図1から図5は、本発明による、基板12上に高粘着性ホットメルト接着剤を吐出するように構成されているディスペンサー10の一実施形態を示す。例えば、ディスペンサー10は、製品の組立てにおいて、PUR接着材料又は別の高粘着性の熱可塑性材料(以下まとめてホットメルト接着剤と呼ぶ)の微量(例えば「滴」)を、溝を含むがこれに限定されない小さな密接した場所に配置するように噴射するか又は迅速に吐出することが可能な非接触ディスペンサーである。ディスペンサー10は、一般的には携帯電話の組立て又は他の電子機器の組立てにおいて見られるように、0.5ミリメートル以下の溝幅を有する溝内にホットメルト接着剤を吐出する際に用いることができる。非限定的な一例では、吐出されるPUR接着材料は、3M社(ミネソタ州メープルウッド所在)から市販で入手可能なScotch−Weld(登録商標)PUR Easy Adhesive EZ17005、EZ17010、EZ17030又はEZ17060であるものとすることができる。本明細書における「粘着性」とは、同じ材料の分子とくっつくか又は係合した状態のままとなる材料の傾向を指すことが理解されるであろう。この文脈における粘着性は高伸長粘度と呼ぶ場合もある。
図1を参照すると、ディスペンサー10はディスペンサーモジュール14と、ディスペンサーモジュール14に連結されているヒーターブロック16と、ヒーターブロック16に連結されている接着剤供給源18とを備える。接着剤供給源18は、接着剤を収容するリザーバーとすることができるか、又は接着剤のカートリッジ若しくはシリンジ等の予めパッケージされた接着剤を収容することができる。ディスペンサーモジュール14は、ヒーターブロック16に連結されている主ハウジング22に延びるストローク調整アセンブリ20を含むことができる。ディスペンサーモジュール14の主ハウジング22は、以下で更に詳細に説明する目的から、ソレノイド弁24に連結することもできる。そのため、ヒーターブロック16、接着剤供給源18及びソレノイド弁24は協働して、ディスペンサーモジュール14を受け入れるとともに保持するように構成されているキャビティ26を画定する。接着剤供給源18は、基板12に対してディスペンサー10を支持するとともに移動させるように構成されている支持構造体28に取り付けることができる。
図2の実施形態では、接着剤供給源18は、接着剤のカートリッジ(図示せず)を収容するようになっている。接着剤供給源18は、底端32にカートリッジアダプター30と、上端34にプラグアセンブリ33と、カートリッジアダプター30とプラグアセンブリ33との間に接着剤のカートリッジ又はシリンジを保持するボア36とを備える。接着剤供給源18の代替的な実施形態では、ボア36には、接着剤供給源18に圧送される液体ホットメルト接着剤、又は自動充填システム若しくは自動給送システムから固体状態のホットメルト接着剤を供給することができ、次いで接着剤がボア36内で溶融及び加圧されることになる。接着剤供給源18がヒーターブロック16に連結されると、底端32及びカートリッジアダプター30がヒーターブロック16の表面38に当接することができる。カートリッジアダプター30における第1のOリング40及びプラグアセンブリ33における第2のOリング42が、ディスペンサー10の外周囲からボア36をシールする。カートリッジアダプター30は、ボア36内に位置決めされている接着剤カートリッジを穿孔するように構成することができるポート44と、ボア36とヒーターブロック16との間に流体連通を提供するアダプター通路46とを含む。
ホットメルト接着剤のカートリッジをボア36内に配置した後、プラグアセンブリ33を図1及び図2に示されている閉位置に回転させる。プラグアセンブリ33は、上面38のボア36の対向する両側から上方に延びる一対のスクリューキャップ48a、48bと、第1のスクリューキャップ48aと枢動可能に係合する回転可能な係止アーム50と、プラグ部材52とを含むことができる。プラグ部材52は、第2のOリング42を保持する底端52aを含み、接着剤供給源18のボア36に挿入されるように構成されている。プラグ部材52はまた、上端52bと、上端52bから底端52aに延びる空気通路52cとを含む。プラグアセンブリ33は、ねじ接続等によってプラグ部材52の上端52bと係合するエアカップリング54を更に含むことができる。加圧空気をエアカップリング52及び空気通路52cを介して送達して、ホットメルト接着剤をボア36からカートリッジアダプター30を介してヒーターブロック16に押し入れることができる。係止アーム50を回転させて、図1及び図2に示されているように第2のスクリューキャップ48b及びエアカップリング54と係合させ、それによって、係止アーム50がプラグ部材52の上端52bに当接することによって、プラグ部材52がボア36から外れることを阻止することができる。ホットメルト接着剤のカートリッジに接着材料がなくなると、プラグ部材52を外してカートリッジを交換することができるようにするために、係止アーム50を第1のスクリューキャップ48aの回りに枢動させて第2のスクリューキャップ48b及びエアカップリング54から離すことができる。他の実施形態では、ディスペンサー10の動作時、代替的な既知の付勢及びロック構造を用いてプラグ部材52をボア36内に保持することができることが理解されるであろう。
図1及び図2を参照すると、ヒーターブロック16は、主要ブロック部分16aと、標準ボルト56によって主要ブロック部分16a及びソレノイド弁24に連結されているカバープレート16bとを含むことができる。洗浄、修繕又は交換のためにディスペンサーモジュール14にアクセスすることができるように、カバープレート16bを外してキャビティ26を開けることができる。ヒーターブロック16は、カートリッジホルダー16とディスペンサーモジュール14の主ハウジング22とに流体連通するヒーターブロック通路58を主要ブロック部分16a内に更に含む。ヒーターブロック通路58は、上面38に半球部分58aと、半球部分58aから主ハウジング22に向かって延びるボア58bとを含むことができる。ボア58bは好ましくは、通路のいかなる急な曲がり又はカーブも含まず、そのため、ヒーターブロック16がディスペンサー10から分離されたときにヒーターブロック通路58を容易に洗浄することができる。ヒーターブロック16の上面38は、ディスペンサー10の外周囲からヒーターブロック通路58をシールするOリング60を含むことができる。
ヒーターブロック16はまた、温度センサーワイヤー62の端に配置されている温度プローブ62aと、ヒーターカートリッジ64と(双方とも図1に示されている)を受け入れるように構成することができる。温度プローブ62aは、ヒーターブロック16の温度、ひいてはディスペンサー10を流れるホットメルト接着剤の温度を感知するためにヒーターブロック通路58に向かって延びている。温度プローブ62aは、ニッケルベースのセンサー等の従来のセンサーである。従来のヒーターカートリッジ64(図3に示されている)は、ヒーターブロック16に連結されているディスペンサーモジュール14及び接着剤供給源18にだけでなく、ヒーターブロック16を介してホットメルト接着剤にも熱エネルギーを送達するように構成されている。例示的な動作では、ヒーターカートリッジ64は、ディスペンサーモジュール14、ヒーターブロック16及び接着剤供給源18を華氏約225度〜華氏約275度のような所望の動作温度範囲内に維持するように制御することができる。これに関して、ディスペンサーモジュール14、ヒーターブロック16及び接着剤供給源18は、ヒーターカートリッジ64からの熱エネルギーを伝達するように構成されているため、ディスペンサーモジュール14に別個の加熱素子は必要とされない。この動作温度は、吐出プロセスの間中、ホットメルト接着剤を溶融状態に維持する。
図2及び図3を更に参照すると、ディスペンサーモジュール14の主ハウジング22はボア65と、ボア65内を部分的に延びる弁部材68とを含む。弁体66を、主ハウジング22のボア65内の、ストローク調整アセンブリ20の下に部分的に挿入することができる。弁体66は、ボア65内に延びる上側部分66aと、上側部分66aから突出するノズル66bとを含む。弁体66の更なる詳細は以下で詳細に説明する。弁部材68がピストン部分70と、ピストン部分70と一体形成されているニードル72とを含む。弁部材68はステンレス鋼から形成することができる。単品材から形成されるとともに単一物品として機能する、ピストン部分70とニードル72との一体構造体又は単一構造体は、ホットメルト接着剤の噴射時に弁部材68に加えられる大きな力及び加速度が、弁部材68の、ピストン部分70とニードル72との間のインターフェース面におけるような部分を剪断又は破断する可能性を低減する。
ディスペンサーモジュール14はまた、主ハウジング22のボア65内の、弁部材68のピストン部分70と弁体66の上部66aとの間に挿入されるシールパック73を含む。シールパックは、主ハウジング22のボア65を、ピストン部分70を受け入れるようになっている空気圧ピストンチャンバー74と、弁体66に隣接するとともにホットメルト接着剤及びニードルを受け入れるようになっている接着剤チャンバー76とに分割する。シールパック73は上側動的シール部材73aと下側動的シール部材73bとを含み、これらがそれぞれ、中にニードル72を受け入れる。動的シール部材73a、73bは、ピストンチャンバー74内の加圧空気と接着剤チャンバー76内のホットメルト接着剤との間に流体分離を維持する。シールパック73は、弁体66の上側部分66aによってボア65内の所定位置に保持され、弁体66は、ねじ係合、外側からの挟持、又は弁体66をディスペンサーモジュール14に連結する任意の他の既知の方法によって、ボア65内に保持することができる。
弁体66は、ノズル66bに弁座80と、接着剤チャンバー76に流体連通する弁オリフィス82の形態のノズル出口とを含むことができる。弁体66、ひいては弁座80は通常、熱がホットメルト接着剤に容易に伝達されるように、また、以下で更に詳細に説明する衝撃力を増大させるために、工具鋼から形成される。同様に、主ハウジング22は、ディスペンサーモジュール14の図示の実施形態ではステンレス鋼から形成される。しかしながら、主ハウジング22は代替的に、テフロンコーティングされたアルミニウム、真鍮、又はヒーターカートリッジ64からホットメルト接着剤への熱エネルギーの伝達性が高い別の材料から形成されてもよいことが理解されるであろう。
主ハウジング22は、接着剤源に流体連通する入口ポート86を更に備える。シールパック73は、弁体66の上側部分66aに隣接するとともに主ハウジング22の入口ポート86と接着剤チャンバー76とに流体連通する少なくとも1つの入口通路88を更に含む。したがって、図示の実施形態では、ホットメルト接着剤がボア36からヒーターブロック通路58、入口ポート86及び少なくとも1つの入口通路88を通って接着剤チャンバー76へ流れ、次いで接着剤チャンバー76において、ホットメルト接着剤を、弁オリフィス82を通って吐出することができる。一対のシール用Oリング90を、ヒーターブロック16と主ハウジング22との間に配置することができる。別のシール用Oリング92を、少なくとも1つの入口通路88の上の、主ハウジング22とシールパック73との間に配置することができ、更に別のシール用Oリング93を、主ハウジング22と弁体66の上側部分66aとの間に配置することができる。これらのシール用Oリング90、92、93は、ヒーターブロック16から接着剤チャンバー76への流体経路がディスペンサー10の外周囲からシールされたままとなることを確実にする。シールパック73の図示の実施形態は、複数の入口通路88と、入口ポート86と複数の入口通路88との間に流体連通を提供するようにシールパック73と主ハウジング22との間に画定されている環状通路94とを含むが、本発明の範囲内の代替的な実施形態では、環状通路94を有しない1つだけの入口通路88を設けることができることが理解されるであろう。
主ハウジング22の空気圧ピストンチャンバー74が、弁部材68のピストン部分70によって、上側ピストンチャンバー74aと下側ピストンチャンバー74bとに分割される。上側ピストンチャンバー74aは、ストローク調整アセンブリ20(以下で更に詳細に説明する)のロッド110の底端110aによって形成されている阻止部材によって境界を定めることができるのに対し、下側ピストンチャンバー74bは、シールパック73及び上側シール部材73aによって境界を定めることができる。主ハウジング22は、上側ピストンチャンバー74aに流体連通する上側空気入口98aと、ソレノイド弁24の上側空気出口100aとを更に含む。同様に、主ハウジング22はまた、下側ピストンチャンバー74bに流体連通する下側空気入口98bと、ソレノイド弁24の下側空気出口100bとを含む。ピストンチャンバー74、並びに上側空気入口98a及び下側空気入口98bは、主ハウジング22とソレノイド弁24との間に位置付けられている一対のOリング102と、主ハウジング22と弁体66との間に位置決めされている別のOリング104とによって、ディスペンサー10の外周囲からシールすることができる。さらに、ピストン部分70は、上側ピストンチャンバー74aを下側ピストンチャンバー74bからシールするように構成されているピストンシール106を含むことができる。
ソレノイド弁24は、ピストン70及びニードル72を図3に示されている後退位置及び図4Aに示されている伸張位置間で移動させるように押すために、上側ピストンチャンバー74a及び下側ピストンチャンバー74bに約60psi〜100psiの加圧空気を交互に供給する既知の空気弁である。したがって、弁部材68のニードル72のボール形状端108が弁座80と係脱することによって、弁オリフィス82を繰り返し開閉する。弁部材68のニードル72の端108は、ディスペンサー10のこの実施形態に示されているボール形状とは異なる形状を有して形成されてもよいことが理解されるであろう。さらに、弁部材68の移動は、図示の実施形態ではピストン70及びソレノイド弁24を用いて空気圧式に制御されるが、ディスペンサー10の他の実施形態は、電気モーター及びアーマチャーが挙げられるがこれらに限定されない、弁部材68の往復移動を作動させる代替的な装置を含むことができる。
図示の実施形態のストローク調整アセンブリ20は、上側ピストンチャンバー74aに延びる下端110aを有する内部ロッド110を含む。ロッド110の下端110aは、ストローク調整アセンブリ20に対してピストン70によって繰り返される衝撃を減衰させるように構成されている材料から形成することができること、また、ホットメルト接着剤もボール形状端108と弁座80との間の衝撃を若干減衰させることが理解されるであろう。しかしながら、これらの減衰力は、ディスペンサー10が接着剤チャンバー76からホットメルト接着剤の微小滴を噴射することを妨げない。ストローク調整アセンブリ20はまた、主ハウジング22のボア65内の、ピストンチャンバー74の上に少なくとも部分的に挿入されるモジュールキャップ111を含むことができる。モジュールキャップ111は、ロッド110の中央ねじ部分110bと係合するようになっている雌ねじボア111aを含む。第1のシール用Oリング112aは、モジュールキャップ111と主ハウジング22との間に位置決めされ、第2のシール用Oリング112bは、ボア111aの雌ねじの下の、ロッド110とモジュールキャップ111との間に位置決めされる。これらのシール用Oリング112a、112bは、加圧空気がピストンチャンバー74からディスペンサー10の周囲の外部環境に漏洩することを防ぐ。内部ロッド110は、ロッド110をモジュールキャップ111及びピストンチャンバー74内で上方又は下方に移動させるように回転させることができる駆動ヘッド110cまで、モジュールキャップ111を超えて延びる。
図3に示されている弁部材68の後退位置では、ロッド110の下端110aは、弁部材68の上方移動を止めるようにピストン部分70に当接している。したがって、駆動ヘッド110cの回転によって引き起こされるロッド110の移動は、弁部材68の全ストローク長(図3にSLとして示されている)を変えるように操作可能である。図示の実施形態では、ストローク長SLは約1.5ミリメートル〜約2.0ミリメートルの間で調整可能である。最大ストローク長SL(およそ2.0ミリメートル)は、従来の噴射ディスペンサー(上述したようなホットメルト接着剤を吐出することには用いられない)の最大ストローク長よりもおよそ4倍長い。弁部材68のストローク長SLにより、吐出サイクル時にノズル66bからホットメルト接着剤を完全に放出することが可能となるとともに、以下で更に詳細に説明するように、ホットメルト接着剤の塗布温度が更に上昇してホットメルト接着剤との好適な接合に利用可能なオープンタイムが増加する。
図4を参照すると、弁オリフィス82が、約0.2ミリメートル〜約0.3ミリメートルの出口径ODを画定することができる。出口径ODのこの範囲は、従来の噴射ディスペンサー(上述したようなホットメルト接着剤を吐出することには用いられない)の出口よりも大きく、ノズル66bからのホットメルト接着剤の放出を更に促す。このため、弁オリフィス82の出口径ODと、ストローク長SLにわたる弁部材68の移動によって形成される圧力波と、弁座80に対するボール形状端108の衝撃とが連帯して、高粘着性ホットメルト接着剤を押して弁オリフィス82から完全に噴出させて細長い滴120を形成するほど十分となる。したがって、本実施形態の噴射ディスペンサー10は、PUR接着材料を含むホットメルト接着剤の微量を首尾よく噴射して、ノズル66bから基板12へ向けて、矢印121で示す進行方向に沿って飛ばすことができる。そのため、吐出サイクルが繰り返されるにつれ、ホットメルト接着剤が蓄積してノズル66bを詰まらせることがなく、したがって、効果的に噴射される。
噴射プロセスにより、ディスペンサー10が、ホットメルト接着剤の吐出滴120を細長くするように、すなわち、ノズル66bから噴出点に伸張させるように制御する。このため、吐出滴120は、より広い前端120a及びより狭い尾端120b(図5を参照のこと)を有する細長い涙滴タイプの形状を画定する。各吐出滴120は、進行方向121に概ね沿って画定されるように、前端120aから尾端120bにかけて滴の長さDLを画定する。各吐出滴120はまた、進行方向121から横断方向に画定される、滴の幅DWを画定し、滴の幅DWは滴の長さDLよりも小さい。ノズル66bが吐出高さLDだけ基板12から離隔していても、ホットメルト接着剤の高粘着性は、滴120が吐出高さLDに沿って進む際に吐出滴120の形状及び向きを実質的に維持するのに役立つ。
換言すれば、滴120はノズル66bから基板12への進行過程中、形状変化してより幅広の球形状の滴になる傾向はない。したがって、滴の幅DWは進行中、概ね一定のままである。結果として、ホットメルト接着剤の滴120は、基板12との接触時に、0.5ミリメートル以下の溝幅WGを有する溝114等の小さなスペースに合うのに適したサイズ及び向きのままとなる。対照的に、滴120が進行中、形状変化してより幅広の球形状の滴になれば、滴の幅DWは約1.0ミリメートル(これは広すぎて溝114に合わない)まで増えることになるであろう。しかしながら、本実施形態のディスペンサー10は、図4B及び図5に示されているように滴120が基板12上の溝114内に完全に保持されることができるように、ホットメルト接着剤の噴射滴120を細長くするとともに噴射滴120のサイズを制御する。
図5を続けて参照すると、ディスペンサー10は、ホットメルト接着剤の噴射時に、矢印123の方向に溝114の長さに沿って移動することができる。溝114の長さに沿ったこの移動により、細長い滴120は、溝114に接触すると、溝114の幅の外側に広がるのではなく溝114の長さに沿って広がるように促される。要するに、溝114の長さに沿ったディスペンサー10の移動と、吐出滴120の制御された細長い形状及びサイズとが連帯して、ホットメルト接着剤が溝114内にのみ塗布されることを確実にする。
有利には、噴射ディスペンサー10はまた、一日の吐出の間中、同量のホットメルト接着剤を各滴120で一貫して吐出し、その間、特にPUR接着材料の場合では、ホットメルト接着剤の粘度は最大20%〜30%変わり得る。結果として、製造プロセスにおいて、一定量のホットメルト接着剤を各連続的な基板12に塗布することができる。
噴射ディスペンサー10はまた、オープンタイム、すなわち、塗布後の、好適な接合がホットメルト接着剤によりなされ得る時間量を最大にする最適な温度でホットメルト接着剤を吐出することを可能にする。前述したように、ヒーターカートリッジ64がホットメルト接着剤を第1の温度に加熱し、この第1の温度は、ホットメルト接着剤が長時間にわたって保持される場合に劣化し始める温度よりも低い塗布温度である。塗布温度は、接着剤間、接合される基板間等の相違に起因して変わり得る。以下の例では、塗布温度は華氏約250度であった。噴射ディスペンサー10はまた、有利には、噴射プロセス時にホットメルト接着剤に十分な剪断力を作り出して、ホットメルト接着剤の吐出微小滴を第1の温度よりも高い第2の温度に急速に又は瞬時に加熱させる。ホットメルト接着剤の急速加熱の一例が、図6A〜図6Dに示されているグラフプロットにおいて更に示されている。
図6Aは、PUR接着剤よりも低い粘着性を有する一般的なホットメルト接着剤を用いたプール試験に相当する。このプール試験では、噴射ディスペンサー10を静止状態の基板上に少なくとも20秒間連続的に発射させ、ホットメルト接着剤を基板の上にプールさせた。温度センサーを、接着剤供給源18上、ディスペンサーモジュール14上、ノズル66b上及び基板12上に位置決めした。ヒーターカートリッジ64により、プール試験過程にわたってディスペンサーモジュール14を華氏約250度に加熱した。図6Aに示されているように、ノズル66bにおいて測定される温度と、基板上に吐出されるホットメルト接着剤の温度とが、吐出時間(およそt=5秒〜t=25秒)中、華氏250度のモジュール温度よりも十分高く急上昇した。このプール試験では、基板上のホットメルト接着剤は華氏270度という最大温度に達したが、その後、図6Aに示されているように、吐出サイクルが完了した後で急速に冷却した。
図6Bは、PUR接着材料を用いたプール試験に相当する。前のプール試験と同様に、噴射ディスペンサー10を約t=5秒〜t=25秒間連続的に発射させ、ヒーターカートリッジ64により、ディスペンサーモジュール14を華氏約250度に加熱し、PUR接着材料を基板上にプールした。図6Bにおいて、ここでも同様に、吐出サイクル中の、ノズル66bと、基板上に吐出されるPUR接着材料との急速加熱が示されている。基板上の温度センサーがノイズのある温度信号を記録したが、基板上のPUR接着材料の最大温度は華氏275度であった。ここでも同様に、PUR接着材料は、吐出サイクルが完了すると基板上で急速冷却した。
図6C及び図6Dは、図6Aにおけるのと同じホットメルト接着剤及び図6Bにおけるのと同じPUR接着材料を用いた代替的なプール試験に相当するが、ただし、これらのプール試験ではヒーターカートリッジ64はディスペンサーモジュール14を能動加熱しない。結果として、双方の試験では、モジュール温度は、能動加熱を行わないことに起因して試験過程にわたって低下するものとして示されている。能動加熱を伴わない場合であっても、双方の試験における、ノズル66bの温度と、基板上に吐出される接着剤の温度とが、ディスペンサーモジュール14の温度よりも十分高く急上昇した。図6Cに示されているように、基板上のホットメルト接着材料は、ディスペンサーモジュール14の温度が華氏約225度(摂氏約107.2度)である場合に華氏245度という最大温度に達した。同様に図6Dに示されているように、基板上のPUR接着材料は、ディスペンサーモジュール14の温度が華氏約210度である場合に華氏270度という最大温度に達した。
これらのプール試験結果から、ホットメルト接着剤の噴射はホットメルト接着剤の塗布温度の急速な上昇を引き起こすことが明らかである。塗布温度のこの急速な上昇は、PUR接着材料を用いた場合によりいっそう顕著である。弁部材68のストローク長SLの増加により、ボール形状端108が弁座80に接触したときに、より高い衝撃又は剪断力がホットメルト接着剤に加えられるだけでなく、ニードル72と接着剤チャンバー76内のホットメルト接着剤との間の摩擦係合が増すと考えられる。これらの熱エネルギー源がそれぞれ増すことにより、ディスペンサーモジュール14において制御される第1の温度よりも高い噴射微小滴120の急速な又は瞬時の著しい温度上昇が可能となる。また、噴射滴120のサイズが微小であるため、この温度上昇(例えば、上記の例における第2の温度まで)は、噴射されたホットメルト接着剤が十分な接合を形成するほど十分に高い温度に維持される時間量を著しく増加させる。
さらに、噴射滴120の温度上昇は、弁部材68のストローク長SLを増減させることによって制御することができる。第2の温度は、ホットメルト接着剤が劣化し始める温度に近いものであってもその温度を超えるものであってもよいが、噴射滴120は、ノズル66bから放出された後すぐに冷却し、そのため、長時間にわたってその温度で留まることによって引き起こされる劣化の危険性を最小限に抑える。このため、噴射ディスペンサー10は、ホットメルト接着剤の劣化を最小限に抑えながらもホットメルト接着剤のオープンタイムを効果的に増加させる。
したがって、ディスペンサー10は、携帯電話の組立て等の際に基板12上の小さな溝114内にホットメルト接着剤又は他の粘着性材料の液滴120を吐出することに伴う課題の多くに対処する。ディスペンサー10は、ホットメルト接着剤が小さな溝114に合うように、ホットメルト接着剤の小滴を噴射するとともに吐出滴120を制御する上で効果的である。さらに、ディスペンサー10は、吐出滴120をディスペンサーモジュール14における制御された第1の温度よりも高く瞬時に加熱するため、ホットメルト接着剤の劣化を最小限に抑えながらもオープンタイムを増加させる。
本発明を本発明の特定の実施形態の記載によって説明し、これらの実施形態をかなり詳細に記載したが、それらの実施形態は添付の特許請求の範囲の範囲をそのような詳細に限定するか又はいかようにも制限することは意図しない。本明細書において検討される種々の特徴は、単独で又は任意の組み合わせで用いることができる。更なる利点及び変更形態が当業者には容易に明らかとなるであろう。したがって、本発明はそのより広範な態様では、図示及び記載される特定の詳細、代表的な装置及び方法、並びに例示的な例に限定されない。したがって、包括的な発明の概念の範囲又は趣旨から逸脱することなくそのような詳細から逸脱することができる。