定義
特に定義しない限り、本明細書に使用するすべての技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書において使用する場合、「蛋白質」および「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾、例えばグリコシル化またはリン酸化に関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖と同義的に使用される。
本明細書において使用する場合、「MICA/B蛋白質」または「MICA/Bポリペプチド」という用語は、MHCクラスI鎖関連A遺伝子またはB遺伝子の発現産物、例えば天然ヒトMICA蛋白質(受託番号L14848)もしくは前述の遺伝子と少なくとも65%(しかし好ましくは75、80、85、90、95、96、97、98または99%)アミノ酸配列同一性を共有し、天然MICA蛋白質の機能活性を示す蛋白質または天然ヒトMICB蛋白質(受託番号NM_005931)もしくは前述の遺伝子と少なくとも65%(しかし好ましくは75、80、85、90、95、96、97、98または99%)アミノ酸配列同一性を共有し、天然MICB蛋白質の機能活性を示す蛋白質を意味する。蛋白質の「機能活性」は、蛋白質の生理機能に関連する任意の活性である。例えば、天然MICA/B蛋白質の機能活性は、NKG2Dとの結合を含み、免疫活性化、例えばサイトカインの分泌などを含み得る。
本明細書において使用する場合、「NKG2D蛋白質」または「NKG2Dポリペプチド」という用語は、KLRK1遺伝子の発現産物、例えば、天然ヒトNKG2D蛋白質(受託番号574240)もしくは前述の遺伝子と少なくとも65%(しかし好ましくは75、80、85、90、95、96、97、98または99%)アミノ酸配列同一性を共有し、天然NKG2D蛋白質の機能活性を示す蛋白質を意味する。例えば、天然NKG2D蛋白質の機能活性は、そのリガンドとの結合およびそれらの遺伝子発現および活性化を調節するための免疫細胞へのシグナル伝達を含み得る。
本明細書において使用する場合、「遺伝子」という用語は、特定の蛋白質をコードする核酸分子、または場合によって、機能RNA分子もしくは構造RNA分子を意味する。
本明細書において使用する場合、「MICA/B遺伝子」、「MICA遺伝子」、「MICB遺伝子」、「MICA/Bポリヌクレオチド」、「MICAポリヌクレオチド」、「MICBポリヌクレオチド」、「MICA/B核酸」、「MICA核酸」または「MICB核酸」という用語は、天然ヒトMICAまたはMICBをコードする核酸配列、例えば天然ヒトMICA遺伝子(受託番号L14848);例えば、天然ヒトMICB遺伝子(受託番号NM_005931)、MICAまたはMICBのcDNAが転写されうる配列を有する核酸;および/または前述の対立遺伝子変異体およびホモログを意味する。この用語は、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよびRNAを包含する。
本明細書において使用する場合、「KLRK1」、「Klrki」、「KLRK1遺伝子」、「Klrki遺伝子」、「NKG2D遺伝子」、「NKG2Dポリヌクレオチド」または「NKG2D核酸」という用語は、天然ヒトNKG2Dをコードする核酸配列、例えば、天然ヒトKLRK1遺伝子(受託番号574240);KLRK1 cDNAが転写され得る配列を有する核酸;および/または前述の対立遺伝子変異体およびホモログを意味する。この用語は、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよびRNAを包含する。
本明細書において使用する場合、「核酸」または「核酸分子」は、2つ以上のヌクレオチド鎖、例えばRNA(リボ核酸)およびDNA(デオキシリボ核酸)を意味する。本明細書に記載の核酸分子は、RNAの形態、またはDNA(例えば、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNA)の形態であり得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であってよく、一本鎖であればコード鎖(センス)または非コード鎖(アンチセンス)であってよい。
本明細書において使用する場合、「患者」、「対象」および「個体」という用語は、本明細書において互換性があり、処置されるおよび/または生体試料を得るための哺乳動物(例えばヒト)対象を意味する。
本明細書において使用する場合、「結合する(bind)」、「結合する(binds)」または「相互作用する」という用語は、1つの分子が、試料または生体内の特定の第2の分子を認識し、接着するが、試料中の他の構造的に関連のない分子は実質的に認識しない、または接着しないことを意味する。
本明細書において使用する場合、プローブまたは抗体に関する「標識された」という用語は、検出可能な物質とプローブまたは抗体とのカップリング(すなわち、物理的結合)による、プローブまたは抗体の直接標識を包含する意図である。
本明細書において使用する場合、核酸分子またはポリペプチドに関して、「天然」という用語は、自然発生の(例えばWT)核酸またはポリペプチドをさす。
本明細書において使用する場合、「診断(diagnostic)」、「診断する(diagnose)」および「診断される(diagnosed)」という用語は、病的状態の存在または性質の特定を意味する。
本明細書において使用する場合、「試料」という用語は、その最も広範囲な意味で本明細書において使用する。ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体などを含む試料は、体液、溶性細胞調製画分もしくは細胞が成長した培地の可溶性分画、ゲノムDNA、RNAもしくはcDNA、細胞、組織、皮膚、毛などを含み得る。試料の例は、唾液、血清、生検標本、血液、尿および血漿を含む。
本明細書において使用する場合、「配列同一性」は、サブユニットの一致を最大にするように、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮に入れて2つの配列をアライメントした場合の、2つの配列中の対応する位置において同一のサブユニットのパーセントを意味する。2つの配列両方の中のサブユニットの位置が、同じヌクレオチドまたはアミノ酸で占められている時、配列同一性が存在する、例えば、所与の位置が2つの個々のDNA分子においてアデニンにより占められている場合、その分子はその位置において同一である。例えば、10ヌクレオチド長の配列の7つの位置が、第2の10ヌクレオチドの配列中の対応する位置と同一である場合、2つの配列は70%の配列同一性を有する。配列同一性は通常配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、Wis.53705)を使用して測定される。
核酸分子の突然変異に関して、「サイレント」変化は、ヌクレオチド配列中の1つまたは複数の塩基対を置換するが、その配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない変化である。「保存的」変化は、核酸の蛋白質コード領域中の少なくとも1つのコドンが、核酸配列によってコードされたポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸が同様の特徴を有する別のアミノ酸と置換されるように変化されたものである。
本明細書において使用する場合、「オリゴヌクレオチド」、「siRNA」、「siRNAオリゴヌクレオチド」および「siRNAの」という用語は、本明細書を通して互換性を持って使用され、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらの置換型およびアルファアノマー型、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート、メチルホスホネートなどを含む、天然の直鎖もしくは環状オリゴマーおよび/または修飾されたモノマーもしくは連鎖を含む。Watson−Crick型の塩基対、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen型の塩基対などのように、オリゴヌクレオチドは、モノマーとモノマーとの相互作用の正則パターンを用いて標的ポリヌクレオチドと特異的に結合できる。
本明細書において使用する場合、「抗体」という用語は、最も広範囲な意味で使用され、特に、完全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含み、文脈が特に述べない限り、または特に矛盾しない限り、それらが所望の生物活性を示すのであれば抗原結合断片、抗体変異体およびそれらの多特異的分子を含む。一般的に、完全長抗体は、ジスルフィド結合によって相互に結合された少なくとも2本の重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む糖蛋白質またはそれらの抗原結合部分である。個々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略する)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。個々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略する)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細かく分割される。個々のVHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番に配列されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の分子構造の一般原則および抗体作製に関するさまざまな技術が提供されている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、本明細書に記載の抗NKG2D抗体は、NKG2Dの活性化および/またはシグナル伝達に干渉するNKG2Dの部分に結合できる。本明細書に記載の抗NKG2D抗体は、NKG2Dリガンド結合相互作用に干渉するNKG2Dの部分にも結合できる。
本明細書において使用する場合、抗体の「抗原結合断片」は、通常少なくともVH領域の1つまたは複数部分を含み、抗原に検出可能に結合できる、完全長抗体の一部を含む分子である。抗原結合断片は、抗体の1、2、3、またはそれを超える抗原結合部分を含む多価分子およびVLおよびVH領域またはそれらの選択された部分が、合成リンカーによって、または機能性抗原結合分子を形成するための組み換え法によって結合された一本鎖構築体を含む。抗体のいくつかの抗原結合断片は、大型の抗体分子の実際の断片化(例えば、酵素的切断)によって得ることができるが、通常、大部分は組み換え技術によって作製される。
本明細書において使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する(すなわち、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列と同一である、または本質的に同一である)可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「に由来する」。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、in vitroのランダムな突然変異生成もしくは部位特異的突然変異生成によって、またはin vivoの体細胞突然変異によって導入された突然変異)。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用する場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列を、ヒトフレームワーク配列上に連結した(グラフトしてある)抗体を含むことを意図しない。
本明細書において使用する場合、「ヒト化」抗体は、非ヒトの免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する、ヒト/非ヒトのキメラ抗体である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエント(受容側)の超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類の超可変領域由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合に、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために実施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むと思われ、超可変ループのすべてもしくは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR残基のすべてもしくは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR残基である。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部をさらに含むことができる。さらなる詳細に関しては、例えば、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、特許文献1、特許文献2および特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24および特許文献25を参照されたい。
本明細書において使用する場合、「フレームワーク領域」または「FR」の残基は、本明細書で定義したCDR以外のそれらのVHまたはVL残基である。
本明細書において使用する場合、「エピトープ」または「結合部位」は、抗原結合ペプチド(抗体など)が特異的に結合する、抗原上の範囲または領域である。蛋白質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基を含むことができる(言い換えると、アミノ酸残基は「溶媒排除表面」内である、および/または特異的抗原結合ペプチドの「フットプリント」である)。本明細書においてエピトープという用語は、特に明記しない限り(例えば、いくつかの文脈において、本発明は特定のアミノ酸残基に直接結合する抗体に関する)、抗hNKG2D抗体または本発明に従った別のhNKG2D特異的薬剤と特異的に結合する、hNKG2Dの任意の特定の領域中の両方の型のアミノ酸結合部位を含む。NKG2Dは、多くのさまざまなエピトープを含み、これらは、限定されることなく、(1)直鎖ペプチド抗原決定基(2)成熟NKG2Dの立体配座において相互に近接する位置にある1つまたは複数の非連続アミノ酸からなる立体配座抗原決定基;および(3)NKG2Dに共有結合した分子構造、例えば炭水化物群の全体、または一部からなる翻訳後抗原決定基を含み得る。文脈により明記されない、または矛盾しない限り、立体配座抗原決定基は、抗原結合ペプチドの原子から約4Åの距離内にNKG2Dアミノ酸残基を含む。
本明細書において使用する場合、対象の抗体(例えばMSまたは21F2)「と本質的に同じエピトープまたは決定基と結合する」という表現は、抗体が、対象の抗体と特異的に結合するNKG2D分子に対して、対象の抗体と「競合する」ことを意味する。
本明細書において使用する場合、NKG2D分子と天然のNKG2D−リガンド(例えばMICA)との結合を「遮断する」抗NKG2D抗体の能力は、可溶性または細胞表面関連NKG2Dおよびリガンド分子を使用するアッセイにおいて、NKG2D分子が抗体の不在下でリガンドと検出可能に結合する場合に、抗体が、用量依存様式でNKG2D分子とリガンドとの結合を検出可能に減少させ得ることを意味する。
本明細書において使用する場合、「NKG2Dリガンド結合相互作用」という表現は、NKG2Dとそのリガンド(例えば、MICA/B、ULBP/RAET1、Mult1、Rae−1δ、Rae−1εおよびH60b)との間の特異的認識および結合相互作用を指す。NKG2Dリガンド結合相互作用を調節する薬剤の例は、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤を含む。
コレステロールおよびトリグリセリドのレベルが高いことは、心血管疾患および2型糖尿病の危険性を増加させる脂質代謝異常であると考えられる。
本明細書において使用する場合、「糖尿病」は、膵臓ホルモンのインスリンの相対的欠乏または絶対的欠乏のため、血糖値の上昇をもたらす代謝異常をさす。糖尿病には2つの形態:1型糖尿病および2型糖尿病がある。1型糖尿病は、一方のベータ細胞を標的とする破壊的自己免疫プロセスおよび他方のこれらの細胞の再生能力との間の好ましくないバランスによる、膵臓ベータ細胞喪失の進行を特徴とする。このバランスの悪さは、最終的にはベータ細胞および内因性インスリン分泌の全欠損をもたらす。2型糖尿病は、インスリン抵抗性およびベータ細胞機能の障害を特徴とし、これは第1相インスリン放出の障害、ベータ細胞のパルス量(pulse mass)の減少およびインスリン欠乏を含む。好ましい実施形態において、本発明は2型糖尿病の治療に関する。
本明細書において使用する場合、「2型糖尿病」は、体がインスリンの効果に対して抵抗性である、または体が、正常なグルコースレベルを維持するための十分なインスリンを産生しない、慢性の病態を意味する。さらに、脂質異常症などの疾患の早期の人々に存在する、代謝機能不全もまた意味する。
本明細書において使用する場合、「心血管疾患」という表現は、心臓および血管に関連する機能に影響を与える異常な病態を意味する。
本明細書において使用する場合、「安全かつ有効な量」という用語は、本明細書に記載の通り使用する際、合理的利益/危険性の比に釣り合った、過度に有害な副作用(毒性、刺激作用またはアレルギー反応)なしに所望の治療応答を得るために十分である成分量を指す。
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療応答を得るために有効な、本明細書に記載の組成物の量、例えば、アテローム硬化性プラークの発症を遅らせるために有効な量、または血糖値を降下させるため、および肥満患者において体重減少を促進するために有効な量を意味する。
具体的な安全かつ有効な量、または治療有効量は、特定の治療される病態、患者の生理的状態、治療される哺乳動物または動物の型、治療期間、(もしあれば)併用の療法の性質ならびに用いる具体的な製剤および化合物またはその誘導体の構造などの因子に伴い変動すると思われる。
本明細書において使用する場合、「治療」という用語は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を回復、治癒、緩和、軽減、変質、救済、寛解、改善または影響を与える目的の、疾患、疾患症状もしくは疾患に対する素因を有する患者への治療薬の適用もしくは投与または患者由来の単離組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与として定義される。例えば、疾患または障害の症状または臨床的に関連のある明示が特定された患者の臨床「治療」、治癒的「治療」または緩和「治療」は、一般的に防止または予防療法を構成しないが、疾患または障害の症状もしくは臨床的に関連のある明示が特定されない患者の「治療」は防止または予防療法である。対象における2型糖尿病の治療は、例えば、血糖値降下および対象の体重減少を含む。2型糖尿病の疾患進行の阻止は、脂質代謝状態の防止もしくは抑制、インスリン抵抗性の低下、脂質代謝異常の防止もしくは抑制、耐糖能の改善などを含む。2型糖尿病の治療および2型糖尿病の疾患進行の阻止は、糖尿病に関連する症状、障害または疾患、例えば、それらに関連するメタボリックシンドローム、糖尿病性網膜症、腎不全、血行不足および四肢障害の緩和もしくは防止を含み得る。治療の個々の形態は、本発明の独特の態様と考えることができる。
従来の分子生物学技術に関する方法を、本明細書に記載する。このような技術は一般に当分野において公知であり、非特許文献5および非特許文献6(定期的に更新)などの方法論に詳細に記載されている。遺伝子導入および遺伝子療法の従来の方法もまた、本発明における使用に適合され得る。例えば、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9を参照されたい。免疫学的技術は一般に当分野において公知であり、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12および非特許文献1などの方法論に詳細に記載されている。
本明細書に記載のものと同様または等価の方法、組成物およびキットは、本発明の実践または試験に使用できるが、適切な方法、組成物およびキットを以下に記載する。
本明細書において述べたすべての出版物、特許出願および特許は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。対立する場合、定義を含む本明細書が支配する。以下に論じる特定の実施形態は、単なる例示であり、限定する意図のものではない。
本発明は、免疫刺激分子のファミリーが糖尿病または脂質代謝機能不全の患者および動物においてアップレギュレーションされ、心血管疾患の発症にとって重要であるという発見に基づく。本明細書に記載のデータは、MICA/B蛋白質が2型糖尿病のヒト患者の血清において上昇すること、および抗NKG2D抗体を糖尿病マウスに注射することによって、NKG2Dリガンド相互作用を遮断し、アテローム硬化性のプラーク形成を有意に抑制することの最初の証拠を提供する。本明細書に記載のデータは、NKG2D/リガンドにより仲介される免疫活性化が2型糖尿病の進行に関与することをさらに示す。2型糖尿病の動物モデルに抗NKG2D抗体を注射することにより、糖尿病を治療することができ、血糖値を有意に降下させることができる。NKG2D/リガンド相互作用の遮断は、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルの減少を含む、異常な代謝状態をさらに緩和させる。
したがって、MICA/Bおよび他のNKG2Dリガンドは、糖尿病患者において2型糖尿病および心血管疾患の発症を予測するための新規な分子マーカーであり、NKG2D/リガンド相互作用と同様に、MICA/Bおよび他のNKG2Dリガンドは、2型糖尿病および他の異常な代謝状態または疾患(例えば、脂質異常症、糖尿病性網膜症、血行不足、四肢障害)および心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化)を予防または治療するための新規な標的である。
したがって、本発明は、2型糖尿病および他の異常な代謝状態、例えば、心血管の疾患または障害を検出および治療するための新規な方法、組成物およびキットを提供する。
NKG2Dは、多くの免疫細胞、例えばNK、NKT、ab Tおよびgd T細胞によって発現される免疫刺激分子である。その同族リガンドによるNKG2Dの刺激は、NKG2D発現免疫細胞の活性化をもたらす。NKG2Dに対するリガンドとして機能できる複数の分子が存在し、これらは、マウスにおいては蛋白質のRae−1、H60およびMult1ファミリーのメンバーならびにヒトにおいては蛋白質のMICA/BおよびULBP/RAET1ファミリーのメンバーを含む。NKG2Dリガンドの大部分は、正常細胞中では発現しない、または低レベルで発現するが、さまざまな疾患状態においてアップレギュレーションされ、順にNKG2D発現免疫細胞を活性化できる。このような免疫活性化は、宿主防御、例えば細菌免疫および腫瘍監視において重要な役割を果たすが、さらに免疫仲介疾患に寄与することもできる。
一実施形態において、本発明は、対象由来の生体試料中にMICA/B蛋白質を検出し、対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患の存在を検出または発生を予測するための方法およびキットを提供する。代謝機能不全関連疾患は、高血糖、糖尿病性網膜症、血行不足、四肢障害および脂質異常症(例えば、高コレステロールおよび高トリグリセリド)を含む。
実施例1において本明細書に記載のデータは、臓器の炎症および関連する合併症を促進するであろうNKG2Dリガンドが、2型糖尿病患者においてアップレギュレーションされることを示す。本明細書に記載のデータは、MICA/B蛋白質のレベルの上昇が2型糖尿病ヒト患者の血清およびアテローム硬化性プラーク中に検出されたことを提供する。H60およびRae−1(レチノイン酸早期誘導性遺伝子1)蛋白質が、脂質代謝機能不全およびアテローム性動脈硬化の動物モデルである、糖尿病または非糖尿病ApoE−/−マウスの血管中、特にアテローム硬化性病変領域および肝臓中においてアップレギュレーションされたこと、ならびにMult1はこれらの動物の血清中でアップレギュレーションされたことがさらに見いだされた(実施例2を参照されたい)。したがって、NKG2Dリガンド(例えば、MICA/B蛋白質またはULBP/RAET1蛋白質)のアップレギュレーションは、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患の存在の検出または発生の予測に有用であり得る。
2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患もしくは代謝機能不全関連疾患の発症に対する素因または2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患もしくは代謝機能不全関連疾患の存在を検出するための通常の方法は、対象から生体試料を得るステップ;生体試料を、NKG2Dリガンドの発現(例えばMICA/Bの発現)を検出する少なくとも1種の試薬と接触させるステップ;生体試料中のNKG2Dリガンドの発現レベルを測定するステップ;およびNKG2Dリガンドの過剰発現と、対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患発症の素因とを相関させるステップを含む。実施例1において論じたデータによって例示されるように、可溶性MICA/Bの発現を測定した。しかし、いくつかの実施形態において、MICA/B発現の膜型を測定できる。MICA/Bの代わり、またはMICA/Bに加えて、任意のNKG2Dリガンドの発現を分析できる。例えば蛋白質のULBP/RAET1ファミリーはNKG2Dリガンドであり、MICA/Bがそうであり得るように、シェディングされ(脱落し)、血清中に存在することが見出されており、したがってこれらの蛋白質を、本明細書に記載の方法、組成物およびキットのための適切なマーカーにする。NKG2Dリガンドは、例えば、非特許文献13に記載されている。
いくつかの実施形態において、NKG2Dリガンドの発現(例えば、MICA/Bの発現)を検出する試薬は、MICA/B抗体および可溶性NKG2Dなどの任意の適切な試薬を含み得る。
一般的に、生体試料は血清である。しかし、任意の適切な生体試料が使用できる。さらなる生体試料の例は、生検標本、血漿、尿、皮膚、血液および唾液を含む。
任意の適切な方法またはアッセイを使用して、対象の生体試料におけるNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)発現のレベルを測定できる。多くの抗体に基づく検出フォーマットは、当分野において周知であり、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay))、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、ウェスタンブロット、フローサイトメトリ、免疫蛍光アッセイ、免疫沈降、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイおよび他の関連技術を含む。いくつかの実施形態において、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することによって検出される。別の実施形態において、一次抗体は、二次抗体または一次抗体に対する試薬の結合を検出することによって検出される。さらなる実施形態において、二次抗体は標識される。免疫アッセイにおける結合の検出に関する多くの手段が当分野において公知であり、本明細書に記載の組成物、キットおよび方法の範囲内である。MICA/Bまたは他のNKG2Dリガンドに特異的な抗体は、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の発現を検出する、少なくとも1種のこれらの手順を組み込む診断キット中に提供され得る。キットは、他の成分、パッケージ、指示書または蛋白質の検出およびキットの使用を助ける他の材料を含有できる。
2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患の発症に対する素因または対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患の存在を検出する方法は、MICA/Bまたは他のNKG2Dリガンド(複数可)の過剰発現と、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患に対する素因または対象において2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患を有することとを相関させるステップを含む。1種または複数のNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)が生体試料中で過剰発現されるかどうかを、生体試料中のNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)発現のレベルと、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の発現のベースラインレベル(対照レベルとしても公知)とを比較することによって決定できる。「ベースラインレベル」は対照レベルであり、いくつかの実施形態において、正常レベルまたは2型糖尿病、炎症性疾患もしくは他の代謝機能不全関連疾患および心血管疾患に対する素因を有する対象において観察されないレベルである。したがって、2型糖尿病、炎症性疾患もしくは他の代謝機能不全関連疾患の発症に関して評価される試料が、NKG2Dリガンドの発現において、ベースラインレベルと比較して測定可能な増加(すなわち、過剰発現、上方制御)、減少を有するか、または実質的に変化なしかどうかを、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の発現の対照レベルまたはベースラインレベルに基づいて決定できる。特定の実施形態において、ベースラインレベルは、対象の疾患状態を時間とともにモニターできるように、および/または所与の治療プロトコルの有効性を時間とともに評価できるように、被検対象に由来する以前の試料から確立できる。
2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患の発症に対する素因または対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連炎症性疾患の存在を検出する方法のいくつかの実施形態において、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)に加えて、1種または複数種のマーカーの発現を分析した。1種または複数種のマーカーはNKG2Dリガンドであってもよく、任意のNKG2Dリガンドの発現を分析できる。測定可能なさらなるマーカーの例は、C反応性蛋白質、IL−6、TNF−α、slCAM−1、sCD40、蛋白質のULBP/RAET1ファミリー(例えば、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、RAET1G、RAET1L)などを含む。NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)に加えて、1種または複数種のマーカーの発現を分析した実施形態において、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)および他のバイオマーカーの組み合わせは、より信頼できる血管疾患の予測および/または代謝機能不全関連疾患の発症を提供できる。このような実施形態において、生体試料を、NKG2Dリガンドの発現を検出する少なくとも1種の試薬およびNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)に加えて1種または複数種のマーカーの発現の存在を検出する2種以上の試薬とそれぞれと接触させる。生体試料中のNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)および2種以上のさらなるマーカーの発現レベルを測定し、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の過剰発現を、対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または代謝機能不全関連疾患(例えば、脂質異常症、糖尿病性網膜症、血行不足、四肢障害など)の発症に対する素因と相関させる。特定の2種以上のさらなるマーカーに依存して、それらの発現低下または過剰発現を、対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または代謝機能不全関連疾患(例えば、脂質異常症、糖尿病性網膜症、血行不足、四肢障害など)の発症に対する素因と相関させることができる。
別の実施形態において、本発明は、NKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1蛋白質)の発現を調節(例えば、MICA/BまたはULBP/RAET1の発現の阻害)および活性を調節(例えばNKG2Dへの結合)し、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患または代謝機能不全関連疾患を有する対象を治療する組成物および方法を提供する。組成物は、心血管疾患(例えばアテローム性動脈硬化)に対して素因がある、および/もしくは発症している人々、ならびに/または代謝機能不全関連疾患、例えば、高コレステロールレベルまたは高トリグリセリドレベル、糖尿病、脂質異常症、糖尿病性網膜症、血行不足、四肢障害などを有する人々を治療するために有用であり得、本明細書に記載している。このような組成物は、1種または複数種のNKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1)の発現または活性/シグナル伝達を調節する治療有効量の薬剤および製薬的に許容される担体を一般的に含む。NKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1)の阻害剤は、細胞中のNKG2Dリガンドのレベルを低下させるために活性である、および/または細胞においてNKG2Dリガンドの活性を低下させる。細胞中のNKG2Dリガンドのレベルを低下させるために活性であるNKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1)の阻害剤は、NKG2Dリガンドをコードする遺伝子の転写または翻訳の阻害剤であり得る。さらに、細胞中のNKG2Dリガンドのレベルを低下させるために活性であるNKG2Dリガンドの阻害剤は、NKG2Dリガンドおよび/またはNKG2DリガンドをコードするRNAの分解を刺激できる。転写および/または翻訳の阻害剤は、核酸に基づく阻害剤、例えば、標的NKG2DリガンドmRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび標的mRNAの切断に対して触媒的に活性であるリボザイムおよびDNA酵素であり得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物はNKG2Dリガンドをコードする遺伝子に特異的なsiRNAを含む。配列特異的siRNAは、標的核酸分子と結合し、それらの発現を阻害する。siRNAの送達のための組成物およびそれらの治療方法を提供する。リボザイム、siRNAおよびアンチセンス分子の構築および使用方法は、当分野において公知である(例えば、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16参照)。「アンチセンス」核酸は、蛋白質をコードする「センス」核酸に相補的な、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的な、またはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。アンチセンス核酸は、全MICA/Bコード鎖またはそれらの一部にだけ相補的であり得る。別の実施形態において、アンチセンス核酸分子は、NKG2Dリガンド(例えば、5’および3’の非翻訳領域)をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。アンチセンス薬剤は、例えば、約8から約80核酸塩基(すなわち、約8から約80ヌクレオチド)、例えば約8から約50核酸塩基、または12から約30核酸塩基を含み得る。アンチセンス化合物は、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)および他のより短い触媒RNAまたは標的核酸とハイブリダイズし、その発現を調節する触媒オリゴヌクレオチドを含む。アンチセンス化合物は、標的遺伝子中の配列に相補的である、少なくとも8個の連続する核酸塩基の伸張を含み得る。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるその標的核酸配列に100%相補的である必要はない。オリゴヌクレオチドと標的との結合が、標的分子の正常な機能に干渉し、有用性喪失の原因となり、特異的結合が望ましい条件下、すなわち、in vivoのアッセイもしくは治療では生理条件下またはin vitroアッセイではアッセイが実施される条件下で、オリゴヌクレオチドと非標的配列との非特異的結合を避けるために十分な程度の相補性がある場合、オリゴヌクレオチドは特異的にハイブリダイズする。
いくつかの実施形態において、NKG2Dリガンドの発現を調節(例えば、MICA/BまたはULBP/RAET1の発現の阻害)および活性(例えばNKG2Dへの結合)を調節し、心血管疾患(例えばアテローム性動脈硬化)に対して素因がある、および/もしくは心血管疾患(例えばアテローム性動脈硬化)発症している、ならびに/または異常な代謝状態、例えば、高コレステロールレベルまたは高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症などを有する、代謝機能不全関連炎症性疾患、例えば2型糖尿病を有する対象を治療するための組成物は、NKG2Dと1種または複数種のそのリガンドとの相互作用(例えば、NKG2D/MICA/B相互作用)を遮断する治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体および心血管疾患、高血圧またはNKG2D/リガンド相互作用経路以外の経路からもたらされる代謝障害を治療するための公知の薬剤を含む。心血管疾患を治療するための公知の薬剤の例は、任意の1種の3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ阻害剤(スタチン)である。スタチンの例は、セルビスタチン(Cervistatin)、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンもしくはロバスタチンまたは薬学的に許容されるそれらの塩を含む。スタチンに関する組成物および方法は、当分野において公知である(特許文献26を参照されたい)。
別の実施形態において、本発明は、NKG2Dと1種または複数種のそのリガンドとの相互作用(例えば、NKG2D/MICA/B相互作用)を遮断する薬剤および薬学的に許容される担体を含む、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば高コレステロールレベルまたは高トリグリセリドレベル、脂質異常症、血行不足、四肢障害、糖尿病性網膜症など)を治療する組成物を提供する。別の実施形態において、組成物は、NKG2Dの活性化およびシグナル伝達を阻害する薬剤および薬学的に許容される担体を含む。
実施例3において本明細書に記載のデータは、抗NKG2D抗体を使用したNKG2Dリガンド結合相互作用の遮断により、NKG2D発現細胞の数を変えることなく、糖尿病ApoE−/−マウスにおいてプラーク形成が抑制され得たことを示す。
NKG2Dと1種もしくは複数種のそのリガンドとの相互作用(例えば、NKG2D/MICA/B相互作用)を遮断する、またはNKG2Dの活性化もしくはシグナル伝達を阻害する任意の適切な薬剤が使用できる。例えば、薬剤は、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性もしくは発現の阻害剤からなる群から選択できる。
NKG2Dの活性化もしくはシグナル伝達を阻害する、またはNKG2Dと1種もしくは複数種のそのリガンドとの相互作用を遮断する典型的な薬剤は、NKG2Dと特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する。
NKG2Dと特異的に結合する任意の適切な抗体が使用できる。本明細書に記載の抗NKG2D抗体は、ポリクローナルヒト抗体およびモノクローナルヒト抗体または免疫グロブリン可変領域の少なくとも1つの抗原結合領域を有するそれらの任意の抗原結合断片部分を含み、この抗体はNKG2Dと特異的に結合する。ポリペプチドのエピトープに対して産生され、天然または組み換え蛋白質の少なくとも一部と結合する場合、抗体はNKG2Dに対して特異的である。NKG2Dの活性化もしくはシグナル伝達を阻害する薬剤の別の例は、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B、ULBP)と特異的に結合する抗体である。NKG2Dリガンド(例えばMICA/B、ULBP)と特異的に結合する、任意の適切な抗体が使用できる。
モノクローナル抗体の特異性および親和性を、競合的阻害によって決定する方法は、非特許文献1、非特許文献17および非特許文献18に見出すことができ、この参考文献は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態において、NKG2Dと特異的に結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体16F16、16F31、MSおよび21F2であり、配列を以下に記載する。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトモノクローナル抗体MSである。これらの抗体の完全長、可変およびCDRの配列を表1に示す。
本明細書に記載の抗NKG2Dおよび抗NKG2Dリガンド抗体は、限定するものではないが、適切な動物へのポリペプチドもしくは抗原断片の接種、リンパ球集団のin vitro刺激、合成方法、ハイブリドーマおよび/または抗NKG2D抗体などをコードする核酸を発現する組み換え細胞などの方法に従って、ルーチンに作製可能である。精製された組み換えNKG2Dまたはそれらのペプチド断片を使用した動物の免疫化は、抗NKG2D抗体の調製方法の一例である。同様に、精製された組み換えNKG2Dリガンド(例えば、ULBP/RAET1蛋白質、MICA/B、Mult1などの1つ)またはそれらのペプチド断片を使用した動物の免疫化は、抗NKG2Dリガンド抗体の調製方法の一例である。
NKG2DまたはNKG2Dリガンドと特異的に結合するモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって得ることができる。例えば、非特許文献19、特許文献27、非特許文献20、非特許文献1、非特許文献17を参照されたく、この内容は参照によりその全体は本明細書に組み込まれる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgAおよびそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであってよい。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、in vitro、in situ またはin vivoで培養できる。
別の実施形態において、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する薬剤は可溶性NKG2Dである。可溶性NKG2Dは、当分野において公知の任意の適切な方法によって調製できる(例えば、非特許文献21を参照されたい)。一実施形態において、可溶性NKG2Dは、任意の適切な送達経路および手段によって、対象に投与される。別の実施形態において、可溶性NKG2Dをコードする核酸は、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または代謝機能不全関連疾患(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、血行不足、四肢障害、糖尿病性網膜症など)を治療するために対象に投与され得る。可溶性NKG2D蛋白質をコードするコード配列は、受託番号574240のヌクレオチド配列と同一であってよく、または受託番号574240のポリヌクレオチドと同じポリペプチドをコードする、遺伝コードの冗長また退縮の結果として異なるコード配列であってもよい。本明細書に記載の他の核酸分子は、天然NKG2D遺伝子の変異体、例えば、天然NKG2D蛋白質の断片、アナログおよび誘導体をコードする変異体を含む。このような変異体は、例えば、天然NKG2D遺伝子の天然発生の対立遺伝子多型、天然NKG2D遺伝子のホモログまたは天然NKG2D遺伝子の非天然発生変異体であってよい。これらの変異体は、1つまたは複数の塩基が天然のNKG2D遺伝子と異なるヌクレオチド配列を有する。例えば、このような変異体のヌクレオチド配列は、天然NKG2D遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、付加または置換を特徴とし得る。
さらに別の実施形態において、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する薬剤は可溶性NKG2Dリガンドであってよい。MICA/Bのシェディング(可溶性)形態が、体中でNKG2D機能を阻害することが示されている。このような実施形態において、可溶性NKG2Dリガンドまたは可溶性NKG2Dリガンドをコードする核酸は、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または代謝機能不全関連疾患(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、血行不足、四肢障害、糖尿病性網膜症など)を治療するために対象に投与され得る。
他の実施形態において、構造に実質的な変化を表す変異体NKG2D蛋白質または変異体NKG2Dリガンド(例えばMICA/B、ULBP/RAET1蛋白質など)を、コードされたポリペプチドにおいて保存的変化ではない変化を引き起こすヌクレオチドの置換を実施することによって作製できる。このようなヌクレオチド置換の例は、(a)ポリペプチド骨格の構造;(b)ポリペプチドの電荷または疎水性;または(c)アミノ酸側鎖のバルク(容量)に変化を起こす置換である。蛋白質の特性に最も大きな変化をもたらすことが一般的に期待されるヌクレオチドの置換は、コドンに非保存的変化を引き起こす置換である。蛋白質構造に主要な変化を引き起こす可能性のあるコドンの変化の例は、(a)疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンに対する(またはこれらによる)親水性残基、例えばセリンもしくはスレオニンの置換;(b)任意の他の残基に対する(またはこれらによる)システインもしくはプロリンの置換;(c)電気陰性残基、例えば、グルタミンもしくはアスパラギンに対する(またはこれらによる)電気陽性側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニンまたはヒスチジンの置換;または(d)側鎖を有さない残基、例えばグリシンに対する(またはこれらによる)嵩張る(bulky)側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンの置換を引き起こすものである。
本明細書に記載の天然Klrk1遺伝子または天然Klrk1 mRNAの天然発生対立遺伝子変異体は、天然Klrk1遺伝子または天然Klrk1 mRNAと、少なくとも75%(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%)の配列同一性を有し、天然Klrk1蛋白質と構造類似性を有するポリペプチドをコードする、ヒト組織から単離された核酸である。本明細書に記載の天然Klrk1遺伝子または天然Klrk1 mRNAのホモログは、天然ヒトKlrk1遺伝子または天然ヒトKlrk1 mRNAと、少なくとも75%(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%)の配列同一性を有し、天然ヒトNKG2D蛋白質との構造類似性を有するポリペプチドをコードする、他の種から単離された核酸である。公共のおよび/または私有の核酸データベースを検索し、天然Klrk1遺伝子または天然Klrk1 mRNAとの高いパーセント(例えば、70、80、90%またはそれを超える)の配列同一性を有する他の核酸分子を特定できる。
非天然発生Klrk1遺伝子またはmRNA変異体は、天然には発生せず(例えば、ヒトの手によって作製される)、天然ヒトKlrk1遺伝子または天然ヒトKlrk1 mRNAとの、少なくとも75%(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%)の配列同一性を有し、天然ヒトNKG2D蛋白質との構造類似性を有するポリペプチドをコードする核酸である。非天然発生Klrk1遺伝子変異体の例は、NKG2D蛋白質の断片をコードするもの、ストリンジェントな条件下で天然Klrk1遺伝子または天然Klrk1遺伝子の相補体とハイブリダイズするもの、天然Klrk1遺伝子またはそれらの相補体と少なくとも65%の配列同一性を共有するものおよびNKG2D融合蛋白質をコードするものである。
本明細書に記載の天然NKG2D蛋白質の断片をコードする核酸は、天然NKG2D蛋白質の例えば、2、5、10、25、50、100、150、200またはそれを超えるアミノ酸残基をコードするものである。天然NKG2D蛋白質の断片をコードする核酸をコードする、またはそれらとハイブリダイズするより短いオリゴヌクレオチド(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、50塩基対長のオリゴヌクレオチド)は、プローブ、プライマーまたはアンチセンス分子として使用できる。天然NKG2D蛋白質の断片をコードする核酸は、酵素的消化(例えば、制限酵素を使用する)または完全長天然Klrk1遺伝子、Klrk1 mRNAもしくはcDNAまたは前述の変異体の化学的分解によって作製できる。天然ヒトKlrk1遺伝子のヌクレオチド配列および先に報告した天然NKG2D蛋白質のアミノ酸配列を使用して、当業者は、例えば、標準的核酸突然変異生成技術によって、または化学合成によって、それらのヌクレオチド配列にわずかな変動を有する核酸分子を作製できる。変異体Klrk1核酸分子を発現させ、変異体NKG2D蛋白質を作製できる。
いくつかの実施形態において、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患の阻害および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)の治療のための組成物は、NKG2Dと1種または複数種のそのリガンドとの相互作用(例えば、NKG2D/MICA/B相互作用)を遮断する薬剤(例えば、抗NKG2D抗体または抗NKG2Dリガンド抗体)、薬学的に許容される担体および心血管疾患を治療するための公知の薬剤を含む。心血管疾患を治療するための公知の薬剤の例は、任意の1種の3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAレダクターゼ阻害剤(スタチン)である。スタチンの例は、セルビスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンもしくはロバスタチンまたは薬学的に許容されるそれらの塩を含む。スタチンに関する組成物および方法は、当分野において公知である(特許文献26を参照されたい)。
実施例3において本明細書に記載のデータは、抗NKG2D抗体を使用したNKG2Dリガンド結合相互作用の遮断により、糖尿病ApoE−/−マウスにおいてアテローム硬化性プラーク形成が有意に抑制されたことを例示し、NKG2D/リガンド相互作用が心血管疾患発症の促進において重要な経路であり、心血管疾患の予防または治療のための薬剤標的として機能できることを示唆している。実施例3および4において本明細書に記載のデータは、NKG2Dノックアウトマウスおよび抗NKG2D抗体研究を使用して、アテローム性動脈硬化および炎症におけるNKG2D/リガンド相互作用の決定的な役割をさらに例示する。NKG2D/リガンド相互作用の遮断により、実施例5に例示するように、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルの低下を含め、異常な代謝状態もまた緩和される。さらに、抗NKG2D抗体治療群および対照群におけるサイトカイン発現プロファイルのさらなる比較は、抗NKG2D抗体治療が複数の炎症促進性サイトカインの産生を有意に抑制することを実証し、血管の炎症を防止することにより機能を果たすことが示唆される(実施例4を参照されたい)。本明細書に記載のデータは、NKG2D/リガンド仲介免疫活性化が、2型糖尿病の進行に関与することをさらに提供する。実施例7において本明細書に記載の実験において、ウェスタン食餌を与えたApoE−/−マウスと比較して、同じ食餌を与えたNKG2D−欠損ApoE−/−Klrk1−/−マウスが、有意に降下した血中グルコースレベルを有し、2型糖尿病の治療に対するNKG2Dまたはそのリガンドの標的化の有用性を実証する。さらに、実施例8に記載のように、抗NKG2D抗体治療は、2型糖尿病のげっ歯類モデルにおいて高血糖および糖尿病の発症および進行を防ぐことができる。
別の実施形態において、本発明は、対象において2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、2型糖尿病を治療するための方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、対象において、NKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態の治療するための方法を提供する。このような病態は、例えば、2型糖尿病、心血管疾患、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)を含む。特定の実施形態において、病態は2型糖尿病である。特定の他の実施形態において、病態は心血管疾患である。
通常の方法は、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態を阻害するための、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する、治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体の対象への投与を含む。特定の実施形態において、本方法は、NKG2Dリガンド結合相互作用を遮断する、治療有効量の薬剤の投与を含む。薬剤は、任意の上記の薬剤、例えば、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、可溶性NKG2Dリガンド、NKG2Dリガンドに特異的な抗体、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の活性または発現の阻害剤であってよい。特定の実施形態において、薬剤は、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片はヒトまたはヒト化である。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、NKG2D発現細胞の、NKG2Dにより仲介される活性化またはシグナル伝達を減少させる。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、NKG2Dとの結合において少なくとも1種のNKG2Dリガンドと競合する。特定の実施形態において、NKG2DリガンドはMICA/Bである。
特定の実施形態において、薬剤の投与により、以下:血糖値降下、耐糖能の改善、インスリン抵抗性の低下、体重減少、血圧低下、炎症低下または代謝機能不全の減少の少なくとも1つをもたらす。
本明細書に記載の(予防的治療を含む)治療法は、本明細書に記載の治療有効量の組成物の、哺乳動物、特にヒトを含むそれらを必要とする対象(例えば、動物、ヒト)、への投与を一般に含む。このような治療は、疾患、障害またはそれらの症状を患っている、有する、その疑いがあるまたはその危険性がある対象、特にヒトに適切に投与されるであろう。「危険性のある」それらの対象の決定は、診断検査または対象もしくは健康管理の提供者の見解(例えば、遺伝子検査、酵素または蛋白質マーカー、マーカー(本明細書において定義したような)、家族歴など)によって、任意の客観的決定または主観的決定によって実施できる。本明細書の組成物は、過剰なNKG2Dのシグナル伝達、発現または活性が関係していると思われる他の任意の障害の治療にも使用できる。
一実施形態において、対象において2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)を治療する方法は、治療の進行をモニターするステップを含む。対象は、疾患またはその症状を治療するために十分な治療有効量の本明細書に記載の組成物を投与されている、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)に関連する障害またはそれらの症状を、患っている、またはその疑いがある対象において、診断マーカー(例えば、本明細書に記載の組成物または薬剤、それらの蛋白質もしくは指標などによって調節される、本明細書に描かれている任意の標的)または診断測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)のレベルを決定することによって治療の進行をモニターできる。本方法において決定されるマーカーのレベルを、健康な正常な対照もしくは他の罹患患者のどちらかにおける既知のマーカーレベルと比較し、対象の疾患状態を確立できる。一般的に、対象におけるマーカーの第2のレベルが、第1のレベルの決定より遅い時点で決定され、2つのレベルを比較し、疾患の経過または治療の有効性をモニターする。特定の実施形態において、対象におけるマーカーの治療前のレベルは、本明細書に記載の治療の開始前に決定され、マーカーのこの治療前のレベルを、その後、治療を始めた後の対象におけるマーカーのレベルと比較し、治療の有効性を決定できる。
糖尿病、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化)および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)の治療のための、NKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤(例えば、MICA/B阻害剤)、可溶性NKG2D、可溶性NKG2Dリガンド(複数可)、抗NKG2D抗体、抗NKG2Dリガンド抗体などを含む組成物の投与は、他の成分と組み合わせて、2型糖尿病、心血管疾患(例えば、アテローム硬化性プラーク形成の抑制)、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)の寛解、減少または排除に有効である治療濃度をもたらす任意の適切な手段によるものであってよい。NKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤(例えば、MICA/B阻害剤)、可溶性NKG2D、可溶性NKG2Dリガンド(複数可)、抗NKG2D抗体、抗NKG2Dリガンド抗体などは、任意の適切な量で、任意の適切な担体物質中に含有され、一般に、組成物の合計重量の1〜95重量%の量で存在し得る。組成物は、局所投与または全身投与に適切な剤形で提供され得る。(例えば、非経口、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内)。特定の実施形態において、組成物は、静脈内、腹腔内または皮下投与される。医薬組成物は従来の薬務にしたがって処方され得る(例えば、非特許文献22および非特許文献23を参照されたい)。
本明細書に記載の組成物は、従来の、非毒性の薬学的に許容される担体および抗原補強剤(アジュバント)を含有する剤形、製剤で、または適切な送達デバイスもしくはインプラントを介して、注射、点滴または移植によって、非経口投与(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)され得る。このような組成物の製剤および調製品は、製剤処方の当業者には周知である。製剤は、非特許文献22、上記に見出すことができる。
非経口使用のための組成物は、単位剤形で(例えば、単回用量のアンプルで)、または適切な保存料を加えた複数回用量を含有するバイアルで提供される(以下を参照されたい)。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、点滴デバイスまたは移植のための送達デバイスの形態であってよく、または使用前に水もしくは別の適切な賦形剤(ビヒクル)で再構成される乾燥粉末として提示されてもよい。活性薬剤は別として、組成物は、適切な非経口的に許容可能な担体および/または添加剤を含む。活性治療薬(複数可)は、放出制御のために、微粒子(ミクロスフェア)、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込むことができる。さらに、組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、等張化剤および/または分散剤を含むことができる。
上記のように、本発明に従った医薬組成物は、滅菌注射に適切な形態であってよい。このような組成物を調製するために、適切な活性治療薬(複数可)は、非経口的に許容可能な液体賦活剤(ビヒクル)に溶解または懸濁される。用いることができる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、適量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適切なバッファーを加えることによって適切なpHに調製した水、1,3−ブタンジオール、リンガー液ならびに等張の塩化ナトリウム溶液およびデキストロース溶液である。これらの水性製剤は、1種または複数の保存料(例えば、メチル、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸)もまた含有できる。化合物の1種が、水にかろうじて、またはわずかに可溶性なだけであった場合において、溶解増強剤もしくは可溶化剤を加えることができ、または溶媒は、10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含むことができる。
ミクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製に使用する材料は、例えば、生分解性/生体内分解性のポリマー、例えば、ポリグラクチン(polygalactia)、ポリ−(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−L−グルタミン)およびポリ(乳酸)である。放出制御非経口製剤を製剤化する場合、使用できる生体適合性担体は、炭水化物(例えばデキストラン)、蛋白質(例えばアルブミン)、リポ蛋白質または抗体である。インプラントに使用する材料は、非生分解性(例えばポリジメチルシロキサン)または生分解性(例えばポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)もしくはポリ(オルトエステル)またはそれらの組み合わせ)であってよい。
少なくとも2種の抗心血管疾患治療薬(例えば、NKG2DまたはMICA/B阻害剤およびスタチン)を、1種の製剤中に一緒に混合してもよい。
本明細書に記載の組成物は、例えば、抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲制御薬、抗高血圧薬、糖尿病に起因または関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満に起因または関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤からなる群から選択される、第2の、またはそれを越える薬理学的に活性な薬剤と組み合わせることができる。これらの薬理学的に活性な物質の例は、GLP−1ならびにGLP−1の誘導体およびアナログ、GLP−2ならびにGLP−2の誘導体およびアナログ、エキセンディン−4ならびにエキセンディン−4の誘導体およびアナログ、アミリンならびにアミリンの誘導体およびアナログ、スルホニルウレア、ビグアナイド、メグリチニド、グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴンアンタゴニスト、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、SGLT2阻害剤、SGLT1の阻害剤、糖新生および/または(glycogenosis)の刺激に関与する肝酵素の阻害剤、グルコース取り込み調節因子、脂質代謝を改変する化合物、例えばHMG CoA阻害剤(スタチン)として抗脂質異常症薬、食物摂取量を低下させる化合物、RXRアゴニスト、β細胞のATP依存性カリウムチャネルに作用する薬剤、;コレスチラミン、コレスチポール、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、プロブコール、デキストロチロキシン、ナテグリニド、レパグリニド;β−遮断薬、例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロールおよびメトプロロール、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、アラトリオプリル(alatriopril)、キナプリルおよびラミプリル、カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼムおよびベラパミルならびにα−遮断薬、例えば、ドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシンおよびテラゾシン;CART(コカインアンフェタミン調節転写産物)アゴニスト、NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、PYY(ポリペプチドYY)アゴニスト、PP(膵臓ポリペプチド)アゴニスト、Y2受容体アゴニスト、Y4受容体アゴニスト、混合型Y2/Y4受容体アゴニスト、アディポネクチンアゴニスト、PPARアゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、TNF(腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)アゴニスト、CRF BP(副腎皮質刺激ホルモン放出因子結合蛋白質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アゴニスト、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト凝集ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤、混合型セロトニンおよびノルアドレナリン作動性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン(thyreotropin)放出ホルモン)アゴニスト、UCP2または3(脱共役蛋白質2または3)調節因子、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、doprexin)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、TRβアゴニスト、ヒスタミンH3アンタゴニスト、ガストリンならびにガストリンのアナログおよび誘導体、グルカゴンならびにグルカゴンの誘導体およびアナログ、FGF−21(線維芽細胞成長因子21)ならびにFGF−21の誘導体およびアナログ、プロトンポンプ阻害剤、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾールならびにグルコキナーゼ活性因子である。
本発明に従った組成物と、1種または複数種の上記の化合物および場合により1種または複数種のさらなる薬理学的に活性な物質の任意の適切な組み合わせは、本発明の範囲内であると考えられることを理解するべきである。
上記の多数の組成物、方法およびキットは2型糖尿病および心血管疾患の治療に適切であるが、本明細書に記載の組成物および方法は、2型糖尿病および心血管疾患を含む、対象における任意の代謝機能不全関連疾患を予防するためにも使用できる。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、疾患の症状を予防または無効にし、疾患の症状の発症を遅らせ、または疾患の重症度を軽減できる。
他の実施形態において、本明細書に記載の組成物および方法は、対象が2型糖尿病を有するかどうかにかかわらず、対象における任意の代謝機能不全関連疾患を検出、予防および/または治療するために使用できる。例えば、対象におけるコレステロールおよびトリグリセリドのレベルの上昇を検出する方法を、本明細書に記載し、対象から生体試料を得るステップ;生体試料を、NKG2Dリガンドの発現(例えばMICA/Bの発現)を検出する少なくとも1種の試薬と接触させるステップ;生体試料中のNKG2Dリガンドの発現レベルを測定するステップ;およびNKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の過剰発現と、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルの上昇の素因または対象におけるコレステロールおよびトリグリセリドのレベルの上昇の存在を相関させるステップを含む。コレステロールおよびトリグリセリドのレベルの上昇を有する(2型糖尿病を有しても、または有さなくてもよい)対象を治療する方法は、コレステロールおよびトリグリセリドのレベルを低下させるための、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する、治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体を対象に投与するステップを含む。本明細書に記載の別の実施例は、糖尿病性網膜症を有する対象を治療するための方法である。このような方法は、糖尿病性網膜症を阻害するための、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する、治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体を対象に投与するステップを含む。糖尿病性網膜症を阻害するための、またはコレステロールおよびトリグリセリドのレベルを低下させるための、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する薬剤は、上記の薬剤、例えば、可溶性NKG2D、NKG2Dに特異的な抗体、可溶性NKG2Dリガンド、NKG2Dリガンドに特異的な抗体、NKG2Dリガンド(例えばMICA/B)の活性または発現の阻害剤などであってよい。薬剤および薬学的に許容される担体は、上記のようなキットにパッケージングすることができる。
さらなる実施形態において、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または代謝機能不全関連疾患(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、血行不足、四肢障害、糖尿病性網膜症など)を治療するための組成物および方法は、細胞表面からNKG2Dリガンドの脱離(shedding)を促進する薬剤を含み得る。NKG2Dリガンドは、多くの場合、プロテアーゼにより細胞表面から切断され(「shedding」と呼ばれる)、シェディングは、シェディングされたリガンドとNKG2Dとの結合によってNKG2Dのシグナル伝達を阻害し、NKG2Dの活性(例えばシグナル伝達)をダウンレギュレートすると考えられている。シェディングを促進または阻害する任意の薬剤は、NKG2Dのシグナル伝達および活性を調節でき、このような実施形態に使用できる。例えば、シェディングに関与する蛋白質に対する抗体または抗原結合断片は、少なくとも1種のNKG2Dリガンドのシェディングを促進するための有効量で対象に投与され得る。
さらに、本明細書に記載の組成物、キットおよび方法は、対象における代謝機能不全関連疾患を予防するために使用できる。例えば、医師は、本明細書に記載の組成物および方法を、家族歴(遺伝)であろうと、または環境要因(例えば、食餌、運動不足など)であろうと、心血管疾患および/または代謝機能不全関連疾患に対する素因を有する対象に投与できる。
上記の組成物は、有効量、すなわち、治療される対象において所望の結果(例えば、2型糖尿病、心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化の阻害または予防、血糖値降下および2型糖尿病患者における体重減少の促進、対象におけるコレステロールまたはトリグリセリドレベルの低下、対象におけるインスリン抵抗性の低下、対象における脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足などの予防または緩和)を生み出すことができる量で対象(例えばヒト)投与されることが好ましい。本明細書に記載の組成物の毒性および治療有効性は、標準的な医薬手順によって決定できる。医学および獣医学の分野では周知のように、任意の1種の動物のための投薬量は、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の組成物、投与の時間および経路、全体的な健康および同時に投与される他の薬剤を含む多くの因子に依存する。
投与される治療薬の量は、投与の様式、患者の年齢および体重およびがんの臨床的症状に依存して変動する。本明細書に記載の組成物は、アテローム硬化性プラーク形成、血糖値、体重、コレステロールレベル、トリグリセリドレベル、インスリン抵抗性などにおける減少を特定する、あるいはNKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1)の発現もしくは生物活性またはNKG2Dの活性もしくはシグナル伝達を測定する任意のそのアッセイを使用することによってアッセイされた、NKG2Dの活性化および/またはシグナル伝達を阻害する投薬量で通常投与される。
対象(例えばヒト)由来の生体試料中のNKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1蛋白質)を検出し、対象における2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)の存在を検出する、またはその発生を予測するためのキットを、本明細書に記載する。典型的なキットは、対象由来の生体試料中のNKG2Dリガンド(例えばMICA/BまたはULBP/RAET1)の発現を検出するための、少なくとも1種の試薬および使用のための指示書を含む。一実施形態において、キットは、ULBP/RAET1蛋白質に対する、またはMICA/Bに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体、検出可能な標識および使用のための指示書を含む。一般的に、生体試料は血清である。しかし、任意の適切な生体試料が使用できる。さらなる生体試料の例は、血液、血漿、尿、唾液、皮膚および生検標本を含む。
糖尿病または任意のNKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態、例えば、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)を有する対象(例えばヒト)に治療を投与するためのキットもまた、本明細書に記載する。一実施形態において、キットは、NKG2Dと1種または複数種のそのリガンドとの相互作用(例えば、NKG2D/MICA/B相互作用、NKG2DとULBP/RAET1蛋白質の1種との相互作用)を遮断する、またはNKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する、治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体を単位剤形中に含有する、治療用組成物または予防用組成物を含む。この薬剤は、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤であってよい。特定の実施形態において、薬剤はNKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片はヒトまたはヒト化である。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片はヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する。
所望であれば、キットは、有効量の、心血管疾患を治療するための公知の薬剤(例えばスタチン)および/または異常な代謝状態(例えば、高コレステロールレベル、高トリグリセリドレベル、脂質異常症、糖尿病性網膜症、四肢障害、血行不足など)を治療するための薬剤をさらに含有する。
特定の実施形態において、キットは、抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲制御薬、抗高血圧薬、糖尿病に起因または関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満に起因または関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる薬剤を、さらに含む。
一般に、本明細書に記載のキットは、パッケージおよび使用のための指示書を含む。いくつかの実施形態において、キットは、治療用組成物または予防用組成物を含有する滅菌容器を含み、このような容器は、箱、アンプル、ビン、バイアル、チューブ、袋、小袋、ブリスターパックまたは当分野において公知の他の適切な容器形態であってよい。このような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔または薬物を保持するために適切な他の材料で作製されていてよい。
本発明を、以下の具体的実施例によってさらに例示する。実施例は単なる例示のために提供し、決して本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
(実施例1)
2型糖尿病患者の血清およびアテローム硬化性プラーク中のMICA、NKG2Dのためのリガンドの検出および他の炎症促進性サイトカインの発現との関連
代謝機能不全が、特定のストレス応答性免疫刺激分子のアップレギュレーションを引き起こし得るかどうかを決定するために、MICA/Bの発現を、糖尿病が確認され、そのうちのいくらかは脂質異常症が確認された2型糖尿病患者の群において評価した。1型糖尿病NODマウスの研究(例えば、非特許文献24参照)より推察されるように、1型糖尿病患者は大部分が自己免疫疾患であり、代謝状態とは独立してMICAのアップレギュレーションを有すると思われるので、1型糖尿病患者は含まれなかった。患者の血管におけるMICA/Bの発現を分析することは非実用的であるので、血液中の可溶性MICA(sMICA)蛋白質のレベルをアッセイした。sMICAは、細胞表面において発現した膜MICA(mMICA)の酵素的に切断された産物であり、さまざまながん患者および免疫疾患患者の血液中に検出されたが、健康な人々には検出されなかったことが、以前に報告されていた。したがって、糖尿病患者の血液中のsMICAの検出は、血管または他の組織におけるMICAのアップレギュレーションを示すことになる。
22例の患者を試験し、それらの有意なパーセントにおいてsMICAのレベルの上昇が検出された(図1A)。22例の患者のうち、6例(27%)は、400pg/mlより高いレベルの血清MICAを有し、最も高いものは12250pg/mlであった(図1A、患者番号1〜6)。さらに、4例の患者(18%)は、検出可能なレベルの血清sMICA(50〜350pg/ml)を有した(図1A、患者番号7〜10)。糖尿病患者におけるsMICAレベルが、どのようにがん患者のsMICAレベルと比較可能かを決定するために、さまざまながん患者由来の50例の血清試料をさらに試験した。50例のがん患者のsMICAレベルはすべて20pg/mlより低かった(図1E)ので、2型糖尿病患者は、がん患者より有意なsMICA蛋白質レベルの上昇を有する。がん患者のsMICAレベルはがんの型およびステージに多く依存して変動するが、2型糖尿病患者のsMICAレベルは、文献に報告されたがん患者のsMICAレベルと比較した場合、やはり非常に高かった(例えば、非特許文献25、非特許文献26参照)。
これらの患者が、さまざまな健康状態でありながら、1から20年間糖尿病の診断を受けていたことを考えれば、これらの患者が可変レベルのsMICAを有することは驚くべきことではない。変動にかかわらず、特に、MICAが高い患者とMICA陰性の患者と比較した場合、高い血清sMICAレベルに関連する特定の傾向が見出された。具体的には、平均血糖値は、MICA陰性の患者においてより、MICAが高い患者において高かった(190±65対157±47;p=0.1)。血液中のsMICA蛋白質のレベルが高さは、動脈においてであれば、複数の免疫細胞において発現されたその受容体NKG2Dとの相互作用を介して血管炎症に影響を与えうる特定の細胞型において、膜MICAが発現されたことを示した。MICA蛋白質の膜形態および可溶性形態の両方がNKG2Dと結合するが、それらが免疫活性化に関して異なる影響を与えることに留意するべきである。NKG2D/mMICAの会合は免疫細胞を活性化するが、一方、NKG2D/sMICA相互作用は免疫細胞を活性化しない。実際に、sMICAは、NKG2Dの結合に対するmMICAとの競合を介して、NKG2D/mMICA相互作用により仲介される免疫活性化に干渉できる。したがって、糖尿病患者の血清におけるいくつかの炎症関連のサイトカインおよび因子の発現を分析し、それらと、可溶性MICAの発現を相関させる試みを実施した。
同じ糖尿病患者の血清におけるサイトカインIL−6、TNF−α、IL−1β、インターフェロン−γ(IFN−γ)およびC反応性蛋白質(CRP)のレベルを評価し、sMICAのアップレギュレーションが任意のこれらのパラメーターと関連するかどうかを決定した(図1B〜D)。IL−1βおよびIFN−γは、アッセイの検出範囲より下であった。sMICA/Bと、TNF−αまたはCRPとの間に相関はなく(図1A、C&D)、MICAの発現が、2種の十分に規定された炎症マーカーであるTNF−αまたはCRPから差次的に制御されたことを示唆した。興味深いことに、血清中のsMICA/Bの発現とIL−6の発現との間に逆相関が存在した(図1AおよびB)。MICA陽性群(患者番号1〜10)中のIL−6の血清レベルは、MICA陰性群(患者番号11〜22)のIL−6の血清レベルより有意に低く(1.21±0.51ng/ml対1.85±1.13ng/ml、P=0.05)、これら2種の因子の間の相互依存的な関係を示唆した。
総合して、これらのデータは、2型糖尿病患者においてMICA/B分子がアップレギュレーションされ、血管炎症およびアテローム性動脈硬化に関与し得ることを実証した。sMICAのレベルの高さは、糖尿病患者におけるMICAのアップレギュレーションを明らかに示すが、炎症およびアテローム性動脈硬化に対するMICAのアップレギュレーションの正味の効果は、可溶性MICA蛋白質と膜MICA蛋白質との相対的寄与に依存する。sMICAの産生は、普通、免疫活性化を制御するためのmMICA/NKG2D相互作用の代償機序である。したがって、マウスモデルを使用して、動脈におけるNKG2Dリガンドのアップレギュレーションおよび炎症およびアテローム性動脈硬化にけるその重要性を直接評価した。
NKG2Dリガンドの発現の臨床的関連をさらに確立するために、ヒト患者のアテローム硬化性大動脈切片の免疫組織化学染色を実施し、NKG2Dのリガンドが組織においてアップレギュレーションされたかどうかを決定した。プラークフリーの大動脈とは対照的(図21)に、アテローム硬化性大動脈中の多くの細胞がMICA/B抗体により陽性に染色された(図2A、C、EおよびG)。隣接切片におけるMac−3またはCD31によるMICA/Bの重複染色パターンは、アテローム硬化性大動脈のマクロファージおよび内皮細胞の両方がMICA/Bを発現したことを示唆し(図2B、D、F、H)、ヒトは、影響を受けた組織においてNKG2Dリガンドの同様の発現パターンを有することを示唆した。
(実施例2)
ApoE−/−マウスのアテローム硬化性プラークおよび他の組織の細胞におけるNKG2Dリガンドのアップレギュレーション
NKG2Dに対するリガンドが、糖尿病および脂質異常症のマウスの血管においてアップレギュレーションされたかどうかを直接試験するために、脂質異常症およびアテローム性動脈硬化の動物モデルであるApoE−/−マウスにおいて、NKG2Dリガンドの発現を決定した。ApoE−/−マウスにおける慢性の代謝機能不全がアテローム硬化性プラークの発症をもたらし、免疫細胞が重要な部分を占めることは、十分確立されている。これらのマウスは、脂質代謝を損傷しており、老化に伴いアテローム性動脈硬化を発症する。アテローム硬化性プラークを発症したApoE−ヌルマウスの大動脈において、NKG2Dリガンドのアップレギュレーションを分析した。
まず、NKG2DリガンドのmRNA発現を、大動脈、特に弓領域にアテローム硬化性プラークを有する8〜10月齢のApoE−/−マウス(糖尿病の誘導はない)の大動脈において検査した。図3Aを参照すると、プラーク病変が異なるレベルのNKG2Dリガンドの発現を有するかどうかを具体的に決定するために、8〜10月齢の非糖尿病ApoE−/−マウス(「アテローム硬化性ApoE−/−」)のアテローム硬化性大動脈弓(「プラークあり」)および明らかなプラークを有さなかった胸部大動脈(「プラークフリー」)から、別々にRNAを単離した。2月齢のプラークフリーのApoE−/−マウス由来の大動脈の対応する部分のRNAを、対照として使用した(「プラークフリーApoE−/−」)。さまざまな個別のNKG2Dリガンドのアップレギュレーションをより具体的に決定するために、Rae−1遺伝子ならびにH60およびMult−1遺伝子のさまざまなアイソフォームに対するアイソフォーム特異的プライマーを使用した。Rae−1、H60およびMULT−1はすべて、さまざまなファミリーに属するNKG2Dリガンドである(例えば、非特許文献27、非特許文献28参照)。マウスには5種の密接に関連したRae−1遺伝子が存在し(>98%同一)、H60遺伝子の3つの異なるアイソフォーム(H60a、bおよびc)が特定されている(例えば、非特許文献27、非特許文献28参照)。Rae−1δ、Rae−1εおよびH60に対する転写産物を、半定量的放射性RT−PCRによって分析した。簡潔にいうと、RNA試料を、Superscript II RNase−H逆転写酵素を用い、オリゴ−dTプライマーを使用して逆転写した。RT産物を段階的に希釈し(各5倍)、P32dCTPの存在下で、遺伝子特異的プライマーを使用して、PCRに供した。使用したプライマーは、報告された遺伝子配列に基づく(例えば、非特許文献27、非特許文献28参照)。PCR産物を、ポリアクリルアミドゲルにおいて泳動させ、その後これを乾燥させ、Phospho−Image screenに曝露した。β−アクチンをローディング対照として使用した。
対照と比較して、Rae−1δ、Rae−1εおよびH60bに対する転写産物は、アテローム硬化性ApoE−ヌルマウスのプラーク領域において大幅にアップレギュレーションされた(図3A)。アテローム性動脈硬化フリーのより若いApoE−ヌル対照と比較して、Rae−1δ、Rae−1εおよびH60bの転写産物の最大100倍の増加が、プラーク範囲において検出された(図3A)。同じマウスの大動脈の非プラーク部分と比較した場合でさえ、プラーク範囲において、Rae−1δ、Rae−1εおよびH60βの10〜20倍の増加が見出された(図3A)。老齢ApoE−/−マウスの大動脈の非プラーク領域は、若齢アテローム性動脈硬化フリーのApoE−/−マウスの対応する領域と比較して、Rae−1δおよびεの中程度のアップレギュレーションを有した。年齢の一致した野生型(WT)対照より非常に高いレベル(10〜30倍の増加)の、NKG2DリガンドのRae−1δ、Rae−1εおよびH60bに対する転写産物が、ウェスタンダイエット(WD)を与えたApoE−/−マウスの大動脈弓において検出された(図3B)。これらのデータは、アテローム硬化性プラークの特定の細胞成分が、NKG2Dリガンド発現の非常に劇的なアップレギュレーションを有することを示唆した。
プラークにおけるNKG2Dリガンドのアップレギュレーションをさらに確認するために、免疫組織化学染色を、ApoE−ヌルマウスアテローム硬化性プラークの凍結切片について、ポリクローナル抗Rae−1抗体および抗H60抗体を用いて実施した。糖尿病および高脂肪ウェスタン食餌がプラーク形成を加速し、NKG2Dリガンドのアップレギュレーションに関与すると思われるので、ストレプトゾトシン(STZ)の注射によって糖尿病をもたらされた、またウェスタン食餌を与えられたApoE−ヌルマウスにおけるプラークをさらに検査した。図3Cを参照すると、STZ処置のために、6週齢のApoE−ヌルマウス(Jackson Lab、Bar Harbor、Maine)を、ストレプトゾトシン(STZ)(55mg/kg、pH4.5クエン酸バッファーに要時溶解)の腹腔内注射によって連続6日間誘導し、糖尿病を発症させ、血中グルコース濃度を確認した(>300mg/dL)。糖尿病の誘導の2ヶ月後、大動脈を単離し、凍結保存した。凍結切片を、ポリクローナルヤギ抗Rae−1抗体またはポリクローナルヤギ抗H60抗体(それぞれ、R&D Systems and Santa Cruz Biotechnology)を用いて染色し、その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ロバ抗ヤギIgG抗体およびABC−HRP染色システムを用いて染色し、陽性染色(茶色)(Santa Cruz Biotechnology)を明らかにした。切片を、モノクローナルラット抗マウスCD68抗体(Serotec)を用いてさらに染色し、その後アルカリホスファターゼ(AP)結合ロバ抗ラット抗体およびABC−AP染色キットを用いてさらに染色した(青色)(Vector Laboratory)。ウェスタン食餌を与えたアテローム性動脈硬化のApoE−/−モデルのために、6週齢のApoE−ヌルマウスを、普通の固形試料からウェスタン食餌に切り換えた。ウェスタン食餌を続けた2ヶ月後、大動脈を単離し、凍結保存し、抗Rae−1抗体および抗H60抗体染色によって分析した(図3D)。
糖尿病および非糖尿病両方のApoEヌルマウスのアテローム硬化性大動脈弓領域のプラーク範囲の切片においてRae−1およびH60に対する陽性染色が明白であったが、中膜(血管平滑筋層)または外膜(血管平滑筋層)においては非常に少なくかった(図3Cおよび3D)。対照として、同じマウスのプラークフリーの大動脈領域において、Rae−1またはH60の染色はほとんど検出されなかった(図3D、下段パネル)。組織在住マクロファージのマーカーであるCD68に対する染色は、RAE−1およびH60の染色と有意な重複を有し、マクロファージが浸潤したプラークが、NKG2Dリガンドを発現したプラークの少なくとも1つの細胞集団であったことを示し、このことを、アテローム硬化性大動脈から直接単離したマクロファージにおけるRae−1発現をフローサイトメトリ分析することによってさらに確認した(図3E)。さらに、アテローム硬化性ApoE−/−マウスの大動脈から単離した内皮細胞もまた、高いRae−1発現を有した(図3E)。
それらの代謝不全を考えると、ApoE−/−マウスのマクロファージは、血液および組織中の異常な代謝産物の増加に応答してNKG2Dリガンド発現をアップレギュレーションしたと思われる。したがって、マクロファージが脂質異常症および糖尿病に関連した2種の異常な代謝産物である、酸化型LDL(oxLDL)または終末糖化産物(AGE)によってin vitro培養において誘導され得るかどうかを決定した。示したように、oxLDLおよびAGEの存在下で培養した場合、野生型マウスのマクロファージは、複数のNKG2Dリガンドのそれらの発現を、転写産物および蛋白質両方のレベルにおいて有意にアップレギュレーションした(図3F〜H)。図3Fを参照すると、培養2日後、mRNAをさまざまに処置したマクロファージから単離し、逆転写させてcDNAを作製し、これを5倍段階的に希釈し、NKG2DリガンドのRae−1δ、Rae−1εおよびH60bの検出のためにPCRに供した。図3Gを参照すると、図3Fと同じ方法で処置したマクロファージを溶解し、PAGEゲルにおいて分離し、Rae−1分子のすべてのアイソフォームと反応する抗Rae1抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。図3Hを参照すると、oxLDLまたはAGEと一緒に培養した野生型マクロファージもまた、フローサイトメトリ分析に基づいて、より高い細胞表面レベルのRae−1染色を有した。Rae−1染色は、色のない「コールド」抗RAE−1抗体によって競合からはずすことができ、NKG2Dリガンドの特異的アップレギュレーションを確認した(図3H)。
総合すると、これらの実験は、NKG2Dに対する複数のリガンドが、脂質および/またはグルコースの代謝障害を有するマウスの動脈においてアップレギュレーション御されたことを実証した。プラーク病変におけるNKG2Dリガンドの重度のアップレギュレーションは、血管炎症およびアテローム性動脈硬化の伝播におけるNKG2Dリガンドの直接の役割を示唆した。興味深いことに、プラーク中の細胞、例えばマクロファージだけが、NKG2Dリガンドの転写産物および蛋白質の最も重度のアップレギュレーションを有した。プラーク中の多くの細胞が脂質成分に応答して活性化されることを考慮すると、これらのデータは、NKG2Dリガンドアップレギュレーションは、さまざまな細胞型において、ストレス応答性経路および免疫活性化経路の両方を介して誘導される可能性があることを示唆した。
(実施例3)
NKG2D/リガンドとモノクローナル抗NKG2D抗体またはNKG2Dノックアウトとの相互作用の妨害による、ApoE−ヌルマウスにおけるプラーク形成の抑制
動脈、特にプラークにおけるNKG2Dリガンドアップレギュレーションは、NKG2D発現免疫細胞を活性化し、血管炎症およびアテローム性動脈硬化を促進できる。このことを試験するために、モノクローナル抗NKG2D抗体(クローンMI−6)を糖尿病ApoE−ヌルマウスに注射し、潜在的NKG2D/リガンド相互作用を遮断し、このような妨害がプラーク形成を抑制できるかどうかを決定した。抗NKG2D抗体の注射は、NKG2D発現免疫細胞の欠失がないマウスにおいてNKG2D/リガンド相互作用を遮断することが示されている。(非特許文献29、非公開)。C57BL/6がバックグラウンドの6週齢の雄ホモ接合ApoE−ヌルマウスに、STZ注射により糖尿病を誘導し、プラーク形成を加速させた。STZ投与の1週間前および3日前に、200マイクログラム/注射のモノクローナル抗NKG2D抗体(クローンMI−6、ラットIgG2a)をApoE−ヌルマウスに腹腔内注射した。対照群において、抗NKG2D抗体の代わりにアイソタイプの一致する対照抗体を与えたこと以外は同じ方法でマウスを処置した。糖尿病の誘導後8週間マウスに普通の固形試料を与え続け、その間、実験期間中を通して週に1回、抗NKG2D抗体または対照抗体をマウスに与えた。最後の抗体注射の1週間後、マウスを犠牲にして、大動脈におけるアテローム硬化性病変を分析した。
アイソタイプの一致する対照抗体を注射したものと比較して、抗NKG2D抗体を注射した糖尿病ApoE−ヌルマウスは、プラーク形成が劇的に減少した(図4)。抗NKG2D抗体により処置した7匹のマウスおよび対照抗体により処置した8匹のマウス(3回の個別の実験中)のすべてのうち、NKG2D−抗体処置マウス中のプラークサイズは、対照抗体処置マウスのものより常に有意に小さかった(図4A)。プラーク形成の抑制の程度をさらに決定するために、大動脈の正面染色を、(2回の個別の実験の)7匹の抗NKG2D抗体処置マウスのうちの5匹および8匹の対照抗体処置マウスのうちの6匹において、脂質内容物の堆積に関して正面オイルレッドO染料を用いて実施した。対照抗体処置マウスの大動脈の弓領域において大量のオイルレッドO染色が存在した(図4B、右の3種)。対照的に、抗NKG2D抗体処置マウスにおいて染色はそれほど強くなく(図4B、左の2種)、抗NKG2D抗体遮断により、脂質の堆積およびプラーク形成が抑制されたことをさらに実証した。平均して、抗NKG2D抗体処置マウス中のオイルレッドO染色陽性範囲は、対照と比較して約5倍減少した(図5A)。
NKG2D発現細胞の欠失の誘導なしに、NKG2D−抗体処置がNKG2Dを特異的に遮断することを確認すると、抗NKG2D抗体および対照抗体により処置されたマウス中には同数のNK1.1+NK細胞およびNKT細胞が存在し、抗NKG2D抗体処置マウスのNK細胞はNKG2Dを正常に発現したことが見出された。さらに、抗NKG2D抗体処置は、NKG2D発現免疫細胞の全体的なアネルギーをもたらさなかった。in vitroアッセイにおいて、抗NKG2D処置マウスのNK細胞は、抗NK1.1抗体の刺激に応答して、対照抗体処置マウスと同じ程度に効率的にインターフェロン−γを発現した。総合して、これらの実験は、NKG2D/リガンド相互作用により仲介される免疫活性化が、アテローム性動脈硬化において重要な役割を果たし、このような相互作用の妨害により、アテローム性動脈硬化が抑制されたことを実証した。
アテローム性動脈硬化におけるNKG2D/リガンド相互作用の重要な役割を証明するために、ApoE−/−マウスをNKG2Dノックアウトマウスと交配させ、ApoE/NKG2Dダブルノックアウト(ApoE−/−KLRK1−/−)マウスを作製した。アテローム性動脈硬化の発症におけるApoE/NKG2Dダブルノックアウトの効果を試験するための2種のモデルを試験した。第1のモデルは、抗NKG2D抗体妨害アッセイにおいて使用したSTZ誘導性糖尿病である(図4)。第2のモデルは、マウスは高脂肪食を、6週齢から開始して与えられた、ウェスタン食餌により加速されたアテローム性動脈硬化である。糖尿病発症またはウェスタン食餌の開始の8から10週間後、ApoE−/−KLRK1−/−マウスを、正面オイルレッドO染色によって、大動脈におけるプラーク形成に関して分析した。同じ方法で処置したApoE−/−KLRK1+/+マウスと比較して、糖尿病およびウェスタン食餌を与えたApoE−/−KLRK1−/−マウスの両方が、オイルレッドO染色陽性範囲に基づいてプラークサイズが劇的に減少した(図5BおよびC)。これらの発見は、アテローム性動脈硬化におけるNKG2D/リガンド相互作用の重要な役割の遺伝学的証明を提供した。さらに、それらは、糖尿病および脂質異常症関連アテローム性動脈硬化の両方において、この相互作用が広範に関与することについての証拠をさらに提供し、さまざまな起源のアテローム性動脈硬化の治療および予防のために、この分子の相互作用を標的化することの潜在的用法を示唆した。
(実施例4)
NKG2D/リガンド相互作用の遮断により、アテローム硬化性ApoE−ヌルマウスにおける炎症促進性サイトカインの発現が減少される。
NKD2D/リガンド相互作用は、複数のNKG2D発現免疫細胞型において免疫活性化を仲介するので、抗NKG2D抗体の遮断によるアテローム性動脈硬化の抑制は、抗NKG2D抗体が炎症の阻害を介して機能したことを示唆した。このことを試験するために、抗NKG2D抗体および対照抗体により処置された糖尿病ApoE−/−マウス由来の血清を、プラーク分析の時点で回収し、血清中の複数の炎症促進性サイトカインのレベルを、他の対照マウスの血清と一緒に、マウス炎症促進性−7plex kit(Meso Scale Discovery)を使用して分析した。評価した7種のサイトカインのうち、5種(IL−6、TNF−α、IFN−γ、IL−10およびIL−12p70)が、対照抗体処置マウスと比較して抗NKG2D抗体処置マウスにおいて減少した(図6)。最も著しいことには、IL−6が、年齢の一致する健康な野生型B6マウスまたは脂質異常症または糖尿病を有していなかった若齢ApoE−/−マウスのレベルまで劇的に減少した(10倍を超える減少、P<0.001)。TNF−αは、抗NKG2D処置マウスにおいて検出不可能なレベルまで減少した。これらのデータは、NKG2D/リガンド相互作用の抗体妨害が、糖尿病ApoE−/−マウスにおいて炎症を抑制し、アテローム性動脈硬化を予防することを示した。
抗NKG2D抗体処置マウスにおけるIL−6の減少は、糖尿病患者の血清中の可溶性MICAとIL−6との逆の関係と相関する(図1)。抗NKG2D抗体およびsMICA両方が、NKG2Dにより仲介された免疫活性化に干渉することによって機能することを考慮すると、ヒト患者における高レベルのsMICAは、炎症の抑制のための天然発生の機序であると思われる。
炎症促進性サイトカインの産生の減少が、KLRK1−/−ApoE−/−マウスにおいても観察された。糖尿病またはウェスタン食餌を与えた、NKG2Dが十分なApoE−/−マウスと比較すると、同様に処置されたKLRK1−/−ApoE−/−マウスは、大部分の炎症促進性サイトカインの血清レベルが減少した(図7)。複数の炎症性サイトカイン(IL−6、IFN−γ、IL−12およびTNF−α)もまた、NKG2D−抗体により処置されたKLRK1−/−ApoE−/−マウスの血清において減少した。著しいことには、すべてのモデルにおいて、IL−6およびIFN−γが、劇的に減少した。総合すると、これらの結果は、NKG2D/リガンド相互作用の阻止により、炎症が抑制され、アテローム性動脈硬化が減少することを実証した。
(実施例5)
NKG2D/リガンド相互作用の阻止により、ApoE−/−マウスにおける異常な代謝状態が緩和される。
アテローム性動脈硬化および炎症の減少の他に、NKG2D/リガンド相互作用の阻止もまた、代謝障害を大幅に緩和した。ウェスタン食餌を与えたApoE−/−マウス由来の血清の濁った外観とは著しく対照的に、同様に餌を与えたKLRK1−/−ApoE−/−マウスのものはクリアであり(図8A)、それらの血液中の脂質成分の堆積の減少を示唆している。このことを確認すると、コレステロールおよびトリグリセリドの血清レベルは、KLRK1−/−ApoE−/−マウスにおいてApoE−/−マウスより有意に低かった(図8B)。異常な脂質代謝状態がアテローム性動脈硬化に直接寄与し、炎症を促進することを考慮すると、これらの結果は、NKG2D/リガンド相互作用が、炎症および代謝機能不全の正のフィードバックサイクルを伝播し、アテローム硬化性の進行を持続することを示唆していた。
要約すれば、これらの結果は、NKG2Dリガンドの異常な代謝状態に関連するアップレギュレーションが、アテローム性動脈硬化に決定的に関与し、NKG2D/リガンド相互作用の阻害が、炎症の減少および異常な代謝障害の緩和よって疾患の進行を抑制することを実証し、そのことが、アテローム性動脈硬化に対する治療において、魅力的な治療標的であることを示唆している。
(実施例6)
NKG2D/リガンド相互作用を阻止することによって、ApoE−/−マウスにおいて肝臓の炎症が抑制された
ウェスタン食餌を与えたNKG2D−ノックアウトApoE−/−マウスにおけるコレステロールおよびトリグリセリドの血清レベルの減少は、NKG2D/リガンドにより仲介された免疫活性化が、代謝機能不全を悪化させたことを示唆した。肝臓は、脂質代謝の主要な器官なので、NKG2D/リガンド相互作用により仲介される炎症は、機能を損傷することによって異常な代謝状態を悪化させると思われる。実際に、ApoE−/−マウスと比較して、NKG2D−ノックアウトApoE−/−マウスは血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の有意に低い活性を有し(図9)、肝臓機能不全の緩和を示す。血清中のALTの活性を、Bioo Scientific(Austin、TX)によるキットを使用して、製造業者の指示書に従って決定した。個々の群に関して、少なくとも5匹のマウスを使用した。**P<0.01。
NKG2D/リガンド相互作用の阻止が、肝臓の炎症の量を減少させるかどうかを試験した。ApoE−/−マウスのものと比較して、NKG2D−ノックアウトApoE−/−マウスのex vivoで培養された肝臓外植片はIL−6の産生が有意に低く、炎症の減少を示す(図10A)。さらに、ApoE−/−マウスのものと比較して、マクロファージ、NKTおよびNK細胞を含む多数のさまざまな免疫細胞はすべて、NKG2D−ノックアウトApoE−/−マウスの肝臓において減少し(図10B)、NKG2D/リガンド相互作用を阻止することによって実際に肝臓の炎症が減少することを示している。
免疫細胞がNKG2D/リガンド相互作用により影響を受け、肝臓の炎症に寄与することを調査した。アテローム硬化性大動脈のように、ApoE−/−のマウスの肝臓は、NKG2Dリガンドの高いアップレギュレーションを有した(図11A)。肝臓のマクロファージおよび肝細胞の両方は、野生型対照と比較して、ApoE−/−マウスにおいてRae−1の発現のアップレギュレーションを有した(図11B〜D)。ウェスタン食餌を与えたApoE−/−マウスの肝臓におけるリガンドのアップレギュレーションに対応して、これらのマウスの肝臓のNKG2D発現免疫細胞、例えばNKおよび特にナチュラルキラーT細胞(NK T細胞)は、IFN−γおよびIL−4を含む大量のサイトカインの産生を示し、マウスがNKG2Dをも喪失した場合、これは著しく減弱した(図11EおよびF)。対照的に、NKG2Dを発現しない肝臓マクロファージは、マウスがNKG2Dを発現したかどうかにかかわらず、ApoE−/−マウスにおいて、高レベルのIL−6を産生した(図11G)。しかし、すでに述べたように、マクロファージの数はKlrk1−/−ApoE−/−マウスにおいて実質的に減少し、NKG2Dにより仲介される炎症によって、マクロファージが間接的に影響を受けたことを示している。これらの発見は、異常な代謝状態が、特に異常な代謝産物が堆積する組織、例えばアテローム硬化性プラークおよび肝臓においてNKG2Dリガンドのアップレギュレーションを誘導し、したがって、NKG2D/リガンド相互作用はアテローム性動脈硬化に対する有用な介入標的であることを実証する。
(実施例7)
NKG2D/リガンド相互作用を阻止することによって、ウェスタンダイエットを与えたApoE−/−マウスにおいてグルコースレベルが減少した
一実験において、8週齢のApoE−/−およびNKG2D−欠損ApoE−/−Klrk1−/−マウスに、ウェスタン食餌を3ヶ月間与えた。その後、血清を回収し、給餌措置の終わりにグルコースレベルを評価した。3ヶ月のウェスタン食餌の給餌後、平均してApoE−/−Klrk−/−マウスは、ApoE−/−マウスより有意に低いグルコースレベルを有し(図12)、NKG2D/リガンド相互作用の阻止が、高血糖の進行を抑制できることを示唆している。
(実施例8)
抗NKG2D抗体は、2型糖尿病のげっ歯類モデルにおいて高血糖および糖尿病の発症および進行を阻止する
2型糖尿病の発症および進行に関するNKG2Dの遮断の効果をさらに決定するために、抗NKG2D抗体を、スナネズミの2型糖尿病動物モデルであるPsammomys obesus(スナネズミとしても公知である)に投与した。
雄および雌のP. obesus(Ηarlan、Jerusalem、Israel)に低エネルギー(2.4kcal/g)の固形飼料を9週齢まで与え、その時点で自由摂取の高エネルギー(3.1kcal/g)食に移行し、その間体重(BW)および朝食前血糖値(mBG)を10日間まで(誘導期)追跡した。2回連続の測定値がmBG>10mmol/Lと規定されている、mBGレベルの増加を示した動物を、低エネルギー食に戻し、10日後にそれらのmBGレベルが非糖尿病レベルに戻ったところで実際の研究(予防)に使用した。誘導期にmBGの増加を全く示さなかった動物は犠牲にし、以降は使用しなかった。
P. obesusを、腹腔内注射によって週に1回、賦形剤(N=19)またはNKG2D−PE抗体(クローンCX5)を用いて処置した(N=9)。NKG2Dげっ歯類抗体製剤は、CX5 OP001−ca.を、10EU/mlまたは0.96mg/mlで含む。PBSバッファーに溶解した45mlの1つのバイアルを4℃に維持し、使用した用量体積は0.52ml/kgまたは0.5mg/kgであった。
研究を6週にわたって実施し、その間、mBGおよびBWを定期的に追跡した。mBG(mmol/l)の決定のために、血液試料を、尾の毛細血管の先端から、10μlのガラスの毛細管に採取し、速やかにエッペンドルフのバイアル中のバッファー(500μlのBiosenの分析バッファー)に懸濁し、試験日のグルコースに関して分析した。
研究期間中、重症のmBGの上昇およびケトアシドーシスのため、賦活剤群の5匹の動物およびNKG2D抗体群の1匹は犠牲にしなければならなかった。この研究は、Animal Experiments Inspectorate、Ministry of Justice、Denmarkによって承認された。
図13に示すように、賦活剤またはNKG2D抗体の最初の用量の6週間後、ビヒクルのすべての動物は、重症の糖尿病になり、平均mBGは14.5±2.6mM(平均±sem)であり、一方、NKG2D抗体を用いて処置した動物は、正常血糖(mBG<8mM)を維持し、8.0±1.9mMという有意に低いmBGを有した、p<0.0001(平均±sem)。2つの処置群においてBW増加に差はなかった。これらの発見は、2型糖尿病を有するヒトと多くの同じ特徴を有するげっ歯類動物モデルにおいて、顕性2型糖尿病の発症に、NKG2Dが(おそらく炎症、インスリン抵抗性およびβ細胞の減少を介して)非常に重要な役割を果たすことを実証している。抗体を用いてNKG2Dの効果を遮断することによって、高エネルギー食餌により誘導されたP. obesusにおける2型糖尿病の発症は完全に無効になった。
抗NKG2D抗体の特異性を確認するために、NKG2D抗体と、P. obesus由来の血液細胞との結合のフローサイトメトリ分析を実施した。
簡潔にいうと、EDTAにより安定化されたスナネズミ由来の血液を、100μlのアリコートにおいて、NKG2Dまたはアイソタイプ対照に対する抗体:抗マウスNKG2D−PE(クローンCX5)、ラットIgG1−PEアイソタイプ対照、抗ヒトNKG2D−PE(クローン1D11)、マウスIgG1−PEアイソタイプ対照および抗ヒトNKG2D−PE(クローンON72)を用いて染色した。その後、BD FACS溶解/固定溶液およびPBSを使用して、血液を溶解、固定および洗浄し、PE結合抗体の結合をLSRIIフローサイトメーターにおいて測定した。非顆粒球の特定のためにFSC/SSCを使用した。
図14のフローサイトメトリ分析によって示されるように、スナネズミの血液において抗マウスNKG2D−PE抗体(クローンCX5)とNK細胞に関する用量依存性結合が観察された。アイソタイプ対照抗体(ラットIgG1−PEアイソタイプ対照(R3−34)およびマウスIgG1−PEアイソタイプ対照(MOPC−21))または抗ヒトNKG2D抗体(クローン1D11およびクローンON72)の結合は存在しなかったので、この結合は特異的であった。
この結果は、2型糖尿病および高血糖の治療のためにNKG2Dを標的化することの有用性を実証している。
材料および方法
マウスモデルおよびヒト患者:C56BL/6バックグラウンドのApoE−/−マウスは、Jackson Labから購入した。Klrk1−/−マウスは、先に記載した。ApoE−/−とKlrk1−/−マウスとを交配させ、仔を交雑受精させることによって、Klrk1−/−ApoE−/−マウスを作製した。アテローム性動脈硬化を加速するために、6週齢の雄にウェスタン食餌を自由給餌で与え、またはストレプトゾトシン(STZ)を注射し、糖尿病を誘導し(例えば、非特許文献30参照)、処置開始後8〜10週間後に分析した。NKG2D抗体遮断実験のために、STZ投与の1週間前および3日前ならびにその後8週間の毎週に1回、ApoE−/−マウスにモノクローナルNKG2D抗体を注射した(200μg/初回の注射および他は100μg/注射)(クローンMI−6、ラットIgG2a)(例えば、特許文献31参照)。
抗体および試薬:NKG2D抗体(クローンMI−6)は、本研究所において調製した。Pan−Rae−1抗体はR&D Systemsから購入し、他はBD BiosciencesもしくはeBioscienceによる、または以下の関連する項に示した。
正面オイルレッドO染色:さまざまに処置したマウスの大動脈を開き、10%のホルマリンで固定し、オイルレッドO染料を用いて染色した。オイルレッドO染色陽性プラーク範囲のサイズを、Adobe Photoshopを使用して染色された大動脈のデジタル画像に基づいて計算した。
免疫組織化学染色:マウス大動脈プラークの凍結切片を、ポリクローナルヤギ抗マウス抗−Rae−1またはH60抗体(それぞれ、R&D SystemsおよびSanta Cruz Biotechnology)を用いて染色し、その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ロバ抗ヤギIgG抗体およびABC−HRP染色システムを用いて染色した(茶色)(Santa Cruz Biotechnology)。切片を、モノクローナルラット抗マウスCD68抗体(Serotec)を用いてさらに染色し、その後アルカリホスファターゼ(AP)結合ロバ抗ラット抗体およびABC−AP染色キットを用いてさらに染色した(青色)(Vector Laboratory)。ヒト大動脈プラークの隣接凍結切片を、モノクローナルマウス抗ヒトMICA/B抗体(クローン6D4、eBioscience)、抗−Mac−3または抗CD31抗体を用いて染色した。
細胞の単離:単核球、内皮細胞および肝細胞を、報告した手順に従って大動脈または肝臓から単離した。単離細胞をカウントし、さまざまな分析に使用した。
フローサイトメトリ:細胞を、蛍光標識抗体の特有の組み合わせを用いて染色し、フローサイトメーターFC500(Beckman Counter)を使用してフローサイトメトリによって分析した。
半定量的RT−PCR分析およびリアルタイムRT−PCR分析:RNAを、Rae−1δ、Rae−1εおよびH60bの転写産物に関して、半定量的放射性RT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRによって分析した。
マクロファージのIn vitro処置:腹腔マクロファージを、oxLDL(10μg/ml)、天然LDL(nLDL)(10μg/ml)、AGE(200μg/ml)またはLPS(200ng/ml)を含有する培地において2日間in vitro培養し、NKG2Dリガンドの発現に関して分析した。
合計Rae−1蛋白質に関するウェスタンブロット分析:マクロファージを溶解し、PAGEゲルにおいて分離し、PEGF膜に移行し、抗Rae1抗体(C20、Santa Cruz Biotechnology)を用いてブロットし、SELシステムを用いて発色させた。
血清サイトカインの多重分析:マウス血清を、マウス炎症促進性7plex kit(IL−6、TNF−α、IFN−γ、IL−12p70、IL−10、IL−1βおよびKC/CXCL1)(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)において直接分析した。
血清中のコレステロールおよびトリグリセリドレベルの評価:コレステロールおよびトリグリセリドのレベルを、VetTest(登録商標)Chemistry Analyzer (IDEXX Laboratories,Inc.Maine)において分析した。
ALT活性の分析:血清中のALT活性を、Bioo Scientific(Austin、TX)によるキットを使用して、製造業者の指示書に従って決定した。
肝臓外植片のEx vivo培養:PBSで灌流した肝臓を、ウェスタン食餌を与えたApoE−/−マウスまたはKlrk1−/−ApoE−/−マウスから切除した。等重量の切除肝臓を、約1mm3の角切りにし、培地において1または3日間培養した。培養培地を回収し、ELISAによりサイトカインに関して分析した。
細胞内サイトカイン染色:肝臓から単離した単核球を、ブレフェルジンAの存在下で一晩培地において培養し、ゲートをかけた免疫細胞のサブセットにおいてIL−6、IFN−γおよびIL−4の産生に関して細胞内サイトカイン染色によって、製造業者の指示書(eBioscienceおよびBiolegend)に従って分析した。
可溶性MICAのELISA検出:2型糖尿病患者およびがん患者の血清を、ELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、MN)を使用してMICA蛋白質に関してアッセイした。
統計分析:すべてのデータは、平均±s.e.m.で表した。統計的有意性を、両側スチューデントT検定を用いて決定した。P<0.05は、統計的に有意であると思われる。
本明細書に引用した出版物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、個々の参考文献が個別かつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体を本明細書において説明したかのような同じ程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
上記の要素の可能な変形におけるそれらの任意の組み合わせは、本明細書において明示される、または文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
本発明を記述する文脈において使用される「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示対象は、本明細書において明示される、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈するべきである。
本明細書において提供される、任意のおよびすべての実施例、または例示的言語(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明の理解をより容易にする意図のものであり、特に明示しない限り本発明の範囲を限定する姿勢ではない。本明細書中の言語はいずれも、等しく明示的に述べない限り、任意の要素が本発明の実践に必須であることを示すと解釈すべきではない。
要素(単数または複数)に関する「含む(comprising)」「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの用語を使用した、本発明の任意の態様または実施形態の本明細書における説明は、本明細書において明示される、または文脈により明らかに矛盾しない限り、その特定の要素(単数または複数)「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」または「を実質的に含む(ubstantially comprises)」本発明の同様の態様または実施形態のための支持を提供する意図のものである(例えば、特定の要素を含む本明細書に記載の組成物は、本明細書において明示される、または文脈により明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物もまた記述すると理解すべきである)。
本発明は、本明細書に提示した態様または特許請求の範囲に列挙した主題のすべての変形および等価物を、準拠法が認める最大の程度で含む。
例示的実施形態
以下は、本発明の例示的実施形態である。
1.NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する治療有効量の薬剤を、それらを必要とする対象に投与するステップを含む、2型糖尿病の治療方法。
2.NKG2Dリガンドの結合相互作用を遮断する治療有効量の薬剤を、それらを必要とする対象に投与するステップを含む、2型糖尿病の治療方法。
3.NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する治療有効量の薬剤を、それらを必要とする対象に投与するステップを含む、病態が、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および代謝機能不全関連疾患からなる群から選択される、NKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態の治療方法。
4.NKG2Dリガンドの結合相互作用を遮断する治療有効量の薬剤を、それらを必要とする対象に投与するステップを含む、病態が、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および代謝機能不全関連疾患からなる群から選択される、NKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態の治療方法。
5.病態が2型糖尿病である実施形態3または4に記載の方法。
6.病態が心血管疾患である実施形態3または4に記載の方法。
7.対象がヒトである、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
8.薬剤が、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤からなる群から選択される、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
9.薬剤が、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、実施形態8に記載の方法。
10.抗体またはその抗原結合断片がヒトまたはヒト化である、実施形態9に記載の方法。
11.抗体またはその抗原結合断片がヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する、実施形態9に記載の方法。
12.抗体またはその抗原結合断片が、NKG2Dにより仲介されるNKG2D発現細胞の活性化またはシグナル伝達を低下させる、実施形態9に記載の方法。
13.抗体またはその抗原結合断片が、NKG2Dとの結合において、少なくとも1種のNKG2Dリガンドと競合する、実施形態9から12のいずれか1つに記載の方法。
14.NKG2DリガンドがMICA/Bである、実施形態13に記載の方法。
15.薬剤の投与が、対象において以下:血糖値降下、耐糖能の改善、インスリン抵抗性の低下、体重の減少、血圧低下、炎症低下および代謝機能不全の減少の少なくとも1つをもたらす、前記実施例のいずれか1つに記載の方法。
16.薬剤が、静脈内、腹腔内または皮下に投与される、前記実施例のいずれか1つに記載の方法。
17.抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲制御薬、抗高血圧薬、糖尿病に起因または関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満に起因または関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる薬剤を投与するステップをさらに含む、前記実施例のいずれか1つに記載の方法。
18.さらなる薬剤が、(a)GLP−1ならびにGLP−1の誘導体およびアナログ、エキセンディン−4ならびにエキセンディン−4の誘導体およびアナログ、アミリンならびにアミリンの誘導体およびアナログ、スルホニルウレア、ビグアナイド、メグリチニド(ナテグリニドおよびレパグリニドなど)、グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、SGLT2阻害剤、SGLT1の阻害剤またはアゴニスト、ガストリンならびにガストリンのアナログおよび誘導体、FGF−21(線維芽細胞成長因子21)ならびにFGF−21の誘導体およびアナログ、プロトンポンプ阻害剤、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾール、RXRアゴニスト、コレスチラミン、コレスチポール、プロブコール、デキストロチロキシン、PPARアゴニストならびにアディポネクチンならびにアディポネクチンの誘導体およびアナログからなる群から選択される血糖降下薬;(b)抗脂質異常症薬、HMG CoA阻害剤(スタチン)例えばロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンならびにフィブラート系薬、例えばゲムフィブロジルおよびクロフィブレートからなる群から選択される血中脂質低下薬または脂質代謝改善薬;(c)NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、PYY(ポリペプチドYY)アゴニスト、PP(膵臓ポリペプチド)アゴニスト、Y2受容体アゴニスト、Y4受容体アゴニスト、混合型Y2/Y4受容体アゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、グルカゴンならびにグルカゴンの誘導体およびアナログ、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合蛋白質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アゴニスト、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト凝集ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤、混合型セロトニンおよびノルアドレナリン作動性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2または3(脱共役蛋白質2または3)調節因子、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、ヒスタミンH3アンタゴニストならびにCART(コカインアンフェタミン調節転写産物)アゴニストからなる群から選択される食物摂取量を減少させる薬剤またはエネルギー消費を増加させる薬剤;ならびに(d)β−遮断薬、例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロールおよびメトプロロール、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、アラトリオプリル(alatriopril)、キナプリルおよびラミプリル、カルシウムチャネル遮断薬、例えばニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼムおよびベラパミルならびにα−遮断薬、例えばドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシンおよびテラゾシンからなる群から選択される血圧低下薬;からなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
19.NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する、治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体を含む組成物。
20.NKG2Dリガンドの結合相互作用を遮断する治療有効量の薬剤および薬学的に許容される担体を含む組成物。
21.薬剤が、2型糖尿病の治療に有用である、実施形態19または20に記載の組成物。
22.薬剤が、NKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態の治療に有用である、実施形態19または20に記載の組成物。
23.病態が、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および代謝機能不全関連疾患からなる群から選択される、実施形態22に記載の組成物。
24.病態が2型糖尿病である、実施形態23に記載の組成物。
25.病態が心血管疾患である、実施形態23に記載の組成物。
26.薬剤が、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤からなる群から選択される、前記実施形態19から25のいずれか1つに記載の組成物。
27.薬剤が、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、実施形態26に記載の組成物。
28.抗体またはその抗原結合断片がヒトまたはヒト化である、実施形態27に記載の組成物。
29.抗体またはその抗原結合断片がヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する、実施形態27に記載の組成物。
30.薬剤が、NKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤である、実施形態26に記載の組成物。
31.NKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤がMICA/B阻害剤である、実施形態30に記載の組成物。
32.MICA/B阻害剤がMICA/B特異的siRNAである、実施形態31に記載の組成物。
33.抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲制御薬、抗高血圧薬、糖尿病に起因または関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満に起因または関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる薬剤をさらに含む、実施形態19から32のいずれか1つに記載の組成物。
34.さらなる薬剤が、(a)GLP−1ならびにGLP−1の誘導体およびアナログ、エキセンディン−4ならびにエキセンディン−4の誘導体およびアナログ、アミリンならびにアミリンの誘導体およびアナログ、スルホニルウレア、ビグアナイド、メグリチニド(ナテグリニドおよびレパグリニドなど)、グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、SGLT2阻害剤、SGLT1の阻害剤またはアゴニスト、ガストリンならびにガストリンのアナログおよび誘導体、FGF−21(線維芽細胞成長因子21)ならびにFGF−21の誘導体およびアナログ、プロトンポンプ阻害剤、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾール、RXRアゴニスト、コレスチラミン、コレスチポール、プロブコール、デキストロチロキシン、PPARアゴニストならびにアディポネクチンならびにアディポネクチンの誘導体およびアナログからなる群から選択される血糖降下薬;(b)抗脂質異常症薬、HMG CoA阻害剤(スタチン)例えばロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンならびにフィブラート系薬、例えばゲムフィブロジルおよびクロフィブレートからなる群から選択される血中脂質低下薬または脂質代謝改善薬;(c)NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、PYY(ポリペプチドYY)アゴニスト、PP(膵臓ポリペプチド)アゴニスト、Y2受容体アゴニスト、Y4受容体アゴニスト、混合型Y2/Y4受容体アゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、グルカゴンならびにグルカゴンの誘導体およびアナログ、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合蛋白質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アゴニスト、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト凝集ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤、混合型セロトニンおよびノルアドレナリン作動性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2または3(脱共役蛋白質2または3)調節因子、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、ヒスタミンH3アンタゴニストならびにCART(コカインアンフェタミン調節転写産物)アゴニストからなる群から選択される食物摂取量を減少させる薬剤またはエネルギー消費を増加させる薬剤;ならびに(d)β−遮断薬、例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロールおよびメトプロロール、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、アラトリオプリル(alatriopril)、キナプリルおよびラミプリル、カルシウムチャネル遮断薬、例えばニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼムおよびベラパミルならびにα−遮断薬、例えばドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシンおよびテラゾシンからなる群から選択される血圧低下薬;からなる群から選択される、実施形態33に記載の組成物。
35.(a)薬学的に許容される担体と組み合わせた、NKG2Dの活性化またはシグナル伝達を阻害する治療有効量の薬剤;および
(b)使用のための指示書、
を含むキット。
36.(a)薬学的に許容される担体と組み合わせた、NKG2Dリガンドの結合相互作用を遮断する治療有効量の薬剤;および
(b)使用のための指示書、
を含むキット。
37.薬剤が2型糖尿病の治療に有用である、実施形態35または36に記載のキット。
38.薬剤が、NKG2Dの阻害を介して制御または正常化され得る病態の治療に有用である、実施形態35または36に記載のキット。
39.病態が、2型糖尿病、心血管疾患、炎症性疾患および代謝機能不全関連疾患からなる群から選択される、実施形態38に記載のキット。
40.病態が2型糖尿病である、実施形態39に記載のキット。
41.病態が心血管疾患である、実施形態39に記載のキット。
42.薬剤が、可溶性NKG2D、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、NKG2DリガンドおよびNKG2Dリガンドの活性または発現の阻害剤からなる群から選択される、前記実施形態35から41のいずれか1つに記載のキット。
43.薬剤が、NKG2Dと特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、実施形態42に記載のキット。
44.抗体またはその抗原結合断片がヒト抗体またはヒト化抗体である、実施形態43に記載のキット。
45.抗体またはその抗原結合断片がヒトNKG2D(hNKG2D)と結合する、実施形態43に記載のキット。
46.抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲制御薬、抗高血圧薬、糖尿病に起因または関連する合併症の治療および/または予防のための薬剤ならびに肥満に起因または関連する合併症および障害の治療および/または予防のための薬剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる薬剤をさらに含む、前記実施形態35から45のいずれか1つに記載のキット。
47.さらなる薬剤が、(a)GLP−1ならびにGLP−1の誘導体およびアナログ、エキセンディン−4ならびにエキセンディン−4の誘導体およびアナログ、アミリンならびにアミリンの誘導体およびアナログ、スルホニルウレア、ビグアナイド、メグリチニド(ナテグリニドおよびレパグリニドなど)、グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、SGLT2阻害剤、SGLT1の阻害剤またはアゴニスト、ガストリンならびにガストリンのアナログおよび誘導体、FGF−21(線維芽細胞成長因子21)ならびにFGF−21の誘導体およびアナログ、プロトンポンプ阻害剤、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾール、RXRアゴニスト、コレスチラミン、コレスチポール、プロブコール、デキストロチロキシン、PPARアゴニストならびにアディポネクチンならびにアディポネクチンの誘導体およびアナログからなる群から選択される血糖降下薬;(b)抗脂質異常症薬、HMG CoA阻害剤(スタチン)例えばロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンならびにフィブラート系薬、例えばゲムフィブロジルおよびクロフィブレートからなる群から選択される血中脂質低下薬または脂質代謝改善薬;(c)NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、PYY(ポリペプチドYY)アゴニスト、PP(膵臓ポリペプチド)アゴニスト、Y2受容体アゴニスト、Y4受容体アゴニスト、混合型Y2/Y4受容体アゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、グルカゴンならびにグルカゴンの誘導体およびアナログ、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合蛋白質)アンタゴニスト、ウロコルチンアゴニスト、β3アゴニスト、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラノサイト凝集ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤、混合型セロトニンおよびノルアドレナリン作動性化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2または3(脱共役蛋白質2または3)調節因子、レプチンアゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、ヒスタミンH3アンタゴニストならびにCART(コカインアンフェタミン調節転写産物)アゴニストからなる群から選択される食物摂取量を減少させる薬剤またはエネルギー消費を増加させる薬剤;ならびに(d)β−遮断薬、例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロールおよびメトプロロール、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、アラトリオプリル(alatriopril)、キナプリルおよびラミプリル、カルシウムチャネル遮断薬、例えばニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼムおよびベラパミルならびにα−遮断薬、例えばドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシンおよびテラゾシンからなる群から選択される血圧低下薬;からなる群から選択される、実施形態46に記載のキット。
48.(a)対象から試料を得るステップ、
(b)試料を、MICA/Bの発現の存在を検出する少なくとも1種の試薬と接触させるステップ、
(c)試料中のMICA/Bの発現レベルを測定するステップ、および
(d)MICA/Bの過剰発現と、対象における2型糖尿病発症の素因または2型糖尿病の存在とを相関させるステップ、
を含む、対象において2型糖尿病の発症の素因または2型糖尿病の存在を検出する方法。
49.(a)対象から試料を得るステップ、
(b)試料を、MICA/Bの発現の存在を検出する少なくとも1種の試薬と接触させるステップ、
(c)試料中のMICA/Bの発現レベルを測定するステップ、および
(d)MICA/Bの過剰発現と、対象における心血管疾患発症の素因または心血管疾患の存在とを相関させるステップ、
を含む、対象において心血管疾患の発症の素因または心血管疾患の存在を検出する方法。
50.試薬がMICA/B抗体である、実施形態48または49に記載の方法。
51.試料が血清である、実施形態48または49に記載の方法。
52.対象がヒトである、実施形態48または49に記載の方法。
53.試料中のMICA/Bではない心血管疾患マーカーの発現レベルを測定するステップ、および心血管疾患マーカーのアップレギュレーションまたは過小発現と、対象における心血管疾患発症の素因または心血管疾患の存在とを相関させるステップをさらに含む、前記実施形態48から52のいずれか1つに記載の方法。