以下に、本発明に係る運転支援装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る運転支援装置を備える車両の概略図である。実施形態に係る運転支援装置2を備える車両1は、内燃機関であるエンジン5が動力源として搭載され、エンジン5で発生する動力が変速装置6等の駆動装置を経由して車輪3に伝達されることにより、走行可能になっている。また、車両1には、車輪3を制動することにより走行中の車両1を制動する制動手段であるブレーキ装置が備えられており、ブレーキ装置を作動させる際における油圧を制御するブレーキ油圧制御装置10が設けられている。また、駆動装置には、駆動装置の出力軸の回転速度を検出することを介して車速を検出する車速検出手段である車速センサ21が設けられている。
また、車両1には、運転者が運転操作をする際に用いるアクセルペダル15及びブレーキペダル16が備えられており、このうち、アクセルペダル15の近傍には、アクセルペダル15の操作量を検出するアクセルセンサ22が設けられている。また、ブレーキ油圧制御装置10には、ブレーキペダル16の操作時における油圧であるブレーキ圧を検出することによりブレーキペダル16の操作量を検出するブレーキ圧センサ23が設けられている。
さらに、車両1には、運転者が操舵輪を操舵する際に用いるステアリングホイール17が備えられており、ステアリングホイール17は、電動パワーステアリング装置であるEPS(Electric Power Steering)装置12に接続されている。これにより、ステアリングホイール17は、EPS装置12を介して、操舵輪である前輪を操舵可能に設けられている。また、このように設けられるEPS装置12には、ステアリングホイール17の回転角度である舵角を検出する舵角検出手段である舵角センサ24が設けられている。
また、車両1には、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段として、カメラ31と、走行音センサ32と、レーダーセンサ33と、が搭載されている。このうち、カメラ31は、車両1の前方等の車両1の周囲を撮像することにより、車両1の周囲の画像情報を取得する撮像手段として設けられている。このカメラ31は、例えば、車内に配設されて、フロントウィンドウ越しに前方を撮影することにより、他の車両や、車両1が走行する道路の環境等を撮影することが可能になっている。また、カメラ31は、検知対象物からの光が届く範囲で検知対象物の検知が可能な、直接型センサになっている。
また、走行音センサ32は、車両1の前端付近に配設されており、車両1の周囲の音情報を検出し、音情報を取得する集音手段として設けられている。この走行音センサ32は、例えば、車両1の前側のバンパ等に複数が配設されており、複数の走行音センサ32によって音の方向も含めて周囲の音情報を検出することが可能になっている。これにより走行音センサ32は、車両1の周囲から伝達される音情報や、車両1から発せられた音の反響音に基づいて、車両1の周囲の遮蔽物の存在や、車両1の前方に位置する交差点で交差している道路における、死角領域を移動する他の車両等の移動体の存在及び接近方向を検知することが可能になっている。
また、レーダーセンサ33は、検出波を用いることにより、車両1の周囲の物体の3次元情報を取得する3次元情報取得手段として設けられている。このレーダーセンサ33は、車両1の前側のバンパの前面に配設されており、電磁波や赤外線、レーザー、超音波等の検出波を送信する送信部と、検出波の反射波を受信する受信部とを有している。このように構成されるレーダーセンサ33は、送信部から検出波を送信することにより、車両1の前端から車両1の前方や両側方に検出波を送信し、検知対象物で反射した検出波の反射波を受信部で受信することにより、検知対象物を検知することができる。即ち、レーダーセンサ33は、検出波が届く領域で検知対象物の検知が可能な、直接型センサになっている。
図2は、図1に示す車両の車内の概略図である。図3は、図2のA−A矢視図である。図4は、図3のB部詳細図である。車内には、ダッシュボード40上に、所定の情報を運転者に対して報知する運転支援手段を構成する警報装置50が設置されており、詳しくは、ダッシュボード40上におけるフロントウィンドウ41の下端付近に配設されている。この警報装置50は、運転者に対して視覚的に情報を報知する表示部51と、音によって情報を報知するスピーカ52とを有している。警報装置50は、これらのように表示部51やスピーカ52を備えることにより、音と光とを用いた報知による運転支援が可能になっている。
また、車内には、本実施形態に係る運転支援装置2の作動モードを切り替える作動モード切替スイッチ55が設けられている。運転支援装置2は、作動モードを、自動的に作動するオートモードと、運転者が作動のONとOFFとを切り替えるマニュアルモードとに切り替え可能になっており、作動モード切替スイッチ55は、このオートモードとマニュアルモードとを切り替えるスイッチになっている。また、ステアリングホイール17には、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた際に、ONとOFFとを切り替えることができるステアリングスイッチ56が配設されている。このうち、ステアリングスイッチ56は、運転者の意思で運転支援の作動と停止とを切り替える支援要求手段として設けられている。
これらのエンジン5や変速装置6、ブレーキ油圧制御装置10、EPS装置12、車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキ圧センサ23、舵角センサ24、カメラ31、走行音センサ32、レーダーセンサ33、警報装置50、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56は、車両1に搭載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)に接続されている。このECUとしては、車両1の走行制御を行う走行制御ECU60と、車両1の走行中に運転者の運転支援をする制御である運転支援制御を行う運転支援ECU70と、が設けられている。
図5は、図1に示す運転支援装置の要部構成図である。ECUに接続される各部のうち、エンジン5やブレーキ油圧制御装置10等の車両1の走行時に作動させる装置や、車速センサ21等の車両1の走行状態を検出する検出手段は、走行制御ECU60に接続されている。また、走行制御ECU60には、アクセルセンサ22やブレーキ圧センサ23、舵角センサ24等の運転者による運転操作の状態を検出する検出手段も接続されている。これに対し、カメラ31や警報装置50、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56等の運転支援制御に用いられる装置は、運転支援ECU70に接続されている。
また、走行制御ECU60と運転支援ECU70とは、互いに接続され、情報や信号のやり取りが可能になっている。これらの走行制御ECU60と運転支援ECU70とのハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
これらのECUのうち、走行制御ECU60は、エンジン5の運転制御を行うエンジン制御部61と、ブレーキ油圧制御装置10を制御することにより制動力の制御を行うブレーキ制御部62と、車速センサ21での検出結果より車速の情報を取得する車速取得手段である車速取得部63と、アクセルセンサ22での検出結果よりアクセルペダル15の操作量であるアクセル操作量を取得するアクセル開度取得部64と、ブレーキ圧センサ23での検出結果よりブレーキペダル16の操作量であるブレーキ操作量を取得するブレーキ操作取得部65と、舵角センサ24での検出結果よりステアリングホイール17の操舵の状態を取得する舵角取得部66と、を有している。このうち、アクセル開度取得部64と、ブレーキ操作取得部65と、舵角取得部66とは、運転者の運転操作の情報を取得する運転操作取得手段として設けられている。
また、運転支援ECU70は、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態に基づいて運転支援制御の動作状態を制御する動作状態制御部71と、カメラ31の制御を行うカメラ制御部72と、走行音センサ32の制御を行う走行音センサ制御部73と、レーダーセンサ33の制御を行うレーダー制御部74と、運転支援が必要な交差点の有無を判定する交差点判定部75と、を有している。
さらに、運転支援ECU70は、自車両1の周辺の移動体の情報を取得する移動体情報取得手段である移動体情報取得部76と、自車両1の周辺の遮蔽物による遮蔽の情報を取得する遮蔽情報取得手段である遮蔽情報取得部77と、移動体情報取得部76で取得した移動体情報に基づいて運転者に対して運転支援を行うか否かの決定、及び運転支援の態様を変更する支援決定手段である支援決定部78と、運転支援として警報装置50を作動させることにより運転者に対する警報を実行する警報手段である警報実行部80と、警報実行部80での運転支援の実行状態を判定する支援状態判定手段である支援状態判定部82と、を有している。
本実施形態に係る運転支援装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の通常の走行時は、運転者がアクセルペダル15やブレーキペダル16を操作することにより、エンジン5やブレーキ油圧制御装置10等の各アクチュエータが作動し、車両1は運転者の運転操作に応じて走行する。例えば、走行制御ECU60が有するエンジン制御部61は、アクセルセンサ22での検出結果に基づいてアクセル開度取得部64で取得したアクセル操作量に応じてエンジン5を制御することにより、運転者の要求に沿った駆動力を発生させる。
また、ブレーキペダル16を操作することにより、ブレーキ装置を作動させる際における油圧がブレーキ油圧制御装置10で発生し、この油圧によってブレーキ装置が作動し、制動力が発生する。このように、ブレーキペダル16の操作時にブレーキ油圧制御装置10で発生する油圧であるブレーキ油圧は、ブレーキ圧センサ23で検出し、ブレーキ操作取得部65で取得する。ブレーキ操作取得部65は、このブレーキ油圧を、運転者のブレーキ操作量として取得する。
また、車両1の走行時には、車両1の各部に設けられるセンサ類によって車両1の走行状態が検出され、車両1の走行制御に用いられる。例えば、車速センサ21で検出した車速情報は、走行制御ECU60が有する車速取得部63で取得し、車速情報を用いて走行制御を行う際に使用される。
また、本実施形態に係る運転支援装置2は、車両1の走行時に運転者に対して注意喚起を行うことにより運転支援を行うことが可能になっている。具体的には、自車両1が走行する道路に交差する道路を移動する他の車両等の移動体に対して、出会い頭に衝突することを防ぐために、通常の走行時よりも注意を払いながら走行する必要がある交差点に自車両1が進入する際に、運転支援を行うことが可能になっている。
運転支援装置2で行う運転支援は、カメラ31で撮影した画像情報や、走行音センサ32で検出した音情報、レーダーセンサ33で検出した3次元情報を用いて、警報装置50によって行う。つまり、本実施形態に係る運転支援装置2では、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段として設けられたカメラ31と走行音センサ32とレーダーセンサ33とによって検出した画像情報と音情報と3次元情報とに基づいて警報装置50を制御し、運転者に対して警報することにより、運転支援を実行する。
図6は、交差点進入時の運転支援についての説明図である。運転支援装置2での運転支援について説明すると、車両1が、自車両1が走行中の道路である走行道路101を走行している際において、車両1の進行方向に、一時停止線104がある交差点103など注意が必要な交差点103が存在する場合に、運転支援を実行する。車両1の進行方向に、より注意が必要で、運転支援が必要な交差点103が存在するか否かの判断は、車両1の走行状態と運転者の運転操作の状態に基づいて判断する。具体的には、車速取得部63で取得した車速が所定の速度以下で、且つ、アクセル開度取得部64で取得したアクセル操作量とブレーキ操作取得部65で取得したブレーキ操作量とが、それぞれ所定の基準値以下である場合に、運転支援が必要な交差点103が存在するとの判定を、運転支援ECU70が有する交差点判定部75で行う。
つまり、運転者に対して注意喚起等の運転支援を行う必要のある交差点103、即ち、より注意深く走行する必要がある交差点103に車両1が進入する場合には、運転者は車速を低減させ、さらに、アクセルペダル15とブレーキペダル16とのうち、少なくとも一方は完全に戻し、他方は完全に戻すか、若干踏み込んだ状態で進入する。これにより、アクセル操作量とブレーキ操作量とは、共に所定の基準値以下の状態になり、アクセル操作量とブレーキ操作量とが共に小さく、車速も低い状態で、車両1は交差点103にゆっくり進入する。即ち、運転者は、走行道路101に対して交差する交差道路102を移動する交差車両112等の移動体110の状況を確認しながら、自車両1を交差点103内にゆっくり進入させる。
運転支援が必要な交差点103に進入する際には、このように、アクセル操作量とブレーキ操作量とを共に小さくし、車速が低い状態で進入するため、交差点判定部75は、車両1の走行状態と運転者の運転状態が、停車状態以外でこれらの条件を満たす場合には、車両1はこのような交差点103に向っていると判定する。
運転支援装置2は、このような交差点103に進入すると交差点判定部75で判定した場合において、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56によって、運転支援を作動させる状態に切り替えられているときに、運転支援を実行する。この運転支援としては、運転支援ECU70が有する警報実行部80で警報装置50を作動させることにより、運転者に対する警報を実行する。
運転支援の実行の可否を切り替える作動モード切替スイッチ55とステアリングスイッチ56とについて説明すると、運転支援装置2による運転支援は、作動モード切替スイッチ55を切り替えることにより、交差点103への進入時に自動的に実行するか、運転者の任意で実行するかを切り替えることが可能になっている。作動モード切替スイッチ55は、車両1が交差点103に進入する際に、自車両1の状態と周囲の環境とに応じて自動的に運転支援を実行するオートモードと、交差点103への進入時に運転支援を実行するか否かを運転者が選択することができるマニュアルモードとに切り替えることが可能になっている。
また、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードの場合は、ステアリングホイール17に配設されるステアリングスイッチ56のONとOFFとを切り替えることにより、交差点103への進入時における運転支援のONとOFFとを切り替えることが可能になっている。これらの作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態は、運転支援ECU70が有する動作状態制御部71で取得し、運転支援ECU70は、動作状態制御部71で取得したスイッチの状態に応じて、運転支援制御を行う。
つまり、動作状態制御部71は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、及び作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がONの場合に、警報実行部80に対して交差点103進入時の運転支援を実行させる。これに対し、動作状態制御部71は、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がOFFの場合には、警報実行部80で運転支援を実行させないようにする。
このため、作動モード切替スイッチ55をオートモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、車両1の走行状態と運転者の運転状態とに基づいて、運転支援が必要な交差点103に車両1が進入すると判断する度に、運転支援制御を行う。
これに対し、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、ステアリングスイッチ56がONの状態で、運転支援が必要であると判断された交差点103内に自車両1が進入する際に、運転支援制御を行う。また、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替え、ステアリングスイッチ56をOFFにした状態では、運転支援が必要であると判断された交差点103に車両1が進入する場合でも、運転支援装置2は運転支援制御を行わない。
作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56が、運転支援の許可状態の場合に、運転支援を行う際には、カメラ31で撮影した画像情報や、走行音センサ32で検出した音情報、レーダーセンサ33で検出した3次元情報に基づいて、自車両1の周辺の環境情報を取得する。例えば、運転支援ECU70が有するカメラ制御部72でカメラ31を制御し、自車両1の周囲の画像情報をカメラ31で検出する。この画像情報に基づいて、自車両1の前方の交差点103付近で、交差道路102を走行する交差車両112や自転車115等の移動体110の情報を、運転支援ECU70が有する移動体情報取得部76で取得する。
また、音情報に基づいて自車両1の周辺の環境情報を取得する場合は、運転支援ECU70が有する走行音センサ制御部73で走行音センサ32を制御し、自車両1の周囲の音情報を走行音センサ32で検出する。この音情報に基づいて、自車両1の前方の交差点103付近で、交差道路102を走行する交差車両112の情報を、移動体情報取得部76で取得する。詳しくは、走行音センサ32で検出する音の大きさの変化や、複数の走行音センサ32で検出する音の時間差等に基づいて、自車両1の周囲の環境騒音と、交差車両112で発する音とを分離することにより、交差車両112の情報を取得する。
また、3次元情報に基づいて自車両1の周辺の環境情報を取得する場合は、運転支援ECU70が有するレーダー制御部74でレーダーセンサ33を制御し、自車両1の周囲の物体の3次元情報を検出する。この3次元情報に基づいて、交差道路102を走行する交差車両112や自転車115等の移動体110の情報を、移動体情報取得部76で取得する。
運転者に対する運転支援として警報実行部80で実行する警報は、運転支援を行うか否かを、移動体情報取得部76で取得した移動体情報に基づいて、運転支援ECU70が有する支援決定部78により決定して行う。換言すると、運転者に対する警報は、運転支援を行うと支援決定部78で決定した場合に実行する。
例えば、自車両1の前方の交差点103において、自車両1と移動体110とが接触する接触点108に移動体110が到達するまでの時間である接触点到達予想時間TTCが、所定の判定時間以内の場合に、支援決定部78は、運転支援を行うとの決定を行う。この判定に用いる判定時間は、予め設定されて運転支援ECU70の記憶部に記憶されており、支援決定部78は、移動体情報取得部76で取得した移動体情報より算出される接触点到達予想時間TTCと、記憶部に記憶されている判定時間とを比較することにより、運転支援を行うか否かを判定し、支援の可否を決定する。
運転支援を行うと決定した場合には、さらに、カメラ31等での検出結果に基づいて取得した自車両1の周囲の環境情報に基づいて、運転支援の態様を変更する。つまり、移動体情報取得部76で取得した自車両1の周囲の環境情報に基づいて、支援決定部78で運転支援の支援レベルを変更することにより、運転支援の態様を変更する。具体的には、支援決定部78は、交差道路102を移動する移動体110の移動方向や移動速度、自車両1と移動体110との距離等に基づいて、運転支援の支援レベルを変更する。
例えば、移動体情報取得部76で取得した移動体情報が、交差車両112が自車両1に接近していることを示している場合には、支援決定部78は、警報実行部80で実行する運転支援の支援レベルを高くする。つまり、移動体情報が、交差道路102に、自車両1に接近する接近車両が存在していることを示している場合には、支援決定部78は、運転支援の支援レベルを高くする決定を行う。
一方、移動体情報が、交差道路102に交差車両112が存在している場合でも、自車両1から交差車両112までの距離が離れている場合や、自車両1への接近速度が遅い場合は、支援決定部78は、警報実行部80で実行する運転支援の支援レベルを低くする。つまり、交差道路102に交差車両112が存在している場合でも、交差車両112が自車両1に接触する可能性が低いことを移動体情報が示している場合には、支援決定部78は、運転支援の支援レベルを低くする決定を行う。
さらに、移動体情報が、交差道路102に交差車両112が存在している場合でも、交差車両112が自車両1から離れていることを示している場合は、支援決定部78は、運転支援は行わない決定を行う。
交差車両112の状態に応じて変化させる運転支援の支援レベルは、運転者の視覚や聴覚に対する刺激強度の度合いによって変化させる。即ち、運転支援として行う警報を、警報装置50の表示部51で所定の光を発光させることにより行う場合には、発光時における光量や色を変化させたり、点滅させたりすることにより刺激強度を変化させ、運転支援の支援レベルを変化させる。より詳細には、運転支援の支援レベルを高くする場合には、例えば、発光部分を点滅させる、発光時における光量を大きくする、輝度を明るくする、色を赤など目立つ色にすることにより、運転者の視覚に対する刺激強度を強くする。これに対し、運転支援の支援レベルを低くする場合には、発光部分を点灯させる、発光時における光量を小さくする、輝度を低くする、色を淡い色にすることにより、運転者の視覚に対する刺激強度を弱くする。
また、運転支援として行う警報を、警報装置50のスピーカ52から警報音を発生させることにより行う場合には、スピーカ52から発生する警報音の音量や周波数を変化させることにより、運転支援の支援レベルを変化させる。より詳細には、運転支援の支援レベルを高くする場合には、例えば、警報音を継続的に鳴らす、警報音の音量を大きくする、音を高くすることにより、運転者の聴覚に対する刺激強度を強くする。これに対し、運転支援の支援レベルを低くする場合には、警報音を一回だけ鳴らす、警報音の音量を小さくする、音を低くすることにより、運転者の聴覚に対する刺激強度を弱くする。
また、運転支援を行う際には、カメラ31で撮影した画像情報や、走行音センサ32で検出した音情報、レーダーセンサ33で検出した3次元情報に基づいて、交差点103の近傍に位置する建物や塀等、自車両1からの交差道路102の視認時における自車両1に対する遮蔽物105の情報を取得する。詳しくは、自車両1から交差点103を見た際に、交差道路102に対する視界が遮蔽物105によって遮蔽されている方向や遮蔽されている度合い等の、自車両1の周辺の遮蔽物105による遮蔽情報を、運転支援ECU70が有する遮蔽情報取得部77で取得する。
例えば、カメラ31で撮影した画像情報やレーダーセンサ33で検出した3次元情報に基づいて、遮蔽物105の状態を遮蔽情報取得部77で判断して遮蔽情報を取得したり、走行音センサ32で検出した音情報に基づいて、自車両1のエンジン音の反響音より遮蔽物105の状態を遮蔽情報取得部77で推定して遮蔽情報を取得したりする。
支援決定部78は、このように遮蔽情報取得部77で取得した遮蔽情報に基づいて、警報装置50による警報の内容を変更する。詳しくは、支援決定部78は、移動体情報取得部76で取得した移動体情報と遮蔽情報取得部77で取得した遮蔽情報とより、運転者から見て遮蔽度が高い側に移動体110が存在すると推定される場合に、移動体110が存在する側へ運転者の注意が高くなるように警報の内容を変更する。
つまり、自車両1から交差道路102を見た場合における遮蔽度が左右両側で異なっている場合、運転者は遮蔽度が低く、視認性が高い側から交差道路102を注視することが推定される。このため、支援決定部78は、左右両側で遮蔽度が異なっている交差点103に自車両1が進入する場合において、遮蔽度が高い側から自車両1に接近する移動体110が検出された場合、支援決定部78は、この移動体110が存在する側へ運転者の注意が高くなるように警報の内容を変更することにより、死角領域への運転者の注意を促す。
図7は、遮蔽度に基づいて警報を変更する状態を示す説明図である。例えば、自車両1の進行方向に対する左側に遮蔽物105が存在することにより、自車両1の左側の遮蔽度が高い交差点103に自車両1が進入する際において、自車両1から見て左右両側から交差車両112が自車両1に接近する場合、運転者は、遮蔽物105によって遮蔽されていない右側からの交差車両112を認識し易くなる。このような状況で警報を発した場合、運転者は、警報装置50からの警報は、右側からの交差車両112の警報であると判断し易くなり、遮蔽物105によって遮蔽されている左側からの交差車両112に気付き難くなる。従って、このような場合は、支援決定部78は、左側への運転者の注意が高くなるように、警報の内容を変更する。
具体的には、支援決定部78は、警報装置50での表示部51で、左側から接近する移動体110が存在する旨を表示したり、警報装置50のスピーカ52で、左側から接近する移動体110が存在する旨を音声で報知したりするように、警報の内容を変更する。支援決定部78は、このように変更した警報の内容の制御信号を、警報実行部80に伝達することにより、警報装置50での警報を、左側への運転者の注意が高くなるように変更する。
次に、本実施形態に係る運転支援装置2で運転支援を行う場合における処理手順の概略について説明する。図8は、実施形態に係る運転支援装置によって運転支援を行う際におけるフロー図である。なお、以下の処理は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、または作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、且つ、ステアリングスイッチ56がONの場合で、自車両1の前方に交差点103が存在すると交差点判定部75で判定された際に呼び出されて実行する。
車両1の走行中に、運転支援のフローが呼び出された場合には、まず、交差対象を検知する(ステップST101)。この検知は、レーダーセンサ33等の環境情報取得手段での検出結果に基づいて、移動体情報取得部76によって行う。即ち、移動体情報取得部76で移動体情報を取得することにより、自車両1の前方で走行道路101と交差する交差道路102を移動する移動体110の情報を、交差対象の情報として検知する。
次に、交差点遮蔽形状を認識する(ステップST102)。つまり、カメラ31で撮影した画像情報や、走行音センサ32で検出した音情報、レーダーセンサ33で検出した3次元情報に基づいて、交差点103の近傍の遮蔽物105の位置や遮蔽物105の形状等の遮蔽情報を、遮蔽情報取得部77で取得する。
次に、運転支援が必要であるか否かを判定する(ステップST103)。この判定は、運転支援ECU70が有する交差点判定部75と支援決定部78とで行う。即ち、走行制御ECU60が有する車速取得部63やアクセル開度取得部64等によって取得した自車両1の走行状態、及び運転者の運転操作の状態に基づいて、自車両1の前方に運転支援が必要な交差点103が存在するか否かを、交差点判定部75で判定する。さらに、移動体情報取得部76で取得した移動体情報に基づいて、自車両1に接触する可能性のある移動体110が交差道路102に存在するか否かを、支援決定部78で判定する。
交差点判定部75と支援決定部78とは、自車両1の前方には交差点103が存在し、交差道路102には自車両1に接触する可能性のある移動体110が存在すると判定した場合に、運転支援が必要であると判定する。一方、自車両1の前方には交差点103が存在しないと判定したり、交差道路102には自車両1に接触する可能性のある移動体110が存在しないと判定したりした場合には、運転支援は必要ないと判定する。交差点判定部75と支援決定部78とでの判定により、運転支援は必要ないと判定された場合(ステップST103、No判定)には、この処理手順から抜け出る。
これに対し、交差点判定部75と支援決定部78とでの判定により、運転支援は必要であると判定された場合(ステップST103、Yes判定)には、次に、運転支援を既に実行中であるか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、運転支援ECU70が有する支援状態判定部82で行う。支援状態判定部82は、警報実行部80での警報装置50の制御状態より、運転支援としての警報を実行中であるか否かを判定する。
なお、この運転支援を実行中であるか否かの判定は、警報実行部80での制御状態以外により判定してもよく、例えば、警報を実行中であるか停止中であるか否かを示すフラグを設定し、このフラグの状態に基づいて、運転支援を実行中であるか否かを判定してもよい。
支援状態判定部82での判定により、運転支援を既に実行中ではないと判定された場合(ステップST104、No判定)には、支援の内容を決定する(ステップST105)。この決定は、移動体情報取得部76で取得した移動体情報に基づいて、支援決定部78によって運転支援の支援レベルを決定する。
次に、運転支援を実行する(ステップST106)。具体的には、運転支援ECU70が有する警報実行部80で警報装置50を作動させることにより、運転者に対して警報を発することによる運転支援を実行する。その際に、支援決定部78で決定した支援内容、即ち、支援決定部78で決定した支援レベルで、警報による運転支援を実行する。これにより、運転者は、交差道路102を移動する交差車両112等の移動体110を認識し、移動体110との接触を回避する運転操作を行う。
これに対し、支援状態判定部82での判定により、運転支援を既に実行中であると判定された場合(ステップST104、Yes判定)には、次に、遮蔽度の高い方向から新たな交差対象が接近しているか否かを判定する(ステップST107)。この判定は、遮蔽情報取得部77で取得した遮蔽情報と、移動体情報取得部76で取得した移動体情報とに基づいて支援決定部78で行う。即ち、支援決定部78は、自車両1の左右方向のどちらの方が遮蔽物105による遮蔽度が高いかを遮蔽情報に基づいて判定し、さらに、遮蔽度が高い側から、既に実行中の基になっている移動体110とは異なる移動体110が自車両1に接近中であるか否かを、移動体情報に基づいて判定する。
支援決定部78での判定により、遮蔽度の高い方向から新たな交差対象が接近していると判定された場合(ステップST107、Yes判定)には、支援内容を変更する(ステップST108)。この変更は、遮蔽情報と移動体情報とに基づいて、自車両1から見て遮蔽度が高く、且つ、移動体110が接近している側への運転者の注意が高くなるように、支援決定部78で支援の内容を変更する。
支援決定部78で支援の内容を変更したら、変更した内容の運転支援を実行する(ステップST106)。即ち、変更した支援の内容の制御信号を支援決定部78から警報実行部80に伝達することにより、内容を変更した支援を実行する。具体的には、自車両1から見て遮蔽度が高く、且つ、移動体110が接近している側に、移動体110が存在する旨の警報を警報装置50で発することにより、遮蔽度が高い側への運転者の注意を高くする。これにより、運転者は、遮蔽物105によって死角になっている部分に対して注意を払いながら運転操作を行い、自車両1を交差点内に進入させる際における、死角領域に位置する移動体110との接触を回避する。
これに対し、支援決定部78での判定により、遮蔽度の高い方向から新たな交差対象は接近していないと判定された場合(ステップST107、No判定)には、支援決定部78は、支援の内容を継続する(ステップST109)。これにより、警報実行部80は、継続した内容で運転支援を実行し(ステップST106)、継続した内容で警報装置50を作動させて、運転者に対して警報を行う。
以上の実施形態に係る運転支援装置2は、警報実行部80で実行する警報の内容を、遮蔽情報取得部77で取得した遮蔽情報に基づいて支援決定部78で変更するため、交差点103近傍の遮蔽物105で遮蔽されている側への運転者の注意を高めることができる。この結果、警報時における運転者の注意が、視認性が高い方向に偏ってしまうことを抑制することができる。
また、支援決定部78は、移動体情報と遮蔽情報とより、遮蔽度が高い側に移動体110が存在すると推定される場合に、移動体110が存在する側へ運転者の注意が高くなるように警報の内容を変更するため、遮蔽物105に隠れている移動体110が存在する場合に、遮蔽度が高い側への運転者の注意を、より確実に高めることができる。この結果、運転者に対して、死角に存在する移動体110に対する注意を払わせることができ、交差点103への進入時における安全性を向上させることができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、交差点103への進入時に、遮蔽度が高い側から自車両1に接近する移動体110が検出された場合、遮蔽度が高い側に移動体110が存在する旨の報知を行うように警報の内容を変更しているが、警報の内容は、これ以外の内容に変更してもよい。例えば、遮蔽度が自車両1の左右で異なっている場合、運転者は遮蔽度が低く、視認性が高い側から交差道路102を注視することが推定されるが、運転者が左右方向の一方を注視した場合、警報装置50の表示部51は、運転者の視界の中心から大きく外れることになる。このため、このような場合、通常走行時における警報装置50の表示部51での表示位置では、表示は運転者の視界の中心から大きく外れるため、運転者は表示に気付き難くなる。
従って、支援決定部78は、このような場合は、警報装置50の表示部51上での警報の表示位置を、運転者が注視している方向に移動させて表示させてもよい。例えば、右側の視認性が良好な場合において、左側から接近する移動体110の存在を警報装置50での表示によって警報する場合には、表示部51上での表示位置を、通常走行における表示位置よりも右方向に移動させてもよい。これにより、左右方向において視認性が高い側から交差道路102を注視している運転者の視界に表示部51での表示が入り易くなり、運転者は警報装置50での警報を認識し易くなるため、警報時における運転者の注意が、視認性が高い方向に偏ってしまうことを抑制することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、環境情報取得手段としてカメラ31と走行音センサ32とレーダーセンサ33とが用いられているが、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段には、これらに加えて、または、これらに変えて、他の環境情報取得手段を用いてもよい。環境情報取得手段は、検出形態に関わらず、自車両1の周囲の環境情報を、交差道路102の情報を運転者が認識するよりも先に取得することができたり、自車両1の遮蔽状態を取得することができたりするものであれば、環境情報の検出形態は問わない。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、運転者に対する運転支援は、警報装置50を用いた警報のみになっているが、これ以外の手法によって運転支援を行ってもよい。例えば、運転者の運転操作に関わらず駆動力や制動力を調節したり、安全方向に操舵をするように促す操舵トルクを、EPS装置12を介して運転者に対して伝達したりすることにより、交差車両112等の移動する移動体110と自車両1との接触を回避する運転支援を行ってもよい。運転支援は、自車両1を安全に走行させることができるものであれば、支援の手法は問わない。
また、このように運転支援を、駆動力や制動力、操舵トルク等によって行う際において、支援レベルを変更する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の介入量を変化させるのが好ましい。つまり、高い支援レベルで運転支援を実行する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の介入量を増加させ、低い支援レベルで運転支援を実行する場合には、これらの制御に対する運転支援の制御の介入量を低減させることにより、運転支援の態様を変更する。これにより、運転支援を運転者に対する警報以外で行った場合でも、交差道路102を移動する移動体110の状態に応じて、適切に運転支援を実行することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、移動体情報取得部76で取得した移動体情報に応じて運転支援の支援レベルを変更しているが、支援レベルは一定でもよい。このように、支援レベルを固定することにより、制御や構造を簡略化できるため、製造コストを低減することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、作動モード切替スイッチ55とステアリングスイッチ56とを設けているが、これらのスイッチは、いずれか一方のみでもよく、または、両方共設けなくてもよい。スイッチの設置状態に関わらず、運転支援を許可する状態の場合に、上述した処理を行うことにより、適切な運転支援を実行することができる。
また、運転支援装置2は、上述した実施形態、及び変形例で用いられている構成や制御等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成や制御以外を用いてもよい。運転支援装置2の構成や制御方法に関わらず、自車両1からの遮蔽度に基づいて警報の内容を変更することにより、警報時における運転者の注意が、視認性が高い方向に偏ってしまうことを抑制することができる。