本発明の課題の1つは、タンパク質及びペプチドの優れた精製方法を提供すること、並びに、その方法を実施するための充填剤を提供することである。
本発明は、固体支持材料を含む充填剤を指向しており、固体支持材料の表面には、少なくとも2種の異なる残基があり、第1の残基は、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有し、第2の残基は、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有している。必要に応じて、これら少なくとも2種の残基は、前記表面を覆う架橋ポリマーの膜に担持されている。起源が完全に合成物であるという理由により、前記充填剤は、過酷でない生理学的条件下において特定の生物分子の分離が可能であるものの、好ましくない試験マトリクスであっても、物理的(特に熱的)且つ化学的に優れた構造安定性を有するという特徴がある。そのような充填剤の調製方法もさらに提供される。
本発明は、タンパク質又はペプチドを含む混合物から、タンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を高める方法、又は、タンパク質又はペプチドを分離する方法をも提供する。該方法においては、本発明の充填剤に前記混合物を接触させ、所定のタンパク質又はペプチドを充填剤に結合させ、続いて、充填剤から前記タンパク質又はペプチドを溶離させ、そして、必要に応じて、中間洗浄操作を行う。
開示されているものは、分析のため及び事前準備のための生化学的また医学的な様々な活用法であり、該活用法において、前記充填剤及び/又は前記方法は、有利に採用される。前記方法により精製された抗体は、従来のバイオアフィニティー分離技術によって得られたものと比べて、そのような技術による問題点を受けることなく、回収率、純度、生物的活性の点で特徴を有している。
一般的態様において、本発明の充填剤は、固体支持材料を含み、その表面には、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基があり、また、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基がある。
一実施形態においては、二環式複素芳香族化合物構造が、存在し得る全てのアザ−ベンゾピロール構造、オキサ−ベンゾピロール構造、及びチア−ベンゾピロール構造などのベンゾピロール(インドール)構造であるか、又は、存在し得る全てのアザ−ベンゾピリジン、オキサ−ベンゾピリジン、チア−ベンゾピリジンなどのベンゾピリジン(キノリン又はイソキノリン)構造である。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、5員環の複素芳香族基本環を含む。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、3−アザピロール(イミダゾール)のような、存在し得る全てのアザ−ピロール構造、オキサ−ピロール構造、チア−ピロール構造などのピロール構造である。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、6員環の複素芳香族基本環を含まない。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、6員環の複素芳香族基本環を含み、ただし、6員環の複素芳香族基本環がトリアジン環又はピリミジン環でない。
一実施形態においては、第1の残基及び/又は第2の残基が結合剤(リンカー)を含む。
一実施形態においては、第1の残基及び/又は第2の残基が、立体配座的に柔軟な1〜20原子長さの共有結合性の結合剤を含む。
一実施形態においては、立体配座的に柔軟な結合剤が硫黄を含まない。
一実施形態においては、前記結合剤の複数が、それぞれ互いに独立して、1〜300の炭素原子、例えば20〜300の炭素原子を含む。該実施形態においては、前記結合剤がポリエチレングリコールのみからなるか、又は、ポリエチレングリコール部分を含む。
一実施形態においては、前記結合剤がさらに複素芳香族化合物構造を含まず、具体的には、トリアゾール環又はピリミジン環を含まない。
一実施形態においては、N,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造及び/又は二環式複素芳香族化合物構造のそれぞれに、さらに置換基が結合している。
一実施形態においては、前記置換基がカチオン交換基(即ち、負に帯電)を含まないか、又は、前記単環式及び/又は二環式複素芳香族化合物構造がカチオン交換基(即ち、負に帯電)を含まない。
一実施形態においては、前記置換基が、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、又はホスホン酸基を有するカチオン交換基を含まない。又は、前記単環式及び/又は二環式複素芳香族化合物構造が、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、又はホスホン酸基を有するカチオン交換基を含まない。
他の実施形態においては、前記置換基が、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選択されるカチオン交換基を含まない。又は、前記単環式及び/又は二環式複素芳香族化合物構造が、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選択されるカチオン交換基を含まない。
一実施形態においては、第1の残基及び第2の残基が、3:2〜2:3のモル比で存在し、好ましくは約1:1のモル比で存在する。
一実施形態においては、第1の残基が第2の残基を含む。
一実施形態においては、固体支持材料の表面に、さらに第3の残基があり、必要に応じて第4の残基がある。
一実施形態においては、第3の残基がアミン構造又はアミド構造を含み、好ましくは一級アミン構造を含む。
一実施形態においては、第1の残基、第2の残基、及び第3の残基が約1:1:2のモル比で存在する。
一実施形態においては、残基の全密度が合計0.1mol dm-3〜1.0mol dm-3であり、好ましくは少なくとも約0.3mol dm-3である。
一実施形態においては、それぞれの種の残基が均一且つランダムに/統計的に、固体支持材料の表面に分布している。
一実施形態においては、固体指示材料が担体を含み、該担体の表面が、第1の残基及び第2の残基、必要に応じて第3の残基及び第4の残基を担持し官能基を有するポリマーの膜によって覆われている。
一実施形態においては、前記ポリマーが、互いに共有結合的に架橋しているが担体表面に対しては共有結合的に接合又は結合していない個々の分子鎖を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーの分子鎖は、架橋できる官能基の数に対して2%〜20%の範囲にて互いに共有結合的に架橋している。
一実施形態においては、前記ポリマーが、担体の表面に共有結合的に接合しているが互いに共有結合的に架橋していない個々の分子鎖を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーの分子鎖が、末端官能基を介して担体の表面に共有結合的に接合している。
一実施形態においては、充填剤の全重量に対して、ポリマーの膜が5%〜30%の割合を占め、好ましくは15%〜20%の割合を占める。
一実施形態においては、前記ポリマーは、水性溶媒又は有機物混合水性溶媒に対して膨潤性のものである。
一実施形態においては、前記ポリマーが合成高分子電解質である。
一実施形態においては、ポリマーの架橋結合若しくは接合結合、及び/又は、残基の結合は、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合(尿素結合)、又は二級アミン/三級アミン結合によるものである。
一実施形態においては、前記ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸からなる群より選択される部分的に誘導体化されたポリマー、又は、これらポリマーの少なくとも1種を含むポリマー混合物、又は、コポリマーである。
一実施形態においては、前記ポリマーがポリビニルアミンである。
一実施形態においては、固体支持材料又は少なくとも担体は、10nm〜400nmの細孔径を有する多孔性材料であるか、又は、1m2g-1〜1,000m2g-1の比表面積を有する多孔性材料であるか、又は、30%〜80%容積の空隙率を有する多孔性材料である。
一実施形態においては、固体支持材料は、5μm〜500μmの粒子径を有する粒子状材料である。
一実施形態においては、固体支持材料は、膜のような、シート状又は繊維状材料である。
一実施形態においては、前記担体を構成する材料がポリマーの膜を構成する材料と異なる。
一実施形態においては、固体支持材料又は少なくとも担体は、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、デンプン、セルロース、アガロース、セファロース、及びデキストランの一般物又は表面改質物からなる群より選択された材料、又は、これらの複合材料で作製されている。
一実施形態においては、充填剤は、さらに、光学吸収性のタグ、発光性のタグ、放射性のタグ、磁気性のタグ、又は、質量若しくは高周波コードタグなどの容易に検出可能なタグを含む。
本発明は、下記の工程を含む充填剤の製造方法にも関する。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)前記ポリマーの膜を担体の表面に吸着させる、
(iii)吸着されたポリマーの前記官能基の所定部分を少なくとも1種の架橋剤によって架橋させる、
(iv)炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基と、必要に応じてさらなる残基とによって、架橋したポリマーの前記官能基のさらなる所定部分を誘導体化させる。
本発明は、下記の工程を含む充填剤の製造方法にも関する。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基と、必要に応じてさらなる残基とによって、前記官能基の所定部分を誘導体化させる、
(iii)誘導体化されたポリマーの膜を担体の表面に吸着させる、
(iv)吸着されたポリマーの前記官能基のさらなる所定部分を少なくとも1種の架橋剤によって架橋させる。
本発明は、下記の工程を含む充填剤の製造方法にも関する。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)前記ポリマーの膜を担体の表面に吸着させる、
(iii)吸着されたポリマーの前記官能基の所定部分を前記担体に接合させる、
(iv)炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基と、必要に応じてさらなる残基とによって、接合されたポリマーの前記官能基のさらなる所定部分を誘導体化させる。
本発明は、下記の工程を含む充填剤の製造方法にも関する。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基と、必要に応じてさらなる残基とによって、前記官能基の所定部分を誘導体化させる、
(iii)誘導体化されたポリマーの膜を担体の表面に吸着させる、
(iv)吸着されたポリマーの前記官能基のさらなる所定部分を前記担体に接合させる。
充填剤の製造方法の一実施形態においては、前記ポリマーは、水性溶媒又は有機物混合水性溶媒に対して溶解性のものである。
一実施形態においては、前記ポリマーの官能基は、−NH−、−NH2、−OH、−COOH、又は、−COO−の官能基である。
一実施形態においては、前記ポリマーが5,000ダルトン〜50,000ダルトンの分子量を有する。
一実施形態においては、少なくとも1種の架橋剤が、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、及び、ビスエポキシドからなる群より選択される。
一実施形態においては、少なくとも1種の架橋剤が、1〜20の原子長さの立体配座的に柔軟な鎖状の分子である。
一実施形態においては、誘導体化の工程を、前記官能基と前記残基との間におけるアミド結合を形成することによって実施する。
一実施形態においては、誘導体化の工程を、各残基によって段階的に実施する。
本発明は、前記タンパク質又はペプチドを含む混合物からタンパク質又はペプチドを分離する方法、又は、タンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を高める方法にも関し、下記の工程を含む。
(i)第1の液体に溶解又は懸濁した前記混合物を、本発明の充填剤、又は、本発明の方法によって製造した充填剤に接触させ、前記タンパク質又はペプチドが前記充填剤に結合できる十分な時間をおく、
(ii)必要に応じて前記充填剤を第2の液体で洗浄する、
(iii)結合した前記タンパク質又はペプチドを含む前記充填剤を第3の液体と接触させ、前記タンパク質又はペプチドが前記充填剤から脱離できる十分な時間をおく、
(iv)必要に応じて、第4の液体及び/又は第5の液体で前記充填剤を洗浄及び/又は再生させる。
タンパク質又はペプチドを分離する方法、又は、タンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を高める方法の一実施形態においては、第2の液体及び第3の液体は、さらなる有機改質剤を含まない水性緩衝液である。
一実施形態においては、第2の液体が第3の液体と同じである。
一実施形態においては、第1の液体及び必要に応じて用いる第2の液体のpHが、標的タンパク質又はペプチドの等電点plに近い。
一実施形態においては、第3の液体のpHが、第1の液体及び必要に応じて用いる第2の液体のpHと異なり、具体的には、第1の液体及び第2の液体のpHより低い。
一実施形態においては、第1の液体のpHが5.5〜8.5の範囲であり、第3の液体のpHが3〜6.5の範囲である。
一実施形態においては、第3の液体のイオン強度が、第1の液体及び必要に応じて用いる第2の液体のイオン強度と異なり、具体的には、第1の液体及び第2の液体のイオン強度より高い。
一実施形態においては、前記方法は、膜濾過技術、固相抽出技術、又は、中圧〜高圧の液体クロマトグラフィー技術として実施する。
一実施形態においては、前記方法は、工程(iii)の後に第3の液体から脱離されたタンパク質又はペプチドの単離をさらに含む。
一実施形態においては、工程(iii)において脱離されたタンパク質又はペプチドは、溶脱された充填剤、又は、他の溶脱し得る物質を10ppm未満含む。
一実施形態においては、前記方法は、沈殿処理、遠心分離処理、乾燥処理、(精密/限外)濾過処理、透析処理、イオン交換処理、又はウイルス低減処理といったさらなる分離操作と組み合わせられる。
一実施形態においては、前記タンパク質又はペプチドを含む前記混合物は、微生物培養、細胞培養、又は穀物抽出物から得られた粗生合成産物又は部分的に精製された生合成産物である。
一実施形態においては、前記タンパク質又はペプチドは、5.5〜8.5の等電点を有し、100〜500,000Daの分子量を有する。
一実施形態においては、前記タンパク質又はペプチドは、抗体、抗体の断片、オリゴマー化された抗体関連物、又は、抗体含有融合タンパク質若しくは抗体断片含有融合タンパク質である。
本発明は、液体クロマトグラフィー又は固相抽出のためのカラムにも関し、該カラムは、チューブ状の格納器内に配された本発明の充填剤又は本発明の方法によって製造された充填剤を固定相として含み、必要に応じて、ガラス原料、濾過板、流量分配器、シール、接続器具、ねじ、バルブ、又は他の流体取り扱い用部品や接続用部品などのさらなる構成部品を含む。
一実施形態においては、前記方法は、適用される20バールまでの圧力に対して、適用される110℃までの加熱に対して、また、一般的な衛生上の手順に対して、物理的且つ化学的な耐性があるという点でさらに特徴付けられ、1,000回まで、好ましくは5,000回までの反復使用が可能である。
本発明は、本発明の同種若しくは異種の複数の充填剤、又は本発明の方法で製造した同種若しくは異種の複数の充填剤が集まった集合物にも関する。又は、マイクロプレート若しくはマイクロチップ配列形式、多重キャピラリー形式、流体素子形式にて並行して進行できる複数のカラムの集合物にも関する。
本発明は、本発明の充填剤、本発明の方法で製造した充填剤、本発明のカラム、又は、本発明の充填剤若しくはカラムの集合物を備えた診断用キット又は実験用精製キットにも関し、該キットは、化学的若しくは生物学的試薬、及び/又は、本発明の方法を実施するため、又は該方法と異なる分析的、診断的、実験的方法を実施するために必要な消耗品をさらに同じ包装単位内に備えている。
本発明は、本発明の充填剤、又は本発明の方法で製造した充填剤の使用に関し、該使用は、診断上、治療上、又は栄養上の価値を有する少なくとも1種のタンパク質又はペプチドを含む薬学上又は栄養学上の組成物の製造におけるものである。
本発明は、本発明の充填剤、又は本発明の方法で製造した充填剤の使用に関し、該使用は、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの除去におけるものであり、また、前記少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの存在により引き起こされる疾患の医療上の予防又は処理におけるものである。
本発明は、本発明の充填剤、又は本発明の方法で製造した充填剤の使用に関し、該使用は、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの同定、特性評価、定量、又は実験上の精製におけるものである。
本発明は、本発明の充填剤、又は本発明の方法で製造した充填剤の使用に関し、該使用は、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの可逆的固定化のためのものであり、また、さらなる化学的又は生物学的分子構造が前記タンパク質又はペプチドに結合するための試験を必要に応じて試験するためのものである。
第1の態様においては、本発明は、固体支持材料を含む充填剤に関し、該材料の表面には、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基とがあり、
第1の残基と第2の残基とは、互いに直接には結合しておらず、固体支持材料自体に独立して付着しているか、又は、担体としての前記材料によって支持されているポリマーの膜に付着しているという特徴がある。
一実施形態においては、二環式複素芳香族化合物構造が、存在し得る全てのアザ−ベンゾピロール構造、オキサ−ベンゾピロール構造、及びチア−ベンゾピロール構造などのベンゾピロール(インドール)構造であるか、又は、存在し得る全てのアザ−ベンゾピリジン、オキサ−ベンゾピリジン、チア−ベンゾピリジンなどのベンゾピリジン(キノリン又はイソキノリン)構造である。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、3−アザピロール(イミダゾール)のような、存在し得る全てのアザ−ピロール構造、オキサ−ピロール構造、チア−ピロール構造などのピロール構造である。
一実施形態においては、第1の残基及び/又は第2の残基が、立体配座的に柔軟な1〜20原子長さの共有結合性の結合剤を含む。
一実施形態においては、固体支持材料の表面に、さらに、第3の残基、及び必要に応じて第4の残基がある。
一実施形態においては、第3の残基は、アミン構造、アミド構造、又は一級アミン構造を含む。
一実施形態においては、第1の残基、第2の残基、及び第3の残基は、約1:1:2のモル比で存在する。
一実施形態においては、固体支持材料の表面は、第1の官能基及び第2の官能基を有するポリマーの膜で覆われており、第1の官能基及び第2の官能基は、同種であっても互いに異種であってもよく、また、同様に、前記第1の残基及び第2の残基を有し、必要に応じて第3の残基及び第4の残基を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーは、互いに共有結合的に架橋しているが担体表面に対しては共有結合的に接合又は結合していない個々の分子鎖を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーは、ポリアミン、又はポリビニルアミン、又はコポリマー、又はポリアミンを含むポリマー混合物である。
一実施形態においては、吸着したポリマーの前記官能基における第1部分は、少なくとも1種の架橋剤と架橋しており、架橋したポリマーの前記官能基における第2部分は、前記第1の残基及び第2の残基、また、必要に応じてさらなる残基に結合している。
本発明は、本発明の第1の態様の充填剤を製造する方法に関し、下記の工程を含む。
(i)第1の官能基及び第2の官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)前記ポリマーの膜を担体の表面に吸着させる、
(iii)吸着されたポリマーの前記官能基の第1部分を少なくとも1種の架橋剤によって架橋させる、
(iv)架橋したポリマーの前記官能基の第2部分を前記第1の残基、第2の残基、及び必要に応じてさらなる残基と結合させる。
本発明は、前記タンパク質又はペプチドを含む混合物からタンパク質又はペプチドを分離する方法、又は、タンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を高める方法にも関し、下記の工程を含む。
(i)第1の液体に溶解又は懸濁した前記混合物を、本発明の第1の態様の充填剤に接触させ、前記タンパク質又はペプチドが前記充填剤に結合できる十分な時間をおく、
(ii)必要に応じて前記充填剤を第2の液体でリンスする、
(iii)結合した前記タンパク質又はペプチドを含む前記充填剤を第3の液体と接触させ、前記タンパク質又はペプチド前記充填剤から脱離できる十分な時間をおく、
(iv)必要に応じて、第4の液体及び/又は第5の液体で前記充填剤を洗浄及び/又は再生させる。
一実施形態においては、第1の液体及び必要に応じて用いる第2の液体のpHが、標的タンパク質又はペプチドの等電点plに近い。
一実施形態においては、第1の液体のpHが5.5〜8.5の範囲であり、第3の液体のpHが3〜6.5の範囲である。
一実施形態においては、前記タンパク質又はペプチドは、5.5〜8.5の等電点を有し、100〜500,000Daの分子量を有する。
第2の態様においては、本発明は、固体支持材料を含む充填剤に関し、該材料の表面には、
−同種又は異種の第1官能基及び第2の官能基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基とがあり、
第1の残基が第1の官能基に結合し、且つ、第2の残基が第1の官能基に結合しているという特徴がある。
第3の態様においては、本発明は、固体支持材料を含む充填剤に関し、該材料の表面には、
−同種又は異種の第1官能基及び第2の官能基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基とがあり、
第1の残基が第1の官能基に結合し、且つ、第2の残基が第1の官能基に結合し、前記官能基のいずれも第1の残基及び第2の残基のどちらにも結合していないという特徴がある。
第4の態様においては、本発明は、固体支持材料を含む充填剤に関し、該材料の表面には、
−同種又は異種の第1官能基及び第2の官能基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基とがあり、
固体支持材料がトリアジン部分又はピリミジン部分を有さないという条件において、第1の残基が第1の官能基に結合し、且つ、第2の残基が第1の官能基に結合しているという特徴がある。
第5の態様においては、本発明は、固体支持材料を含む充填剤に関し、該材料の表面には、
−同種又は異種の第1官能基及び第2の官能基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基と、
−炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基とがあり、
固体支持材料がトリアジン部分又はピリミジン部分を有さないという条件において、第1の残基が第1の官能基に結合し、且つ、第2の残基が第1の官能基に結合し、また、前記官能基のいずれも第1の残基及び第2の残基のどちらにも結合していないという特徴がある。
第2、第3、第4、又は第5の態様の一実施形態においては、二環式複素芳香族化合物構造が、存在し得る全てのアザ−ベンゾピロール構造、オキサ−ベンゾピロール構造、及びチア−ベンゾピロール構造などのベンゾピロール(インドール)構造であるか、又は、存在し得る全てのアザ−ベンゾピリジン、オキサ−ベンゾピリジン、チア−ベンゾピリジンなどのベンゾピリジン(キノリン又はイソキノリン)構造である。
一実施形態においては、単環式複素芳香族化合物構造が、3−アザピロール(イミダゾール)のような、存在し得る全てのアザ−ピロール構造、オキサ−ピロール構造、チア−ピロール構造などのピロール構造である。
一実施形態においては、第1の残基、又は、第2の残基、又は、第1の残基及び第2の残基は、結合剤(リンカー)を介して前記第1の官能基及び第2の官能基に結合している。
一実施形態においては、前記第1の官能基及び第2の官能基の5〜95%、又は15〜85%、又は25〜75%、又は35〜65%、又は40〜60%は、前記第1の残基及び第2の残基に結合しており、前記第1の残基及び第2の残基は、3:2〜2:3のモル比で存在している。
一実施形態においては、固体支持材料の表面には、さらに、第3の残基及び必要に応じて剤4の残基がある。
一実施形態においては、第3の残基は、アミン構造又はアミド構造、又は、一級アミン構造を含む。
一実施形態においては、第1の残基、第2の残基、及び第3の残基は、約1:1:2のモル比で存在する。
一実施形態においては、固体支持材料の表面は、第1の官能基及び第2の官能基を有するポリマーの膜で覆われており、第1の官能基及び第2の官能基は、同様に、前記第1の残基及び第2の残基を有し、必要に応じて第3の残基及び第4の残基を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーは、互いに共有結合的に架橋しているが担体表面に対しては共有結合的に接合していない個々の分子鎖を有する。
一実施形態においては、前記ポリマーは、部分的に誘導体化されたポリアミン、又はポリビニルアミン、又はコポリマー、又はポリアミンを含むポリマー混合物である。
一実施形態においては、第1の官能基及び第2の官能基における第1部分は、少なくとも1種の架橋剤によって架橋しており、また、第1の官能基及び第2の官能基における第2部分は、前記第1の残基及び第2の残基に結合しており、必要に応じてさらなる残基に結合している。
一実施形態においては、本発明は、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様の充填剤を製造する方法に関し、下記の工程を含む。
(i)第1の官能基及び第2の官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)前記ポリマーの膜を固体支持材料の表面に吸着させる、
(iii)吸着されたポリマーの前記官能基の第1部分を少なくとも1種の架橋剤によって架橋させる、
(iv)架橋したポリマーの前記官能基の第2部分を前記第1の残基、第2の残基、及び必要に応じてさらなる残基と結合させる。
一実施形態においては、本発明は、前記タンパク質又はペプチドを含む混合物からタンパク質又はペプチドを分離する方法、又は、タンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を高める方法に関し、下記の工程を含む。
(i)第1の液体に溶解又は懸濁した前記混合物を、本発明の第2、第3、第4、又は第5の態様の充填剤に接触させ、前記タンパク質又はペプチドが前記充填剤に結合できる十分な時間をおく、
(ii)必要に応じて前記充填剤を第2の液体でリンスする、
(iii)結合した前記タンパク質又はペプチドを含む前記充填剤を第3の液体と接触させ、前記タンパク質又はペプチド前記充填剤から脱離できる十分な時間をおく、
(iv)必要に応じて、第4の液体及び/又は第5の液体で前記充填剤を洗浄及び/又は再生させる。
一実施形態においては、第1の液体及び必要に応じて用いる第2の液体のpHが、標的タンパク質又はペプチドの等電点plに近い。
一実施形態においては、第1の液体のpHが5.5〜8.5の範囲であり、第3の液体のpHが3〜6.5の範囲である。
一実施形態においては、前記タンパク質又はペプチドは、5.5〜8.5の等電点を有し、100〜500,000Daの分子量を有する。
本開示のために、本発明の一般的態様のために挙げられた全ての実施形態が、本発明における第1、第2、第3、第4、及び第5の態様の充填剤と組み合わされてもよい。
本発明における技術的課題は、上記段落で要約されたように、従来公知の方法における欠点がない、タンパク質及びペプチドの優れた精製方法を提供することとして挙げられる。即ち、本方法は、標的とするタンパク質又はペプチドを試験マトリクスから1工程で機能的な完全性を損なうことなく単離できるものであり、一方で高価な材料の使用をかなり避けることができ、使用における装置の一般的な洗浄及び衛生手順を着実に実行できる程度に万能であり、個々の行政規制機関による方法を確実に適用でき、標的タンパク質又はペプチドを薬剤上の品質にて経済的に最適な方法において提供することができる。
この技術的課題は、精製されるタンパク質又はペプチドの固相−液相平衡分配過程において採用される新しいタイプの充填剤を提供することにより解決され、残基による特有の二重化学誘導体化によって従来知られたものと区別される。前記化学誘導体化は、標的タンパク質又は標的ペプチドを、具体的には様々な他のタンパク質又はペプチドといった副産物と分離するという課題に合わせて調整され、一般的なアフィニティー媒体に匹敵する選択性及び検出感度を有するが、製造にとって高価な且つ/又は過酷条件下にて劣化するような壊れやすい生物材料を全く有さない合成物を含む。充填剤の製造において採用される全材料の高い耐久性は、該充填剤を使用する分離方法における長期間にわたる再現性をも確かなものにし、高い耐久性は、分析結果におけるドリフト効果がないことにより明確となる。
上記の技術的課題の解決を助けるものは、少なくとも2種の異なる材料を含む充填剤の層状集合であり、第1の材料は、両方の残基を有し第2の材料を覆う合成ポリマー又は生合成ポリマーであり、第2の材料は、固体基材の役割を果たす。一方で、この特有の集合は、ポリマー膜の比較的高い含有量及び比較的高い物理的安定性により特徴付けられるが、分子鎖の高い柔軟性によっても特徴付けされ、その結果、溶媒及び試験サンプルの吸着能力に優れ、また、拡散交換が速くなる。従って、膜は、均質で、生体適合性があり、柔らかく、ゲル状状態を維持している。これにより、被検体であるタンパク質又はペプチドは、活性成分を含む充填剤の層に、分子体積の一部又は全部を入れ、該充填剤は、その表面を通る又は表面に沿った結合や移動に関与し、一方で、同時にタンパク質又はペプチドの変性を防ぐ。従って、これにより、被検体のための準三次元相互作用の空間が確実に生まれ、タンパク質又はペプチドの全表面に分布する抗原決定基と残基で改質されたゲル相との間における多点接触が可能となる。これにより、試験物質の構成成分は、固体支持材料の内側成分との意図しない相互反応から、ポリマー膜によって効果的に遮断されもする。
本発明の全範囲を決定するため、また、それをより正確に表すために、以後本発明の文脈内にて使用される多くの用語の意味について、以下の段落においてまず定義する。全ての例は、説明に役立たせる目的のみのために示され、実施形態の排他的一覧を意味するものではない。当業者は、本発明全体の思想を逸脱せずに、本発明の実施するさらなる方法及び類似の方法を確実に認識できるであろう。図6の略図は、充填剤の成分に関連して用いられる多くの異なる用語における相互関係を表している。
“充填剤”との用語は、試験サンプルの固体−液体平衡分配処理における固定相として使用される合成又は生合成材料を意味し、前記試験サンプルに含まれる少なくとも1種の標的タンパク質又は標的ペプチドの受容体として、非共有結合性の選択的特性を示すか、又は、前記試験サンプルに含まれる異なる構造の少なくとも2種の標的タンパク質又は標的ペプチドを非共有結合性の選択的特性において識別する(即ち、高い絶対結合定数、又は結合定数の大きな違い)。それゆえ、充填剤は、分析のための又は予備分離のための検出課題、分離課題、固定課題、又は(生)化学転換課題を果たすために特別に設計され、該課題は、しばしば少なくとも1種の標的タンパク質又は標的ペプチドと試験サンプルマトリクスとの固有の組み合わせからなり、標的タンパク質又は標的ペプチドと試験サンプルマトリクスとは、既知、部分的に既知、又は既知でないものである。
一般的な相(帯電、双極子モーメント、又は親油性といった全被検体分子にわたって基本的に平均化された累積パラメータによって被検体を識別する相)とは対照的に、そのような充填剤は、少なくとも1種の標的タンパク質又は標的ペプチドの三次元分子表面における少なくとも1種の領域(抗原決定基 エピトープ)に、少なくとも部分的に、群補完性の概念によって結合する。それゆえ、この優れた概念は、いわゆる混合様式充填剤の範囲を超えて及んでいき、該混合様式充填剤は、―従来の意味では―、標準的な平均的作用の2種の組み合わせによって分離する。従って、本発明の充填剤は、タンパク質若しくはペプチドの単独物、又は、構造上密接に関連したタンパク質若しくはペプチドの集合物を、広範囲の異種副産物を含む環境から、高い親和性及び高い個々の選択性若しくは集合的選択性によって結合させるべく、分子レベルにおいて設計される。
“固体支持材料”としては、当業者に知られているあらゆる種類の無機鉱物酸化物のような全ての非多孔質吸着媒体、好ましくは多孔質の吸着媒体が充填剤を作製するために用いられ、無機鉱物酸化物としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、フロリジル(ケイ酸マグネシウム)、マグネタイト(磁鉄鉱)、ゼオライト(沸石)、ケイ酸塩(セライト、珪藻土)、マイカ(雲母)、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、金属−有機構造体、セラミック、及び、多孔性孔径調整ガラス(CPG)、アルミニウム、ケイ素、鉄、チタン、銅、銀、金、及び、黒鉛若しくは非結晶質炭素、紙、多糖類のような(生物)ポリマー樹脂、ポリアクリルアミド、製品名「Amberchrom」などのようなポリスチレンが挙げられ、球状であってもよく、いびつで不ぞろいな形状であってもよい。ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)(特に、大半又は表面がスルホン化され強力なカチオン交換樹脂として使用されるポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、及び、デンプン、また、セルロース、セルロースエステル、アミロース、アガロース、セファロース、マンナン、キサンタンおよびデキストランのような多糖類が好ましい固体支持材料である。不溶性支持機能としての最低限の剛性及び硬さを有する固体基材を導入することにより、固相及び液相間における界面を広げることになり、該界面は、前記相間における分割処理のため、また、特に流動及び/又は加圧条件下における力学的強度及び摩耗性を高めるため、分子基盤としてのタンパク質又はペプチドとの相互作用の場である。本発明の固体支持材料は、均質な又は不均質な組成物からなるものであり、それゆえ、複合化された材料でもあり、該材料は、上述した1種又はそれ以上の材料の複合物であり、具体的には、多層複合物である。これに関して、磁性粒子が具体的に挙げられている。
これに関連する重要な実施形態においては、固体支持材料の表面がポリマー膜で覆われ得る。必要に応じたそのような膜は、固体支持材料の一部として考えられ、その理由は次の通りである。本明細書において開発され導入される全ての製造方法及び分離方法は、固体支持材料の周囲の表面における官能基又は残基による影響を受け、同様に、そのような被覆層におけるそれぞれの官能基又は残基とともにはたらく。さらに、固体支持材料バルクに特有なメソ多孔質又はマクロ多孔質トポグラフィーは、被覆操作において多くの場合保たれる。そのようにして得られたハイブリッド材料において、本発明の目的のために、表面のポリマー膜が、仮に、下部の全材料と区別されるのであれば、後者(下部の全材料)は、即座に個々に“担体”と称されるか、又は換言すると、ハイブリッド固体支持材料は、担体及びポリマー膜の両方を含む。しかしながら、実際には、そのような区別は、大抵の場合、充填剤調製の過程がわかるときにのみ可能である。充填剤の剛直な下部構造を与える部分としての担体は、固体の物理的様相と同様であり、また、上部に表面ポリマー膜のない固体支持材料として、又は、そのような表面ポリマー膜のための担体として本発明に同様に採用される、固体支持材料としての上述した材料のいずれかからなる。従って、ポリマー吸着の適合性を除く上述したような全ての特性、選択、制限が、両方の用語に同等に適用される。本発明の中心的な実施形態は、それゆえ、充填剤は、固体支持材料が担体からなり、担体の表面が官能基を有するポリマーの膜で覆われており、官能基が第1の残基及び第2の残基、また、必要に応じて第3の残基及び第4の残基を有している。
好適なものとして、仮に多孔質材料が担体として用いられた場合には、ポリマー膜は、通常、その外表面及び内表面のほとんどを均質的に覆う。従って、“表面”は、充填剤の製造及び利用における分離作用因子として、充填剤における全固相−液相界面を特徴付けるものであり、表面においては、残基による認識及び被検体の結合が起こり、表面には、流体力学的流動、対流、かん流、拡散、電子移動、又はこれらのいずれかの組み合わせにより(必要に応じて加圧下にて)、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドが接近可能である。軟物質を含む担体が膨潤する可能性により、また、特定の液体において特に表面のポリマー膜が膨潤する可能性により、ポリマー膜は、明確な境界でないが、中間的なゲル相の層を含む。充填剤の表面特性は、採用された材料の内側部分の特性と異なる。2種の異なる材料が担体及びポリマー膜として用いられた場合に、また、結果としてかなり大きな比表面積をもたらす製造方法を実施した場合に、このことは特に当てはまる。
“被覆”は、当業者に知られた全ての被覆方法によって技術的に達成され、該被覆方法は、事前駆動力条件下において起こるか、又は人工的に実施され、該人工的なものとしては、自発的吸着、気相堆積、液相、気相、又はプラズマ相からの重合、スピンコーティング、表面凝縮、湿潤、浸漬、ディッピング、ブラシ塗り、スプレー、スタンピング、蒸発、電場又は圧力の利用、また、例えば液晶、ラングミュアーブロジェット膜形成、又は多層膜形成などの分子自己集合に基づく全ての方法が挙げられる。それにより、ポリマー膜は、多層として直接的に、又は、それぞれの単層が互いに段階的に連続的に被覆される。巨大分子に関する限り、自然的な促進又は人工的な促進に関わらず、単一点又は多点“吸着”は、いずれの場合においても、ポリマー溶液から始まるいずれの被覆処理の最初の(不完全な)段階であると考えられ、該段階は、固体表面との物理的な接触におけるものである。吸着が必要とするものは、固体表面とポリマー分子鎖のそれぞれとの間における、少なくとも弱い誘引力の物理的な(ファンデルワールス)、又は、―担体及び/又はポリマーにおいて存在する完全な機能付与の場合には―、特定の非共有結合的な化学的ないくらかの力であり、そして、多層が吸着されている場合には、同じ層内のポリマーと垂直方向に積層された異なる層との間における少なくとも準安定凝集物を形成させるべき力でもある。反対符号の電荷の間の静電力は、しばしばこの目的のために利用され、従って、担体の表面電荷は、ゼータ電位により与えられる。初期の吸着は、ゆるく且つ一様でない様式で起こり、後に、二次元又は三次元的な体制及び/又は密度へと大きく変換する。これは、表面のポリマー分子鎖における残基のいくらかの可動度が原因かもしれず、その結果、吸着と個々の表面サイトにおける吸着過程との間の平衡が安定状態となり、また、例えばアニーリングによって発達するかもしれない。近接した官能基間において続いて共有結合を導入することにより、分子鎖の物理的な絡み合いにより基本的な立体的(エントロピー的)安定性に加えて、吸着した凝集体の安定性をさらに高めることが通常必要である。さらに安定性を高めることを達成するために、ポリマー膜の分子鎖が、担体材料の下部に共有結合的に、さらに接合される。
従って、固体支持材料の外部表面は、平坦状(板状、シート状、箔状、ディスク状、スライド状、フィルター状、膜状、織布または不織布状、紙状)、又は、湾曲状(凹状又は凸状:球状、ビーズ状、粒子状、(中空)繊維状、チューブ状、毛細管状、瓶状、サンプルトレイにおけるウェル状)である。固体支持材料における内表面の細孔構造は、一様な連続毛管路、又は、一様でない(フラクタルな)形状を有する。顕微鏡で見たときに、細孔は、作製方法の影響を受けて、平滑でも起伏があってもよい。細孔体系は、固体支持材料全体を突き抜けるように連続的に広がっているか、又は、(分岐した)空洞で止まっている。移動相における溶媒和と固定相の表面における保持力との間におけるタンパク質又はペプチドの界面平衡の速度、及び、連続的な流動分離体系の効率は、主として、固体支持材料の細孔を経る拡散による物質移動、及び、粒子及び細孔径の特徴的な分布によって測定される。細孔径は、必要であれば、多様で不均質な分布、及び/又は、空間的に(例えば、断面にて)不均質な分布によって示される。固体支持材料又は担体として本発明の使用に適した多孔質固体の典型的な細孔径は、10mn〜400nmの範囲にあり、メソ多孔質又はマクロ多孔質に分類され、粒子状材料の代表的な粒子径は、5μm〜500μmである。好適な固体は、30%〜80%の範囲の体積空隙率を有し、1m2g―1〜1,000m2g―1の典型的な比表面積を有する。
これに代わり、近年導入された固体支持材料は、いわゆるモノリシックなクロマトグラフィー媒体であり、この媒体は、粘着していない微細な粒子で作られた従来の圧縮可能なカラム充填物と反対に、所望の形状(通常は棒状)の巨大な単一の構成要素として充填されている。モノリシックなカラムは、例えば、シリカやポリメタクリレートなどのポリマー材料からなり、その巨視的構造は、細長い毛細管又は焼結した粒子凝集物を含み得る。
“ポリマーの膜”又は“ポリマー膜”との用語は、通常は数層若しくは数十層の分子膜の間にあり、少なくとも1つの層の二次元、好ましくは三次元の合成又は生合成のポリマーネットワークを意味している。そのような(誘導体化された又はされていない)ポリマーネットワークそれ自体は、当業者に知られた方法によって作製される。ポリマーの膜は、化学的に均質な成分であるか、又は、少なくとも異なる2種の互いに貫通しているポリマー分子鎖(例えば、ポリアクリル酸及びポリアミン)からなり、該ポリマー分子鎖は、不規則に絡み合っているか、又は、規則的な状態(積層)にある。“分子鎖”との用語は、一般的には、最も長い連続した中心的な、又は分岐したポリマーのストランド(鎖)のことであり、これに沿って官能基が結合している。この用語は、充填剤製造において採用される、溶解され、吸着され、又は接合したポリマーの全主鎖を示すためにも使われ、また、個々のストランドの全長さを特定することが困難であることから、架橋した網状ポリマーの結合点間に位置する鎖部分(セグメント)を示すためにも使われる。
主鎖又は側鎖のなかに少なくとも1種の官能基を含む“ポリマー”は、均一媒体又は不均一媒体においてそのような官能基にて残基により容易に誘導体化される点で、好ましい。さらには、固体状態又は溶解状態における多くのポリマー特性、及び、固体担体に自発的に吸着し永久的に付着するというポリマーの傾向は、その官能基によって決定される。
特に高分子電解質について述べる。交互配列であろうと、統計的配列であろうと、またブロック配列であろうと、機能性単位及び非機能性単位の両方を含むコポリマーは、この点において、実現可能である。好ましい官能基は、一級アミノ基、二級アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、又はエステル基である。周囲媒体の酸度及び/又は塩基度により、アミノ基は、プロトン化されたアンモニウムイオンとして存在し、カルボキシル基は、脱プロトン化されたカルボン酸イオンとして存在し得る。固体支持材料の担体として多孔質又は非多孔質のポリマーを用いた場合に注目される点は、その表面を被覆したポリマーの膜は、ここで記載するように、装置する化学組成を有するという点である。この相違は、下記に示す官能基の存在、種類、又は密度によるもの、分子量が低いことによるもの、又は、架橋度が低いことによるものである。これら全てのパラメータによって、親水性、溶媒膨潤性/拡散性、及び生体適合性を高めること、また、被覆された表面への非特異的な吸着を減らすことをもたらされる。
好ましいポリマー膜は、アミノ基を含む少なくとも1種のポリマーを含む。ポリビニルアミンが特に好ましい。他の好適なポリアミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどがあり、また、アミノ基を含むもの以外の機能性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、また、ポリ(無水マレイン酸)、ポリアミド、多糖類(セルロース、デキストラン、プルラン糖)などの前駆体ポリマーがある。コポリマーが採用された場合には、コモノマーは、単純なアルケンモノマー、又は、ビニルピロリドンのような不活性な極性モノマーである。使用されるポリマーの好ましい分子量は、限定されないが、5,000ダルトン〜50,000ダルトンであり、特にポリビニルアミンに当てはまる。上記範囲の下限に近い分子量を有するポリマーは、担体の狭い細孔をも通り得ることから、その結果、表面積が大きく、物質移動速度論的に優れ溶解性や結合能に優れる固体支持材料が、本発明の充填剤において用いられる。
ポリマーは、第1の残基及び第2の残基による誘導体化の前又は後に、適当な担体の表面に吸着され、次に架橋され又は接合されて吸着膜となる。残基による誘導体化物を含む、結果として得られたハイブリッド材料の膜含有量は、充填剤全重量に対して、約5重量%〜30重量%であり、好ましくは約15重量%〜20重量%である。機能的に完全な充填剤におけるポリマー含有量の正確な値は、誘導体化の程度、残基の分子量、及び選択された担体の比重によって決まり得る。これらの値は、数ナノメーター範囲の膜厚さに対応する。被覆しているポリマーは、なお、膨潤又は収縮する性能を保持しており、それにより、実際の膜厚さは、使用される溶媒の種類の影響を強く受ける。
ポリマー膜の架橋の度合いは、架橋にそれぞれ関わる全官能基数に対して2%〜20%の範囲である。特に好ましいのは、官能基の凝縮による架橋であるが、ラジカル化学及び光化学を含むポリマー化学における全ての方法を適用することができる。しかしながら、架橋結合は、架橋試薬の添加をすることなく、ポリマーの官能基間において直接的に形成され得る。これが特に可能であるのは、次の場合であり、例えば、互いの反応後にアミド結合を形成するアミン基及びカルボキシル基といった官能基、即ち、互いに潜在的な反応性を示す少なくとも異なる2種の官能基を有するコポリマー又はポリマー混合物が採用された場合である。好ましい架橋は、共有結合性のC−N結合、例えば、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合(尿素結合)、又は二級アミン/三級アミン結合の形成を含み、活性化されたカルボン酸又はエポキシのいずれかとアミンとの反応を経て形成される。これに代わり、架橋は、非共有結合性の性質によって可能であり、反対に帯電した官能基間におけるイオンが対になることを利用して、又は、多価対イオンを利用すること等を利用して可能である。
本明細書において、“架橋の度合い”は、架橋できる全官能基数に対する、架橋反応において形成される架橋の最大数をして示される。好ましくは、架橋のために二官能性の試薬が用いられた場合には、それゆえ、架橋の度合いは、モル比を反映し、該モル比は、架橋反応する架橋試薬の量と、架橋できるポリマーの官能基数との間(このような場合、1つの架橋の形成あたり2つの官能基が必要)の比であり、これにより、試みた比によってほぼ定量的に反応が進行することが推測される。基本的に、分子鎖内にて架橋が形成されること、分子鎖間で架橋が形成されることが可能であり、また、非架橋の側鎖末端が形成されること(部分的に架橋試薬が反応)が可能である。
一方、“接合”との用語は、1本のポリマー分子鎖が固体表面に共有結合的に固着すること、好ましくは表面にて官能基と固着することを意味する。各ポリマーの分子鎖が、その分子鎖に沿った任意の少なくとも1箇所に固着すれば十分である。膜のより優れた安定性は、外方へ出たポリマーループが表面に形成されることにより、多くの接合点があることで達成される。しかしながら、後者の方法は、ポリマー分子鎖の三次元的な柔軟性を減少させる。1点での接触は、完全に延ばされた分子鎖が表面から外側へ出るように、好ましくは分子鎖の末端によって実現され、分子鎖に沿っては、複数の官能基/残基があり、又は、反対側末端に1つの官能基/残基がある。接合したポリマーの実際の立体配座は、ランダムコイル状であるものの、表面における高接合密度及び適した溶媒の使用により、隣り合う分子鎖間における自己集合的な分散相互作用による配向現象及び膨潤を起こすことができ、これは、例えば、架橋によってさらに安定化されるポリマーブラシの形成において起きる。好ましくは、接合は、架橋反応と類似した穏和な凝縮反応により達成され、しかし、酸化的方法又は放射線誘発方法のようにフリーラジカル、イオン、又はラジカルイオンを使うような方法も適用される。方法の選択は、担体機能化の簡便性、型、及び程度による。接合は、原理上は、2種の異なる技術によって達成され、第1の技術は、表面におけるin-situ重合によって並行するポリマー分子鎖を作るべく表面結合性のモノマー又は開始剤を使用し、一方、第2の技術では、均質媒体中にてポリマー分子鎖が全長さ合成され、即ち、表面の非存在かで合成され、表面には、その後さらなる工程においてポリマーが単に接合される。後者の方法は、本発明の充填剤が接合工程を経て製造された場合、及び本発明の方法の実施形態に相当する場合に好ましい。
本発明の好ましい実施形態においては、ポリマー膜は、内部が供給結合的に架橋されていても、下方の担体材料には共有結合的に結合しておらず、即ち、物理的及び/又は化学的な吸着のみによって結合している。従って、“結合”との用語は、物理的及び/又は化学的な吸着を包含する。複合された材料の化学的及び物理的な安定性は、架橋されたポリマー膜の担体への物理的な全ての絡み合いに起因する。ポリマー膜の厚さ及び密度は、支持担体における極性又は反応性の官能基を保護することに十分であり、該官能基としては、固体ポリスチレンする本酸の場合にはフェニル基又はスルホン酸基があり、該官能基に接近できるということは、試薬により開裂が起きるか、又は、分離される混合物の不純物、又は標的タンパク質、ペプチドとの不明確で再生不可能な不可逆反応が起きると予想される。
さらなる実施形態においては、ポリマー膜は、担体に接合しているが、内部が架橋されていない。3番目の選択として、ポリマー膜は、内部が架橋され、また、担体に接合している。ポリマー膜における結果として得られる異なる3種のネットワーク形態は、模式的に図2に表されている。図2における事例Aは、好ましい充填剤を示しており、個々のポリマー分子鎖が互いに共有結合的に架橋しているが、担体の表面には共有結合的に結合していない。事例Bは、個々のポリマー分子鎖が担体の表面に共有結合的に結合しているが、互いに共有結合的には架橋していない充填剤を表している。事例Cは、(どの順序でも実施され得る)2種の固定技術の組み合わせの結果、個々のポリマー分子鎖が担体の表面に共有結合的に結合し、互いに共有結合的に架橋している充填剤を表している。
“官能基”との用語は、単純で、特別な化学的部分を意味し、該部分は、(誘導体化されていない)固体支持材料の部分、又はその表面にあるポリマーの付加的部分、又は、膜吸着を経る前記表面の調製中のポリマーの部分にあり、化学的な付着点又は固定点としての役割を果たし、それゆえ、少なくとも固体支持材料又はそれを覆うポリマーの膨潤状態において、化学薬品添加、又は置換反応による液相又は固相の誘導体化に敏感に反応し、付加的な架橋にも敏感に反応する。それゆえ、官能基は、典型的には、少なくとも1種の弱い結合及び/又は1種のヘテロ原子を含み、好ましくは求核試薬又は求電子試薬としてはたらく基を含む。反応性の弱い官能基は、誘導体化の前に活性化される必要がある。従って、それらは、ポリマー鎖と充填剤の残基との間の構造的な結びつきを形成し、また、架橋ネットワークの結合点を形成する。残基とは反対に、官能基は、そもそも被検体と相互作用するように設計されていないが(被検体は確かに徹底的に取り除かれ、残基は副成分の反発力により分離工程において相互作用し助けとなるにも関わらず)、むしろ、所定化学的反応の分子サイズの場所をもたらす表面被覆を提供するように設計され、実際に相互作用する残基へと変換されるか(誘導体化)、又は、共有結合(ポリマー架橋及び結合)の形成において使用される。本明細書における“接続”又は“連結”との用語は、直接的に形成された共有結合、及び、多数原子を含む連続的な列をなした延ばされた一連の共有結合をも含む。充填剤又は被検体に存在し特定の既知なこれら機能を十分に満たさない単純な2原子の分子断片に小さくなった化学的部分は、単に“基”という。
官能基の一式は、分離した複数の単位、しかしながら同じ単位として扱われ、その化学的挙動は、予測可能で再生可能な特性によってのみ決定され、それが付着している材料によっては、また、材料における厳密な位置によっては、ほとんど決定されない。そのような官能基においては、例を挙げるだけでも、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、カルボン酸基、又はカルボキシルエステル基が挙げられる。官能基は、固体支持材料の不可欠な部分を占め、従って、その表面の大部分に均一に分布している。好適な官能基は、大抵の場合、弱い酸特性又は弱い塩基特性を示し、従って、膜形成用ポリマーに両性電解質の特性を与える。ポリマーにおける官能基は、関連するモノマーの重合において導入されるか、又は、担体への吸着の前又は後における、次の官能基転換(重合類似反応)によって導入される。ポリマー膜は、異なるモノマーが共重合された場合でも、官能基転換が完了するまえに停止された場合でも、異なるポリマーが互いに積層されるか又は互いにかみ合ったネットワークになった場合でも、2種又はそれ以上の異なる官能基を含む。好ましい官能基は、一級アミノ基及び二級アミノ基である。特に好ましいものは、一級アミノ基である。
“誘導体化”との用語は、残基を含むか又はその前駆体を含む適当な誘導体化試薬を用いて、特に官能基への付加又は置換によって、中間の又は完全な機能性充填剤を製造すべく、充填剤製造の間に固体支持材料の表面に、又はその表面を覆うために使用されるポリマー中に特定の残基を導入できる化学反応を意味する。官能基が相互転換することによって反応性を有する異なる官能基になることも、上記の用語に包含される。残基の“前駆体”は、誘導体化の工程における表面又はポリマーとの結合の形成と同時又はその後で脱保護されるか又は最終的な残基へと転換される覆われた又は保護された化学的部分を包含する。例えば、ポリマーが一級アミノ基又は二級アミノ基を含み、誘導体化がそれらのアミド結合形成によって作られた場合、残基中に含まれることとなるさらなる一級アミノ基又は二級アミノ基は、最初に、誘導体化試薬における例えばBoc誘導体又はFmoc誘導体によって保護される。さらに、ポリマー又は表面の官能基と誘導体化試薬における中心的反応部位との誘導体化反応中に形成される結合が、標的タンパク質又はペプチドの認識において役割を果たす新しい化学的部分を形成をもたらす場合には、それぞれの残基は、どうやら誘導体化の後に完全に発現されるようであり、そして、一部のみ、又はその機能的に改良されたものが前駆体として誘導体試薬に含まれる。そのような場合、前駆体部分の一部(脱離基)は、誘導体化反応において(縮合反応における水分子のように)分離される。
誘導体化は、常に官能基の“所定部位”において行われる少なくとも1つの又は必要に応じて多数の工程である。これが意味するものは、―異なる官能基及び試薬を反応性を考慮に入れると―、誘導体化されないポリマー又は固体支持材料に存在するそれぞれの種類の官能基における予め決めた目標とする百分率は、選択されたそれぞれの残基によって誘導体化される官能基へと常に変換されるということである。均質であり再生可能な誘導体化充填剤を得るためには、計算上の適切な誘導体化試薬の量がポリマーと反応することとなる。完全な誘導体化(誘導体化の度合いが100%)を試みることができ、それにより、誘導体化試薬は、しばしば超過量で使用されるが、これは必需のものではない。
充填剤における残基の材料それ自体は、誘導体化工程において弱体化されるわけではないことから、穏和な条件下で誘導体化を実施することが大抵の場合好ましい。従って、先だって、官能基又は誘導体化試薬を活性化させること、又は、そのような条件下で十分な反応性を維持すべく実際の結合形成と同時に実施することのいずれかが必要とされる。好ましくは、誘導体化試薬は、活性化されている。好ましい誘導体化反応は、アミノ基のような電子に富んだ窒素官能基を含む求核ポリマー、及び、カルボニル又はカルボキシル誘導体のような電子に乏しい炭素を攻撃する離脱基を含む求電子試薬、又はその逆を包含し得る。それゆえ、例えば活性化エステルを経て、固相ペプチド合成、又は液相ペプチド合成といった標準的な技術によって活性化が達成される。好ましい誘導体化反応は、官能基との、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合(尿素結合)、又は二級アミン/三級アミン結合を包含する。カルボニル炭素に対するアミド結合及びウレタン結合非対称性により、これら結合は、アミノポリマー又はカルボキシルポリマーのいずれかの方向に、また、アミノポリマー又はヒドロキシポリマーの方向にそれぞれ形成される。
充填剤の親和性及び選択性は、2種又はそれ以上の異なる残基の組み合わせによって決定される。“残基”との用語は、独特な化学的部分、又は、通常は繰り返し起こる識別性のある特有の化学的部分を意味し、該部分は、ナノスケールにて集合(それ自体、又はその一部、又は同種若しくは異種の残基の群内)できる同種の又は異種のものであり、充填剤表面における格子又はポリマー分子鎖のCH又はCH2繰り返し単位との単なるファンデルワールス力より親和性が限りにおいて、該集合は、錯体に、又は、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの表面領域、若しくは、少なくとも1種の相補的な構造への高い及び/又は選択的な親和性の場所に形成される。固体/液体界面におけるそのような場所は、生体高分子を含む特定の種類の類似性において、“結合サイト”と称される。従って、残基は、完全に合成されるか若しくは天然物であり、又は、その断片か組み合わせであるが、化学的な合成及び/又は誘導体化を受け入れることができる。残基は、1種以上の独特な化学的部分を有する(例えば、疎水性相互作用又は分散型相互作用において係合することができるアルキル又はアルキレン単位のような化学的に非反応性の部分を包含する)。
様々な比で充填剤に2種又はそれ以上の残基が導入されるため、結合サイトは、2種又はそれ以上の、同質の、又は異なる残基を有する。特定の結合サイトに形成において含有される全残基は、二次元又は三次元的に互いに近接した位置にあり、必須ではないが、ポリマー膜の近接する表面官能基又は近接する繰り返し単位における残基を有する。一般的な結合サイトにおける個々の残基は、架橋した又は表面に結合したポリマーの異なるストランドにある(それぞれのタンパク質又はペプチドに露出した結合の一方に同じ原理が適用される)。これに対して、特定の残基は、2種の又はそれ以上の隣接する結合サイト、又は重なり合う結合サイトによって共有されている。表面における又はポリマー内における官能基への架橋及び残基の分布がランダム(統計的)である性質により、構造的にもエネルギー的にも同じ結合サイトではないが類似した結合サイトが、結果として形成される。その結果、標的タンパク質又はペプチドに対するこれら結合サイトのサイズ及び親和性は、実際には欠点として証明されていないながら、かなり異なる。
充填剤の結合サイトと標的タンパク質又はペプチドとの間における“結合”は、可逆的であり、それゆえ、充填剤の完全に化学的な部分間における非共有結合的な相互作用の形成を経て起こる。結合における支配的な非共有結合的な様式のなかで、イオン結合、水素結合、ドナー−アクセプター電荷移動相互作用、π−π相互作用、カチオン−π相互作用、双極子相互作用、配位相互作用、分散相互作用、及び疎水性相互作用が引き起こされるが、しばしば混合して非化学量論的に引き起こされ、個々の結合様式の寄与を規定することができない。従って、単一の、二重の、又は多重の同時的な接触が、同じ又は異なる残基を含む結合相手の間で起こり得る。粗い表面及び細孔における被検体の移動性、また、溶媒が媒介する相互作用における移動性に影響を与える物理的及びエントロピー的な力が、結合に関与する因子に加えられ得る。ある例においては、充填剤と少なくとも1種の結合したタンパク質又はペプチドを含む複合物が検出され、又は、分離されるが、大抵の場合、その複合物は、一時的な特徴のみのものである。そのような値は、充填剤−被検体の対の固有の特性でないだけでなく、強く溶媒に依存することから、結合強さにおいて与えられる有用な下限もない。さらに、1kcal/モルしかない特異的ギブスのエンタルピーですら、カラムにおける一連の多重平衡によってクロマトグラフィーにより分離され、カラムの理論段数は、クロマトグラフィー筒長さにおいて、メートル当たり約103〜104の値を選ぶことができる。クロマトグラフィーにおける利用においては、周囲の又は生体適合性の状況において可逆性を達成することが困難であることから、結合は、あまり強いものでなくてよい。
本発明の充填剤に関連して、残基は、必要に応じて表面を覆うポリマー膜を含む固体支持材料の表面の官能基に結合し、そして、その場合、官能基の接合点から表面が離れた完全な部分的構造を含み、又は、異なる官能基において同質の様式で起こる少なくともその一部を含む。標的タンパク質又はペプチドの結合において直接的に係合する完全な残基は必ずしも必要でない。残基は、結合構造を互いに分離又は接続する目的、又は、標的への結合構造をささげるべく幾何学的に適当な結合サイトの骨格構造を提供する目的を単に有するそのような原子又は部分を含む。特に表面におけるポリマー膜、及び、実際の結合構造において、固体支持材料の官能基間における必要に応じたスペーサー、分岐した若しくは他のリンカー単位が、従って、形式上、少なくとも1つの接合を作る各残基の一部に割り当てられる。接合は、推計的な(偏在的な)又は選択的様式で、担体媒体へのポリマー膜の適用の前又は後に、官能基の少なくとも1つの誘導体化工程を経て、均質な又は不均質な様式にて、通常は達成される。従って、ポリマーの溶液又は薄膜は、事前に合成され既に残基又はその前駆体を含む誘導体化試薬と反応する。
しかしながら、官能基又はその構造上の一部が、残基又はその前駆体による誘導体化によって異なる種の部分に変換される場合、又は、次に残基の付加される原子により不可欠の化学単位が形成される場合(例えば、−NH2官能基の変換により−NHCO−R残基になる窒素原子)、それらは、官能基としての特性を基本的に失うと見なされ、代わりに前記残基に存在する構造部分を見なされる。
同種の又は異種の残基が、直接的に、又は立体配座的に柔軟なリンカー(結合剤)によって固体支持材料における官能基に独立して接続する場合、標的タンパク質又はペプチド表面の相補的な一方に独立して適合すると仮定され、推進力は、全ギブスエンタルピーの最小化である。それゆえ、結合サイトの残基が、タンパク質又はペプチドのエピトープ(例えば天然の抗体)の最適な結合のための正しい三次元配向において体系化されることは、本発明の目的に必要でなく、残渣は、ただ、立体配座のスペース(基質に誘引された適合)の調査を通じてそのような配向をとることができる点が必要である。多くの場合、特に特異的な結合を、2種又はそれ以上の異なるエピトープのために得ようとすると、標的タンパク質又はペプチドのエピトープは、同じ充填剤によって認識される。
“残基”との用語は、充填剤表面から外方へ飛び出し、被検体との結合において接続の目的で同じように又は同様に何回も繰り返された全般的な単位に関わり、このように機能的に規定されている一方で、そのような残基は、1種又はそれ以上の区別可能で、それ自体内に近接する副次的単位がある分子的構造段階を基礎とし、そのなかに、形式的にいわゆる“構造”が断片化されている。この用語は、本発明において可能な限り広い意味で用いられる。いくらか任意的であるが、残基の異なる構造への分割は、化学的知識や類似性の原則に従って起こり、これにより、分子部分又は断片は、一般的な構造的及び/又は物理的特性に従って意味があるようにグループ化される。同じ残基にある異なる構造に関わる機能は、従って、同様に異なり、ある構造(特に、C,N,O,S−複素芳香族化合物)は、結合する被検体に関連する一方で、他のものと関連しない。残基が少し変化することによる本発明の充填剤における無数の可能性の観点において、そのような基礎においては、残基の必須部分は、必須でない部分と離れている。被検体との結合において必須でない付加的な構造に対して、短い分子の鎖(しばしば単に炭化水素)である“リンカー(結合剤)”があり、該リンカーは、片末端又は両末端に機能性の又は不飽和原子価を必要であれば含み、必要な接合のため、又は、実際の結合構造と近接する構造及び/又は充填剤表面との間の結びつきを形成するためにある。従って、例えば、本発明の充填剤においていくつかの異なる残基を採用することが可能であり、該残基は、全て二環式のC,N,O,S−複素芳香族化合物を含むが、リンカーの種類、長さ、結合性が異なり、リンカーがさらなる構造を有したり有さなかったりする。残基のそのようなグループは、分子レベルで区別されるが、本発明において“第1の残基”として全て機能的に適格とされる。
リンカーの使用については、下記でさらに詳細に論じられる。
標的の認識に関与する残基の構造は、“複素芳香族化合物構造”を含み、該構造は、狭い意味では、タンパク質又はペプチドの被検体との相互反応接触が起こる、残基の構造的な重要部分である。文脈における“複素芳香族化合物”との表記は、連続的に非局在化され閉ループ化されたπ−電子体系(例えば、NMRスペクトルにおいて磁気異方性遮蔽を示す)の芳香族特性を示す環又は縮合環体系を意味し、窒素、酸素、及び硫黄からなる群よりなる少なくとも1種の環内ヘテロ原子と炭素原子とをのみ含む。同じ又は異なる環における同じ又は異なる種類のヘテロ原子の組み合わせは、ヘテロ原子の通常の価数を超えず安定な構造となる限りにおいて可能である。
通常の命名法において、“二環”は、隣り合う環原子の2つ(ほとんど全ての場合、炭素)をそれぞれ共有し、様々な大きさの2つの芳香族環と、間の共有結合(即ち、0原子長さの[n.m.0]−結合)と、一般的なπ―電子体系とを有する二環式の縮合した環体系を意味し、一方、“単環”は、様々な大きさの孤立した単環式の環を意味する。さらに、芳香族環、複素芳香族環、脂肪族環、又は複素脂肪族環、又はそれらの環体系は、それにも関わらず、直接的な単結合接続を介して両方の複素芳香族構造に、少なくとも1つの環原子、必要であればスペーサー単位を介して、置換基として結合し得る。しかしながら、環縮合の拡張(2点での置換基の接続)は、脂肪族環、又は複素脂肪族環でのみ可能であり、複素芳香族π−電子体系によって、さらなる環の全長さの延長がされず、より高い核性の環体系は、避けられる。ヘテロ原子の数、組み合わせ、分布、また、正確なπ−結合状態(わずかである)は、複素芳香族化合物の区別に関して重要でなく、唯一の必要条件は、少なくとも1種のヘテロ原子が環内にあることであり、一般的な共役環体系における少なくとも1つのπ−電子を共有していることである。残基をある構造に断片化する多くの個々の可能性により、少なくとも1種の実現可能な第1の残基及び第2の残基を断片化することにより、それぞれ、二環式及び単環式のC,N,O,S−複素芳香族化合物構造が導かれるのであれば、本明細書においては十分である。
本明細書において“C,N,O,S−複素芳香族化合物構造”との用語は、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む、それぞれ二環式又は単環式の複素芳香族を意味する。
一実施形態においては、複素芳香族化合物構造は、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つの付加的なヘテロ原子N,O,又はSを含む。一実施形態においては、複素芳香族化合物構造は、2つのN原子を含む。そのような複素芳香族化合物構造は、例えば、イミダゾールである。
“置換基”は、(水素を除く)有機ラジカルであり、複素芳香族化合物構造の付加的部分として考えられ、また、被検体との結合において接続すると考えられる。置換基は、複素芳香族化合物構造の環外の部分に類似しており、これらの核に対して、即ち、二環式又は単環式の複素芳香族化合物環を形成する原子に対して、環を形成する原子を含まない少なくとも1つの共有結合を介して共有結合的に結合している。直接的な共有結合を介していくつかの複素芳香族化合物構造が互いに結合している場合を除き、そのような置換基それ自体は、通常、標的タンパク質又はペプチドとの弱くて非選択的な相互作用のみを示し、むしろ、残基の疎水性/親水性特性を調整するために用いられる。C,N,O,S−複素芳香族化合物環がなければ、充填剤表面に結合したとしても、置換基は、本発明の課題を十分に解決することができない。
従来、高い親和性及び選択性を示す充填剤としては、抗体又は生物由来の他の高分子量受容体が付着した固体支持材料が広く知られている。そのような抗体は、まず、生物を含む生物工程において標的抗原に対して特異的に取り込まれ、又は、標的タンパク質又はペプチドは、抗原に又は既に知られた天然の親和性対のいくつかのうち1つの成分に、可逆的に接合される。本発明の充填剤は、化学合成により、低分子量により、また化学的な高い安定性により残基が接近可能であるという事実によりこれらと区別される。しかしながら、本発明の充填剤は、全ての型のアフィニティークロマトグラフィー方法における固定相としても採用される。
“タンパク質”及び“ペプチド”との用語は、それぞれ、化学的に、生合成的に、又は生物分析的に明確に確認できる存在物としてのポリアミノ酸、及び、オリゴアミノ酸を示し、前記存在物は、合成物由来又は生物由来(自然界に存在するのではあるが)であり、直鎖状又は分岐鎖状であり、同種配列又は異種配列であり、分子量の限定、又は、最短配列若しくは最長配列の限定は与えられない。最低限必要とされるものは、少なくとも1つのアミド結合を介して結合している少なくとも2つのアミノ酸で構成されていることであり、例えば、ジペプチドである。さらにペプチド結合を形成することができる、非タンパク質性のアミノ酸、又は完全に人工的なアミノ酸が存在することは、有害なものでなく、存在するものとしては、β−アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、さらにペプチド類似物質がある。小さい(オリゴ)ペプチドは、段階的に又は収束法によって合成によって作られ、ペプチドとの用語は、そのような場合、例えば、デプシペプチド又はペプトイドのような特別な連結性を介して形成される構造をさらに包含し得る。比較的大きいタンパク質は、典型的に、所定の三次元構造を有し、その構造は、例えば、球状(アルブミン)、又はフィラメント状/繊維状(アクチン、コラーゲン)といった形状などの、様々な異なる形状をとり、また、タンパク質は、細胞質ゾル、膜結合、細胞外基質の一部において溶解し、又は、細胞の表面に存在する。現代の分子生物学的方法において取り扱われるタンパク質の量がわずかであることにより、タンパク質の一次アミノ酸配列は、同定するために知ることが必要とされず、しばしば、同質の成分として存在するかどうかすら知られていない。例えば、ウイルス、量子ドット、又はラテックス粒子などのような、(コロイド状に)分散した(ナノ)粒子担体の表面に結合したタンパク質又はペプチドは、本発明の分離方法に供される前に、充填剤との反応のために、全分子表面における遮蔽された部分を外側へ出すために、通常、鎖構造を解くことが必要とされる。
上記の用語は、一方で、非共有結合性のペプチド凝集物も単種若しくは複数種多重結合のタンパク質を包含し、他方で、酵素消化物やジスルフィド結合還元物の産物のような、タンパク質由来の機能性又は非機能性の副次的単位を包含し、事前に設計された製品名「affibodies」、「anticalins」、「nanobodies」などの小タンパク質、又は、他の人工的に再構築された活性サイトを包含する。金属イオン又はその複合物は、通常活性サイトにおいてタンパク質に含まれ得る。被検体タンパク質は、リン酸化、スルホン酸化、グルコシル化、グルクロン酸化、ユビキチン化などのin-vivoにおける翻訳後改質によって改質され得る。グリコシド及び脂質との連結は、それぞれグリコタンパク質、及びリポタンパク質を生じさせることになり、これらは、アミノ酸以外にさらなる構造を含む。下方制御又は情報制御のタンパク質の改質は、一般的に最も重要なタンパク質を作り出す生物におけるある病的状態のためのマーカーとして役立つ。同様に、表面、及び、タンパク質の活性部位若しくはアロステリック部位におけるin-vitroの生化学的改質は、アゴニスト基質又はアンタゴニスト基質との可逆又は不可逆な複合物の形成を含み、アミノ基やカルボキシル基の全ての種類の保護基の形成、また、側鎖機能の形成をも含む。タンパク質又はペプチドは、さらに、化学的又は生化学的にタグ化(標識化)され(例えば、オリゴヒスチジン標識、接合用染料、放射性ラベル)、又は、タンパク質又はペプチドの発現、溶解性、排出、検出、又は分離を高める目的で他の(担体)タンパク質と融合され、それにより、接合点が明らかとなる。しかしながら、例えば、膜に接合する末端といった元々ある配列部分を欠く。
“標的タンパク質”、“標的ペプチド”、又は単に“標的”のいずれか1つの用語が使われた場合には、特定のタンパク質又はペプチド、又は多数のタンパク質又はペプチド(通常、構造、等級、合成、又は起源に関連する)は、特定の残基を有するどの充填剤を設定するかということに関連する。これは、通常、充填剤に高い親和性を示す被検体、又は供給混合物の成分である。標的タンパク質又は標的ペプチドは、アミノ酸配列だけでなく(単点配列変異又は欠失への減少、及び、遺伝子転換中におけるSNP変異株又は選択的スプライシング由来の配列を含むもの)、異なった折りたたみ状態(元来のもの、非折りたたみ、異常な折りたたみ)の存在を含む二級及び三級構造要素によっても、内在するタンパク質性の副生物と区別される。混合物内に豊富にあるにもかかわらず、大抵の場合、標的は、必ずしも、精製を必要とされる価値ある混合物成分又は特定の物質である必要がなく、後者は、おそらく流入画分に含まれる。多くのタンパク質又はペプチドは、毒性を示すため、健康上又は環境上の利用目的のためには、大部分の標的は、毒性又はそうでなければ混合物におけるタンパク質又はペプチドが示す意図しない特性があり、混合物から取り除かれなければならない。標的は、混合物の残りから分離されるか取り除かれることを要する製造工程における主産物でなく、副産物であるともいえ、それによって、−通常は主生成物である−タンパク質又はペプチド自体又はタンパク質又はペプチドでない他の混合成分の濃度又は純度が高められる。多段階の血漿分画操作においては、供給混合物に同時に存在する異なるタンパク質又はペプチド全体を精製すべく、多くの連続的な分画化が必要であり、それによって、特定の段階の流出分画物が次の段階で吸着され、逆もまた同様である。
標的を含み、本発明の充填剤と適当な条件下にて少なくとも弱い相互反応をすることができ、分離される混合物内にある溶質の集合体は、“被検体”として称される。充填剤が設計される被検体であるが、ある環境下においては、非ペプチド的な小さい分子がこの群に入ることができることから、たいていの被検体は、タンパク質又はペプチドである。密接に関連した被検体は、いっしょになって合成の又は生合成のライブラリーを形成し、該ライブラリーとしては、例えば、トリプシン消化物由来のもの、ファージ提示法ライブラリー、又は、in vivo又はin vitroで適当に転写されるランダムcDNAライブラリーの発現産物が挙げられる。しかしながら、充填剤の親和性は、標的群から逸脱する構造を有する被検体にとって、通常、急速に性能が落ち、標的と構造的に無関係の場合には、ゼロに近づく。
好ましいタンパク質又はペプチドは、5.5〜8.5の等電点plを有し、100〜500,000Daの分子量を有する。これらpl値は、第1の残基及び第3の残基の少なくとも1つに組み込まれた少なくとも1種の複素芳香族化合物構造の酸度pKaにほぼ合致する。本発明の充填剤における特に好ましい標的タンパク質は、“抗体”又はその混合物であり、その用語は、抗体の断片(軽鎖及び重鎖、抗原結合領域Fab及び定常領域Fc、可変領域Scなど)、そのような断片(二機能性抗体、三機能性抗体)由来の人工的分子構成物、抗体のオリゴマー化関連物、また、抗体含有又は抗体断片含有融合タンパク質、化学的に互いに結合もするGFP又はグルタチオンのような検出可能タグ(標識)を含むもののような他の型の複合体を包含する。ポリクロナール抗体、又はモノクロナール抗体であってもよい。一般的な免疫グロブリン(Ig、γ−グロブリン)のなかにおいて、抗体は、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMのいずれかに属し、そのそれぞれは、同様にいくつかのサブクラスに分割される。抗体は、ヒト起源であってもよく、他の動物(典型的に、ネズミ類又はげっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット)、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ウシ、ウマ)起源であってもよい。好ましい抗体は、ヒト抗体、又は、ヒト化(キメラの)抗体である。それらのイディオタイプは、全ての型の抗原(他の抗体、又は生物学的物質、小分子)に向く。
“タンパク質又はペプチドを含む混合物”は、様々なものを起源とする混合物である。
本発明において混合物を得る原料に関する厳格な制限はない。唯一必要とされることは、本発明の充填剤が少なくとも弱い受容体特性を示す被検体として適当である少なくも1種のタンパク質又はペプチドを含むことである。従って、混合物は、混合物(即ち、その全てが分離標的)の残留物から正確に分離されるか、又は、互いに分離(即ち、その1つのみ又はいくつかが分離標的)される2種又はそれ以上のタンパク質又はペプチドを含む。充填剤の残基によって認識される混合物内の少なくとも2種のタンパク質又はペプチドの構造的なモチーフ(抗原決定基 エピトープ)は、両者が、同質、類似、一部同一、又は異質である。後者の場合には、多くの場合、充填剤との異なる型の相互作用が起こると考えられ、従って、少なくとも2種のタンパク質又はペプチドが類似した分子量を有し、且つほぼ同数の認識可能なエピトープを有しているのであれば、結合強度が大きく異なることとなる。
タンパク質又はペプチドが天然界にあるもの、又は組み換えにより作られた物質である場合には、液体又は固体の生物材料のそのままの抽出物又は乾燥抽出物からタンパク質又はペプチドが得られ、生物材料としては、動物、植物、微生物、又はウイルス(過剰生産された形質転換種、品質改良種を含む)の細胞培養又は細胞培養媒体からの抽出物があり、微生物(細菌又は糸状菌)又は酵素発酵培養液、市販原料、又はそれらの組み合わせからの抽出物がある。これに代わり、タンパク質又はペプチドを含む混合物は、化学的合成又は部分的合成の粗産物であってもよい。混合物は、特に、手作業又は自動的様式で実施された固相ペプチド合成法の標準溶液を含む。
精製技術及び特にクロマトグラフィー技術のために特有なものとして、使用される正確な条件は、標的タンパク質又はペプチドの構造に影響されるだけでなく、試験サンプルの基質の構造にも影響される。“基質”との用語は、混合物の活性及び非活性成分の集合物のために使用され、標的が除かれるが、標的がなくなる媒体を包含している。これは、標的タンパク質又はペプチドの完全な特性が分離工程において通常利用されるわけでないが、標的タンパク質又はペプチドと、全て若しくはいくつかの特定の基質成分との間の特性の違いが利用されるという理由による。1種の単独被検体方法は、しばしば少なくとも同等の感度で全ての成分を検出できないことから、一般的に、基質の成分は、(量的及び質的の両方で)せいぜい部分的に知られているに過ぎない。化学的又は生物学的材料の単離及び精製の下流における異なる工程段階で得られた中間産物は、本発明と関連して異なる基質を示す。充填剤における吸着挙動が試験される全混合物(標的及び基質の組み合わせ)は、分析的な文脈で、しばしば“試験サンプル”と称される。
本発明の充填剤による処理の前に、化学的又は生物学的な粗材料は、さらなる非有害な装置単位の組み合わせによるさらなる事前処理、特に従来の分子処理によって部分的に精製されてもよく、該処理としては、多くの汚染材料(例えば、価値ある物質のみを残して、生物材料における不溶性物、タンパク質、核酸、炭化水素、脂質、無機物)を取り除くべく、濾過(精密濾過、限外濾過)、透析、電気透析、洗浄、沈殿、遠心分離、イオン交換、ゲル濾過、溶解、蒸発、結晶化、乾燥、破砕、ウイルス低減処理ができ、また、一般的なクロマトグラフィー(選択性の低い充填剤におけるクロマトグラフィー又は生物的残基を用いたアフィニティークロマトグラフィー)ができ、危険性のある又は凝集性のある物質、又は充填剤を劣化させ分離能を低下させると考えられる物質を、化学的又は生物学的材料から取り除き、それによって、充填剤に接触させる前に標的の濃度を高めることができる。これに関連し、LC/LC結合技術が参照される。凍結乾燥された又は冷凍乾燥された材料のような乾燥混合物は、充填剤によって処理される前に、適当な供給溶媒に溶解される。好ましくは、溶解された混合物は、均一に溶解され、懸濁物やコロイド受粒子がないように溶解される。同様に、本発明の分離方法は、上記の1又はそれ以上の工程と組み合わせることができる。
既に多くのタンパク質又はペプチドは、工業規模で生産されており、医薬、栄養剤(例えばダイエット用サプリメント)、化粧料、又は農業において利用法が見出されている。たいていの大規模生産物は、これまで、妥当な範囲枠内において経済的にバイオマスの抽出によって達成され、即ち、例えば、薬用植物、原核微生物又は真核微生物を利用した微生物発酵、又は、昆虫までの高等生物若しくはヒト細胞の細胞培養(例えば、頻繁に用いられるCHO、NS0、BHK、又は不死化HeLa細胞)から得られた生物材料の抽出によって達成されてきた。要するに、本発明における混合物の原料の多くは、それゆえ、微生物又は培養細胞、又は穀物抽出物から得られたもののような、生合成生成物である。
微生物発酵は、バクテリア株又は真菌(例えば酵母)株の液状培養又は液中培養を含む。生産物は、菌糸体及び/又は生産物が分泌される付随する培養媒体上澄みなどの、生物の全収穫物又は分離された部分から抽出される。半合成手順は、天然物質又は中間物質の下流における化学的改質、及び、合成原料の生体内変化を包含する。どの場合においても、副産物は、しばしば、イソ型タンパク質、切断型タンパク質、また、標的タンパク質又はペプチドへと通じる生合成経路に沿った蓄積した中間体、又は事後産物を含む。これは、さらに、普遍的に分泌される抗生物質、エンドトキシン、マイコトキシン、パイロゲン、細胞増殖の促進剤又は抑制剤、蛋白質分解酵素阻害剤、消泡剤、完全に消化されなかった栄養剤の残留物、部分的に消化された産物、また、高分子量成分、生産される有機物の最終段階の細胞溶解により生じる部分的に溶解しない成分(例えば、細胞破片)に付随して起こる。核酸やいわゆる宿主細胞のタンパク質の多くなどのさらなる物質を、抽出される媒体に放出することから、細胞溶解物は、しばしば、混合物の複雑さをさらに増加させる。
“分離”との用語は、本発明の分離方法と関連して、混合物をその一部に分離又は分割する全ての種類のもの、及び、異なる液体分画に分けるものを包含し、特に、液中に分子の状態で溶解している1種又はそれ以上の構造上異なる成分を分離、分割するものを包含する。混合物中の特に目立つ成分は、以前から、少なくとも1種の他の混合成分から分離される標的タンパク質又はペプチドである。従って、標的が1つに分画されること、副産物の集合物が他の1つに分画されること、又は、それぞれの混合物成分が他成分からそれ自体の分画に分離されるか否か、本方法がこれら極端なものの間に存在する何かを生む結果となるか否かは、重要なことではない。本方法を実施した後に得られる少なくとも1つの液体分画において、元々の(供給)混合物に既に存在する少なくとも1種の溶解されたタンパク質又はペプチドが増えるのであれば、それで十分である。分離された副産物は、分離液体分画として回収されることを必ずしも必要とされず、例えば、充填剤に結合したままそれ自体が捨てられることもある。価値のある所望の産物を含む分画において収量が減る分離工程を不完全なまま維持するのであれば、それは普通のことではない。溶出バンドが重なることを避けた優れた分画は、さらなる収量減少のコストにおける分離(即ち、純度)の質を高める。
“濃度”及び“純度”との用語は、混合物中におけるそれぞれの物質の、与えられた又は達成された分画含量に関連し、それによって、濃度との用語は、混合物中に全基準量における溶媒量を加味した溶液に関連し、一方、純度との用語は、(残存する水を含め)溶媒を考慮しない乾燥混合物(ときには仮説的)に関する。ほとんどの場合、これらは、重量又はモルの割合として示される(重量/重量、重量/体積、モル/モル、モル/体積)。従って、比較的高い純度は、比較的高い希釈(即ち、低い濃度)という犠牲を払って達成され、逆も同様であり、これは、特定の体系において達成されるより重要な目的の影響を受ける。本明細書で使われるこれら指標の正確な値を決定する測定は、HPLCピーク面積により、これによって、重量を除く定量的な方法が、検出性に優れない混合物成分に対する検出性に優れる混合物成分におけるある傾向を示し、直線的な校正曲線を作れないということが注目される。例えば、不溶性の材料は、HPLCによって定量できない。その原理、単離及び事前処理の方法により、混合物は、典型的には、標的タンパク質又はペプチドを(一体として)1%〜99%の純度、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%の純度で含み、残分は、構造上及び機能上標的と関連しない、残存した溶媒、試薬などの副産物又は化合物である。実際の精製目的によって、本発明の分離方法は、それゆえ、かなり希釈された混合物又は粗混合物からの最初の取り込み工程又は単離工程として、また、ほとんど純粋なタンパク質又はペプチドを含む既に前精製された混合物の最後の精製工程として用いられる。混合物の副産物及び他の構成成分の数は、1(例えば単点配列の転換又は欠失)〜基本的に無限数(例えば、未処理の生理学的試験サンプル)の範囲にある。副産物の種類は、粗材料及び処理前の材料の原料による。
“接触”との用語は、固相(固定相)としての充填剤とともに液相(移動相)において存在する最初の(供給)混合物の適当な処理に関連しており、該処理は、現象論上の(湿潤)、また、分子スケールでの(表面又は細孔拡散)相間における物理的接触によって達成される。形成される接触は、十分強いものであり、混合物の可能な限り全ての分子的には失われた成分であるが、少なくとも標的タンパク質又はペプチドが、残基の存在する充填剤表面の外部及び必要に応じて内部に届くことができるものであり、さらには反応することができるものである。混合物は、第1の液体(供給液体又は吸着液体)に溶解されることから、これは不均一過程であり、この操作工程を終わらせる時間制限はないものの、標的タンパク質又はペプチド、及び副産物の充填剤への安定的な結合平衡の確立が近づかない限り、得られる懸濁液を撹拌すること又は振ることにより接触の形成は巨視的に促進される。
本明細書において、“液体”との用語は、分離される混合物の1種又はそれ以上の成分に対して少なくとも弱い溶解特性を有する溶媒(最も重要なものとして水を含む)又は溶媒の混合物に関連する。各工程において採用されるそれぞれの液体は、標的の吸着(結合)、標的の脱離(排出)、充填剤の洗浄といった可能な所定の目的を満足しなければならないことから、異なる成分の液体は、本方法の異なる工程における充填剤の処理に採用される。クロマトグラフィー環境において、混合物の1種又はそれ以上の成分が充填剤と動的平衡変換することができる液体は、大抵の場合、移動相と称される。本発明の充填剤におけるクロマトグラフィー分離は、主に、強い極性及び疎水性相互作用の両方に影響を受けることから、個々の混合物成分に対して異なる溶媒化能を有する幅広い液体成分は、好まれる相互作用のタイプに応じて使用される。分離方法の過程における操作時間にわたるこれら相互作用の強さをさらに調節するために、前記過程内で用いる液体成分を徐々に変化させること、例えば勾配(グラジエント)混合が、時々は好ましい。それゆえ、所定の目的を満足させるために使う液体の成分は、採用される工程の全経過時間において一定である必要はない。膜に結合したものを除き、タンパク質は、元々の状態が保存され、凝集が抑制されなければならないのであれば、通常、高水分含量の液体の使用を必要とする。多くのタンパク質又はペプチドは、低〜中%濃度のジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、又は低量のアルコール及びグリコールを許容する。本発明の充填剤は、ほとんど全てのプロトン性及び非プロトン性の有機溶媒に対して化学的に耐性があり、特に、担体における固体支持材料が、液体と直接的に接触する唯一の材料である表面のポリマー膜によって遮蔽されている場合には、好ましくは、充填剤の膨潤を促進、又は、少なくとも前記ポリマー膜の膨潤を促進する極性液体が、主に採用される。相溶性のある液体混合物の実際の極性は、従って、その成分によって容易に微調整される。
さらには、そのような液体又は液体混合物へ、酸、アルカリ、又は緩衝剤などのような―好ましくは揮発性の―補助的な物質が加えられることが好ましく、これにより、利用される液体(一部が有機の溶離剤、見かけのpH)のpH調整によって異なる溶媒能の間での変換が可能であり、従って、選択された又は全ての被検体、及び/又は、選択された又は全ての充填剤残基のプロトン化度及び/又は脱プロトン化度を調整できる。不活性な有機塩又は有機塩を高濃度で加えることは、液体のイオン強度を変更するために、また、競合的相互作用によって被検体と充填剤との間のイオン対を選択的にこわすために有用である。しかしながら、製造上の利用においては、そのような非揮発性の塩を添加することは、標的タンパク質又はペプチドの純度を結晶化によってさらに高める場合に、回収する溶出液から後で取り除くことが困難である。
とある条件においては、タンパク質又はペプチドの分離において充填剤とともにさらに有機重合調整剤を使うことが有利であり、該重合調整剤は、液体pHの調整やイオン強度を超えてはたらく機構によって反応を起こす。“重合調整剤”は、低分子化合物、又は高分子化合物、又はその混合物に要約され、これ自体が溶解能を有する液体でなく、本発明の分離方法において採用される様々な1種又はそれ以上の液体に少量溶解又は懸濁し得るものであり、本発明の特定の工程において分離される混合物の成分を可溶化/溶出させることを助けたり抑制したりするために用いられ、又は、多くの二次的な(技術的)理由のために用いられ、該理由としては、例えば、溶媒の長期間にわたる保管及び保存、充填剤のバイオファウリングの抑制、被検体が化学的又は生物学的に劣化すること又は凝固することの予防、溶媒混和性の促進、充填剤の膨潤、被検体検出の改良、水構造の破壊、タンパク質の展開又は折りたたみ制御などがあり、これらは、それぞれの分離課題に影響される。有機重合調整剤の特別な例は、イオン対試薬、界面活性剤(洗浄剤)、及びカオトロピック試薬である。
“リンス”、“洗浄”、及び“再生”は、同じ充填剤を異なる種類の液体で段階的に処理することを区別するために用いられる異なる表現である。従って、液体は、課題とする目的よりもその成分によって識別される。処理の実際の手順は、従って、非常に類似しており、液体がさらに、溶解される物質に基づいて処理後に精製、分画、回収、又は破棄されるかどうかによって、しばしば決断が変わる。リンスは、充填剤に非特異的に結合した標的以外の混合物成分を充填剤から完全に溶出又は放出させる液体を用いた処理のことを指している。洗浄は、標的より強く結合する、残留して結合している混合物成分を充填剤から溶出又は放出させることを意図した処理のことを指している。再生は、洗浄液の残りを取り除くことができる、又は次に行う方法の始めにおいて吸着工程に使用する清浄な充填剤の理想的な物理的及び化学的特性を復元させることができる液体の使用を指している。
“固定化”は、充填剤表面のタンパク質又はペプチドの長期にわたる水平及び/又は垂直方向の移動を取り除く又は実質的に妨害する処理を意味しており、該移動は、静的な拡散移動(ブラウン運動)、又は方向性のある物理的又は化学的な力(例えば、浸透圧、せん断流)によって引き起こされる。表面の吸着部分における固定化されたタンパク質又はペプチドの巨視的な二次元的又は三次元的な位置は、それゆえ、短時間で固定されると見なされる。固定化の中心部分付近におけるナノメーターレベルの必然的な小さな変動、立体配座的変化、分子の回転又は振動、隣り合う結合サイト間での移動、タンパク質又はペプチドそれ自体及びタンパク質又はペプチドが結合する残基、また、表面残基のそれぞれの結合サイトの固定に利用される(必要に応じてポリマー性の)テザー(鎖)は、影響を受けないままで維持される。表面層に架橋によって結合したタンパク質又はペプチドの長期間にわたるゆっくりとした放出は、望ましい特性である。
成分を規定する中心的な実施形態においては、本発明は、優れた充填剤の標的特有の設計を指向している。官能基を有する固体支持材料は、続く表面の誘導体化のために使用され、標的タンパク質又はペプチドとの空間的な多価性及び/又は多機能性の相互作用に適した多数の残基の二次元的又は三次元的な配列が生じる。様々な残基を試験した後、前記複素芳香族化合物残基を含む充填剤が固定相として使われる場合には、二核及び単核の複素芳香族化合物残基を有する固体支持材料における官能基の一部の二重誘導体化により、続いて、クロマトグラフィーによりタンパク質又はペプチドを互いに分離、又は副産物と分離する優れた性能が発揮される。
それゆえ、本発明の一般的な態様は、固体支持材料を含む充填剤により説明され、その表面には、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む二環式複素芳香族化合物構造を有する第1の残基があり、また、炭素原子以外にN,O,Sのヘテロ原子のうち少なくとも1種を含む単環式複素芳香族化合物構造を有する第2の残基がある。
本発明のより詳細な態様は、“本発明の要約”の段落で具体化されている第1、第2、第3、及び第4の態様の充填剤により説明されている。
第3及び第4の態様の充填剤の説明のために用いられる“第1の残基及び第2の残基の両方を含む官能基がない”との用語は、担体表面の有効な官能基が5%未満であること、好ましくは1%未満であること、より好ましくは0.1%未満であること、さらに好ましくは、第1の残基及び第2の残基の両方を有する官能基がないことを意味する。
特定の実施形態においては、官能基が第1の残基及び第2の残基を有することを、分光法のような一般的な分析方法によって検出できない。
充填剤の固体支持材料は、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、デンプン、セルロース、アガロース、セファロース、及びデキストラン、又は、これらの複合物の群から選択される。
固体支持材料は、一般的バルク、又は、例えば、表面に官能基を導入するために、又は、水への濡れ性を高めるために、表面改質材料に属し得る。
特定の実施形態においては、充填剤は、光学吸収性のタグ(標的)、発光性のタグ、放射性のタグ、又は、質量若しくは高周波コードタグなどの容易に検出可能なタグを含む。タグは、充填剤の混合物において、個々の残基の組み合わせを有する特定の充填剤を特定するため、又は、タンパク質又はペプチドの結合の検出を促進するために用いられる。タグは、固体支持材料の中心に組み込まれるか、又は、その代わりに、表面の残基とともに組み込まれる。
上述したように、C,N,O,S−複素芳香族化合物構造は、特に、図3及び図4に記載するような、有機低分子の化学構造において示される。少なくとも1つの環内に少なくとも1つの窒素原子を含む複素芳香族化合物構造は、どちらの型の残基においても好ましい。典型的な複素芳香族化合物構造の環の核は、主に、C−C又はC=C部分に加えて、−NH−、C=N、−O−、又は−S−型の1又はそれ以上の部分が集合している。5員及び6員環の核は、特に好ましい。具体的なタンパク質又はペプチドに対する充填剤の特定の親和性の微調整は、各複素環式核及び置換基の慎重な選択、第1の残基及び第2の残基のモル比、必要に応じたさらなる残基の導入によって達成される。それゆえ、存在する需要に沿った充填剤を作るための概念的な枠組みが与えられる代わりに、完全なる多様性が絶対的に取り扱われることがないということが明らかである。
簡単に、唯一のメソメリー的な式が、図3及び図4にそれぞれの構造によって示されている。さらに、本発明の目的のために、“複素芳香族化合物”という用語の意味の範囲内において、たとえさらなる非複素芳香族の式があるとしても、そのような構造の複素芳香族の特徴における少なくとも1種の合理的なメソメリー性又は互変異性の式が存在する。環体系と、残基の残余部分及び最終的には固体支持材料との間の結合は、接合点としてのヘテロ原子における自由な価数を含む環の原子のいずれかを介して作られる。
特に、1又はそれ以上の弱い塩基性の窒素の環を含む、複素芳香族化合物構造のいくつかは、イオン性であり、電気的に中性な原子又はこれを含む官能基は、行われる分離の条件下(即ち、充填剤や被検体の構造的な完全性に影響しない、通常は穏和な周囲条件)において、可逆的にカチオン又はアニオンに変換(例えば、プロトン化又は非プロトン化)し、該カチオン又はアニオンは、周囲の状況において安定であるか、又は非電荷の状態で平衡になっている。より具体的には、充填剤のC,N,O,S−複素芳香族化合物残基は、少なくとも部分的に、プロトン化の影響を受けやすく、従って、少なくとも部分的に、プロトン化された態様で存在する。帯電した態様は、明確に図示されていないが、与えられた条件においていずれかの側にほとんど完全な平衡が実際に存在し、帯電した式及び帯電していない式の間に測定可能な共有的相互変換が存在する。プロトン化は、周囲のpHに影響を受けるが、多くの非プロトン性の有機溶媒においても一般的なものであり、充填剤によって示される親和性に、両方の式又はいずれか一方の式がかかわっていることを区別することを困難なものとしている。各残基の正確なプロトン化度は、その塩基性、濃度、また、使用される移動相に存在する酸の種類、及び充填剤の事前調整法における酸の種類に影響される。
具体的な分離目的によって、分離される混合物を、次の残基を有する充填剤で処理することが有利であり、該残基は、大部分が非電荷状態に調整されるか若しくは電荷状態に調整され、又は、分離中に1回以上電荷状態が変化する(例えば、弱いイオン交換能のものから既知の緩衝液に変更)。充填剤のイオン性複素芳香族化合物構造が部分的にイオン化される条件は、それぞれの複素芳香族化合物構造のpK値にpHが近づく条件で分離が実施される場合に容易に想像できるように、可能である。電荷状態での分離を実行している間に非電荷状態において充填剤を作ること又は保存すること、又はその逆も、必要であるかもしれない。
ほぼ中性の水性緩衝液体系を含む充填剤の事前調整は、特に、アミン構造を有するさらなる(第3の)残基が存在する場合に、好ましい。そのような処理は、いくつかのアンモニウム構造又は多のイオン性残基がある対イオンを均一に分布させることができる。被検体に対する残基の水素結合の強度は、周囲の溶媒和殻内に存在し、プロトン化された残基とイオン対を形成するとされる対イオンの性質により影響を受け、塩基性、及び/又は、<ハード>対<ソフト>分極挙動により影響を受ける。
さらなる置換基が、二環式及び/又は単環式のC,N,O,S−複素芳香族化合物構造にそれぞれ結合することができ、2つの構造に対して独立して選択される。典型的な構造として図5に示すように、置換基R1、・・・・Rnは、独立して、電子対、水素(H)、有機ラジカル、又は表面への結合を示す。特定の環形状又は置換基様式に限定されることを意図しておらず、C,N,O,S−複素芳香族化合物構造の好適な置換基は、下記の単純な有機ラジカルの1種又はそれ以上を含むものを具体的には包含する。C1〜C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキロキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキロキシ、アリールオキシ、アリールアルキロキシ、アルキルチイル、アルケニルチイル、アルキニルチイル、シクロアルキルチイル、アリールチイル、アリールアルキニルチイル、ハロゲンアルキル、ハロゲンアルケニル、ハロゲンアルキニル、ハロゲンシクロアルキル、ハロゲンアリール、ハロゲンアリールアルキル、ハロゲンアルキロキシ、ハロゲンアリロキシ、ハロゲンアリールアルキロキシ、ハロゲンアルキルチイル、ハロゲンアリールチイル、又はハロゲンアリールアルキルチイル。具体的には、置換基は、少なくとも1つのさらなる二環式又は単環式のC,N,O,S−複素芳香族化合物構造、又は、他の様式で結合したヘテロ原子を含み、特に、図3及び図4に示されたものからの1種を含む。また、2種又はそれ以上の置換基R1、・・・・Rnは、各種及びいろいろな長さの脂肪族系結合によって互いに結合し得るが、具体的には、多環式の構造を形成するように、上述した有機ラジカル又はその組み合わせのいずれかを介して結合し得る。しかしながら、永久的なカチオン交換基を有する置換基の、多核C,N,O,S−複素芳香族化合物構造への縮合(縮合環の数が3以上)は、除かれる。
好ましい二環式構造は、存在し得る全てのアザ−ベンゾピロール構造、オキサ−ベンゾピロール構造、及びチア−ベンゾピロール構造などのベンゾピロール(インドール)構造であるか、又は、存在し得る全てのアザ−ベンゾピリジンなどのベンゾピリジン(キノリン又はイソキノリン)構造である。好ましい単環式構造は、存在し得る全てのアザ−ピロール構造、オキサ−ピロール構造、チア−ピロール構造などのピロール構造である。また、3−アザピロール(イミダゾール)構造が特に好ましい。
本発明における完全に合成された充填剤は、表面に結合した残基自体が大抵の場合にタンパク質又はペプチドまたなその一部であり、既知の擬態的で生物学的なリガンド−受容体が相互作用する、従来のアフィニティー媒体と区別されなければならない。一般的に、そのような媒体は、初期の段階で問題を被る。天然アミノ酸のトリプトファン及びヒスチジンは、それぞれ側鎖において、二環式又は単環式のC,N−複素芳香族化合物構造を有することから、連続固相合成技術によって容易に作られるポリペプチド残基又は官能基が保護されたその変異体は、本発明の残基として理論上は適当なものである。トリプトファン、ヒスチジン、そのエステル化物、そのカルバメート誘導体、又は、残基としてそのいずれかを有するペプチドのいずれも、本発明の範囲内ではないことが明確にされる。しかしながら、トリプトファン又はヒスチジンに関連する成分を含む、主に非ペプチド性の合成された構造には、上記の事項は当てはまらない。
各残基をほぼ等しい程度に誘導体化することが好ましく、即ち、第1の残基及び第2の残基は、約1:1のモル比で存在し、より広い意味では、少なくとも3:2〜2:3で存在する。結合する第1の残基及び第2の残基の誘導体化度の合計は、混合成分の多くの相互作用サイトの形成を促進させるべく、好ましくは、(誘導体化可能な置換基の数に対して)少なくとも50%近くに維持され、一方で、標的タンパク質又はペプチドのための充填剤の結合能を高く維持する。第1の残基及び第2の残基の両方は、例えば、それぞれ25%に近い誘導体化度で存在し得る。好ましい第3の残基(下記参照)は、アミン又はアミド構造、より好ましくは、一級アミン構造を有する。そのような場合、第1の残基、第2の残基、及び第3の残基は、それぞれ約1:1:2のモル比で存在する。これら値の約10%の相対偏差が受け入れられる。
一実施形態においては、官能基の5〜95%が前記二環式及び単環式の複素芳香族化合物構造に結合し、好ましくは15〜85%、より好ましくは25〜75%、さらに好ましくは35〜65%、最も好ましくは40〜60%が結合している。第2の残基に対する第1の残基の割合は、自由に選択されることから、例えば、前記タンパク質又はペプチドを含む混合物からタンパク質又はペプチドを分離するといった、特定の分離課題に対して充填剤を上記の範囲内で最適に調整することが可能であり、又は、前記タンパク質又はペプチドを含む混合物からのタンパク質又はペプチドの濃度及び/又は純度を最適に増加させるように充填剤を調整することが可能である。このような変幻自在性は、上記の分離又は純度課題及び/又は増加課題にとって、本発明の充填剤が特に有用であることを表している。
従って、一実施形態においては、官能基の5〜95%が、前記二環式及び単環式の複素芳香族化合物構造に結合し、好ましくは15〜85%、より好ましくは25〜75%、さらに好ましくは35〜65%、最も好ましくは40〜60%が結合し、第1の残基及び第2の残基は、3:2〜2:3のモル比で存在する。
残基接触の型は、共有結合の変位型(ホモアトミック、ヘテロアトミック、様々な結合様式)でもよく、また、固体支持材料の表面で又はその表面を覆うポリマー膜で官能基と直接的に作られたものでもよく、主鎖に、又は、直鎖状又は分岐鎖状の側鎖に結合していてもよく、又は、二官能性の結合剤の末端を介して結合していてもよい。標的タンパク質又はペプチドと選択的に相互作用させるための第1の残基及び第2の残基の指定部分である複素芳香族化合物構造に加えて、これらの残基は、共有結合性の結合剤(リンカー)を含み得る。そのような二官能性のリンカーは、長さや化学的成分においてかなり幅広いものであるため意図的に図示されていないが、標準的な固相合成法又は生物コンジュゲーション(例えば、サクシニル)によって知られ、最も単純な二官能性のリンカーは、1〜20の予め決めた原子数のアルキレン鎖である。最も適したリンカーは、立体配剤的に柔軟なものである。ポリマー膜の全残基と結合する好ましい共有結合性の結合は、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、二級/三級アミン結合である。
本明細書において記載の必要があるものは、リンカーとして用いられる特に長いアルキレン鎖又はポリエチレングリコールの部分が、複素芳香族化合物の一次的な作用の重複又は拡大によって、前記タンパク質又はペプチドに大きく非特異的な疎水性の力をさらに発揮するということである。しかしながら、上述したように、容易に合成され活性化された表面に接合する硫黄含有リンカーは、本発明の範囲にない。その理由は、被検体の表面における同じ種類の分子に関連する官能基に硫黄原子又は硫黄含有官能基が良好に相互作用することがよく知られており、本明細書で示された充填剤の結合機構をそれ自体において妨げる特有な選択性を導くという事実があるからである。
それゆえ、そのような付加的なリンカーと、固体支持材料及び/又は複素芳香族化合物構造との間に接合によって形成される付加的な化学構造が様々な被検体に接近可能であること、従って、標的タンパク質又はペプチドの選択的保持における補助になることは、除かれない。それぞれの残基の一部としての複素芳香族化合物構造と、固体支持材料との間における付加的な構成要素の化学成分に関する唯一の制限は、操作中、保存中、及び充填剤の使用中に適用される条件による化学的な安定性及び相溶性が要求されるということにより与えられる。それゆえ、各残基が、副構造としての特定の接触点を介して、同種及び/又は異種のさらなる残基を有する比較的高い複雑性(ポリマーを包含する)の場に組み込まれるということが可能である。
残基は、固体支持材料のバルク表面に直接的に結合でき、具体的には、前記表面の官能基と共有結合を形成することにより結合できる。例えば、シリカ表面のシラノール基と前記とを結合させるために選択する方法は、クロロシラン末端又はアルコキシシラン末端リンカーの助けにより実施され、一方、炭水化物支持体のヒドロキシ基への結合は、従来の臭化シアン活性化などの様々な方法によって達成される。これらの方法は、当業者に十分に知られている。
しかしながら、好ましい実施形態においては、固体支持材料は、官能基を有するポリマーの膜で表面が覆われた担体のみを示し、前記ポリマーは、同様に、第1の残基及び第2の残基、また、必要に応じたさらなる残基を有している。従って、互いに離れた、充填剤の被検体と相互反応する部分及び巨視的な形状規定部分を動かし、表面全体のトポロジーを大きくは変えず、それゆえ表面の一部であると考えられる薄い中間層が形成される。残基は、採用された基礎ポリマーを少なくとも部分的に誘導体化されたコポリマーに変わる前記ポリマーの官能基に接触する。官能基を有する好ましいポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、これらポリマーの少なくとも1種を含むポリマー混合物、又は、コポリマーである。特に、固体支持材料が、担体としてポリマー材料を含む場合、即ち、担体の表面がポリマーの膜でさらに覆われているが、非ポリマー性の担体が使われている場合には、担体を構成する材料は、ポリマー膜を構成する材料と異なる。そのような違いは、例えば、異なるモノマー組成、重合の位置化学又は立体化学、立体規則性(タクティシティー)、分子量分布、架橋度、又はそれらの組み合わせによって現れる。
従って、ポリマー膜の厚さ、分離動力学、充填剤の性能は、ポリマーの膨潤状態に影響され、膨潤は、常に移動相成分の作用であり、異なる外部条件によって変化し得る。水性媒体中又は混合水性媒体中で実施されるタンパク質又はペプチドの分離のために、そのような媒体中でポリマーが膨潤することが好ましい。上述したように、イオン性残基の電荷特性は、溶媒にある程度影響されるポリマー膜の膨潤性に影響を与える。“水性”との用語は、水を50体積%以上含む液体を示し、残りは、水に溶解する他の溶媒、又は、無機又は有機の緩衝剤又は塩類などの添加物である。
そのようなモルフォロジー(形態)は、細孔分散を介した移動相及び固定相の間の物質移動速度をかなり高く維持するために設計される。直鎖状又は分岐鎖状のポリマーそれ自体は、ポリマー膜が分離工程における条件に耐えることができるように、硬くて丈夫な担体の表面に永続的に固定される必要があり、その条件のためにポリマーは作られ、全工程中において位置を保つ。固定は、ポリマーネットワークの形成をもたらす個々のポリマー鎖の内部架橋によって、又は、鎖に沿った1又はそれ以上の位置での担体固体に対する個々のポリマー鎖の接合によって達成される。架橋も接合も、ポリマーの同種又は異種の官能基の間で、又はポリマーにおける官能基の間及び被覆されていない表面に存在する官能基の間で、容易に達成される。ポリマーの好ましい架橋又は接合の接続は、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合(尿素結合)、又は二級アミン/三級アミン結合によって作られる。個々のポリマー鎖における末端官能基は、接合に最も好適に用いられ、これにより、最も優れた鎖の柔軟性が与えられ、端と端が合った構造になる。
両技術の組み合わせは容易であるが、通常、それらの1つで十分である。固定化の好ましい方法は、架橋(接合なし)である。従って、ポリマー鎖は、架橋できる官能基の数に対して1%〜20%の範囲で互いに共有結合的に架橋し得る。
従って、架橋試薬が1種又はそれ以上の被検体と相互作用するのに適した化学構造を有する場合、さらに追加の残基は、原理上、ポリマー膜への架橋の導入によって生じる。ポリマーの架橋度は、好ましくは、同等に低い百分率であるため、それらの寄与は、ほとんど無視できると考えられる。同じことが、さらなるアミド基(例えば、ホルミアミド)又はウレタン基の寄与に当てはまると考えられ、該アミド基又はウレタン基は、不定量で残存するが、通常1%未満であり、アミノ官能基を含むポリマー膜の合成結果として、非完全な加水分解反応を経て、結果として統計的なアミン/アミド又はアミン/ウレタンコポリマーとなる。
それにも関わらず、2種又はそれ以上の異なる第1の残基、及び/又は、2種又はそれ以上の異なる第2の残基によって、それぞれの部分的構造の決定に沿って、固体支持材料を誘導体化することは可能である。そして、これらは、複素芳香族化合物構造において、又は、固体支持材料の表面へのこれら構造の結合方法によって、又はその両方において、互いに異なる。好ましい実施形態においては、第1の残基の総数及び第2の残基の総数(又は、それぞれの誘導体化等量)は、ランダム(統計的)で空間的な残基分布という条件下において、異なる第1残基及び第2残基を含む混合成分の結合サイトを最大数にするためには、ほぼ同等である。
通常、及び好ましい実施形態においては、第1残基及び第2残基は、互いに直接結合していないが、固体支持材料、又は、担体としての固体支持材料に支持されているポリマー膜に別々に接触している。単環式及び二環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造の両方は、2つの区別できる構成要素であり、それぞれは、固体支持材料又はポリマー表面へのリンカー(結合剤)を有し、該リンカーは、―本実施形態において―、その間の最も短い結合経路を形成している。そのような形成により、構造によって第2の残基を第1の残基と容易に区別できる。従って、二環式の複素環式芳香族構造及び単環式の複素環式芳香族構造は、1種の同じ官能基を介して支持材料の表面に結合している。
一方、同種又は異種の1又はそれ以上の残基は、共有結合により互いに直接的に結合され、該共有結合は、ポリマー膜の主鎖、又は、他の方法で固体支持材料の表面を含まない。そのような場合、充填剤の誘導体化履歴(即ち、誘導体化工程の順序及び種類)が知られている場合に、残基は重要なものであることから、個々の残基間の境界は、不明瞭なものとなり任意なものになってくる。図1のA〜Hに図示しているように、固体支持材料における2つの官能基は、様々な方法により2つの異なる残基で誘導体化される(水平方向の長い波線は、それ自体がさらなる残基を有する表面の一部を表す)。
それぞれの官能基が1つの残基を有している(化学式A又はB)上述の等しい分布の場合に加え、例えば、同じ官能基において、連続して一列に配列する(化学式C,D)、又は、並列に配列するものがある。そのような立体配座は、実験的に達成され、とりわけ、残基自体が、ポリマー又は表面の官能基と同じ又は異なる官能基を含むときに達成され、その官能基は、前記第1の残基によってポリマー又は表面の官能基が誘導体化された後に、それ自体が第2の残基によって(必要であれば脱保護及び/又は活性化)誘導体化されている(Cの場合)。又は、そのような立体配座は、1つの官能基が少なくとも二重に(1回の工程又は多くの連続した工程で)誘導体化され、一般的な官能基(Gの場合)又はリンカーを有する分岐した構造(Eの場合)が両残基によって共有されている(適当な例は、三級アミノ部分又は第四級アンモニウム部分を作るための一級アミノ基の二重又は三重のアルキル化)ときに達成される。しかしながら、得られた立体配剤C,D,E,Fは、他の経路によっても達成され、その経路では、官能基を有する表面又はポリマーが、正確に相互配向している第1の残基及び第2の残基を既に有する単一の誘導体化試薬によって誘導体化される。マクロ環体系又は多環体系(F及びHの場合)のように両残基が相互に複合したものも、もちろん考えられる。Aを除いた全ての場合、第1の残基で誘導体化された官能基の第1部分は、第2の残基で誘導体化された官能基の第2部分と常に等しい。
上記の全ての事例は、統一的見解において、より一般的な場合に対する境界のものに関連し、一般的な場合には、個々の残基は、階層的に配列されている。この説明に従い、本発明の特別な実施形態においては、第1の(より大きい)残基は、二環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造に加えて、第2の(より小さい)残基を含み(逆も同様)、これにより、大きい残基は、図1のIの概要図に示すように、固体支持材料の官能基を直接的に誘導体化するように選択される。そのような場合、第2の残基における全ての原子及び化学的部分は、第1の残基にも含まれる。即ち、1つ又は2つのみの区別可能な異なる残基があり、そのそれぞれは、単環式及び二環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造の両方を有する共有結合的に結合した構成要素を含む。そのような階層的な配列において、基本的にどのような型の結合及び配置(直鎖、分岐鎖、環状鎖など)が実現化され、第2の残基における原子及び構成要素が、第2の残基で覆われていない第1の残基の残部分に接触する。そのような状況下において、しかしながら、異なる2つの残基へ構造的な階層を分割することは、形式的に重要なことであり、境界において、化学的特性は、不可欠の化学単位として構造全体に特有であろう。従って、2つの残基における構造上の副単位の共有的な配向に関して、第1の残基及び第2の残基が一般的な1つの複素芳香族化合物の環体系を共有しないことを除いて、多重配置が可能である。
上記例の1つが全体像の観点で再度実験されると、そのような立体配座は、とりわけ、2つの異なる複素芳香族化合物が一般的なリンカー又はその一部を共有しているときに実現され、リンカーを介して複素芳香族化合物構造が固体支持材料の表面に接触する。従って、2つの複素芳香族化合物構造は、リンカーが分岐構造を有する場合に、同じ分岐又は異なる分岐に直線的に配列する。全体の残基、即ち可能な限り大きく均質な構造単位(表面の官能基及びそれにつながる基礎構造で終了するリンカーを含む)は、―単に形的に―、第1の残基に起因する。一方で、第2の残基は、―また、形式的に―、そのような立体配座において、ただ、それぞれの単環式の複素芳香族化合物構造を含み、全(第1の)残基の残部分を有する直に接続する要素を含む。
驚くべきことに見出された点は、上述した2つの構造的な特徴の組み合わせを有する充填剤は、多くのタンパク質又はペプチドの容易な回収を可能にし、ある場合には、部分的に精製されただけの混合物から始めた1工程によって、98%以上の純度になり、最終的な濃度が1%未満の不純物のものとなる。従って、医薬品等級のものが面倒で厄介な工程をしなくとも得られる。工業的規模で直接作られたもののような粗材料におけるタンパク質又はペプチドの濃度も、1工程によって高い水準に上げられる。可能な力価は、混合物内において約1%〜90%の範囲である。前記工程による回収量は、従って、少なくとも従来の精製方法によるものよりも高く、95%に達し得る。必要とされる2つの複素芳香族化合物構造の一方のみ、又は、密接に関わり合っている残基を含む充填剤は、大抵の場合、中程度の分離効果を示すことから、本発明の課題に対して、2つの異なる複素芳香族化合物構造の両方を有する残基を含む充填剤の非常に優れた性能は、驚くべきものである。
理論付けることを願わなくとも、誘導体化されていない単純なポリマー性のアミンで覆われた吸着と比較して、この特定の充填剤の優れた性能は、付加的な且つ構造的な優れた多価性の結合サイトの存在によるものである。そのような優れた結合サイトの作製に寄与する構造は、主に、ポリマーの部分的な静的改質に起因する。これらの構造のなかで、特に挙げられるものは、電子に富んだ又は電子に乏しい延ばされたπ−体系、及び/又は、前記結合サイト内における塩基性の弱い共役体系の潜在的な存在である。あり得る相互作用の様式は、静電力、電荷変化、水素結合のような極性/両性官能基に付随する相互作用、また、疎水相互作用、π−スタッキングなどの無極性官能基に付随する相互作用の両方を含むと考えられる。π体系のヘテロ原子は、電子的なπ体系それ自体又は他の孤立電子対を経る、双極子力水素結合の潜在的なサイトであると予測される。しかしながら、分離における正確な機構を調査すること、及び全ての結合強度に対する各残基の部分的な寄与の正確な種類を調査することがなくとも、溶媒分子と競合する水素結合の形成は複雑であるため、明確な議論は、そのような構造において予め導き出されない。立体因子は、設計される充填剤の選択性に付加的に寄与する。少なくとも、第1の残基又は第2の残基からの純粋なイオン性の寄与は、ないか、又は除外される。
さらに、異なるように誘導体化された多くの充填剤を試験した後に、際だって見出された点は、第1及び第2の残基を有する固体支持材料の表面に官能基の第1部分及び第2部分がさらに誘導体化された第3の残基の存在は、本発明の分離において、優れた結果をもたらすということである。従って、固体支持材料は、補足的な第3、第4、及び第5の残基などでさらに誘導体化され得る。第1の残基及び第2の残基に加えて、上述したように第3の残基が表面にある固体支持材料を含む充填剤は、それゆえ、本発明のさらなる実施形態である。単環式及び二環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造は、第3の残基及びさらなる各残基の構造的な構成要素としては除外される。この除外とは別に、第1の残基及び第2の残基のために図1に示したように2つの残基の間の構造的な関係に関わる選択肢は、同様に、第3の残基及び第1の残基、第3の残基及び第2の残基、また、さらなる残基環の相互作用に適用される。異種のさらなる残基のそれぞれは、タンパク質又はペプチドの特別な結合サイトを作る溶媒の潜在力を促進し、タンパク質又はペプチドを密接に関連した副産物と区別する。しかしながら、誘導体化度がかなり小さいことは、大抵の場合、統計学的に無視できることから、残基の各種類は、少なくとも約20%の誘導体化度で存在する。大部分の利用のために、ほぼ同じ誘導体化度で、残基の種類数を5以下に維持することで十分である。異なる残基の数及び相互比にかかわらず、残基の各型は、固体支持材料の表面に均質に且つランダム(統計的)に分布されている。
官能基の前記第1部分が官能基の前記第2部分を含むか、又は互いに異なる一方で、第3の残基は、第1の残基及び第2の残基の一部を有する固体支持材料の表面官能基における非完全な誘導体化からも生じる。使用される試薬及び合成条件によって、誘導体化の反応は、しばしば不完全なままとなる。それゆえ、誘導体化されない一定数の官能基が意図的に、又は技術的な理由により残り、該官能基は、付加的なベースポリマーを含む誘導体化される固体支持材料(即ち、関連するモノマー又は繰り返し単位の少なくとも1つが組み込まれたもの)の表面全体にある。これらは、様々な被検体に接近でき、結合サイトの補助的な部分として作用でき、標的タンパク質又はペプチドの結合において役に立ち、従って、充填剤の分離能力を強める。即ち、官能基自体の第3部分(残部)は、前記第3の残基の1種として存在する。本発明においては、ポリアミン膜、特にポリビニルアミン膜で覆われた固体支持材料を採用することが好ましい。従って、好ましい官能基は、補足的な第3の残基として見なされる一級及び必要に応じた二級のアミノ構造である。官能基の明らかに高すぎる誘導体化の割合は、分離目的における選択性の低下につながるということも示される。この事実は、優れた多重機能性の結合サイトが、空間的に近接した誘導体化されていない官能基及び第1の残基及び第2の残基を含む充填剤内で生じるということの示唆として捉えられる。
そのように設計された三級への誘導体化、又は、非完全な一級若しくは二級への誘導体化によって、タンパク質又はペプチドの選択性は、多くの場合、さらに高められ、そして、関連する実践的な利点として、固体支持材料の表面を覆う付加的なポリマー膜は、第1残基及び第2残基並びに官能基の相対的な極性の影響を受けて、付加的な化学安定性、及びより優れた溶媒相溶性又は膨潤特性を獲得することが観察される。それにもかかわらず、被検体に対して一級アミノ官能基の主鎖のみを示す架橋されたポリビニルアミンのように、全く誘導体化されていないポリマー膜は、本発明の分離目的を十分に達成できないことから、第1残基及び第2残基は、特異性という用語における分離目的を達成するための最も優れた残基であるということが記載される。理想的には、残基の全密度(補助的な残基として作用する誘導体化されていない官能基を含む)は、0.1モル dm-3〜1.0モル dm-3、好ましくは少なくとも約0.3モル dm-3である。
一方、固体支持材料又は付加的なポリマー膜における誘導体化されていない反応性の官能基、より具体的にはアミノ官能基は、しっかりと捉えられることとなる標的に対して、又は、分離される混合物の反応性副産物に対して、―低い濃度で存在している場合であっても―、かなりの可逆性又は不可逆性の反応性を示し、そして、繰り返して使用した後に、充填剤が徐々に劣化し、結合能が失われていく。そのような意図しない相互作用を避けるために、前記官能基の最終的な<端キャップ>によって、そのような残基官能基を不活性化することがクロマトグラフィーの固定相の作製において一般的に実践されていることである。従って、さらなる(第3又は第4の)残基が、元々自由な官能基の少なくとも部分的な変換によって、構造的に異なる端キャップされた官能基へと変えられる。端キャップは、このような方法で、誘導体化反応の特別な場合として見なされ、該誘導体化反応は、固/液界面における親和性を改善し、該親和性は、それぞれの被検体、マトリクス、及び移動相の要求に付随するが、該移動相は、さらなる結合強度をほとんど生じさせず、また、さらなる選択性も生じさせない。それにもかかわらず、残基官能基の部分的な又は完全な端キャップは、固定相作製のさらなる努力にもかかわらず、長期間における工程の安定性の観点で、最終的には好ましいものとなり得る。
好ましくは、アミノ基のような求核性の官能基の端キャップは、官能基の求核性を減らす反応を経て達成される。端キャップのための官能基は、幅広い被検体と、弱い強度でただ非共有結合的且つ非特異的に少なくとも相互作用するように、又は相互作用しないように、また、固定相全体の極性をあまり変えないように、単純な分子構造となるように設計される。しかしながら、これらは、基質との多様な相互作用において、第1の残基及び第2の残基の高い誘導体化度において役に立つと考えられる。非完全な又は混合された端キャップによる、二重以上の混合された三級誘導体化可能性があるにもかかわらず、充填剤全体において均質な端キャップをすること(即ち、95%を超える)、又は全く端キャップしないことのいずれかを目指すことが好ましいということがわかってきた。形式的に処理された場合、端キャップ用の官能基の構造によって、端キャップ用の官能基は、三級残基の役割を果たしたり果たさなかったりする。
方法の第1の実施形態においては、本発明は、上述した特徴を有する本発明の充填剤を製造する方法を指向している。その方法によって、特別な等級の充填剤を得ることとなり、該充填剤においては、固体支持材料が担体からなり、その表面が残基を有する官能基を含むポリマーの膜で覆われている。この好ましい等級の充填剤における特別な特性は、上記において広く説明されている。前記製造方法は、少なくも下記の工程を含む。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(a)ポリマーの膜を担体の表面に吸着させる(“吸着工程”)、
(b−I)吸着されたポリマーにおける官能基の所定部分を少なくとも1種の架橋剤により架橋させる(“加工工程”)
又は、
(b−II)吸着されたポリマーにおける官能基の所定部分を担体に接合させる(“接合工程”)、
(c)ポリマーにおける官能基の所定部分を、二環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造を有する第1の残基及び単環式のC,N,O,S−複素環式芳香族構造を有する第2の残基により、また、必要に応じてさらなる残基により、誘導体化する(“誘導体化工程”)。
上記の製造方法が広がったいくつかの変形例があり得る。まず、工程(b−I)及び(b−II)、それぞれ架橋及び接合は、同等に代替可能と考えられ、これら工程のいずれか一方は、上記した特徴を示す本発明の充填剤を作り上げるための方法を実施するのに十分である。両者は、溶出性の強い溶媒で処理されたとしても、さらなる充填剤の処理又は使用の条件下において、担体にある吸着されたポリマーの永続的な固定という目的を満足させるための手段として役立つ。ポリマー鎖と物理的に絡んだ担体(架橋)との間のさらなる共有結合の連続的なネットワークの形成、又は、各単一のポリマー鎖と担体(接合)との間の共有結合の形成のいずれかによって、これは達成される。もちろん、固定のための両方の工程は、充填剤の安定性の問題を被ることなく、方法において、同時的な1つの工程へ、又は、2つの区別できる連続する工程へと組み合わされ得る。
次に、吸着工程(a)に関連して、誘導体工程(c)の相対的な順序に関して、さらなる変形が可能である。考えられることは、最初に均質な溶液中で残基によってポリマーを誘導体化し、続いて既に残基を有する誘導体化されたポリマーの膜を適当な担体に吸着させることである。そのような手順は、それぞれ異なるように誘導体化されたポリマーを被覆する工程の実験的な条件を最適化し調査するために必要であろう。好ましい変形例は、それゆえ、薄くて均質な層を得るべく、誘導体化工程(c)と同時又はそれより前に吸着工程(a)が実施されるように、最初に、誘導体化されていないポリマーを担体に吸着させるものである。
架橋工程(b−I)又は接合工程(b−II)は、一端架橋されるとポリマーが膜として吸着することが困難になることから、それぞれ、どの場合でも、吸着工程(a)の後に続く。さらなる結合条件として、工程(i)は、常に、手順の最初の工程となる。総合すれば、前記2つの独立した工程の変形における次の4つの組み合わせ(工程(a)及び(c)の相対的な順序と組み合わせた工程b−I又はb−IIの選択)が可能である。
第1の方法:本発明の充填剤を製造する方法であって、下記のステップを含み次の順序で行う。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)吸着工程(a)、
(iii)架橋工程(b−I)、
(iv)誘導体化工程(c)。
第2の方法:本発明の充填剤を製造する方法であって、下記のステップを含み次の順序で行う。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)誘導体化工程(c)、
(iii)吸着工程(a)、
(iv)架橋工程(b−I)。
第3の方法:本発明の充填剤を製造する方法であって、下記のステップを含み次の順序で行う。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)吸着工程(a)、
(iii)接合工程(b−II)、
(iv)誘導体化工程(c)。
第4の方法:本発明の充填剤を製造する方法であって、下記のステップを含み次の順序で行う。
(i)官能基を有するポリマーを供給する、
(ii)誘導体化工程(c)、
(iii)吸着工程(a)、
(iv)接合工程(b−II)。
手順における各工程は、直前の工程の完了の結果における状態のポリマーを用いて実施されるように意図されており、即ち、架橋工程又は接合工程に続く誘導体化工程は、既に架橋された又は接合されたポリマーを用いて実施され、一方で、吸着工程の前の誘導体化工程は、自由で吸着されていないポリマーを用いて実施される。ポリマーの官能基の所定部分が特定の工程において反応し、また、同様な部分が既に前段の工程において反応した場合には、特定の工程における所定部分は、前段の工程で余り反応しなかった官能基(二価又は多価の官能基は除く)の総計から取り除かれる。原理上、4つすべての方法は、同程度の結果を生む一方で、最初の方法は、実際上の単純さのために好ましい。
これまでのところ明確に述べていないさらなる変形例においては、ポリマーの官能基の第1部分は、溶液中で誘導体化され、次に、部分的に誘導体化されたポリマーが吸着され、上記のように同種又は異種の官能基の第2部分が、上記のように同種又は異種の残基により吸着されたポリマーにて誘導体化される。又は、ポリマーの官能基は、まず、異なる官能基又は残基前駆体に溶液誘導体化によって変換され、そして、吸着の後に、最終的な残基へと変換される。個々の残基が製造工程のそのような組み合わせによって導入される最も合理的な順序は、従って、特定種の担体材料、及び、担体における部分的に誘導体化された特定のポリマーの吸着しやすさの影響を強く受ける。
層における分子内及び分子間の架橋は、安定な二次元、好ましくは三次元のポリマーネットワークを形成し、また、<覆われていない>担体媒体からの脱離を抑制する。架橋は、従来知られた手順によって、また、電子化学、光誘起又は(電離)放射線誘起方法などのポリマー鎖のどこでもラジカル種を作り出すことを基本とした非選択的な導入方法によっても達成されるが、架橋工程は、好ましくは、架橋剤を用いてポリマーの官能基間においてのみ実施され、架橋剤は、例えば、前記官能基との縮合反応を受けるように設計される。長さが1〜20原子の間でありα,ω−二官能性縮合試薬のような直鎖状で立体配座的に柔軟な分子は、架橋のために好ましい。また、異なる長さ及び/又は異なる反応性及び/又は異なる分子鎖の剛直性の架橋試薬の2種又はそれ以上が、好ましくは、連続した工程において採用され得る。架橋は、完全な様式では実施されず、剛直な材料を作り出すが、常に事前に決定した程度であり、即ち、ポリマー官能基の所定部分により、利用されるポリマー官能基と関連する添加架橋試薬の化学量論的な断片を介して容易に制御可能である。この点で、好ましい架橋試薬は、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、及び、ビスエポキシド、例えば、1,10−デカンジカルボン酸、又は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が剛直な架橋剤として有用である。
架橋試薬は、選択的に選ばれ、ポリマー膜内でのみ安定な架橋を達成するように、ポリマーの官能基と特異的に反応するが、テンプレートとも担体材料とも反応しないが、該反応は、ポリマー膜と担体表面との間だけではない。いずれにしても、後者の型の付加的な架橋を中程度の数で達成することは、充填剤の特性を大きくは変えない。
さらなるキャップ基が望まれる場合、事前の誘導体化が完全でなければ、これらは、工程の最後に導入される(特定の残基を用いた誘導体化の後)。端キャップは、原理上は、上述した特定の誘導体化工程を同様に実施される。しかしながら、高活性試薬へと導く活性化方法は、前段の誘導体化工程中に最も反応性が低いとされている官能基と反応する必要があるため、キャップ反応において有用である。好ましいものは、アシル酸無水物、塩化アシル、特に酢酸のそれら、又は、イソシアネート、イソチオシアネート、又はエポキシである。例えば、混合無水物のような2種又はそれ以上の異なるキャップ基を含む試薬又は2種又はそれ以上の異なる端キャップ試薬が採用される。ヨウ化メチル、硫酸ジメチル、ジアゾメタンといった良好な離脱基を有する他の典型的なアルキル化試薬を用いることも考えられる。従来知られたポリマー性及び非ポリマー性の固定相のための適当な他の端キャップ方法は、同様に使用される。通常、できるだけ多くの残基官能基の完全な端キャップが望まれるが、必要であれば、工程は、基本的に任意のキャップ度で止まるようにされる。
保護基によってポリマー膜の官能基又は残基の置換基を一時的に誘導体化することが可能である。前記官能基又は置換基は、従って、1種又はそれ以上の残基の導入中に、それぞれの誘導体化試薬との意図しない反応から保護され、該誘導体化試薬は、分岐化といった残基の制御できない蓄積や高次の置換基パターンの原因となる。いったん、残基が導入されると、保護基は、通常、再び取り除かれる。
担体の表面に膜として吸着されるポリマーの好ましい官能基は、一級又は二級アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、又はカルボン酸エステル基である。これらの官能基は、容易に、誘導体化され、生体適合化され、ポリマーの水溶解性を高める。吸着工程は、この媒体に懸濁した担体材料に対して実施することが好ましいことから、従って、方法において、水性媒体又は有機混合水性媒体に溶解するポリマーを採用することが好ましい。吸着工程それ自体は、原理上は、各工程で異なるポリマーを使って段階的に実施されるが、1種のポリマーを用いて実施することが望ましい(即ち、同じ型の官能基を有するポリマー、又は、同じ電荷を持つ官能基)。特に好ましくは、ポリマーは、5,000ダルトン〜50,000ダルトンの分子量を有する。
一般的に、本発明の充填剤の特性及び成分について上述したようなさらなる好ましい実施形態は、その製造方法に適用され、また、同様に前記方法で採用される材料に適用され、本文脈で繰り返す必要はない。
固着官能基、即ち、誘導体化工程において用いられる誘導体化試薬の活性化サイトは、基本的に、構造的、機能的、又は合成的要求に応じて、形成される結合サイトに接近するか、又は短間隔若しくは長間隔をおいて結合サイトから離れている。即ち、固着官能基は、構造を形成する結合サイトと活性化サイトとの間のスペーサー基と合体する。そのようなスペーサーは、剛直又は柔軟であり、そして様々な長さを有し、比較的長いスペーサー基は、しばしば、好ましい形状をうるべく、充填剤の結合サイトと標的タンパク質又はペプチドとの間の複合により必要とされる立体配剤的な優れた柔軟性に変換される。スペーサーは、まず、対応する複素芳香族化合物構造と別々の反応(できれば均質的に)においてつながり、完全たる残基と類似し形成された複合物とつながり、次に、必要に応じて脱保護の後に、ポリマーとつながり、又は、スペーサーは、まずポリマーとつながり、形成された複合物とつながり、そして、必要に応じて脱保護の後に、完全たる残基と形成すべく対応する複素芳香族化合物構造とつながる。2つの連結反応(つながりの反応)は、従って、同種又は異種のものとなり得る。一般的に、一級アミノ官能基を有するポリマーが膜形成ポリマーとして用いられた場合、アミノ基の窒素原子は、直接的に残基に組み込まれる。
好ましい誘導体化試薬は、アミン、エポキシ、カルボン酸、又はエステル、及びイソ(チオ)シアネートを含み、結果として、好ましいポリマー官能基とアミド結合、ウレタン結合、又はウレア結合が形成される。構造上、安定性上、及び便利上の理由により、官能基と残基との間のアミド結合の形成によって誘導体化工程が実施されるのであれば、それが最も好ましく、即ち、アミノ含有ポリマーと、末端カルボキシル基の誘導体化試薬との間、又は、カルボキシル基含有ポリマーと、末端アミノ基の誘導体化試薬との間のアミド結合が最も好ましい。アミノポリマーとともに特に好ましい誘導体化試薬は、活性化されたカルボン酸誘導体である。
誘導体化の前に化学的活性化が必要であれば、誘導体化工程の前段、又は誘導体化工程と同時に、さらなる工程においてその活性化が実施され得る。ポリマー官能基、又は、好ましくは誘導体化試薬が活性化される。例えば、カルボキシル基の活性化は、固相ペプチド合成の標準的な技術によって実施され、例えば、OBt(ベンゾトリアゾリロキシ)又はONB(ノルボルネンジカルボキシミジロキシ)エステルなどの活性化エステルなどにより実施される。ヒドロキシ基は、同様に処理される。経済的に、また、好ましい実施形態においては、活性化は、ペプチド化学において知られている方法の助けを借りて誘導体化工程の間にin situで実施され、即ち、定常状態の活性化種の濃度が得られるが単離はされない1ポット反応として実施される。
両方の残基は、1つの誘導体化工程においてポリマー中に導入される。必要に応じて、既に両方の残基(又はその前駆体、それぞれ)を有しているか、又は、第2の残基を含む第1の残基を有する(逆も同様)、単一の誘導体化試薬が使われる。又は、少なくとも2種の異なる誘導体化試薬が混合物として採用され、そのそれぞれは、異なるが少なくとも1種の残基を含む。誘導体化工程は、代わりに、各残基を用いて、段階的に実施することができる。そして、最初の誘導体化工程で採用される誘導体化試薬は、第1の残基を含み、次の誘導体化工程で採用される誘導体化試薬は、第2の残基を含み、逆も同様である。
製造方法における一変形例においては、工程(iii)及び工程(iv)は、1つの工程として実施される。ポリマーにおける官能基の誘導体化反応において、第1の残基及び第2の残基の両方が、同時に容易に導入されるということを上記実施形態は、配慮したものである。これは、少なくとも2種の誘導体化試薬の混合物を使うという方法によって達成され、一方は、第1の残基を有し、他方は、第2の残基を有する。ポリマー主鎖に沿った2種の残基のランダムで不規則な分布が結果として得られるが、誘導体化されたポリマーは、第1の残基及び第2の残基の統計比率により特徴付けられ、該比率は、基本的に、少なくとも2種の誘導体化試薬の相対量及び反応性によって決定される。代わりに、誘導体化試薬が既に第1の残基及び第2の残基の両方を含む場合(又は、第1の残基が第2の残基を含む場合、逆の同様)には、1種のみの誘導体化試薬を使うことが可能である。通常、両方の残基は、得られた誘導体化されたポリマーに1:1の比で存在し、予め規定した相互的な位置化学及び立体化学にて存在する。2種の完全に改良された残基の代わりに、少なくとも1種の残基が前駆体としての誘導体化試薬に存在することも可能である。
本発明の製造方法の同じ変形例に沿って、第1の残基及び第2の残基の両方をそれぞれ有する誘導体化試薬の混合物が使用される立体配座が実現できる。特に、そのような混合物中では、第1の残基(又はその前駆体)の部分的構造が、誘導体化試薬において変化し、一方、第2の残基(又はその前駆体)が、そのままの状態を維持し、逆もまた同様である。具体的には、誘導体化試薬は、製造方法に従って、互いに結合し、その一定の量が第1の残基及び第2の残基の両方を含有し、一方、別の一定量が第1の残基のみ又は第2の残基のみを含有する。試薬量及び試薬反応性が同程度である場合には、得られた産物は一方の残基が他方より超過している。とりわけ、ポリマーの官能基における第1の残基及び第2の残基の、状況に応じた分布ではあるが均質でランダム(統計的)な分布が達成される。
第3、第4、・・・などのさらなる残基がポリマーに導入される場合には、誘導体化工程は、所望の構造を有するさらなる残基を採用して、必要に応じて、段階的に複数回繰り返される。経済的側面で可能なのは、約4回までの繰り返し工程である。好ましくは、各誘導体化工程は、ほぼ同じ誘導体化度で実施され、各残基の誘導体化度は、約25%である。
本発明の充填剤は、主に、タンパク質又はペプチドを含む混合物の精製に適用される。第2の方法の実施形態においては、それゆえ、本発明は、上述したような標的選択的に設計された吸着材を使い、前記タンパク質又はペプチド及びさらなる副産物を含む混合物から1種又はそれ以上のタンパク質又はペプチドを分離する、又はその濃度及び/又は純度を高める方法を指向している。本方法は、下記の工程を含む。
(i)第1の液体に溶解又は懸濁した前記混合物を、本発明の充填剤に接触させ、前記タンパク質又はペプチドが前記充填剤に結合できる十分な時間をおく、
(iii)結合した前記タンパク質又はペプチドを含む前記充填剤を第3の液体と接触させ、前記タンパク質又はペプチド前記充填剤から脱離できる十分な時間をおく。
上記方法の第1の変形例においては、第2の(洗浄)液体を用いた独立したリンス工程が工程(i)及び工程(iii)の間に含まれ、該液体は、充填剤残基と、精製されるタンパク質又はペプチドとの間の非共有結合を完全に破壊せず、タンパク質又はペプチドを脱離させるように作用する。混合物に含まれる副産物及びさらなる成分の種類や多さに従って、分離工程において液体を交換することは、しばしば、分離性能を高める。第2の液体は、大抵の場合、溶出強度が弱く、また非特異的な溶出性を有する。本方法は、中間に追加の工程を含む。
(ii)前記充填剤を第2の液体で洗浄する。
標的タンパク質又はペプチド及び副産物の混合物を、工程(i)の充填剤と接触させた後、吸着したタンパク質又はペプチドを有する充填剤は、工程(ii)で第2の液体によりリンスされる前に、第1の液体に含まれる残った混合物から再び分離される。残った混合物それ自体は、価値ある副産物を含む場合には、再度集められる。後者の変形例は、非常に希釈された供給物に対して捕獲をする手段としても用いられ、また、高速のバッチ工程における潜在的な副産物を取り除くために可能であり、該副産物は、続く、完全で高機能なクロマトグラフィーによる分離を妨げると考えられている。そのような副産物は、不可逆的な物理的又は化学的吸着によって充填剤のゆっくりとした劣化を導き、従って、カラムの耐久性を短くする。
実践において特別であるが重要な場合において、第2の液体は、第1の液体(供給液、吸着液)と同一のものが選択される。即ち、充填剤は、工程(ii)において液体でリンスされ、該液体は、工程(i)において充填剤に混合物として適用された標的タンパク質又はペプチドを吸着させるものと同じである。標的タンパク質又はペプチドと液体との間のエンタルピーが、標的タンパク質又はペプチドと充填剤との間のエンタルピーより小さい場合に、有効な吸着が可能であるため、標的タンパク質又はペプチドに対して中程度〜弱い溶解性を有するように第1の液体が、通常、選択されることから、上記の事項は時々可能である。一方、この液体が、工程(ii)において充填剤から溶出される副産物に対して優れた溶出性を示す場合には、それは、充填剤のリンスに適用される。一方で、標的タンパク質又はペプチドは、同時に離脱することなくなお充填剤に固着し得る。
同様に、第2の液体は、第3の液体(脱離液、溶出液)と同一のものが選択される。標的タンパク質又はペプチド及び副産物に対する第3の液体の溶解性特性が十分大きく異なる一方で、充填剤におけるそれらの吸着エンタルピーが同程度である場合には、同じ液体が充填剤をリンスするために用いられる。即ち、方法における工程(ii)及び工程(iii)は、これらの条件下において、1つの工程へと一体化され得る。連続的な流体システムにおいては、より溶出される副産物は、まずリンスにより取り除かれ、次に、同じ液体の後に溶出される分画において標的タンパク質又はペプチドが放出される。もちろん、これら一式の後に、より溶解されにくく従ってよりゆっくりと溶出される副産物を含む第3の液体の分画が続く。
これら3つの液体は同種であってもよい。しかしながら、2つ又は3つの液体が同種とされた場合には、それら液体は、方法における異なる工程において異なる流速で充填剤に適用され得る。クロマトグラフィーにおける流速体積は、通常、圧力の作用、カラム寸法、液体粘度によるものである。これに関して、HPLCの移動相における1方向の速度は、典型的には、約1〜5mm s-1の程度である。第1、第2、第3・・・液体という数え方は、従って、適用する液体の相対的な順序を規定し、異なる目的を満足させるが、それぞれの液体の成分を必ずしも規定するものではない。液体の種類又は液体の流速を離散的又は段階的に(即ち、ステップ勾配)変える代わりに、他の連続的な勾配、特に直線的な勾配が、異なる液体及び/又は流速の間におけるゆっくりとした変化のために用いられる。これは、先行する液体に、後に続く液体の画分を増やしながら徐々に混合する機構を組み入れることを必要とする。
本発明の一実施形態においては、第3の液体は、pHにおいて、第1の液体と、また、必要に応じて第2の液体と異なっていてもよい。具体的な実施形態においては、第3の液体のpHは、第1の液体のpH、また、必要に応じて第2の液体のpHより低い。より好ましくは、第1の液体のpH、また、必要に応じて第2の液体のpHは、標的タンパク質又はペプチドの等電点pl(即ち、代替±1単位)に近く、一方、第3の液体は、それらと大きく異なる、具体的には低いpHを有し、少なくとも2pH単位ほど低い。第1の液体のpHは、好ましくは5.5〜8.5の範囲であり、一方、第3の液体のpHは、3〜6.5の範囲である。充填剤と標的タンパク質又はペプチドとの間の結合エンタルピーが静電的な又は他の極性相互作用による重要な部分より優位である場合に、この実施形態は対応しており、静電的な又は他の極性相互作用(双極子力、水素結合)は、いずれかの結合対において、1種又はそれ以上のイオン性残基(例えば、アミノ基、又は窒素含有複素芳香族化合物)を含む。特に、疎水性の相互作用及び極性の相互作用は、中性付近のpHにおいて支配的であると考えられ、一方、イオン性の反発力は、pHの極限範囲に近づいたとき(例えば、低いpHでプロトン化された窒素)に、荷電していなかった残基の極性誘引力に部分的にとってかわると考えられる。この作用は、結合のエンタルピーをかなり弱めることができ、結果として、結合したタンパク質又はペプチドを充填剤から放出させる。反対に、イオン性の誘引相互作用も、pHが変わる結果、結合対の電荷において弱められる。この観点で特に重要なのは、疎水性の相互作用及び極性/イオン性の相互作用の両方を示すことができるという点で、充填剤における残基としての窒素含有複素芳香族化合物である。本発明の分離方法において使用されるそのような複素芳香族化合物残基の活性は、以下の事項に起因し、結合の挙動は、生理学的な条件に酷似するpH値において変わり、一方、pH変化の正確な範囲は、特定の残基の等電点に影響され、少なくとも2種の異なる残基を含む充填剤における構造及び相対的組成によって微調整される。一方、結合のエンタルピーにおけるpHの影響は、充填剤と分離される少なくとも1種の副産物との相互作用に関連して、ほとんど公表されていない。これは、例えば、標的と副産物との異なる等電点によるか、又は、疎水性/極性相互作用 対 静電相互作用の異なる相対的な寄与量による。
本発明のさらなる実施形態においては、第3の液体は、イオン性強度において、第1の液体、及び必要に応じて第2の液体と異なっていてもよい。好ましい実施形態においては、第3の液体のイオン強度は、第1の液体、及び必要に応じて第2の液体よりも大きい。充填剤と標的タンパク質又はペプチドとの間の結合エンタルピーが、1種又はそれ以上のイオン残基又はイオン性残基の関与条件下において静電的な相互作用による重要な部分より優位である場合に、この実施形態は対応しており、一方で、そのような関与は、充填剤と、分離される少なくとも1種の副産物との間の静電的相互作用において異なり、具体的には明確なものではない。これに対して、結合のエンタルピーに対する疎水性の寄与は、他のすべての因子が一定である場合には、イオン強度において高められる。好ましくは、分離方法における吸着工程(i)は、第1の液体において低塩条件下(0〜0.2M塩化ナトリウム)において実施され、一方、脱離工程(iii)は、第3の液体において1M塩化ナトリウムまでで実施される。本発明の充填剤は、高塩濃度に耐えるが、充填剤に結合したタンパク質又はペプチドを脱離させるために工程(iii)の第3の液体に高濃度の塩を加えることは、大抵の条件下においては、必要でなく望ましくもない。それに代わり、多くのタンパク質又はペプチドに対する充填剤の親和性は、塩濃度の変化によっても不変のものである。それゆえ、塩の勾配は、吸着されたタンパク質又はペプチドを脱離させるためには、それ自体有効でないが、pH勾配の補助と組み合わせると効果的である。
充填剤からのタンパク質又はペプチドの脱離は、第1の液体及び第2の液体と比べて、第3の液体の溶解強度を高めることにより達成される。代わりに、第3の液体に溶解する置換試薬を用いて、充填剤の結合サイトにおいて標的タンパク質又はペプチドを置換させることにより達成される。置換作用(競合する標的の結合に対して置換試薬が充填剤に好ましく結合する)は、標的タンパク質又はペプチドよりモル超過の置換試薬が存在するか、又は、充填剤に対する置換試薬の結合強度が標的タンパク質又はペプチドの結合強度よりかなり大きい場合に達成される。置換試薬それ自体は、標的として、又はその断片として同様な特性を有するタンパク質又はペプチドであるが、C,N,O,S−複素芳香族化合物残基に高い親和性を示す小さな合成分子である。また、それ自体が単環式又は二環式のC,N,O,S−複素芳香族化合物構造であり、置換は、充填剤の残基より優先的に、標的タンパク質又はペプチドの充填剤と反応した基が、溶解性の複素芳香族化合物で満たされる結果として起こる。しかしながら、過剰の置換試薬は、標的タンパク質又はペプチドを純粋な様式で単離するために、能登に溶出液から取り除かれなければならない。
標的タンパク質又はペプチドが完全に充填剤から脱離した後で、溶出液をさらに変えることは、他の価値ある産物が溶出されるのであれば、また、クロマトグラフィーにおける経費問題を解決するようにクロマトグラフィーの運転を促進させるために、経済的な側面で有用である。
第2の変形例においては、方法は、さらなる下記の最終的な工程によって増え、この工程は工程(iii)のあとに行われる。
(iv)第4の液体及び/又は第5の液体で前記充填剤を洗浄及び/又は再生させる。
ここで、第4の液体(洗浄)として、主に強い溶出強度を有し、上述した種類の添加剤を含み、非特異的に溶出する液体が用いられる。充填剤がクロマトグラフィーの形式で用いられる場合、徐々に起こるファウリング、目詰まり、カラムの性能低下を抑制すべく、充填剤を清浄化するという目的、及び、強く吸着して残った、又は化学的又は生物学的な不純物、特に粒子状物質の蓄積を永続的に取り除くという目的のために、第4の液体は、高い体積流速で、順方向又は逆方向にて適用される。医薬的な衛生及び安全のために、微生物汚染を排除するための典型的な衛生又は殺菌プロトコール(例えば、アルカリ(1.0M水酸化ナトリウム)、酸(0.4M酢酸)、酸化剤(次亜塩素酸塩)及び/又は加熱処理)が充填剤に適用される。
第5の液体(再調整)は、充填剤、その膨潤度、及び付着した残基の溶媒和を調整するために、強力で攻撃的な溶媒液体を用いた事前処理の後に用いられ、それによって、充填剤が本来の状態に戻り、一定の平衡な状態が各分離運転の始めに導入される。溶出液又は洗浄液による微量成分の除去は別として、イオン性残基の対イオンが仮に存在するならば、充填剤の一定な酸/塩基特性を維持すべく、対イオンは、本来の一定の分布へ変換される。第5の液体は、第1の液体又は第2の液体と同じであり、通常、同じ流速にて適用される。各運転の後の迅速で簡単な洗浄/再生プログラムから、各5回、10回などの運転の後のより高性能な手順に変えることも可能であり、該手順は、例えば、所定の製品品質仕様にするために重大な意味をもつ汚染物質の実績負荷に影響される。
分離方法を実行する好ましい方法は、中速から高速の液体クロマトグラフィー技術である。操作上の簡便性から、また、上述した様々な変形例があるという理由により、この方法は、バッチ精製の様式で非連続的に親和性(膜)濾過若しくは固相抽出技術と組み合わされ、又は、連続的な様式で疑似移動床式(SMB)に使用される。すべての変形例が互いに組み合わされ得る。
強力な化学的安定性、また、充填剤の動的及び静的な結合能(約0.3までの供給負荷、又は、充填剤リッターあたり20gのタンパク質又はペプチドがそれぞれ可能)は、本方法で用いられる独立した様々な全5液体において、自由度が大きい。従来のアフィニティークロマトグラフィーと互換性のない強力な溶離溶出体系が利用でき、その結果、可溶化能、低費用、低毒性、及び低汚染物質性といった特性のために液体を最適化できる多くの余地がある。本方法の実施と互換性のある液体体系は、少なくとも弱い溶解性特性を有する液体又は液体混合物を含んでおり、該液体又は液体混合物は、分離方法における物質、即ち、特にタンパク質又はペプチドのため、また、好ましくは、副産物のためのものであり、−後者は、第2の液体のために特に重要である。本発明の充填剤を用いたクロマトグラフィーによる分離は、通常、生体適合性条件の制限のもとで行われることから、緩衝水性媒体は、しばしば、第1、第2、及び第3の液体として用いられる。緩衝剤又はタンパク質の機能を維持するために必須の金属塩(例えば、洗浄剤、カオトロピック剤、抗酸化剤、消泡剤)は、液体に添加されることもあり得るが、精製されるタンパク質又はペプチドの生物学的活性を高く維持するためには、これらの試薬は、完全に避けることが好ましい。少量の揮発性有機酸は、所定の被検体の検出性を高める目的で実際の分離工程の前又は後に添加され得る。
それにもかかわらず、さらなる添加剤が使用される場合には、特に、タンパク質又はペプチドを結晶状態で得ることが要求される場合には、添加剤は、通常、後で取り除かれなければならず、即ち、方法が完了した後で、工程(iii)で得られた標的タンパク質又はペプチド含む液体から、取り除かれなければならない。この目的を達成するために、様々な付加的な工程が当業者に知られている。添加剤を取り除くために、本発明の方法は、それゆえ、他の型の一般的な分離手順とその後に組み合わせられる。
実際に有機性液体又は水性液体、臨界液体を含む混合液体を本発明の充填剤に適用することは可能であるが、固体指示材料の表面にポリマー膜がある場合には、ポリマー膜の膨潤を促進させる極性液体が好ましい。混合液体の正確な極性は、その組成によって微調整される。
標的タンパク質又はペプチド(また、副産物)は、本方法の工程(iii)において、しばしば、即座には(オン−オフのようには)脱離されず、ゆっくりと徐々に脱離されることから、工程(iii)それ自体は、好ましくは段階的に実施され、即ち、全分離工程において溶解性を高めるために分画操作として実施する。同じ又は異なる量の固定体積の分画が手作業によって集められるか、又は、充填剤が第3の液体と十分な時間接触した後に自動的に集められる。そして、工程(iii)は、繰り返され、充填剤は、結合したすべての標的タンパク質又はペプチドが脱離されるまで、再び、新しい第3の液体(必要であれば組成を変更)と接触する。分画を集めている間に、第3の液体を連続的に供給することが可能である。各分画における、脱離された標的タンパク質又はペプチドの純度及び回収率は、その後に測定され、質的及び/又は経済的な意味における事前受入仕様に適合する画分のみがさらに処理され、一方で、他の分画は、捨てられるか又は供給原料へと再利用される。
フロンタル溶出及びゾーン溶出技術を採用することができる。最も良好な実績及び生産性は、勾配溶出によってしばしば得られ、特に、第2の液体及び/又は第3の液体に対する極性有機溶媒(低量のアルコール、アセトニトリル、アセトン)の含有量の増加により得られる。しかしながら、クロマトグラフィー操作又は一般的な製造環境において用いられる場合には、定組成溶離又は段階勾配のような単純勾配が、操作上の単純性及び技術上のロバスト性の点で好ましい。pH及び塩の勾配も、有効に実施できる。充填剤の特定残基の影響により、充填剤の化学的安定性が考慮される限り、短期間においては、1〜14のpH範囲が、また、連続操作においては、2〜13のpH範囲が可能である。それぞれの最適な液体組成は、充填剤における実際の誘導体化度に影響され、また、場合に応じて実験的に決定されなければならない。
タンパク質又はペプチドがイオン性の電荷を有さない、即ち、溶離媒体のpHがタンパク質又はペプチドの等電点と近い場合に、特に分離目的に適用される従来のイオン交換収着と明確に本方法を区別するものは何か。アニオン性の電荷は、プロトン化される窒素含有残基を潜在的に含むということにより、本発明の充填剤に対する結合強度を増大させるが、その存在は、本方法の性行的な完了に必須のものではない。副産物及び混合物の他の成分に対して同じことが当てはまる。電荷による相互作用が充填剤における化合物の収着及び分離に影響を与える程度は、両性の特性によって、また、周囲媒体の塩濃度によって決定されもする。充填剤及び被検体の反対電荷に関して上述したことは、同じプレフィックスの電荷にも当てはまり、該プレフィイックスは、ある場合には、さらなる引力の代わりに、充填剤からの反発及び排除を導く。
本方法は、工程(iii)の後に、タンパク質又はペプチドが脱離される第3の液体の少なくとも1つの分画からの、タンパク質又はペプチドの単離をさらに含む。準備段階の利用においては、特性評価及び/又は続く処理の目的で、第3の液体における溶液から濃縮された態様で又はそのままの態様で、タンパク質又はペプチドを単離することが可能である。最も容易な方法においては、溶媒の蒸発という穏和な方法(冷凍乾燥、凍結乾燥を含む)によって、工程(iii)の液体から、タンパク質又はペプチドが回収され得る。しかしながら、溶媒の蒸発は、第3の液体に含まれる低蒸気圧物を増やす。そのような物質は、緩衝剤の塩や安定化剤のような添加物又は高沸点溶媒同族体及び/又は分解物などの不純物を含み、これら不純物は、通常、溶媒中にわずかに含まれ商業的な品質上のものである。しかしながら、充填剤の高い物理的及び化学的安定性のため、固定相から全く侵出しないということが、工程(ii)〜(iv)の間に生じ、工程(iii)で脱離されるタンパク質又はペプチドが、典型的には、充填剤又は他の物質から10ppm未満となる(即ち、その構成物質、(ポリマー残基)、又は分解生成物)。
単離の好ましい方法は、必要であれば再度の溶解をした後に、精製されたタンパク質又はペプチド又は前記蒸発後の残留物を含む第3の液体からの結晶化工程を含む。そのような結晶化工程の間に、例えば、液体の温度及び/又は組成を変えることにより結晶化を誘導し、低蒸気圧の不純物は、溶液の中に留まり、標的結晶物から容易に分離されることから、十分に高い精製度が得られる。乾燥した後、結晶は、合成工程及び形成工程における使用のために準備される。乾燥した物が意図しないもの又は不能なものである場合、代わりに、精製したものを異なる組成の溶液に変換することが必要であり、即ち、第3の液体は、透析やイオン交換などの標準的な操作によって、保管用液体と交換される。
通常、クロマトグラフィーにおいては、本方法、及び、運転するための関連する装置は、適当な検出技術によって好適に補完され、該検出技術は、標的タンパク質又はペプチド及び/又は副産物、又は、溶出液中の他の混合物成分の濃度を、明確で正確な分画によって、定性的、準定量的、定量的に測定することができる。好ましい検出方法は、物理的又は分光的な特性を有するオンラインフローセル検出器を含み、該検出器としては、屈折計、偏光計、導電率計、紫外/可視又は蛍光分光計、赤外分光計、質量分析計、及び核磁気共鳴分光計が挙げられる。オンラインのプレカラム又はポストカラムの誘導体化ユニット又は分解ユニットは、分離される全ての若しくは特定の成分を、改良された検出性能によって誘導体化物又はその断片物に変換するために、又は、その溶出を促進するか又は遅らせるために、システムに加えられ得る。タンパク質又はペプチドに対する万能で非破壊的な検出は、280nmの波長におけるUV吸収である。
そのような成分が、充填剤に結合され診断上、治療上、栄養上の価値がある少なくとも1種のタンパク質又はペプチドを含む場合には、大規模スケールにおいては、充填剤、及び、充填剤を採用する本発明の分離方法は、人体又は家畜向け(例えば、抗血清又はワクチン)に医薬又は栄養成分の製造において好適に使用される。本発明の利点は主に次の事実に起因するものであり、即ち、そのような利用においてしばしば99%を超える、又は99.9%を超える価値ある活性原料の純度がときに要求され、従来の方法によってはただ時間的にも費用的にも高い手順で可能であり、経済的観点からはその利用が高額なものとなる。
小さなスケールにおいては、それら方法は、代わりに、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの同定、評価、又は実験的な精製において使用される。定性的及び定量的な分析に関するこの目的のために、分離方法は、例えば、複合技術を使った特定の生物学的方法又は分光的方法によって補完されるが、純粋で真の試験サンプル又は標準ペプチドを用いた保持体積の比較によっても達成される。ミクロの大きさにおいては、この方法は、タンパク質の利用にとって興味深いものであり、即ち、細胞又は生物における複数の異なるタンパク質における発現量及び組み換えの連続的な同定又は定量にとって興味深いものである。
医学的装置の一部として、この方法は、生体物から少なくとも1種のタンパク質又はペプチドを取り除くことにも使用され、生体物に含まれる少なくとも1種のタンパク質又はペプチドの存在によって引き起こされる疾患の医学的な防止又は処置を含む。その装置は、どの場合においても解毒又は除染の1種として適用され、解毒又は除染においては、患者が既に危険性のある伝染性のタンパク質又はペプチドを除かれたか又は除かれようとしており、例えばそのタンパク質又はペプチドは、病原体から分泌されるか、又は、自己免疫疾患の場合には、患者の体自体からその危険性のある伝染性のタンパク質又はペプチドが作られる。摂取される潜在的なものとしては、感染した患者と接触した食物、水、空気、輸血などがある。特化された利用においては、本方法の装置は、アフェレーシス療法又は血漿交換法のユニットとして構築され得る。そのような装置は、主に、ex-vivo又はin-vitroで操作されるが、小型化され移植され得る装置としての構築も考えられる。患者の生体液は、(バッチ式に又は連続的に)患者から取り出され、充填剤による処理を経て不純物がなくなり、そして患者に戻される。その生体液又はその一部又はそれから作られた成分が、困っている患者に施される前に、伝染性の疾患の伝染リスクを減らすべく、他の供給源からの生体液(ヒト又は動物)が充填剤により処理される。そのような場合、本発明の分離方法は、標的タンパク質又はペプチドの濃度/純度を<価値ある>分画において減らすために(従って、価値あるタンパク質又はペプチドが増え)使用され、一方、<汚染された>分画を増やす。
最後に、本方法は、充填剤における少なくとも1種のタンパク質又はペプチドを固定化させるために使用される。充填剤と、標的タンパク質又はペプチドとの間の相互作用における非共有結合的な性質により、そのような固定化は、可逆的であろう。固定化は、ドラッグデリバリー装置(例えば、薬剤溶出又は治療ステント)、又は医薬探索において、濾過試薬又は触媒の製造、表面結合細胞培養としての利用において潜在的に有利であろう。後者の場合、本発明の分離方法は、固定化されたタンパク質又はペプチドへの、化学的又は生物学的なさらなる構造の結合を試験する方法によって補完され得る。そのような二次的結合の検出は、結合対の物理的作用の最初の兆候として役立ち得る。ポリマーの被覆が用いられた場合には、固定化されたタンパク質又はペプチドは、周囲のゲル形成媒体によって物理的にトラップされ、高い生体適合性の環境をさらに受ける。異なって表現されているように、記載されている充填剤と、少なくとも1種のタンパク質又はペプチドとの間に形成される非共有結合的で分離可能な複合物は、従って、本発明における実施形態でもある。本発明の好ましいタンパク質としての抗体を含むそのような複合物は、免疫吸着技術において使用される。
上記の事項からすぐに導き出される本発明のさらなる目的は、チューブ状の梱包体に本発明の充填剤が入れられてなるプレパックドカラムである。そのようなカラムは、液体クロマトグラフィー又は固相抽出法において、固定された所望の大きさ(長さ×直径)にて、固定相として使用される。チューブ状の梱包体の他にも、そのようなカラムは、必要に応じて、当業者に知られている、ガラス原料、濾過板、流量分配器、シール、接続器具、ねじ、バルブ、又は他の流体取り扱い用部品や接続用部品を含む。充填剤は、重量に従って若しくは遠心力によってスラリーとして充填されるか、又は、外部から与えられる水力学の圧力によって、又は、ピストンによる軸方向の圧縮によって充填され、そのようなプレパックドカラムの様式で商業的に利用可能となる。使用者のさらなる便利さのために、より再生可能なものが保証され、固定相は、使用されなければ容易に保管されクロマトグラフィー体系において迅速に交換され得る。内容物を構成する材料(ステンレス、ホウケイ酸塩ガラス、PEEKなどのプラスチック等の化学的及び生物学的に不活性な材料)が典型的に選択され、充填剤それ自体の高い安定性は、断念されており、即ち、カラム全体は、理想的には、20バールの圧力まで、又は110℃の温度までの物理的化学的耐性に特徴付けられ、また、オートクレーブを含む一般的な衛生プロトコールに対する耐性に特徴付けられる。好ましい条件においては、1,000回まで、好ましくは5,000回までのカラムの繰り返しの使用が可能であり、全工程を無駄のないものにすることができる。しかしながら、上記カラムは、使い捨て又は焼却可能なものとすることができる。他のオプションとしては、充填剤のチューブ状の筐体を安くて破棄可能なものにすること、及び、寿命が長く耐久性のある材料で作られた第2の外側の筐体内にカラムを配置し、該材料が再利用可能で補足性の構成要素を含んでいる(カートリッジの設計)ことが挙げられる。
カラムは、クロマトグラフィー体系の一部となり得る。上述した検出システムは別として、クロマトグラフィー体系の他の付属の構成部品としては、ポンプ、流量調整機、液体貯蔵器、ガス除去機、注入ポート、カラム切換弁、圧力計及び流量計、温度制御チャンバー、アウトレット収集トレー(回転式棚)、及びロボット工学的な分画機を含む。
本発明のさらなる目的は、個々の充填剤が同種又は異種であるところの、本発明における多くの同種又は異種の充填剤の集合体、例えば、柔らかい材料(粒子状又はブロック(モノリシック))、プレパックドカラム、カートリッジ(上記参照)、又は膜としての材料の集合体(又は“ライブラリー”)である。例えば、異種の充填剤の集合体は、適した充填剤の最初におけるスクリーニング作製において使用され、該作戦は、後のより高度な調製用クロマトグラフィー設定にて使用されるように設計され、一方で、同種の充填剤の集合体は、例えば、同様なマトリクスを含む数多くの試験サンプル多重の医学的診断検査のために使用され、又は、準連続の工程監視のために使用される。そのような集合物の有利な点は、手作業又は自動的な様式で並行して処理できることである。そのような並行的な処理は、―直列的な処理に比べて処理量が多いことによる時間の節約―、標準的な又は同じ(再生可能な)条件下において、異種の充填剤又は他の処理パラメータを比較することができる。この有利な点は、集合物の個々が標準化され位置的に指定された態様で配列される場合には、特に有効に使われ、好ましくは、ロボット的なワークステーションと比較して、マイクロプレート配列又はミクロチップ配列のように、又は、マルチキャピラリー装置やマイクロ流体素子として、二次元的な長方形の格子状に配置される。小型化された構成物の読み値に関する限り、参照は、プロテオミクス技術においてなされている。
上記の製造方法における架橋/接合工程の始めに生じる中間産物は、次の使用のために保管するのに十分安定なものである。そのような産物は、次にいくつかの小集団に分けられ、そして、誘導体化工程が個々の誘導体化試薬を用いて実施される。異なる充填剤の集合体(ライブラリー)は、(即ち、異なる残基又はその組み合わせ又は異なる残基割合、異なる誘導体化度)要求に従って形成される。誘導体化工程が全小集団において同時に実施される場合には、分離目的の変更に迅速に対応できる最も優れた充填剤の利用における最初のスクリーニング探索を実行するべく、そのようなライブラリーを短期間で形成することができる。異なる誘導体化は別として、ポリマー膜、担体、及び/又は活性化化学物質が異なる可能性を含む異なる固体支持材料は、充填剤の集合体において適用される。
ランダムな又は標的化されたライブラリーのスクリーニングは、しばしば、合理的な充填剤設計を補完するか又はそれに置き換わり得る。仮に構造的な情報が少ないか、又は、さらなる強い結合、例えば相溶性のある液相が適用されるのであれば、充填剤の異なる残基及び/又は標的タンパク質又はペプチドにおけるその一方からの寄与の相対的な重要性が明らかでない場合に、特にそのスクリーニングが用いられる。分離目的に対するそのようなライブラリーのスクリーニングは、特定の充填剤の性能を特徴付ける1又はそれ以上のパラメータ(親和性、選択性、容量、回復性、安定性など)が、連続的に、又は全ライブラリー若しくは1又はそれ以上のライブラリーの小集団と並行して測定される方法で実施される。最も優れた特性は、親和性に関連した又は選択性に関連し、充填剤とタンパク質又はペプチド標的との間の複合物の形成に関する熱力学的及び動力学的なパラメータである。ライブラリーへの組み込みに適した充填剤の事前の選択は、コンピュータを使った方法によって実施される。
実行可能なスクリーニング方法は、例えば、適したバッチ条件下において、本発明の個々の充填剤とともに、少なくとも1種のタンパク質又はペプチド、副産物、及び/又は他の成分を含む混合物の処理を含み、また、充填剤と標的タンパク質又はペプチドとの間の複合物の形成における個々のギブス平衡エンタルピーを測定するものである。代わりの方法は、充填剤と標的タンパク質又はペプチドと複合物の形成と、適切に選択された副産物との形成の間における微分ギブスエンタルピーの測定をするものである。測定は、例えばカロリメトリーのような当業者に知られた熱力学的及び/又は動力学的方法の助けを借りて直接的に実施できる。測定は、そのような一次的な複合物の形成が予測できる適用の疑似工程条件下においてクロマトグラフィー運転の助けを借りて間接的に行われ得る。それにより、得られた結果物は、溶出に貢献するために校正が必要とされる。クロマトグラフィー環境において、k’値及びα値は、最初の接近において、それぞれ、ギブスエンタルピー又は微分ギブスエンタルピーの指標として役立つ。
本発明のさらなる目的は、診断用の又は実験用のキットであり、該キットは、本発明の充填剤(又は、充填剤の集合物、充填剤含有カラム)以外に、同じ容器単位内に、本発明の分離方法、又は、充填剤が採用される異なる分析方法、診断用方法、実験用方法を実施するために必要な、さらなる化学的又は生物学的な試薬及び/又は破棄可能な必需品を含む。正確な数量又は濃度で設定されたそのような材料の事前梱包集合物は、分離方法を実施するときに標準的な実験プロトコールに従ってできるように、また、特に、破棄可能な材料としてカラム又は充填剤が用いられる場合に、使用者の便利さを高めることを意図したものである。そのようなプロトコールは、キットの使用のための安全データシート等とともに入れられる。
<全般>
Dionex社(以前はGynkotek社)製のHPLC体系は、4つのチャンネルの低圧勾配ポンプ(LPG 580、LPG 680、又はLPG 3400)と、オートサンプラー(Gina 50, ASI-100 又は WPS-300)と、6チャンネルのカラムスイッチバルブ(Besta社)と、カラムオーブンと、ダイオードアレイUV検出器(UVD 170U、UVD 340S、VWD 3400)とを備えている。
採用された充填剤の全ては、架橋されたポリビニルアミンの膜で覆われたスルホン酸化ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー(平均粒子径35μm、平均細孔径1000オングストローム)の多孔質球状担体を基礎とし、架橋されたポリビニルアミンは、それぞれの試験例に示したように、残基によりランダムに誘導体化されている。第1の残基及び第2の残基として採用された二環式及び単環式の複素芳香族化合物構造は、図7に示している。1つ又は2つの窒素原子を含む5員複素環又は6員複素環は、そこに示されている。クロマトグラフィーの実験全てにおいて、充填剤は、特に言及しない限り、33.5×4mmの大きさの標準的なステンレスHPLCカラム内で使用された。カラムは、20バールの圧力下で、水−メタノール(1:1)の懸濁液を流沈殿させて作った。
下記の表1は、様々な実験で用いたタンパク質を示している。選択されたものは、中程度のペプチドから大きなタンパク質の多量体複合物まで広い範囲に及び、触媒、移動、免疫反応、情報伝達/規則性などを示し、異なる機能を有するものである。等電点のデータは学術文献から引用し、分画電気泳動によって再生された。用いた他の試薬は、標準的な実験レベルの純度を有するものである。
(試験例1)
残基を有しインドール及びイミダゾールを異なる割合で含む特定の充填剤の合成
市販されているポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーの球状樹脂ビーズ(Rohm & Haas社 製品名「Amberchrom」)をまず、高濃度の硫酸で硫酸化した。そして市販されているポリビニルアミン−ポリビニルホルムアミドコポリマー溶液(BASF社 製品名「Lupamin」)が多孔質ビーズに吸着され、ビスエポキシドにより、軽度に化学的に架橋した。約0.35〜0.45mモル/mlの自由アミノ基を含み、ジメチルホルムアミド内で膨潤しているこの未誘導体化中間体に対して、標準的な固相アミド結合プロトコールに従って、ねらいとする誘導体化度の予め設定した量よりわずかに多い量で、in situ活性化3−インドリルプロピオン酸と、4−イミダゾリルアクリル酸とを続けて独立して結合させた。充填剤は、超過した試薬がなくなるように洗浄し、一定の重量になるまで乾燥させた。誘導体化度は、水性トルエンスルホン酸を用いた固相滴定によって、各誘導体化工程の後に、残ったアミノ基の水素結合能違いとして測定した。この一般的な手順に従って、表2に示した充填剤を製造した。
表2:製造した充填剤の典型的な組成(精度 約±2%、アセチル基が第3の残基として存在する場合、一体となった置換度と100%との間の違いは、通常、アセチル基の含有量と等しい、第3の残基がない場合、一体となった置換度と100%との間の違いは、アミノ基の含有量と等しい)
(試験例2)
異なるタンパク質への結合特性のための、本発明の充填剤の集合物のスクリーニング
実験:
25mMリン酸緩衝液pH7.4において6〜8の等電点を有する、コンアルブミン、ヘモグロビン、カタラーゼ(ネズミ肝臓由来)、及びピルビン酸キナーゼの純粋タンパク質の溶液を、約15〜18mg/mlの濃度となるように(ピルビン酸キナーゼは5mg/ml)調製した。これら溶液の30μl(ヘモグロビンは125μl)を独立して、異なるHPLCカラムに注入した。該カラムは、下記表に示すそれぞれの程度の複素芳香族化合物構造を含む1取又はそれ以上の残基により誘導体化された充填剤を含む。工程における勾配は、最初25mMリン酸緩衝液pH7.4での結合工程を40分間0.25ml/分で行い、次に、50mM酢酸緩衝液pH3.5での溶離工程を20分間0.5ml/分で行い、最後に、さらに酸パージを1M酢酸水溶液(pH2.25)で同じ流速で20分間行った。1ml/分の流速で20分間結合緩衝液により再調整することにより、充填剤が次の運転のための本来の状態に戻った。溶離されたタンパク質の量は、230nm、280nm、500nmの波長のUV吸収シグナルの積算により、各溶出工程において独立して測定した。全タンパク質の回収量は、さらなるバイパス(カラムなし)を取り付けることにより、量的な比較により測定した。
結果:
スクリーニング結果は、表3〜表6に示してある(3つの溶離工程での量の合計が全回収量と同じになる)。これらの表は、異なる第1の残基及び第2の残基の比較、また、失われた残基の効果の比較もできるものである。第2の残基による誘導体化が充填剤の結合能を低下させることとなる一方で、第1の残基による誘導体化が実践的な(クロマトグラフィーの)目的にとって強すぎる結合をもたらすこととなる。標的タンパク質が中程度の酸性緩衝液の溶離工程(pH3.5)の間に回復する場合に、可逆的なまた再生可能な結合が確実なものとなる。一方、標的タンパク質が、強烈な酸パージ工程で充填剤から脱離される場合には、変性を受け、充填剤が使えないものになる。不可逆的な結合がしばしば回収率の低さによって示され、これにより推測されることは、パージ工程において用いる酸水溶液は、充填剤からタンパク質の十分な量を脱離させるだけの溶出強度を有していないということである。一般的な傾向として、最大の性能は、充填剤に両方のリガンドが存在するときにのみ達成される。しかしながら、充填剤の最適な組成は、ある程度、標的タンパク質の影響を受ける。個々の合成能の影響を受けて、第1残基及び第2残基両方の誘導体化度は、広い範囲で変わる。さらに、測定できる性能の応答は、残基の種類が変化しない場合であるときに、誘導体化度の小さな変化に基づいて観察される。第1の残基も第2の残基も含まない研究においては、比較充填剤における可逆的な保持は観察されない。第3のリガンドとしての酢酸又はサクシニル酸による誘導体化は、全く反対の特性を示す。適用した同じ条件のもとで、プロテイナーゼK、シトクロムC、又はリゾチームのような塩基性タンパク質、また、ペプシンやインスリンのような酸性タンパク質は、固定相の大部分においてpH7.4で高いパーセンテージにてうまくいくことが示され、又は、pH3.5で(部分的に)溶出することが示される。例外は、ヘキソキナーゼタンパク質によって示され、酸パージ工程を含む全ての3画分にて発見される。このタンパク質に関しては、回収率が受け入れがたいほど低い(データを示さず)。結合及び溶離の緩衝液に150mMの塩化ナトリウムを加えた条件での、ヘモグロビンでの実験的な性能は、大きくは変わらなかった。溶離のpHを下げる前にpH7.4での結合のときに、さらに塩溶離工程(1M NaCl)を加えることは、インドール構造を有する30%残基で誘導体化されている充填剤から、さらなる溶離(12%)を導いた(即ち、第2の残基がない)。
表3:標的タンパク質コンアルブミンによる相スクリーニング
表4:標的タンパク質ヘモグロビンによる相スクリーニング
表5:ネズミの肝臓由来の標的タンパク質カタラーゼによる相スクリーニング(n.d.=測定していない)
表6:標的タンパク質ピルビン酸キナーゼによる相スクリーニング(n.d.=測定していない)
(試験例3)
中性及び弱酸性タンパク質に対する、残基を有しインドール及びイミダゾールを含む充填剤の耐荷力の決定
実験:
3種のタンパク質、ヘモグロビン、コンアルブミン、及びカタラーゼ(ウシ肝臓由来)を、pH7.4の25mMリン酸緩衝液に32mg/mlの濃度となるようにそれぞれ溶解した。全重量0.5...8mgのタンパク質に相当するこの溶液の容量(15...250μl)、又は、固相ml当たりの荷力1.2...19.0mg(0.2..3.6%と同等)のそれぞれが、段階的にHPLCカラムに注入され、該カラムは、誘導体化度が様々であり、3−インドリルプロピオニル残基と、4−イミダゾリルアクリル残基とを下記に示すように有している。
ND 08240:
25 % 3−インドリルプロピオニル + 20 % 4−イミダゾリルアクリル残基
ND 08236:
14 % 3−インドリルプロピオニル + 29 % 4−イミダゾリルアクリル残基
ND 08037:
26 % 3−インドリルプロピオニル + 26 % 4−イミダゾリルアクリル残基
工程の勾配は、最初25mMリン酸緩衝液pH7.4での結合工程を40分間0.25ml/分で行い、次に、50mM酢酸緩衝液pH3.5での溶離工程を20分間0.5ml/分で行い、最後に、さらに酸パージを1M酢酸水溶液(ph2.25)で同じ流速で20分間行った。溶離されたタンパク質の量は、280nm、450nmの波長のUV吸収シグナルの積算により、各溶出工程において独立して測定した。全タンパク質の回収量は、さらなるバイパス(カラムなし)を取り付けることにより、量的な比較により測定した。
結果:
異なる充填剤における荷力を増した3取のタンパク質の溶出挙動は、表7に要約している。ND 08240:中性タンパク質ヘモグロビンにおいては、測定範囲4.8〜19.0mg/mlの耐荷にわたって、4.3%〜52%の範囲でpH7.4でうまくいった。最大の耐荷は、4.8mg/mlと測定された。比較的高い耐荷により、良好な部分が迅速に立ち上がった。タンパク質の残りは、耐荷の全範囲においてpH3.5で溶出した。ND 08236:中性タンパク質コンアルブミンにおいては、測定範囲1.2〜19.0mg/mlの耐荷にわたって、0.32%〜47%の範囲でpH7.4でうまくいった。最大の耐荷は、7.13mg/mlと測定された。比較的高い耐荷により、良好な部分が迅速に立ち上がった。タンパク質の残りは、耐荷の全範囲においてpH3.5で溶出した。ND 08037:弱酸性タンパク質カタラーゼにおいては、測定範囲1.2〜19.0mg/mlの耐荷にわたって、2.1%〜10.4%の範囲でpH7.4でうまくいった。最大の耐荷は、11.88mg/mlと測定された。比較的高い耐荷により、良好な部分が迅速に立ち上がった。しかしながら、タンパク質の残りは、両方の酸溶出工程において分割され、pH2.25の部分において、1.19mg/mlの耐荷で56%から、19.0mg/mlの耐荷で16%にまで減った。
表7:それぞれの最大耐荷力における、3つの充填剤−タンパク質の組み合わせでの、吸着及び段階的な脱着の後の量
(試験例4)
残基を有しインドール及びイミダゾールを含む充填剤の免疫グロブリンGの耐荷力の決定
実験:
10mg/mlの免疫グロブリンG(IgG)溶液を次のようにして調製した。即ち、303μlの市販されている薬剤製品(Gammanorm)を、pH7.4の100mMリン酸緩衝液により、5ml容量のフラスコ中で希釈することにより調製した。8.58mgのIgGに相当する、842μlのこの溶液を、固定相mlに対して20.4mgのIgG耐荷力となるように、HPLCカラムに注入し、該カラムは、カラムの約70%体積となる100mMのリン酸緩衝液によって事前に平衡にされ、充填剤no.ND 10003の充填剤を含む。この充填剤は、22%の3−インドリルプロピオニル残基及び30%の4−イミダゾリルアクリル残基で誘導体化されている。注入の間に、100mMの結合用リン酸緩衝液pH7.4が、0.1ml/分の流速に適用されて90分間維持され、次に、100mM酢酸緩衝液pH4.3+50mM塩化ナトリウム緩衝液で流量0.5ml/分で20分間、同じ流速で0.5MpH2.6の酢酸溶液でさらに20分間酸パージ、100mMリン酸緩衝液pH7.4で流速1ml/分で10分間、最後に、同じ流量で1M水酸化ナトリウム溶液で12分間洗浄した。これに関するクロマトグラムを図8に示す。異なるpH(pH7.4,ph4.3、ph2.6)の同様な溶出の3つの分画を集め、280nmにて光学的にIgGの含有量をオフラインで分析した。100%基準値の評価のため、バイパス操作が実施され、カラムが空のチューブに取り換えられ、しかし他の条件は同一とした。
結果:
IgGは全ての分画において発見され、それぞれ、大部分がpH7.4で結合し、pH4.3で脱離した。3つの分析上の分画におけるIgGの量は、9%(pHで良好)、81%(pH4.3で溶離)、及び12%(pH2.6でパージ)であった。それゆえ、全画分のタンパク質回収量は、合計約102%となった。充填剤no.ND 10003の可逆的な耐荷力(pH4.3画分)は、固定相mlあたり16.5mg IgGと測定され、総耐荷力(pH7.4良好)は、固定相mlあたり18.5mg IgGと測定された。充填剤は、同じ実験的なプロトコールにおいて繰り返して使われることから、1M NaOHを使った洗浄/衛生に対する充填剤の安定性も重要である。
(試験例5)
本発明の異なる充填剤におけるカタラーゼの分析的分離
実験:
カタラーゼ(ウシ肝臓由来)、ヘキソキナーゼ、ペプシン、シトクロムC、及びα−キモトリプシノーゲンA(それぞれ0.48mg量、25mMリン酸緩衝液中pH7.4)の5つのタンパク質の混合物が、異なるHPLCカラムに注入され、該カラムは、下記に示すように、第1の残基及び/又は第2の残基で誘導体化されている。
ND 08037:
26 % 3−インドリルプロピオニル + 26 % 4−イミダゾリルアクリル残基
ND 070002:
50 % ベンズイミダゾール-5-カルボニル + 30 % 4−イミダゾリルアクリル残基
ND 06380:
32 % ベンズイミダゾール−5−カルボニル残基
溶離は、最初25mMリン酸緩衝液pH7.4で40分間0.25ml/分で行い、次に、0.5ml/分の流速で50分以内に0.1M酢酸水溶液(pH2.86)への直線的なpH変化を行い、そして、同じ流速で50分間1M酢酸水溶液への直線的な変化を行い、最後に20分間維持した。溶離組成は、225nm、280nm、290nmの波長の吸収により調べた。比較のため、各1種のタンパク質が、純粋な溶液として注入された。異なる充填剤におけるクロマトグラフィーの運転は、図9〜11に示している。
結果:
混合物のクロマトグラムは、単一のタンパク質の運転のものと重なって一致した。標的タンパク質カタラーゼの全注入量の溶離は、全ての充填剤において抑制された。予想できるように、酸タンパク質であるヘキソキナーゼ及びペプシンは、充填剤に静電的に吸着するが、性能が低い(ヘキソキナーゼにおいては5〜25%、ペプシンにおいては35〜50%)。一貫してペプシンの回収量が少ないことは、このタンパク質の結合断片が、適用した最も低いpH値においても再び充填剤から脱離されないことを示唆している。塩基性タンパク質のなかで、シトクロムCは、全体的に分画において発見される一方、α−キモトリプシノーゲンAの約25〜35%は、溶出し、残りが保ち続けられている。pH勾配に沿った相対的な溶離の順序は、どの場合でも、ピーク間の距離が3〜9分で、(1)α−キモトリプシノーゲンA−(2)カタラーゼ−(3)ヘキソキナーゼである。溶離ピークは、常に重なり合うが、定量的な分析目的のためには、カタラーゼは、適用された勾配の間に、両タンパク質から十分に分離される一方で、シトクロムCとペプシンとの分離は、実際に完了できる。従って、カタラーゼは、酸性タンパク質及び塩基性タンパク質の両方が同時に存在しても本発明の充填剤の助けを受ければ検出される。充填剤no.ND 070002とND 06380とを比較すると、明確になることは、ND 070002に存在するさらなる単環式の複素環置換基が、全般的に保持能を上げ、また、カタラーゼとα−キモトリプシノーゲンAとのピークの重なりを少なくするということである。
表8:試験例5の溶離勾配における3種の充填剤の3種のタンパク質に対する保持時間(分)
(試験例6)
本発明の異なる充填剤におけるタンパク質の保持に対する塩添加の影響
実験:
5種のタンパク質、コンアルブミン、ヘキソキナーゼ、ペプシン、シトクロムC、及びα−キモトリプシノーゲンA(それぞれ0.48mg量、25mMリン酸緩衝液中pH7.4)の混合物が、異なるHPLCカラムに注入され、該カラムは、下記に示すように、残基で誘導体化されている。溶離は、25mMリン酸緩衝液pH7.4で40分間0.25ml/分の開始で勾配として適用し、次に、0.5ml/分の流速で50分以内に0〜1M塩化ナトリウムへの直線的な塩の増加を行い、そして、同じ流速で20分間維持した。最後の1M酢酸水溶液でのパージ工程は、0.5ml/分で10分間とした。溶離組成は、225nm、280nm、290nmの波長の吸収により調べた。得られた量は、積算後のシグナルを基にしている。タンパク質の回収は、各溶離工程における量を合計することにより算出された。比較のため、各1種のタンパク質が、純粋な溶液として注入された(図12〜15)。
結果:
5種全てのタンパク質の保持データが、表9〜12に示されている。充填剤no.ND 08236及びND 06386は、標的コンアルブミンにも、より酸性のタンパク質であるヘキソキナーゼやペプシンに対しても結合強度における突出した影響を示さない。意図したプロトコールに関連して、これらタンパク質は、酸性の溶離液を用いた後のpHジャンプのあとでのみ、充填剤から溶離される。塩基性タンパク質であるα−キモトリプシノーゲンA(静電的に結合するとは考えられない)のごくわずかなパーセンテージが、高まった塩濃度において溶離する。一方、キノリル−4−カルボニルを含む充填剤no.ND 07200及びND 07122は、コンアルブミン及びα−キモトリプシノーゲンAの両方の保持において中程度の塩の効果を示す。この効果は、収量ロスという観点で、塩の適用中に、ND 07200よりもND 07122において示され、それにより、ND 07200における結合強度のさらなる単環式複素芳香族リガンドの有利な効果が確かなものとなる。一体となったこれらの発見は、充填剤の結合機構が単なるイオン交換と異なるということを示唆していると見なされる。結果として、タンパク質は、高濃度のpH中性塩を含む供給溶液(未同定)から充填剤の表面において捉えられる。反対に、溶離液の塩濃度は、より複雑な混合物の分離におけるタンパク質の選択性を調整すべく、付加的なパラメーターとして用いられる。
表9:充填剤no.ND 08236(14% 3−インドリルプロピオニル +29% 4−イミダゾリルアクリル残基)における添加した塩の保持データ
表10:充填剤no.ND 07200(19% キノリン−4−カルボニル +30% 4−イミダゾリルアクリル残基)における添加した塩の保持データ
表11: 充填剤no.ND 07122(19% キノリン−4−カルボニル残基)における添加した塩の保持データ
表12:充填剤no.ND 06386(13% ベンズイミダゾール−2−チオアセチル残基)における添加した塩の保持データ
(試験例7)
残基含みイミダゾールと、インドール又はキノリンとを含む充填剤における、タンパク質の混合物からのコンアルブミンの半分取分離
実験:
5種のタンパク質、コンアルブミン、ヘキソキナーゼ、ペプシン、シトクロムC、及びα−キモトリプシノーゲンA(それぞれ0.48mg量、25mMリン酸緩衝液中pH7.4)を2つの異なるHPLCカラムに注入し、該カラムは、充填剤no.ND 07220(33.5×4mm)又はPRC 10014(250×4mm;0.96mg荷力)を含んでいる。この充填剤は、19%のキノリン−4−カルボニル及び30%の4−イミダゾリルアクリル残基で誘導体化されている(ND 07200)か、又は22%の3−インドリルプロピニル及び28%の4−イミダゾリルアクリル残基(PRC 10014)で誘導体化されている。溶離は、25mMリン酸緩衝液pH7.4で10分間(PRC 10014:40分間)、0.25ml/分の開始で勾配として適用し、次に、0.5ml/分の流速で50分以内に50mM酢酸緩衝液pH3.5への直線的な緩衝液の交換を行い、その水準を同じ流速で20分間維持した(PRC 10014:50分間)。溶離組成は、225nmの波長の吸収により調べ(図16 a/b)、7つの分画に集めた。遠心分離膜濾過により0.2ml溶液に濃縮した後、各分画のタンパク質含量をSDS−PAGE(ND 07200における分画に対応する図17に示す)によって定性的に分析した。比較のため、5種全ての各タンパク質のND 07200における分析的運転が、図18に示されている。
結果:
ND 07200:分画IV(31:30−40:00分;4.25ml)は、コアルブミンの大部分を、いくらかのα−キモトリプシノーゲンAの残分とともに含んでいたが、他のタンパク質によって汚染されていなかった。シトクロムCは、分画Iで発見され、α−キモトリプシノーゲンAは、分画II及びIIIで、ヘキソキナーゼは、分画V及びVIで発見された。コンアルブミンの少量が分画II、III、及びVで検出された。非完全ではあるが、選択された固定相及び移動相の組み合わせによる精製能は、短いカラム寸法や粗い分画を考慮しても、受け入れ可能なものである。PRC 10014:分画V(98:00−109:00分;5.50ml)は、コアルブミンの大部分を、いくらかのα−キモトリプシノーゲンA及びヘキソキナーゼの残分とともに含んでいた。シトクロムCは、分画Iで発見され、α−キモトリプシノーゲンAは、分画IV及びVIIで、ヘキソキナーゼは、分画V−VIIで発見された。コンアルブミンの少量が分画IV及びVIで検出された。
(試験例8)
残基含みベンズイミダゾールと、イミダゾールとを含む充填剤における、タンパク質の混合物からのヘモグロビンの分析及び半分取分離
実験:
5種のタンパク質、ヘモグロビン、ヘキソキナーゼ、ペプシン、シトクロムC、及びα−キモトリプシノーゲンA(それぞれ0.48mg量、25mMリン酸緩衝液中pH7.4)をHPLCカラムに注入し、該カラムは、充填剤no.ND 07003を含み、該充填剤は、13%のベンズイミダゾール−2−チオアセチル及び10%の4−イミダゾリルアクリル残基で誘導体化されている。溶離は、25mMリン酸緩衝液pH7.4で10分間、0.25ml/分の開始で勾配として適用し、次に、0.5ml/分の流速で50分以内に50mM酢酸緩衝液pH3.5への直線的な緩衝液の交換を行い、その水準を同じ流速で最後に20分間維持した。溶離組成は、225nmの波長(図19)、280nm、290nm、及び500nmの吸収により調べ、7つの分画に集めた。遠心分離膜濾過により0.2ml溶液に濃縮した後、各分画のタンパク質含量をSDS−PAGE(図20に示す)によって定性的に分析した。比較のため、充填剤no.ND 07003における5種全ての各タンパク質(ヘモグロビン:注入量1.92mg)の並行分析運転が、カラム末端における集められた溶離液の測定pH値とともに、図21にプロットされている。イミダゾリルアクリル残基を欠いた、類似の参照充填剤no.ND 06386における分析的運転が図22に加えられている。
結果:
本実験の主要なデータが表13に要約されている。充填剤no.ND 07003で得られた分析的クロマトグラムは、固定相の合理的な良好な分離効果を示している。ヘモグロビンは、酸性及び塩基性タンパク質の両方の同時存在下で、7.5分という最も短い保持時間で検出され、100%回収された(参考としてND 06386:86%)。さらに、混合物のクロマトグラムは、単一タンパク質の重なりと一致した。予想されるように、酸性タンパク質であるヘキソキナーゼ及びペプシンは、充填剤に静電的に結合するが、その能力は低い(即ち、部分的な成功)。解決すべき困難な課題のほとんどは、ヘキソキナーゼが幅広い溶離挙動を示すために、ヘキソキナーゼからのヘモグロビンの分離ということになる。ペプシンの回収が常に低いということは、タンパク質の結合分画が、適用される最も低いpHでも充填剤から脱離されないということを示唆している。これに対して、α−キモトリプシノーゲンA及びヘモグロビンは、同じ勾配が使われた場合には、充填剤no.ND 06386(保持時間35.1及び35.7分)において分離されなかった。分析運転に関連して、半分取運転の分画IV(31:30−40:00分;4.25ml)は、ヘモグロギンの大部分を、いくらかのα−キモトリプシノーゲンAの残りとともに含んでいたが、他のタンパク質で汚染されていなかった。最初の混合物の他のタンパク質は、分画I(シトクロムC)、及び、分画V及びVI(ヘキソキナーゼ、α−キモトリプシノーゲンA)で発見された。微量のヘモグロビンが、後者の2つの分画にもあった。
表13:充填剤ND 07003における試験例8の試験混合物の保持データ