JP2013515968A - プラスチック製自動車用ミラー - Google Patents

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Abstract

前面、前面上の硬質コーティング、反射層、および硬質コーティングと反射層の間の中間帯を有するプラスチック基材を包含するプラスチックミラーであって、該中間帯が、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含する、前記プラスチックミラー。
【選択図】図2

Description

本国際特許出願は、2009年12月24日提出の豪州仮特許出願第2009906281号および2010年10月22日提出の豪州仮特許出願第2010904732号からの優先権を主張するものである。これらの内容は、本明細書中に参考として援用されるとみなす。
本発明は、プラスチック基材上に形成されるミラーに関する。該ミラーは主に自動車用途に用いるためのものである。
自動車で使用するための従来のガラス製ミラーは、重く(特に、より大きなミラーが流行しているため)、非球面または複雑な形状を形成することが難しい傾向があり、事故の場合は粉々になりがちである。ガラスをプラスチック基材に置き換えると、複雑な形状を成形し、裏側の保持/クリッピング性(retention/clipping feature)を統合し、重量を低減し、高レベルの耐衝撃性を達成する能力がもたらされる。しかしながら、プラスチック基材は軟らかい傾向があり、紫外線、熱および水により容易に損傷を受け、反射面にひび割れを生じさせる傾向を有する。
ミラーにプラスチック基材を使用することにより引き起こされると予想される軟らかさの問題に加え、直接的な金属付着(アルミニウムまたは銀などの)から形成されるミラー(あらゆるタイプの)に典型的に用いられるいくつかの反射層はまた、それ自体が軟らかい傾向がある。ガラス基材では、この問題を最小限に抑えるために、従来、ほとんどの反射層が背面に施用されている。しかしながら、化学的および機械的性質に起因してより硬く風雨に対しより耐性が高いクロムなどの反射性金属の場合、これらの金属は主にガラス基材の前面に施用される。
しかしながら、これをプラスチック基材で試みると、反射コーティングはひび割れを示し、これにより、熱サイクルなどの耐久性試験の結果が悪くなり、塩水噴霧試験(DIN 50 021またはASTM B117のいずれか)など他の標準試験にも不合格になると思われる。
プラスチックミラーの場合、反射層を背面または前面に施用し、硬質コーティングを施用して、プラスチック基材および反射コーティングの環境曝露に対する保護を提供する一方、向上した耐磨耗性を提供することができる。しかしながら、自動車用途の場合、背面プラスチックミラーは、ミラーの裏側の保持/クリッピング性により妨害されるので、適していないと考えられてきた。また、硬質コーティングが施用される場合、外見上許容し得ない干渉縞が存在する。
したがって、自動車用途に適したプラスチックミラーであって、ひび割れを起こさず、干渉縞を有さず、標準的な自動車試験、例えば、塩水噴霧試験、熱サイクル試験および熱衝撃試験、および促進暴露試験に合格するミラーが望ましい。
背景に関する上記解説は、本発明の状況を説明するために挙げている。それは、言及した材料がいずれも、本発明の優先日において公表されていたか、公知であったか、または普及している一般知識の一部であったという承認として見なすべきではない。また、本発明の一般的な説明に入る前に、明瞭にするために、本明細書の全体にわたりミラーの“前側”への言及は、ミラーの面であって、その上の反射像が通常使用者により見られる面への言及であることを、理解すべきである。
本発明は、前面、前面上の硬質コーティング、反射層、および硬質コーティングと反射層の間の中間帯を有するプラスチック基材を包含するプラスチックミラーであって、該中間帯が、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含する、前記ミラーを提供する。
本発明に従ったプラスチックミラーの一態様の横断面の略図である。 本発明に従ったプラスチックミラーの他の一態様の横断面の略図である。
本発明者らは、反射層をプラスチック基材の前側に位置決めし、それらの間に適した硬質コーティングを置くことで、硬質コーティングにより良好な密着が確実になり、耐磨耗性がもたらされ、その結果、干渉縞を有さない望ましい反射プラスチックミラーを生産することができることを見いだした。
さらに、自動車で使用するための反射層は、低い透明度(約4%未満の透明度)を有する必要があり、これは、通常、ほぼ20〜50nm程度の比較的厚い反射層の採用を必要とする。しかしながら、本発明者らは、そのような厚い反射層は、引張膜応力が高く熱膨張率が不釣り合いであるため、硬質コーティング上に直接付着させたときに、応力ひび割れ/応力亀裂をより生じやすいことを特定した。
したがって、本発明者らはさらに、硬質コーティングと反射層の間に中間帯を使用すると、プラスチック基材と一緒に用いるのに望ましく好ましいタイプの耐磨耗性硬質コーティング材料の採用が可能になり、反射層として用いるのに望ましい材料の採用が可能になり、そしてまた、ひび割れの問題が回避され、したがって、自動車で使用するためのプラスチックミラーの生産への試みにおいてこれまで存在していた問題が克服されることを見いだした。
説明として、この理論に拘束されるつもりはないが、本発明者らは、耐久性コーティング系を達成するためには、コーティング系における組み合わされた層の応力のさまざまな観点を考慮し釣り合わせなければならないと指摘している。
とりわけ、層間の界面に高い応力がかかることは、高応力領域が破損の中心になるのを防止するために、回避する必要ある。例えば、圧縮層を一方向に引っ張り、これに対し引張層を反対方向に引っ張ると、高い界面応力が生じる。この高い界面応力は界面の破損を引き起こす可能性があり、この界面応力を制御する(低下させる)ことにより、破損を回避できることが見いだされた。しかしながら、残留応力がほとんどまたは全くない組み合わされた層が良好に機能しないことも、本発明者らは見いだした。
したがって、組み合わされた層の保全性を維持するためには、多少の残留圧縮応力が好ましいと考えられる。実際、本発明者らは、応力を受けている層は(特定の応力レベルで)、応力を受けていない層に比べ向上した耐磨耗性を示すことが明らかであると、耐磨耗性に関し同様の原理を追加的に指摘している。
このように、本発明者らは、プラスチックミラーの内部応力パラメーターを、応力差が最小限に抑えられるように制御することが好ましいことを見いだした。本発明者らは、プラスチックミラーの内部応力パラメーターを、残留応力が圧縮性になるように制御することがさらに好ましいことも見いだした。
内部応力パラメーターの制御が可能であるということに関し、理想的には、コーティング系全体の応力が大きさおよび状態の両方において制御される。この点において、本明細書の全体にわたり、“応力差”という用語は、中間帯と反射層の間の応力の差を意味し、これは中間帯と反射層の界面で生じる界面歪みを代表する、と考えるべきである。“残留応力”という用語は、中間帯と反射層の合成応力を意味し、したがって、これは、絶対応力の結果とみなしてもよい、と考えるべきである。
ほとんどの反射層は室温において引張性であり、プラスチック基材に施用した場合、85℃(自動車業界での標準)のような高温に暴露されたときにひび割れを生じる。これは、反射層(7×10−6mm/mm/℃〜20×10−6mm/mm/℃)とプラスチック基材(40×10−6mm/mm/℃〜70×10−6mm/mm/℃)の熱膨張係数(CTE)の差に起因すると考えられ、加熱したときにプラスチック基材は反射層に比べ著しく大きく膨張する。反射層と硬質コーティングの間の中間帯により大きな応力を有する圧縮層を施用することにより、引張応力の低減が実現し、これが、上記温度への暴露および熱衝撃中に生じるひび割れを防ぐことが見いだされた。
好ましい形において、ミラーにおける応力差は、約730MPa〜約930MPaであるとき、またはより好ましくは約830MPaであるときに、適切に最小限に抑えられることが見いだされた。さらに好ましい形において、残留応力は、少なくとも“測定”応力が関係している場合、約−350MPa〜約−600MPa、またはより好ましくは約−400MPa(残留応力が負であるという明示は、言うまでもなく、残留応力が圧縮性であることに関係する)であることが理想的である。
本発明に従ったプラスチックミラーを製造する場合、コーティング系内の“測定残留応力”(すなわち、中間帯と反射層の合成応力)を、上記範囲内にあるように制御することが好ましい。圧縮コーティング系は、著しい熱的変動が存在する耐久性試験において良好に機能することが、発明者らにより確認された。実際、圧縮応力がかかったコーティング系は、温度の上昇に伴い、ひび割れまたは亀裂を生じることなく、膨張性基材とともに膨張することができ、永久歪みが生じないので、冷却により、損傷のない状態に戻ることができることが確認された。しかしながら、引張応力状態にある(または非常に低い圧縮応力での)コーティング系は、およその臨界点を超えて加熱した場合、引張応力がコーティング系の保全性を圧倒する(これは、コーティングを引き離す)ため、ひび割れまたは亀裂を生じる傾向がある。この状態では、永久歪みが生じ、冷却により亀裂およびひび割れが観察される可能性がある。
発明者らはまた、圧縮応力がかかったコーティング系は、緻密で密接に詰まった構造の層を有する系であり、塩水噴霧試験で良好に機能することも確認した。そのような構造は、塩溶液の浸入に対する感受性がより低いと考えられる。低い圧縮応力を有する、または引張応力状態にある、緩く詰まった構造の層を有するコーティング系では、塩水噴霧中にこの浸入が中間帯の損傷および離層を引き起こす。
しかしながら、コーティング系内の測定残留応力の制御が可能になるようにプラスチックミラーを製造するために、発明者らは、個々の層をコーティング系に組み合わせたときにそれらが望ましい測定残留応力をもたらすように、個々の層の応力範囲を知ることは有用であることを見出した。
好ましい形において、中間帯は、好ましくは約−380MPa〜約−480MPaの応力範囲、より好ましくは−430MPaの応力を有し、反射層は、好ましくは約350MPa〜約450MPaの応力範囲、より好ましくは約400MPaの応力を有すると決定した。
“測定”応力の値と“計算”応力の値の区別に関し、所定のコーティング系について応力差および残留応力の両方を計算することができることが理解されるであろう。以下の略図AおよびBは、“応力差”および“残留応力”の値の決定方法を例示している。応力差が2層間の絶対差である場合(略図A参照)、それは2層の界面で働く;応力差が大きいと、この界面に破損が生じるので、密着が不十分になる可能性がある。計算残留応力(略図B参照)は、2層の合計であり、あらゆる圧縮応力および引張応力のバランスを考慮に入れた合応力であると考えることができる。
興味深いことに、本発明者らは、コーティング系の測定残留応力と個々の層の計算残留応力が著しく異なることを観察した。例えば、計算によると、好ましい態様では−30MPaの計算残留応力が与えられる。しかしながら、測定残留応力は−400MPaであることが見いだされた。この差は、先にある層に対し逐次付着が有する影響に起因すると考えており、以下の頁でさらに説明する。
逐次的な中間帯および基材がまだ温かい間の反射層の付着は、反射層の引張性を低下させるように働き、差をもたらすと考えられる。実際、正確な中間帯の応力および正確な反射層の応力を得ることができるように層を個別に付着させる(個別に計算した応力レベルに基づき)ことは好都合であると予想するかもしれないが、これは製造プロセスには好都合でないことが見いだされた。実際、好ましい製造方法では、最終製品をできるだけ短時間で実現するために、個々の層を逐次的に付着させる。
したがって、好ましい最適化は、約−350MPa〜約−600MPaという上記範囲内にある測定残留応力を有する、逐次的に付着させたコーティング系に関するものである。
このように、本発明者らは、応力の最適値が製造方法に依存することを見いだした(逐次的層と個々の層を対比して)。逐次的に付着させたコーティング系は、個々に付着させた層から作製されるコーティング系に比べ、遙かに大きな測定残留応力を有する。しかしながら、発明者らは、耐久性試験における良好な性能は、応力が望ましい範囲内にある場合に得られることを確認した(個々に付着させた層と逐次的に付着させた層の両方で)。したがって、実用的な生産プロセスを実現するためには、個々の層の応力を最初に決定した後、逐次的付着を用いて測定残留応力を決定しなければならないことを、理解すべきである。その後、逐次的に付着させたコーティング系で、最終的な最適化を行うことができる。
上記説明から、本発明を考える際に応力が重要なパラメーターであることが、理解されるであろう。応力は、コーティングの付着後に、機械的性質が公知の基材(通常シリコンウェハであるが、プラスチックウェハを用いてもよい)の撓みを測定することにより計算する。Stoneyの式により、この撓みを応力に変換する。
式中、E、hおよびvは、基材の係数、厚さおよびポアソン比であり、hは皮膜の厚さであり、Rは曲げ半径である。
4軸にわたりミクロン分解能を有するレーザー距離計によりウェハ(直径50〜100mmのシリコン)を最初に測定して初期曲率半径を確定した後、これを平均化してベースライン測定値を得る。その後、ウェハを、応力を測定する皮膜でコーティングする。付着後、4軸にわたる曲率についてウェハを再び測定し、半径を計算する。曲率のベースラインと測定値の差は、皮膜内の応力により引き起こされる撓みを表し、これを式(1)に用いて応力を計算する。
薄い皮膜における応力は、熱応力、固有応力および外部応力の合計である(式(2)参照):
σ皮膜=σ+σ固有+σ外部 式(2)
外部応力(σ外部)は、環境(機械的、化学的または物理的)とのすべての相互作用を包含する。固有応力(σ固有)は皮膜の欠陥に関連し、付着状態に依存する。
熱応力(式(3)参照)は、基材と皮膜の熱膨張係数の差、(α−α)、付着温度と室温の差(ΔT)、および皮膜材料の機械的性質E/(1−ν)に依存する:
σ=(α−α)ΔTE/(1−ν) 式(3)
熱応力は、(α−α)、E/(1−ν)は公知であり、ΔTは付着中に測定すると仮定して、計算することができる。シリコンウェハの場合、熱応力成分は非常に小さい。ポリカーボネートウェハでの測定により、熱的事象が系の応力に対し有する大きな影響を測定することができる。これらの応力のいずれか一つまたはすべてを改変して、望ましいレベルの応力を達成することができる。
本発明に従ったプラスチックミラーの製造中に、個々の層の付着パラメーターのいくつかおよびコーティング中の部分の温度分布により、応力をさらに制御できることが見いだされた。より詳細には、中間帯、反射層およびキャップ層(存在する場合)の応力レベルを、スパッタ電力、圧力、温度、付着速度、基材バイアス、およびターゲットと基材の距離を変動させることにより、制御することができる。
したがって、中間帯において応力を低下させる好ましい方法は、スパッタ電力を低下させることによる。反射層において応力を低下させる好ましい方法は、スパッタリング中の供給ガスに少ないパーセンテージ(5%)の窒素を加えることによる。窒素の添加は、ミラーの硬さ、続いて耐磨耗性を上昇させるという、追加的な利益を有する可能性がある。
法律により、35%を超える反射能を有することが、自動車用外部ミラーの要件である。しかしながら、ほとんどの自動車製造業者の要件は、標準SAE J964により光源A、観測視野2°を用いて測定して、最小反射能が50%であることである。これに加えて、ミラーの色は、C<16(ここにおいて、CIELカラースケールを用いて
)を有するべきである。コーティングパラメーターの変動または必要以上の層の追加は、反射を低減するか、望ましくない色残りを引き起こす可能性がある。本発明に従ったミラーは、これらの基準を念頭に置いて設計し製造することが理想的である。
したがって、本発明は、追加的に、前面、前面上の硬質コーティング、反射層、および硬質コーティングと反射層の間の中間帯を有するプラスチック基材を包含するプラスチックミラーであって、該中間帯が、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含し、該ミラーが圧縮性の残留応力を有する、前記プラスチックミラーを提供する。
本発明はまた、前面、前面上の硬質コーティング、反射層、および硬質コーティングと反射層の間の中間帯を有するプラスチック基材を包含するプラスチックミラーであって、該中間帯が、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含し、該ミラーが、約−350MPa〜約−600MPaの測定残留応力を有する、前記プラスチックミラーを提供する。好ましい形において、該ミラーは、約730〜約930MPaの応力差を有する。
本発明のミラーのプラスチック基材は、任意の適したポリマーまたはプラスチック材料から形成することができる。例えば、プラスチック基材は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ、フェノール基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート、アセタール、およびこれらのブレンドを包含する群から選択される材料から形成することができる。好ましい基材材料としては、ポリカーボネート、ポリ(2,2’−ジヒドロキシフェニルプロパン)カーボネート、ポリジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレン、またはこれらのブレンドが挙げられる。
プラスチック基材は、射出圧縮成形により形成することが好ましいが、当分野で公知の他の方法、例えば、圧縮成形、ブロー成形、反応成形およびシート鋳造を利用してもよく、したがって、これらも本発明の範囲内にある。
本発明のプラスチックミラーでは、“硬質コーティング”とよばれるコーティング(これは、理想的には“耐磨耗性”および“耐薬品性”の両方をもたらす)および“反射” 層とよばれる層を利用する。これらの用語には多少の説明が必要である。
“硬質コーティング”とよばれるコーティングは、基材より硬度および剛性の高いコーティングであり、これにより、該基材の耐磨耗性は向上する。耐磨耗性コーティングは、衝撃および引っ掻きに起因する損傷を減少させるコーティングである。耐磨耗性は、テーバー磨耗試験機により、および周知のスチールウール試験を用いることにより、ASTM F735“Standard Test Method for Abrasion Resistance of Transparent Plastics and Coatings Using the Oscillating Sand Method”、ASTM D4060“Standard Test Method for Abrasion Resistance of Organic Coatings”のような試験により測定することができる。
さらに、一部のプラスチック基材はある種の溶媒により損傷を受ける可能性があり、例えば、ポリカーボネートはアセトンにより損傷を受ける。ミラーが“耐薬品性”であることは、自動車業界において必要条件である。耐薬品性とは、ディーゼル燃料、石油、電池酸(battery acid)、ブレーキ液、不凍液、アセトン、アルコール、自動変速機油、油圧オイル、およびアンモニアに基づく窓ガラス用洗剤などの標準的な溶媒への暴露に耐える能力を指す。この点において、硬質コーティングは、理想的には本発明のミラーにそのような耐薬品性をもたらすことが、理解されるであろう。
本発明のプラスチックミラーの硬質コーティングは、1以上の耐磨耗性層から形成することが好ましく、プライマー層を包含していてもよい。該プライマー層は、プラスチック基材に十分に結合し、後続の耐磨耗性層に好ましい材料を形成する。プライマー層は、任意の適した材料により提供することができ、例えば、アクリルポリマー、アクリルモノマーとメタクリルオキシシランのコポリマー、またはメタクリルモノマーとベンゾトリアゾール基もしくはベンゾフェノン基を有するアクリルモノマーとのコポリマーなどの有機樹脂であることができる。これらの有機樹脂は、単独で、または2以上の組み合わせで、用いることができる。
耐磨耗性層は、有機ケイ素、アクリル系誘導体、ウレタン、メラミンまたは非晶質SiOからなる群より選択される1以上の材料から形成することが好ましい。もっとも好ましくは、耐磨耗性層は有機ケイ素層であり、これは、優れた耐磨耗性および物理蒸着皮膜との適合性に起因する。例えば、有機ケイ素ポリマーを含む耐磨耗性層は、以下の化合物から選択される化合物の層を浸漬コーティングなどの方法により形成した後、該層を硬化することにより、形成することができる:
トリアルコキシシランまたはトリアシルオキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−(ベータ−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−ベータ(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ベータ−シアノエチルトリエトキシシランなど;ならびに、ジアルコキシシランまたはジアシルオキシシラン、例えば、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなど。
耐磨耗性層は、液体中での浸漬コーティングとこれに続く溶媒蒸発によるか、適したモノマーを用いてのプラズマ化学気相成長法(PECVD)により、プラスチック基材上にコーティングすることができる。フローコーティングおよびスプレーコーティングのような他の付着技術も適している。硬質コーティングの耐磨耗性を向上させるために、続いて耐磨耗性層のコーティングを好ましくは48時間以内に加えると、それ以前のコーティングの老化および汚染を回避することができる。
耐磨耗性層の厚さは、適切な耐磨耗性を提供するのに役立つように選択することが好ましい。この点において、本明細書では、適切な耐磨耗性を、コーティングしていないプラスチック基材(ポリカーボネートなど)に対するBayer磨耗比(abrasion ration)が5であるか、あるいは、テーバー磨耗試験による曇り度の変化量が、荷重500g、CS10F磨耗輪、500サイクルで試験した後に15%未満である(曇り度%はASTM D1003のとおりに測定する)ことと考える。これらの要件を満たしていれば、有機ケイ素を耐磨耗性層(1以上)に用いる場合、硬質コーティングの厚さは、好ましくは約3〜約15ミクロンの範囲にあり、もっとも好ましくは5〜7ミクロンである。
本発明のプラスチックミラーの中間帯は、金属、半金属、金属の酸化物もしくは窒化物、半金属の酸化物もしくは窒化物、または炭素(ダイヤモンド様炭素(DLC)など)から形成される少なくとも1つの層を包含する。半金属は一般にB、Si、Ge、As、Sb、TeおよびPoであると考えられるが、該中間帯の少なくとも1つの層に関する金属または半金属は、Nb、Zr、Sn、Ta、Al、Cr、Ti、BおよびSiからなる群より選択することが好ましい。もっとも好ましくは、少なくとも1つの層は半金属酸化物から形成され、好ましい半金属酸化物はSiOである。実際、もっとも好ましい形では、中間帯をSiOの単層により提供する。この点において、中間帯が単層のみを包含することが好ましい可能性はあるが、層のそれぞれが金属、半金属、金属の酸化物もしくは窒化物、半金属の酸化物もしくは窒化物、または炭素(ダイヤモンド様炭素(DLC)など)から形成されていることが好ましい多層を提供して中間帯を形成することができると予想されることは、理解されるであろう。
中間帯の厚さを正確に選ぶことも、最適な密着性を維持しつつミラーの耐磨耗性を向上させる。中間帯が薄すぎる場合、コーティングの耐磨耗性は低くなってしまう−厚すぎる場合、密着性が低下する。ここでも、中間帯における応力がこれらの試験での性能を決定する。厚い中間層では圧縮応力が増大し、これは好ましくない可能性がある。中間帯は、好ましくは約100nm〜約200nmの範囲、より好ましくは約120nm〜約160nmの範囲の厚さを有し、もっとも好ましくは約140nmの厚さを有する。
硬質コーティングに中間帯を施用するために採用することができる好ましい付着方法は、任意の真空蒸着システム、例えば、熱蒸着、電子ビーム蒸着(イオンビームの補助の有無にかかわらない)、またはスパッタ付着から、選ぶことができる。スパッタ付着が好ましい方法である。さらに、硬質コーティングの表面を最初に表面処理に付して、中間帯と硬質コーティングの密着性を向上させてもよい。表面処理は、プラズマ放電、コロナ放電、グロー放電、および紫外線放射のいずれかから選択することができる。
“反射”層とよばれる層は、実質的に反射性である(%R>50%)表面を提供する層である。本発明のプラスチックミラーの反射層は、以下を包含する群から選択される材料から形成することが好ましい:クロム、アルミニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、ジルコニウム、タングステン、ケイ素、ニオブ、タンタル、バナジウム、コバルト、マンガン、銀、亜鉛、およびそれらの混合物;ならびに、それらの酸化物、窒化物、ホウ化物または炭化物、およびそれらの混合物。もっとも好ましくは、反射層は、クロム、またはCr−NiもしくはCr−Moなどのクロム混合物、またはそれらの炭化物もしくは窒化物である。反射層は、好ましくは厚さ約20nm〜約80nmの範囲、より好ましくは約35nm〜約50nmの範囲の厚さを有し、もっとも好ましくは約40nmの厚さを有する。
反射層はまた、紫外線が硬質コーティング、続いてプラスチック基材に入るのを妨害または低減することが好ましく、これは、一般に放射線暴露が低減すると製品の寿命が長くなるので、好都合である。さらに、この低減により、このタイプの施用では通常利用できない耐磨耗性が高い材料を硬質コーティングに使用することが可能になる。この点において、耐紫外線性は通常紫外線吸収剤を硬質コーティングに加えることにより得られることが確認されているが、これらは、一般に可塑剤としての機能により耐磨耗性を低減する効果を有することも知られている。したがって、本発明のように紫外線吸収剤が含まれていないか限定されている硬質コーティングは、予想されるより高い耐磨耗性を有し、スパッタ層との適合性がより高い傾向がある。
本発明のプラスチックミラーの好ましい形では、キャップ層を反射層の上に提供して、耐磨耗性をさらに向上させ、所望の場合は、厚さを変動させることによりミラーに色(自動車用途のミラーに望ましいとみなされることがある青色など)を付与する能力をもたらすことができる。キャップ層は、ケイ素、チタン、アルミニウム、クロム、またはそれらの酸化物もしくは窒化物、またはそれらの混合物を包含する群から選択される材料から形成することが好ましい−窒化クロム(CrN)がとりわけ好ましい。
実際、クロムに組み込まれている窒素のレベルが高い窒化クロムは、とりわけ好都合であることが見いだされた。1つの形において、反射層に用いる材料自体が窒化クロム(CrN0.2など)である場合、キャップ層中の窒素の量を反射層中の窒素レベルを上回るように増大させる(例えばCrN0.4に)ことが有益であることが見いだされた。
キャップ層は、好ましくは厚さ約5nm〜約40nmの範囲にある厚さを有し、より好ましくは約5nm〜約25nmの範囲の厚さを有し、もっとも好ましくは約5nmの厚さを有する。
本発明のさまざまな好ましい態様の説明を始める前に、本発明は、プラスチックミラーの製造方法であって、該方法が、
a)前面を有するプラスチック基材を形成する段階;
b)プラスチック基材の前面上に1以上の耐磨耗性層をコーティングして硬質コーティングを形成する段階;
c)硬質コーティング上に中間帯を形成する段階、これに関し、該段階は、硬質コーティング上に、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料の層を少なくとも1つコーティングすることを包含する;ならびに
d)中間帯の上に反射層をコーティングして、プラスチックミラーを形成する段階、
を包含する、前記製造方法も提供することも、理解すべきである。
ここで、本発明を、さまざまな好ましい態様に関し説明する。これらのいくつかの観点を添付図に例示し、他の観点を以下の実施例により例示する。
図1は、本発明に従ったプラスチックミラーの一態様の横断面の略図である。この態様において、プラスチック基材(1)はポリカーボネートであり、その上に、厚さ約5〜約7ミクロンの耐磨耗性単層の形にある硬質コーティング(2)がコーティングされている。SiOの単層(3)の形にある中間帯が、約140nmの厚さで硬質コート(2)上にコーティングされている。SiOの単層(3)上には、厚さ約40nmのクロムの反射層(4)がコーティングされている。
図2は、本発明に従ったプラスチックミラーの他の一態様の横断面の略図である。この態様において、層(1)、(2)、(3)および(4)は図1の態様と同じである。しかしながら、図2の態様はさらに、厚さ約20nmのSiOのキャップ層(5)を含む。
以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様を例示するものである。しかしながら、以下の実施例は例示に過ぎないことを理解すべきであり、上記のような本発明の一般性に対する制約と考えるべきではない。
実施例1
最初に、射出成形したポリカーボネート基材を、洗浄剤を用いて工業用超音波洗浄システムにより洗浄する。清浄な(無塵の)環境では、蒸留水中での最終すすぎが必要である。その後、基材を、Momentive PHC−587Bにおいて10mm/sの引き出し速度で浸漬コーティングする。10分間の蒸発分離時間により、溶媒が徐々に蒸発して、該部品がほぼ不粘着性になることが可能になる。その後、基材を130℃の硬化オーブンに45分間移す。硬質コーティングの老化/汚染を回避するために、次のコーティングは48時間以内に実施する。
60℃に維持した保持オーブンに試料を移し、これにより、プラスチックの乾燥状態を確実に維持し、真空チャンバーに移したときのポンプダウン時間(pump down time)の短縮を促進する。
基材をバッチタイプ真空チャンバーに入れる。該チャンバーは、単一のコーティングチャンバーからなり、その中に試料を置き、排気し、コーティングする。このチャンバー内で、試料を赤外線ヒーターにより約75℃に加熱し、5×10−5mbar未満の圧力まで排気した。以下は、付着条件であった:
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@32sccm
酸素@16sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.4kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着時間=9分
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@120sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表1および2に示す。
実施例2
最初に、射出成形したポリカーボネート基材を、洗浄剤を用いて工業用超音波洗浄システムにより洗浄する。清浄な(無塵の)環境では、蒸留水中での最終すすぎが必要である。その後、基材を、SDC TSR 2626Bにおいて10mm/sの引き出し速度で浸漬コーティングする。10分間の蒸発分離時間により、溶媒が徐々に蒸発して、該部品がほぼ不粘着性になることが可能になる。その後、基材を130℃の硬化オーブンに90分間移す。硬質コーティングの老化/汚染を回避するために、次のコーティングは48時間以内に実施する。
60℃に維持した保持オーブンに試料を移し、これにより、プラスチックの乾燥状態を確実に維持し、真空チャンバーに移したときのポンプダウン時間の短縮を促進する。
基材をインラインタイプ真空チャンバーに入れた。該チャンバーは、複数のコーティングチャンバーからなる。試料をエアロックに入れ、その中で赤外線ヒーターにより試料を約60℃に加熱し、5×10−5mbar未満の圧力まで排気した。以下は、付着条件であった:
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@30sccm
酸素@15sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.0kW
ターゲットと基材の距離=100mm
付着速度=4mm/s
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@30sccm
窒素@2sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=100mm
時間=8mm/s
厚さ=40nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表3および4に示す。
実施例3
本発明に従った他のプラスチックミラーであって、SiOの形にあるキャップ層を包含するものを、バッチタイプ真空チャンバーを用いて製造した。ミラーの耐磨耗性のさらなる改善は、SiOの形にあるキャップ層を付着させることにより得ることができることが見いだされた。
この実施例での付着条件は以下のとおりであった:
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@32sccm
酸素@16sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.4kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着速度=9分
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@120sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
キャップ層:
ケイ素ターゲット
アルゴン@120sccm
酸素@40sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着時間=90秒
厚さ=10nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表5および6に示す。
実施例4
本発明に従った他のプラスチックミラーであって、今度はCrNの形にあるキャップ層を包含するものを、バッチタイプ真空チャンバーを用いて製造した。ミラーの耐磨耗性のさらなる改善は、CrNの形にあるキャップ層を付着させることにより得ることができることが見いだされた。この実施例において、付着条件は以下のとおりであった:
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@32sccm
酸素@16sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.4kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着速度=9分
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@130sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
キャップ層:
クロムターゲット
アルゴン@130sccm
窒素@40sccm
圧力=4e−3mbar
電力@1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=45秒
厚さ=10nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表7および8に示す。
実施例5
本発明に従ったプラスチックミラーであって、硬質コーティングの耐磨耗性層を、マイクロ波プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いてインラインタイプ真空チャンバーにおいて減圧下で形成したものを製造した。コーティングは、非晶質SiOと記載することができる。液状硬質コーティングを、マイクロ波プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて減圧下で形成されるものに置き換えることにより、プロセスをさらに改善することができることが見いだされた。この実施例において、付着条件は以下のとおりであった:
耐磨耗性層(硬質コーティング):
プラズマ前処理条件
電力=2kW
圧力=2e−1mbar
モノマー=なし
反応体ガス=プロパノール@100sccm
時間=120秒
付着条件
プラズマ前処理
電力=2kW
圧力=5e−1mbar
モノマー=テトラメチルジシロキサン@133sccm
反応体ガス=酸素、段階的に200〜400sccm
時間=70秒
厚さ=4ミクロン
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@30sccm
酸素@15sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2kW
ターゲットと基材の距離=100mm
付着速度=4mm/s
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@32sccm
窒素@2sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=100mm
時間=8mm/s
厚さ=40nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表9および10に示す。
実施例6
本発明に従った他のプラスチックミラーであって、今度はAlの形にある中間層を包含するものを、バッチタイプ真空チャンバーで製造した。
この実施例において、付着条件は以下のとおりであった:
中間帯(単層):
アルミニウムターゲット
アルゴン@32sccm
酸素@16sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.4kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着速度=9分
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@130sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
キャップ層:
クロムターゲット
アルゴン@130sccm
窒素@40sccm
圧力=4e−3mbar
電力@1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=45秒
厚さ=10nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表11および12に示す。
実施例7
本発明に従った他のプラスチックミラーを、分割法で製造した。該方法では、中間帯を付着させた後、反射層を付着させる前に、試料を1つの付着チャンバー(インラインタイプ真空チャンバー)から他のチャンバー(バッチタイプ真空チャンバー)に移動させる。良好な性能に必要な応力が変わったことが見いだされた。この実施例での付着条件は以下のとおりであった:
中間帯(単層):
ケイ素ターゲット
アルゴン@30sccm
酸素@15sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2.0kW
ターゲットと基材の距離=100mm
付着速度=4mm/s
厚さ=130nm
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@120sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
キャップ層:
ケイ素ターゲット
アルゴン@120sccm
酸素@40sccm
圧力=2.3e−3mbar
電力@2kW
ターゲットと基材の距離=110mm
付着時間=90秒
厚さ=10nm
個々の層の応力を測定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表13および14に示す。
実施例8
他のプラスチックミラーを、中間帯を省いて、バッチタイプ真空チャンバーを用いて製造した。大気への通気により反射層のひび割れが生じ、熱衝撃性能が低いことが見いだされた。
この実施例での付着条件は以下のとおりであった:
反射層:
クロムターゲット
アルゴン@120sccm
窒素@11sccm
圧力=4e−3mbar
電力=1kW
ターゲットと基材の距離=110mm
時間=2分
厚さ=40nm
層の測定残留応力を決定し、耐久性能を試験した。結果を、それぞれ表15および16に示す。
当業者ならば、具体的に記載したもの以外の変動および修正があってもよいことを、理解するであろう。本発明は、そのような変動および修正をすべて包含することを、理解すべきである。本発明はまた、個々にまたは集合的に本明細書中で言及または示した段階、特徴、組成物および化合物のすべて、ならびに、2以上の段階または特徴の任意およびすべての組み合わせを包含する。
(1) プラスチック基材
(2) 硬質コーティング
(3) 中間帯
(4) 反射層
(5) キャップ層

Claims (41)

  1. 前面、前面上の硬質コーティング、反射層、および硬質コーティングと反射層の間の中間帯を有するプラスチック基材を包含するプラスチックミラーであって、該中間帯が、金属および半金属、金属および半金属の酸化物および窒化物、ならびに炭素からなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含する、前記プラスチックミラー。
  2. プラスチック基材が、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ、フェノール基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アセチル材料、ポリ(2,2’−ジヒドロキシフェニルプロパン)カーボネート、ポリジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレンポリカーボネート、またはこれらのブレンドからなる群より選択される材料から形成される、請求項1に記載のプラスチックミラー。
  3. 硬質コーティングが1以上の耐磨耗性層から形成され、該耐磨耗性層が、有機ケイ素、アクリル系誘導体、ウレタン、メラミンおよびSiOからなる群より選択される材料から形成される、請求項1または請求項2に記載のプラスチックミラー。
  4. 硬質コーティングが約3ミクロン〜約15ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項3に記載のプラスチックミラー。
  5. 中間帯が、金属、半金属、または金属もしくは半金属の酸化物もしくは窒化物から形成される少なくとも1つの層を包含し、該金属もしくは半金属が、Si、Nb、Zr、Sn、Ta、Al、CrおよびTiからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  6. 中間帯が、SiO、Si、AlおよびTiOからなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含する、請求項5に記載のプラスチックミラー。
  7. 中間帯が、約100nm〜約200nmの範囲、または好ましくは約120nm〜約160nmの範囲、または好ましくは約140nmの厚さを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  8. 反射層が、クロム、アルミニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、ジルコニウム、タングステン、ケイ素、ニオブ、タンタル、バナジウム、コバルト、マンガン、銀、亜鉛、およびそれらの混合物;ならびに、それらの酸化物、窒化物、ホウ化物または炭化物、およびそれらの混合物からなる群より選択される材料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  9. 反射層が、クロム、またはCr−NiもしくはCr−Moなどのクロム混合物、またはそれらの炭化物もしくは窒化物から形成される、請求項8に記載のプラスチックミラー。
  10. 反射層が、約20nm〜約80nmの範囲、または好ましくは約20nm〜約80nmの範囲、または好ましくは約40nmの厚さを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  11. さらに、反射層の上にキャップ層を包含する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  12. キャップ層が、ケイ素、チタン、アルミニウム、クロム、またはそれらの酸化物もしくは窒化物、またはそれらの混合物からなり、窒化クロムを包含する群より選択される材料から形成される、請求項11に記載のプラスチックミラー。
  13. キャップ層が、約5nm〜約40nmの範囲、または好ましくは約5nm〜約25nmの範囲、または好ましくは約5nmの厚さを有する、請求項11または請求項12に記載のプラスチックミラー。
  14. ミラーが圧縮性の残留応力を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  15. ミラーが、約−350〜約−600MPa、または好ましくは約−400MPaの測定残留応力を有する、請求項14に記載のプラスチックミラー。
  16. ミラーが、約730〜約930MPa、または好ましくは約830MPaの応力差を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  17. 自動車用ミラーとして使用されるときの、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプラスチックミラー。
  18. プラスチックミラーの製造方法であって、該方法が、
    a)前面を有するプラスチック基材を形成する段階;
    b)プラスチック基材の前面上に1以上の耐磨耗性層をコーティングして硬質コーティングを形成する段階;
    c)硬質コーティング上に中間帯を形成する段階であり、該段階は、硬質コーティング上に、金属、金属酸化物および金属窒化物からなる群より選択される材料の層を少なくとも1つコーティングすることを包含する;ならびに
    d)中間帯の上に反射層をコーティングして、プラスチックミラーを形成する段階、
    を包含する、前記製造方法。
  19. プラスチック基材が、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ、フェノール基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アセチル材料、ポリ(2,2’−ジヒドロキシフェニルプロパン)カーボネート、ポリジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレンポリカーボネートからなる群より選択される材料から形成される、請求項18に記載の方法。
  20. 硬質コーティングが1以上の耐磨耗性層から形成され、該耐磨耗性層が、有機ケイ素、アクリル系誘導体、ウレタン、メラミンまたはSiOからなる群より選択される材料から形成される、請求項18または請求項19に記載の方法。
  21. 硬質コーティングが約3ミクロン〜約15ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 中間帯が、金属、半金属、または金属もしくは半金属の酸化物もしくは窒化物から形成される少なくとも1つの層を包含し、該金属もしくは半金属が、Si、Nb、Zr、Sn、Ta、Al、CrおよびTiからなる群より選択される、請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 中間帯が、SiO、Si、AlおよびTiOからなる群より選択される材料から形成される少なくとも1つの層を包含する、請求項22に記載の方法。
  24. 中間帯が、約100nm〜約200nm、または好ましくは約120nm〜約160nmの範囲、または好ましくは約140nmの厚さを有する、請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 反射層が、クロム、アルミニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、ジルコニウム、タングステン、ケイ素、ニオブ、タンタル、バナジウム、コバルト、マンガン、銀、亜鉛、およびそれらの混合物;ならびに、それらの酸化物、窒化物、ホウ化物または炭化物、およびそれらの混合物からなる群より選択される材料である、請求項35〜46のいずれか1項に記載の方法。
  26. 反射層が、クロム、またはCr−NiもしくはCr−Moなどのクロム混合物、またはそれらの炭化物もしくは窒化物から形成される、請求項47に記載の方法。
  27. 反射層が、約20nm〜約80nm、または好ましくは約35nm〜約50nmの範囲、または好ましくは約40nmの厚さを有する、請求項18〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. さらに、反射層の上にキャップ層を包含する、請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. キャップ層が、ケイ素、チタン、アルミニウム、クロム、またはそれらの酸化物もしくは窒化物、またはそれらの混合物からなる群より選択される材料から形成される、請求項28に記載の方法。
  30. キャップ層が、約5nm〜約40nmの範囲、または好ましくは約5nm〜約25nmの範囲、または好ましくは約5nmの厚さを有する、請求項28または請求項29に記載の方法。
  31. ミラーが圧縮性の残留応力を有する、請求項18〜30のいずれか1項に記載の方法。
  32. ミラーが、約−350MPa〜約−600MPa、または好ましくは約−400MPaの測定残留応力を有する、請求項18〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. ミラーが、約730MPa〜約930MPa、または好ましくは約830MPaの応力差を有する、請求項18〜32のいずれか1項に記載の方法。
  34. プラスチック基材を、射出圧縮成形、圧縮成形、ブロー成形、反応成形またはシート鋳造射出成形により形成する、請求項18〜33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 硬質コーティングを、液体中での浸漬コーティングし、これに続く溶媒蒸発、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、フローコーティング、またはスプレーコーティングにより、プラスチック基材上にコーティングする、請求項18〜34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 中間帯、反射層および任意のキャップ層を、真空蒸着、例えば、熱蒸着、電子ビーム蒸着(イオンビームの補助の有無にかかわらない)、またはスパッタ付着により形成する、請求項18〜35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 中間帯、反射層および任意のキャップ層をスパッタ付着により形成する、請求項18〜35のいずれか1項に記載の方法。
  38. 中間帯、反射層および任意のキャップ層の応力レベルを、スパッタ電力、圧力、温度、付着速度、基材バイアスおよび/またはターゲットと基材の距離を変動させることにより制御する、請求項37に記載の方法。
  39. 反射層の応力レベルを、スパッタリング中の供給ガスに約5%の窒素を加えることにより低下させる、請求項37または請求項38に記載の方法。
  40. 中間帯の応力レベルを、スパッタ電力を低下させることにより低下させる、請求項37または請求項38に記載の方法。
  41. 硬質コーティングの表面を最初に表面処理に付して、中間帯と硬質コーティングの密着性を向上させる、請求項37〜40のいずれか1項に記載の方法。
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