合、部は重量部であり、温度はセルシウス温度または環境温度であり、かつ圧力は大気圧付近である。数多くの変法、および所望のプロセスより得られる生成物の純度および収率を最適化するために用いることのできる、たとえば成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力およびその他の反応範囲および条件などのような反応条件の組み合わせがある。このようなプロセス条件を最適化するためには、合理的かつ常用的な実験法のみが必要であろう。
(鎌状赤血球症(SCD)小児における無症候性脳損傷(SCI)の血中バイオマーカーの発見)
SCDおよびSCIを有する小児は重大な学習欠損を有しかつ脳卒中のリスクが高い。SCIの早期検出により、IQの低下を含むさらなる脳損傷および認知神経科学的欠損を予防するための治療法の実施が可能となるであろう。定義によれば、SCI患者は微小梗塞と一致する脳損傷のMRIおよび病理学エビデンスを有する。したがって、顕性脳卒中を有する非SCD患者で示されているように、SCI患者を特定する特異な血中バイオマーカーが存在する可能性が高い。本実施例の目標は、SCIの血中バイオマーカーとしての実証のためのリードプロテインを特定するために、SCI患者血漿サンプルと非SCI患者血漿サンプルの臨床的ペア群を探索するバイアスのないプロテオミクス技法を用いることである。
(被験集団)
被験集団は、MRIによりSCIを有する(SCI群)またはSCIがない(非SCI群)と宣告された、SIT治験(24施設)に参加しているSCDを有する6〜12歳の男児および女児を含んだ。SIT治験の一環として、MRIおよび神経学的検査の他に、患者はCBC、Hb/Hct、ヘモグロビン電気泳動およびその他の臨床的検査の判定を受ける。治験に組み入れる際、クエン酸処理血漿を調製し、凍結し、ジョンズ・ホプキンズ大学のBiologic Repositoryに−70℃で保存する。HbはSCIの独立リスク因子であることが示されているので、本実施例の初期探索コホートは、表1に示すように、そのいずれもがHb<8.1g/dLのSCIを有する患者50例およびSCIのない患者50例を含む。
(大量タンパク質の除去処理)
SCIを有する小児における血漿発現の変化に伴うタンパク質を同定するため、SCI小児および非SCI小児の個々の血漿サンプル250μLを、事前に入手することのできた新世代のLC10ポリクローナル抗体アフィニティカラム(IgY高容量LC10カラム、ベックマン・コールター)を用いてアフィニティ除去処理した。この新世代カラムは除去処理できる血漿の量が2倍となっているので(125μLから250μL)、下流の敏感度が上昇する。この新規カラムをProteomeLab PPS Proteome Partitioning System(ベックマン・コールター)と組み合わせて、フロースルーおよび結合タンパク質を採取する。除去処理した血漿各250μLにつきフロースルータンパク質を7mL採取する。5mLループを用いて除去処理したタンパク質400μgを、線形アセトニトリル勾配を用いるC18非多孔性カラムと接続したRP HPLC(ProteomeLab PPS Proteome rtitioning System)で分画化し、30分間で60分画を捕集した。
(SCIにおける小分子かつ少量の血漿タンパク質の同定および定量)
上述のRP HPLC分画に含有されるタンパク質を同定するために、各RP HPLC分画のLC/MS/MS(LTQ Orbitrap)分析を用いて非SCI/SCI血漿タンパク質データベースを策定した。簡単に述べると、1例の患者に由来するRP HPLC分画プールをSpeedVacを用いて完全に乾燥し、中和緩衝液に再懸濁し、一晩トリプシン消化した。トリプシン消化後、RP HPLC分画をLC/MS/MS(Thermo LTQ−Orbitrap)で分析した。トリプシン消化前の未処理タンパク質のRP HPLC分画より、それぞれ50〜100種類のタンパク質を含有する分画を生成した。タンパク質同定の信頼性を高めるために、X!Tandem、OMSSA、およびSageN SEQUESTを用いて、IPIタンパク質データベース(完全トリプシン消化した最新版と3.6)と照合して各タンデムMSスペクトルRAWファイルを検索し、さらにタンパク質およびペプチド同定結果を、MaspectrasおよびScaffoldで各患者別に編集した。SCIおよび非SCIサンプル中のペプチドカウントスペクトルが存在するか/しないかまたは1.5倍を上回るその変化(上昇または減少)に基づいて、初期リードタンパク質を同定した。
(脳損傷タンパク質の同定)
半定量的スペクトルカウントの1.5倍変化というカットオフ値を用いて、SCI小児の血中タンパク質を以下の表1に列挙する。これらのペプチドの同定は期待値<10−1を有する。
(表1.脳損傷タンパク質バイオマーカー)
(鎌状赤血球症(SCD)小児における無症候性脳損傷(SCI)の血中バイオマーカーの探索)
SCDおよびSCIを有する小児は重大な学習欠損を有しかつ脳卒中のリスクが高い。SCIの早期検出により、IQの低下を含むさらなる脳損傷および認知神経科学的欠損を予防するための治療法の実施が可能となるであろう。定義によれば、SCI患者は微小梗塞と一致する脳損傷のMRIおよび病理学エビデンスを有する。したがって、顕性脳卒中を有する非SCD患者で示されているように、SCI患者を特定する特異な血中バイオマーカーが存在する可能性が高い。本実施例の目標は、SCIの血中バイオマーカーとしての実証のためのリードプロテインを特定するために、SCI患者血漿サンプルと非SCI患者血漿サンプルの臨床的ペア群を探索するバイアスのないプロテオミクス技法を用いることである。
(被験集団)
被験集団は、MRIによりSCIを有する(SCI群)またはSCIがない(非SCI群)と宣告された、SIT治験(24施設)に参加しているSCDを有する6〜12歳の男児および女児を含んだ。SIT治験の一環として、MRIおよび神経学的検査の他に、患者はCBC、Hb/Hct、ヘモグロビン電気泳動およびその他の臨床的検査の判定を受ける。治験に組み入れる際、クエン酸処理血漿を調製し、凍結し、ジョンズ・ホプキンズ大学のBiologic Repositoryに−70℃で保存する。HbはSCIの独立リスク因子であることが示されているので、本実施例の初期探索コホートは、表1に示すように、そのいずれもがHb<8.1g/dLのSCIを有する患者50例およびSCIのない患者50例を含む。
(大量タンパク質の除去処理)
SCIを有する小児における血漿発現の変化に伴うタンパク質を同定するため、SCI小児および非SCI小児の個々の血漿サンプル250μLを、事前に入手することのできた新世代のLC10ポリクローナル抗体アフィニティカラム(IgY高容量LC10カラム、ベックマン・コールター)を用いてアフィニティ除去処理した。この新世代カラムは除去処理できる血漿の量が2倍となっているので(125μLから250μL)、下流の敏感度が上昇する。この新規カラムをProteomeLab PPS Proteome Partitioning System(ベックマン・コールター)と組み合わせて、フロースルーおよび結合タンパク質を採取する。除去処理した血漿各250μLにつきフロースルータンパク質を7mL採取する。各患者由来の血漿計750μLを除去処理し、除去処理したタンパク質>1mg(プールカラムフロースルー21mLとして)を下流RP−HPLC分画化に提供した。4mLループを用いて、フロースルータンパク質各4mLの独立したラン5回(血漿750μLの除去処理より採取)を、線形アセトニトリル勾配を用いるC18非多孔性カラムと接続したRP HPLC(ProteomeLab PPS Proteome rtitioning System)で分画化し、30分間で60分画を捕集した。各分画のタンパク質濃度を高めるために、5回のRP−HPLCランの各RP−HPLC分画を同じプレートに捕集する。大きな除去処理タンパク質体積(21mL)を処理する反復RR−HPLC分画化は面倒であるが、代替法であるサイズ排除遠心分離よりも優れている。サイズ排除遠心分離では、(a)遠心分離カラムへの非特異的なタンパク質の結合;および(b)タンパク質<10kDa(アンジオテンシンII、ブラジキニンおよびエンドセリンなどの血管作用ペプチドを含み、SCIの病理において非常に重要となりうる)の固有損失から、許容できないタンパク質損失が生じる。この強度のタンパク質損失は、本実施例に記載するような探索ベースの手法では許容できない。対照的に、反復RP−HPLC分画化は非常に再現性が高い。
RP−HPLCクロマトグラムのどのピークをMS用に処理するか判定するために、オーバーレイソフトウェア(32−Karatソフトウェア、ベックマン・コールター)およびより新しいアルゴリズム(Ludesi社と共同開発)を用いた。これらのツールは、いずれも後で探索コホートを分析する際に特に有用である。4つのSCI RP−HPLCクロマトグラムおよび4つの非SCI RP−HPLCクロマトグラムの分析によれば、(全60分画中)32分画でSCI患者と非SCI患者の間にその後の分析に十分な差がある。図1を参照されたい。
(SCIにおける小分子かつ少量の血漿タンパク質の同定および定量)
上述のRP HPLC分画に含有されるタンパク質を同定するために、各RP HPLC分画のLC/MS/MS(LTQ Orbitrap)分析を用いて非SCI/SCI血漿タンパク質データベースを策定した。簡単に述べると、1例の患者に由来するRP HPLC分画プールをSpeedVacを用いて完全に乾燥し、中和緩衝液に再懸濁し、一晩トリプシン消化した。トリプシン消化後、RP HPLC分画をLC/MS/MS(Thermo LTQ−Orbitrap)で分析した。各RP HPLC分画は50〜100種類のタンパク質を含有する。(Maspectrasの)タンパク質データベースを策定し、2群間のタンパク質発現の差について調査し、その後の分析のために機能的および細胞型特異的タンパク質にコメントした。SCI患者および非SIC患者由来の特異的RP−HPLC分画を、目的の潜在的候補タンパク質を含有すると一旦特定したならば、質量分析技法である多重反応モニタリング(MRM)を用いてこれらの分画中のタンパク質を定量した。簡単に述べると、トリプシン処理後に、サンプルをバイオマーカータンパク質のペプチドシグネチャーを用いるLC/MS/MS同定および定量に投入した。WebベースのMaspectrasデータベースを用いて、生データ、処理したデータおよび分析およびタンパク質プロファイリング用最終プロテオミクスデータを保存した。
(脳損傷タンパク質の同定)
Unigene(NCBI)のESTタグに基づくNCBIの脳特異的タンパク質リストを用いて、SCI小児の血中脳タンパク質104種類を同定した。表2を参照されたい。これらのペプチドの同定は期待値<0.9を有する。
(表2.脳損傷タンパク質バイオマーカー)
(非症候性脳損傷の診断を目的としたバイオマーカーパネル)
本明細書に記載のデータ、さらには心臓手術を受けた成人のコホートから取得したデータのさらなる分析より、無症候性脳損傷を診断/評価するために個別に、または複合して用いることのできる以下のバイオマーカーパネルが得られた。
(表3.非症候性脳損傷のバイオマーカーパネル)
(鎌状赤血球症小児における脳損傷の血漿バイオマーカーとしてのグリア線維性酸性タンパク質のプロテオミクス的同定)
鎌状赤血球症(SCD)は、多臓器損傷を特徴とする慢性溶血性貧血である。脳卒中は、SCDにおいて脳に対して最も顕著に発生しうる損傷である。経頭蓋ドップラー速度が上昇した患者を特定しかつ長期的な赤血球輸血を実施することにより、小児の脳卒中リスクは有意に低下している。Adams他、339 N. ENG. J. MED. 5-11(1998)。MRI上でサイレント脳梗塞(SCI)の存在により確認される脳損傷のリスクが長期的赤血球輸血によって軽減されるかは、現在研究中である。King他、50 PEDIATR. BLOOD CANCER 599-602(2008)。脳卒中リスクのバイオマーカーは、明らかに鎌状赤血球症の診療を変容させている。
小児においては、SCIは低IQ、学業成績不振、および顕性脳卒中の独立リスク因子である。Miller他、139 J. PEDIATR. 385-90(2001);およびBernaudin他、15 J. CHILD NERUOL.333-43(2000)。MRIは、SCI患者を特定する唯一の方法である。MRIは高価であり、使用できる頻度に制限があり、かつ一部の小児患者ではSCDに対して死亡を含むリスクをもたらす麻酔を必要とするので、疾患リスクを追跡するための理想的な技法ではない。Vicinsky他、333 N. ENGL. J. MED. 206-13(1995)を参照されたい。血液は採取および測定することが容易であり、バイオマーカーは神経学的損傷のリスクまたはその顕性脳卒中への進行を判定することができ、かつバイオマーカーは現行および新規SCI療法の基準となることも可能であるので、SCIの血液バイオマーカーは臨床的な空隙を埋めるであろう。
顕性脳卒中を有する成人では、神経および神経膠タンパク質の血漿中レベルは、梗塞領域からの持続的細胞漏出を反映すると考えられる。このグループのバイオマーカーは、脳損傷に対して非常に特異的となり得る。研究者は脳特異性タンパク質を使用するというこの手法をとり、研究用に特定された数種類の候補タンパク質を用いて成人の顕性脳卒中のバイオマーカーを特定している。Allard他、51 CLIN. CHEM. 2043-51(2005);Allard他、4 PROTEOMICS 2242-51(2004)を参照されたい。しかし、SCD患者血漿中への脳特異性タンパク質の漏出からのSCIの特定は報告されていない。
バイアスのないプロテオミクス手法を用いて、MRIおよびプロテオミクス分析でスクリーニングしたSCIを有するSCD患者の血漿中でグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を同定した。GFAPは、成人の急性脳卒中および頭部外傷の既知のバイオマーカーである脳特異性が高い中間線維タンパク質である。Vos他、62 NEUROLOGY 1303-10(2004);Herrmann他、31 STROKE 2670-77(2000);およびLewis他、81 PROC. NATL. ACAD. SCI. U.S.A. 2743-46(1984)。これらの病状において予後および病変密度と相関することが示されている。Nylen他、240 J. NEUROL. SCI. 85-91(2006);Wunderlich他、13 EUR. J. NEUROL. 1118-23(2006)。プロテオミクススクリーンにおけるGFAPの同定およびこれを報告する入手可能な文献を考えれば、それゆえにGFAP濃度は鎌状赤血球症における脳損傷のバイオマーカーの役割を果たす可能性もあるという仮説が立てられる。
(方法)
(患者)
サイレント梗塞輸血治験(SIT治験、ClinicalTrials.gov NCT00072761)のためにスクリーニングされた鎌状赤血球症を有する5〜14歳の小児の横断サンプル(HbSSおよびHbSβ)を検討した(n=259)。SIT治験は、鎌状赤血球症およびSCIを有する小児に対する3年間輸血プログラムの多施設無作為化対照試験である。主要評価項目は顕性脳卒中あるいは新規または進行性SCIの発生を含む。全ての患者はインフォームドコンセントに署名した。SCIは、正常な神経学的検査およびT2強調画像の2視野で目視できるMRIシグナル異常によって定義される。シグナル異常は、1次元で3mm以上でなければならない。SCI状態は、神経放射線科医および脳神経科医のパネルによって宣告される。Vendt他、22(3)J. DIGIT. IMAGING 326-43(2009)を参照されたい。陽性および陰性対照患者は、ジョンズ・ホプキンズ病院の外来および入院病棟から選択した。陽性対照血漿サンプルは、入院した小児または顕性脳梗塞または脳手術で入院した成人から採取した。陰性対象は、ジョンズ・ホプキンズ病院のHarriet Lane小児科外来の5〜16歳の小児から選択した。外来記録を審査して何らかの急性疾患、神経学的障害、または喘息、肥満および行動/気分障害以外の慢性疾患を有する患者を除外した。IRBの承認を受けた研究により、これらの対照についての非特定血液サンプルおよび臨床データを取得した。
(血漿標本および質量分析)
血液をACDまたはEDTA管に採取し、SIT治験プロトコルに従って1500gで8分間遠心分離し、ジョンズ・ホプキンズ大学SIT治験用Biologic Repositoryに分析時まで−70℃で保存した。ProteomeLab Protein Partitioning System(PPS、ベックマン)上のLC10 IgYカラム(ベックマン・コ−ルター、カリフォルニア州フラートン)を用いて、血漿500μLから12種類の血漿大量タンパク質を除去処理した。IgYカラムのフロースルーを、連続アセトニトリル勾配(PPS、ベックマン)を用いるC18カラム(Jupiter, Phenomenex)を通す逆相HPLCで39分画に分離した。分画を乾燥させ(SpeedVac、サーモサイエンティフィック、マサチューセッツ州ウォルサム)、37℃で一晩トリプシン消化した(プロメガ、ウィスコンシン州マジソン)。各サンプルのスペクトルをLC/MS/MS(LTQ−Orbitrap、サーモサイエンティフィック)により取得した。SEQUEST(Sorcerer、SageN、ニュージャージー州ペニングトン)およびヒトIPIデータベースバージョン3.4を用いてスペクトルを検索し、タンパク質を同定した。Protein Centerを用い、タンパク質同定カットオフ値として信頼水準<0.9により検索後分析を実施した。
(GFAP測定)
電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(メソスケールディスカバリー、メリーランド州ゲッサーズバーグ)を用いて、非希釈血漿サンプル中のGFAPを2回ずつ測定した。各ウェルにつきPBS30μL中のモノクローナル抗GFAPブレンドSMI−26(コーバンス、ニュージャージー州プリンストン)100ngを、標準結合MSDプレート中で一晩インキュベートして捕捉した。スルフォダグ(メソスケールディスカバリー)と直接コンジュゲートしたポリクローナル抗GFAP(ダコ、カリフォルニア州カーピンテリア)をPBS中1μg/Lで用いて検出した。標準曲線は、1%ウシ血清アルブミン(SeraCare Life Sciences、マサチューセッツ州ミルフォード)で4倍希釈した精製GFAP(カルビオケム、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を用いて作成した。測定値の変動を最小化するため、対照および鎌形赤血球症患者サンプルは、できるだけ同一のサンプルプレート上で測定した。分析は、Sector Imager 2400(メソスケールディスカバリー)上でメーカーのプロトコルにしたがって実施した。
(統計解析)
GFAP濃度を群間比較するためにスチューデントのt−検定を用いた。自然対数に変換したGFAP値は正規分布に近似し、これらをパラメトリック分析に用いた。割合の検定はフィッシャーの正確検定を用いて実施した。分析はStata v10.1(Stata社、テキサス州カレッジステーション)を用いて実施した。
(結果)
(血漿中のGFAPの質量スペクトル同定)
SCIを有するSIT治験被験者より採取した6血漿サンプル中4サンプルで、SEQUEST検索によりGFAPペプチドを同定した。図2を参照されたい。
(GFAP電気化学発光イムノアッセイの実施および検証)
Petzoldによって報告されさらにMSDプラットフォームに適合化された抗体試薬を用いたGFAP測定法を開発した。Petzold他、287 J. IMMNOL. METHODS 169-77(2004)を参照されたい。この方法の検証を実施した。至適抗体濃度、プレートの種類、およびブロッキング材料を判定する実験の後、本明細書に報告された全てのGFAP値に対して用いられた最終的な測定は、ブランクウェルのバックグラウンドより2SD高いと定義した0.0011ngと低い検出限界値を有した(実験回数n=19)。0.01ng/mLにおける信号雑音比は1.17であった(実験回数n=19)。算出濃度±既知の濃度の20%となる最小希釈度と定義される定量下限値は0.026ng/mLであった(実験回数n=3)。日間再現性は10ng/mLにおいて2.4%であり、かつ0.156ng/mLにおいては3.4%であった(実験回数n=21)。GFAPを10ng/mLで添加した血漿は、BSAにおいて生成した標準曲線と比較して49.8%±22.9%の回収率を示す。血漿中のGFAPが室温で安定であるか少なくとも48時間判定し、測定値がインビトロタンパク分解のアーチファクトでないことを確認した。t=0、6、24、および48時間における同一の分取物の連続測定は、2ng/mLにおいてCV2.5%、0.2ng/mLにおいて12.1%を示し、血漿中のGFAPの安定性を証明する。
(鎌状赤血球症および対照の血漿GFAP)
GFAP測定法が脳損傷の状況における血漿GFAPの上昇を検出することを実証するため、急性脳卒中、脳生検または部分脳切除患者の0〜5日後の小児および成人に由来する血漿サンプルより構成される陽性対照集団を測定した。図3は、脳卒中(中央値0.446ng/mL、範囲0.029〜4.29ng/mL)、脳生検(中央値0.96ng/mL、範囲0.162〜0.93ng/mL)および脳切除(中央値1.29ng/mL、範囲0.122〜24.1ng/mL)についてのGFAPレベルを示す。小児におけるGFAPの血漿濃度は不明であるので、一般の小児科外来からの年齢マッチングした対照(5〜16歳)を用いて正常範囲を確立した。健康対照被験者はスクリーニング用に血液を採取されており、かつ急性疾患はなかった。健康対照のうち46/47例はアフリカ系であった。年齢マッチングした正常対照におけるGFAPの95パーセンタイルは0.244ng/mLであった。陽性対照のうち74%は、正常対照の95パーセンタイルよりも高いGFAP値を有していた(p<0.0001)。
SITT参加者集団と健康対照の比較により、2つの群は血漿GFAPの平均濃度が同程度であることが示される(p=0.12)。SITT参加者のGFAP中央値は0.065ng/mL(10パーセンタイル0.026、90パーセンタイル0.225)であり、健康対照の中央値は0.055ng/m(10パーセンタイル0.025、90パーセンタイル0.207)であるが;しかし、数例の鎌状赤血球症被験者は年齢マッチング対照の最高値よりもはるかに高い血漿GFAP濃度を有している。年齢マッチング健康対照の95パーセンタイルのカットオフ値を用いると、SITTスクリーニングサンプルの8.9%が上昇していた(p=0.29)。SITTスクリーニングサンプル中10サンプル(3.9%)は、顕性脳損傷(脳生検、切除または脳卒中)を有する陽性対照群と匹敵する、年齢マッチング健康対照の最高レベル0.44ng/mL(上昇SITT被験者のGFAPの中央値:1.3ng/mL、範囲0.47〜4.41ng/mL)を上回るGFAPレベルを示した。
(血漿GFAPとSCI)
いくつかの研究はGFAPを急性脳損傷のマーカーとして評価している。SCIおよび脳卒中は、鎌状赤血球症において発生することが十分に立証されたCNS事象である。図4に示すように、SCI群の小児も非SCI群の小児もGFAP濃度が上昇していた。SCI陽性患者とSCI陰性患者の間でGFAP濃度に統計的な差はなかった(p=0.69)。GFAPが年齢マッチング健康対照の95パーセンタイルを上回って上昇しているSCI患者の割合は、GFAPを有する非SCI患者の割合よりも高かったが、この差は統計的に有意ではない(13.4%対7.6%、p=0.14)。
(SCDにおける急性脳卒中における血漿GFAP)
SITT血漿サンプルは特異で貴重なリソースであるものの、実証の目的に対しては、試験組み入れ時の血漿サンプルとSCI脳病変の発症との間に予測可能な時間的関係がないという点で特別な問題を呈する。小児期SCD集団において非症候性および顕性脳卒中のマーカーとしてのGFAPをさらに実証するために、図5に、臨床的に髄膜炎と疑われる熱性疾患中に急性脳卒中を呈した11歳のホモ接合型鎌形赤血球症患者(非SITT患者)からの連続血漿GFAP濃度を示す。CSFを検査したところ感染および出血は陰性であった(6WBC/μL、2RBC/μL)。脳卒中の臨床診断より32時間前に採取した血漿で初期GFAP濃度を測定した(1.5ng/mL、正常小児の95パーセンタイルの6倍)。脳卒中の臨床診断より25時間後のCSFのGFAPレベルは44.6ng/mLであった。参照として、17歳未満の全小児患者のCSF中のGFAPの研究では、急性損傷がない場合のCSF中GFAPレベルは0.1〜0.5ng/mLであることが示された。Osterlundh他、50 PEDIATR. BLOOD CANCER 793-98(2008)。脳卒中の臨床診断より29時間後に実施したMRIは右前大脳動脈梗塞を示した。図6を参照されたい。赤血球交換後もGFAPレベルが低下を続けたことから、この患者はGFAPが急性脳損傷のみのマーカーである可能性があることも証明する。脳卒中より1週間後、やはりホモ接合型鎌状赤血球症である患者の8歳の妹も熱性疾患を発症し、その間の妹の血漿GFAP濃度は0.088ng/mLであった。
(その他の鎌状赤血球症状態における血漿GFAP)
鎌形赤血球症におけるGFAPの脳損傷に対する特異度をさらに探索するため、HbSS患者17例の連続血漿サンプルをGFAPについて検討した(n=40)。入院の理由は急性胸部症候群、疼痛発作、インフルエンザ、発熱、骨髄無形成発症(PCRでパルボウイルスB19を確認)および持続勃起症であった。SCDを有する疾患小児でGFAPが常に上昇することは確認されておらず、39/40サンプルで濃度が正常範囲にあった(範囲0.01〜0.24ng/mL)。最高値(0.44ng/mL)は発熱で入院した4歳の患者に認められた。この数値は正常範囲の95パーセンタイルを上回るものの、正常対照の最高値と同等である。
(考察)
鎌形赤血球症のバイアスのない血漿プロテオームスクリーンを用い、既知の脳損傷マーカーGFAPを同定した。鎌形赤血球症患者の血漿からの脳特異性の高いタンパク質の探索により、本実施例で用いられるバイオマーカー探索の実験的手法が実証される。
本実施例より、GFAPは、SCIの高精度バイオマーカーではないものの、SCIの時期が不明であるSIT治験参加者の横断的研究においてMRIで診断された鎌形赤血球症における脳梗塞のバイオマーカーであることが証明される。5〜14歳の安定期鎌状赤血球症小児の横断的母集団のうち3.9%は、明らかな神経学的損傷を伴わない極度のGFAP上昇を有した。GFAPレベルが著明に上昇したこれらの小児は無症候性脳損傷を有しているという仮説が立てられる。病歴および神経学的検査では明らかな欠損はなかった。
SCIはMRIまたは剖検で定義される病的状態である。Moser他、17 AM. J. NEURORADIOL. 965-72(1996);およびRothman他、20 ANN. NEUROL. 684-90(1986)。鎌状赤血球症におけるSCIは、SCIのない鎌状赤血球症患者よりも低い認知神経科学的能力と関連しているが、多くの鎌状赤血球病小児は、脳MRIが正常であるにもかかわらず認知神経科学的機能が低い。Schatz他、56 NEUROLOGY 1109-11(2001);およびArmstrong 他、97 PEDIATRICS 864-70(1996)。脳に対する特異性の高いタンパク質の血漿レベルによる脳損傷の検出は、損傷を検出するより感度の高い手段となりうる。
SCIは急性または慢性血管発作によって生じる挿間的事象である。大半のSCI患者では血漿GFAPは上昇せず、またGFAPが上昇する場合はSCI陽性患者と陰性患者の間で均等に分布する。横断的データを用いれば、挿間的事象と一過性の血漿バイオマーカーの上昇との関連は偶然の事象となり;したがって本発明者らは、GFAPがSCI条件下で上昇する場合は一過性の上昇であると結論づける。本明細書に記載された脳卒中を有する鎌状赤血球症患者は、血漿GFAPが少なくとも13日間上昇しており、またおそらくその上昇はSCIよりも短い。その他の候補バイオマーカーは、鎌状赤血球症患者にSCIおよび顕性脳卒中の素因を与える慢性脳および血管損傷を反映しうる。
顕性脳卒中の診断前のHbSS患者における血漿GFAPの診断前上昇は、病状の悪い鎌状赤血球患者におけるスクリーニング検査としてGFAPを使用できる可能性を高める。脳梗塞は非造影頭部CTで視覚化することが可能であったので、診断時は少なくとも1日経過していた。病院入院直後のこの小児のGFAPレベルがこのように高かったことを認識していれば、進展性脳損傷のより迅速な評価および治療の契機となっていたかもしれない。非神経学的急性症状で入院した他の17例の鎌状赤血球症患者では血漿GFAPは上昇しなかったので、脳卒中の早期診断に役立つ血漿GFAPの有用性についての予測的研究は、ホスホリパーゼA2が急性胸部症候群の予測因子として研究されていることと同程度に実施可能であると見られる。Styles他、136 BR. J. HAEMATOL. 343-44(2007)。鎌状赤血球症小児患者における脳卒中の約19%は医学的前駆事象と関連し(Scothorn他、140 J. PEDIATR. 348-54(2002))、また選択された入院患者集団に対するスクリーニングは進展性脳卒中のより早期の介入にとって有用となりうる。
血漿はバイオマーカー探索にとって特異なソースである。利点は、大量のタンパク質を含有し、研究用に幅広く利用可能であり、かつ器官特異性サブプロテオームの組み合わせを含みうることであり、血漿分析によってこれらの組織の状態についての情報が提供される。血漿中の血漿バイオマーカー研究にとっての主な困難は、含有量のより少ない候補タンパク質の探索を不明瞭にする数種類のタンパク質の高い濃度である。大量タンパク質の血漿除去処理によって、1ng/mL未満の濃度で存在する候補タンパク質の探索が容易になっている。
小児プロテオミクス研究にとって特に困難なことは、年齢別参照データベースがないことである。ヒトプロテオーム機構(HUPO)の構想の1つにヒト血漿プロテオームプロジェクトがある(http://www.hupo.org/research/hppp/)。少なくとも1つのペプチドによって同定されたタンパク質9,504種類の参照リストは、全ての血漿バイオマーカー探索のための基準である。しかし、これらのデータの小児への適用は明確ではない。本実施例においては、実証のために年齢マッチング対照の蓄積を組み立てた。将来の目標は、年齢マッチング対照の血漿プロテオームを同定し、本研究および他の全ての小児プロテオミクス研究についてのバイオマーカー探索に役立てることである。
要約すると、本研究の結果より、他の集団においてCNS損傷のバイオマーカーであることが知られているGFAPを同定することにより、鎌状赤血球症患者の脳損傷の潜在的バイオマーカーを同定するためのバイアスのない戦略が実証される。臨床症状の顕在的エビデンスがない鎌状赤血球症患者の血漿の相当の割合においてGFAPが同定されることは、本研究では説明されないが、これらのSDC患者の脳損傷の性質についての興味深い問題を提起する。SCDにおける脳特異性タンパク質のさらなるプロテオミクス研究は、SCDにおけるCNS損傷に対する我々の理解、その検出および治療にとって非常に興味深いものとなる見込みがある。
(体外膜型酸素供給後の脳損傷のマーカーおよび神経学的転帰の予測因子としての血漿グリア線維性酸性タンパク質)
本実施例は、ECMOを受ける小児において血漿GFAPレベルが急性神経学的損傷と関連するか判定するために実施した。これは、2008年4月から2009年8月までにジョンズ・ホプキンズ病院の26床PICUにおいてECMOを受けた小児を対象とした予測的観察的コホート研究であった。任意の適応によりECMOを必要とし、かつECMOの過程で非分画化ヘパリンの連続点滴を受けた生後1日から18歳未満までの全ての小児を、本研究の対象とした。22例の患者をGFAP分析に組み入れた。年齢の中央値は生後10日であり(範囲:生後1日〜16歳)、男児は12例(54.5%)であり、かつ12例(54.5%)がアフリカ系アメリカ人であった。主要な疾患カテゴリーは循環器系以外の内科が14例(64%)、またECMOの適応症は呼吸不全が12例(54.5%)、心不全が6例(27.3%)、ECPRが3例(13.6%)、および敗血症が1例(4.6%)であった。
ピークGFAPレベルの中央値(図7)は脳損傷を有する小児の方が脳損傷のない小児よりも高く(10.2ng/mL対0.09ng/mL、p<0.01)、かつ非生存者の方がPICU退院時生存者と比べて高かった(5.9ng/mL対0.09ng/mL、p=0.01)。各患者から採取した全連続サンプルに由来するデータを用いたところ、GFAPの1ng/mL上昇毎の脳損傷のオッズ比(OR)は1.5であった(95%CI、1.01〜2.16;p=0.046)。異常なGFAPレベル(すなわち>95パーセンタイル)は、重度の神経学的損傷または脳死の患者4例中2例の画像診断より1〜2日前に認められた。我々の先験的定義により急性神経学的損傷を有すると分類された以下の3例の患者では、血漿GFAPレベルは正常値のままであった:頭部超音波検査で右小脳出血と診断され非神経学的な理由によりECMO期間が終了した患者1例、および小さな軸外出血を有する患者2例:生存して神経機能が良好な小さな硬膜下血腫を有する患者1例、および同じく生存して神経機能が良好なグレードI脳室内出血の患者1例。このECMO患者の初期コホートは、ECPRを受けた患者3例を含んだ:1例は生存して神経学的転帰が良好でありかつECMOの過程を通じてGFAPレベルが正常であり(中央値:0.07ng/mL、IQR:0.05〜0.09ng/mL);1例は喘息重責発作による低酸素性電気機械解離心停止に陥り、脳死に進展し、かつ血漿GFAPレベルが高く(中央値:27.2ng/mL、IQR:9.5〜44.9ng/mL)、また1例の患者は重度の脳浮腫を発症し、最終的には多臓器不全のため生命維持装置を取り外し、かつ同じくGFAPレベルが高かった(中央値:5.8ng/mL、IQR:2.8〜10.5ng/mL)。
急性神経学的損傷患者7例のうち4例は血漿GFAPが年齢マッチング対照の95パーセンタイルを上回り、またECMOの過程で診断された急性神経学的損傷のない13/15例の患者は正常なGFAPレベルを有していた。ECMOの過程では診断された急性神経学的損傷の診断はないが血漿GFAPが95パーセンタイルを上回った2例の患者は、ECMOの過程を通じて連日の経泉門超音波検査が正常な乳児であった。しかし、それぞれECMOカニューレ抜去後第2週および第6週に、1例の患者は過去の虚血事象と一致する片側単葉巣状脳軟化のあることが確認され、もう一方の患者は小さな陳旧性脳室内出血および実質内出血病巣の所見を有していた。探索的ではあるものの、本分析により、ECMO中の急性神経学的損傷について許容できる範囲の受信者動作特性(ROC)曲線下面積が得られる(0.75、95%C:0.52〜0.98)。
本実施例の結果より、GFAPは、ECMO中の急性神経学的損傷に対する有用な診断手段、およびこの高リスク群における転帰予測因子として、重大な臨床的ギャップを埋めることも可能であることが示される。
(新生児の神経学的損傷のマーカーとしてのGFAP)
低酸素性虚血性脳症(HIE)は2.5/1000正期産出生児で発生する新生児脳卒中のサブセットである。残念なことに、分娩期胎児モニタリングおよび分娩後脳画像検査では、周産期脳損傷の乳児を迅速に特定することができない。重要なことに、生後6時間以内に頭部冷却を受けた中等度から重度のHIEを有する新生児は生存率が改善すると共に神経発生的障害が低下することがある。HIEリスクの高い新生児を治療する治療法は開発されつつあるものの、リスクの高い小児において特定の脳損傷を迅速に特定するか、HIE療法の有効性を追跡するか、または新規治療法を評価するバイオマーカーは知られていない。出生の時点で実施することのできる迅速検査は、これらの検査的処置から恩恵を得、治療効果を鑑別し、かつ早期に予後情報を提供することを目的としてHIEリスクの高い乳児を特定する際に大きな臨床的恩恵となるであろう。過去12ヶ月間に新生児集中治療室に入院した、染色体が正常かつ重大な先天的奇形のない予測的103例の予備分析を実施した。低酸素性虚血性脳症(HIE)、脳室周囲白質軟化、てんかん性発作、および頭蓋出血を含む神経学的損傷を有する新生児(n=27)を、神経学的損傷のない新生児(n=76)と比較した。これらの神経学的損傷を受けた新生児および損傷のない新生児は、妊娠期間(損傷乳児33.7±5.7週、非損傷乳児33.2±4.5週、p=0.67)または出生体重(損傷乳児2264±1129g、非損傷乳児1961±966g、p=0.18)に差がなかった。以下の表4を参照されたい。
神経学的損傷を有する新生児は生後1日目のGFAPレベルが有意に高かった(損傷乳児0.17±0.19ng/mL、非損傷乳児0.09±0.18ng/mL、p=0.03)。表4および図8を参照されたい。この生後1日目のGFAPレベルの差は生後2日目まで続かず(損傷乳児0.12±0.21、非損傷乳児0.15±0.69、p=0.86)、神経学的損傷が有限であって進行中でないことを反映している可能性があり、これは臨床家にとって非常に有用な情報である。受信者動作特性(ROC)曲線(図9)を構築し、神経学的損傷を特定するための生後24時間以内のGFAPレベルの至適カットオフ値を判定した。GFAPレベル>0.08ng/mLの新生児では、神経学的損傷の発生率は66.7%であるのに対し、GFAPレベルがこのカットオフ値未満の新生児では36.0%であった。GFAPレベル>0.08ng/mLは、羊水混濁、5分後APGAR<7、または代謝アシドーシス(pH<7.0および過剰塩基<−12mM)を示す分娩時臍帯動脈ガスなどの子宮内低酸素性虚血の存在について一般的に用いられる他のマーカーよりも、新生児神経学的損傷を鑑別するROC曲線下面積が高かった。たとえば、羊水混濁のROC曲線を図9に示す。感度の高いGFAP測定法と組み合わせれば、GFAPは分娩時損傷の結果としての機能的および構造的神経学的損傷と相関させることができる。重要なことに、本実施例は分娩関連神経学的損傷の血中マーカーとしてGFAPを実証する。
(グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)は新生児神経学的損傷のバイオマーカーの役割を果たす)
GFAPはヒト星状細胞の主要な中間フィラメントであり、かつ中枢神経系に対する特異的マーカーである。患者血清中におけるその出現は、外傷性脳損傷および脳卒中後の患者の神経学的転帰を予測することが確認されている。虚血後の脳浮腫は血液脳関門の欠損を引き起こし、またGFAPは虚血プロセスにおいて星状細胞内で著明にアップレギュレートされる。本実施例の目的は、生後24時間以内に得られた血清GFAPレベルを用いて神経学的損傷を有する新生児を特定できるか判定することであった。
新生児集中治療室に入院した先天的または染色体異常のない新生児について、高感度電気化学発光測定法を用いて、分娩時臍帯静脈血および生後1日の新生児血液中のGFAPレベルを測定した。GFAPレベルが新生児神経学的損傷と相関するか判定するために、受信者動作特性(ROC)曲線を構築して生後1日目のGFAPレベルの至適カットオフポイントを判定し、頭蓋出血および低酸素性虚血性脳症を含んだ神経学的損傷の構成変数を特定した。
組み入れ基準を満たした61例の新生児のうち15例は、くも膜下出血1例、帽状腱膜下出血2例、脳室内出血6例および低酸素性虚血性脳症6例を含む神経学的損傷を有していた。神経学的損傷を有する新生児は、妊娠期間(損傷新生児33.2±6.2週、非損傷新生児33.5±3.4週)、出生体重(2326±1379g、2031±918g)または帝王切開の発生率(41.2%、54.5%)に有意な差がなかった。分娩時の臍帯血のGFAPレベルは損傷新生児0.16±0.23ng/mL、非損傷新生児0.09±0.11ng/mL、p=0.26;また生後1日目は損傷新生児0.12±0.06ng/mL、非損傷新生児0.09±0.12ng/mL、p=0.40であった。17例の患者は、GFAPレベルが、神経学的損傷の特定におけるROC曲線下面積0.81(p<0.001)を有する至適カットオフ点0.08ng/mLよりも高くなった。神経損傷は、GFLPレベルが正常である群(10.0%)よりもGFAP上昇群(68.8%)の方が有意に多かった(p=0.02)。図10を参照されたい。
分娩時または新生児期の早期における単独または他の臨床マーカーと複合した血清GFAP上昇の所見のさらなる実証は、早期治療を行う患者の適切なトリアージ、およびこれらの高リスク乳児の治療的治験への組入れのために神経学的損傷リスクの高い乳児を特定するために役立ちうる。
(ECMO中の心疾患小児患者の神経学的損傷を検出するGFAPの能力)
心肺バイパス(CPB)を受けた小児は、症例の30〜70%が神経学的損傷を経験する。McQuillen他、38 STROKE 736-41(2007);およびMahle他、106 CIRCULATION I-109-I-114(2002)を参照されたい。体外膜型酸素供給(ECMO)は、同様の支援方式を代表し、症例の10〜60%で神経学的損傷のリスクを伴う。Cengiz他、33(12)CRIT. CARE MED. 2817-24(2005);およびIbrahim他、69(1)ANN. THORAC. SURG. 186-92(2000)を参照されたい。脳特異的タンパク質であるグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)は、これらのECMO中の脆弱な患者において、神経学的損傷についての血漿バイオマーカーの役割を果たす可能性もあるという仮説が立てられる。
ECMO中の小児患者の予測的研究の一環として、危険な心疾患およびECMOの病歴を有する患者のみを本評価に含めた。年齢などの人口統計学的情報、診断名、ECMOの期間およびPICU退院時の転帰を記録した。当院で開発した電気発光測定法を用いて、ECMO過程における連続血液サンプルのGFAPを評価した。
危険な心疾患を有する小児7例を組み入れた。ECMOサポートの期間の中央値は5.2日であった(範囲:1〜12日)。CPB後にECMOを受けた2例の小児は、GFAPレベルがECMOのみを受けた他の小児と同様であった。急性神経学的損傷を経験した1例の患者は、GFAPレベルが神経学的損傷のない患者よりも100倍高く;血漿GFAPの上昇は画像による神経学的損傷の検出と同時であった。各患者のECMO過程における血漿GFAPレベルを以下の表5に示す。
略語:pt−患者、XC−遮断、Neuro−神経学的、DCM−拡張型心筋症、bivad−両心補助循環装置、min−分、ICH−頭蓋内出血、AS−大動脈弁狭窄、MS−僧帽弁狭窄、PPHN−新生児持続性肺高血圧、D−TGA−大動脈右遷移、POD−術後日数、BAS−バルーン心房中隔開口術、PA−肺動脈、TOF−ファロー四徴症、RV−右心室、TA−総動脈幹症。
血漿GFAPは、この一連の危険な心疾患を有するECMO中患者における神経学的損傷と相関すると見られる。これは、ECMO中およびCPB中の患者における神経学的損傷の検出の際に役立ちうる。
(GFAPは先天性心疾患の修復を目的とした心肺バイパス中に上昇する)
脳卒中、脳MRIの異常、および神経発達欠損として顕在化する脳損傷は、先天性心疾患(CHD)の外科的矯正後の乳児の30%から70%に発生する。Andropoulos他、139 J. THORAC. CARDIOVASC. SURG. 543-56(2010);およびMcQuillen他、38 STROKE 736-41(2007)を参照されたい。1室または2室CHDの新生児期修復の研究(n=62)では、患者の39%が術前に損傷を有し(ほとんどが脳卒中)、また35%が術後に新規病変を有すると報告した。McQuillen他、38 STROKE 736-41(2007)を参照されたい。本発明者らは、GFAPが、先天性心疾患の外科的修復を目的とした心肺バイパス中の脳損傷の診断的/予後判定的バイオマーカーの役割を果たす可能性があるか検討している。心肺バイパス血清サンプルは、20例の連続乳児症例(生後2日〜3ヶ月)より、先天性心疾患の外科的修復を目的とした心肺バイパスを受ける前、心肺バイパス中(30分おき)、および心肺バイパス後に採取した。
図11に示すように、定量可能なGFAPレベルを有する症例の数は、バイパスが進行するにつれてバイパス開始後1時間(Early Bypass)に上昇を開始し、バイパス終了時(Late Bypass)にピークに達する。バイパス前にはわずか1例のみでGFAPが定量可能レベルであったが、バイパス終了時には全20例が測定可能値を有していた。図12に示すように、GFAPのレベルは、Mid、Late、Off bypassで有意に上昇する(バイパス前およびバイパス初期のレベルと比較してそれぞれp<0.05、p<0.001およびp<0.001)。症例のうち4例における上昇度は、顕性脳卒中に見られるレベルと同等である(0.5〜2.5ng/mL)。これら4例の乳児のうち2例は術後に脳MRIを実施し、急性脳卒中を有していたことが確認された。図13も参照されたい。
このデータは、乳児における脳損傷の高感度バイオマーカーとしてのGFAPにさらなるエビデンスを提供する。さらに、身体を18℃に冷却しても血流中への有意なGFAP放出は防止されないことも証明される。HIEのために冷却した新生児のように、GFAPレベルは再加温するとピークに達し(バイパス後期)、再加温は損傷に対する脆弱性が高まる時であることが暗示される。
(体外膜型酸素供給を受けている小児の脳損傷バイオマーカーとしてのGFAP)
本試験の目的は、小児において血漿グリア線維性酸性タンパク質が体外膜型酸素供給中の脳損傷および死亡と関連しているか判定することであった。2008年4月から2009年8月までに体外膜型酸素供給を必要とした生後1日から18歳までの予測的患者を検討した。ジョンズ・ホプキンズ大学で開発した電気化学発光イムノアッセイを用いてグリア線維性酸性タンパク質を測定した。対照サンプルは、健康な小児99例(0.5〜16歳)および神経学的損傷のない新生児集中治療室乳児59例から採取した。対照においては、グリア線維性酸性タンパク質濃度の中央値は0.055ng/mL(四分位数間範囲、0〜0.092ng/mL)であり、グリア線維性酸性タンパク質の95パーセンタイルは0.436ng/mLであった。体外膜型酸素供給中の患者において、カニューレ留置より6、12時間後および24時間毎に血漿グリア線維性酸性タンパク質を測定した。体外膜型酸素供給を受けた22例の小児を組み入れた。年齢の中央値は生後7日であり(四分位間数範囲、生後2日から9歳)、また体外膜型酸素供給の主な適応症は:心不全、22例中6例(27.3%);呼吸不全、22例中12例(54.5%);体外循環式心肺蘇生22例中3例(13.6%);および敗血症、22例中1例(4.6%)であった。22例中7例(32%)の患者は急性神経学的損傷(頭蓋内出血、脳死、または画像によって診断される脳浮腫)を発症した。22例中15例(68%)は退院まで生存した。体外膜型酸素供給群では、ピークグリア線維性酸性タンパク質レベルは脳損傷を有する小児の方が脳損傷のない小児よりも高く(中央値5.9ng/mL対0.09ng/mL、p<0.04)、かつ非生存者の方が退院時生存者よりも高かった(5.9ng/mL対0.09ng/mL、p=0.01)。グリア線維性酸性タンパク質>0.436ng/mLの正常値に対する脳損傷オッズ比は11.5であり(95%信頼区間、1.3〜98.3)、かつ死亡オッズ比は13.6であった(95%信頼区間、1.7〜108.5)。
体外膜型酸素供給中の高いグリア線維性酸性タンパク質は、急性脳損傷および死亡と有意に関連する。脳損傷バイオマーカーは、転帰を改善しかつ新規治療法の基準とすることを目的とした体外膜型酸素供給中の患者の転帰予測および神経学的モニタリングに有用となりうる。
(材料と方法)
(試験デザイン)
本研究は、2008年4月から2009年8月までに大学病院小児科センターである単独の三次診療施設の26床小児集中治療室でECMOを受けた小児を対象とした予測的観察的コホート研究であった。何らかの適応症によりECMOを必要とした18歳未満の患者が本研究の対象であった。このコホートは、この集団における脳損傷バイオマーカーを検討することを副次的な目的とした、ECMO中の神経学的損傷の凝血関連リスク因子の研究のために開始された。除外基準は、ヘパリン起因性血小板減少症の病歴およびECMO中の抗凝血を目的とした直接トロンビン阻害薬の使用歴であった。患者が安定した後のECMOカニューレ留置より6時間以内に、両親または法律上の保護者が小児集中治療室にいる場合にのみ同意を申し入れた。電話で同意を取得することはなかった。組み入れた患者についてそれぞれ人口統計学的データ、臨床データ、臨床検査データ、画像検査データ、および生存データを収集した。ECMO回路は:シリコンレザバー付きカスタムパック1/4インチまたは3/8インチフレキシブル塩化ビニルチューブ(メドトロニック、ミネソタ州ミネアポリス)、ブラダーボックス(ジョンズ・ホプキンズ病院、メリーランド州ボルチモア)、0.8mから4.5mの膜式酸素供給装置(メドトロニック)、熱交換器(メドトロニック)、およびローラーポンプ(Sorin Cardiovascular USA、コロラド州アルバダ)より構成された。本研究は、ジョンズ・ホプキンズ大学治験審査委員会により承認された。
(バイオマーカーのサンプリングおよび分析)
静脈血サンプル(クエン酸ナトリウム3.2%に5mL)をEMCO開始後6、12および24時間、さらにその後EMCOカテーテル抜去まで連日採取した。1時間以内に遠心分離した後、血小板量の低い血漿を−80℃で保存した。ジョンズ・ホプキンズ大学でメソスケールディスカバリープラットフォーム(メソスケールディスカバリー、メリーランド州ゲーサーズバーグ)上で開発し、かつPetzold他、287 J. IMMUNOL. METHODS 169-77(2004)の測定法に基づく電気化学発光サンドイッチイムノアッセイを用いたGFAP測定には、未希釈血漿サンプル50μLを2回ずつ用いた。捕捉抗体としてモノクローナル抗GFAPブレンドSMI−26(コ−バンス、ニュージャージー州プリンストン)各ウェル100ngを、メーカーによって、または実験室でリン酸緩衝化生理食塩水を用いて1晩インキュベートしてコーティングした標準的な結合プレート(メソスケールディスカバリー)において用いた。スルフォダグ(メソスケールディスカバリー)と直接コンジュゲートしたポリクローナル抗GFAP(ダコ、カリフォルニア州カーピンテリア)を、リン酸緩衝化生理食塩水中に1μg/Lで検出のために用いた。プレートはSector Imager 2400(メソスケールディスカバリー)で読み取った。標準曲線は、1%ウシ血清アルブミン溶液(SeraCare Life Sciences、マサチューセッツ州ミルフォード)中の精製GFAP(カルビオケム、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を用いて構築した。至適抗体濃度、プレートの種類、およびブロッキング材料を決定する実験の後、最終的なGFAP値の測定法は線形定量範囲0.040〜40.0ng/mLの標準曲線を有した。本GFAP測定法は、2SDがブランクウェルのバックグラウンドを上回ると定義される検出下限値が0.011ng/mLであった(実験回数n=19)。数値<0.040ng/mLはゼロとして報告した。0.01ng/mLにおける信号雑音比は1.17であった(実験回数n=19)。算出濃度±既知の濃度の20%となる最小希釈度と定義される定量下限値は0.040ng/mLであった(実験回数n=3)。日間再現性は10ng/mLにおいて2.4%であり、かつ0.156ng/mLにおいては3.4%であった(実験回数n=21)。GFAPを10ng/mLで添加した血漿は、ウシ血清アルブミンにおいて生成した標準曲線と比較して49.8%±22.9%の回収率を示す。GFAP測定法の実証は、廃棄された正常および陽性対照診断検体を用いて実施した。このGFAP測定法実証試験は、ジョンズ・ホプキンズ病院治験審査会で同意の放棄とともに別個の申請で承認された。
(転帰指標)
主要独立変数は、小児の正常値の95パーセンタイルを上回る血漿GFAPの上昇であった。主要転帰は、患者がECMOサポートを受ける間に、小児神経科医が脳画像検査および/または神経学的検査によって診断する、脳死と一致する頭蓋内出血、脳梗塞または脳浮腫と定義される、ECMO中の急性神経学的損傷の発症であった。新生児および泉門が閉鎖していない乳児の頭部超音波検査を毎日実施するのは院内プロトコルであり;より年齢の高い小児は脳コンピュータ断層撮影または磁気共鳴画像検査を担当医の裁量で撮影した。全ての画像検査は、小児放射線科医が通常の診療の一環として審査した。副次転帰は神経学的転帰および退院時までの生存であった。神経学的転帰は、小児脳機能カテゴリー(PCPC)を用いて測定した。Fiser他、28 CRIT. CARE MED. 2616-20(2000);およびFiser他、121 J. PEDIATR. 68-74(1992)を参照されたい。PCPCは、小児集中治療における認知能力の変化を評価することを目的としてグラスゴー転帰スケールから開発された6点スケールである。PCPCの6カテゴリーは、1)正常、年齢に対して適切な神経発達機能;2)軽度の脳障害、3)中等度の脳障害;4)重度の脳障害;5)昏睡または植物状態、および6)脳死である。Fiser他、28 CRIT. CARE MED. 2616-20(2000);およびFiser他、121 J. PEDIATR. 68-74(1992)を参照されたい。熟練した小児クリティカルケア専門医が、入院時および退院時の患者の病状のチャートを審査することより、遡及的にPCPCを当てはめた。良好な神経学的転帰は、先験的に、退院時のPCPCが1または2であるか、または入院時のPCPCから変化しないと定義した。
(統計解析)
探索的記述データ解析を実施して患者特性およびECMO過程の特性を検討し、被験者におけるGFAP値の分布を記述し、かつGFAPレベルが95パーセンタイルを上回る被験者の割合を判定した。クラスカル・ワリス検定を用いて正常対照のGFAP濃度を年齢カテゴリー間で比較した。患者は各転帰で2つのカテゴリー:急性神経学的損傷を有する者と損傷のない者、退院時の神経学的転帰が良好な者と不良な者、および退院時生存者と非生存者に分類した。マン・ホイットニーU検定を用いて、これらの群間でピークGFAPの中央値を比較した。フィッシャーの正確検定を用いて、群間でピークGFAPの95パーセンタイルを上回る症例および下回る症例の百分率を比較した。患者別のクラスター化によるロジスティック回帰を用い、全連続GFAPデータポイントを用いて脳損傷および死亡のオッズを概算した。クラスター化分析のために、被験者は画像検査による脳損傷まで急性神経学的損傷がないか、または初回の神経学的検査が脳死と一致するかでコード化した。その後の所見は、急性神経学的損傷を有するとしてコード化した。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を提供する。p値0.05は有意と見なした。統計分析はSTATA10.1(StataCorp、テキサス州カレッジステーション)を用いて実施した。
(結果)
(患者特性)
条件を満たす患者46例のうち22例を組み入れた;18例の患者の両親は小児集中治療室にいなかったか、または6時間の同意取得期間内に同意について完全に話し合うことが不可能であり、5例の患者は同意を辞退し、1例の患者は試験に利用できるサンプルがなかった。評価した22例の患者の人口統計学的および臨床的特性を図14に示す。
個々の患者の特性および転帰を図15に示す。22例中7例(31.8%)は、先験的定義に基づくECMO中の急性神経学的損傷を有した。初期および退院時PCPCを用いたところ、患者22例中14例(63.6%)は神経学的転帰が良好であり、かつ患者22例中8例(36.4%)は神経学的転帰が不良であり;1例はPCPC>2であり、7例は死亡した。死因は脳死(1例)、頭蓋内大出血(2例)、および不可逆的多臓器不全に際し医学的に無益であることから機械的サポートを中止(4例)であった。
ECMO期間の中央値は12日であった(四分位数間範囲[IQR]:5〜17日)。患者別のGFAP測定値の中央値は4.5であった(範囲1〜16)。患者17例は3回またはそれ以上の測定値を有し、3例は2回の測定値、および2例は1回のみの測定値を有していた。
(GFAPの結果:対照)
既知の神経学的損傷のない正常小児対照において、GFAPレベルは中央値が0.055ng/mL(IQR、0〜0.092ng/mL)であった。GFAPレベルは年齢カテゴリーにわたって同様であった(新生児:中央値0.041ng/mL[IQR,0〜0.096ng/mL]、生後6ヶ月から4歳:中央値0.046ng/mL[IQR、0〜0.117ng/mL]、5〜16歳:中央値0.057ng/mL[IQR、0〜0.088ng/mL]、p=0.7)。小児における正常値の95パーセンタイルカットオフ値(血漿GFAP≦0.436ng/mL)は、乳児および小児158例のサンプル:既知の遺伝的障害または頭蓋内病変のない新生児集中治療室内の生後<4日の新生児59例、および健康小児検診のためにジョンズ・ホプキンズ病院小児科外来を受診した生後6ヶ月から16歳の健康小児99例を用いて決定した。当該測定法は、脳腫瘍切除(n=13)、脳生検(n=3)、および脳卒中の患者(n=12)における神経学的損傷の検出についてさらに実証した。陽性対照サンプル中のGFAPレベルは、全般的に正常対照よりも1から55倍高かった。
(GFAPの結果:ECMO患者)
EMCO開始より12時間以内の初期GFAPレベルの中央値は0.07ng/mL(IQR、0〜0.155ng/ml)であった。カニューレ留置より24時間の間にGFAP濃度が異常であった患者が22例中3例あり;2例は心停止が持続して右頸部血管の静動脈カニューレ留置によるECPRを受けた患者であり、かつ1例はダブルルーメン右頸静脈カニューレ留置により静静脈ECMOに置かれた既知の神経学的損傷のない患者であった。22例のうち他の19例は、カニューレ留置より24時間のGFAPレベルが低かった。サンプルが3件またはそれ以上である小児のECMO最終日のGFAPレベルの中央値は0.07ng/mLであった(IQR、0.053〜0.795ng/mL;n=17)。新生児と小児および生後>30日の乳児のピークGFAP濃度を比較したところ同様であった(それぞれ0.155ng/mLと0.162ng/mL、p=0.48)。
ピークGFAPレベルの中央値は、ECMOの過程で急性神経学的損傷と診断された小児の方が損傷のない小児よりも(5.9対0.09ng/mL、p=0.04)(図16)、神経学的転帰が不良の小児は良好な小児に対して(3.6ng/mL対0.09ng/mL、p=0.01)、さらに非生存者は退院時生存者と比較して(5.9ng/mL対0.09ng/mL、p=0.04)有意に高かった。急性神経学的損傷を有する患者および損傷のない患者の連続GFAP濃度を図17に示す。
正常対照の95パーセンタイルを上回るピーク血漿GFAP濃度(すなわち>0.436ng/mL)は、22例中6例(27.3%)に認められた。急性神経学的損傷を有する患者の割合は、ピークGFAP>0.436ng/mLの患者の方がピークGFAP≦0.436ng/mLの患者よりも高かった(6例中4例[66.7%]対16例中3例[18.8%];p=0.054)。神経学的予後不良は、ピークGFAP>0.436ng/mLの患者の方が正常GFAP値を有する患者よりも頻繁に見られた(6例中5例[83.3%]対16例中3例[18.8%];p=0.01)。同様に、院内死亡率はピークGFAP>0.436ng/mLの患者の方が正常GFAP値を有する患者よりも高かった(6例中4例[66.7%]対16例中3例[18.8%];p=0.054)。
患者毎の反復測定値を説明するため、患者別にクラスター化したロジスティック回帰を用いて126連続GFAPレベル全てと転帰との関連を評価した。GFAPが上昇した場合(>0.436ng/mL)の急性神経学的損傷のオッズは11.5であった(95%CL、1.3〜98.3)。同様に統計学的に有意な結果は、神経学的予後不良(OR、25.7;95%CI、2.2〜298.5)および院内死亡率(OR、13.6;95%CI、1.7〜108.5)でも認められた。
新生児状態(≦30日)について調節すると、血漿GFAPが異常上昇した患者における急性神経学的損傷のオッズは、正常GFAP患者と比較して有意に高いままであった(調節済みOR、15.7;95%CI、1.8〜139.9)。ECMO期間中に頭部超音波検査を連日実施した新生児および乳児17例のサブグループにおいては、急性神経学的損傷の非調節ORは22.3であった(95%CI、2.0〜245.9)。
探索的ではあるものの、この分析により急性神経学的損傷(受信者動作特性曲線下面積、0.72;95%CI、0.50〜0.94)、神経学的転帰不良(受信者動作特性曲線下面積、0.78;95%CI、0.58〜0.97)、および死亡(受信者動作特性曲線下面積、0.72;95%CI、0.50〜0.94)について許容できる範囲の受信者動作特性曲線下面積が得られる。
GFAPの上昇は、EMCO中の脳損傷の画像診断と時間的に相関した。患者4例中2例において、異常なGFAPレベル(>0.436ng/mL)が、重度の急性神経学的損傷の画像診断または脳死より1〜2日前に認められた。小さな硬膜下血腫がありかつ退院時の神経学的機能が良好な(PCPC=1)患者1例、グレードI脳室内出血がありかつ退院時の神経学的機能が良好な患者1例(PCPC=1)、および多臓器不全を発症して最終的に死亡した小さな右小脳出血の患者1例を含む、ECMO中に頭部超音波検査で急性神経学的損傷と診断された3例の患者においては、GFAPレベルは正常のままであった(図17)。前者2例の患者では病変が小さくかつ位置が実質外であったためにGFAPの上昇が認められなかったと推測されるが、3例目の患者における小脳実質内出血に対するGFAP「反応」の不在には良い説明が存在しない。注意すべき点は、この後者の患者の死因は神経学的損傷とは関係せず、むしろ多臓器不全および医学的に無益であることによる生命維持の中止と関係していたことであった。
ECMO中には急性神経学的損傷の診断がなかったが、それぞれECMO第1日目および10日目にピークGFAPが95パーセンタイルを上回った患者が2例あった(図17)。これらはECMOの過程を通じて連日頭部超音波検査が正常である新生児であった。しかし、それぞれECMOカニューレ抜去後第6週および第2週に、1例の患者は小さな陳旧性脳室内出血および実質内出血病巣があることが確認され、またもう一方は脳磁気共鳴画像検査で過去の虚血事象と一致する片側単葉巣状脳軟化の所見があった。
このECMO患者の初期コホートは、ECPRを受けた患者3例を含んだ;1例は良好な神経学的転帰で生存しかつECMOの過程を通じてGFAPレベルが正常であり(GFAP中央値:0.07ng/mL、IQR:0.05〜0.09ng/mL);2例の患者は転帰が不良で:1例は喘息重責発作の結果として低酸素性電気機械解離心停止が持続し、かつ脳死に進展し(GFAP中央値:27.2ng/mL、IQR:9.5〜44.9ng/mL)、また1例の患者は重度の脳浮腫を発症し、ECMOカニューレは問題なく抜去したが、最終的には多臓器不全および医学的無益のため生命維持を取り外した(GFAP中央値:5.8ng/mL、IQR:2.8〜10.5ng/mL)。
(考察)
ECMOは、頭蓋内出血、脳梗塞および脳死を含む脳損傷のリスクの高い手技である。Cengiz他33 CRIT. CARE MED. 2817-24(2005);Conrad他、51 ASAIO J. 4-10(2004);およびCilley他、78 PEDIATRICS 699-704(1986)。ECMO中の患者に対するそのような損傷の適時評価のための手段を欠くことが多い。急性の神経学的発作は危険な病状の患者においては大きな懸念であるが、多くの共同作業が進行中ではあるものの通常の臨床診療で利用できる脳損傷バイオマーカーはまだない。Kaneko他、80 RESUSCITATION 790-94(2009);およびLaskowitz et al., 40 STROKE 77-85(2009)を参照されたい。本研究で用いられる血漿GFAPバイオマーカーは、脳に対する高い特異性、血液が小体積であることによるサンプル採取の容易さ、高速度処理、高精度定量、低コスト、および測定法に必要とされる技術的専門性が最小限であることなど、多くの利点を有する。したがって、連続GFAP測定は神経学的状態および潜在的な神経保護的介入に対する反応をモニタリングし、急性脳損傷の迅速な診断を補助し、さらに転帰を予測するために用いることも可能である。
本研究は、GFAPの血漿濃度がECMO中の小児の脳損傷と関連することを証明する。連続GFAP濃度は神経学的発作の不在下で経時的に安定に見え、かつEMCO中に脳損傷と診断された患者では有意に上昇した。大多数の患者(22例中19例)はECMOカニューレ留置後24時間のGPAPレベルが正常であり、右頸静脈±右頸動脈へのカニューレ留置は反応性神経膠症およびGFAP上昇につながる損傷を伴わないことを示唆した。4例の患者で脳損傷の診断前にGFAP濃度が上昇し;2例はECMO中に急性神経学的損傷と診断され、また2例はEMCOカニューレ抜去後に過去の脳梗塞または出血の画像エビデンスがあった。これは、経泉門超音波検査によって検出することができないために臨床家に誤って異常がないという情報を提供する、実質内病変を有する乳児にとっては特に重要となりうる。
急性神経学的損傷は、他の適応症のためECMOを受ける患者と比較して、ECPRを受ける患者でより頻繁に認められる。Barrett他、10 PEDIATR. CRIT. CARE MED. 445-51(2009);およびConrad他、51 ASAIO J. 4-10(2004)を参照されたい。最近の研究では、ECPRを受けて退院時まで生存した小児患者は73%であり、生存者の75〜78%は神経学的転帰が良好であると報告される。Barrett他、10 PEDIATR. CRIT. CARE MED. 445-51(2009);およびProdhan他、80 RESUSCITATION 1124-29(2009)を参照されたい。急性神経学的損傷はECPRを受ける小児患者の22%に発生し;これらのうち89%は退院前に死亡する。Barrett他、10 PEDIATR. CRIT. CARE MED. 445-51(2009)。本研究では、ECPRを受け、生存して神経学的転帰が良好な1例の患者で正常連続GFAPレベルが認められた。対照的に、ECPRを受けた後に重度の低酸素性脳損傷を発症した2例の小児は、血漿GFAPレベルが正常小児の95パーセンタイルより20〜100倍高かった。本発明者らが知る限りでは、これはECPRの潜在的予測的バイオマーカーとしてのGFAPの初の報告であり;心停止後GFAPの先行研究2件はECPRを受けた患者を除外していた。Hayashida他、12(2)NEUROCRIT. CARE 252-57(2010);およびKaneko他80 RESUSCITATION 790-94(2009)を参照されたい。しかし、これらのデータは非常に予備的であり、現時点ではこれ以上の推測はできない。
(全身冷却で治療された新生児低酸素性虚血性脳症のバイオマーカーとしてのGFAP)
(被験者)
これは、治験審査委員会の承認を受け、単独の三次診療大学病院の新生児集中治療室(NICU)に入院した新生児を検討した予測的コホート研究である。被験者は妊娠第36〜41週に出生した生存出生、非奇形、無症候乳児であった。本研究はジョンズ・ホプキンズ病院で出生した新生児、さらにはメリーランド州内で出生して生後6時間以内にNICUに搬送された新生児を含んだ。
記録を審査して、母親および新生児の退院時点で入手可能であった臨床的情報を抽出した。子癇前症はタンパク尿および新規発症高血圧と定義した。分娩前の母親に対する硫酸マグネシウム静脈内投与は新生児脳損傷のリスク低下と関連付けられているので、この治療法を記録した。Rouse他、359 N. ENGL. J. MED. 895-905(2008)。子宮内胎児発育遅延は、推定胎児体重が妊娠期間についての10パーセンタイルを下回ると定義した。Hadlock他、181 RADIOLOGY 129-33(1991)。胎児心拍数モニタリング異常は、手術的経膣分娩または帝王切開を促すほど重大な心拍数モニタリングであった。敗血症は、血液および/または脳脊髄液培養が陽性の新生児についてのみ存在すると見なした。
全身冷却の基準を満たす中等度から重度の脳症を有する新生児を、NICUに入院し、1週間以内に妊娠期間で1:1のマッチングを行った神経学的損傷のない新生児と比較した。Shankaran他、353 N. ENGL. J. MED. 1574-84(2005);およびSarnat他、33 ARCH. NERUOL. 696-705(1976)。条件を満たした妊娠36週またはそれ以上の新生児は、生後6時間以内に伝導水冷低体温システムおよび低体温ブランケットを用いて冷却し、直腸温度33.5℃で72時間維持する。
全身冷却で治療されたHIE新生児は、全てNICUから退院する前に常用的に標準的新生児脳MRI画像診断を受ける。本試験については、これらの画像はGFAP結果について盲検化されている熟練した小児神経科医(T.A.G.M.H.)によって審査された。
脳MRIが異常な新生児をその脳MRIが正常な新生児と比較した。低酸素性虚血性損傷と関連する巣状またはびまん性病変について画像を審査した。MRI脳異常は、脳腫脹;皮質輝度上昇;巣状または全脳的灰白質−白質識別の消失;基底核および視床における信号強度異常;内包後脚の正常信号強度の消失;急性および亜急性実質、脳室内または脳外出血;および動脈領域内または傍矢状または分水界分布する急性進展性巣状梗塞と定義した。Cowan他、361 LANCET 736-42(2003)を参照されたい。
(検体)
GFAP測定用に採取した検体は臍帯血および新生児血清を含んだ。臍帯血については、分娩時に常用的に採取する臍帯静脈血サンプルより少量を分取した。新生児サンプルについては、臨床適応の検査が終了した後に連日の臨床検査から残りの血清分画を採取した。新生児血清検体は、NICU入院時(生後6時間以内)、およびその後非神経学的損傷対照は生後連日4日間、また全身冷却を受けたHIE新生児は連日7日間採取した。
(GFAP測定)
メソスケールプラットフォーム(メソスケールディスカバリー、メリーランド州ゲッサーズバーグ)を用いて、GFAP用に電気化学発光サンドイッチイムノアッセイを開発した。Pelinka他、57 J. TRAUMA 1006-12(2004)を参照されたい。これは、3種類の捕捉用マウスモノクローナル抗体および検出用のウサギポリクローナル抗体を用いるPetzold他の方法の後に開発された。Bembea他、11 PEDIATR. CRIT. CARE MED. 723-30(2010);およびPetzold他、287 J. IMMUNOL. METHODS 169-77(2004)を参照されたい。血清サンプルは2回測定し、平均濃度を分析に用いた。定量下限値は0.04ng/mLであり;これ以下の数値は0と報告した。
(統計解析)
カテゴリー変数にはχ検定またはフィッシャーの正確検定、および連続変数には対応のないスチューデントのt−検定を用いて比較した。ノンパラメトリックデータのためのウィルコクソン順位和検定を用いてGFAPレベルを比較した。有意性はp<0.05に設定した。線形回帰を用いて、非神経学的損傷対照集団のGFAPレベルに対する妊娠期間の影響を判定した。
受信者動作特性(ROC)曲線を構築して、NICU入院時の血清GFAPレベルの至適カットオフ値(最大曲線下面積により判定)を判定して、全身冷却に適したHIEを特定すると共にMRI上に脳の異常がある新生児を特定した。ROC曲線下面積を用いて、入院時GFAPがMRIスキャン上に異常のある新生児を特定する能力を、現在これらの乳児の特定に使用されている他の検査:胎児心拍数モニタリング異常、羊水混濁、5分後Apgar<7、および臍帯動脈pH<7.0または12mMを上回る塩基欠乏と比較した。統計分析はStata v10(StataCorp、テキサス州カレッジステーション)を用いて実施した。
(結果)
(被験集団および臨床的特性)
2009年4月28日から2010年7月11日までの期間中、NICUに652例の入院があり、このうち連続23例の新生児が全身冷却に適した中等度/重度の臨床的HIEと診断された。これら23例の新生児は、生後1週間以内に、非神経学的適応症でNICUに入院した新生児と妊娠期間により1:1でマッチングした。冷却を受けた新生児の平均(SD)妊娠期間は38.7(1.5)週であり、対照は39(1.4)週であった。
母親と新生児の特性を図18に要約する。母親の人口統計学および帝王切開発生率に違いはなかった。対照の入院の理由として最も可能性の高いのは呼吸困難および敗血症を除外することであった。被験者は出生時体重が291g軽く、これは統計的に有意であるが臨床的には有意でなく、かつ胎盤剥離、代謝性アシドーシス、5分後Apgar<7を有する可能性が有意に高く、かつNICU入院期間が長かった。
(HIEバイオマーカーとしてのGFAP)
血清量が不足、その日に採血を実施していない、または外部の病院で分娩したため臍帯血を採取していないために、対照については所望の138測定時のうち54測定時(39.1%)、冷却を受けた被験者については207測定時中50測定時(24.2%)でGFAPレベルを測定することができなかった。全身冷却で治療された臨床的に中等度から重度のHIE新生児を対照と比較したところ、生後6時間以内のNICU入院時および生後1,3,および4日の新生児の血清中の平均GFAPレベルは、それぞれp=0.032、p=0.013、p=0.013、およびp=0.003で有意に上昇した。図19を参照されたい。
血清GFAPの持続性はHIE群の方がはるかに大きく、生後1から4日の血清中GFAPが定量可能であった新生児は対照23例中6例(26%)およびHIE新生児23例中17例(74%)であった(p=0.001)。対照新生児のNICU入院時のGFAPレベルは妊娠期間によって有意に変化しなかった(r=0.22、p=0.22)。対照の分娩時から生後4日までのGFAP値を合わせると、中央値は0ng/mLでありかつ95パーセンタイルは0.20ng/mLであることが示された。対照ではいずれもGFAP値が95パーセンタイルを上回らなかったのに対し、冷却を受けた新生児は23例中10例(43.4%)が上回った(p<0.001)。冷却を受けた被験者23例中4例(17.4%)は72時間の冷却療法を完了した翌日にGFAPが突然上昇した。図19を参照されたい。
全身冷却による治療を要する中等度から重度のHIEについてのスクリーニング検査としてNICU入院時のGFAPレベルを検査するために、GFAPレベルの様々な閾値についてのROC曲線を生成した。0.08ng/mLまたはそれ以上のNICU入院時GFAPは、群間識別するための至適カットオフ値であり、ROC曲線下面積0.709を生成した。
(GFAPと、MRI脳損傷エビデンスおよび退院時の機能的転帰の相関)
全身冷却を受けた23例の新生児は、いずれもそのNICU入院中に臨床的脳MRI検査を受けた。分娩後にこれらのMRIスキャンを実施した時期に差はなく、異常MRI群では平均(SD)が生後7.4(3.7)日であり、また正常MRI群では生後7.4(3.9)日であった(p=0.49)。HIEを示唆する所見は23例中8例の脳MRIスキャンに見られた(35%)。異常脳MRI新生児は胎盤剥離後に娩出された可能性の方が有意に高いものの、HIEの臨床マーカーはいずれもMRIの異常と関連しなかった。図20を参照されたい。
血清GFAPレベルは、脳MRIスキャンが異常であった全身冷却で治療された新生児において一定して高かった。図21を参照されたい。これらの比較は、生後1〜2日および4〜7日で統計的に有意であり、それぞれp=0.02、p=0.007、p=0.001、p=0.001およびp=0.007であった。MRI異常のあった8例の新生児のうち4例では(50%)、冷却終了の翌日にGFAPレベルの有意な上昇が認められた。
ROC分析を用いると、全ての全身冷却を受けた新生児のうち脳MRIスキャンに異常のある新生児を特定するための至適カットオフ値は、0.15ng/mLまたはそれ以上のNICU入院時GFAPである(ROC曲線下面積0.718)。これは、胎児心拍数モニタリング異常(ROC曲線下面積0.613)、羊水混濁(0.508)、5分後Apgar<7(0.500)、および臍帯動脈pH<7.0または12mMを上回る塩基欠乏(0.500)などの、分娩時HIEを特定するために現在用いられている指標よりも優れていた。
GFAPレベルを機能的転帰と関連付けるために、経口摂取までの時間を用いた。図22を参照されたい。全身冷却を受けたMRIが正常な新生児15例については、完全経口摂取までの時間は平均(SD)で9.1(5.4)日であった。MRIスキャンが異常であった新生児8例については、1例が生後7日で死亡し、5例が平均(SD)で生後114(81)日に胃管を必要とし、2例は平均(SD)生後17(9)日で完全経口摂取した。NICU入院時の血清GFAPレベルは、死亡した乳児は0.61ng/mL、胃管補助を受けた状態で退院した新生児は平均(SD)で0.26(0.10)ng/mL(いずれも非神経学的損傷新生児のGFAPレベルの95パーセンタイルを上回った)、さらに完全経口摂食状態で退院した新生児は平均(SD)で0.04(0.06)ng/mLであった(p=0.03)。
中等度から重度のHIEにより冷却治療された全ての乳児では、NICU入院時の血清GFAPレベルの異常脳MRIの予測におけるROC曲線下面積は0.73であり、敏感度は50.0%、特異度は84.6%、陽性的中度は60.0%、さらに陰性的中度は78.6であった。
(考察)
本実施例は、中等度から重度の臨床的HIE、脳損傷のMRIエビデンスの発生、および機能的転帰と相関する血清バイオマーカーとしての脳特異性タンパク質GFAPの初の使用を記載する。HIEは1000正期産出生児につき2.5例発生し、脳性麻痺症例全体のうち14.5%は分娩時低酸素性虚血と関連するものの、これらの損傷の時期、持続期間および転帰については十分に定義されていない。Graham他、199 AM. J. OBSTET. GYNECOL. 587-95(2008)を参照されたい。
バイオマーカーは疾患損傷、進展および転帰の代用の役割を果たす。HIEを厳密に定義した新生児に関する公表文献(36週間以上)110件の体系的総説の著者は、バイオマーカーがない場合は治療法の時期、期間および有効性は比較的場当たり的に確認されると結論づけた。Ramaswamy他、40 PEDIATR. NEUROL. 215-26(2009);および米国産科婦人科学会、米国小児科学会、第8章を参照されたい。基準は、脳性麻痺を引き起こすのに十分な急性分娩時低酸素事象を定義することを必要とした。『新生児脳症と脳性麻痺』Washington, DC: ACOG; 2003:73-80に記載。彼らは、予測的研究では介入によって利益を受ける新生児を最もよく特定するのはどのバイオマーカーであるか判定することに重点を置くべきであるとも結論づけた。
1件の研究では脳脊髄液GFAPレベルを測定し、さらにそれらが新生児死亡のみを予測するものの、生存者の異常転帰は予測しないことを確認したが;しかしながら血中GFAPレベルは探索しなかった。Blennow他、90 ACTA. PAEDIATR. 1171-75(2001)。本研究においては、GFAPの新規高感度測定法を用いて、GFAPがHIEの初期バイオマーカーであることを確認した。本研究の対照群は正常新生児を含まなかったが、一般的なNICU非未熟児疾患新生児集団を代表しており;したがって、HIEの診断バイオマーカーとしてのGFAPに関する結論は保守的であり、かつ他の器官系の不全と潜在的に交絡する状況での新生児脳損傷に対するGFAPの特異度を強調しうる。
HIEを検出するために数種類の血液、脳脊髄液および尿中の生後バイオマーカーが検討されているが、大半は限界がある。尿中乳酸/クレアチニン比は専用の核磁気共鳴技術を必要とし(Oh他、153 J. PEDIATR. 375-8(2008))、脳脊髄液は連続サンプル採取になじまず(Ramaswamy他、40 PEDIATR. NEUROL. 215-26(2009);およびBlennow他、90 ACTA. PAEDIATR. 1171-75(2001))、また他のタンパク質バイオマーカー(例:ニューロン特異性エノラーゼおよびS100B)は組織特異性に限界がある。Ramaswamy他、40 PEDIATR. NEUROL. 215-26(2009)を参照されたい。
低酸素性虚血性脳損傷直後の軽度の低体温は、脳のエネルギー代謝を保持し、細胞毒性浮腫を低下させ、かつ組織学的および機能的転帰を改善する。Thoresen他、5 SEMIN. NEONATOL. 61-73(2000)。選択的頭部冷却または全身冷却で治療された正期産HIE乳児の研究では(Inder他、145 J. PEDIATR. 835-7(2004))、いずれの様式も異常転帰を予測する基底核および視床病変の低下と関連することが確認され、また選択的な頭部冷却により重度の皮質病変の減少が見られた。Rutherford他、116 PEDIATRICS 1001-6(2005)を参照されたい。
臨床的HIE乳児における冷却は死亡および神経学的障害の減少と関連しているものの(Edwards他、340 BMJ c363(2010))、提供している間に有効性をモニタリングする手段がないので、画一的な治療法として使用される。低体温療法は、小児における重度の外傷性脳損傷後に血清GFAPレベルを変化させないことが示されている。Fraser他、12 PEDIATR. CRIT. CARE MED. 319-24(2011)を参照されたい。
上述のように、冷却中の血清GFAPの上昇はMRIによる脳損傷のエビデンスと有意に関連する。冷却中のGFAPレベルをモニタリングできることにより、エリスロポエチン(Kim他、23 J. KOREAN MED. SCI. 484-91(2008))、抗てんかん薬(Glass他、9 CURR. TREAT. OPTIONS NEUROL. 414-23(2007)、およびキセノンなどの他の治療法を加えた冷却による治療法の強化に向けた新生児のトリアージが可能となる。Hobbs他、39 STROKE 1307-13(2008)を参照されたい。本研究のMRI上で脳損傷のある新生児の50%は、72時間冷却プロトコル完了後にGFAPレベルの著明な上昇があった。またこれらの新生児のみで冷却中の連日測定GFAPレベルが上昇しているため、このパターンによって異常MRIを100%予測できた。冷却後のこの上昇は、冷却によって抑制されていた脳損傷の持続によって発生した可能性、または再加温損傷のエビデンスである可能性がある。
72時間冷却期間終了時に見られるGFAPレベルの劇的な上昇は、至適期間はどれだけであるかという点で疑問も投げかける。この点では、治療成功の代用的マーカーはなく、また新規治療法が開発されると共にこれを比較する基準はない。GFAPのような血中脳タンパク質バイオマーカーがこのギャップを埋める可能性がある。
画像検査の使用によって脳損傷における診断の正確度は大きく改善しているものの、これらの検査は低酸素性虚血性損傷後の初期数時間に限定されており、かつ危険な病状の新生児に実施することは困難である。結果として、脳損傷の迅速血液検査がきわめて貴重となる状況がある。
MRIはHIE新生児の評価に用いられる最も一般的な臨床的検査法であり、転帰と関連している。Barnett他、33 NEUROPEDIATRICS 242-8(2002)。本実施例より、NIUC入院時および冷却中のGFAPレベルは異常MRIを予測することを証明する。
要約すると、GFAPは冷却療法を受けている臨床的HIE新生児を特定およびモニタリングするバイオマーカーの役割を果たしうる。HIEによる脳の異常を有する新生児を特定するその予測能力は、現在使用されている臨床的指標よりも優れている。本研究の結果によれば、GFAPは、分娩時の脳損傷をより特異的にかつ高感度で診断し、補助療法を加えた低体温療法によるHIE治療プロトコルに向けての乳児のトリアージを促進し、進展性HIEの治療法の基準となる中間的転帰の役割を果たし、かつこれらの高リスク小児の両親に予後情報を与えるために使用することも可能である。
(鎌状赤血球症小児の非症候性脳損傷の血漿バイオマーカーとしてのトロンボスポンジン−1およびL−セレクチンのプロテオミクス同定)
脳損傷のバイオマーカーには、経頭蓋ドップラーに例示されるように、鎌状赤血球症の診療を変換させる能力がある。鎌状赤血球症(SCD)患者から採取した血漿のバイアスのないプロテオミクススクリーンによって、無症候性脳損傷のバイオマーカーが得られるであろうという仮説が立てられた。12種類の最も含有量の高いタンパク質を血漿から除去処理した後、サイレント梗塞輸血(SIT)治験の一環として採取した血漿の質量分析スクリーンにより、トロンボスポンジン−1(TSP−1)および可溶性L−セレクチン(SELL)が得られた。市販のELISAを用いたところ、TSP−1およびSELLは正常年齢マッチング対照(n=23)とSCD患者(n=123)間で差がなかった。しかし、SIT治験にスクリーニングされた5〜14歳のSCD被験者の無作為サンプリングSCI患者(n=62)および非SCI患者(n=51)は、TSP−1およびSELLが有意に上昇することを示した(それぞれp=0.013およびp=0.021)。これらのデータより、鎌状赤血球症における脳損傷の実験的バイオマーカー探索手法が実証され、かつSCIの血流バイオマーカーが始めて記載される。
(序論)
鎌状赤血球症(SCD)は、多臓器損傷を特徴とする慢性溶血性貧血である。脳卒中は、SCDにおいて脳に対して最も顕著に発生しうる損傷である。経頭蓋ドップラー速度が上昇した患者を特定しかつ長期的な赤血球輸血を実施することにより、小児の脳卒中リスクは有意に低下している。King他、50 PEDIATR. BLOOD CANCER 599-602(2008);およびAdams 他、339 N. ENGL. J. MED. 5-11(1998)を参照されたい。MRI上でサイレント脳梗塞(SCI)の存在により確認される脳損傷のリスクが長期的赤血球輸血によって軽減されるかは、現在研究中である。King他、50 PEDIATR. BLOOD CANCER 599-602(2008)。脳卒中リスクのバイオマーカーは、明らかに鎌状赤血球症の診療を変容させている。
小児においては、SCIは低IQ、学業成績不振、および顕性脳卒中の独立リスク因子である。Miller他、139 J. PEDIATR. 385-90(2001);およびMERNAUDIN他、15 J. CHILD NEUROL. 333-43(2000)を参照されたい。MRIは、SCI患者を特定する唯一の方法である。MRIは高価であり、使用できる頻度に制限があり、かつ一部の小児患者ではSCDに対して死亡を含むリスクをもたらす麻酔を必要とするので、疾患リスクを追跡するための理想的な技法ではない。血液は採取および測定することが容易であり、バイオマーカーは神経学的損傷のリスクまたはその顕性脳卒中への進行を判定することができ、かつバイオマーカーは現行および新規SCI療法の基準となることも可能であるので、SCIの血液バイオマーカーは臨床的な空隙を埋めるであろう。
バイアスのない質量分析によるプロテオミクス手法を用いて、MRIおよびプロテオーム分析でスクリーニングしたSCIを有するSCD患者の血漿中でトロンボスポンジン−1(TSP−1)およびL−セレクチン(SELL)を同定した。TSP−1およびSELLはSCCにおいて研究されていたが役割は十分に定義されず、また急性脳損傷においては脳回復の重要な因子(TSP−1)(Lin et al., 34(1)STROKE 177-86(2003))または予測的バイオマーカー(SELL)(Lo et al., 26(9)J. NEUROTRAMA 1479-87(2009))としてのエビデンスがあった。プロテオミクススクリーンにおけるTSP−1およびSELLの同定および入手可能な文献を考慮すると、TSP−1およびSELL濃度は鎌状赤血球症における脳損傷のバイオマーカーの役割を果たす可能性があるという仮説が立てられる。
(方法)
(患者)
サイレント梗塞輸血治験(SIT治験、ClinicalTrials.gov NCT00072761)のためにスクリーニングされた鎌状赤血球症を有する5〜14歳の小児の横断サンプル(HbSSおよびHbSβ)を検討した(n=259)。SIT治験は、鎌状赤血球症およびSCIを有する小児に対する3年間輸血プログラムの多施設無作為化対照試験である。主要評価項目は顕性脳卒中あるいは新規または進行性SCIの発生を含む。全ての患者はインフォームドコンセントに署名した。SCIは、正常な神経学的検査およびT2強調画像の2視野で目視できるMRIシグナル異常によって定義される。シグナル異常は、1次元で3mm以上でなければならない。SCI状態は、神経放射線科医および脳神経科医のパネルによって宣告される。陽性および陰性対照患者は、ジョンズ・ホプキンズ病院の外来および入院病棟から選択した。陽性対照血漿サンプルは、入院した小児または顕性脳梗塞または脳手術で入院した成人から採取した。陰性対象は、ジョンズ・ホプキンズ病院のHarriet Lane小児科外来の5〜16歳の小児から選択した。外来記録を審査して何らかの急性疾患、神経学的障害、または喘息、肥満および行動/気分障害以外の慢性疾患を有する患者を除外した。IRBの承認を受けた研究により、これらの対照についての非特定血液サンプルおよび臨床データを取得した。
(血漿標本および質量分析)
血液をACDまたはEDTA管に採取し、SIT治験プロトコルに従って1500gで8分間遠心分離し、ジョンズ・ホプキンズ大学SIT治験用Biologic Repositoryに分析時まで−70℃で保存した。ProteomeLab Protein Partitioning System(PPS、ベックマン)上のLC10 IgYカラム(ベックマン・コ−ルター、カリフォルニア州フラートン)を用いて、患者15例(探索コホート、非SCI n=7、およびSCI n=8)より採取した血漿500μLから12種類の血漿大量タンパク質を除去処理した。IgYカラムのフロースルーを、連続アセトニトリル勾配(PPS、ベックマン)を用いるC18カラム(Jupiter,Phenomenex)を通す逆相HPLCで39分画に分離した。分画を乾燥させ(SpeedVac、サーモサイエンティフィック、マサチューセッツ州ウォルサム)、37℃で一晩トリプシン消化した(プロメガ、ウィスコンシン州マジソン)。各サンプルのスペクトルをLC/MS/MS(LTQ−Orbitrap、サーモサイエンティフィック)により取得した。Xtandem!およびヒトIPIデータベースバージョン3.4を用いてスペクトルを検索し、タンパク質を同定した。PASS(Integrated Analysis社、メリーランド州ベセスダ)を用い、信頼水準<0.9をタンパク質同定カットオフ値として検索後分析を実施した。
(TSP−1およびSELL定量値)
TSP−1およびSELLは、メーカーのプロトコルにしたがい、サンドイッチELISA(R&Dシステムズ)を用いて希釈血漿サンプルで2回測定した。SCIおよび非SCI患者サンプルを無作為に選択した。
(統計解析)
血漿濃度を群間比較するためにスチューデントのt−検定を用いた。
(結果)
(SCD血漿中のTSP−1およびSELLの質量スペクトル同定)
TSP−1およびSELLはそのSCDにおける役割が十分に理解されていない白血球接着分子として機能するが(Ugochukwu他、30(4)INT. J. LAB. HEMATOL. 312-16(2008);およびBrittain他、97(7)BLOOD 2159-64(2001))、血中SELLは小児の脳外傷の高感度かつ特異的バイオマーカーであることが示されている。探索コホート(患者数n=15)の検索にXtandem!を用いたところ、それぞれ10例および13例の患者においてTSP−1については14の特異なペプチド、およびSELLにおいては3種類のペプチド。Xtandem!Log(e)スコアの範囲は−1.1から−10.1であった。TSP−1(図23)およびSELL(図24)のそれぞれについてのペプチドの代表的スペクトルを示す。
(血漿TSP−1とSCI)
いくつかの研究により、脳内の原位置TSP−1は脳損傷の回復にとって重要であり、かつTSP−1はSCD赤血球の内皮細胞への接着性を高める役割も果たすことができることが示されている。表6および図25に示すように、TSP−1レベルは、年齢マッチングした正常小児とSCD小児間で比較するとき、濃度に有意差がない(p=0.49)。しかし、表7および図26に示すように、SCI陽性患者とSCI陰性患者の間でTSP−1濃度の統計的に有意差な上昇があった(p=0.013)。
(表6.対照とSCDのTSP−1レベル)
(表7.SCIおよび非SCI小児のTSP−1濃度)
(血漿SELLとSCI)
SELLは、そのSCDにおける役割が十分に理解されていない白血球接着分子であるが、血流中SELLは小児脳外傷の高感度かつ特異的バイオマーカーであることが示されている。Lo他、26(9)J. NEUROTRAUMA 1479-87(2009)。SELLはSITT探索コホート15例中13例に認められたので、SELLがSCD血漿中に存在することおよびSCIにとっての重要性が実証された。平均SELLレベルは人種および年齢マッチング対照とSCD患者の間で有意差がない。しかし、SCIおよび非SCI群を比較するとき(図27)、平均SELLレベルはSCI群で有意に上昇していた(p=0.021)。
(考察)
鎌形赤血球症における血漿プロテオームのバイアスのないスクリーンを用いたところ、2つの血中タンパク質TSP−1およびSELLが、SCD小児におけるSCIと有意に関連するとして同定された。鎌形赤血球症患者の血漿からのこのような特異性の高いタンパク質の探索により、本実施例で用いられるバイオマーカー探索の実験的手法が実証される。
本発明者らは、SCIの時期が不明であるSIT治験参加者の横断的検討において、TSP−1およびSELLがMRIで診断した鎌形赤血球症におけるサイレント脳梗塞のバイオマーカーであることを示している。5〜14歳の安定期鎌状赤血球症小児の横断的母集団のうち、SCIの30%および非SCIの4%は極度のTSP−1上昇を有した。TSP−1は脳損傷修復および血管新生において重要な役割を果たすことが知られているマーカーである。TSP−1レベルが著明に上昇したこれらの小児は、病歴および神経学的検査で見かけ上の欠損がないという定義による無症候性脳損傷を有する。
SCIは、MRIまたは剖検で定義される病的状態である。Moser 他、17 AM. J. NEURORADIOL. 965-72(1996);およびRothman他、20 ANN. NEUROL. 684-90(1986)を参照されたい。鎌状赤血球症におけるSCIは、SCIのない鎌状赤血球症患者よりも低い認知神経科学的能力と関連付けられているが(Schatz他、56 NEUROLOGY 1109-11(2001);Armstrong他、 97 PEDIATRICS 864-70(1996))、多くの鎌状赤血球病小児は、脳MRIが正常であるにもかかわらず低い認知神経科学的機能を有する。脳に対する特異性の高いタンパク質の血漿レベルによる脳損傷の検出は、損傷を検出するためのより感度の高い手段となりうる。
要約すると、本実施例の結果より、他の集団においてCNS損傷修復のバイオマーカーであることが知られているTSP−1を同定することにより、鎌状赤血球症患者の脳損傷の潜在的バイオマーカーを同定するためのバイアスのない戦略が実証される。有意な割合の鎌状赤血球症およびSCI患者の血漿中にTSP−1が同定されたことは、TSP−1をSCIリスクのバイオマーカーとして潜在的に暗示し、かつ/またはSCI修復または損傷経路の一部に関与している。SCDにおける脳特異性タンパク質のさらなるプロテオミクス研究は、SCDにおけるCNS損傷に対する我々の理解、その検出および治療にとって非常に興味深いものとなる見込みがある。
(ニューログラニン測定法の開発)
(ヒトNRGN特異性アプタマーの同定)
指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発生法(SELEX)の手順を用いて、ヒトNRGN特異性アプタマーを同定した。簡単に述べると、フィルター固定により一本鎖RNAのプールから特異的アプタマーを選択した。RNA−NRGN標的複合体はニトロセルロースフィルターと結合することが可能であり、かつ遊離RNAが通過して濾過された。特異的アプタマーをフィルターより回収し、PCR増幅した。数ラウンドの選択の後、NRGNに対する親和性の最も高い特異性アプタマーを濃縮し、シークエンシングにより同定した。
(選択用ライブラリを作成する)
一本鎖DNAオリゴプールを化学的に合成した。DNAオリゴは、2つの定常配列に挟まれた40量体ランダム中心核を有し、またライブラリはライブラリの5’および3’保存末端を標的とする1対のプライマーによって増幅することができる。ライブラリの配列は:
5’−TCT CGG ATC CTC AGC GAG TCG TCT G(N40)C CGC ATC GTC CTC CCT A−3’(配列番号1)
(RNAライブラリの生成)
まず一本鎖DNAライブラリをSel2 5’プライマーでアニーリングし、配列はインビトロ転写のためのT7プロモーターを含む5’−GGG GGA ATT CTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG AGG ACG ATG CGG−3’(配列番号2)であった。ギャップは、37℃で1.5時間実施するKlenow反応で埋めた。反応物は、フェノール:クロロホルム:イソアミル(25:24:1)およびクロロホルム:イソアミル(24:1)抽出各1回によって精製し、またさらにCentricon 30を用いて4℃で濃縮した。濃縮プロセス中、TE緩衝液pH7.4を用いて反応物を2回洗った。最終OD260を測定し、濃度を算出した。
上記のアニーリングしたオリゴプールを用いて、メーカーの反応条件に従い、DuraScribe(登録商標)T7転写キット(Epicentre、DS010910)を用いてインビトロ転写によるSELEX用RNAライブラリを生成した。2’−フルオリン−CTP(2’−F−dCTP)および2’−フルオリン−UTP(2’−F−dUTP)を用いて、転写反応においてCTPとUTPを置換し、最終的なDuraScript(登録商標)RNA(2’−フルオリン−修飾RNA)はRNアーゼAに対して完全に抵抗性である。インビトロ転写後、DNアーゼIを用いて反応物を処理し、さらにフェノール:クロロホルム:イソアミル(25:24:1)およびクロロホルムでRNAを1回ずつ抽出し、その後Centricon30を用いて4℃で濃縮および脱塩した。
RNAは変性PAGE(12%、7M尿素)ゲル精製でさらに精製した。RNAバンドをPAGEゲルから切り取り、TE緩衝液2mL中でRNAを4℃で1晩溶出させた。Centricon30を用いて純粋なRNAを再度濃縮し、またRNAの濃度を従来法で測定した。
(ニトロセルロースフィルター予備洗浄)
13mm Swin−Lokフィルターホルダー(ワットマン)(直径13mm)、孔径0.45μmのHAWPニトロセルロースディスクフィルター(ミリポア)を組み立てた。フィルターは、Hepes pH7.4を20mM、NaClを50mMおよびCaClを2mM含有する洗浄緩衝液1mLで事前に湿らせた。500pmolのRNAを100μLの1×結合緩衝液(0.1%BSAを添加した以外は洗浄緩衝液と同じ処方)で希釈し、さらにフィルターホルダーのレザバーに適用した。フィルターホルダーを50mLコニカルチューブに密封し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、1mLシリンジを用いてフィルターユニットを通過させることによりRNAを回収し、また100μLの1×結合緩衝液を用いて1回洗った。フィルターを通過したRNAを回収した;事前洗浄RNAの総量は約180μLであった。
(結合反応)
結合反応は、50pmolヒトNRGNタンパク質を事前洗浄RNAに添加することによって構築され、RNA:タンパク質の分子比率は約10:1であった。総体積は1×結合緩衝液中で200μLとした。反応物を37℃で15分間インキュベートした。新しいフィルターホルダーを組み立て、上述の方法で事前に湿らせ、結合反応物をフィルターに適用し、5mLシリンジを用いて結合サンプルを通過させて押し出し、さらにフィルターを5mL洗浄緩衝液で洗った。
(選択したRNAを回収)
フィルターホルダーを分解し、さらにフェノール:クロロホルム:イソアミル(25:24:1)600μLを入れた1.5mL遠心管にフィルターを移した。遠心管をボルテックスミキサーで約1分間激しく振盪した後、室温で30分間インキュベートした。HOを200μL添加し、再度ボルテックスミキサーで振盪した後、14,000rpmで10分間遠心分離した。回収したRNAを含有する上清をクロロホルム400μLで1回抽出した後、エタノール500μL、3M酢酸Na20μL(pH5.2)およびグリコーゲンブルー(Ambion、5mg/mL)3μLを添加することで沈殿させ、その後−80℃で一晩インキュベートした。14000rpmで20分間4℃で遠心分離することによりRNAを回収した後、75%エタノール1mLで1回洗い、その後RNAを遠心分離して風乾した。乾燥したRNAペレットをHO20μLに溶解した。
(選択したRNAをRT−PCRにより増幅)
回収したRNA5μLを用いて第1のDNA鎖を合成した。プライマーSel2 3’2μmolを反応物に添加した。Sel2 3’プライマーの配列は:5’−TCT CGG ATC CTC AGC GAG TCG TC−3’(配列番号3)である。反応物にロシェより入手した逆転写酵素(カタログ番号:10 109 118 001)を用い、条件はメーカーが推奨する通りとした。
PCR反応は以下の通りに構築した:第1のDNA鎖(上記の段階より)5μL、10μMプライマー(上記の段階よりSel2 3’および上記の段階よりSel2 5’)それぞれ3μL、HO 39μLおよび2×TopTaq Master Mix(キアゲン)50μL。合計8反応(800μL)を実施した。PCRサイクル条件は以下の通りであった:94℃/5分→(94℃/30秒→55℃/30秒→72℃/30秒)×20サイクル→4℃。PCR生成物は、3%アガロースゲル電気泳動で確認し、さらに残りのPCR生成物はCentricon30を4℃で用いて脱塩および濃縮した。PRC生成物の濃度は、OD/260nmを測定することにより判定した。
(選択を反復する)
濃縮PCR生成物1μgを用いて、次のラウンドの選択に用いるRNAを生成し、インビトロ転写のプロトコルの後に上述の操作を実施した。合計10ラウンドの選択を実施した。
10ラウンドの選択後、選択の厳密性を高めるために高塩結合緩衝液を用いてさらに3ラウンドの選択を実施した。1×結合緩衝液Fおよび洗浄緩衝液Fの処方は、NaClの濃度が150mMに増加している以外は、上述の緩衝液と同じである。その他の詳細な手順は上述のものと同じである。
13ラウンドの選択後の最終PCR生成物をpGEM−T Easyベクター(プロメガ)にクローニングし、濃縮したアプタマーをDNAシークエンシングにより同定した。プライマーの全長および40量体インサートを含むクローンを、ClustalW2 at EMBL−EBIウェブサイトを用いてアラインした。
(同定されたヒトNRGN特異性アプタマー)
6種類のクローンをシークエンシング用に選択し、また全ての配列の品質は非常に高かった。DNAアラインメント分析後、NRGN−A4のヌクレオチドが1個異なっていたことを除いて(下線部)6種類のクローンのうち5種類はほぼ同一であった。類似性の低い配列NRGN−A6は、整合性の良い他の5クローンと比較すると、その全てが2Tに富むモチーフを有し、これらがCC/CA(囲み部分)によって分離されていることを示した。NRGN−A1およびNRGN−A6を実証の対象に選択した。以下にアプタマーの配列を示す:
(アプタマーNRGN相互作用の実証)
同定された配列に従ってNRGN−A1およびNRGN−A6 RNAを化学的に合成し;RNA3’末端にビオチンリンカーを付加した。異なる2種類の戦略を用いてNRGNアプタマーとNRGN組換えタンパク質の相互作用を試験した。詳細を以下に記載する。
(ニトロセルロース上でRNAタンパク質複合体を検出するためにドットブロットを用いること)
SELEX手順で用いたものと同じメカニズムに基づいてRNA−タンパク質複合体をニトロセルロース膜上に保持することが可能であり、ドットブロットを用いてビオチン標識RNAアプタマーを検出した。まず、His−NRGN組換えタンパク質の連続2倍希釈を作製し、タンパク質の量の範囲は10pmolから0とし;その後さらに各サンプルをNRGNアプタマーRNA1pmolと混合した。最終結合反応の体積を1×結合緩衝液Fで20μLに維持し、反応物を37℃で15分間インキュベートした。
その間に、ドットブロット装置(Bio−Rad、#170−6545)を準備した。ニトロセルロース膜を切り、使用前に1×洗浄緩衝液F中で30分間振盪した。ニトロセルロース膜を事前に湿らせたワットマンろ紙上に乗せ、装置の底部に留置し、その後吸引器を組み立て、接続した。膜を各ウェルにつき1×洗浄緩衝液F100μLで1回洗浄した後、結合反応物を適用した。反応物を通過させた後、膜を1×洗浄緩衝液F200μLで1回洗浄し、その後吸引により排液した。その後膜をUV架橋させた(Bio−Rad、#165−5031)。
メーカーの指示に従い、Chemiluminescent Nucleic Acid Detection Module(Pierce、#89880)を用いて、ニトロセルロース上に保持されたビオチン標識RNAアプタマーを検出した。簡単に述べると、膜をストレプトアビジン−HRRコンジュゲートと共にインキュベートし、さらにHRPの化学発光基質を用いて検出した。
その結果、NRGNアプタマーNRGN−A1およびA6はいずれもNRGNタンパク質と結合し、この方法を用いた検出に必要とされるタンパク質の最小量は、夫々、1.25pmolおよび0.63pmolであった。同モル数のヒトアルブミンを対照として用いたところ、使用したアルブミンの量にもかかわらず信号を検出することができなかった。この結果より、これら2つのアプタマーはいずれもHis−NRGNタンパク質と特異的に結合することが示された。図28を参照されたい。
(プルダウン測定法)
ビオチン標識アプタマーをストレプトアビジン粒子に固定し、さらにプルダウン測定法を実施した。アプタマーをTEN100緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA、100mM NaCl)で1pmol/μLに希釈し、65℃で5分間加熱した後、室温で20分間放置してRNAをその天然コンホメーションにフォールディングさせた。ストレプトアビジン磁性粒子(ロシェ、11641778001)を2倍体積のTEN100緩衝液で3回洗った後、アプタマーサンプルを添加して回転させながら室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、粒子をTEN100緩衝液で3回洗い、その後1×結合緩衝液Fで1回平衡させた。種々の量のNRGNタンパク質(0〜2nmom)を1×結合緩衝液で希釈し、アプタマーを固定した磁性粒子に添加した後、37℃で15分間インキュベートした。
結合インキュベーション後、粒子をTEN100緩衝液で2回洗った。アプタマータンパク質複合体は、溶離緩衝液(1M NaCl、10mM EDTA)26μLで10分間室温でインキュベートすることにより解離させた。溶離したタンパク質をSDS−PAGEに付し、さらにタンパク質バンドをクマシー染色で可視化した。ヒトアルブミンタンパク質を陰性対照として用いた。典型的な染色ゲルを図29に示す。
ドットブロットおよびプロダウン測定法は、いずれもアプタマーがヒトNRGN組換えタンパク質と特異的に結合することを示した。
(ニューログラニン多重反応モニタリング(MRM)測定法の開発)
質量分析定量MRM測定法用のニューログラニンシグネチャーペプチドを開発した。ペプチドの配列および転移を以下の表に示す。標識GPGPGGPGGAGVAR(配列番号7)をサンプルに添加して、シグネチャーペプチドGPGPGGPGGAGVAR(配列番号7)の濃度を測定するための標準曲線を作製した。ペプチドKGPGPGGPGGAGVAR(配列番号8)もモニタリングして、トリプシン消化による誤った開裂がないことを確認する。
(表8.ニューログラニンペプチドの配列)
図30に、ABI Sciex Qtrap 4000トリプル四重極質量分析器を用いたニューログラニンシグネチャーペプチドおよび標識標準ペプチドのシグナルを示す。
(His−NRGN組換えタンパク質の生成)
ヒトNRGN cDNAクローンはOrigeneより購入した(カタログ番号:RC201209)。コード配列を、制限酵素(Sgf I+Mlu I)フラグメントスワッピングによりデスティネーションベクター(Origene、pEX−N−His、カタログ番号PS100030)にクローニングし、pEX−N−His−NRGN発現プラスミドを生成した。コード配列およびリーディングフレームはDNAシークエンシングにより確認した。
メーカーの指示に従い、pEX−N−His−NRGNプラスミドをRosetta 2(DE3)コンピテント細胞(Novagen、#71397)に形質転換した。Overnight Express Instant TB Medium(Novagen #71491)中で細菌を37℃で16〜18時間培養し、その後回収してTEN緩衝液(50mM Tris、pH8.0、0.5mM EDTAおよび0.5M NaCl)に懸濁した。1%NP−40、リゾチーム25mgおよび完全プロテイナーゼ阻害剤(ロシェ)を加え、氷浴上で30分間静置し、その後1回凍結−解凍することにより細菌を溶解した。遠心分離により溶解物を清澄化した後、Ni−NTAアガロースビーズ(キアゲン)を上清に添加し、さらに4℃で1時間回転させた。洗浄緩衝液(20mMイミダゾール、20mM KClおよび0.5M NaCl)を用いてビーズを3回洗浄した。ビーズを4℃の溶離緩衝液(100mMイミダゾール、20mM KPOおよび167mM NaCl)中で10分間回転させることにより、組換えタンパク質をビーズより溶離させた。溶離したタンパク質を3LのPBSで一晩透析し、従来のタンパク質測定法でタンパク質濃度を判定した。図31は、クマシー染色後のPAGEゲル上の典型的His−NRGNを示し;His−NRGNの予測分子量は8.5Kdである。
(ニューログラニンモノクローナルの開発)
ジョンズ・ホプキンズ大学において、モノクローナル抗体の産生のために上記の組換えニューログラニンを用いてマウスを免疫した。30のクローンをスクリーニングし、クローン30.5.2を図32に示す直接ELISAにおいて高希釈度ニューログラニンと結合すると特定した。
(ニューログラニン用サンドイッチELISAの開発)
濃度75ng/ウェルのニューログラニン抗ヒトモノクローナル抗体(ジョンズ・ホプキンズ)を捕捉抗体として用い、かつ濃度0.5μg/mLのニューログラニンに対するウサギポリクローナル抗体(ジョンズ・ホプキンズ)を検出抗体として用いた。濃度1μg/mLのSULFO−TAG抗ウサギ抗体(MSDカタログ番号R32AB−1)を濃度1μg/mLで標識レポーターとして用いた。GST_NRGN組換えタンパク質(ジョンズ・ホプキンズ)を、開始濃度20ng/mL、その後PBS/1%BSAの7希釈用に対して1:2で標準物質として用いた。PBS/1%BSAをブランクとして用いた。本測定法の標準曲線を図33に示す。
(ニューログラニンは急性脳損傷のバイオマーカーである)
上記のニューログラニンサンドイッチ測定法を用いると、心呼吸器不全のために27日間ECMOサポートを受ける乳児から採取した血清サンプル。乳児は連日頭部超音波測定を実施し、死亡時には脳損傷がないと考えられた。剖検では、脳に多発性皮質梗塞がありそれらは超音波では診断されなかった。図34に示すように、GFAPレベルはECMOサポートの粗さを通じて変化しなかった。しかし、ニューログラニンレベルは14日間のECMOサポートの間に初期値の15倍のピークまで上昇した。ニューログラニンは灰白質、ニューロンマーカーであるので皮質灰白質損傷に対する感度は白質損傷マーカーGFAPよりも高かった。これは、ニューログラニンが急性皮質脳損傷の血中バイオマーカーでありかつGFAPと組み合わせると脳白質損傷を脳灰白質損傷と識別することができるというエビデンスを提供する。

Claims (28)

  1. 患者の無症候性脳損傷(SCI)を診断するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.前記患者から採取した前記サンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定すること;および
    c.前記1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルをSCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が診断を提供することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  2. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがアストロタクチン1(ASTN1)、脳血管新生阻害物質3(BAI3);カルノシンジペプチダーゼ(CNDP1);ERMIN;グリア線維性酸性タンパク質(GFAP);代謝型グルタミン酸受容体3(GRM3);ケルヒ様タンパク質32(KLH32);メラノーマ抗原ファミリーE,2(MAGE2);ニューレグリン3(NRG3);ニューログラニン(NRGN);乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質(OMG);溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、メンバー12(SLC39A12);レティキュロン(RTN1);およびメタロチオネイン(MT3)からなる群から選択されることを特徴とする前記方法。
  3. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがNRGNを含むことを特徴とする前記方法。
  4. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがOMGを含むことを特徴とする前記方法。
  5. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがMT3を含むことを特徴とする前記方法。
  6. 請求項1〜3のうちいずれかに記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがGFAPをさらに含むことを特徴とする前記方法。
  7. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがNRGN、OMGおよびMT3を含むことを特徴とする前記方法。
  8. 請求項5に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがGFAPをさらに含むことを特徴とする前記方法。
  9. 請求項2に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーが表1および表2に列挙されたバイオマーカーをさらに含むことを特徴とする前記方法。
  10. 請求項1に記載の前記方法であって、前記サンプルが血液、血漿血清、脳脊髄液(CSF)または尿サンプルであることを特徴とする前記方法。
  11. 請求項10に記載の前記方法であって、前記サンプルが血液サンプルであることを特徴とする前記方法。
  12. 請求項10に記載の前記方法であって、前記サンプルが血清サンプルであることを特徴とする前記方法。
  13. 患者のSCIを診断するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3を含むことを特徴とする、前記患者から採取した前記サンプル中の前記バイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および
    c.前記バイオマーカーパネルのレベルをSCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が診断を提供することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  14. 患者のSCIを診断するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、前記患者から採取した前記サンプル中の前記バイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および
    c.前記バイオマーカーパネルのレベルをSCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が診断を提供することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  15. 請求項14に記載の前記方法であって、前記のバイオマーカーパネルがOMG、およびMT3をさらに含むことを特徴とする前記方法。
  16. 請求項14に記載の前記方法であって、前記バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3をさらに含むことを特徴とする前記方法。
  17. 請求項13または14に記載の前記方法であって、前記サンプルが血液、血漿血清、CSFまたは尿サンプルであることを特徴とする前記方法。
  18. 請求項17に記載の前記方法であって、前記サンプルが血液サンプルであることを特徴とする前記方法。
  19. 請求項17に記載の前記方法であって、前記サンプルが血清サンプルであることを特徴とする前記方法。
  20. 患者のSCIを診断するための方法であって:
    a.前記患者から血漿サンプルを採取すること;
    b.バイオマーカーパネルがNRGNおよびGFAPを含むことを特徴とする、前記患者から採取した前記血漿サンプル中の前記バイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および
    c.前記バイオマーカーパネルのレベルをSCIを有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよびSCIのない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が診断を提供することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  21. 請求項20に記載の前記方法であって、前記のバイオマーカーパネルがOMGおよびMT3をさらに含むことを特徴とする前記方法。
  22. 請求項20に記載の前記方法であって、前記バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3をさらに含むことを特徴とする前記方法。
  23. 患者の脳損傷状態を判定するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3を含むことを特徴とする、前記患者から採取した前記サンプル中の前記バイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および
    c.前記バイオマーカーパネルのレベルを脳損傷を有すること、脳損傷がないこと、脳損傷が進行すること、および脳損傷が後退することからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脳損傷状態と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が前記患者の前記脳損傷状態を判定することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  24. 患者のSCI状態を判定するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.バイオマーカーパネルがASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3を含むことを特徴とする、前記患者から採取した前記サンプル中の前記バイオマーカーパネルのレベルを測定すること;および
    c.前記バイオマーカーパネルのレベルをSCIを有すること、SCIがないこと、SCIが進行すること、およびSCIが後退することからなる群から選択される1つまたはそれ以上のSCI状態と相関する同じバイオマーカーパネルの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が前記患者のSCI状態を判定することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  25. 患者の脳損傷を診断するための方法であって:
    a.前記患者からサンプルを採取すること;
    b.前記患者から採取した前記サンプル中の1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定すること;および
    c.前記1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを脳損傷を有する患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルおよび脳損傷のない患者と相関する同じバイオマーカーの事前に定義したレベルと比較することであって、
    前記の事前に定義したレベルのうち1つとの相関が診断を提供することを特徴とする比較することという段階を含む前記方法。
  26. 請求項1に記載の前記方法であって、前記の1つまたはそれ以上のバイオマーカーがアストロタクチン1(ASTN1)、脳血管新生阻害物質3(BAI3);カルノシンジペプチダーゼ(CNDP1);ERMIN;グリア線維性酸性タンパク質(GFAP);代謝型グルタミン酸受容体3(GRM3);ケルヒ様タンパク質32(KLH32);メラノーマ抗原ファミリーE,2(MAGE2);ニューレグリン3(NRG3);ニューログラニン(NRGN);乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質(OMG);溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、メンバー12(SLC39A12);レティキュロン(RTN1);およびメタロチオネイン(MT3)からなる群から選択されることを特徴とする前記方法。
  27. 請求項1〜26のうちいずれかに記載の前記方法であって、前記の測定する段階がイムノアッセイ、免疫ブロット法、免疫沈降測定法、免疫染色法、定量測定法、免疫蛍光測定法、または化学発光測定法を含むことを特徴とする前記方法。
  28. 患者の脳損傷状態を判定するためのキット方法であって:
    a.患者から生物学的サンプルを採取するための基材;および
    b.ASTN1、BAI3、CNDP1、ERMIN、GFAP、GRM3、KLH32、MAGE2、NRG3、NRGN、OMG、SLC39A12、RTN1、およびMT3からなる群から選択される1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルを測定するための手段を含む前記キット。
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