JP2013514981A - 第Xa因子阻害剤の結晶性塩 - Google Patents

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Abstract

本発明は、化合物5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドの塩及び結晶形態、並びにその医薬組成物及び使用方法を提供する。本発明は、その少なくとも一部が結晶形態Aで存在している化合物Iのメシル酸塩、ならびに、結晶形態Aの化合物Iのメシル酸塩を調製するための方法であって、化合物Iの遊離塩基を、メチルエチルケトン、及び場合によりテトラヒドロフランを含む溶媒中で少なくとも1当量のメタンスルホン酸と混合するステップを包含する方法を提供する。

Description

(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法§119(e)の下で、2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,683号の優先権を主張する。この米国仮特許出願第61/287,683号はその全体が、参考として本明細書に援用される。
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、第Xa因子阻害剤5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドの塩、該第Xa因子阻害剤の結晶形態、並びにその組成物及び方法を対象としている。
(技術水準)
Figure 2013514981
の式を有する5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミド(本明細書においてまとめて「化合物I」と呼ぶ)は、特許文献1及び特許文献2(これらはその全体が参考として援用される)に記載されている第Xa因子阻害剤であり、in vivoで抗凝血活性を有することが示されている。
米国特許第7,763,608号明細書 米国特許第7,767,697号明細書
一態様において、本発明は、
Figure 2013514981
の式を有する5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミド(化合物Iとも呼ぶ)のメシル酸塩の結晶形態Aを提供し、この結晶形態は、約18.05、約20.30、約20.95、約21.85、約23.20、約26.13、及び約26.85からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。
一態様において、本発明は、その少なくとも一部が結晶形態Aで存在している化合物Iのメシル酸塩を提供する。
一態様において、本発明は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aを調製するための方法であって、化合物Iの遊離塩基を、メチルエチルケトン、及び場合によりテトラヒドロフランを含む溶媒中で少なくとも1当量のメタンスルホン酸と合わせるステップを含む方法を提供する。
一態様において、本発明は、
Figure 2013514981
の式を有する5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミド(化合物Iとも呼ぶ)のメシル酸塩の結晶形態Bを提供し、この結晶形態は、約16.96、約18.95、約20.41、約21.34、約21.85、約22.75、約25.75、及び約26.65からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。
別の態様において、本発明は、その少なくとも一部が結晶形態Bで存在している化合物Iのリン酸塩を提供する。
一態様において、本発明は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bを調製するための方法であって、アセトン並びに場合により水及び/又はメチルエチルケトンを含む溶媒中で化合物Iのメシル酸塩を再結晶させるステップを含む方法を提供する。
別の態様において、本発明は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩を提供する。一部の実施形態において、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の少なくとも一部は結晶形態で存在している。一部の実施形態において、本発明は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態を提供する。
別の態様において、本発明は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態を提供する。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、
(1)約6.5、約8.0、約8.8、約11.0、約14.5、約17.3、及び約18.2からなる群から選択される少なくとも4個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターン;又は
(2)約4、約6.5、約8.2、約13.9、約14.5、約16、約17.45、約18.2、約19.15、約20.1、約21.45、約22.35、約23.5、約24.0、約25.2、約27.65、及び約28.25からなる群から選択される少なくとも4個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターン
と実質的に同じX線粉末回折パターンを有する結晶形態からなる群から選択される。
一部の実施形態において、リン酸塩の少なくとも一部は結晶形態で存在している。
別の態様において、本発明は、化合物Iの塩を含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、哺乳動物における望ましくない血栓症を特徴とする状態を予防又は治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の化合物Iの塩を前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
この実施形態及び他の実施形態を、以下の文章でさらに説明する。
図1は、化合物Iのメシル酸塩の核磁気共鳴スペクトルを示す図である。 図2は、化合物Iのメシル酸塩の赤外線スペクトルを示す図である。 図3aは、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。 図3bは、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。 図4は、重量で測定された蒸気収着(GVS)の前及び後の化合物Iのメシル酸塩の結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図であり、形態Aは、25℃で最大で90%のRHに曝露され、高い湿気に短時間曝露された後に良好な物理的安定性を示した。 図5は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)の走査を示す図である。 図6は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態BのXRPDパターンを示す図である。 図7は、GVS(25℃で最大で90%のRHに曝露)の前及び後の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形態BのXRPDパターンを示す図であり、高い湿気に短時間曝露された後に形態Bの良好な物理的安定性を示した。 図8aは、式の化合物のメシル酸塩の結晶形態Bの異なる試料のDSCの走査を示す図である。図8aにおける約209℃での第2のピークは、一水和物結晶が溶融した後の再結晶に起因する可能性が高い。 図8bは、式の化合物のメシル酸塩の結晶形態Bの異なる試料のDSCの走査を示す図である。 図9は、化合物I遊離塩基のXRPDパターンを示す図である。 図10aは、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態のXRPDパターンを示す図である。 図10bは、GVSの前及び後の化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態のXRPDパターンを示す図である。 図11は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態の示差走査熱量測定(DSC)の走査を示す図である。 図12は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態1のXRPDパターンを示す図である。 図13は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態2の試料のXRPDパターンを示す図であり、この試料は特に結晶ではなく、該リン酸塩の形態2を限定的に表すものであり得る。 図14は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態3のXRPDパターンを示す図である。 図15は、化合物Iのチオシアン酸塩の結晶形態のXRPDパターンを示す図である。 図16は、化合物Iの塩酸塩の結晶形態のXRPDパターンを示す図である。 図17は、化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態のXRPDパターンを示す図である。 図18は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態3のTGA分析を示す図である。 図19は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態3のDSC分析を示す図である。 図20は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態3のGVS等温線プロットを示す図である。 図21は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態のTGA分析を示す図である。 図22は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態のGVS等温線プロットを示す図である。 図23は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態2のTGA分析を示す図である。 図24は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態2のDSC分析を示す図である。 図25は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態2のGVS等温線プロットを示す図である。 図26は、化合物Iのマレイン酸塩の結晶のDSC分析を示す図である。 図27は、化合物Iのマレイン酸塩の結晶のGVS分析を示す図である。 図28は、化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態AのGVS分析を示す図である。 図29は、化合物Iの塩酸塩の結晶形態のDSC分析を示す図である。 図30は、化合物Iの塩酸塩の結晶形態のGVS分析を示す図である。
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用する場合、別段の指示がない限り以下の定義が適用されるものとする。
定義
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明白な別段の指示がない限り複数の指示対象を含む。
本明細書において使用する場合、「を含む(comprising)」という用語は、その組成物及び方法が列挙した要素を含むが、他の要素を排除するものではないことを意味することを意図したものである。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物及び方法を定義するのに使用する場合、その組合せにとって本質的に重要な他の要素を排除することを意味するものとする。例えば、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求する発明の基本的且つ新規の特徴(複数可)に物質的に影響を及ぼさない他の要素を排除しない。「からなる(consisting of)」は、極微量より多い量の他の成分及び列挙した実質的な方法ステップを排除することを意味するものとする。これらのそれぞれの移行用語(transition term)により定義する実施形態は本発明の範囲内である。
5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミド」という用語は、構造:
Figure 2013514981
の化合物を指し、これを「化合物I」とも呼ぶ。この化合物は、米国特許第7,763,608号及び同第7,767,697号に記載されている。
「互変異性体」とは、エノール−ケト及びイミン−エナミン互変異性体などのプロトンの位置が異なる化合物の交互形態、又はピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、及びテトラゾールなどの環−NH−部分及び環=N−部分の両方に結合した環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性形態を指す。例えば、化合物Iの塩のプロトンは、その分子のイミダゾール環の異なる位置にあってもよい。化合物Iの塩は、別段の指示がない限り、その塩のプロトンの位置に起因する全ての構造的変化を含む。
「患者」とは、哺乳動物を指し、ヒト及びヒト以外の哺乳動物を含む。
「アモルファス」とは、結晶を含有していない化合物、又はXRPD若しくは他の回折技術により識別できるパターンを得るにはその結晶含量が低すぎる化合物を含む組成物を指す。例えば、ガラス質材料はアモルファス材料の一種である。アモルファス材料は真の結晶格子を有しておらず、ガラス質であり、非常に粘性で非晶質の液体に技術的に類似している。ガラスは、より的確には、半固体のアモルファス材料として説明することができる。当技術分野において公知の通り、アモルファス材料とは半固体物質を指す。アモルファスの状態にある化合物は、化合物の溶液から溶媒を急速に蒸発させること、又は結晶状態にある間に化合物を磨砕、微粉砕若しくは他の手段により物理的に加圧若しくは研磨することにより製造することができる。
「結晶」とは、特定の化合物又はその化合物の塩を含有し、水和及び/又は溶媒和することができ、XRPD又は他の回折技術により識別できる回折パターンを示すのに十分な結晶含量を有する材料を指す。結晶は、それらの結晶構造(X線回折パターン)、(DSC及びTGAにより決定する)それらの熱的性質、安定性、溶解度等を特徴とすることができる。X線回折パターンは、特徴的2θ°ピークとして提示され、当業者は、多形体のX線回折パターンの特徴的2θ°ピークに基づいて化合物又は塩の結晶形態を容易に同定することができる。2つのX線回折パターンの少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個、8個、又は10個の2θ°ピーク、より好ましくは全てのピークが、±0.2、±0.1、±0.05又は±0.02度を超えて変化しない場合、それらのX線回折パターンは実質的に同じであると見なされる。一部の実施形態において、特徴的ピークは、25%以上の相対強度を有するものである。一部の実施形態において、特徴的ピークは、10%以上の相対強度を有するものである。一部の実施形態において、特徴的ピークは、5%以上の相対強度を有するものである。
化合物又は塩の結晶は、本明細書において詳細に説明する以下の性質の1種又は複数を含めた性質を特徴とし得る。
・そのX線粉末回折パターン(XRPD)、
・その赤外線スペクトル(IR)、
・その示差走査熱量測定(DSC)、
・その熱重量分析(TGA)、
・その重量で測定された蒸気収着(GVS)などの蒸気収着曲線、及び
・単位セル構造などの結晶構造。
ある場合には、溶媒若しくは溶媒混合物若しくは溶液に溶解した化合物の直接結晶化、又は様々な結晶化条件下で得られた結晶の相互変換により得られる結晶材料は、結晶化において使用した溶媒を含有する結晶を有し得る。そのような組成物は、結晶性溶媒和物と呼ぶことができる。溶媒が水である場合、そのような組成物は、結晶性水和物と呼ぶことができる。また、結晶化を実施する特定の溶媒系及び物理的実施形態(まとめて結晶化条件と呼ぶ)により、その結晶化条件に特有の物理的及び化学的性質を有する結晶材料が生じ得る。これは、化合物の化学的部分の、結晶内での互いに対する配向及び/又は結晶材料中の化合物の特定の多形形態若しくは擬多形形態の優位性に起因し得る。化合物を沈殿及び結晶化させる一般的方法は、本明細書に記載の様々な多形体又は擬多形体の調製に利用することができる。これらの一般的方法は合成有機化学及び医薬製剤の当業者に公知であり、例えば、J. March、「Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure」、第4版(New York:Wiley−InterScience、1992年)及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy、A. Gennaro編、第21版、−Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、Pa、2006年により記載されている。
「多形体」又は「多形形態」とは、ある物質の結晶形態であって、別の結晶形態と異なっているが同じ化学式を共有しているものを指す。同じ化合物の異なる多形形態は、安定性、溶解度、融点、かさ密度、流動性、バイオアベイラビリティーなどの1種又は複数の物理的性質に対して影響を与え得る。
「擬多形体」とは、化合物の水和物又は溶媒和物の結晶形態を指す。多形体とは対照的に、擬多形体は、結晶格子に結合している水又は溶媒の量が異なること以外は化学的に同一である。合成及び/又は結晶化の間に使用する溶媒に応じて、一部の化合物は、異なる化学量論比で(水と)水和物又は(他の溶媒と)溶媒和物を形成する。擬多形体は、多形体に関して公知のものとは異なる、晶相、安定性、溶解速度及びバイオアベイラビリティーのような物理的性質を示し得る。
条件又は収率に関して値を列挙する場合、その値は、±5%、±1%、及び±0.2%などの妥当な範囲内で変わり得ることが理解されよう。同様に、「約」という用語は、数値の前で使用する場合、その値が、±5%、±1%、及び±0.2%などの妥当な範囲内で変わり得ることを示す。「約」をXRPDの2θ°ピークの前で使用する場合、それは、2θ°値が、±0.2、±0.1、±0.05、又は±0.02度変わり得ることを示す。
「治療(treatment)」又は「治療すること(treating)」は、
・疾患若しくは障害を予防若しくはそれに対して防御すること、すなわち、臨床症状を発現させないこと、
・疾患若しくは障害を阻害すること、すなわち、臨床症状の発現を阻止若しくは抑制すること、及び/又は
・疾患若しくは障害を軽減すること、すなわち、臨床症状を退行させること
を含めた、被験体における疾患又は障害の任意の治療を意味する。
本明細書において使用する場合、「予防すること(preventing)」という用語は、予防的(prophylactic)治療を必要としている患者の予防的治療を指す。予防的治療は、病気を患う危険性がある被験体に適切な用量の治療剤を提供し、それにより病気の発症を実質的に防ぐことにより達成することができる。
ヒト医学において、「予防すること」及び「抑制すること(suppressing)」は、最終的に誘発される事象(1種又は複数種)が不明もしくは不顕性である可能性があるか、又は事象(1種又は複数種)が発生してようやく初めて患者が確かめられるので、見分けることが常に可能なわけではないことが当業者により理解されよう。したがって、本明細書において使用する場合、「予防(prophylaxis)」という用語は、本明細書に定義の「予防すること(preventing)」及び「抑制すること」の両方を包含する「治療」の要素として意図したものである。「防御」という用語は、本明細書において使用する場合、「予防」を含むことを意図したものである。
「治療有効量」とは、以下で定義する治療を必要としている被験体に投与する場合に、そのような治療を行うのに十分な本発明の化合物の量を指す。治療有効量は、治療される被験体及び疾患の状態、被験体の体重及び年齢、疾患の状態の重症度、選択した特定の化合物、従うべき投薬計画、投与のタイミング、投与の方法等(これらの全てを当業者が容易に決定することができる)に応じて変わる。
「疾患の状態」とは、本発明の化合物、組成物及び方法を使用する疾患の状態を指す。
「血液試料」とは、被験体から採取した全血、又は血漿若しくは血清を含めた任意の血液の分画を指す。
塩、多形体及び擬多形体
一態様において、本発明は、化合物Iの塩、多形体及び擬多形体を提供する。化合物Iのメシル酸塩、リン酸塩、チオシアン酸塩及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩を含めた複数の塩の形態を形成した。しかし、化合物Iは、試験した条件下で、グルタミン酸及びアスパラギン酸などの特定の酸と塩を形成することができなかった。いかなる理論にも拘束されることを意図したものではないが、このことは、化合物Iの遊離塩基の不十分な溶解度に起因し得ると考えられる。さらに、チオシアン酸塩は、スケールアップ時に再現されなかった。
一実施形態において、本発明は、化合物Iのメシル酸塩を提供する。該メシル酸塩は、アモルファス形態若しくは結晶形態、或いはアモルファス形態及び結晶形態の混合物、或いは複数の多形及び/又は擬多形形態の混合物で存在し得る。一部の実施形態において、塩の少なくとも一部は結晶形態である。
「化合物Iのメシル酸塩」とは、化合物Iとメタンスルホン酸(CHSOH)の間で、例えば、約1対1の当量比で形成される塩を指す。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩は、式:
Figure 2013514981
のものである。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態A又は結晶形態Bを提供する。所与の化合物の結晶多形体は、互いに結合している同じ原子を同じように含有している点で、その化合物の任意の他の結晶多形体と化学的に同一であるが、その結晶形態は異なっている。擬多形体は、結晶格子に結合している水又は溶媒の量が異なること以外は化学的に同一である。合成及び/又は結晶化の間に使用する溶媒に応じて、一部の化合物は、異なる化学量論比で(水と)水和物又は(他の溶媒と)溶媒和物を形成する。同じ化合物の異なる結晶形態は、安定性、溶解度、融点、かさ密度、流動性、バイオアベイラビリティーなどの1種又は複数種の物理的性質に対して影響を及ぼし得る。
化合物Iのメシル酸塩の形態A及び形態Bは、良好な安定性、溶解度、融点、かさ密度、及び流動性を示す。結晶形態Aは、優れた物理的及び化学的安定性を有し、形態Bより高い融点を有する。いずれも「Crystalline Forms of a Factor Xa Inhibitor」と題された2009年12月17日出願の米国仮特許出願第61/287,681号、及び2010年12月16日出願の米国特許出願第12/_,_号(代理人整理番号070545−2051号)(これらの特許出願はその全体が参考として本明細書に援用される)は、他の理由により望ましい化合物Iのメシル酸塩のさらなる結晶形態C、D及びEについて記載している。これらの結晶形態の中で形態Aが最高の融点を有し、それにより、医薬用途に適した組成物の製剤化中のより良好な安定性が提供される。
多形体及び擬多形体は、(X線回折パターン(XRPD)により決定する)それらの結晶構造、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)により決定するそれらの熱的性質、安定性、溶解度等を特徴とすることができる。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の形態Aは、図3a、3b若しくは4に示すXRPD、図5に示すDSCデータ、及び/又は図28に示すGVS分析を特徴とする。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の形態Bは、図6又は7に示すX線回折パターン及び図8a又は図8bに示すDSCデータを特徴とする。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aは、以下で表9に列挙するピークから選択される少なくとも4個の2シータ(2θ°)ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aは、以下で表9に列挙するピークから選択される少なくとも6個、8個又は10個の2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aは、以下で表9に列挙する、最高の相対強度を有する6個、8個又は10個の2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aは、以下で表9に列挙する特徴的2θ°ピークの全てを有するXRPDパターンを示す。化合物Iのメシル酸塩の形態Aは、40℃及び75%のRHでの6カ月の保存後に物理的に安定である。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、以下のピーク:約14.85、約17.0、約17.35、約18.05、約20.3、約20.95、約21.85、約23.2、約26.13、約26.85、及び約31.75から選択される少なくとも4個、6個、8個若しくは10個、又は全ての2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す形態Aである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、少なくとも以下の2θ°ピーク:約17.0、約18.05、約20.3、約20.95、約21.85、約23.2、約26.13、約26.85、及び約31.75を有するXRPDパターンを示す形態Aである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、少なくとも以下の2θ°ピーク:約6.05、約12.05、約13.02、約14.85、約17.0、約17.30、約18.05、約20.3、約20.95、約21.85、約23.2、約26.13、約26.85、約29.55、及び約31.75を有するXRPDパターンを示す形態Aである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、図3のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターン及び/又は図5のDSCパターンと実質的に同じDSCパターンを示す形態Aである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、図28により表されるGVS分析と実質的に同じGVS分析を示す形態Aである。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bは水和物である。一部の実施形態において、形態Bは、以下で表10に列挙するピークから選択される少なくとも4個の2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bは、以下で表10に列挙するピークから選択される少なくとも6個、8個又は10個の2シータ(2θ°)ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bは、以下で表10に列挙する、最高の相対強度を有する6個、8個又は10個の2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bは、以下で表10に列挙する特徴的2θ°ピークを有するXRPDパターンを示す。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、以下の2θ°ピーク:約12.35、約13.97、約16.96、約18.95、約20.41、約21.85、約22.75、約25.65、約25.75、及び約26.65の少なくとも4個、6個、8個又は10個を有するXRPDパターンを示す形態Bである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、少なくとも以下の2θ°ピーク:約12.35、約13.97、約16.96、約18.95、約21.30、約21.85、約22.75、約25.75、及び約26.65を有するXRPDパターンを示す形態Bである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、少なくとも以下の2θ°ピーク:約12.35、約13.97、約16.96、約18.95、約21.30、約21.85、約22.75、約24.35、約25.75、及び約26.65を有するXRPDパターンを示す形態Bである。一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、図6のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターン及び/又は図8a又は8bのDSCパターンと実質的に同じDSCパターンを示す形態Bである。
当業者は、ピークの高さ及び相対強度が、装置の種類、ビーム強度、取得時間の長さ、試料調製等を含めた多くの実験条件に依存していることを理解するであろう。本明細書において提供する2θ°ピークは、±0.2の2θ°、±0.1の2θ°、±0.05の2θ°、又は±0.02の2θ°の範囲内で変わり得る。2つのXRDPパターンが、位置及び場合により強度が±5%、又は±1%、又は±0.2%を超えて変わらない少なくとも4個、少なくとも6個、8個、又は10個の2θ°ピークを有する場合、それらのXRDPパターンは実質的に同じであると見なされる。一実施形態において、4個、6個、8個、又は10個のピークは最高の強度を有するピークである。
一部の実施形態において、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態は、図5、8a又は8bのDSCパターンと実質的に同じDSCパターンを示す。2つのDSCパターンが、位置(℃)及び場合により強度が±5%、又は±1%、又は±0.2%を超えて変わらないピークを有する場合、それらのDSCパターンは実質的に同じであると見なされる。
一態様において、本発明は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aを調製するための方法であって、化合物Iの遊離塩基を、メチルエチルケトン、及び場合によりテトラヒドロフランを含む溶媒中で少なくとも1当量のメタンスルホン酸と混合するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、該方法は、混合物を約50℃以上の温度まで加熱するステップ、及び約20℃の温度まで冷却するステップをさらに含む。一部の実施形態において、該方法は、結晶形態Aを回収するステップをさらに含む。
一態様において、本発明は、化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bを調製するための方法であって、アセトン及び場合により水を含む溶媒中で化合物Iのメシル酸塩を再結晶させるステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、該方法は、混合物を約55〜60℃以上の温度まで加熱するステップ、及び約20±5℃の温度まで冷却するステップをさらに含む。一部の実施形態において、該方法は、結晶形態Bを回収するステップをさらに含む。
別の態様において、メシル酸塩の少なくとも一部が結晶形態A及び/又は結晶形態Bである化合物Iのメシル酸塩を提供している。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iのメシル酸塩が多形形態A及び/又はBとして存在している。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%又は65重量%超、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iのメシル酸塩が、結晶形態A及び/又はBとして組成物中に存在している。
別の態様において、本発明は、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩を対象としている。
一実施形態において、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩は、式:
Figure 2013514981
のものである。
「化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩」とは、化合物Iと1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の間で、例えば、約1対1の当量比で形成される塩を指す。
1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩は、アモルファス形態若しくは結晶形態、又はアモルファス形態及び結晶形態の混合物又は複数の多形若しくは擬多形形態の混合物で存在し得る。一部の実施形態において、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態は、以下の2θ°ピーク:約4.3、約6、約8.45、約9、約10.5、約12.5、約15.0、約15.7、約17.4、約18.45、約24.3、及び約25.05の少なくとも4個、6個、8個、若しくは10個、又は全てを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、該塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ塩の結晶形態は、図10aのXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。図10bは、GVSの前及び後のXRPDパターンのオーバーレイを示し、それは、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態が、湿気に曝露された後に実質的に安定であることを示している。一部の実施形態において、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の結晶形態は、図21、11、及び22のそれぞれにより表されるTGA、DSC、及びGVS分析と実質的に同じTGA、DSC、及び/又はGVS分析を示す。
別の態様において、化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩が結晶形態である。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%又は65重量%超、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩が結晶形態である。
別の態様において、本発明は、化合物Iのリン酸塩の結晶形態を提供する。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩は、式:
Figure 2013514981
のものである。
一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩は、式:
Figure 2013514981
のものである。
「化合物Iのリン酸塩」とは、化合物Iとリン酸(HPO)の間で、例えば、約1対1の当量比で形成される塩を指す。
該リン酸塩は、アモルファス形態若しくは結晶形態、或いはアモルファス形態及び結晶形態の混合物或いは複数の多形及び/又は擬多形形態の混合物で存在し得る。一部の実施形態において、該塩の少なくとも一部は結晶形態である。
一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態1であり、以下の2θ°ピーク:約5.4、約6.5、約9.5、約14.7、約15.6、約16.8、約17.9、約19.2、約22.2、約22.8、約23.65の少なくとも4個、6個、8個、若しくは10個、又は全てを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態1であり、図12のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。形態1はスケールアップ時に再現されなかった。
一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態2であり、以下の2θ°ピーク:約6.5、約8、約8.8、約11.0、約14.5、約17.3、及び約18.2の少なくとも4個、6個、又は全てを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態2であり、図13のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iリン酸塩の結晶形態2は、それぞれ図23、24及び25により表されるTGA、DSC及びGVS分析と実質的に同じTGA、DSC及び/又はGVS分析を示す。
一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態3であり、以下の2θ°ピーク:約4、約6.5、約8.2、約13.9、約14.5、約16、約17.45、約18.2、約19.15、約20.1、約21.45、約22.35、約23.5、約24.0、約25.2、約27.65、及び約28.25の少なくとも4個、6個、8個、若しくは10個、又は全てを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態は、形態3であり、図14のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのリン酸塩の結晶形態3は、それぞれ図18、19及び20により表されるTGA、DSC及びGVS分析と実質的に同じTGA、DSC及び/又はGVS分析を示す。
別の態様において、本発明は、リン酸塩の少なくとも一部が結晶形態1、2、及び/又は3である化合物Iのリン酸塩を対象としている。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iのリン酸塩が多形形態1、2及び/又は3として存在している。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%又は65重量%超、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iのリン酸塩が、結晶形態1、2及び/又は3として組成物中に存在している。
別の実施形態において、化合物Iのチオシアン酸塩は、式:
Figure 2013514981
のものである。
「化合物Iのチオシアン酸塩」とは、化合物Iとチオシアン酸(NCSH)の間で、例えば、約1対1の当量比で形成される塩を指す。
別の実施形態において、本発明は、化合物Iのチオシアン酸塩を提供する。該チオシアン酸塩は、アモルファス形態若しくは結晶形態、又はアモルファス形態及び結晶形態の混合物又は複数の多形形態の混合物で存在し得る。一部の実施形態において、化合物Iのチオシアン酸塩の結晶形態は、以下の2θ°ピーク:約5.0、約10.5、約11.8、約13.5、約14.0、約17.45、約18.3、約21.95、約23.0、約24.5、約25.0、約26.2、約28.5、及び約29.0の少なくとも4個、6個、8個、若しくは10個、又は全てを有するXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、該塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、化合物Iのチオシアン酸塩の結晶形態は、図15のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。
別の態様において、化合物Iのチオシアン酸塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iのチオシアン酸塩が結晶形態である。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%又は65重量%超、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iのチオシアン酸塩が結晶形態である。
別の実施形態において、本発明は、化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態を提供する。一部の実施形態において、化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態は、図17のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態は、それぞれ図26及び27により表されるDSC及びGVS分析と実質的に同じDSC及び/又はGVS分析を示す。
別の態様において、化合物Iのマレイン酸塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iのマレイン酸塩が結晶形態である。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iのマレイン酸塩が結晶形態である。
別の実施形態において、本発明は、化合物Iの塩酸塩の結晶形態を提供する。一部の実施形態において、化合物Iの塩酸塩の結晶形態は、図16のXRPDパターンと実質的に同じXRPDパターンを示す。一部の実施形態において、化合物I塩酸塩の結晶形態は、それぞれ図29及び30により表されるDSC及びGVS分析と実質的に同じDSC及び/又はGVS分析を示す。
別の態様において、化合物Iの塩酸塩の少なくとも一部は結晶形態である。一部の実施形態において、約50重量%又は50重量%超の化合物Iの塩酸塩が結晶形態である。一部の実施形態において、約60重量%又は60重量%超、約65重量%又は65重量%超、約70重量%又は70重量%超、約75重量%又は75重量%超、約80重量%又は80重量%超、約85重量%又は85重量%超、約90重量%又は90重量%超、約95重量%又は95重量%超、あるいは約99重量%又は99重量%超の化合物Iの塩酸塩が結晶形態である。
本発明の塩形態の同一性は、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外(FTIR)及び質量分析(MS)によって確認することもできる。純度及び含水率は、それぞれ、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びカールフィッシャー滴定法により決定することができる。残留溶媒含量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により決定することができる。以下のものは、本発明の塩又は結晶形態の同一性、純度及び性質を決定するために採用することができる特定の分析方法である。これらの分析方法の代表的な手順は、以下で実施例10において説明する。
・プロトンNMR、
・FTIR、
・質量分光分析法、
・メシル酸塩含量についてはHPLC、
・純度は関連物質に基づいて決定した、
・含水率についてはカールフィッシャー、
・微量金属及びケイ素分析(誘導結合プラズマ(ICP)法)、
・炭素、水素、窒素については燃焼、硫黄については比色滴定、塩素についてはイオンクロマトグラフィーによる元素分析、
・残留溶媒についてはGC。
多数の方法が上記の塩の調製に有用であり、当業者に公知である。例えば、化合物Iと、1種又は複数種のモル当量の所望の酸(例えば、塩酸、マレイン酸、チオシアン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、メタンスルホン酸、又はリン酸など)とを、その塩が不溶性である溶媒若しくは溶媒混合物中、又は水のような溶媒中で反応させ、その後、蒸発、蒸留又は凍結乾燥により溶媒を除去する。或いは、化合物Iをイオン交換樹脂に通して所望の塩を形成してもよく、同じ一般的プロセスを使用して生成物の1種の塩形態を別の塩形態に転換してもよい。本明細書において提供する結晶形態は、化合物Iの塩を直接結晶化することにより、又は化合物Iの塩を結晶化し、その後、別の結晶形態若しくはアモルファスの状態から相互変換することにより得ることができる。例示的手順は各実施例において示す。
治療方法
化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、哺乳動物における望ましくない血栓症を特徴とする状態を予防又は治療するために使用することができる。一部の実施形態において、治療有効量の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態を、そのような治療を必要としている哺乳動物に投与する。化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、望ましくない血栓症を特徴とする状態の発症を予防するために単独で、又は薬学的に許容される添加剤と併せて使用することができる。予防的治療は、医学的治療、並びにそれらに付随する精神的及び物理的費用の減少、並びに患者の長期の治療を回避することによる直接的な金銭的節約を通して、病気の危険性がある患者にとって実質的に有益なものとなり得る。発症を予防するほど十分に早くその状態が検出されない患者については、本発明により調製することができる化合物又は塩、例えば化合物Iの塩を、その状態を治療するために単独で、又は薬学的に許容される添加剤と併せて使用することができる。
化合物Iは、血栓形成を阻害するその能力を特徴とし、その阻害には、古典的な尺度の凝固パラメーター、血小板、及び血小板機能に対しての許容される影響、並びにそれらの使用に付随する許容されるレベルの出血性合併症が伴う。望ましくない血栓症を特徴とする状態としては、動脈及び静脈血管系が関与する状態が挙げられる。
冠動脈血管系に関しては、異常な血栓形成が、急性心筋梗塞及び不安定狭心症の主要な原因である既存のアテローム性動脈硬化プラークの破裂の特徴となっており、さらには、血栓溶解治療又は経皮経管冠動脈形成術(PTCA)により生じる閉塞性冠動脈血栓形成の特徴となっている。
静脈血管系に関しては、異常な血栓形成が、静脈血管系における血栓形成(この血管形成は、影響を受けている肢への血流低下及び肺塞栓症に対する素因をもたらす)を患う場合が多い下肢又は腹部の大手術を受ける患者において観察される状態の特徴となっている。異常な血栓形成は、さらに、一般に、凝固因子の急速な消費及び全身性凝固が起きている状態であって、それにより微小血管系全体に命に関わる血栓が形成されて広範な臓器不全につながる状態、敗血症性ショック、特定のウイルス感染、癌である間に両方の血管系内で発生する播種性血管内凝固異常症の特徴となっている。
本明細書に開示の通りに選択及び使用される本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、(a)心筋梗塞、不安定狭心症、難治性狭心症、血栓溶解治療後又は冠動脈形成術後に発生する閉塞性冠動脈血栓を含めた任意の血栓症媒介性急性冠動脈症候群の治療又は予防、(b)塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中又は一過性虚血発作を含めた任意の血栓症媒介性脳血管性症候群の治療又は予防、(c)自然発症的に、又は悪性腫瘍、外科手術若しくは外傷の状況で発生する深部静脈血栓症又は肺塞栓症を含めた静脈系において発生する任意の血栓性症候群の治療又は予防、(d)播種性血管内凝固(敗血症性ショック又は他の感染、外科手術、妊娠、外傷又は悪性腫瘍の状況を含み、多臓器不全に付随するかどうかを問わない)、血栓性血小板減少性紫斑病、閉塞性血栓血管炎、又はヘパリン起因性血小板減少症に付随する血栓性疾患を含めた任意の凝血異常の治療又は予防、(e)体外循環(例えば腎臓透析、心肺バイパス又は他の酸素供給手順、血漿交換治療)に付随する血栓性合併症の治療又は予防、(f)器具使用(例えば心臓又は他の血管内カテーテル法、大動脈内バルーンポンプ、冠状動脈ステント又は心臓弁)に付随する血栓性合併症の治療又は予防、及び(g)補綴具の装着に関連した血栓性合併症などの望ましくない血栓症を特徴とする状態を予防又は治療するのに有用であると考えられている。
一部の実施形態において、化合物Iの塩及び結晶形態は、血栓症及び血栓症に付随する状態の治療において有用である。したがって、哺乳動物における望ましくない血栓症を特徴とする状態を予防又は治療する方法は、治療有効量の本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態を哺乳動物に投与するステップを含む。化合物Iの塩及び結晶形態は、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、不安定狭心症、難治性狭心症、血栓溶解治療後若しくは冠動脈形成術後に発生する閉塞性冠動脈血栓、血栓症媒介性脳血管性症候群、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、一過性虚血発作、静脈血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、凝血異常、播種性血管内凝固、血栓性血小板減少性紫斑病、閉塞性血栓性脈管炎(thromboanglitis obliterans)、ヘパリン起因性血小板減少症に付随する血栓性疾患、体外循環に付随する血栓性合併症、器具使用に付随する血栓性合併症、補綴具の装着に付随する血栓性合併症、血栓溶解治療又は経皮経管冠動脈形成術により生じる閉塞性冠動脈血栓形成、静脈血管系における血栓形成、播種性血管内凝固異常症、凝固因子の急速な消費及び全身性凝固が起きていて、それにより微小血管系全体に命に関わる血栓が形成され広範な臓器不全につながる状態、出血性脳卒中、腎臓透析、血液酸素供給、及び心臓カテーテル法が挙げられるがこれらに限定されない、望ましくない血栓症及び/又は付随する状態の治療において有用である。
一部の実施形態において、状態は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、静脈血栓症、深部静脈血栓症、急性冠動脈症候群、及び心筋梗塞からなる群から選択される。
一部の実施形態において、化合物Iの塩及び結晶形態は、心房細動の患者における脳卒中の予防;医学的疾患の患者における血栓症の予防;深部静脈血栓症の予防及び治療;急性冠動脈症候群患者における動脈血栓症の予防;並びに/或いは心筋梗塞、脳卒中又は他の血栓性事象を経験している患者における先の事象の二次予防において有用である。
本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、また、保存全血の凝固を予防するため、及び試験又は保存用の他の生物学的試料における凝固を予防するためなど血液凝固の阻害が必要とされる場合も常に使用することができる。したがって、本阻害の凝固阻害剤は、血漿凝固因子を含有しているか含有していると疑われる任意の媒体及び保存全血に添加するか、又はそれらと接触させることができ、ここで、例えば、哺乳動物の血液と、移植血管、ステント、整形外科的補綴物、心臓補綴物、及び体外循環系からなる群から選択される材料とを接触させる場合に、血液凝固が阻害されることが望ましい。
化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、ヒトの治療に有用である上に、哺乳動物、齧歯類等を含めたペット、珍しい動物及び家畜の獣医学的治療にも有用である。より好ましい動物としては、ウマ、イヌ、及びネコが挙げられる。
医薬組成物及び投与
本明細書に記載の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態を含む医薬組成物は、望ましくない血栓症を特徴とする疾患の状態を患う被験体の予防又は治療のために使用することができる。一部の実施形態において、該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、及び治療有効量の化合物I、場合により結晶多形形態の化合物Iのメシル酸塩、リン酸塩、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩又はチオシアン酸塩から構成される。
血栓性障害の管理において、化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、経口投与用の錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤若しくはエリキシル剤、坐剤、滅菌液又は懸濁剤又は注射投与などの組成物中で利用してもよく、造型品に組み込んでもよい。本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態を使用する治療を必要としている被験体(一般に哺乳類)には、最適な有効性をもたらす投薬量で投与することができる。用量及び投与の方法は、被験体毎に変わり、治療される哺乳動物の種類、その性別、体重、食事、併用薬物、全体的な臨床症状、採用される特定の化合物、これらの塩又は結晶形態が採用される特定の用途のような因子、及び医療分野の当業者が認識する他の因子に依存する。
錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤等に組み込むことができる一般的アジュバントは、アラビアゴム、トウモロコシデンプン若しくはゼラチンなどの結合剤、及び微結晶性セルロースなどの添加剤、トウモロコシデンプン若しくはアルギン酸のような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、スクロース若しくはラクトースなどの甘味剤、又は香味剤である。注射用の滅菌組成物は、従来の製薬法に従って製剤化することができる。
本発明において有用なカプセル剤は、Stroudら、米国特許第5,735,105号に記載されているものなどの従来の公知のカプセル化技術を使用して調製することができる。カプセル剤は、一般に、適切な用量の活性薬剤を含有する医薬組成物がカプセル剤の中に収まるのに十分な直径及び長さを有するほぼ円筒形の中空の殻である。カプセル剤の内部は、可塑剤、ゼラチン、加工デンプン、ガム、カラギーナン及びそれらの混合物を含むことができる。水、生理的食塩水、又は脂肪油などの液体担体も存在することができる。当業者は、いずれの組成物が好適であるか理解しよう。
活性薬剤に加えて、本発明において有用な錠剤は、充填剤、結合剤、圧縮剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、水、タルク及び当業者が認識している他の要素を含むことができる。錠剤は、コアが単一層で均一であってもよく、好ましい放出プロファイルを実現するために複数の層を有していてもよい。ある場合には、本発明の錠剤は、腸溶コーティングなどでコーティングすることができる。当業者は、他の添加剤が本発明の錠剤において有用であることを理解しよう。
本発明において有用なロゼンジ剤は、適切な量の活性薬剤並びに任意の充填剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、可溶化剤、甘味剤、着色剤及び当業者が必要だと理解するであろう任意の他の成分を含む。本発明のロゼンジ剤は、患者の口に接触したときに活性薬剤が溶解して放出されるように設計されている。当業者は、他の送達方法が本発明において有用であることを理解しよう。
本発明の塩の製剤は、生理学的に許容される担体、添加剤、安定剤等と、所望の純度の程度を有する化合物とを混合することにより保存又は投与のために調製され、持続放出性又は徐放性製剤で提供することができる。治療用途に許容される担体又は賦形剤は医薬分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro編、1985年)に記載されている。そのような材料は、採用される投薬量及び濃度でレシピエントに無害であり、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及び他の有機酸塩などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、ポリアルギニンなどの低分子量(約10残基未満の)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリジノンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、若しくはアルギニンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、及びセルロース若しくはその誘導体、グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含めた他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの対イオン及び/又はTween、Pluronics若しくはポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤を含む。
治療投与に使用される本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態の投薬製剤は滅菌されていてもよい。滅菌性は、0.2ミクロンの膜などの滅菌膜を通した濾過、又は他の従来の方法により容易に達成される。製剤は、一般に、凍結乾燥形態で又は水溶液として保存される。本発明の調製物のpHは、一般に、3と11の間、より好ましくは5〜9、最も好ましくは7〜8となろう。前述の添加剤、担体、又は安定剤の特定のものの使用により、環状ポリペプチド塩の形成がもたらされることが理解されよう。投与の経路は、静脈内(ボーラス及び/又は点滴)、皮下、筋肉内、結腸、直腸、経鼻若しくは腹腔内などの注射によるもの、又は坐剤、移植ペレット若しくは小型シリンダー、エアロゾル、経口投薬製剤(錠剤、カプセル剤及びロゼンジ剤など)及び軟膏剤、ドロップ剤及び皮膚貼付剤などの局所製剤などの様々な剤形を採用するものであり得る。本発明の滅菌は、生分解性ポリマー又は合成シリコーン、例えば、Silastic、シリコーンゴム若しくは他の市販されているポリマーなどの不活性材料を採用し得る移植材料などの造型品に組み込むことが望ましい。
本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、小型単ラメラ小胞、大型単ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの様々なリピドから形成することができる。
本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、塩分子がカップリングする抗体、抗体フラグメント、増殖因子、ホルモン、又は他の標的部分の使用によっても送達することができる。本発明の化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態は、標的設定可能な薬物担体として好適なポリマーともカップリングすることができる。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリジノン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミド−フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが挙げられる。さらに、本発明の塩又は結晶形態は、薬物の放出制御を達成するのに有用なある種の生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸のコポリマー、ポリε‐カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋型又は両親媒性ブロックコポリマーとカップリングすることができる。ポリマー及び半透性ポリマーマトリックスは、バルブ、ステント、管、補綴物などの造型品に形成することができる。
一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体及び化合物Iのメシル酸塩、リン酸塩、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩若しくはチオシアン酸塩又はその結晶形態を含み、医薬組成物は固体形態又は液体添加剤中の懸濁液であり、化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態が、改善された有効性及び/又は安全性プロファイルをもたらす改善された熱及び/又は加水分解安定性、取扱、純度を示す。
一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み、化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態から調製され、医薬組成物は溶液の形態であり、化合物Iの塩又は結晶形態が、改善された有効性及び/又は安全性プロファイルをもたらす改善された熱及び加水分解安定性、取扱、純度並びに溶解度を示す。化合物Iの塩及び結晶形態の液体製剤は、例えば、油などのビヒクル又はオレイン酸エチルのような合成脂肪ビヒクル、又はリポソーム中への活性化合物の溶解又は懸濁により調製することができる。このことが所望され得る。緩衝剤、保存剤、抗酸化剤等は、一般に認められた製薬法により組み込むことができる。
治療化合物の液体製剤は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により突き刺すことができる栓を有する静注液バッグ又はバイアルに入れられる。
一般に、約0.5〜500mgの化合物Iの塩又は化合物Iの塩の結晶形態を、一般に認められた製薬法で要求される通りに、生理学的に許容されるビヒクル、担体、添加剤、結合剤、保存剤、安定剤、染料、香料等と配合する。これらの組成物中の活性成分の量は、示す範囲の好適な投薬量が得られるような量である。
化合物Iの一般的投薬量は、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、好ましくは約0.01mg/kg〜約100mg/kg、より好ましくは約0.10mg/kg〜約20mg/kgの範囲であると考えられる。有益なことに、本発明の塩又は結晶形態は、1日に複数回投与することができ、他の投薬計画も有用であり得る。
治療上有効な投薬量は、in vitro又はin vivoの方法により決定することができる。治療上有効な投薬量の範囲は、投与の経路、治療目標及び患者の状態により影響を受ける。皮下注射針による注射については、その投薬量が体液に送達されると考えることができる。他の投与の経路については、薬理学において周知の方法により、各塩又は各結晶形態について吸収効率を個々に決定する必要がある。したがって、治療家は、最適な治療効果を得るために、必要に応じて、投薬量を滴定し、投与の経路を変更する必要がある可能性がある。有効な投薬量レベル、すなわち、所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルの決定は、当業者が容易に決定しよう。一般に、化合物Iの適用は、より低い投薬量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させる。
別段の定めのない限り、本明細書を通して使用する略語は以下の意味を有する。
A%=全面積パーセント
mA=ミリアンペア
aq.=水性
AUC=曲線下面積
CHSOH=メタンスルホン酸
cm=センチメートル
CuI=ヨウ化銅(I)
d=二重線
deg=度
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMSO=ジメチルスルホキシド
DSC=示差走査熱量測定
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
eq.又はequiv=当量
EtSiH=トリエチルシラン
EtOAc=酢酸エチル
EtOH=エタノール
g=グラム
SO=硫酸
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
hr=時間
Hz=ヘルツ
FTIR=フーリエ変換赤外
IC=イオンクロマトグラフィー
ICP=誘導結合プラズマ
IPA=イソプロパノール
IR=赤外線
J=結合定数
CO=炭酸カリウム
kg=キログラム
L=リットル
LOD=検出限界
M=モル濃度
m=多重線
Me=メチル
MeCN=アセトニトリル
MEK=メチルエチルケトン
MeO=メトキシ
MeOH=メタノール
MeTHF=メチルテトラヒドロフラン
mg=ミリグラム
min.=分
mL=ミリリットル
mm=ミリメートル
mmHg=水銀柱ミリメートル
MTBE=メチルtertブチルエーテル
N=規定
NaSO=硫酸ナトリウム
NH=アンモニア
nM=ナノモル濃度
NMR=核磁気共鳴
PhMe=トルエン
ppm=百万分率
RH=相対湿度
rpm=毎分回転数
r.t.=室温
s=一重線
TGA=熱重量分析
TDS=全溶解固体
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
Wt=重量
μM=マイクロモル濃度
いずれも「Methods Of Preparing Factor Xa Inhibitors And Salts Thereof」と題された2009年12月17日出願の米国仮特許出願第61/287,679号、及び2010年12月16日出願の米国特許出願第12/970,531号、並びに米国特許第7,763,608号は化合物Iを調製する方法について記載しており、これら全ての全体が参考として援用される。
(実施例1)
化合物Cの調製
Figure 2013514981
DMSOを含有する200ガロンの反応器に121.1kgの1,4−ジヨードベンゼンB(0.367mol)を固体として投入し、その後、35kgの2−ヒドロキシピリジンA(0.368mol)、123kgのKCO(4.8equiv)、及び7.3kgのCuI(0.1equiv)を投入した。混合物を120±5℃まで3時間加熱した。HPLCにより反応の完了をモニターした。冷却後、反応を水及び酢酸エチル(EtOAc)でクエンチした。有機層をブラインで洗浄し、その後、NaSOで乾燥させた。濾過後、EtOAc層を85℃で濃縮し、その後、ヘプタンを添加した。次いで、スラリーを20℃まで1時間冷却し、清浄で乾燥した遠心分離機を介して単離した。生成物を収集し、約28mmHg下、35℃で16時間乾燥させた。55.1kg(収率50%)の化合物Cを85.9%のAUC純度で回収した。
(実施例2)
化合物Eの調製
Figure 2013514981
CuI(2.95kg、0.20equiv)及びL−プロリン(1.88kg、0.20equiv)をDMSO(253kg)中で15分間混合した。ここに、化合物C(24kg、1.0equiv)、KCO(22.8kg、4.1equiv)、及び4−ホルミルイミダゾールD(8.30kg、1.07equiv)を添加した。次いで、反応混合物を120±5℃まで3.5時間加熱した。HPLC分析によって反応が完了したと結論づけられると、混合物を20±5℃まで冷却した。反応を水(40倍容)及びジクロロメタン(DCM)(20倍容)で希釈し、1時間撹拌し、遠心分離した。不溶性不純物を除去するために、次いで、1ミクロンの紙をはめ込んだプレスで遠心分離濾液をポリッシュ濾過した(polished filtered)。各層を分離し、有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した。有機濾液を大気中で蒸留して体積を低減し、EtOAcを投入し、内部温度が約72℃になるまで蒸留し続けた。生成物スラリーを約20℃まで2時間冷却し、6.5kgのアルデヒド中間体化合物E(収率30.4%)を単離した。
(実施例3)
化合物Gの調製
Figure 2013514981
200ガロンの反応器に窒素下でメタノール(135kg)、5−クロロチオフェン−2−カルボン酸F(12kg、73.81mol、1.0equiv)、及び硫酸(6.7kg、68.31mol)を投入した。内容物を16時間加温還流(64℃)し、HPLCにより反応の完了をモニターした。該反応器を40℃まで冷却し、混合物を<50℃で油となるまで真空蒸留した。得られたメチルエステルを20℃まで冷却し、水酸化アンモニウム(157kg、2586mol、35.2equiv)をヘプタン(10kg)と共に該反応器に投入した。該反応器の内容物を周囲温度で36時間混合した。HPLCによりメチルエステル中間体の消滅について反応の完了をモニターした。沈殿した固体を遠心分離し、水で洗浄し、その後、ヘプタンで洗浄した。単離した固体を45℃で14時間乾燥させて化合物G(8.42kg、収率77.1%)を得た。
(実施例4)
化合物Iの調製
Figure 2013514981
窒素で不活性化した200ガロンの反応器にトルエン(202.4kg)、1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−カルボアルデヒド(化合物E、11.7kg、1.0equiv)及び2−アミド−5−クロロチオフェン(化合物G、7.8kg、1.09equiv)を投入した。内容物を15分間一緒に混合し、その後、トリエチルシラン(EtSiH)(15.3kg、3.0equiv)及びトリフルオロ酢酸(15.3kg、3.0equiv)を添加した。反応混合物を100±5℃で4時間加熱し、HPLC分析により反応をモニターした。化合物Eが1%未満となったときに反応が完了した。反応混合物を40±5℃まで冷却し、アセトニトリル(139.2kg)を添加し、反応を15±5℃までさらに冷却した。温度を約35℃以下に維持しながら、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(18.7kg、3.3equiv)を15分間にわたって添加した。反応内容物を20℃で1時間撹拌し、固体の化合物Iを遠心分離機で単離した。収集した化合物Iの遊離塩基を45℃及び28mmHgで32時間真空乾燥した。化合物I(10.89kg、収率60.2%)を淡褐色の固体として収集した。HPLCが面積%として記録した純度:93.5%。赤外線(IR)スペクトルにより構造を確認した。
(実施例5)
化合物Iの塩の一次スクリーニング
化合物Iの塩形成のスクリーニングにおいて、5種の溶媒中で5種の酸を調査した。様々な有機溶媒への化合物Iの遊離塩基の溶解度が低いので、塩形成はスラリーとして実施した。化合物Iの遊離塩基(20mg、48μmol)を溶媒(500μL)で処理し、次いで、表1に示した酸(溶媒中の溶液又は固体として1.1当量)を添加し、反応物を熟成チャンバに16時間入れた。詳細な条件及び結果は表2及び表3に列挙する。
XRPDの結果に基づいて結晶性固体を確認すると、チオシアン酸塩の1種の固体形態、リン酸塩の3種の固体形態及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の1種の固体形態が同定された。以下で示している通り、グルタミン酸及びアスパラギン酸の反応では、各反応条件下で一貫して遊離塩基が戻った。このことは、遊離塩基及び遊離酸の両方の溶解度の低さに起因すると考えられる。イオンクロマトグラフィー及びICP分析を使用して、存在している無機アニオンの化学量論比を数量化し、さらに、形成した塩を秤量することができる。
表1.一次スクリーニングにおいて使用した溶媒及び酸の配列
Figure 2013514981
表2.一次塩スクリーニングの結果の概要
Figure 2013514981
表3に従って別の塩スクリーニング実験を行った。
表3
Figure 2013514981
(実施例6)
化合物Iの塩の形成の熟成実験
選択した化合物Iの塩の形成を表4に示す通り100mgスケールで繰り返した。チオシアン酸塩の形成は繰り返さなかった。チオシアン酸塩形成実験2−1は、上記の一次スクリーニングと異なる結果となった。少量の残渣が得られたが、それは先に同定した遊離塩基でも結晶形態でもないことが分かった。溶剤を蒸発させると、プロジェクトの過程で結晶化しなかったガム様のペーストが残った。各熟成実験において、リン酸塩の形態1は再現することができなかった。2つの実験においてリン酸塩の形態3を得た。1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の形態1は100mgスケールで再現可能である。結果は表5にまとめる。
表4.100mg熟成実験において使用した酸及び溶媒
Figure 2013514981
表5.100mg熟成実験の分析データの概要
Figure 2013514981
各塩の高い温度及び湿度に対する安定性を評価するために、リン酸塩及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の試料を40℃/75%のRHで、合計で17日間保存し、その時点でそれらをXRPDにより分析した。それらの化学純度もHPLCにより評価し、表6に示す。リン酸塩及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩のいずれの場合も、分解が始まる前に重大な熱的事象は見られなかった。
表6.40℃/75%のRHの前及び後のHPLC純度
Figure 2013514981
リン酸塩形態2、及び1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩形態1の両方でGVSを実施した。いずれの塩も吸湿性を示さず、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩形態1のみがヒステリシスを示した。
リン酸塩形態2での40℃/75%のRHの研究は、固体形態及び化学純度については、該材料がこれらの条件に対して安定であることを示していた。1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩もこれらの条件下で安定である。リン酸塩形態3において、40℃/75%のRHで保存すると結晶化度が低下し、その化学純度が0.7%低下したが、その固体形態は変化しなかった。1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩も結晶化度の低下、及び化学純度の0.5%の低下を示したが、その固体形態は変化しなかった。
5種の薬学的に許容される対イオンによる化合物Iの塩形成の試みが、再現可能なモノリン酸塩及びモノ1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の形成につながった。
これらの実験においてリン酸塩の3種の固体形態を同定した。形態1は再現されなかった。形態2及び3は熱及びH NMR分析により無水物であると結論づけられた。
或いは、塩形成を還流条件下で実施した。化合物I(300mg)を溶媒(13mL)で処理し、穏やかに還流させた。酸(1.1eq)を添加し、反応を10分間還流させた。加熱を止め、反応物を撹拌しながら周囲温度まで冷却した。結果は表7にまとめる。
表7
Figure 2013514981
各塩の熱的挙動は、熟成及び還流方法の両方から分析した形態については一貫している。TGAにおいて分解の前に観察された低下は非常に小さく、DSCにおける事象は分解が始まった後に発生する。
(実施例7)
選択した化合物Iの塩の溶解度データ
実施例10に記載の濾過方法を使用して、選択した塩形態の熱力学的水溶解度を測定した。結果は表8に詳述する。
表8
Figure 2013514981
メシル酸塩がpH1.8で5.1mg/mLの最大の溶解度の改善を示したことが観察された。GVSデータは、90%のRHで2.8wt%の吸収量を示し、メシル酸塩のヒステリシスの証拠は存在しなかった。一塩化物及びマレイン酸塩が示した吸収量はより低く、それぞれ1.1及び0.45wt%であった。リン酸塩のいずれの固体形態もメシル酸塩形態Aに匹敵する水溶解度を有する。しかし、リン酸塩の多形性の傾向を示す証拠が存在する。1種の固体形態のみを示した1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩は、メシル酸塩形態Aの、この対イオンに期待される水溶解度よりずっと低い水溶解度を示す。リン酸塩形態2及び3並びに1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩形態1は、固体形態及び化学純度については高い湿度及び温度に対して安定である。
(実施例8)
化合物Iのメタンスルホン酸(メシル酸)塩の調製
Figure 2013514981
メチルエチルケトン(MEK、217kg)中の化合物Iの遊離塩基のスラリー(10.89kg、1.0equiv)を30分間混合した。このスラリーにメタンスルホン酸(MeSOH)(2.72kg、1.07equiv)のTHF溶液(27.2kg、2.8倍容)を添加し、混合物を50℃で1時間加熱した。混合物を20℃まで冷却し、30分間撹拌した。メシル酸塩を遠心分離し、MEK(32.7kg)で洗浄した。生成物を28mmHgの減圧下、45℃で116時間乾燥させ、61℃で60時間さらに乾燥させた。乾燥後、12.50kgの化合物Iのメシル酸塩(収率95.0%)を結晶形態Aで単離した。
(実施例9)
化合物Iのメタンスルホン酸(メシル酸)塩の調製
化合物Iのメシル酸塩2.70kgをガラス内張反応器に投入し、その後、アセトン(39.70kg)、及びUSP水(4.35kg)を投入した。溶液を58℃で約1時間還流し、その後、0.2ミクロンのカートリッジフィルターを通して熱ポリッシュ濾過した。ポリッシュした濾液(polished filtrate)を20±5℃まで冷却し、その後、メチルエチルケトン(MEK)(32.80kg)を添加し、周囲温度で12時間撹拌した。スラリーを0〜5℃まで2時間超冷却し、次いで、濾過漏斗を通して濾過した。単離した固体を減圧下及び50±5℃で少なくとも16時間乾燥させて、化合物Iのメシル酸塩(1.7kg)を淡褐色の結晶形態Bとして得た。
(実施例10)
化合物Iのメシル酸塩の分析
化合物Iのメシル酸塩の構造を証明するために、以下に列挙する一連の分析を実施した。NMR、フーリエ変換赤外(FTIR)及び質量分析により同一性を確認した。
・プロトンNMR、
・FTIR分光分析法、
・質量分光分析法(MS)、
・メシル酸塩含量についてはHPLC、
・純度は関連する物質に基づいて決定した(HPLC)、及び
・炭素、水素、窒素については燃焼、硫黄については比色滴定、塩素についてはイオンクロマトグラフィーによる元素分析。
X線粉末回折(XRPD)
Bruker AXS Inc.(Madison、WI、USA)によるBruker AXS C2 GADDS回折計で、Cu Kα線(40kV、40mA)、自動XYZステージ、試料の自動位置決め用のレーザービデオ顕微鏡及びHiStar2次元面積検出器を使用してX線粉末回折パターンを収集した。X線光学素子は、0.3mmのピンホールコリメーターと一体となった単一のGoebel多層ミラーからなる。
ビーム広がり、すなわち、試料上のX線ビームの有効なサイズは、約4mmであった。試料−検出器の距離を20cmとしてθ−θ連続走査モードを採用すると、有効な2θ範囲は3.2°〜29.7°となった。一般に、試料をX線ビームに120秒間曝露する。
化合物Iのメシル酸塩の結晶形態A及びBのXRPDパターンを図3、4、6及び7、並びに表9及び10に示す。
表9:メシル酸塩形態AのXRPDピーク(2θ°)及び強度%
Figure 2013514981
表10:メシル酸塩形態BのXRPDピーク(2θ°)及び強度%。
Figure 2013514981
化合物Iのリン酸塩、チオシアン酸塩及び1−ヒドロキシ−ナフトエート塩の結晶形態のXRPDを図14、及び16〜19に示す。表11は、化合物Iのリン酸塩、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩及びチオシアン酸塩の結晶形態の最も強いピークを示す。
表11
Figure 2013514981
示差走査熱量測定(DSC)
位置が50個あるオートサンプラーを備えたMettler−Toledo Inc.(Columbus、OH、USA)によるMettler DSC 823eでDSCデータを収集した。認証インジウムを使用して、該装置をエネルギー及び温度について較正した。一般に、ピンホール付きアルミニウムパンの中で、0.5〜3mgの各試料を10℃/minで25℃から350℃まで加熱した。50mL/minでの窒素パージを試料の上で維持した。形態A及び形態Bの示差走査熱量測定(DSC)の走査をそれぞれ図5、8a、及び8bで示す。該装置の制御ソフトウェアはTA Instmments Q1000であり、データ分析はUniversal Analysis 2000 v 4.3A Build 4.3.0.6であった。
物理化学的特性決定
以下の手順に従って形態A及びBの物理的化学的性質を決定し、そのデータを表12にまとめる。
HPLCによる熱力学的水溶解度(濾過方法)
親化合物の遊離形態の最大最終濃度を≧10mg/mLとするのに十分な化合物を水に懸濁することにより水溶解度を決定した。懸濁液を25℃で24時間平衡化させ、次いで、pHを測定した。次いで、懸濁液をガラス繊維Cフィルターに通して濾過して96ウェルプレートに入れた。次いで、濾液を101倍に希釈した。定量は、DMSO中の約0.1mg/mLの標準液を基準にしてHPLCにより実施した。異なる体積の標準、希釈及び未希釈の試料溶液を注入した。標準注入において主ピークと同じ保持時間で見られたピークの積分により決定したピーク面積を使用して溶解度を計算した。
HPLCによる熱力学的水溶解度(超遠心分離方法)
親化合物の遊離形態の最大最終濃度を≧10mg/mLとするのに十分な化合物を水に懸濁することにより水溶解度を決定した。混合物を穏やかに撹拌しながら37℃で少なくとも48時間平衡化させた。24〜48時間毎にアリコートを除去し、>60,000rpmで20分間の超遠心分離によって溶液を固体から分離し、次いで、HPLCにより上澄み中の化合物の濃度を分析した。平衡化した(濃度プラトーに達した)時点で、濃度を溶解度として報告した。この方法は、これにより平衡が達成され、熱力学的溶解度の測定であるので、溶解度を決定するのに好ましい方法である。
表12:化合物Iのメシル酸塩の2種の結晶形態の物理的及び化学的特徴
Figure 2013514981
pKa決定及び予測:
Sirius Analytical Ltd.(UK)によるD−PASアタッチメントを備えたSirius GlpKa装置でデータを収集した。水溶液中でUVにより、及びメタノール水混合物中で電位差測定により25℃で測定を行った。0.15M KCl(aq)で滴定媒体のイオン強度を調整した(ISA)。Yasuda−Shedlovsky外挿法によって、メタノール水混合物中で得られた値を0%共溶媒に補正した。Refinement Proソフトウェアv1.0を使用してデータを改良した。ACD pKa予測ソフトウェアv9を使用してpKa値の予測を行った。
LogP&LogD決定
3つの比のオクタノール:イオン強度調整(ISA)水を使用してSirius GlpKa装置での電位差滴定によりデータを収集して、LogP、LogPion、及びLogD値を得た。Refinement Proソフトウェアv1.0を使用してデータを改良した。ACDv9及びSyracuse Research Corp.(Syracuse、NY、USA)によるSyracuse KOWWIN(商標)v1.67ソフトウェアを使用してLogP値の予測を行った。
重量蒸気収着(GVS)
Surface Measurement Systems Limited(Middlesex、UK)による、SMS Analysis Suiteソフトウェアにより制御されるSMS HT−DVS水分収着分析装置を使用して収着等温線を得た。該装置を制御して試料温度を25℃で維持した。全流量を400mL/minで、乾燥及び湿潤窒素の流れを混合することにより湿度を制御した。試料の近くに配置した較正済みの光学露点トランスミッター(0.5〜100%のRHのダイナミックレンジ)により相対湿度を測定した。微量天秤(精度±0.005mg)により、RH%の関数としての試料の重量変化(質量緩和)を常にモニターした。
一般に5〜20mgの試料を周囲条件下でステンレス鋼パン内の風袋を量ったメッシュステンレス鋼ライナーに置いた。40%のRH及び25℃(一般的室内条件)で試料を載せ、取り出した。
表13で概説するように水分収着等温線を作成した(2回の走査で完全な1サイクル)。25℃及び10%のRH間隔で0.5〜90%のRH範囲にわたって標準等温線を作成した。
表13
Figure 2013514981
等温線作成の完了後に試料を回収し、XRPDにより再度分析した。化合物I遊離塩基及びメシル酸塩形態Aは40℃/75%のRHで6カ月の保存後に物理的に安定である。図4は、DVS分析(25℃で最大で90%のRHに曝露)の前及び後の化合物Iのメシル酸塩形態AのXRPDパターンを示す。図7は、DVS分析(25℃で最大で90%のRHに曝露)の前及び後の化合物Iのメシル酸塩形態BのXRPDパターンを示す。これらの図は、形態A及び形態Bのいずれも高い湿気に短時間曝露された後に良好な物理的安定性を有することを示す。
熱重量分析(TGA)
TA Instruments(New Castle、DE、USA)による、位置が16個あるオートサンプラーを備えたQ500 TGAでTGAデータを収集した。認証アルメルを使用して該装置を温度較正した。一般に5〜30mgの各試料を、予め風袋を量った白金るつぼ及びアルミニウムDSCパンに載せ、10℃・min−1で周囲温度から350℃まで加熱した。60ml・min−1の窒素パージを試料の上で維持した。
該装置の制御ソフトウェアはThermal Advantage v4.6.6であり、Universal Analysis v4.3Aを使用してデータを分析した。
本発明の塩又は結晶形態を特徴付けるために当技術分野において公知の他の方法も使用することができる。
(実施例11)
その全体が参考として援用される米国特許第7,763,608号に開示されている方法により調製した化合物Iの試料を使用して以下の実験を実施した。
ラットの調査において化合物Iを使用した。化合物Iの静脈内(IV)及び経口(PO)用量(それぞれ1.0及び10mg/kg)を調製した。IV用量を50%PEG300に溶解させて最終濃度1.0mg/mL及び最終pH5.13を得た。PO用量を2.0mg/mLの濃度及び最終pH2.70で0.5%メチルセルロースに懸濁した。
イヌ及びサルの研究のために、やはり化合物Iを使用した。化合物IのIV及びPO用量(それぞれ1.0及び5.0mg/kg)を調製した。IV用量はラットの研究で使用したものと同様に製剤化した(水中の50%PEG300)。PO用量を1.0mg/mLの濃度及び最終pH約3.50で0.5%メチルセルロースに懸濁した。
研究デザイン
Charles River Laboratories(Hollister、CA)からの合計で6匹の雄のSprague−Dawleyラット(n=3/投薬群)、Marshall BioResources(North Rose、NY)からの3匹の雄のビーグル犬及び3匹の雄のアカゲザルを利用した。ラットにおける全ての外科的処置(大腿及び頸部静脈カテーテル法)は、研究での利用の8日間前に実施し、ラットは利用の前にインハウスで5日間順化させた。イヌは利用の前にインハウスで少なくとも7日間順化させ、研究が完了した時点でコロニーに戻した。サルの研究はオフサイトの契約実験室で実施した。
研究開始前の午後から投与後2時間まで(約18時間)全ての動物を絶食させた。水は制約なく与えた。全ての動物の部屋は12時間の明暗サイクル(6A.M.〜6P.M.)とした。実験の朝、動物を秤量した。ラットの大腿及び頸部(IVのみ)静脈血液ラインを体外に取り出し、アクセスポートに付着させた。イヌを秤量し、採血部位とIV投薬部位の毛を(頭部及び伏在静脈の両方に沿って)剃った。
個々の体重に基づいて全ての動物に5.0mL/kgのPO強制給餌量及び1.0mL/kgのIVボーラス投与量を投与した。3.8%のTSC(1:10希釈)で、投薬後24、56、及び96時間の期間でラット、イヌ、及びサルのそれぞれについて血液試料を得た。乏血小板血漿を得るために血液試料を遠心分離し、得られた血漿を試料分析まで−20℃で保存した。IV群の動物から投与後0(終夜)、10、及び24時間の時点で、200μLの2%ホウ酸に対してラット尿試料を収集した。収集時に、尿量及び水消費量を記録した。尿試料を試料分析まで−20℃で保存した。
試料分析
液体クロマトグラフィータンデム型質量分析(LC/MS/MS)を使用して化合物Iの濃度について血漿試料及び尿試料を分析した。要するに、血漿試料及び尿試料を96ウェルCaptiva(商標)フィルタープレート(0.2μm、Varian、Inc.、Palo Alto、CA)で処理した。500ng/mLのN−(2−(5−クロロピリジン−2−イルカルバモイル)−4−メトキシフェニル)−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)−2−フルオロベンズアミド(内標準)を含有するアセトニトリルで血漿試料のアリコートを沈殿させた。尿試料のアリコートを血漿で希釈した後、内標準を含有するアセトニトリルと混合した。混合物をボルテックスし、4℃で30分間冷凍して、タンパク質を完全に沈殿させた。混合物を濾過して96ウェル収集プレートに入れた。ターボイオンスプレー源を備えたSciex API3000 LC/MS/MSに濾液を注入した。化合物I及びN−(2−(5−クロロピリジン−2−イルカルバモイル)−4−メトキシフェニル)−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)−2−フルオロベンズアミドをThermo Hypersil−Keystone Betasil C18カラム(4.6×100mm、5μm;Fisher Scientific、Houston、TX)で分離した。90%移動相A(水中の0.5%ギ酸)及び10%移動相B(90%アセトニトリル中の0.5%ギ酸)の40%移動相Bへの移動相混合物の勾配(2.8分にわたるプログラム)。陽イオンモードでのm/z 470→342生成物イオン(N−(2−(5−クロロピリジン−2−イルカルバモイル)−4−メトキシフェニル)−4−(N,N−ジメチルカルバミミドイル)−2−フルオロベンズアミド)のピーク面積に対するm/z 411→250生成物イオン(化合物I)のピーク面積を測定した。分析的範囲は0.500〜10,000ng/mLであった。
データ分析
定量下限(LLQ)より低い試料化合物I濃度は<0.500ng/mLと報告した。薬物動態の計算のためにこれらの値はゼロとして処理した。
Watson LIMSソフトウェア(バージョン7.1)を使用して、血漿濃度−時間データのノンコンパートメント解析により化合物Iの薬物動態パラメーター値を計算した。血漿濃度−時間プロファイルの終末相中の時間に対する血漿濃度の自然対数(ln)の線形回帰の傾きの絶対値として終末消失速度定数(k)を計算した。ln(2)/kとして見かけの終末半減期(T1/2)の値を計算した。線形台形法則を使用して血漿濃度−時間プロファイル下面積(AUC)の値を推定した。時間0から最後の検出可能な濃度の時間までAUCallの値を計算した。対応するAUCallとkで除算した最後の検出可能な濃度との合計としてAUC(0〜inf)の値を計算した。IV用量/AUC(0〜inf)から全身クリアランス(CL)を計算した。IV用量/[k・AUC(0〜inf)]から分布容積(Vz)を計算した。CL×平均滞留時間から定常状態での分布容積(Vss)を計算した。最大血漿濃度(Cmax)及びCmaxに達する時間(Tmax)を観察した通りに記録した。PO及びIV投与後の用量で正規化したAUC(0〜inf)値(AUC/D)の比をとることにより経口バイオアベイラビリティー百分率を計算した。結果を表14及び表15に示す。
表14.ノンコンパートメント解析により決定するラット、イヌ、及びサルにおける静脈内 投与後の化合物Iの薬物動態パラメーター
Figure 2013514981
ノンコンパートメント解析はWatson LIMSソフトウェア(バージョン7.1)を使用して実施した。
1/2:終末半減期
AUC:血漿濃度対時間曲線下面積
Vz:分布容積
CL:全身クリアランス
Vss:定常状態での分布容積
表15.ノンコンパートメント解析により決定するラット、イヌ、及びサルにおける経口投与後の化合物Iの薬物動態パラメーター
Figure 2013514981
ノンコンパートメント解析はWatson LIMSソフトウェア(バージョン7.1)を使用して実施した。
1/2:終末半減期
max:最大血漿濃度に達する時間
max:最大血漿濃度
AUC:血漿濃度対時間曲線下面積
%F:絶対バイオアベイラビリティー
理解を明確にする目的で前述の発明について例示及び実施例により多少詳しく説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更及び改変を実施できることを理解しよう。さらに、本明細書において示す各参考文献は、それらを個々に参考として援用するかのようにその全体を参考として援用するものである。

Claims (25)

  1. 約18.05、約20.30、約20.95、約21.85、約23.20、約26.13、及び約26.85からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのメシル酸塩の結晶形態。
  2. 図3a又は図3bのX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
  3. 図5の示差走査熱量測定パターンと実質的に同じ示差走査熱量測定パターン、又は図28により表されるGVS分析と実質的に同じGVS分析をさらに特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
  4. 約16.96、約18.95、約20.41、約21.34、約21.85、約22.75、約25.75、及び約26.65からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのメシル酸塩の結晶形態。
  5. 図6のX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを特徴とする請求項4に記載の結晶形態。
  6. 図8a又は図8bの示差走査熱量測定パターンと実質的に同じ示差走査熱量測定パターンを特徴とする請求項4に記載の結晶形態。
  7. 5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのメシル酸塩であって、前記塩の少なくとも一部が請求項1〜6のいずれか一項に記載の結晶形態で存在している、塩。
  8. 化合物5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドの1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩。
  9. 請求項8に記載の塩であって、前記塩の少なくとも一部が、約4.3、約6、約8.45、約9、約10.5、約12.5、約15.0、約15.7、約17.4、約18.45、約24.3、及び約25.05からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする結晶形態で存在している、塩。
  10. 前記結晶形態が約4.3、約6、約8.45、約9、約10.5、約12.5、約15.0、約15.7、約17.4、約18.45、約24.3、及び約25.05からなる群から選択される少なくとも8個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項9に記載の塩。
  11. 前記結晶形態が図10aのX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項9に記載の塩。
  12. 前記結晶形態が図11に示す示差走査熱量測定パターンと実質的に同じ示差走査熱量測定パターンを特徴とする、請求項9に記載の塩。
  13. 約6.5、約8、約8.8、約11.0、約14.5、約17.3、及び約18.2からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのリン酸塩の結晶形態。
  14. 約6.5、約8、約8.8、約11.0、約14.5、約17.3、及び約18.2からなる群から選択される少なくとも8個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする請求項13に記載の結晶形態。
  15. 前記X線粉末回折パターンが図13のX線粉末回折パターンと実質的に同じである、請求項14に記載の結晶形態。
  16. 約4、約6.5、約8.2、約13.9、約14.5、約16、約17.45、約18.2、約19.15、約20.1、約21.45、約22.35、約23.5、約24.0、約25.2、約27.65、及び約28.25からなる群から選択される少なくとも6個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのリン酸塩の結晶形態。
  17. 約4、約6.5、約8.2、約13.9、約14.5、約16、約17.45、約18.2、約19.15、約20.1、約21.45、約22.35、約23.5、約24.0、約25.2、約27.65、及び約28.25からなる群から選択される少なくとも8個の2θ°ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする請求項16に記載の結晶形態。
  18. 前記X線粉末回折パターンが図14のX線粉末回折パターンと実質的に同じである、請求項17に記載の結晶形態。
  19. 化合物5−クロロ−N−((1−(4−(2−オキソピリジン−1(2H)−イル)フェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのリン酸塩であって、前記塩の少なくとも一部が請求項13〜18のいずれか一項に記載の結晶形態で存在している、塩。
  20. 薬学的に許容される担体と、請求項1〜6及び13〜18のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項7〜12及び19のいずれか一項に記載の塩とを含む組成物。
  21. 哺乳動物における望ましくない血栓症を特徴とする状態を予防又は治療するための方法であって、治療有効量の請求項1〜6及び13〜18のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項7〜12及び19のいずれか一項に記載の塩を前記哺乳動物に投与するステップを含む方法。
  22. 心房細動の患者における脳卒中の予防;医学的疾病の患者における血栓症の予防;深部静脈血栓症の予防及び治療;急性冠動脈症候群患者における動脈血栓症の予防;及び/又は心筋梗塞、脳卒中若しくは他の血栓性事象を経験している患者における先の事象の二次予防のための方法であって、治療有効量の請求項1〜6及び13〜18のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項7〜12及び19のいずれか一項に記載の塩を前記哺乳動物に投与するステップを含む方法。
  23. 血液試料の凝固を阻害するための方法であって、前記試料を請求項1〜6及び13〜18のいずれか一項に記載の結晶形態又は請求項7〜12及び19のいずれか一項に記載の塩と接触させるステップを含む方法。
  24. 化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Aを調製するための方法であって、化合物Iの遊離塩基を、メチルエチルケトン、及び場合によりテトラヒドロフランを含む溶媒中で少なくとも1当量のメタンスルホン酸と合わせるステップを含む方法。
  25. 化合物Iのメシル酸塩の結晶形態Bを調製するための方法であって、アセトン並びに場合により水及び/又はメチルエチルケトンを含む溶媒中で化合物Iのメシル酸塩を再結晶させるステップを含む方法。
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