JP4140792B2 - 環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体及びその製造方法 - Google Patents

環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体及びその製造方法 Download PDF

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  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属捕捉剤、イオンセンサー、基質特異性センサー、分離膜材料、高分子材料、その他のイオンや分子の認識を利用した機能性分子の中間体などとして利用できる、新規な環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者等は、先に、基本骨格にフェノール骨格を3以上含む環状フェノール硫化物群を見出し(特開平9−227553)、さらにこれらの環状フェノール硫化物群が金属捕捉剤、イオンセンサー、基質特異性センサー、分離膜材料、高分子材料、酸化触媒、人工酵素、光エネルギー変換材料、あるいはその他イオンや分子の認識を利用した機能性分子の中間体等として有用であることを見出している。
これら環状フェノール硫化物の実用的利用に際しては、官能基の導入による機能変換や固体担持体への結合などに対応できる構造変換といった誘導体化が広く求められており、実際に特開平9−27553号には種々の誘導体の存在が記載されている。これら環状フェノール硫化物の誘導体化は、水酸基側の変換、あるいは水酸基に対してベンゼン環のp位の置換基の変換により実現が可能であるが、その分子が有する機能を保持したままでの、物性変換は重要な技術課題であった。一般的に水酸基の変換については、例えばエステル化など容易に行える場合が多く、そのため分子認識などの機能化は水酸基側を利用して実現化するのが容易であり、溶解性等をはじめとする物性変換についてはp位側の置換基を変換するほうが有利である。しかしながら、p位の変換については、多段化の反応を経ることが多く、効率的でないといった問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、水酸基等側の機能を損なうことなく、水酸基、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基などに対してベンゼン環のp位にクロロスルホン酸基を導入した新規な環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体及び該化合物を容易に製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者等が既に製造法を公開している、水酸基又は炭化水素オキシ基、アシルオキシ基などの水酸基誘導基に対してベンゼン環のp位に水素原子又は炭化水素基を有するフェノール類を構成単位とする環状フェノール硫化物類を、クロロスルホン酸と反応させることにより、p位にクロロスルホン酸基を導入した新規な環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体を容易に製造する方法を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0005】
【化4】
Figure 0004140792
【0006】
(式(1)中、Xは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基であり、nは4から8の整数であり、複数のX又はZはそれぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。)で表されることを特徴とする環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体及びその製造方法を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
上記一般式(1)中のXは水素原子、炭化水素基又はアシル基である。
炭化水素の炭素数は1以上であれば特に制限はないが、好ましくは1〜50である。これらの炭化水素基としては、例えば飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式−脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族−脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
飽和脂肪族炭化水素基の例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、及びエチレンやプロピレン、ブチレンの重合物あるいはそれらの共重合物より成る基などの炭化水素基が挙げられる。
【0008】
不飽和脂肪族炭化水素基の適当な具体例としては、例えばビニル、アリル、イソプロペニル、2−ブテニル、2−メチルアリル、1,1−ジメチルアリル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル基、及びアセチレンやブタジエン、イソプロピレンなどの重合物あるいはそれらの共重合物より成る基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基の適当な具体例としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、2−メチルシクロオクチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、4−メチルシクロヘキセニル、4−エチルシクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0009】
脂環式−脂肪族炭化水素基の適当な具体例としては、例えばシクロプロピルエチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルエチル、3−メチルシクロヘキシルプロピル、4−メチルシクロヘキシルエチル、4−エチルシクロヘキシルエチル、2−メチルシクロオクチルエチル、シクロプロペニルブチル、シクロブテニルエチル、シクロペンテニルエチル、シクロヘキセニルメチル、シクロヘプテニルメチル、シクロオクテニルエチル、4−メチルシクロヘキセニルプロピル、4−エチルシクロヘキセニルペンチル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基の適当な具体例としては、例えばフェニル、ナフチルなどのアリール基;4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4,5−トリメチルフェニル、2−エチルフェニル、n−ブチルフェニル、tert−ブチルフェニル、アミルフェニル、ヘキシルフェニル、ノニルフェニル、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、クレジル、オキシエチルクレジル、2−メトキシ−4−tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニルなどのアリール基などが挙げられる。
【0010】
芳香族−脂肪族炭化水素基の具体的な例としては、例えばベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルベンジル、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基などが挙げられる。
また、アシル基の炭素数は、1以上であれば特に制限されないが、好ましくは1〜40である。アシル基の適当な例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、オキサリル、サクシニル、ピバロイル、ステアロイル、ベンゾイル、フェニルプロピオニル、トルオイル、ナフトイル、フタロイル、インダンカルボニル、p−メチルベンゾイル、シクロヘキシルカルボニル基などが挙げられる。
【0011】
一般式(1)中、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基である。
一般式(1)において、Xは1分子中に4から8個存在するが、それらのXはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(1)において、Zは一分子中に4から8個存在するが、それらのZはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(1)において、nは4から8の整数である。
本発明の環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体は、一般式(2)(式(2)中、Xは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、Y1は水素原子又は炭化水素基であり、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基であり、nは4から8の整数であり、複数のX、Y1又はZはそれぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。)で表される環状フェノール硫化物類を、クロロスルホン酸と反応させることにより製造できる。
【0012】
上記一般式(2)中のXは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、上記一般式(1)中のXと同様である。
一般式(2)中のY1は水素原子又は炭化水素基である。炭化水素基の炭素数は、1以上であれば特に制限はされないが、好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜12である。
また、炭化水素基としては、3級の炭化水素基が好ましく、特に好ましいのはtert−ブチル基である。
一般式(2)中、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基である。
【0013】
一般式(2)において、Xは1分子中に4から8個存在するが、それらのXはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(2)において、Y1は1分子中に4〜8個存在するが、それらのY1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(2)において、Zは一分子中に4から8個存在するが、それらのZはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(2)において、nは4から8の整数である。
一般式(2)の環状フェノール硫化物類の製造例は、特開平9−227553号明細書に記載されている。適当な製造例としては、先ず一般式(3)
【0014】
【化5】
Figure 0004140792
【0015】
(式中、Yは水素原子又は炭化水素基である。)で表される無置換又は水酸基に対してベンゼン環のp位に炭化水素基を有するフェノール類と、適当量の単体硫黄を、適当量のアルカリ金属試薬及びアルカリ土類金属試薬から選ばれる少なくとも一種金属試薬の存在下反応させる方法である。
フェノール類と単体硫黄の原料仕込比は、フェノール類1グラム当量に対し、単体硫黄が0.1グラム当量以上であり、好ましくは0.35グラム当量以上である。単体硫黄の原料仕込比の上限は、特に限定されないが、フェノール類1グラム当量に対し、20グラム当量以下が好ましく、特に10グラム当量以下が好ましい。
【0016】
アルカリ金属試薬としては、例えばアルカリ金属単体、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、ハロゲン化アルカリ金属などが挙げられる。また、アルカリ土類金属試薬としては、例えばアルカリ土類金属単体、水素化アルカリ土類金属、水酸化アルカリ土類金属、酸化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ土類金属、アルカリ土類金属アルコキシド、ハロゲン化アルカリ土類金属などが挙げられる。
アルカリ金属試薬またはアルカリ土類金属試薬の使用量は、フェノール類1グラム当量に対し0.005グラム当量以上であり、好ましくは0.01グラム当量以上である。アルカリ金属試薬またはアルカリ土類金属試薬の使用量の上限は特に制限はないが、好ましくは10グラム当量以下であり、特に好ましくは5グラム当量以下である。
【0017】
置換基を置換する方法としては、前記一般式(2)中のY1が炭化水素基である環状フェノール硫化物類を、酸触媒の存在下脱炭化水素化して、水素に転換する方法が挙げられる。この脱炭化水素化の製造例は特願平8−252240号明細書に記載されている。
脱炭化水素化に用いる触媒としては、フリーデルクラフツ触媒が使用できる。適当な酸触媒としては、ルイス酸、プロトン酸、固体酸、超強酸あるいは固体超強酸が挙げられる。
酸触媒の量は、特に制限されないが、超強酸及びルイス酸を用いる場合、反応原料の1分子中の炭化水素基に対して0.2グラム当量以上500グラム当量以下であれば良く、より好ましくは、1グラム当量以上300グラム当量以下である。また、固体超強酸を用いる場合、0.01グラム当量以上500グラム当量以下、より好ましくは、0.02グラム当量以上300グラム当量以下である。触媒量が500グラム当量以上の場合、原料の環状フェノール硫化物類が多量に分解してしまうことがある。
【0018】
上記方法で製造した環状フェノール硫化物類の水酸基の水素原子は、必要に応じて適宜、エーテル化あるいはアシル化などにより、炭化水素基またはアシル基に変換することができる。この置換方法に関しては、特開平9−227553号明細書に記載されており、例えば、環状フェノール硫化物類の水酸基の水素原子をアルカリ金属に置換し、これをハロゲン化炭化水素と反応させるウイリアムソン反応により、炭化水素基に変換する方法が挙げられる。また、アセチルクロリドや無水酢酸などのアシル化剤によりアシル基に変換する方法が挙げられる。
スルフィド結合は過酸化水素、有機過酸化物、過酸、ハロゲン酸化物、酸素、オゾン、硝酸、無機酸化物などの適当な酸化剤を用いることにより、スルフィニル基、スルホニル基に変換することができる。スルフィド結合の変換方法に関しては、特願平8−255368号明細書に記載されている。
【0019】
本発明においては、一般式(2)で表される環状フェノール硫化物類をクロロスルホン酸と反応させることにより、一般式(2)におけるOX基に対してベンゼン環のp位がクロロスルホン化された新規な環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体を容易に合成することができる。
クロロスルホン酸の使用量は、特に制限はないが、通常環状フェノール硫化物類1g当たり1〜200mlにすればよく、好ましくは5〜50mlである。
反応温度は、−40℃以上100℃以下が好ましいが、原料である一般式(2)で表される環状フェノール硫化物類のOX基に対してベンゼン環のp位置換基により好適な反応温度条件が存在する。すなわち、一般式(2)におけるOX基に対してベンゼン環のp位が水素原子の場合、反応温度は20℃以上100℃以下が好ましく、一般式(2)におけるOX基に対してベンゼン環のp位が炭化水素基の場合、反応温度は−40℃以上50℃以下が好ましい。
【0020】
反応時間は特に制限はないが、通常30分以上8時間以下であれば良い。ただし、この反応では原料の分解反応も同時に進行しているため、あまり長い時間反応させることは好ましくない。
反応終了後、反応生成物を氷水に滴下し生ずる沈殿物をろ過することにより、一般式(1)で表されるOX基に対してベンゼン環のp位がクロロスルホン化された新規な環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体の粉末を得ることができる。
反応生成物が混合物である場合には、通常の手法により、例えば再結晶や、溶解度の差を利用して分離することができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を製造例、実施例及び応用例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら制約されるものではない。
【0022】
製造例1
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(I)の合成
4−tert−ブチルフェノール45.2gに、単体硫黄14.4g及び水酸化ナトリウム3.0gを加え、窒素雰囲気下攪拌しながら、4時間かけて徐々に230℃に加熱し、更に2時間攪拌した。この間、反応で生成する水及び硫化水素は除去した。反応中に留出した水は約0.8gであり、反応により生成した硫化水素は約6gであった。この反応混合物を室温まで冷却し、エーテル500mlを加え溶解させた後、1規定の硫酸水溶液で加水分解した。分液したエーテル層を水洗し硫酸マグネシウムで乾燥した。エーテルを留去した後に得られる反応混合物を、更にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)により分割し、粗生成物を得、これをクロロホルム/アセトンから再結晶することにより、無色透明の結晶である5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(I)を4.32g得た。
【0023】
この生成物は一般式(1)中、X=H、Y=t−Bu(tert−ブチル)、Z=S、n=4である環状フェノール硫化物である。
この生成物(I)の物性を以下に示す。
融点:320〜322℃、H−NMR:(δ,ppm,CDCl)9.60(s,4H,OH),7.64(s,8H,ArH),1.22(s,36H,C(CH),13C−NMR:(δ,ppm,CDCl)155.6,144.7,136.4,120.5(Ar),34.2(C(CH),31.3(C(CH),IR:(cm−1,KRS−5):3324(OH),2962(CH)、MS m/z:720( )、元素分析値 % 理論値 for C4048:C,66.62;H,6.71;S,17.79、測定値:C,66.37;H,6.57;S,17.22
【0024】
製造例2
25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(II)の合成
一般式(1)中、X=H、Y1=t−Bu、Z=S、n=4である製造例1で得られた5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(I)2.12gにトルエン50mlを加え溶解させた後、窒素雰囲気下、−25℃に保ちながらCF3SO3H30gを30分かけて滴下した。このまま−25℃に保ち、激しく攪拌しながら4時間反応させた。反応混合物を氷水により処理すると、白色の析出物1.22gが得られた。これをトルエンから再結晶させ、25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(II)1.17gを得た。収率は80%であった。
【0025】
この生成物は一般式(2)中、X=H、Y=H、Z=S、n=4である環状フェノール硫化物である。
この生成物(II)の物性を以下に示す。
H−NMR:(δ,ppm,CDCl)9.45(s,4H,OH),7.61(d,J=8Hz,4H,ArH),6.75(t,J=8Hz,8H,ArH)、13C−NMR:(δ,ppm,CDCl)157.9,139.3,121.7,120.9(Ar)、元素分析値 % 理論値 for C2416:C,58.04;H,3.25;S,25.83、測定値:C,58.60;H,3.40;S,24.97
【0026】
実施例1
25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン−5,11,17,23−テトラクロロスルホン酸(III)の合成
一般式(2)中、X=H、Y1=t−Bu、Z=S、n=4である製造例1で得られた5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(I)501mgをクロロスルホン酸5mlに懸濁させ、室温(23℃)で1時間反応させた。この反応液を氷水100mlを激しく攪拌している中にゆっくり滴下し、生じる沈殿物をろ過後水で十分洗浄し白色粉末530mgを得た。収率は、86%であった。
【0027】
この生成物(III)は、一般式(1)において、X=H、Z=S、n=4である環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体である。
以下に物性を示す。
1H−NMR:(δ,ppm,DMSO−d6)7.77(s,8H,ArH)、13C−NMR:(δ,ppm,DMSO−d6)156.97,139.76,131.95,119.36(Ar)、元素分析値 % 理論値 for C2412Cl4128:C,32.37;H,1.36;Cl,15.92;S,28.80、測定値:C,32.1;H,1.7;Cl,15.0;S,28.5.
【0028】
実施例2
25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン−5,11,17,23−テトラクロロスルホン酸(III)の合成
一般式(1)中、X=H、Y1=H、Z=S、n=4である製造例2で得られた25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン(II)502mgをクロロスルホン酸5mlに懸濁させ、80℃に加熱し5時間反応させた。この反応液を氷水100mlを激しく攪拌している中にゆっくり滴下し、生じる沈殿物をろ過し、水、アセトニトリルで十分洗浄することにより白色粉末717mgを得た。収率は、80%であった。
この生成物(III)は、一般式(1)において、X=H、Z=S、n=4である環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体である。
以下に物性を示す。
1H−NMR:(δ,ppm,DMSO−d6)7.77(s,8H,ArH)
【0029】
応用例
実施例1および2で製造した25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,14,20−テトラチア[19.3.1.13,79,1315,19]オクタコサ−1(25),3,5,7(28),9,11,13(27),15,17,19(26),21,23−ドデカエン−5,11,17,23−テトラクロロスルホン酸(III)を有機溶媒に溶解させて、そこにクロロホルム等の小分子を入れ、これらの分子を認識するかどうかを核磁気共鳴スペクトルを測定し、小分子のケミカルシフトが変化することにより確認した。
環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)2.0×10-5molを重ジメチルスルホキシド0.6mlに溶解した。ここに、環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)の当量molのメタノールを添加し、室温で5時間放置後この水素の核磁気共鳴スペクトルを測定した。比較のために、上記環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)を含まない重ジメチルスルホキシド0.6mlとメタノール2.0×10-5mol含む溶液についても、同様にして核磁気共鳴スペクトルを測定した。また、クロロホルム、アセトンについても同様の実験を行い、核磁気共鳴スペクトルを測定した。結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
Figure 0004140792
【0031】
その結果、環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)を含む場合のメタノール、クロロホルム、アセトンの水素のケミカルシフト値は、環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)を含まない場合のケミカルシフト値に対して、それぞれ0.025ppm,0.022ppm,0.015ppmずつ低磁場側にシフトしていることが分かった。
以上より、実施例1及び2で合成した環状フェノール硫化物のクロロスルホン酸誘導体(III)は重ジメチルスルホキシド溶液中でメタノール、クロロホルム、アセトンを認識することが明らかとなった。
【0032】
【発明の効果】
本発明の環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体は、水酸基、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基などに対してベンゼン環のp位がクロロスルホン化された新規環状フェノール硫化物類クロロスルホン酸誘導体であり、酸化防止剤、触媒、金属捕捉剤、光センサー、イオンセンサー、基質特異性センサー、分離膜材料、高分子材料、相関移動触媒、人工酵素、光エネルギー変換材料あるいはイオンや分子の認識機能を利用した機能性分子の中間体などとして有用である。

Claims (2)

  1. 一般式(1)
    Figure 0004140792
    (式(1)中、Xは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基であり、nは4から8の整数であり、複数のX又はZはそれぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。)で表されることを特徴とする環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体。
  2. 一般式(2)
    Figure 0004140792
    (式(2)中、Xは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、Y1は水素原子又は炭化水素基であり、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基であり、nは4から8の整数であり、複数のX、Y1、Zはそれぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。)で表される環状フェノール硫化物類を、クロロスルホン酸と反応させることにより、一般式(1)
    Figure 0004140792
    (式(1)中、Xは水素原子、炭化水素基またはアシル基であり、ZはS、スルフィニル基、スルホニル基の群の中から選ばれる基であり、nは4から8の整数であり、複数のX又はZはそれぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。)で表される環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体を製造することを特徴とする環状フェノール硫化物類のクロロスルホン酸誘導体の製造方法。
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