JP2013523689A - 第ix凝固因子などのビタミンk依存性タンパク質の精製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
プロテアーゼはしばしば生理的条件で(ほとんどの細胞系の場合と同様に)、すなわち、約pH7と約0.15Mの塩濃度で最もよく機能するので、プロテアーゼの作用を最小化するためにこれらの条件を変えることは有利である可能性がある。そなどの変化は、典型的には、塩を加える、および/または、pHを変化させることにより実行されることができる。これらのパラメータの両方が従来のイオン交換クロマトグラフィー工程の実行に重要であり、したがって、しばしば達成することが不可能である。したがって、本発明は、この問題が解決された方法であり、そして、前記目的タンパク質を分解することが可能であろうプロテアーゼなどの潜在的タンパク質分解性因子を含む粗タンパク質試料に塩を加えること、および/または、pHを変えることを可能するその方法を提供することをもう1つの目的とした。その方法により、その他のできるだけ少ない手段でそのタンパク質溶液を加工し、前記目的タンパク質をクロマトグラフィー樹脂に結合させることがさらにできるはずである。これにより、粗試料からの前記目的タンパク質の濃縮と精製の、または、例えば、親和性クロマトグラフィーなどのその他のクロマトグラフィー工程を用いるさらなる下流精製の最適な工程が提供されるであろう。
少なくとも1つのクロマトグラフィーがマルチモーダル樹脂を用いて行われ、
FIXなどのビタミンK依存性タンパク質は前記マルチモーダル樹脂に結合し、そして、
FIXなどのビタミンK依存性タンパク質は、アルギニンを含む緩衝液中、6〜9のpHで、前記マルチモーダル樹脂から溶出する。
a.正に荷電したN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンリガンド、
b.負に荷電した2−(ベンゾイルアミノ)ブタン酸リガンド、
c.フェニルプロピルリガンド、
d.N−ヘキシルリガンド、
e.4−メルカプト−エチル−ピリジンリガンド、
f.3−((3−メチル−5−((テトラヒドロフラン−2−イルメチル)−アミノ)−フェニル)−アミノ)−安息香酸リガンド、または、それらの組合せ。
1.カプトMMCなどの陽イオンマルチモーダル樹脂、
2.脂質で覆われたウィルスの化学作用に基づく不活化工程、特に欧州特許EP−A−131 740にて開示されるトリ−n−ブチルリン酸とトライトンX−100を用いる溶媒/界面活性剤−不活化工程、
3.酵母で発現されるリガンドに基づく親和性樹脂、
4.SPセファロース、または、リソースSなどの陽イオン交換体、
5.プラノバ20Nなどのサイズが約20nmの平均的な孔での病原体濾過除去工程、
6.約10kDaの分子量カットオフの特性を有する限外濾過などの緩衝液交換工程、および/または、濃縮工程、
7.スーパーデックス200などのサイズ排除クロマトグラフィー樹脂。
−カプトMMC(商標)マルチモーダル樹脂はカラムに充填され、pH7.0で20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80を含む緩衝液で平衡化された。
−上述の平衡化緩衝液(equilibration buffer)とほぼ同じ条件のFIXなどのビタミンK依存性タンパク質を含む粗試料がアプライされ、目的タンパク質とその他の不純物タンパク質がカラムに結合した。
−平衡化緩衝液を用いる洗浄工程が、本発明に従い、タンパク質分解性活性を抑制し、プロテアーゼ、DNA、および、その他の夾雑物を除去するために前記カラムに適用されたが、FIXなどのビタミンK依存性タンパク質はそれでもそのカラムに結合した。
−本発明に従い、0.5Mアルギニンが加えられpH7.0に調整された平衡化緩衝液を用いてFIXなどのビタミンK依存性タンパク質を溶出し、安定した凝集していないFIXなどのビタミンK依存性タンパク質の画分を少ない体積で得た。
<生物学的活性の分析―第IX因子>(1段階凝血アッセイ)
第IX因子の生物学的活性が1段階凝血アッセイで測定され、第IX因子の単位が現行の世界保健機関(WHO)第IX因子濃縮物基準により定められる国際単位(IU)で表された。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)はサイズに基づくタンパク質の分離に関係する。この方法は還元的条件で行われるタンパク質のSDS−PAGEについて説明する。変性条件、および、還元条件で前記試料を加熱することでタンパク質は高次構造が解け、および、陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で覆われ、ポリペプチド鎖の長さに正比例する高純負電荷を帯びる。ポリアクリルアミドゲルマトリックスに負荷され、電場に置かれると、前記の負に荷電したタンパク質分子は陽極へと移動し、分子ふるい作用によって、すなわち、その分子量によって分離される。ポリアクリルアミドゲルはより大きな分子がより小さい分子と同じ速度で移動することを妨げる。電荷対質量の比はSDSで変性されたポリペプチドの間でほぼ同じであるので、タンパク質の最終的な分離はほぼ全くポリペプチドの相対的な分子量の差に依存する。均一な密度のゲルでは、タンパク質の相対移動距離(Rf)はその質量の対数に対して負に比例する。質量既知のタンパク質が質量未知のタンパク質と同時に泳動されるとき、Rfと質量の間の関係がグラフにプロットされることができ、未知のタンパク質の質量が推定される。電気泳動により分離されたタンパク質のバンドは銀染色により可視化される。出現した標準物質、基準物質(対照試料)、および、分析試料を判断して質量の評価が視覚的に行われる。
これらの実験で用いられる物質は市販の製品であるナノティブ(登録商標)に起源を持ち、ナノティブは溶媒/界面活性剤法で処理され、ナノフィルターで濾過された高純度の第IX因子濃縮物である。
FIX含有細胞懸濁液の製造
細胞
使用された細胞株は無血清成長に順化したヒト胚性腎臓細胞293(HEK293)株由来物である。この宿主であるHEK293FはヒトFIXとヒトのフーリン(PACE)のcDNAコーディング配列を持つ発現カセットで安定的に形質移入された。同じ強力なプロモーターが両方のカセットに用いられた。一般的な方法はまた、欧州特許出願公開公報第1 739 179号(EP−A−1 739 179)(Schroederら)に記載される。
前記細胞は無血清培地中で一般設備を用い、当該技術分野で周知の一般的な方法に従って培養された。例えば、T型フラスコ、振盪用フラスコ、および、バイオリアクター(使い捨てのシステムおよび従来の撹拌タンク)内での振盪培養、または、撹拌培養で回分培養、半回分培養、灌流培養、または、連続ケモスタット培養として実行される(フレシュニー,RI(Freshney,RI)著(2000年)動物細胞の培養:基礎技術の手引き 第4版、ワイリー‐リス社(Freshney, R I (2000), Culture of animal cells: a manual of basic technique, 4th ed, Wiley- Liss);シュパイアー,RE(Spier,RE)編(2000年)細胞工学百科事典、ワイリー社、ニューヨーク(Spier, R E ed (2000), Encyclopedia of cell technology, Wiley, New York);エンフォース,S−O(Enfors,S−O)およびヘッグストレーム,L(Haggstrom,L)著(2000年)バイオプロセス技術:原理と応用、大学出版会(Hogskoletryckeriet),王立工科大学,ストックホルム(Enfors, S-O and Haggstrom, L (2000), Bioprocess technology: fundamentals and applications, Hogskoletryckeriet, Royal Institute of Technology, Stockholm);ビンチ,VA(Vinci,VA)およびパレク,SR(Parekh,SR)(2003年),工業細胞培養ハンドブック:哺乳類細胞、微生物細胞、および、植物細胞、ヒューマナプレス社、米国(Vinci, V A and Parekh, S R (2003), Handbook of industrial cell culture: mammalian, microbial, and plant cells, Humana Press, USA))。典型的には、標準的な回分培養の水準を超えて細胞数と産物の力価(titer)を増加させるために培地の灌流が用いられた。産物収量と宿主細胞タンパク質の量は培養モードに応じて異なる:
・産物の力価は典型的には細胞数と共に増加するであろう。
・総タンパク質量と総DNA量は典型的には細胞数と共に増加するであろう。
・総タンパク質量と総DNA量はまた培養物の持続時間と共に増加することができる。
・回分培養はタンパク質とDNAを蓄積する。何も外部から加えられないし、何も取り除かれない。
・灌流方法では代謝物、タンパク質、DNA、および、その他の不純物から細胞培養物が洗い落される。フィルターと細胞遠心分離機が細胞の保持のために典型的に使用された。
実施例1
出発物質
血漿由来FIX(pdFIX、ナノティブ(登録商標))が使用された。カプトMMCカラムに負荷される前に、凍結乾燥されたナノティブが平衡化緩衝液に溶解され、希釈された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。トリコーン5/150カラムに15.7cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は3.1mlであった。
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
低塩濃度洗浄緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH6.5
高塩濃度洗浄緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.7M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH6.5
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩(arginine monohydrochloride)、0.02%ポリソルベート80、pH6.5
カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて1ml/分の流速で出発物質の負荷が行われた。これらの緩衝液条件の間にpdFIXはカプトMMC樹脂に結合した。表1に示されるように、通過画分(flow through)にpdFIXは検出されなかった。その後、前記樹脂は表1に記載される様々な洗浄条件で洗浄され、試験された洗浄緩衝液のいずれにもpdFIXは検出されなかった。前記緩衝液に0.5Mのアルギニンを添加することによりFIXが樹脂より溶出され、85%の収率が得られた。
血漿由来FIX(pdFIX、ナノティブ)はpH7でカプトMMCに結合し、および、少なくとも0.7Mの塩化ナトリウムで前記樹脂から溶出されることなく洗浄されることができる。
出発物質
組換えヒトFIX(rhFIX)はHEK293細胞で産生した。細胞が取り除かれ、その無細胞上清が出発物質としてカプトMMCカラムに負荷された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。XK26カラムに15cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は80mlであった。
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
高塩濃度洗浄緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.7M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH6.5
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、0.02%ポリソルベート80、pH6.5
カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて26ml/分の流速で出発物質の負荷が行われた。これらの緩衝液条件の間にrhFIXはカプトMMC樹脂に結合した。表2に示されるように、通過画分にrhFIXは検出されなかった。高塩濃度洗浄液ではrhFIXは前記カラムから溶出しなかった。緩衝液に0.5Mのアルギニンを添加することによりrhFIXが前記樹脂より溶出され、92%の収率が得られた。
組換えFIX(rhFIX)はpH7でカプトMMCに結合し、および、少なくとも0.7Mの塩化ナトリウムで前記樹脂から溶出されることなく洗浄されることができる。
出発物質
組換えヒトFIX(rhFIX)はHEK293細胞で生産された。細胞が取り除かれ、その無細胞上清が出発物質としてカプトMMCカラムに負荷された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。XK26カラムに15cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は80mlであった。
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、pH7.0
高塩濃度洗浄緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.7M塩化ナトリウム、pH6.5
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、0.8Mアルギニン塩酸塩、pH6.5
カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて26ml/分の流速で出発物質の負荷が行われた。これらの緩衝液条件の間にrhFIXはカプトMMC樹脂に結合した。表3に示されるように、カラムに負荷されたrhFIXのうちの低量が通過画分に検出された。その後、前記樹脂はかなり高い濃度である0.7Mの塩化ナトリウムを含む緩衝液で洗浄された。表3に記載されるように、この洗浄では1%未満のrhFIXが検出された。前記緩衝液に0.8Mのアルギニンを添加することによりrhFIXが前記樹脂より溶出され、84%の収率が得られた。この実験で使用された緩衝液は、実験2および実験5と比較して、少しもポリソルベート80を含まなかった。
組換えFIX(rhFIX)はpH7でカプトMMCに結合し、および、少なくとも0.7Mの塩化ナトリウムで前記樹脂から溶出することなく洗浄されることができる。
出発物質
血漿由来FIX(pdFIX、ナノティブ(登録商標))が使用された。カプトMMCカラムに負荷される前に、凍結乾燥されたナノティブが平衡化緩衝液に溶解され、希釈された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。トリコーン5/150カラムに15cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は3mlであった。
実施例4Aの実験には、
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、pH7.0
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH7.0
実施例4Bの実験には、
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
pH7.0でポリソルベート80を含む緩衝液、または、含まない緩衝液を用いるカプトMMCでのpdFIXの精製の比較。カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて1ml/分の流速で出発物質の負荷が行われた。これらの緩衝液条件の間にpdFIXはカプトMMC樹脂に結合した。表4に示されるように、通過画分と平衡化洗浄画分にpdFIXは検出されなかった。
緩衝液中にポリソルベート80が無いときと比べて、ポリソルベート80が緩衝液に含まれるとき、血漿由来のFIXが5%増加して溶出した。その差異は小さいが、その結果はポリソルベート80を緩衝液に用いることの利点を示す。pdFIXの収率は両方の実験で高かった。このことはまた、使用された緩衝液の7.0のpHによってpdFIXの結合とカプトMMC樹脂からのpdFIXの溶出の両方に関して良いデータが得られたことを示す。
出発物質
血漿由来FIX(ナノティブ)が使用された。カプトMMCカラムに負荷される前に、凍結乾燥されたナノティブが平衡化緩衝液に溶解され、希釈された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。トリコーン5/150カラムに15cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は3mlであった。
実施例5Aの実験には、
平衡化緩衝液:20mM HEPES、0.1M塩化ナトリウム、pH8.0
溶出緩衝液:20mM HEPES、0.1M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH8.0
実施例5Bの実験のためには、
平衡化緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、pH6.0
溶出緩衝液:20mMクエン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH6.0
結合緩衝液及び溶出緩衝液の両方で、2つの異なるpHであるpH8.0とpH6.0の緩衝液を用いるカプトMMCカラムでのpdFIXの精製の比較。カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて1ml/分の流速で出発物質の負荷が行われた。これらの緩衝液条件の間にpdFIXは前記カプトMMC樹脂に結合した。表5に示されるように、通過画分にpdFIXは検出されなかった。pdFIXの収率は試験された両方のpHの溶出画分で等しく高かった。
血漿由来のFIXはpH8.0とpH6.0の緩衝液中でカプトMMC樹脂に結合すること、および、これらの両方のpHはまた溶出緩衝液でも用いられ得ることがこれらの実験により示される。
目的
これらの実験は3つの異なるpHであるpH6.0、pH7.0、および、pH8.0における組換えヒトFIX(rhFIX)のカプトMMC樹脂での捕捉と溶出を検討することを目的とした。また、rhFIXの結合と溶出で使用されたこれらの緩衝液の中に存在する0.02%ポリソルベート80の利点も検討された。
組換えヒトFIXはHEK293細胞で生産された。細胞が取り除かれ、その無細胞上清が出発物質としてカプトMMCカラムに負荷された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。XK16カラムに13.5cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は27mlであった。
実施例6A
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH7.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
*WFI:注射用水
実施例6B
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH6.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH6.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
実施例6C
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、pH8.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、pH8.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH8.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5Mナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
実施例6D
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、0.02%ポリソルベート80、pH7.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
実施例6E
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH6.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.02%ポリソルベート80、pH6.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、0.02%ポリソルベート80、pH6.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
実施例6F
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、pH8.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、pH8.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mM HEPES、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH8.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて9ml/分の流速で前記出発物質の負荷が行われた。カラムは、それから、平衡化緩衝液で洗浄され、引き続いて前記カプトMMCカラムから結合したrhFIXが溶出された。結果は表6に示される。
組換えヒトFIXは少なくとも6〜8の範囲のpHでカプトMMCに結合することができる。試験に用いられた3つのpHのいずれであるかに関係なく、0.5Mのアルギニン塩酸塩を加えることにより、rhFIX分子は前記カプトMMC樹脂から溶出する。
目的
この研究は培地から純粋な産物にまで組換えヒトFIXを精製することを目的とした。これには捕捉工程、親和性工程、ならびに、濃縮および緩衝液交換工程の3つの工程が含まれた。カプトMMC樹脂が捕捉工程で用いられ、非動物由来FIX親和性リガンドの工程が主要な精製工程として用いられた。最終工程として、10kDaの分子量カットオフの限外濾過システムが用いられ、まず、分子が濃縮され、それから、緩衝液が生理的緩衝環境へと交換された。
組換えヒトFIXはHEK293細胞で生産された。細胞が取り除かれ、その無細胞上清が出発物質としてカプトMMCカラムに負荷された。
GEヘルスケアの混合モード樹脂であるカプトMMC(カタログ番号17−5317)がFIX分子の捕捉工程として用いられた。カプトMMCは疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用、ならびに、水素結合を有する弱陽イオン性樹脂である。XK50カラムに16.5cmのベッド高までカプトMMC樹脂が充填された。カラム容積(CV)は324mlであった。
平衡化緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
洗浄緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
溶出緩衝液 0.1M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5Mアルギニン塩酸塩、pH7.0
CIP 1%トライトンX−100/0.5M塩化ナトリウム、1M水酸化ナトリウム、WFI、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて75ml/分の流速で前記出発物質の負荷が行われた。そして、カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、引き続いて前記カプトMMCカラムから結合したrhFIXが溶出された。結果は表7に示される。rhFIXの精製は同じ実験構成と同じタイプの緩衝液を用いて3回別々に実行された。これらの捕捉精製はpH7.0で実行された。
親和性工程として、(BAC BV、バイオアフィニティー社(BAC BV, The Bioaffinity Company)との共同作業で開発された)酵母で生産された非動物由来FIX親和性リガンド(Fab断片)が使用された。標準的なカップリング技術に従いこのリガンドをカプトMP樹脂(GEヘルスケア)に結合した。この樹脂は「FIX親和性樹脂」と称される。
平衡化緩衝液 0.15M塩化ナトリウム、10mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
洗浄緩衝液 0.15M塩化ナトリウム、10mMクエン酸ナトリウム、pH7.0
溶出緩衝液 2M塩化マグネシウム、20mMトリス塩基、pH7.4
CIP 0.1M酢酸、2M塩化ナトリウム、および、20%エタノール
保存緩衝液 20%エタノール
前記の3つの捕捉工程からの溶出液が混合され、親和性カラムでの出発物質として用いられた。カラムを平衡化緩衝液で平衡化し、引き続いて10ml/分の流速で前記出発物質の負荷が行われた。そして、カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、引き続いて親和性カラムから結合したrhFIXが溶出された。結果は表8に示される。rhFIXの精製は同じ実験構成と同じタイプの緩衝液を用いて2回別々に実行された。
限外濾過システムを用いることで、前記親和性カラムからの溶出液中のrhFIXが濃縮され、それから、同じ限外濾過フィルターを用いる透析濾過により前記緩衝液が交換された。
ペリコン2システムに設置された10kDaの分子量カットオフの特性を有するペリコン3フィルターが用いられた。
透析濾過緩衝液 0.15M塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.0、25℃での電気伝導率 18.4mS/cm
ポンプで前記試料を接線流の方向(tangenital flow)に注入し、試料の体積の小部分が連続的にペリコン3フィルターを通り抜けることができるようにすることで、体積が減少した。前記フィルターに使用される孔径のため、rhFIX分子は再循環画分に含まれる。rhFIXの分子量は約55kDaであり、10kDaの孔径のフィルターが使用されると保持される。
Claims (16)
- クロマトグラフィーを用いる一連の精製においてプリオンを含まないビタミンK依存性タンパク質を製造する方法であって、
少なくとも1つのクロマトグラフィー工程がマルチモーダル樹脂を用いて行われ、
ビタミンK依存性タンパク質を水性溶液に含む画分を提供すること、
前記ビタミンK依存性タンパク質を含む前記画分を6〜9のpHでマルチモーダル樹脂と接触させること、
前記ビタミンK依存性タンパク質を溶出する前に夾雑物を洗い流し、かつ、前記ビタミンK依存性タンパク質を保持するために、所望により、前記ビタミンK依存性タンパク質を吸着させた前記マルチモーダル樹脂を水性洗浄緩衝液で洗浄すること、
前記ビタミンK依存性タンパク質が、アルギニンを含む緩衝液において6から9のpHで前記マルチモーダル樹脂から溶出していること、ならびに、
所望により、精製された、または、濃縮された状態のビタミンK依存性タンパク質含有画分を回収すること、
を特徴とする、方法。 - 前記ビタミンK依存性タンパク質が血漿由来FIXまたは組換え技術で製造されたFIXである、請求項1に記載の方法。
- 前記マルチモーダル樹脂がマトリックスに結合した部分を含み、前記部分がイオン性相互作用、ならびに、水素結合、疎水性相互作用、および、イオウ親和性相互作用などのその他のタイプの相互作用によって水性環境中で前記ビタミンK依存性タンパク質と相互作用可能である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記水溶液が25℃で約5から約200mS/cmまでの電気伝導率に相当する塩溶液、および/または、25℃で約5から約200mS/cmまでの電気伝導率に相当する前記溶出緩衝液に前記ビタミンK依存性タンパク質を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 0.1〜0.3M、および、0.7〜1M、特に、0.3〜0.7Mの濃度でアルギニンが存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 約6から約9のpH、特にpH約6から約8、または、pH7の緩衝液で前記ビタミンK依存性タンパク質を溶出することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- アルコールなどの少なくとも1つのヒドロキシル基を含む有機化合物、アミノ酸などの少なくとも1つのアミノ基を含む有機化合物、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウムからなる群より選択される無機塩などの前記緩衝液のイオン強度を調整する少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、前記pHを約6から約9までに、特にほぼ中性の値に調整する少なくとも1つの緩衝物質、または、その組合せからなる群より選択される物質を前記溶出緩衝液がさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のうちの少なくとも1項に記載の方法。
- 前記アルコールはメタノール、プロパノール、エチレングリコール、および、プロピレングリコールからなる群より選択され、前記無機塩は塩化カリウムと塩化ナトリウムからなる群より選択され、前記非イオン性界面活性剤はツイーン20、ツイーン80、および、プルロニックF68からなる群より選択され、前記緩衝物質は6〜9のpHではクエン酸ナトリウム、ヒスチジン、HEPES、MES、トリス塩基、および、酢酸ナトリウム、pH6〜7.5の調整にはクエン酸ナトリウム、および、pH7.5〜9の調整にはトリス塩基からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
- 前記ビタミンK依存性タンパク質を塩化ナトリウム/エチレングリコールの組合せ、アルギニン/塩化ナトリウムの組合せ、または、アルギニン/エチレングリコールの組合せで溶出する、請求項1〜8の少なくとも1項に記載の方法。
- 前記「マルチモーダル」クロマトグラフィー樹脂が、下記の部分、
a. 正に荷電するN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンリガンド、
b. 負に荷電する2−(ベンゾイルアミノ)ブタン酸リガンド、
c. フェニルプロピルリガンド、
d. N−ヘキシルリガンド、
e. 4−メルカプト−エチル−ピリジンリガンド、
f. 3−((3−メチル−5−((テトラヒドロフラン−2−イルメチル)−アミノ)−フェニル)−アミノ)−安息香酸リガンド、
のうちの少なくとも1つ、または、これらの組合せを含むことを特徴とする、請求項1〜9のうちの少なくとも1項に記載の方法。 - 前記「マルチモーダル」クロマトグラフィー樹脂が、市販の樹脂であるHEPハイパーセル(商標)、PPAハイパーセル(商標)、カプト・アドヒア(商標)、カプトMMC(商標)、MEPハイパーセル(商標)から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記マルチモーダルクロマトグラフィー工程が、ビタミンK依存性タンパク質親和性クロマトグラフィー工程と組み合わされ、前記親和性は酵母で発現されるタンパク質に基づくリガンドによってもたらされ、かつ、得られた溶出液の純度は90%より高いことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記の一連の精製がさらに、化学作用に基づく不活化工程、限外濾過、クロマトグラフィー工程、または、それらの組合せを含み、除去される病原体に関する様々な生理的特性に基づく病原体除去/不活化工程を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記の一連の精製がさらに、下記の工程、
i. カプトMMCなどの陽イオンマルチモーダル樹脂、
ii. 脂質膜で覆われたウィルスを化学作用に基づき不活化する工程、特にトリ−n−ブチルリン酸とトライトンX−100を用いる溶媒/界面活性剤−不活化工程、
iii. 酵母で発現されるビタミンK依存性タンパク質の抗体断片からなるリガンドなどのタンパク質性リガンドに基づく親和性樹脂、
iv. プラノバ20Nなどの約20nmの平均孔径のフィルターでの病原体濾過除去工程
v. QセファロースFFまたはカプトQなどの陰イオン交換体樹脂、
vi. 10kDaの分子量カットオフの特性を有するペリコン3などの限外濾過工程
を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。 - 前記マルチモーダルクロマトグラフィー工程が親和性クロマトグラフィー工程と組み合わされ、前記親和性は酵母で発現されるタンパク質に基づくリガンドによってもたらされ、そして、その結果得られる前記親和性クロマトグラフィー樹脂からの産物の純度は95%より高いことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
- サイズ排除クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および、固定化金属親和性クロマトグラフィーから選択される追加のクロマトグラフィー工程が実行されること、および、最終産物の純度が99%よりも高いことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
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