JP5745105B2 - 交流回転機の制御装置 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1に記載の発明は、高周波交番電圧を印加し、その直交方向に流れる高周波電流の振幅が0となるように磁極位置を推定方法が開示されている。
また、特許文献2に記載の発明は、高周波インピーダンスが一致するような軸に高周波交番電圧を印加するため、無負荷時は、高周波交番電圧を印加する軸と、トルクが発生しない軸とが一致するが、負荷時には高周波交番電圧を印加する軸が、トルクが発生しない軸からずれてしまい、振動や騒音の原因となる問題があった。
図1は、本発明の実施の形態1における交流回転機の制御装置の全体構成を示すものである。図において、交流回転機1は同期電動機であって、ここでは、永久磁石を用いた同期機である。本実施の形態では、同期電動機を例に挙げて説明するが、他種類の回転機であっても同様の原理で構成することが可能である。
電流ベクトル検出手段2は、交流回転機1の三相電流iu,iv,iwの電流を検出し、座標変換器21において、後述する推定磁極位置θ0を用いて、交流回転機1の回転子に同期して回転する直交座標として公知であるd−q軸上の電流に座標変換し、これを検出電流ベクトル(ids,iqs)として出力する。
三相電流を検出するには、電流を三相とも検出するほか、2相分を検出して三相電流の和がゼロであることを利用して三相電流を求めてもよいし、インバータ母線電流やスイッチング素子に流れる電流とスイッチング素子の状態から三相電流を演算してもよい。
なお、本実施の形態では、制御手段3は比例積分制御を用いて電圧指令ベクトルを生成する方法を取っているが、例えばV/f制御などの制御方式であっても高周波交番電圧ベクトル指令を加算すれば同様の原理で構成することが可能である。
交番電流振幅演算手段5は、詳しくは図3の構成図のように、検出電流ベクトルから、フィルタ51を用いて得られる高周波電流ベクトルを抽出し、直交成分抽出器52を用いて、高周波電流の直交成分の振幅を演算し、交番電流振幅として出力する。
まず、高周波交番電圧を印加して磁極位置を演算する方法について説明する。 はじめに、前述した高周波交番電圧ベクトル発生器33が高周波交番電圧ベクトルvdh,vqhを出力するときに、交流回転機1に流れる高周波電流ベクトルの数式について説明する。
式(9)より、△θをゼロに近づけることは、|iqh|をゼロに近づけることに等しい。よって推定位置θ0は比例積分器を用いて式(10)で表すことができる。
なお、高周波電圧の角周波数ωhと高周波電圧振幅Vhは高周波交番電圧ベクトル発生器33で任意に設定出来るものであるため、既知、L、lは式(3)の但し書きからLd、Lqより求めることが出来るものであり、Ld、Lqは事前に測定することで把握できるためL、lも既知である。
以上のように、高周波電圧ベクトルを印加した軸から偏差△θは|iqh|に基づいて演算することができる。
前述のとおり、負荷時には交流回転機のインダクタンスが磁気飽和するため、ある負荷時に位置誤差θeが発生するとすれば、図7に示すように、ある負荷時のインダクタンス分布は、無負荷時の分布に比べてθeだけ変化する。この変化を式(3)で表すため、Ldc,Lqc,Ldqcを式(11)で定義しなおす。
式(11)を用いて式(3)を展開すると式(12)が得られる。また、高周波電流ベクトルiqhの大きさ|iqh|は式(13)となる。
ここで、|iqh|がゼロに近づくように式(10)の比例積分器を構成すると、式(13)より、(△θ−θe)がゼロに近づく。すなわち、△θはθeに収束するため、図8に示すように、推定磁極位置θ0の示すd軸は、実際の磁極位置dm軸からθeずれた位置で検出される。
磁極位置演算手段6は、図10のように、交番電流振幅指令と交番電流振幅の偏差を出力する加減算器61と、上記偏差から推定磁極位置を出力する磁極位置推定器62から構成する。磁極位置推定器62は、加減算器61から入力される偏差値に基づき、式(16)を用いて推定磁極位置を出力する。
以上が、磁極位置演算手段6の構成である。
実施の形態1では、高周波電圧を用いて、負荷時であっても磁極位置誤差を発生させない磁極位置推定方法を示した。しかし、この方法は前述したように、高回転域で高周波電圧を与えることは運転効率や電圧利用率、最大電流といった点で不利である。
実施の形態2では、低〜高速の全速度領域で磁極位置推定を行うため磁極位置演算手段6に適応観測器65を有し、全速度領域で適応観測器6を用いて磁極位置を演算する。その中で、誘起電圧が小さく磁束ベクトルを演算しにくい低速域では高周波交番電圧を用いて磁束ベクトルを演算し、適応観測器6が不利である低速域での磁極位置推定を補い、全速度領域で磁極位置推定を可能とする。
まず、適応観測部65の動作について説明する。交流回転機1の電機子抵抗をR、d軸方向の電機子インダクタンスをLd、q軸方向の電機子インダクタンスをLq、推定速度をωr0、電源角周波数をωとし、行列A、B、C、D、C1、C2を(18)式で定義する。
以上のように、式(18)〜(23)を用いれば、電圧指令ベクトルと増幅偏差ベクトルと電流偏差ベクトルに基づいて、推定位置と推定電流ベクトルと推定磁束ベクトルを算出することが可能である。
図15の積分器653は式(21)のように、状態観測器652の出力である推定速度ωr0を積分することで推定位置θ0を求める。
以上が適応観測部65の動作である。
図17のように、回転子磁束ベクトルΦrはdm軸と同一方向である。ここで、回転子磁束ベクトルΦrを、高周波電圧ベクトルと平行方向、すなわちd軸方向のΦdrDと、高周波電圧ベクトルと直交方向、すなわちq軸方向のΦqrDに射影する。このd軸とq軸に射影したΦdrDとΦqrDを検出磁束ベクトルとし、数式で表すと式(24)のように表現することが出来る。
よって、式(24)、(25)から、|iqh|を用いて検出磁束ベクトルを演算することができる。
△θは定常的にゼロとなるように動作するとすれば、2△θ≒0であるからsin2△θ≒2△θ、cos2△θ≒1として、式(26)から式(27)を得る。
式(29)には、未知の値cos2θeが残っているため、このまま式(24)に適用することはできない。
そこで、高周波電流の平行成分idhを用いてcos2θeを演算する。式(12)より、高周波電流の平行成分idhは、式(30)で表すことができ、その大きさ(振幅)|idh|は式(31)となる。
ここで、式(32)における右辺は、cos2θeを除いて既知であり、|idh|は|iqh|と同様に検出電流ベクトルの高周波成分から演算することができる。すなわち、cos2θeは、式(33)を用いてオンラインで演算することができる。
また、推定磁極位置に誤差が現れる負荷時にあっても交番電流振幅が交番電流振幅指令から検出磁束ベクトルを求め、検出磁束ベクトルと推定磁束ベクトルの偏差である磁束偏差ベクトルと検出電流ベクトルと推定磁束ベクトルの偏差である電流偏差ベクトルを求め、磁束偏差ベクトルを増幅した増幅偏差ベクトルから適応観測部65が磁極位置を推定することで、負荷による磁極位置推定誤差の影響を受けることなく全速度領域での磁極位置の推定ができる。
実施の形態1では、交番電流振幅指令生成手段7は、電流ベクトル指令から交番電流振幅指令を生成している。交流回転機1の検出電流ベクトルは、制御手段3により、定常的には電流ベクトル指令に一致するように制御されるので、交番電流振幅指令を検出電流ベクトルから作成してもよい。
本実施の形態の交流回転機の制御装置の構成を図20に示す。図20において、交番電流振幅指令生成手段7は検出電流ベクトルから交番電流振幅指令を生成する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
なお、実施の形態3に記載の交番電流振幅指令生成手段7は、実施の形態2にも同様に適用できる。その場合、図21に示す構成をとり、交番電流振幅指令生成手段7は、実施の形態3と同様に構成される。
実施の形態1乃至3に係る交流回転機の制御装置では、交流回転機の回転子磁束であるdm軸方向に高周波電圧を印加していた。しかし、LdとLqの比(以下、突極比と称す)の大きい交流回転機において、高周波電圧によるトルクの発生を抑制する軸はdm軸には限らない。
本実施の形態では、突極比の大きい交流回転機についても、高周波交番電圧によるトルクの発生を抑制する方向に高周波電圧を印加する交流回転機の制御装置について述べる。
ここで、定トルク曲線とは、この曲線上のどの電流値においてもトルクが一定であり、曲線上を電流ベクトルが移動してもトルクは変化しない。すなわち、高周波交番電圧によって変動する電流ベクトルが、この曲線上にあれば、高周波交番電圧によるトルクは発生しないということである。
そこで、図24のように高周波電流のベクトル軌跡を定トルク曲線の接線に近づければ、高周波電流ベクトルによるトルクの変動を抑制することができる。式(36)をidで微分すると接線の傾きが式(37)で得られ、さらに式(35)を用いて変形すると式(38)で表せる。
すなわち、高周波電圧をdm軸からηだけずらして印加することにより、高周波電流ベクトルによるトルクの発生を抑制することができる。
以上、高周波電圧によってトルクが発生する原因およびトルクの発生を抑制する方法について説明した。
高周波電圧ベクトル指令をdm軸からηだけ離れたdc軸に印加するとき、式(13)中の△θは、dc軸からの瞬時的な偏差△θ1を用いて、(η+△θ1)で置き換えることができ、qm軸の高周波電流振幅は式(41)で表される。
したがって式(42)は、式(14)の右辺の正弦項に(2η)が加わるだけで、その他の構成は、実施の形態1乃至3と同様であり、|iqh_ref|を電磁界解析や事前の実機測定などで把握することで、高周波電圧ベクトル指令を印加する方向をdm軸から変更した場合でも、実施の形態1乃至3に適用することができる。これにより、高周波電圧をトルクの発生を抑制する方向に印加することができる。
4 電圧印加手段、 5 交番電流振幅演算手段、
6 交番電流振幅指令生成手段、
7 磁極位置演算手段、
21、35、651 座標変換器、
31、34、512、61、643、6522 加減算器、
32 電流制御器、 33 高周波電圧ベクトル発生器、
51 フィルタ、 52、直交成分抽出器、 511 ノッチフィルタ、
521、531 直交成分選択器、
522、532、534 振幅演算器、
533 平行成分選択器、 62 磁極位置推定器、
63 偏差ベクトル演算部、
64 偏差増幅部、 65 適応観測部、 66 磁束ベクトル検出部、
641、642、644、645 ゲイン行列、 652 状態観測器、
653 積分器、 6521、6523〜6526 ゲイン行列演算器、
6527 速度推定器。
Claims (8)
- 交流回転機の電流ベクトルを検出する電流ベクトル検出手段と、電流ベクトル指令と前記検出電流ベクトルを入力し、前記交流回転機を駆動するための基本波電圧ベクトル指令と任意の軸に交番する交番電圧ベクトル指令を加算した電圧ベクトル指令を出力する制御手段と、前記電圧ベクトル指令に基づいて前記交流回転機に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電流ベクトル検出手段で検出された電流ベクトルを入力し、前記交番電圧ベクトル指令に対する平行成分と直交成分の少なくとも一方の交番電流振幅を演算する交番電流振幅演算手段と、前記電流ベクトル指令あるいは前記検出電流ベクトルから交番電流振幅指令を生成する交番電流振幅指令生成手段と、前記交流回転機の推定磁極位置を演算する磁極位置演算手段とを備え、前記磁極位置演算手段は、前記交番電流振幅が前記交番電流振幅指令に一致するようにして前記推定磁極位置を演算することを特徴とする交流回転機の制御装置。
- 前記制御手段は、電流ベクトル指令から前記検出電流ベクトルを減算する加減算器と、前記加減算器の出力から前記電流ベクトル指令と前記検出電流ベクトルとの偏差がなくなるように制御して基本波電圧ベクトル指令を生成する電流制御器と、d―q軸上の交番電圧ベクトル指令を発生する交番電圧ベクトル発生器と、前記基本波電圧ベクトル指令と前記交番電圧ベクトル指令とを加算し電圧ベクトル指令を発生する加減算器とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記磁極位置演算手段は、交番電流振幅指令と交番電流振幅の偏差を出力する加減算器と、上記偏差から推定磁極位置を出力する磁極位置推定器から構成されたことを特徴とする請求項1に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記磁極位置演算手段には、前記交番電流振幅と前記交番電流振幅指令と前記電圧ベクトル指令と前記検出電流ベクトルとが入力されることを特徴とする請求項1に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記磁極位置演算手段は、前記交番電流振幅と前記交番電流振幅指令から検出磁束ベクトルを演算する磁束ベクトル検出部と、前記交流回転機の推定電流ベクトルと推定磁束ベクトルと推定磁極位置を出力する適応観測部と、前記推定電流ベクトルと前記検出電流ベクトルの偏差である電流偏差ベクトルと前記推定磁束ベクトルと前記検出磁束ベクトルの偏差である磁束偏差ベクトルとを出力する偏差ベクトル演算部と、前記電流偏差ベクトルと前記磁束偏差ベクトルを増幅して増幅偏差ベクトルとして前記適応観測部に出力する偏差増幅部とを有し、前記適応観測部が出力する推定磁極位置は、前記推定電流ベクトルと前記推定磁束ベクトルと前記増幅偏差ベクトルと前記電圧ベクトル指令とに基づいて演算することを特徴とする請求項1に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記交番電流振幅指令生成手段は、前記検出電流ベクトルあるいは前記電流ベクトル指令のトルク成分から交番振幅電流指令を演算することを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記交番電圧ベクトル指令は、印加時にトルクが発生しない軸に交番することを特徴とする請求項1に記載の交流回転機の制御装置。
- 前記制御手段は、任意の一定トルクを発生する際に、前記交番電圧ベクトル指令が、前記電流ベクトルのd-q軸上での軌跡の接線方向にとるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の交流回転機の制御装置。
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