JP2013522436A - 生物学的に活性のある物質を生成するための中間体として有用な置換シクロデキストリン誘導体 - Google Patents

生物学的に活性のある物質を生成するための中間体として有用な置換シクロデキストリン誘導体 Download PDF

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Abstract

本発明は、従来技術の手順で利用可能なはっきりと規定されていない混合物とは対照的に、十分に規定されたカルボキシアルキル化シクロデキストリンを生成するのに特に有用な中間体である置換シクロデキストリン誘導体に関する。本発明は、限られた数の工程でのそれらの調製プロセスにも関する。これらの十分に規定されたカルボキシアルキル化シクロデキストリンを当該技術分野で標準的な手順に従って多硫酸化することができ、これらのポリスルフェート及びそのアルカリ塩の一部が、特に変形性関節疾患(例えば骨関節炎)若しくはヘパリン起因性血小板減少症の治療及び/若しくは予防のために、又は軟骨修復若しくは結合組織修復のために生物学的に活性のある特性を示すことが分かっている。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来技術の手順で利用可能なはっきりと規定されていない混合物とは対照的に、十分に規定されたカルボキシアルキル化シクロデキストリンを生成するのに特に有用な中間体である置換シクロデキストリン誘導体に関する。本発明は、限られた数の工程でのそれらの調製プロセスにも関する。これらの十分に規定されたカルボキシアルキル化シクロデキストリンを当該技術分野で標準的な手順に従って多硫酸化することができ、これらのポリスルフェート及びそのアルカリ塩の一部が、特に変形性関節疾患(例えば骨関節炎)若しくはヘパリン起因性血小板減少症の治療及び/若しくは予防のために、又は軟骨修復若しくは結合組織修復のために生物学的に活性のある特性を示すことが分かっている。
シクロデキストリンは、1−4グリコシド結合で連結した5個以上のD−グルコピラノシド単位を含有する環状のオリゴ糖及び多糖の広範なファミリーを構成する。最も典型的なシクロデキストリンは、環(以下、「シクロデキストリンコア」と呼ばれる)に6個〜8個のグルコピラノシド単位のセットを含有し、円錐形を作り出す。このファミリー内では、α−シクロデキストリンは環に6個のグルコピラノシド単位を有し、β−シクロデキストリンは環に7個のグルコピラノシド単位を有し、γ−シクロデキストリンは環に8個のグルコピラノシド単位を有する。それぞれのグルコピラノシド単位は、標準的な原子付番システムに従って、6位の炭素に1個の第一級アルコール基と、2位及び3位の炭素に2個の第2級アルコール基とを有する。シクロデキストリンの多くの化学修飾は、例えば非特許文献1で要約されるように、当該技術分野で既知である。1461頁〜1462頁及び表31においてこの報告が、結合したカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体の多くが親シクロデキストリンの様々な数のヒドロキシル基が官能化されている混合物であることを述べている。例えば、特許文献1は、置換度が0.066のβ−シクロデキストリンのカルボキシメチルエーテルの混合物(実施例6)及び置換度が0.045及び0.02のβ−シクロデキストリンのカルボキシエチルエーテルの混合物(実施例7及び実施例8)を記載している。ペンダント型のカルボン酸基を有するシクロデキストリン誘導体を挙げるテトラヘドロンレポートの1463頁(表32)に見られる唯一のシクロデキストリンのカルボキシアルキルエーテル誘導体は、そのカルボキシ−メチル基がグルコピラノシド単位の第2級アルコール基をエーテル化する化合物であるモノ[2(3)−O−(カルボキシメチル)]−α−シクロデキストリンである。この状況は、市販、例えばCyclolab Ltd.(Hungary)のカタログによっても確認され、ここでカルボキシメチル化シクロデキストリン及びカルボキシエチル化シクロデキストリンはそれぞれ約3.5及び約3の平均置換度でランダムに置換されるとされている。
非特許文献2は、過ベンジル化シクロデキストリンの位置選択的なモノ−デ−O−ベンジル化及びジ−デ−O−ベンジル化を開示しており、過ベンジル化シクロデキストリンは非特許文献3に開示されている。この教示が、遊離第一級ヒドロキシル基(複数の場合もあり)を更に反応させることによって十分に規定された修飾シクロデキストリンの合成に対する新たな道を開いている。非特許文献3は、対応するヨウ化ビス、6A,6D−ジ−O−(メチル)−α−シクロデキストリン誘導体及び6A,6D−ジ−O−(プロペニル)−α−シクロデキストリン誘導体等の例を示す。
シクロデキストリンポリスルフェートの医薬使用は例えば、関節症を罹患するヒトの治療を教示する特許文献2から既知である。非特許文献4によれば、実験的な骨関節炎のウサギモデルに皮下投与したβ−シクロデキストリンポリスルフェートは、罹患関節において軟骨損傷及び骨細胞形成を低減した。しかしながら、β−シクロデキストリンポリスルフェートのヘパリン/血小板第IV因子抗体との交差反応によるヘパリン起因性血小板減少症及び血栓閉栓性の事象を誘発する潜在性は、関節症の治療における、すなわち罹患関節の軟骨損傷及び骨細胞形成の低減を実現するためのシクロデキストリンポリスルフェートの使用における大きな懸念である。そのため、軟骨保護能の保存、凝固に対する効果の低減、及びヘパリン起因性血小板減少症に対するリスクの低減を有する化学的に修飾されたβ−シクロデキストリンポリスルフェートが当該技術分野で必要とされている。したがって本発明の目的は、骨関節炎、関節リウマチ、関節症若しくは変形性関節炎等の変形性関節疾患の治療及び/若しくは予防に、又は軟骨修復若しくは結合組織修復に使用することができるが、当該技術分野で観察される副作用がない化学的に修飾されたシクロデキストリンポリスルフェート、特にβ−シクロデキストリンポリスルフェートを提供することである。
このため、上述の目的に好適であり、かつヘパリン起因性及びヘパリン様起因性の血小板減少症に罹患した個体において血小板凝集及び血管内血栓形成の誘発の低減を有することを特徴とする化学的に修飾されたシクロデキストリンポリスルフェート、特にβ−シクロデキストリンポリスルフェートが当該技術分野で必要とされている。上述の目的に使用することができるが、強い抗凝固活性を誘発しない化学的に修飾されたシクロデキストリンポリスルフェート、特にβ−シクロデキストリンポリスルフェートも当該技術分野で必要とされている。上述の目的で使用することができるが、ヘパリン−血小板第IV因子複合体反応性抗体の存在下で血小板活性化又は血栓形成を誘発しない化学的に修飾されたシクロデキストリンポリスルフェート、特にβ−シクロデキストリンポリスルフェートも当該技術分野で必要とされている。上述の目的で使用することができるが、接触系のヘパリン様起因性の活性化のない、特に強力な血管作用メディエータであるブラジキニンのヘパリン起因性若しくはヘパリン様起因性の活性化/発生のない、及び/又は補体由来のアナフィラトキシン、例えばC3a及びC5aの活性化/発生のない化学的に修飾されたシクロデキストリンポリスルフェート、特にβ−シクロデキストリンポリスルフェートも当該技術分野で必要とされている。
化学的に修飾されたシクロデキストリンが、生物学的に活性のある作用物質としての、例えばそれらのポリスルフェート及び/又はその塩の形態での使用が意図される場合、化合物の混合物に代表される、平均置換度でのランダム置換により生じる構造的多様性の状況は、規制及び品質管理の理由からほとんど又は全く許容されない。
米国特許第3,426,011号 米国特許第6,930,098号
A. Croft and R. Bartsch in Tetrahedron Report No. 147, Tetrahedron(1983) 39(9):1417-1474 Pearce et al in Angew. Chem. Int. Ed. (2000) 39:3610-3612 Sato et al in Carbohydr. Res. (1990) 199:31-35 Osteoarthritis and Cartilage (2008) 16:986-993
このため、個々の構造式に代表される割当可能な質量又は核磁気共鳴スペクトルを有する単一の化合物の形態で十分に規定されたカルボキシアルキルシクロデキストリン誘導体を直接得るための合成経路及び好適な中間体を提供することが、本件の特許請求の範囲に記載された発明により対処される課題の1つである。
好ましくは2個のカルボキシアルキル部分がグルコピラノース単位の6位の炭素に、より好ましくはαシクロデキストリンコア及びβシクロデキストリンコアのグルコピラノース単位A及びグルコピラノース単位Dの6位の炭素にそれぞれ位置するこのような単一の化合物を提供することが本件の特許請求の範囲に記載された発明により対処される別の課題である。
最低限の数のプロセス工程で、不必要に複雑な化学反応又はコストのかかる試薬及び/若しくは触媒を避けて、これらの単一の化合物を得るための合成方法を提供することが、本件の特許請求の範囲に記載された発明により対処される別の課題である。またβ−シクロデキストリンポリスルフェートの潜在的な副作用の一部を取り除く(cure)目的で、これらの十分に規定されたカルボキシアルキルで修飾されたシクロデキストリン誘導体は容易に多硫酸化されるものとする。
本発明により対処される課題は、過ベンジル化シクロデキストリンのモノ−デ−O−ベンジル化生成物又はジ−デ−O−ベンジル化生成物から出発して、これに例えばウィリアムソンのエーテル合成、又は末端カルボン酸エステル部分若しくは末端ニトリル部分を含有する試薬による1,4−付加(いわゆるマイケル付加反応)によるエーテル化を施すことにより、コスト効率的に解決することができることが予期せず見出された。それから最終的に、このエーテル化反応で得られる中間体を、例えばBistri et al., Chem. Eur. J. (2007) 13, 9759-9774により提唱されるような当該技術分野で既知の手順を用いて接触水素化により完全に脱ベンジル化することができ(図1におけるRef.3)、それらの末端カルボン酸エステル部分又は末端ニトリル部分を水素化分解又は加水分解により末端カルボン酸部分へと任意に変換することができる。それから得られる完全に脱ベンジル化されたカルボキシアルキルシクロデキストリン誘導体を、標準的な手順に従って硫酸化し、任意でアルカリ塩を形成することができる。それぞれの工程で、本発明の合成手順は有益には、当該技術分野で既知であるランダム変動性の混合物ではなく、単一の化合物を形成する。本発明の別の利点は、過ベンジル化シクロデキストリンの出発モノ−デ−O−ベンジル化生成物又はジ−デ−O−ベンジル化生成物に存在する位置選択性、すなわちグルコピラノース単位の6位の炭素に、より好ましくはシクロデキストリンコアのグルコピラノース単位A及びグルコピラノース単位Dの6位の炭素にそれぞれ位置する1個又は2個のアルコール基が上記の一連の化学修飾を通して十分に保存されることである。
ω−ハロ−アルケン(R−X)又はω−ヒドロキシ−アルケン(R−OH)付加により構造式(A)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するための合成経路を概略的に示す図である。 1,4−付加反応により構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスの一般原理を概略的に示す図である。 tert−ブチルアクリレートとの1,4−付加反応により構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスの特定の実施形態を概略的に示す図である。 構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体上のtert−ブチル基の切断を概略的に示す図である。 6A,6D−ジ−O−(カルボキシエチル)−β−シクロデキストリンを生成するための構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体上のベンジル基の脱保護を概略的に示す図である。
定義
置換基に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「C1〜6アルキル」という用語は、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、1−メチルエチル(イソプロピル)、2−メチルプロピル(イソブチル)、1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)、2−メチルブチル、n−ペンチル、ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル等の1個〜6個の炭素原子を有する一価の直鎖及び分岐鎖の非環式飽和炭化水素基を意味する。類推すると、「C1〜4アルキル」という用語は、1個〜4個の炭素原子を有するこのような基を表す、すなわち最大でブチル異性体を含む。
置換基に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「C3〜11シクロアルキル」という用語は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の3個〜10個の炭素原子を有し、また任意でメチル置換基を有する一価の単環若しくは多環の飽和炭化水素基、又は例えばノルボルニル、イソボルニル、フェンチル、トリメチルトリシクロヘプチル、アダマンチル、メチルアダマンチル、メンチル等の7個〜11個の炭素原子を有するC7〜11の一価の多環式飽和炭化水素基を表す。類推すると、「C5〜6シクロアルキル」という用語は、5個又は6個の炭素原子を有するこのような基、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシルを表す。
置換基に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「アリール」という用語は、例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル等の融合ベンゾ−C4〜8シクロアルキルラジカル(これは上に定義されるようなものである)(上記のラジカルは全て、1つ又は複数の非反応性の置換基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フルオロ等)で任意に置換されている)を含む、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラシル(phenantracyl)、フルオランテニル(fluoranthenyl)、クリセニル、ピレニル、ビフェニリル、テルフェニル、ピセニル、インデニル、ビフェニル、インダセニル、ベンゾシクロブテニル、ベンゾシクロオクテニル等であるが、これらに限定されない6個〜最大30個の炭素原子を有する任意の一価の単環又は多環の芳香族炭化水素基を示す。
置換基に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「C1〜4アルコキシ」、「C3〜10シクロアルコキシ」、「アリールオキシ」及び「C1〜4アルキルチオ」という用語は、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、フェニルオキシ等であるが、これらに限定されない、それぞれC1〜4アルキル基、C3〜10シクロアルキル基又はアリール基(本明細書で定義されるようなそれらのそれぞれ)の炭素原子が単結合により酸素原子又は二価の硫黄原子と結合する置換基を表す。
置換基に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「アリール−C1〜4アルキル」という用語は、ベンジル、4−フルオロベンジル、2−フルオロベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、4−tert−ブチルベンジル、フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−フェニルエチル等であるが、これらに限定されない、アリール基(上で定義されるような)が炭素原子を介して結合するC1〜4アルキル基(上で定義されるような)を表し、上記基のそれぞれが、1つ又は複数の非反応性の置換基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フルオロ等)で任意に置換されていてもよい。
シクロデキストリン誘導体に対して本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「完全に置換された」という用語は、任意のグルコピラノース単位のいずれの位置にも遊離ヒドロキシル基が残っていないことを意味し、これは完全に置換されたα−シクロデキストリン誘導体が18個の置換基を有し、完全に置換されたβ−シクロデキストリンが21個の置換基を有し、完全に置換されたγ−シクロデキストリンが24個の置換基を有することも意味する。
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「立体異性体」という用語は、本発明の化合物が包含し得る全ての可能な様々な異性体型及び立体配座型、特に基本的な分子構造の全ての可能な立体化学的な異性体型及び立体配座的な異性体型、全てのジアステレオマー、エナンチオマー及び/又は配座異性体を表す。本発明の化合物の幾つかが異なる互変異性体型で存在していたとしても、これらは全て本発明の範囲内に含まれる。
本発明の第1の態様は、構造式:
(BnO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OR’] (A)
(BnO)−CD−[CH−O−R−CN] (B)
(これらの構造式のそれぞれにおいて、Bnはベンジルであり、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
またR及びRはそれぞれ独立して、二価の飽和又は不飽和C1〜10アルキルであり、ここで上記C1〜10アルキルは任意で、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、カルボキシル、シアノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、エトキシ及びフェニルから選択される1個〜3個の置換基で置換され、R’は水素、C1〜6アルキル、C5〜6シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルキルチオ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルキル及びC5〜11シクロアルキルからなる群から選択され、それぞれのアリールは任意で、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェノキシ、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される1個〜2個の置換基で置換される)
のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を提供することである。
本発明の更なる態様は、構造式:
(BnO)−CD−[CH−O−CH−R−C(=O)−OR’] (I)
(BnO)−CD−[CH−O−CH=R−C(=O)−OR’] (Ia)
(BnO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OR’’] (II)
(BnO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−CN] (III)
(これらの構造式のそれぞれにおいて、Bnはベンジルであり、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
また式(I)及び式(Ia)では、
Rは単結合、又は1個〜4個の炭素原子を有する飽和脂肪族鎖であり、
R’は、水素、C1〜6アルキル、C5〜6シクロアルキル及びアリール−C1〜4アルキルからなる群から選択され、
また式(II)では、
は、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル及びシアノからなる群から選択され、
R’’は、C1〜6アルキル;C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル;C1〜4アルキルチオ−C1〜4アルキル;アリール−C1〜4アルキル(ここで上記アリールは任意で、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェノキシ及びフェニルからなる群から選択される1個の置換基で置換される);任意でC1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェニル及びベンジルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されたアリール;並びにC5〜11シクロアルキルからなる群から選択され、
また式(III)では、Rは、C1〜6アルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、シアノ、エトキシ及びフェニルからなる群から選択される)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体のファミリーに関する。
本発明の上で挙げられる態様の好ましい実施形態は、nが2である完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。これは2つの理由によるものである:第1に、Pearceによって、副生成物を形成することなく、過ベンジル化シクロデキストリンのジ−デ−O−ベンジル化生成物を、対応するモノ−デ−O−ベンジル化生成物より良好な収率で得ることができることが知られており、第2に多硫酸化後に本発明の化学修飾により従来技術のシクロデキストリンポリスルフェートを上回るかなりの利点をもたらすためには、シクロデキストリンコアの2個のグルコピラノース単位を修飾する必要があり得ることが予測される。
シクロデキストリンコアにおけるグルコピラノース単位の数は、本発明の上に挙げられた態様の必須のパラメーターではない。実用性及び商業的な利用可能性の理由から、この数は6、7又は8が好ましいとされる。このため、本発明の上で挙げられた態様の1つの特定の実施形態は、CDがβ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが21である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが19である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で規定された完全に置換されたβ−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の別の特定の実施形態は、CDがα−シクロデキストリンコアを表し、m+nが18である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが16である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で規定された完全に置換されたα−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の別の特定の実施形態は、CDがγ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが24である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが22である構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で規定された完全に置換されたγ−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の好ましい実施形態は、nが2であり、両方の非ベンジル置換基が、シクロデキストリンコアのグルコピラノース単位の6位の炭素、より好ましくはグルコピラノース単位A及びグルコピラノース単位Dの6位の炭素にそれぞれ位置している構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の1つの実施形態は、Rが2個又は3個又は4個の炭素原子を有する飽和脂肪族の直鎖又は分岐鎖である構造式(I)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明の上で挙げられた態様の別の実施形態は、R’がベンジルである構造式(A)、構造式(I)若しくは構造式(Ia)で表される、又はR’’がベンジルである構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体(例えばαシクロデキストリン誘導体、βシクロデキストリン誘導体又はγシクロデキストリン誘導体)に関する。この特定の特徴は、このR’又はR’’のベンジル基を切断するのと、シクロデキストリンコアに存在する他のm個のベンジル基を切断するのとで全く同じ脱保護技法をより後の段階で使用することができるため、有利である。
本発明の第3の態様は、構造式:
(HO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OH] (C)
(HO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OH] (D)
(これらの構造式のそれぞれにおいて、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、
及びRはそれぞれ独立して、二価の飽和又は不飽和C1〜10アルキルであり、ここで上記C1〜10アルキルは任意で、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、シアノ、カルボキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、エトキシ及びフェニルから選択される1個〜3個の置換基で置換される)
のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体である。特定の実施形態では、式(C)の一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体は、式(A)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体から誘導され、式(D)の一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体は、式(B)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体から誘導され、ここでR及びRはそれぞれ(respectively)、式(A)及び式(B)の上記シクロデキストリン誘導体に用いられるR及びRの規定に対応する。
本発明の第4の態様は、構造式:
(HO)−CD−[CH−O−CH−R−C(=O)−OH] (IV)
(HO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OH] (V)
(HO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OH](VI)
(これらの構造式のそれぞれにおいて、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、
また式(IV)では、Rは2個〜4個の炭素原子を有する飽和脂肪族分岐鎖であり、
また式(V)では、Rは、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、シアノ及びカルボキシルからなる群から選択され、
また式(VI)では、Rは、C1〜6アルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、シアノ、カルボキシル、エトキシ及びフェニルからなる群から選択される)
のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体のファミリーに関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の好ましい実施形態は、nが2である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で規定された一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。この理由は、多硫酸化後に本発明の化学修飾により従来技術のシクロデキストリンポリスルフェートを上回るかなりの利点をもたらすためには、シクロデキストリンコアの2個のグルコピラノース単位を修飾する必要があるという予測によるものである。
シクロデキストリンコアにおけるグルコピラノース単位の数は、本発明のこの第2の態様の必須のパラメーターではない。実用性及び商業的な利用可能性の理由から、この数は6、7又は8が好ましいとされる。このため、本発明のこれらの第3及び第4の態様の1つの特定の実施形態は、CDがβ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが21である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが19である二置換されたβ−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の別の特定の実施形態は、CDがα−シクロデキストリンコアを表し、m+nが18である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(IVa)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが16である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)、及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された二置換されたα−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の別の特定の実施形態は、CDがγ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが24である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の好ましい実施形態は、nが2であり、mが22である構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つにより上記で広く規定された二置換されたγ−シクロデキストリン誘導体に関する。
本発明のこれらの第3及び第4の態様の好ましい実施形態は、両方の置換基が、シクロデキストリンコアのグルコピラノース単位の6位の炭素、より好ましくはグルコピラノース単位A及びグルコピラノース単位Dの6位の炭素にそれぞれ位置している、二置換されたシクロデキストリン誘導体(n=2)に関する。
本発明の第5の態様は、構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスであって、
(a)過ベンジル化シクロデキストリンのモノ−デ−O−ベンジル化生成物又はジ−デ−O−ベンジル化生成物である第一級アルコール又はジオールを準備する工程と、
(b)上記第一級アルコール又はジオールにエーテル化反応を施す工程と、
(c)構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される上記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を回収する工程と、
を含む、構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスに関する。
工程(a)で準備されたモノ−デ−O−ベンジル化生成物又はジ−デ−O−ベンジル化生成物のそれぞれの第一級アルコール基(複数の場合もあり)を、
構造式(A)で与えられるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−R−C(=O)−OR’を有する基;
構造式(I)で表されるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−CH−R−C(=O)−OR’を有する基;
構造式(Ia)で表されるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−CH=R−C(=O)−OR’を有する基;
構造式(II)で表されるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−CH−CH(R)−C(=O)−OR’’を有する基;
構造式(B)で表されるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−R−CNを有する基;又は
構造式(III)で表されるシクロデキストリン誘導体を得るための構造式O−CH−CH(R)−CNを有する基
で直接又は間接的に置き換えるのに好適な任意のエーテル化方法を、本発明のこのプロセスの工程(b)に使用することができる。
したがって、本発明のこの第5の態様の1つの実施形態は、生成される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(A)で表され、工程(b)のエーテル化反応が、上記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(A)で広く規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行するプロセスに関する。この実施形態によれば、構造式O−R−R−C(=O)−OR’を有する基が工程(a)で準備された生成物の第一級アルコール基(複数の場合もあり)のそれぞれに直接置き換えられる。
したがって、本発明のこの第5の態様の1つの実施形態は、上記生成される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(I)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が、上記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−CH−R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(I)で広く規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行するプロセスに関する。この実施形態によれば、構造式O−CH−R−C(=O)−OR’を有する基が工程(a)で準備された生成物の第一級アルコール基(複数の場合もあり)のそれぞれに直接置き換えられる。この実施形態では、Xはブロモ又はヨードであるのが好ましい。Xがクロロである場合、塩化物とのハロゲン化物交換を行い、はるかに反応性の高いヨウ化物を得ることが可能な可溶性ヨウ化物塩を触媒量添加することにより、ω−クロロカルボン酸エステル又はω−クロロカルボン酸の反応性を促進することが有用であり得る。
したがって、本発明のこの第5の態様の別の実施形態は、生成される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(Ia)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が、上記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−CH−R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(Ia)で広く規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行するプロセスに関する。この実施形態によれば、構造式O−CH−R−C(=O)−OR’を有する基が工程(a)で準備された生成物の第一級アルコール基(複数の場合もあり)のそれぞれに直接置き換えられる。この実施形態では、Xはブロモ又はヨードであるのが好ましい。Xがクロロである場合、塩化物とのハロゲン化物交換を行い、はるかに反応性に高いヨウ化物を得ることが可能な可溶性ヨウ化物塩を触媒量添加することにより、ω−クロロカルボン酸エステル又はω−クロロカルボン酸の反応性を促進することが有用であり得る。上述の一般的合成の具体例を以下の実施例2(アクリルエステルの付加)及び実施例3(プロピオレートエステルの付加)に与える。
このプロセスの特定の実施形態によれば、Rが飽和脂肪族直鎖である構造式(I)又は構造式(Ia)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を提供するために、ω−ハロカルボン酸エステルは、メチルクロロアセテート、メチルブロモアセテート、エチルブロモアセテート、エチルクロロアセテート、プロピルクロロアセテート、n−プロピルブロモアセテート、ブチルクロロアセテート、tert−ブチルブロモアセテート、ヘキシルクロロアセテート、ヘキシルブロモアセテート、シクロペンチルクロロアセテート、シクロペンチルブロモアセテート、シクロヘキシルクロロアセテート、シクロヘキシルブロモアセテート、ベンジルクロロアセテート、ベンジルブロモアセテート、2−フェニルエチルブロモアセテート、2−フェニルエチルクロロアセテート、3−フェニルプロピル2−クロロアセテート、メチル3−クロロプロピオネート、メチル3−ブロモプロピオネート、エチル3−クロロプロピオネート、エチル3−ブロモプロピオネート、プロピル3−ブロモプロピオネート、ブチル3−クロロプロピオネート、シクロヘキシル3−ブロモプロピオネート、シクロヘキシル3−クロロプロピオネート、ベンジル3−クロロプロピオネート、エチルヨードアセテート、tert−ブチルヨードアセテート、メチル3−ヨードプロピオネート、エチル3−ヨードプロピオネート、tert−ブチル3−ヨードプロピオネート、メチル4−ヨードブチレート、エチル4−ヨードブチレート、tert−ブチル4−ヨードブチレート、エチル5−ヨードバレレート、メチル6−ヨードヘキサノエート、エチル6−ヨードヘキサノエート、tert−ブチル6−ヨードヘキサノエート、メチル4−クロロブチレート、エチル4−クロロブチレート、プロピル4−クロロブチレート、イソプロピル4−クロロブチレート、ブチル4−クロロブチレート、シクロヘキシル4−クロロブチレート、ベンジル4−クロロブチレート、メチル4−ブロモブチレート、エチル4−ブロモブチレート、プロピル4−ブロモブチレート、イソプロピル4−ブロモブチレート、ブチル4−ブロモブチレート、シクロヘキシル4−ブロモブチレート、ベンジル4−ブロモブチレート、メチル5−クロロバレレート、エチル5−クロロバレレート、プロピル5−クロロバレレート、イソプロピル5−クロロバレレート、ブチル5−クロロバレレート、シクロヘキシル5−クロロバレレート、ベンジル5−クロロバレレート、メチル5−ブロモバレレート、エチル5−ブロモバレレート、プロピル5−ブロモバレレート、イソプロピル5−ブロモバレレート、ブチル5−ブロモバレレート、シクロヘキシル5−ブロモバレレート、ベンジル5−ブロモバレレート、メチル6−クロロヘキサノエート、エチル6−クロロヘキサノエート、プロピル6−クロロヘキサノエート、イソプロピル6−クロロヘキサノエート、ブチル6−クロロヘキサノエート、シクロヘキシル6−クロロヘキサノエート、ベンジル6−クロロヘキサノエート、メチル6−ブロモヘキサノエート、エチル6−ブロモヘキサノエート、プロピル6−ブロモヘキサノエート、イソプロピル6−ブロモヘキサノエート、ブチル6−ブロモヘキサノエート、シクロヘキシル6−ブロモヘキサノエート及びベンジル6−ブロモヘキサノエートからなる群から選択され得る。
このプロセスの別の特定の実施形態によれば、Rが飽和脂肪族分岐鎖である構造式(I)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を提供するために、ω−ハロカルボン酸エステルは、メチル(R)−(+)−3−ブロモ−2−メチルプロピオネート、メチル4−クロロ−2−メチルブチレート、エチル4−ブロモ−2−メチルブチレート、エチル5−ブロモ−3−メチルバレレート、(R)−5−ブロモ−4−メチルバレレート及びメチル2,2−ジメチル−3−クロロプロピオネートからなる群から選択され得る。
このプロセスの別の特定の実施形態によれば、Rが飽和脂肪族直鎖である構造式(I)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を提供するために、ω−ハロカルボン酸は、2−クロロ酢酸、2−ブロモ酢酸、2−ヨード酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、3−ヨードプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−ブロモ酪酸、4−ヨード酪酸、5−クロロ吉草酸、5−ブロモ吉草酸及び5−ヨード吉草酸からなる群から選択され得る。
このプロセスの別の特定の実施形態によれば、Rが飽和脂肪族分岐鎖である構造式(I)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を提供するために、ω−ハロカルボン酸は、例えば3−クロロ−2−メチルプロピオン酸又は4−クロロ−3−メチル酪酸であり得る。
当業者にとって既知であるように、典型的なウィリアムソン反応を比較的穏やかな温度で(例えば約50℃〜100℃の範囲内で)行うことができ、ハロゲンの選択、第一級アルコール基の鎖長及び接近性に応じて約1時間〜8時間で完了させることができる。典型的なウィリアムソン反応を、アセトニトリル又はN,N−ジメチルホルムアミド等であるが、これらに限定されない溶媒中で行うことができる。プロトン性溶媒及び非極性溶媒は反応速度を大きく遅らせる危険性を軽減するために避けるのが好ましいとされる。
ウィリアムソンのエーテル合成による、式(A)の化合物で規定されたようにRが−R−C(=O)−OR’である構造式(A)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を生成するための図1に示される代替的な第1の合成経路(i)は以下の工程順序によるものである:
まず初めに、工程(a)で準備された生成物を、構造式HC=CH−(CH−X(式中、Xはクロロ、ブロモ又はヨードであり、pは0〜4である)で表されるω−ハロ−アルケンと、又は構造式HC=CH−(CH−OH(式中、pは0〜4である)で表されるω−ヒドロキシ−アルケンと反応させ、
次に末端アルケンを対応するカルボン酸へと酸化させる。
この第1の代替的な合成経路の第1の工程に必要とされるω−ハロ−アルケンの代表例としては、臭化ビニル(p=0)、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル(p=1)、4−ブロモ−1−ブテン(p=2)、5−ブロモ−1−ペンテン(p=3)及び6−ブロモ−1−ヘキセン(p=4)が挙げられるが、これらに限定されない。
この第2の代替的な合成経路の第2の工程に必要とされるω−ヒドロキシ−アルケンの代表例としては、ビニルアルコール(p=0)、アリルアルコール(p=1)、3−ブテン−1−オール(p=2)、4−ペンテン−1−オール(p=3)及び5−ヘキセン−1−オール(p=4)が挙げられるが、これらに限定されない。
この第1の代替的な合成経路の第2の酸化工程は、ヨウ素酸ナトリウムと合わせた、遷移金属触媒、例えば三塩化ルテニウム又は酸化オスミウムのような元素分類の第VIII族の遷移化合物の存在下での酸化方法等であるが、これらに限定されない既知の酸化方法に従って行うことができる。このような方法の実施に関わる詳細は、Buskas et al in J. Org. Chem. (2000) 65:958-963(その内容が参照により援用される)に見ることができる。
ウィリアムソンのエーテル合成による、式(A)の化合物で規定されたようにRが−R−C(=O)−OR’である構造式(A)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を生成するための図1に示される代替的な第2の合成経路(ii)は以下の工程順序によるものである:
まず初めに、工程(a)で準備された生成物を対応する一ハロゲン化物又は二ハロゲン化物、特に一ヨウ化物又は二ヨウ化物へと変換させ、
次に、上記一ハロゲン化物又は二ハロゲン化物を構造式HC=CH−(CH−OH(式中、pが0〜4である)で表されるω−ヒドロキシ−アルケンと反応させ、
最後に、末端アルケンを対応するカルボン酸へと酸化させる。
この第2の代替的な合成経路の第1の工程を、非特許文献3の方法論に従って、すなわちトルエン等の好適な溶媒中で、並びにトリフェニルホスフィン及びイミダゾール等であるが、これらに限定されない触媒系の存在下において工程(a)で準備された生成物をヨウ素と反応させて行うことができる(上で言及されたRef.1)。
この第2の代替的な合成経路の第2の工程に必要とされるω−ヒドロキシ−アルケンの代表例としては、ビニルアルコール(p=0)、アリルアルコール(p=1)、3−ブテン−1−オール(p=2)、4−ペンテン−1−オール(p=3)及び5−ヘキセン−1−オール(p=4)が挙げられるが、これらに限定されない。
この代替的な第2の合成経路の最後の酸化工程を、ヨウ素酸ナトリウムと合わせた、遷移金属触媒、例えば三塩化ルテニウム又は酸化オスミウムのような元素分類の第VIII族の遷移化合物の存在下での酸化方法等であるが、これらに限定されない既知の酸化方法に従って行うことができる。このような方法の実施に関わる詳細は、Buskas et al in J. Org. Chem. (2000) 65:958-963(その内容が参照により援用される)に見ることができる。
それからこのエーテル化反応により得られる、構造式(A)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を、例えばBistri et al., Chem. Eur. J. (2007) 13, 9759-9774により提唱されるような当該技術分野で既知の手順を用いた接触水素化により完全に脱ベンジル化し(図1におけるRef.3)、式(C)で表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を得ることができる。
これら2つの代替的な合成経路では、反応温度、反応時間及び溶媒の選択に関する実施上の配慮点は、ウィリアムソン反応に関して上で概説されたものと同じである。これらの代替経路によるエーテル合成の具体例を、6A,6D−ジ−O−(エチレンカルボン酸)−β−シクロデキストリンの合成における以下の実施例1に与える。
本発明のプロセスの別の実施形態は、構造式(II)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスに関し、ここで工程(b)のエーテル化反応が上記第一級アルコール又はジオールと、アクリル酸エステル又はα置換したアクリル酸エステルとの間の1,4−付加反応を介して進行する。
このようなプロセスをβ−シクロデキストリンに関して図2に概略的に示す。この図では示されていないが、このプロセスはα−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンにも適用可能である。
アクリル酸エステル又はα置換したアクリル酸エステルの選択は本発明のこのプロセスの必須のパラメーターではない。R及びR’’の望ましいタイプに応じて、上記アクリル酸エステル又はα置換したアクリル酸エステルは、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート、o−メチルベンジルアクリレート、p−メチルベンジルアクリレート、o−メトキシベンジルアクリレート、p−メトキシベンジルアクリレート、p−エトキシベンジルアクリレート、p−n−ブチルベンジルアクリレート、p−フェノキシベンジルアクリレート、p−フェニルベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、p−メチルフェニルアクリレート、3,5−ジメチルフェニルアクリレート、2,6−ジイソプロピルフェニルアクリレート、p−メトキシフェニルアクリレート、p−エトキシフェニルアクリレート、ビフェニルアクリレート、p−ベンジルフェニルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、1−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、メンチルアクリレート(それらの全てのエナンチオマー型を含む)、2−ノルボルニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、o−メチルベンジルメタクリレート、p−メチルベンジルメタクリレート、o−メトキシベンジルメタクリレート、p−メトキシベンジルメタクリレート、p−エトキシベンジルメタクリレート、p−n−ブチルベンジルメタクリレート、p−フェノキシベンジルメタクリレート、p−フェニルベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、p−メチルフェニルメタクリレート、3,5−ジメチルフェニルメタクリレート、2,6−ジイソプロピルフェニルメタクリレート、p−メトキシフェニルメタクリレート、p−エトキシフェニルメタクリレート、ビフェニルメタクリレート、p−ベンジルフェニルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、メンチルメタクリレート(それらの全てのエナンチオマー型を含む)、2−ノルボルニルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−メトキシエチルアクリレート、1−イソプロポキシエチルアクリレート、1−イソブトキシエチルアクリレート、1−(tert−ブトキシ)エチルアクリレート、1−エトキシメチルアクリレート、1−メトキシメチルアクリレート、1−イソプロポキシメチルアクリレート、1−ブトキシメチルアクリレート、1−(tert−ブトキシ)メチルアクリレート、1−エチルチオエチルアクリレート、1−メチルチオエチルアクリレート、1−エチルチオメチルアクリレート、1−イソプロピルチオエチルアクリレート、1−ブチルチオエチルアクリレート、1−(tert−ブチルチオエチルアクリレート、1−イソプロピルチオメチルアクリレート、1−ブチルチオメチルアクリレート、1−(tert−ブチルチオメチルアクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−メトキシエチルメタクリレート、1−イソプロポキシエチルメタクリレート、1−イソブトキシエチルメタクリレート、1−(tert−ブトキシ)エチルメタクリレート、1−エトキシメチルメタクリレート、1−メトキシメチルメタクリレート、1−イソプロポキシメチルメタクリレート、1−ブトキシメチルメタクリレート、1−(tert−ブトキシ)メチルメタクリレート、1−エチルチオエチルメタクリレート、1−メチルチオエチルメタクリレート、1−エチルチオメチルメタクリレート、1−イソプロピルチオエチルメタクリレート、1−ブチルチオエチルメタクリレート、1−(tert−ブチルチオエチルメタクリレート、1−イソプロピルチオメチルメタクリレート、1−ブチルチオメチルメタクリレート、1−(tert−ブチルチオメチルメタクリレートからなる群から選択され得る。
上記アクリル酸エステルのα置換基はメチルであるのが好ましいが、Uno et al in enantiomer (2000) 5:29-36、Chirality(1998) 10:711-716、及びJ. Polym. Sci A (1997) 35:721-726の教示に従って以下のもののうちの1つでもあってもよい:
メトキシメチル等であるが、これに限定されないC3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、
(1−フェニル−エトキシ)メチル等であるが、これに限定されないアリールC1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、及び
フェノキシメチル、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル及びtert−ブトキシメチル等であるが、これらに限定されないアリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル及びアリールC1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル。
アクリレートを伴う1−4付加反応の実施形態には、当業者にとって既知であり、以下の実施例で示される条件(温度、溶媒タイプ、触媒、反応時間等)が含まれる。例えばとりわけテトラヒドロフランがこの反応を実施するのに好適な溶媒である。
本発明の態様の別の実施形態は、構造式(III)で表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスに関し、ここで工程(b)のエーテル化反応が上記第一級アルコール又はジオールと、アクリロニトリル又はα置換したアクリロニトリルとの間の1,4−付加反応を介して進行する。
本発明のこの1−4付加反応の特定の実施形態では、上記α置換したアクリロニトリルが、メタクリロニトリル、2−エチルアクリロニトリル、2−フルオロアクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−ブロモアクリロニトリル、2−n−プロピルアクリロニトリル、2−イソプロピルアクリロニトリル、2−ネオペンチルアクリロニトリル、2−n−ブチルアクリロニトリル、2−n−ヘキシルアクリロニトリル、2−トリフルオロメチルアクリロニトリル、2−エトキシアクリロニトリル及び2−フェニルアクリロニトリルからなる群から選択され得る。この代替経路によるエーテル合成の具体例が以下の実施例4に与えられる。
本発明の第6の態様は、構造式(A)、構造式(B)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスであって、接触水素化による構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体の完全な脱ベンジル化を行う工程を含む、構造式(A)、構造式(B)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスに関する。この接触水素化条件の実施形態には、当業者にとって既知である温度範囲、触媒、溶媒等が含まれる。好ましい触媒はパラジウム−炭素である。
本発明のこの第6の態様の別の実施形態は、構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスであって、完全な脱ベンジル化工程の前又は後に、任意の残りのカルボン酸エステル部分及び/又はニトリル部分をカルボン酸部分へと変換させる加水分解工程を更に含む、構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスに関する。この更なる工程の実施条件は当業者にとって既知である。
構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体と硫化剤との反応は、β−シクロデキストリンスルフェートの幾つかの課題(本発明の背景技術の項に概説される)を解決することができる十分に規定された生物学的に活性のある作用物質を生成する点において望ましい。この反応は標準的な硫酸化条件下で、例えば好適な溶媒中で好適に実施することができる。硫化剤として、例えば三酸化硫黄−ピリジン錯体、三酸化硫黄−トリアルキルアミン錯体、三酸化硫黄−ジオキサン錯体、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド錯体等の三酸化硫黄錯体、無水硫酸、濃硫酸、クロロスルホン酸等を好適に使用することができる。
使用する硫化剤の量は、過剰量の本発明の第2の態様による一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体であり得る。例えば、三酸化硫黄−ピリジン錯体又は三酸化硫黄−トリアルキルアミン錯体を硫化剤として使用する場合、その使用量は好ましくは、一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体内に存在するヒドロキシル基の量に対して1モル当量〜10モル当量、特に2モル当量〜5モル当量であり得る。
硫酸化反応の溶媒として、好ましくは例えばピリジン、ピコリン、ルチジン若しくは代替的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、Ν,Ν’−ジメチルエチレン尿素(DMEU)、Ν,Ν’−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)等であるが、これらに限定されない第3級アミン、ベンゼン、トルエン、キシレン、水、アルコール、又は任意の好適な割合でのこれらの溶媒の混合物、二酸化硫黄液体等を使用することができる。硫酸化反応を、冷却条件又は加熱条件下で実施することができ、加熱条件下で、好ましくは約40℃〜約100℃の範囲内の温度で実施することができるのが好ましい。
より具体的には、硫酸化反応条件(例えば温度、反応時間等であるが、これらに限定されない)に応じて、一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体のポリスルフェート化合物、例えば16個のSOH基又は17個のSOH基又は18個のSOH基のいずれかが存在する一置換又は二置換されたβ−シクロデキストリンポリスルフェートを、スルフェートの混合物として得ることができる。しかしながら、グルコピラノース単位上のカルボキシアルキル置換基(複数の場合もあり)の位置に関する一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体の正確な規定は保持される。
硫酸化反応の終了後、反応生成物を単離及び精製することができるか、又はそれ自体を薬学的に許容可能な塩へと更に変換させるのに使用することができる。例えば、硫酸化反応により得られた粗生成物を、酢酸ナトリウム等であるが、これらに限定されないアルカリ金属化合物で処理し、対応するアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩を生成することができる。高純度で医薬品グレードを達成することが望ましい場合、それから粗生成物に、メタノールによる洗浄及び/又は活性炭による処理により更に精製を施すことができる。
以下の実施例は例示目的で与えられているにすぎず、決して本発明の保護範囲を狭義的に構成するものとは解釈すべきではない。
実施例1
本実施例の合成手順は、図1に概略的に示される原理、より正確には以下の反応スキーム1に示される詳細に従うものとする。
出発化合物(1):出発物質1(β−シクロデキストリンから2つの工程で得られる)を、(a)Fenger et al. Org. Biomol. Chem. (2009) 7, 933-943に記載のような既知の手順を利用して、水素化ナトリウム及び溶媒としてDMFの存在下で臭化アリルを用いてアリル化した。
化合物(2)の合成:DMF(10mL)中の化合物1(1.0g、0.35mmol)の溶液に、0℃でNaH(鉱油中、60%分散液、71mg、1.75mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。臭化アリル(185μL、2.11mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルと水とで分配した。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥させ、濾過した。濾液の蒸発後の残渣をカラムクロマトグラフィ(R−0.7、1:2の酢酸エチル−ヘキサン)により精製し、白色発泡体として2(1.0g、97%)を得た。
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.34〜7.26(m,28H)、7.26〜7.18(m,44H)、7.18〜7.09(m,23H)、5.87〜5.70(m,2H)、5.32〜5.02(m,18H)、4.89〜4.74(m,7H)、4.64〜4.40(m,24H)、4.16〜3.83(m,32H)、3.71〜3.46(m,14H)。
ESI−HRMS分析:
Figure 2013522436
化合物(3)の合成:9−BBNの溶液(THF中で0.5M、3.4mL)を、0℃でTHF(2.0mL)中の化合物2(200mg、0.068mmol)の撹拌混合物に添加した。一晩撹拌した後、3N NaOH(0.8mL)/H水溶液(35%、2.1mL)の低温混合物を0℃でゆっくりと添加し、室温で一晩撹拌を続けた。反応を飽和NHCl水溶液の添加によりクエンチさせ、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させ、蒸発後に得られた残渣をカラムクロマトグラフィ(R−0.3、1:2の酢酸エチル−ヘキサン)により精製して、白色発泡体として3(120mg、59%)を得た。
Figure 2013522436
Figure 2013522436
試薬及び条件:(a).DMF、NaH、臭化アリル、0℃→室温、一晩;(b)i.THF、9−BBN、0℃→室温、一晩;ii.H、NaOH、0℃→室温、一晩;(c)DCM/HO、TEMPO、BAIB、室温、一晩;(d)EtOAc/MeOH、H−Pd/C、TFA。
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.16(app−t,J=2.33Hz,26H)、7.13〜6.95(m,69H)、5.1〜4.84(m,13H)、4.77〜4.57(m,7H)、4.47〜4.20(m,24H)、4.0〜3.66(m,28H)、3.60〜3.16(m,23H)、2.17(brs,2H)、1.55(app−sept,J=5.33Hz,4H)。
ESI−HRMS分析:
Figure 2013522436
化合物(4)の合成:ジクロロメタン−水(3.0mL:1.5mL)中の化合物3(120mg、0.04mmol)の二相混合物を室温でヨードベンゼンジアセテート(BAIB、158mg、0.48mmol)及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO、6mg、0.04mmol)で順に処理した。反応を一晩進行させ、Na水溶液の添加により停止させた。希HClによる酸性化の後、生成物をジクロロメタンで抽出し、無水MgSOで乾燥させ、濾過した。溶媒の蒸発後に得られた残渣をカラムクロマトグラフィ(R−0.3、2:1の酢酸エチル−ヘキサン)により精製し、無色固体として4(37mg、30%)を得た(3に留意されたい)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ7.30〜7.13(m,31H)、7.12〜6.88(m,64H)、5.16(d,J=3.46Hz,1H)、5.13〜5.00(m,6H)、4.95(app−dd,J=9.8,3.8Hz,3H)、4.87(d,J=3.1Hz,1H)、4.80〜4.55(m,9H)、4.55〜4.10(m,26H)、4.09〜3.75(m,26H)、3.73〜3.23(m,19H)、2.41〜2.21(m,4H)。
ESI−HRMS分析:
Figure 2013522436
化合物(4)の硫酸化:
本発明の多硫酸化誘導体を得るために、例えば米国特許第2,923,704号、米国特許第4,020,160号、及び米国特許第4,247,535号で与えられるような当該技術分野で既知の硫酸化手順を使用することができる。簡潔に述べると、
ピリジンスルホネート(三酸化硫黄ピリジン錯体)を水浴内で70℃〜80℃に加熱した。ピリジンスルホネート(1000mL)を、サイドアームを備えた機械撹拌型容器に入れ、水浴を用いて80℃に維持した。先の工程の反応生成物、すなわち化合物4を急速撹拌しながらゆっくりと添加した。混合物を撹拌しながら2.5時間80℃に維持した後、水(500mL)を添加した。
得られる多硫酸化生成物は、LC−MSにより決定されるように17.09Sの平均硫酸化度を有するとして特性化された。
実施例2
本実施例の合成手順は、図2に概略的に示される原理、より正確には図3〜図5に示される詳細に従うものである。出発化合物1は、過ベンジル化β−シクロデキストリンの位置選択的なジ−デ−O−ベンジル化に関して、Pearce et al in Angew. Chem. Int. Ed. (2000) 39:3610-3612の教示に従って作製した。
アクリレートの付加(図2及び図3):
化合物1のアクリレートへの1,4−付加の手順は以下のとおりであった。乾燥テトラヒドロフラン(THF)(10mL)中の化合物1(1.0g、0.35mmol)の溶液に、新たに切り出したナトリウム金属(約6mg、0.043mmol)を添加し、30分間撹拌した。tert−ブチルアクリレート(130μL、1.0mmol)を0℃で添加し、室温で24時間撹拌した。反応を水の添加によりクエンチした。生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィによる精製により、2つの生成物を得た(薄層クロマトグラフィ、3:1 ヘキサン−酢酸エチル、Rf−0.5、300mg、27%及びRf−0.4、300mg、29%)。
得られる生成物2は以下のように特性化された:
MS:C18920839Naに関する算出値:3126.43;実測値:3126.51;及び
H−NMR(ppmで表すピーク):6.6〜7.4(m,95H,arom H)、3.0〜5.9(m,91H)、2.2〜2.4(2m,4H,CH−CO)及び1.2〜1.4(2d,18H,Bu)。
得られる副生成物3は以下のように特性化された:
MS:C18219637Naに関する算出値:2996.34;実測値:2997.43;及び
H−NMR(ppmで表すピーク):6.9〜7.2(m,95H,arom H)、3.2〜5.3(m,89H)、2.2〜2.4(m,2H,CH−CO)及び1.3(d,9H,Bu)。
エステル基の加水分解(図4)
本実施例の合成手順は図4に概略的に示される原理に従うものである。
先の工程で得られた化合物2及び化合物3の加水分解に関する詳細な手順は以下のとおりであった。
2mLのTHF:MeOH:HO(3:2:1)混合物中の2又は3(0.013mmol)の撹拌溶液に、LiOH・HO(10mg)を添加し、混合物を65℃で16時間加熱した。反応混合物を冷却し、1N HClを用いて酸性化して、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィにより精製し、生成物4及び生成物5を得た。これらは以下のように特性化された:
化合物4:収率:87%;
MS:C18119239Naに関する算出値:3012.29;実測値:3012.90;
化合物5:収率:95%;
MS:C17818837Naに関する算出値:2940.27;実測値:2941.27。
ベンジル保護基の除去(図5)
本実施例の合成手順は図5に概略的に示される原理に従うものである。
先の工程の化合物4及び化合物5からのベンジル保護基の除去に関する詳細な手順は以下のとおりであった。
化合物4又は化合物5(0.013mmol)をそれぞれ、1:1のMeOH−EtOAc溶媒混合物(1.5mL)に溶解した。それから、Pd−C(20mg)及びTFA(触媒)を添加し、混合物を水素雰囲気下で3日間、撹拌し続けた。濾過及び溶媒の除去により以下のものがそれぞれ得られた:
以下のように特性化された6A,6D−O−ジ(エチレンカルボン酸)−β−シクロデキストリン(6)(収率78%):
MS:C487939 に関する算出値:1279.41;実測値:1279.45;及び
以下のように特性化された6A−O−(エチレンカルボン酸)−6D−OH−β−シクロデキストリン(7)(収率82%):
MS:C457537 に関する算出値:1207.40;実測値:1207.43。
実施例3
本実施例の合成手順は、図2に概略的に示される原理、より正確には以下のスキーム2に示される詳細に従うものである。出発化合物1は、過ベンジル化β−シクロデキストリンの位置選択的なジ−デ−O−ベンジル化に関して、Pearce et al in Angew. Chem. Int. Ed. (2000) 39:3610-3612の教示に従って作製した(工程1及び工程2)。
Figure 2013522436
Figure 2013522436
プロピオレートの付加(工程3):
化合物1のプロピオレートエステルへの1,4−付加に関する手順は以下のとおりであった。ジクロロメタン(30mL)中の化合物1(4.0g、1.405mmol)の溶液に、N−メチルモルホリン(0.772mL、7.02mmol)及びベンジルプロピオレート7(1.125g、7.02mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で撹拌した。2時間後、出発物質が消費され、新たな主要スポットがTLCで視認された。反応混合物を濃縮乾固し、フラッシュカラムクロマトグラフィにより精製して、所望の生成物(化合物4)を得た:454mg(68%)、TLCで単一のスポット。構造に従った1H−NMR。
水素化/水素化分解反応(工程4):
この水素化/水素化分解反応では、アクリレート残基の二重結合を還元し、全てのベンジル基を除去する。
化合物4(1.98g、0.625mmol)、10% Pd/c(200mg、0.188mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)及び水(10mL)を入れたオートクレーブを周囲温度で一晩、5バールのH下で撹拌した。TLCにより完全な変換が示された(UV活性なし)。
代替的に他の担持パラジウム触媒又は担持白金触媒を用いて、初めにC=C二重結合を還元することができる。反応混合物を(THF/水(1:1)を流して)hyfloで濾過し、濃縮乾固して、ジエチルエーテルとの同時蒸発により更に乾燥させ、オフホワイト色の固体を得た:680mg(85%)。
逆相カラムクロマトグラフィによる精製により、ジ−CE置換化合物5が得られた(HPLC条件:50gのC18シリカ、水中の50% MeCNで調整する。1:15分、水中の1% MeCN。2:70分、水中で1%から20%までのMeCN)
得られる生成物5は以下のように特性化された:
LC−MS:純度>98%、構造に従った質量;1H−NMR(ppmで表すピーク):5.04〜5.00(m,7H)、3.94〜3.73(m,32H)、3.62〜5.53(m,14H)、2.59(t,4H)。
硫酸化反応(工程5):
この最終の硫酸化工程では、上記の実施例1と同じようなプロトコルを用いた。
ベンジルプロピオレートの合成(工程6):
上記の工程3で使用されるベンジルプロピオネート7は市販されていないが、当該技術分野で既知の手順を用いてプロピオール酸及び臭化ベンジルから容易に調製される。粗物質(>98% GC−MS)は4℃で少なくとも4週間維持することができる(can)。
実施例4
本実施例の合成手順は以下のスキーム3に概略的に示される原理に従うものである。出発化合物1は、過ベンジル化β−シクロデキストリンの位置選択的なジ−デ−O−ベンジル化に関して、Pearce et al in Angew. Chem. Int. Ed. (2000) 39:3610-3612の教示に従って作製した。
アクリロニトリルの付加(工程1)
アクリロニトリルによる1,4−付加は、0℃でのTHF中のNaHによる化合物1の処理により達成することができる。アクリロニトリルの付加後、反応混合物を室温で一晩撹拌する。水によるクエンチ後、生成物を酢酸エチルで抽出することができる。硫酸ナトリウムでの有機層の乾燥、濾過、及び減圧下での濾液の濃縮の後、所望の生成物をカラムクロマトグラフィにより単離することができる。
ニトリルのアルカリ加水分解(工程2)
カルボン酸を、70℃で16時間の水酸化ナトリウム水溶液によるシアノ化合物2(工程1)のDMSO溶液の処理により調製することができる。周囲温度への冷却、及び塩酸水溶液による酸性化の後、所望のカルボン酸3を、好適な溶媒(例えばジクロロメタン)による抽出、塩化ナトリウムの飽和水溶液による有機層の洗浄、硫酸ナトリウムによる乾燥、濾過、及び減圧下での濾液の濃縮により単離することができる。
Figure 2013522436

Claims (21)

  1. 構造式:
    (BnO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OR’] (A)
    (BnO)−CD−[CH−O−R−CN] (B)
    (これらの構造式のそれぞれにおいて、Bnはベンジルであり、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
    またR及びRはそれぞれ独立して、二価の飽和又は不飽和C1〜10アルキルであり、ここで前記C1〜10アルキルは任意で、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、カルボキシル、シアノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、エトキシ及びフェニルから選択される1個〜3個の置換基で置換され、R’は水素、C1〜6アルキル、C5〜6シクロアルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルキルチオ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルキル及びC5〜11シクロアルキルからなる群から選択され、それぞれのアリールは任意で、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェノキシ、ベンジル及びフェニルからなる群から選択される1個〜2個の置換基で置換される)
    のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  2. 構造式:
    (BnO)−CD−[CH−O−CH−R−C(=O)−OR’] (I)
    (BnO)−CD−[CH−O−CH=R−C(=O)−OR’] (Ia)
    (BnO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OR’’] (II)
    (BnO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−CN] (III)
    (これらの構造式のそれぞれにおいて、Bnはベンジルであり、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
    また式(I)及び式(Ia)では、
    Rは単結合、又は1個〜4個の炭素原子を有する飽和脂肪族鎖であり、
    R’は、水素、C1〜6アルキル、C5〜6シクロアルキル及びアリール−C1〜4アルキルからなる群から選択され、
    また式(II)では、
    は、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、カルボキシル及びシアノからなる群から選択され、
    R’’は、C1〜6アルキル;C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル;C1〜4アルキルチオ−C1〜4アルキル;アリール−C1〜4アルキル(ここで前記アリールは任意で、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェノキシ及びフェニルからなる群から選択される1個の置換基で置換される);任意でC1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フェニル及びベンジルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されたアリール;並びにC5〜11シクロアルキルからなる群から選択され、
    また式(III)では、Rは、C1〜6アルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、シアノ、エトキシ及びフェニルからなる群から選択される)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  3. CDがβ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが21である、請求項1又は2に記載の完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  4. CDがα−シクロデキストリンコアを表し、m+nが18である、請求項1又は2に記載の完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  5. CDがγ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが24である、請求項1又は2に記載の完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  6. nが2であり、両方の非ベンジル置換基がグルコピラノース単位の6位の炭素にそれぞれ位置している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  7. nが2であり、両方の非ベンジル置換基が、該シクロデキストリンコアのグルコピラノース単位A及びグルコピラノース単位Dの6位の炭素にそれぞれ位置している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の完全に置換されたシクロデキストリン誘導体。
  8. 構造式:
    (HO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OH] (C)
    (HO)−CD−[CH−O−R−C(=O)−OH] (D)
    (これらの構造式のそれぞれにおいて、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
    及びRはそれぞれ独立して、二価の飽和又は不飽和C1〜10アルキルであり、ここで前記C1〜10アルキルは任意で、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、シアノ、カルボキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、エトキシ及びフェニルから選択される1個〜3個の置換基で置換される)
    のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体。
  9. 構造式:
    (HO)−CD−[CH−O−CH−R−C(=O)−OH] (IV)
    (HO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OH] (V)
    (HO)−CD−[CH−O−CH−CH(R)−C(=O)−OH](VI)
    (これらの構造式のそれぞれにおいて、CDはシクロデキストリンコアを表し、nは1又は2であり、m+nは非置換シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の総数であり、
    また式(IV)では、Rは2個〜4個の炭素原子を有する飽和脂肪族分岐鎖であり、
    また式(V)では、Rは、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル−C1〜4アルキル、アリールオキシ−C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール−C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキル、アリール、アリール−C1〜4アルキル、シアノ及びカルボキシルからなる群から選択され、
    また式(VI)では、Rは、C1〜6アルキル、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、カルボキシル、エトキシ及びフェニルからなる群から選択される)
    のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体。
  10. CDがβ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが21である、請求項9に記載の一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体。
  11. CDがα−シクロデキストリンコアを表し、m+nが18である、請求項9に記載の一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体。
  12. CDがγ−シクロデキストリンコアを表し、m+nが24である、請求項9に記載の一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体。
  13. 請求項1に記載され、構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスであって、
    過ベンジル化シクロデキストリンのモノ−デ−O−ベンジル化生成物又はジ−デ−O−ベンジル化生成物である第一級アルコール又はジオールを準備する工程と、
    前記第一級アルコール又はジオールにエーテル化反応を施す工程と、
    構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を回収する工程と、
    を含む、請求項1に記載され、構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセス。
  14. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(A)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が、前記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(A)で規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  15. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(I)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が、前記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−CH−R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(I)で規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  16. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(Ia)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が、前記第一級アルコール又はジオールを、構造式X−CH=R−C(=O)−OR’(式中、R及びR’は構造式(Ia)で規定されるものであり、Xはクロロ、ブロモ又はヨードである)で表されるω−ハロカルボン酸エステル又はω−ハロカルボン酸と反応させることによりウィリアムソンのエーテル合成を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  17. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(II)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が前記第一級アルコール又はジオールと、アクリル酸エステル又はα置換したアクリル酸エステルとの間の1,4−付加反応を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  18. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(B)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が前記第一級アルコール又はジオールと、アクリロニトリル又はα置換したアクリロニトリルとの間の1,4−付加反応を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  19. 前記完全に置換されたシクロデキストリン誘導体が構造式(III)で表され、工程(b)の該エーテル化反応が前記第一級アルコール又はジオールと、アクリロニトリル又はα置換したアクリロニトリルとの間の1,4−付加反応を介して進行する、請求項13に記載のプロセス。
  20. 請求項7に記載され、構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセスであって、接触水素化を介して構造式(A)、構造式(B)、構造式(I)、構造式(Ia)、構造式(II)及び構造式(III)のうちのいずれか1つで表される完全に置換されたシクロデキストリン誘導体の完全な脱ベンジル化を行う工程を含む、請求項7に記載され、構造式(C)、構造式(D)、構造式(IV)、構造式(V)及び構造式(VI)のうちのいずれか1つで表される一置換又は二置換されたシクロデキストリン誘導体を作製するプロセス。
  21. カルボン酸エステル部分及び/又はニトリル部分をカルボン酸部分へと変換させるために該完全な脱ベンジル化工程の前又は後に加水分解工程を更に含む、請求項20に記載のプロセス。
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