JP2013258810A - 交流回転機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】位置センサが故障しても、回転速度に拘わらず必要な精度による位置推定と制御が可能となる交流回転機の制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】推定手段4は、異常検知信号が出力された後は、同信号が出力される直前の検出位置θdetと推定位置θestとの位置偏差を位置偏差記憶値θmemとして記憶し、θmemとθdetとの加算値からθestを減算して得られる推定位置誤差Δθestに基づき検出磁束を演算し、回転機電流と推定電流との偏差である電流誤差eids、eiqsと検出磁束と推定磁束との偏差である磁束誤差eφdr、eφqrと電圧指令va*、vq*とに基づき推定位置θestと推定電流ids0、iqs0と推定磁束φdr0、φqr0と推定速度ωr0とを演算する。
【選択図】図3

Description

この発明は、誘導機や同期機といった交流回転機の回転子位置情報を得るための位置センサが故障したときにも常に精度良く交流回転機をベクトル制御できる交流回転機の制御装置に関するものである。
同期機や誘導機といった交流回転機を精度良く制御できる方法としてベクトル制御が幅広く知られている。ベクトル制御では、交流回転機の回転子位置や回転子速度を把握する必要があるため、一般的には位置センサや速度センサを交流回転機に取り付けることで、それらの情報を得ている。
しかしながら、位置センサや速度センサなどが故障した場合、それらのセンサから出力される情報が無くなったり誤差が生じたりするため、それらのセンサから出力される情報をそのまま利用して交流回転機をベクトル制御することが困難になる。
位置センサの故障には様々な種類があるが、位置センサから出力される信号が、交流回転機の回転子の真の位置からずれるという故障において、特に、位置センサから出力される信号が、交流回転機の回転子の真の位置から±90度〜±180度ずれる間違った情報が出力されると、交流回転機は速度指令とは逆方向に大きな速度で回転してしまう。この故障モードにおいて、交流回転機が、その稼動範囲が制限されている機械装置、例えば、ボールネジに接続されている場合、速度指令とは逆方向に回転する可能性があり、ボールネジの稼動部分がボールネジ端部に大きな速度で衝突してしまい、機械装置を破損させてしまう可能性がある。
よって、上記のようなセンサ故障が発生した場合、センサ故障を検知した後に、なるべく短時間でかつ少ない回転数で交流回転機を制動し停止させることが望ましい。
この場合、回転子に永久磁石を用いた交流回転機では、交流回転機を制動させる方法として、交流回転機の各相を短絡させることで、回転子の永久磁石による誘起電圧によって交流回転機内部を還流する電流により制動トルクを得るダイナミックブレーキがある。しかし、ダイナミックブレーキは、ベクトル制御を用いたときの制動トルクよりも小さく、また、ダイナミックブレーキの制動トルクは誘起電圧の大きさに依存するため、誘起電圧が小さくなる低速域では、特にダイナミックブレーキの制動トルクが更に小さくなる。
よって、ダイナミックブレーキでは、交流回転機を制動し停止するまでの時間や停止するまでの回転数(移動距離)が大きくなるということが欠点である。そこで、位置センサが故障したときは、位置センサレス制御や速度センサレス制御に切換えて、位置推定値や速度推定値を使って交流回転機をベクトル制御することで、ダイナミックブレーキよりも大きな制動トルクを得て、交流回転機を短時間でかつ少ない回転数で停止させることが必要である。
例えば、特許文献1は、ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、前記ロータの回転角を推定するための回転角推定手段と、前記ロータの回転角速度を求める手段と、前記ロータの回転角速度の大きさが所定値以上であることを条件に、前記回転角推定手段によって求められた推定回転角に基づいて前記モータを駆動制御する制御手段とを含むモータ制御装置を開示する。この特許文献1には、位置センサであるレゾルバが故障したときは、回転角速度の大きさが所定値以上であることを条件に、回転角推定手段によって求められた推定回転角を使うことでベクトル制御することが可能になることが開示されている。
特開2010−29031号公報
特許文献1は、回転角速度の大きさが所定値以上であることを条件として回転角推定手段によって、求められた推定回転角を使うことでベクトル制御を行うものであるため、回転角速度の大きさが所定値未満になるとベクトル制御を行うことが出来ない。よって、交流回転機(特許文献1ではモータ)を制動し停止させる場合は、回転角速度の大きさが所定値未満ではベクトル制御による大きな制動トルクを得られなくなるため、交流回転機が停止するまでの時間と回転数を少なくすることが困難である。
この発明は、位置センサが故障しても、回転速度に拘わらず必要な精度による位置推定と制御が可能となる交流回転機の制御装置を得ることを目的とする。
この発明に係る交流回転機の制御装置は、交流回転機に流れる回転機電流を検出する電流検出手段、交流回転機の回転子位置を検出し検出位置として出力する位置検出手段、電圧指令と回転機電流とに基づき交流回転機の回転子位置を推定し推定位置として出力する推定手段、指令値と回転機電流と推定位置または検出位置とに基づき電圧指令を出力する制御手段、および電圧指令に基づいて交流回転機に電圧を印加する電圧印加手段を備えた交流回転機の制御装置において、
検出位置または推定位置に基づき演算された交流回転機の回転速度が、推定手段により所望の推定精度が得られる速度以上の範囲で設定された所定設定速度以上であり、かつ、検出位置と推定位置との偏差である位置偏差が所定の位相差閾値以上のとき位置検出手段が異常と判定して異常検知信号を出力する異常検知手段を備え、
推定手段は、異常検知信号が出力された後は、異常検知信号が出力される直前の位置偏差を位置偏差記憶値として記憶し、位置偏差記憶値と検出位置と電圧指令と回転機電流とに基づき推定位置を出力するものとし、
制御手段は、異常検知信号が出力される前は、指令値と回転機電流と検出位置とに基づき、異常検知信号が出力された後は、指令値と回転機電流と推定位置とに基づき電圧指令を出力するものである。
以上のように、この発明に係る交流回転機の制御装置の推定手段は、異常検知信号が出力された後は、異常検知信号が出力される直前の位置偏差を位置偏差記憶値として記憶し、位置偏差記憶値と検出位置と電圧指令と回転機電流とに基づき推定位置を出力するものとしたので、異常検知信号が出力される直前の、従って、正確な位置情報を使用して、その後の推定位置を演算することで、精度の高い位置推定が可能となり、その結果、交流回転機の円滑な制御が実現する。
本発明の実施の形態1による交流回転機の制御装置の構成を示す図である。 図1の異常検知手段7の内部構成を示す図である。 図1の推定手段4の内部構成を示す図である。 推定手段4で演算する回転子磁束を説明するベクトル図である。 図3の適応状態観測器48の内部構成を示す図である。 本発明の実施の形態2による推定手段400の内部構成を示す図である。 本発明の実施の形態3による推定手段401の内部構成を示す図である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による交流回転機の制御装置の全体の構成を示す図である。先ず、本実施の形態1の全体構成と動作について説明する。図1の交流回転機1は、回転子に永久磁石を有する3相の永久磁石同期電動機である。電流検出手段2は、交流回転機1のU相、V相、W相に流れる回転機電流を検出するものであり、本実施の形態1の電流検出手段2は、U相回転機電流iuとW相回転機電流iwとの2相を検出し出力するが、他の2相や3相すべてを検出し出力するものでも構わない。
位置検出手段3は、交流回転機1の回転子位置を検出して、検出位置θdetとして出力するものであり、具体的には、エンコーダやレゾルバなどの位置センサである。なお、本実施の形態1では、回転子磁束(永久磁石磁束)のN極方向(以下、実位置と記す)を検出位置θdet=0度と定義する。推定手段4は、交流回転機1の回転子位置を推定して、推定位置θestとして出力するものである。推定位置θestも検出位置θdetと同様に、永久磁石のN極方向を推定位置θest=0度と定義する。制御手段5は、交流回転機1の速度が、外部より入力する指令値としての速度指令ω*に一致するように3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力する。電圧印加手段6は、制御手段5の出力である3相電圧指令vu*、vv*、vw*に基づいて、交流回転機1に電圧を印加するものであり、具体的には、インバータなどの半導体電力変換器である。
異常検知手段7は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetと推定手段4の出力である推定位置θestとに基づいて、検出位置θdetが異常であるか否かを検知し、信号flugとして出力するものである。なお、本実施の形態1では、上記「検出位置θdetが異常」とは、検出位置θdet=0度が実位置からずれた状態のことであり、検出手段3が完全に故障して検出手段3からの出力が得られなくなった場合などは除く。
次に、本実施の形態1の特徴である推定手段4、制御手段5、異常検知手段7の詳細動作について説明する。先ず、異常検知手段7について説明する。
図2は、図1の異常検知手段7の内部構成図である。速度演算器71は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetから交流回転機1の回転速度ωrを演算し出力する。速度演算器71は、検出位置θdetから回転速度ωrを演算する方法ならどのような方法のものでも構わないが、例えば、任意の時間ΔTの間の検出位置θdetの変化量Δθdetより(1)式のように求める。
Figure 2013258810
なお、(1)式のように、回転速度ωrの演算には検出位置θdetの変化量であるΔθdetを必要とするだけで、検出位置θdetの絶対位置を必要としない。即ち、位置検出手段3から出力される検出位置θdetが実位置からずれていても、回転速度ωrは正しく演算することが出来る。
位相差演算器72は、(2)式のように、検出位置θdetと推定位置θestとの差分の絶対値である位相差θerrを演算し出力する。推定手段4が出力する推定位置θestが正しく実位置を推定していれば、検出位置θdetが実位置と一致していない、即ち、θerr≠0となったとき位置検出手段3が異常であると判断出来る。
Figure 2013258810
異常検知信号演算器73は、速度演算器71の出力である回転速度ωrが所定設定速度以上で、かつ、位相差演算器72の出力である位相差θerrが、任意に設定した所定の位相差閾値θlev以上となったとき位置検出手段3が異常であると判断し、信号flug=1として異常検知信号を出力する。一度、異常を検知してflug=1とすると、上記の条件に拘わらず、flug=1として異常検知信号を出力し続けるものとする。
異常でない時は、flug=0として故障検知信号を出力しない。
なお、上記の異常有りと判定する2つの条件の前者である、「回転速度ωrが所定設定速度以上」という条件は、異常検知がされていない(flug=0)条件で、後述する推定手段4が正しく実位置を推定して推定位置θestを出力出来る、即ち、所望の推定精度が得られる速度以上の範囲で設定された速度以上という意味である。
この所定設定速度は、交流回転機1の誘起電圧の大きさに依存するため、交流回転機1の種類や容量毎に設定する。
なお、ここで判定に使用する回転速度ωrは、後述の推定位置θestを基に、(1)式と同様の演算式により求めるようにしてもよい。
また、位相差閾値θlevは、任意に設定すればよい。一例としては、トルク指令に対する実トルクの減少量から設定してもよい。例えば、トルクに対応する、後述するq軸の実電流がq軸電流指令の70%以下となるような位相差を位相差閾値θlevと設定する場合は、(3)式のように逆余弦演算により求めることができ、この場合、約0.7954rad(約45.57度)となる。
Figure 2013258810
次に、推定手段4について説明する。
図3は、図1の推定手段4の内部構成図である。位置偏差記憶器41は、検出位置θdetと推定位置θestと信号flugとより(4)式のように位置偏差記憶値θmemを演算し出力するものである。
Figure 2013258810
flug=0のときは、位置偏差(θest−θdet)をそのままθmemとして出力する。
flug=1となった場合は、flug=1となる1演算周期前の値、即ち、異常検知信号が出力される直前の値を、記憶保持するように動作する。従って、位置偏差記憶器41から出力するθmemは、異常検知信号が出力された後は、固定値となる。
加減算器42は、検出位置θdetと位置偏差記憶値θmemとを加算し出力するものである。位置偏差記憶値θmemは、常に、異常検知信号が出力されていない(flug=0)ときの位置偏差(θest−θdet)であり、この場合、前述したように、推定位置θestは、回転子磁束の実位置を推定しているとしてよいから、この位置偏差記憶値θmemは、実位置と検出位置θdetとの偏差とみなすことができる。従って、検出位置θdetと位置偏差記憶値θmemとを加算した加減算器42の出力は、交流回転機1の実位置と一致する。
加減算器43は、加減算器42の出力から推定位置θestを減算して推定位置誤差Δθestとして出力する。通常は、実位置と推定位置とはほぼ一致するのでΔθest≒0となるが、実位置と推定位置とに誤差が生じたときはΔθest≠0となる。
検出磁束演算器44は、推定位置誤差Δθestを用いて、(5)式のように、後述する適応状態観測器48が構成する回転座標d−q軸上からみた、交流回転機1の実際の回転子磁束を検出磁束φdrL、φqrLとして演算し出力する。
Figure 2013258810
図4は、検出磁束φdrL、φqrLを説明するためのベクトル図である。図4(a)は、Δθest=0、即ち、適応状態観測器48が構成する回転座標d−q軸のd軸と実位置が一致している場合である。この場合、交流回転機1の回転子磁束φfは、(5)式のφdrLと同一となり、φqrLはゼロとなる。
図4(b)は、Δθest≠0の場合である。この場合、交流回転機1の回転子磁束φfをd軸に射影したものがφdrL、q軸に射影したものがφqrLとなる。以上のように、検出磁束φdrL、φqrLを演算することで、回転座標d−q軸上からみた、交流回転機1の実際の回転子磁束を演算する。
加減算器45は、電流検出手段2で検出した回転機電流をd−q軸上に換算したd軸電流ids、q軸電流iqsから適応状態観測器48から出力するd軸推定電流ids0、q軸推定電流iqs0を減算し、d軸電流誤差eids、q軸電流誤差eiqsとして出力する。
加減算器46は、検出磁束演算器44の出力である検出磁束φdrL、φqrLから適応状態観測器48の出力である推定磁束φdr0、φqr0を減算したd軸磁束誤差eφdr、q軸磁束誤差eφqrを出力する。乗算器47は、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrに信号flugを乗算することで、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを有効、無効にするものであり、flug=1となる異常時のみd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrが有効となるようにしている。
次に、適応状態観測器48について説明する。適応状態観測器48は、d−q軸上の電圧指令vd*、vq*とd、q軸電流誤差eids、eiqsとd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrと交流回転機1の定数とを用いて推定位置θestを求めるものである。
なお、この種の演算を行う適応状態観測器は、例えば、特許第4672236号で公知であるので、以下の説明では、公知の部分については、適宜この公知文献を引用して具体的な説明は省略し、本願で創案した部分を中心に詳細に説明するものとする。
図5は、図3の適応状態観測器48の内部構成図である。図5は、以下の(6)式〜(9)式で表される演算を実行する適応状態観測器48の構成を示している。また、(6)(7)式中の行列A0、B、C1,C2、Hは、ゲイン行列であり、その中身は(10)式で表すことができる。行列A0、B、C1,C2は、交流回転機1の定数などにより決まるものであり、行列Hは自由に設定することが出来る。例えば、h11、h12、h21,h22,h31,h32,h41,h42は、特許第4672236号の図9に記載されているように推定速度ωr0によって各増幅ゲインの値を変更するようにする。また、h13、h14、h23、h24、h33、h34、h43、h44については、特許第4672236号に記載されていないが、これらも推定速度ωr0によって各増幅ゲインの値を変更するようにしてもよい。なお、(10)式中のRは交流回転機1の固定子抵抗、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、ωは一次角周波数、ωr0は推定速度である。
Figure 2013258810
図5において、ゲイン行列演算器481は、(10)式のゲイン行列Hをd、q軸電流誤差のベクトル(eids,eiqs)(Tは転置行列の意味)とd、q軸磁束誤差のベクトル(eφdr,eφqr)に乗算して増幅偏差信号のベクトル(e1,e2,e3,e4)として出力するものであり、(6)式の右辺第3項部分に相当する。
ゲイン行列演算器482は、d、q軸電圧指令のベクトル(vd*,vq*)に(10)式中のゲイン行列Bを乗算して出力するものであり、(6)式の右辺第2項部分に相当する。
ゲイン行列演算器483は、後述する積分器485の出力であるd、q軸推定電機子反作用φds0、φqs0とd、q軸推定磁束φdr0、φqr0とのベクトル(φds0,φqs0,φdr0,φqr0)に(10)式中のゲイン行列A0を乗算して出力するものであり、(6)式の右辺第1項部分に相当する。
加減算器484は、ゲイン行列演算器481とゲイン行列演算器482とゲイン行列演算器483との出力を加減算して出力するものであり、これが(6)式の右辺に相当する。
積分器485は、加減算器484の出力4つをそれぞれ積分してd、q軸推定電機子反作用φds0、φqs0とd、q軸推定磁束φdr0、φqr0とのベクトル(φds0,φqs0,φdr0,φqr0)を出力する。ゲイン行列演算器486は、積分器485の出力に(10)式中のゲイン行列C1を乗算することでd、q軸推定電流ids0、iqs0を出力するものであり、(7)式の左部分に相当する。
ゲイン行列演算器487は、積分器485の出力に(10)式中のゲイン行列C2を乗算することでd、q軸推定磁束φdr0、φqr0を出力するものであり、(7)式の右部分に相当する。
速度推定器488は、(8)式のように、d、q軸電流偏差eids、eiqsとd、q軸推定磁束φdr0、φqr0とを用いて推定速度ωr0を求める。(8)式中のkpは比例ゲイン、kiは積分ゲインであり任意の値に設定出来る。
積分器489は、(9)式のように推定速度ωr0を積分することで推定位置θestを出力するものである。
この適応状態観測器48は、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを用いていることに特徴があり、後述するように、特許第4672236号と異なるところである。以下、この特徴について詳細に説明をする。
本発明の適応状態観測器48は、交流回転機1の数式モデルである(10)式のゲイン行列A0を用いてd−q軸上の推定電機子反作用と推定磁束を求めるものである。同様に、d−q軸上の推定電機子反作用と推定磁束を求める適応状態観測器は特許第4672236号に示されているが、前述したように本発明は、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを用いていることが異なる。
特許第4672236号では、技術的に本願に最も近い同明細書の実施の形態3の(34)式から判るように、ゲイン行列Hにd、q軸電流誤差eids、eiqsを乗算したもののみを使用しているため低速域では推定精度が悪化し、推定速度や推定位置の誤差も大きくなる。その理由は、低速域では交流回転機1の誘起電圧が小さくなることにより、d、q軸電流誤差eids、eiqsに含まれる抵抗誤差やインダクタンス誤差の割合が位置誤差に対して大きくなるためである。特に、交流回転機1が停止している場合(ゼロ速)は誘起電圧がゼロであり、また、交流回転機1に流れる電流は直流となるため、d、q軸電流誤差eids、eiqsに含まれるのは抵抗誤差成分のみとなるので、ゼロ速では原理的に特許第4672236号の構成では電機子反作用および磁束を正しく推定することは不可能であり、推定速度や推定位置も正しく推定することは出来ない。
これらの問題を解決するのが、本発明のd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrである。前述したように、検出磁束φdrL、φqrLは、推定位置誤差Δθestに基づいて演算するものであるので、検出磁束φdrL、φqrLから推定磁束φdr0、φqr0を減算したd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrは、推定位置誤差Δθestによる成分のみが含まれ、抵抗誤差やインダクタンス誤差などを含まない。よって、本発明の適応状態観測器48は、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrにゲイン行列Hを乗算した増幅偏差信号e3、e4を用いることで、d、q軸電流誤差eids、eiqsに含まれる抵抗誤差やインダクタンス誤差の割合が位置誤差に対して大きくなる停止や低速域においても良好に電機子反作用と磁束を推定することができ、その結果、推定速度と推定位置も良好に推定できる。
また、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrは、前述したように乗算器47にて信号flugを乗算して、flug=0(異常検知信号が出力されていない時)では、d、q軸磁束誤差を等価的にゼロとして増幅信号e1、e2のみを利用することで、実質上特許4672236号と同一の適応状態観測器として動作するようにする。
これは、前述したように検出磁束の演算において、検出位置θdetに位置偏差記憶値θmemを加算した値が実位置とほぼ同一となることとして利用するが、異常検知信号が出力される前(flug=0)では、この値が実位置と同一でない場合がある(交流回転機1の回転速度ωrが、所定設定速度未満の場合には、他の条件に拘わらずflug=0であり、推定位置θestも実位置と一致していない場合がある)ため、検出磁束は正しい値を演算していない。よって、適応状態観測器48の出力である推定位置θestも正しく推定位置を演算し出力できなくなり、その結果、異常検知手段7が位置検出手段3の異常を正しく検知出来なくなる可能性があるためである。
一方、異常検知して異常検知信号が出された後は、flug=1となることで、増幅信号e3、e4も有効にする。
このように、推定手段4は、異常検知手段7が異常を検出して異常検知信号が出力され、flug=1となった場合、flug=1となる直前である1演算周期前の推定位置θestと検出位置θdetとの偏差を位置偏差記憶値θmemとして記憶し、記憶した位置偏差記憶値θmemと現在の検出位置θdetとに基づいてd、q軸検出磁束φdrL、φqrLを演算し、演算したd、q軸検出磁束φdrL、φqrLと適応状態観測器48で演算するd、q軸推定磁束φdr0、φqr0との偏差であるd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48で推定位置θestを演算し出力するようにすることで、適応状態観測器48は、停止や低速域でも良好に位置推定出来るようにしている。
次に、図1を参照して制御手段5について説明する。加減算器51は、制御手段5の外部から入力する速度指令ω*から後述する選択器59の出力であるフィードバック速度ωctrlを減算した値を出力する。速度制御器52は、加減算器51の出力がゼロになるように、即ち、フィードバック速度ωctrlが速度指令ω*に追従するように比例積分演算することでd、q軸電流指令id*、iq*を出力する。加減算器53は、速度制御器52の出力であるd、q軸電流指令id*、iq*から後述する座標変換器B56の出力であるd、q軸電流ids、iqsをそれぞれ減算した値を出力する。
電流制御器54は、加減算器53の出力がゼロになるように、即ち、d、q軸電流ids、iqsがd、q軸電流指令id*、iq*に追従するように比例積分演算することでd、q軸電圧指令vd*、vq*を出力する。座標変換器A55は、d、q軸電圧指令vd*、vq*を、後述する選択器57が出力する制御位置θctrlに同期して回転するd−q軸座標から3相交流座標へ座標変換して3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し電圧印加手段6へ出力する。座標変換器B56は、電流検出手段2で検出したU相回転機電流iuとW相回転機電流iwを、選択器57の出力である制御位相θctrlに同期して回転するd−q軸上の電流であるd、q軸電流ids、iqsに座標変換して出力する。
選択器57は、異常検知手段7の出力である信号flugが0の時は位置検出手段3の出力である検出位置θdetを制御位相θctrlとして出力し、信号flugが1となる異常検知時は推定手段4の出力である推定位置θestを制御位相θctrlとして出力する。速度演算器58は、速度演算器71と同様に(1)式などのようにして検出位置θdetから回転速度ωrを演算して出力する。選択器59は、異常検知手段7の出力である信号flugが0の時は速度演算器58の出力である回転速度ωrをフィードバック速度ωctrlとして出力し、信号flugが1となる異常検知時は推定手段4の出力である推定速度ωr0をフィードバック速度ωctrlとして出力する。
このように、制御手段5は、異常検知手段7が異常検知信号を出力する前は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetと、検出位置θdetから速度演算器58で演算した回転速度ωrと、電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力し、異常検知手段7が異常検知信号を出力した後は、推定手段4の出力である推定位置θestと推定速度ωr0と電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力するため、位置検出手段3が異常になっても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能である。
以上のように、本発明の実施の形態1による交流回転機の制御装置は、異常検知手段7が異常を検知して異常検知信号を出力しflug=1となった場合、推定手段4は、flug=1となる直前である1演算周期前の推定位置θestと検出位置θdetとの偏差を位置偏差記憶値θmemとして記憶し、記憶した位置偏差記憶値θmemと現在の検出位置θdetとに基づいて、d、q軸検出磁束φdrL、φqrLを演算し、演算したd、q軸検出磁束φdrL、φqrLと適応状態観測器48で演算するd、q軸推定磁束φdr、φqrとの偏差であるd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48で推定位置θestを演算し出力するようにすることで、適応状態観測器48は、停止や低速域でも良好に位置推定出来るようにする。
また、制御手段5は、異常検知手段7が異常を検知する前は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetと、検出位置θdetから速度演算器58で演算した回転速度ωrと、電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力し、異常検知手段7が異常を検知した後は、推定手段4の出力である推定位置θestと推定速度ωr0と電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力するため、位置検出手段3が異常になっても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となり、特に、低速域においても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となる。その結果、異常検知手段7が異常を検知して交流回転機1を停止させる場合、停止するまでベクトル制御が出来るため、従来のダイナミックブレーキよりも大きな制動トルクを得ることが可能となり、異常検知してから短時間かつ少ない回転数で交流回転機1を停止させることが出来る。
実施の形態2.
先の実施の形態1の推定手段4は、異常検知手段7が異常を検知して異常検知信号が出力され信号flug=1となった直前の位置偏差記憶値θmemを記憶し、flug=1となった直後からは、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを適応状態観測器48で利用するような構成にしていた。しかしながら、flug=1となった直後の交流回転機1の速度が比較的大きい場合は、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを適応状態観測器48で利用しなくても必要な推定精度が得られるため、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを適応状態観測器48で利用しなくてもよい。また、異常検知手段7が異常を検知した後に、検出位置θdetと推定位置θestとの位置偏差が変化する場合は、実施の形態1のように、位置偏差記憶値θmemを記憶してしまうと、位置偏差記憶値θmemを利用して演算するd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrに余分な誤差成分が発生するため、適応状態観測器48が良好に位置推定出来なくなる場合がある。
そこで、本実施の形態2では、信号flug=1となった後に、適応状態観測器48が、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを利用しないと必要な推定精度が得られない所定の速度以下となった時点で位置偏差記憶値θmemを記憶し、適応状態観測器48は、上記所定の速度以下のときのみd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを利用するような構成にするものである。
図6は、本発明の実施の形態2による推定手段400の内部構成図である。本実施の形態2では、図1の推定手段4を図6の推定手段400に変更している以外は、すべて先の実施の形態1の場合と同一であるため、推定手段400以外の説明は省略する。
推定手段400の低速判別器411は、(11)式のように、適応状態観測器48が出力する推定速度の絶対値|ωr0|が所定の速度ωlim以下となったら低速判別信号を出力して信号swL=1とし、推定速度の絶対値|ωr0|が速度ωlimより大きいときは、信号swL=0として低速判別信号を出力しない。
Figure 2013258810
所定の速度ωlimは、適応状態観測器48が、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないで必要な推定精度を得ることが出来る下限速度に設定することが望ましい。適応状態観測器48が、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないで必要な推定精度を得ることが出来る下限速度とは、交流回転機1の誘起電圧定数により変わるため、交流回転機1の種類や容量ごとに設定する必要があるが、例えば、定格速度の1/10(定格速度が2000r/minならば、ωlimは200r/min)などに設定する。このようにすることで、信号swL(0または1)は、交流回転機1の現在の速度が、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないで適応状態観測器48が必要な精度で位置推定出来る速度であるかそうでないかを表す信号となる。
乗算器412は、異常検知手段7の出力である信号flugと低速判別器411の出力である信号swLとを乗算した信号sgを出力するものである。信号sgは、flug=1でかつswL=1のとき、即ち、異常検知信号と低速判別信号とが共に出力されたときのみsg=1となり、flug=1でかつswL=1でないとき、即ち、異常検知信号と低速判別信号とが共に出力される前、従って、異常検知信号と低速判別信号との両信号が出力されていないかいずれかの信号のみが出力されているときはsg=0となる。
位置偏差記憶器410は、検出位置θdetと推定位置θestと乗算器412の出力である信号sgとより、(12)式のように、位置偏差記憶値θmemを演算し出力するものであり、信号sgが1となった場合は、sgが1となる1演算周期前の値を保持するように動作し、即ち、位置偏差記憶器410から出力するθmemは固定値となる。
Figure 2013258810
加減算器42、加減算器43、検出磁束演算器44、加減算器45、加減算器46は、実施の形態1の推定手段4と同一であるので説明を省略する。
乗算器470は、加減算器46の出力であるd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrと乗算器412の出力である信号sgとを乗算することで、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを有効、無効にするものであり、信号sg=1となるとき、即ち、位置検出手段3が異常であり、かつ、交流回転機1の速度が、適応状態観測器48がd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないと必要な推定精度が得られない速度であるときのみd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrが有効となるようにしている。
適応状態観測器48は、実施の形態1の推定手段4と同一であるので詳細な説明は省略するが、実施の形態1では、flug=1となった直後から、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48で推定位置θestを演算し出力するようにするが、本実施の形態2の適応状態観測器48は、信号sg=1となるとき、即ち、位置検出手段3が異常であり、かつ、交流回転機1の速度が、適応状態観測器48がd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないと必要な推定精度が得られなくなる速度となった直後からd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48により推定位置θestを演算し出力するようにしているところが異なる。
以上のように、本発明の実施の形態2による交流回転機の制御装置は、異常検知手段7が位置検出手段3の異常を検知した後、推定速度ωr0の絶対値が所定の速度ωlim以下となって低速判別信号が出力されswL=1となった場合、推定手段400は、swL=1となる直前の1演算周期前の推定位置θestと検出位置θdetとの偏差を位置偏差記憶値θmemとして記憶し、位置検出手段3の異常を検知した後で、かつ、推定速度ωr0の絶対値が所定の速度ωlim以下の場合のみ、位置偏差記憶値θmemと現在の検出位置θdetとに基づいて演算するd、q軸検出磁束φdrL、φqrLと適応状態観測器48で演算するd、q軸推定磁束φdr、φqrとの偏差であるd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48で推定位置θestを演算し出力するようにすることで、異常検知手段7が異常を検知した後に、検出位置θdetと推定位置θestとの位置偏差が変化してもその偏差を的確に捉えることが可能となるとともに、適応状態観測器48は、停止や低速域でも良好に位置推定出来るようになる。
また、制御手段5は、実施の形態1と同様に、異常検知手段7が異常を検知する前は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetと、検出位置θdetから速度演算器58で演算した回転速度ωrと、電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力していたものを、異常検知手段7が異常を検出した後は、推定手段400の出力である推定位置θestと推定速度ωr0と電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力するため、位置検出手段3が異常になっても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となり、特に、低速域においても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となる。その結果、異常検知手段7が異常を検知して交流回転機1を停止させる場合、停止するまでベクトル制御が出来るため、従来のダイナミックブレーキよりも大きな制動トルクを得ることが可能となり、異常検知してから短時間かつ少ない回転数で交流回転機1を停止させることが出来る。
実施の形態3.
先の実施の形態2では、推定手段400の低速判別器411が推定速度ωr0を使って、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを利用しなくても適応状態観測器48が必要な精度で位置推定出来る速度であるかそうでないかを判別して信号swlを出力しているが、本実施の形態3では、低速判別器が回転速度ωrを用いて低速判別信号を出力するようにする。
図7は、本発明の実施の形態3の推定手段401の内部構成図である。実施の形態2の場合と同様に、図1の推定手段4を図7の推定手段401に変更している以外は、すべて同一の構成、動作であるため、推定手段401以外の説明は省略する。また、図7の推定手段401は、速度演算器421と低速判別器422以外は図6の推定手段400とすべて同一の構成、動作であるため、速度演算器421と低速判別器422以外の詳細な説明は省略する。
速度演算器421は、速度演算器71と同様に(1)式などのようにして検出位置θdetから回転速度ωrを演算して出力する。
低速判別器422は、(13)式のように、速度演算器421が出力する回転速度の絶対値|ωr|が、所定の速度ωlim以下となったら低速判別信号を出力し信号swL=1とする。回転速度の絶対値|ωr|が、所定の速度ωlimより大きいときは、信号swL=0として低速判別信号を出力しない。
Figure 2013258810
所定の速度ωlimは、先の実施の形態2と同様に設定すればよい。このようにすることで、回転速度ωrを使った場合も、実施の形態2と同様に、信号swL(swL=0または1)は、交流回転機1の現在の速度が、d、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを使わないで適応状態観測器48が必要な精度で位置推定出来る速度であるかそうでないかを表す信号となる。速度演算器421と低速判別器422以外は実施の形態2と同様に動作するようにする。
以上のように、本発明の実施の形態3による交流回転機の制御装置は、異常検知手段7が位置検出手段3の異常を検知した後、回転速度ωrの絶対値が所定速度ωlim以下となって低速判別信号が出力されswL=1となった場合、推定手段401は、swL=1となる直前の1演算周期前の推定位置θestと検出位置θdetとの偏差を位置偏差記憶値θmemとして記憶し、位置検出手段3の異常を検知した後で、かつ、回転速度ωrの絶対値が所定の速度ωlim以下の場合のみ、位置偏差記憶値θmemと現在の検出位置θdetとに基づいて演算するd、q軸検出磁束φdrL、φqrLと適応状態観測器48で演算するd、q軸推定磁束φdr、φqrとの偏差であるd、q軸磁束誤差eφdr、eφqrを増幅した増幅信号e3、e4を用いて、適応状態観測器48で推定位置θestを演算し出力するようにすることで、異常検知手段7が異常を検知した後に、検出位置θdetと推定位置θestとの位置偏差が変化してもその偏差を的確に捉えることが可能となるとともに、適応状態観測器48は、停止や低速域でも良好に位置推定出来るようになる。
また、制御手段5は、実施の形態1と同様に、異常検知手段7が異常を検知する前は、位置検出手段3の出力である検出位置θdetと、検出位置θdetから速度演算器58で演算した回転速度ωrと、電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力していたものを、異常検知手段7が異常を検出した後は、推定手段401の出力である推定位置θestと推定速度ωr0と電流検出手段2の出力である回転機電流iu、iwとに基づいて、3相電圧指令vu*、vv*、vw*を演算し出力するため、位置検出手段3が異常になっても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となり、特に、低速域においても、交流回転機1をベクトル制御により駆動することが可能となる。その結果、異常検知手段7が異常を検知して交流回転機1を停止させる場合、停止するまでベクトル制御が出来るため、従来のダイナミックブレーキよりも大きな制動トルクを得ることが可能となり、異常検知してから短時間かつ少ない回転数で交流回転機1を停止させることが出来る。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 交流回転機、2 電流検出手段、3 位置検出手段、
4,400,401 推定手段、41,410 位置偏差記憶器、
42,43,45,46 加減算器、44 検出磁束演算器、
47,412,470 乗算器、411,422 低速判別器、421 速度演算器、
48 適応状態観測器、481,482,483,486,487 ゲイン行列演算器、484 加減算器、485,489 積分器、488 速度推定器、5 制御手段、
51,53 加減算器、52 速度制御器、54 電流制御器、55 座標変換器A、
56 座標変換器B、57,59 選択器、58 速度演算器、6 電圧印加手段、
7 異常検知手段、71 速度演算器、72 位相差演算器、
73 異常検知信号演算器。

Claims (4)

  1. 交流回転機に流れる回転機電流を検出する電流検出手段、前記交流回転機の回転子位置を検出し検出位置として出力する位置検出手段、電圧指令と前記回転機電流とに基づき前記交流回転機の回転子位置を推定し推定位置として出力する推定手段、指令値と前記回転機電流と前記推定位置または前記検出位置とに基づき前記電圧指令を出力する制御手段、および前記電圧指令に基づいて前記交流回転機に電圧を印加する電圧印加手段を備えた交流回転機の制御装置において、
    前記検出位置または前記推定位置に基づき演算された前記交流回転機の回転速度が、前記推定手段により所望の推定精度が得られる速度以上の範囲で設定された所定設定速度以上であり、かつ、前記検出位置と前記推定位置との偏差である位置偏差が所定の位相差閾値以上のとき前記位置検出手段が異常と判定して異常検知信号を出力する異常検知手段を備え、
    前記推定手段は、前記異常検知信号が出力された後は、前記異常検知信号が出力される直前の前記位置偏差を位置偏差記憶値として記憶し、前記位置偏差記憶値と前記検出位置と前記電圧指令と前記回転機電流とに基づき前記推定位置を出力するものとし、
    前記制御手段は、前記異常検知信号が出力される前は、前記指令値と前記回転機電流と前記検出位置とに基づき、前記異常検知信号が出力された後は、前記指令値と前記回転機電流と前記推定位置とに基づき前記電圧指令を出力することを特徴とする交流回転機の制御装置。
  2. 前記推定手段は、前記位置偏差を入力し、前記異常検知信号が出力される前は、前記位置偏差を出力し、前記異常検知信号が出力された後は、前記位置偏差記憶値を出力する位置偏差記憶器、この位置偏差記憶器の出力と前記検出位置との加算値から前記推定位置を減算して得られる推定位置誤差に基づき検出磁束を演算する検出磁束演算器、および前記異常検知信号が出力される前は、前記回転機電流と推定電流との偏差である電流誤差と前記電圧指令とに基づき前記推定位置と前記推定電流と推定磁束と推定速度とを演算し、前記異常検知信号が出力された後は、前記回転機電流と前記推定電流との偏差である前記電流誤差と前記検出磁束と推定磁束との偏差である磁束誤差と前記電圧指令とに基づき前記推定位置と前記推定電流と前記推定磁束と前記推定速度とを演算する適応状態観測器を備えたことを特徴とする請求項1記載の交流回転機の制御装置。
  3. 前記検出位置または前記推定位置に基づき演算された前記交流回転機の回転速度が、前記推定手段の前記適応状態観測器により前記推定位置を前記電流誤差と前記磁束誤差と前記電圧指令とに基づき演算しないと必要な推定精度が得られない速度以下になったとき低速判別信号を出力する低速判別器を備え、
    前記位置偏差記憶器は、前記位置偏差を入力し、前記異常検知信号と前記低速判別信号とが共に出力される前は、前記位置偏差を出力し、前記異常検知信号と前記低速判別信号とが共に出力された後は、前記異常検知信号と前記低速判別信号が共に出力される直前の前記位置偏差を位置偏差記憶値として記憶して出力するものであり、前記適応状態観測器は、前記異常検知信号と前記低速判別信号とが共に出力される前は、前記回転機電流と推定電流との偏差である電流誤差と前記電圧指令とに基づき前記推定位置と前記推定電流と前記推定磁束と前記推定速度とを演算し、前記異常検知信号と前記低速判別信号とが共に出力された後は、前記回転機電流と前記推定電流との偏差である前記電流誤差と前記検出磁束と前記推定磁束との偏差である前記磁束誤差と前記電圧指令とに基づき前記推定位置と前記推定電流と前記推定磁束と前記推定速度とを演算するものとしたことを特徴とする請求項2記載の交流回転機の制御装置。
  4. 前記指令値は速度指令値であり、
    前記電圧印加手段は、前記電圧指令としての3相電圧指令に基づいて前記交流回転機に電圧を印加するものであり、
    前記制御手段は、速度制御器と電流制御器と座標変換器Aと座標変換器Bとを備え、
    前記異常検知信号が出力される前は、前記速度制御器は、前記検出位置に基づき演算された回転速度が前記速度指令値に追従するように回転二軸座標のd−q軸上の電流指令を出力し、前記座標変換器Bは、前記検出位置に基づき前記回転機電流を前記d−q軸上の電流に変換して出力し、前記電流制御器は、前記d−q軸上の電流が前記d−q軸上の電流指令に追従するように前記d−q軸上の電圧指令を出力し、前記座標変換器Aは、前記検出位置に基づき前記d−q軸上の電圧指令を前記3相電圧指令に変換して前記電圧印加手段に出力し、
    前記異常検知信号が出力された後は、前記速度制御器は、前記推定位置に基づき演算された推定速度が前記速度指令値に追従するように回転二軸座標のd−q軸上の電流指令を出力し、前記座標変換器Bは、前記推定位置に基づき前記回転機電流を前記d−q軸上の電流に変換して出力し、前記電流制御器は、前記d−q軸上の電流が前記d−q軸上の電流指令に追従するように前記d−q軸上の電圧指令を出力し、前記座標変換器Aは、前記推定位置に基づき前記d−q軸上の電圧指令を前記3相電圧指令に変換して前記電圧印加手段に出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の交流回転機の制御装置。
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