以下、本発明に係る加熱調理器を、誘導加熱による調理鍋載置部を左右手前に二口と中央奥側に一口設けた、ビルトイン型(組込み型)IHクッキングヒーターに適用した場合を例に説明する。なお、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。また、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図において、同一の構成には同一の符号を付している。
実施の形態1.
[加熱調理器の構成]
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器全体を示す斜視図である。
図1において加熱調理器の加熱調理器1の筐体2の上側には、筐体上枠3が着脱自在に配置される。筐体上枠3の背面側には吸排気口カバー5、中央にはトッププレート4、前面側には操作部6が配置されている。また、筐体2の内部には、調理室11が設けられている。
吸排気口カバー5は、通気性を有するパンチングメタルや格子状の金属部材で構成されていて通気性があり、通気抵抗が少なく、冷却風の吸気及び排気、調理室11からの排気の気流がスムースに通過する。
操作部6は、加熱調理器1における加熱動作の設定を受け付けるための操作ボタンやスイッチ等で構成されている。本実施の形態1では、筐体2の前面にも操作部6が設けられている。操作部6の具体的構成を限定するものではなく、例えばタッチパネルにより構成された操作部6を設けてもよい。
トッププレート4には、鍋等の被加熱物(図示せず)が載置される載置部8が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側右、背面側中央、及び前面側左、の3箇所に載置部8が設けられている。
また、トッププレート4には、液晶画面やLED等の視覚的な表示手段を備えた表示部9が設けられている。表示部9は、加熱調理器1の動作状態や操作部6からの入力、操作内容等を表示するとともに、ユーザーに対して加熱調理器1の状態等を報知する報知手段として機能する。なお、本実施の形態1及び後述の実施の形態2、3では、報知手段として表示部9を設けた例を示すが、表示部9に代えてあるいはこれに加えて、音声で報知を行うブザーやスピーカ等の報知手段を備えてもよい。
筐体2の前面の左側には、調理室扉7が設けられている。この調理室扉7は、筐体2内に設けられた調理室11内の前面開口部を開閉自在に覆う扉であり、調理室11内で調理される被加熱物を調理室11内に出し入れできるように、奥行き方向にスライド可能である。また、調理室扉7は、調理室11内や調理室扉7自身の清掃等のメンテナンスを容易にするため、調理室11に対して着脱可能に構成されている。
なお、本実施の形態1の調理室11、操作部6、及び表示部9の配置は一例であり、これに限るものではない。例えば、調理室11を筐体2の中央や右側に寄せて配置してもよい。また、操作部6を、トッププレート4と筐体2の前面の両方に設けるのではなく、いずれかにのみ設けてもよい。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器1のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態を示す斜視図である。
筐体上枠3の背面側の左側には筐体排気口13、右側には筐体吸気口14が形成されている。筐体排気口13には、筐体2内を冷却した冷却風の排気風路である冷却風排気ダクト15が接続されており、冷却風排気ダクト15を流れる冷却風は筐体排気口13を介して排気される。また、この冷却風排気ダクト15内には、調理室11からの排気を導く調理室排気ダクト10が配置されており、調理室11からの排気も筐体排気口13から排出される。筐体吸気口14は、筐体2内を冷却する冷却風を筐体2内に導入するための開口部である。なお、通常の使用状態においては、筐体排気口13及び筐体吸気口14は、図1で示した吸排気口カバー5で覆われている。
筐体2の内部には、トッププレート4の載置部8に対応して、トッププレート4に載置される被加熱物を加熱する加熱手段が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側の左と右にそれぞれ誘導加熱コイルユニット18が設けられ、背面側中央にラジエントヒーター17が設けられている。なお、トッププレート4上の被加熱物を加熱するための加熱装置はこれらに限定されず、すべての加熱装置を誘導加熱コイルユニットで構成してもよいし、ラジエントヒーター等の電気ヒーターで構成してもよい。
なお、本実施の形態1では、トッププレート4上においても加熱調理を行う加熱調理器1を例に示しているが、トッププレート4上において加熱調理を行うための加熱手段は必要に応じて搭載すればよく、調理室11における加熱調理のみを行う加熱調理器1としてもよい。
誘導加熱コイルユニット18及びラジエントヒーター17の下方の左側には、板金等により構成され内部に収納空間を有する調理室収納部19が設けられている。この調理室収納部19の内部には、調理室11が配置されている。調理室収納部19と調理室11との間には、通風可能な隙間52(図14参照)が設けられており、この隙間52に形成される空気層により断熱が行われる。
調理室収納部19の右側には、内部に収容空間を有するコントロールユニット29が配置されている。コントロールユニット29には、冷却ファン37(図4参照)と、誘導加熱コイルユニット18に高周波電力を供給するインバータ回路や各種制御回路等の電子部品が実装された電子回路基板50(図4参照)等が収容されている。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器1の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット18、及びラジエントヒーター17を取り外した状態の斜視図である。また、図4は、実施の形態1に係るコントロールユニット29の斜視図であり、一部を透視した図である。
図4に示すように、コントロールユニット29内には、電子回路基板50と冷却ファン37が収容されている。電子回路基板50には、誘導加熱コイルユニット18に高周波電力を供給するインバータ回路及び冷却ファン37を駆動制御する制御回路をはじめ、加熱調理器1の動作を制御するマイコンや制御回路等の電子部品が実装されている。本実施の形態1では、加熱調理器1の動作を制御する機能部品の集合体を、制御手段と称する。
コントロールユニット29の外郭において、冷却ファン37の吸引側にはユニット吸気口51が開口し、冷却ファン37の送出側には、複数のユニット排気口38が開口している。なお、コントロールユニット29の上面に設けられたものをユニット排気口381、側面に設けられたものをユニット排気口382と区別して称する場合がある。ユニット吸気口51は、筐体2への組み付け状態においては、筐体吸気口14の下方に配置され、筐体吸気口14と連通する。コントロールユニット29の内部は、ユニット吸気口51からユニット排気口38に至る一体的な風路として機能する。冷却ファン37は、吸い込んだ空気をユニット排気口38から送出可能な送風機であれば、任意の構成のものを採用することができ、また、その配置についても図示のものに限定されない。
図3に示すように、調理室収納部19の上側には、コントロールユニット29のユニット排気口38から吹き出される冷却風を導くための導風部材31が設けられている。導風部材31は、ユニット排気口38から吹き出される冷却風を、誘導加熱コイルユニット18に実装される加熱コイルやフェライト等に導くように通風路を備えている。導風部材31の上面は、誘導加熱コイルユニット18の下面に向けて開口しており、この開口から、ユニット排気口38より送られる冷却風が吹き出る。
図5は、実施の形態1に係るコントロールユニット29の側面断面図である。図5では、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。この図5、及び前述の図3を参照して、コントロールユニット29内の冷却風の流れを説明する。
冷却ファン37が動作することによって筐体吸気口14から吸い込まれた外部の空気は、筐体吸気口14に接続されるユニット吸気口51からコントロールユニット29内に流入する。コントロールユニット29内に流入した空気は、冷却ファン37により吸引・送出され、冷却風として電子回路基板50に実装されたインバータ回路や放熱フィン等を冷却した後、複数のユニット排気口38から吹き出される。
コントロールユニット29の上面に設けられたユニット排気口381から送出された冷却風の多くは、コントロールユニット29の上方に配置された右側の誘導加熱コイルユニット18を冷却した後、調理室収納部19の上面に配置された導風部材31に導かれて左側の誘導加熱コイルユニット18を冷却する。誘導加熱コイルユニット18を冷却した後の冷却風は、調理室収納部19の上面に設けられた冷却風排気ダクト流入口16から冷却風排気ダクト15内に入り、筐体排気口13を経て加熱調理器1外へ排気される。
コントロールユニット29の側面のユニット排気口382から送出された冷却風は、調理室収納部19に設けられた収納部通風口36(図6参照)から調理室収納部19内に流入する。この冷却風の流れについては後述する。
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器1の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット18、ラジエントヒーター17、コントロールユニット29、及び導風部材31を取り外した状態の背面側斜視図である。
調理室収納部19の側面には、収納部通風口36が開口している。この収納部通風口36は、コントロールユニット29の側面に設けられたユニット排気口382(図4参照)に通風可能に接続される。コントロールユニット29の側面に設けられたユニット排気口382から吹き出された冷却風は、収納部通風口36から調理室収納部19内に入り、調理室収納部19と調理室11との間に設けられた空隙52(図14参照)を流れる。
図7は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す前面側斜視図である。
調理室11は、前面を開口した略直方体の外形を有し、この前面開口部は調理室扉7により開閉自在に覆われる。調理室11の外郭のうち、天井壁を構成する部分を上壁113、両側の側壁をそれぞれ側壁112と称する。調理室11の背面側には、加熱室20が設けられている。この加熱室20の背面側には、加熱室20内と連通する調理室排気ダクト10が接続されている。
調理室排気ダクト10は、加熱室20内の空気を排出するための風路を内部に有している。本実施の形態1の調理室排気ダクト10は、加熱室20と接続された部分から後方に向かって略水平に延び、この略水平に延びた部分の後端から上方に向かって略垂直に延びる形状である。なお、調理室排気ダクト10のうち、略水平に延びる部分を水平部101、略垂直に延びる部分を垂直部102と区別して称する場合がある。
調理室11には、調理室扉7の開閉を規制する図示しないロック機構が設けられている。このロック機構は、調理室11における加熱調理動作中、及び加熱調理終了後の所定条件下(例えば調理室11内の温度が高温の場合、後述する送風ファン22の慣性による回転動作中等)では、ユーザーが開けることができないように調理室扉7をロックする。
また、加熱調理器1は、調理室扉7のスライドによる開閉を検知する手段(図示せず)を備えている。調理室扉7の開閉を検知する手段は、例えば、調理室扉7に内蔵された磁石と、加熱調理器1内に設けられた磁気検知手段とによって構成される。この構成の場合、調理室扉7がスライドして閉じられたときに、磁気検知手段が調理室扉7の磁気を検知して、調理室扉7が閉まっていることを検出することができる。なお、調理室扉7の開閉を検知する手段の具体的構成を限定するものではなく、光、超音波、電波等の反射や遮断を検知する非接触の検知手段や、メカニカルスイッチ等接触式・機械式の検知手段を用いてもよい。
制御手段は、調理室扉7が開いていることが検知されている状態では、操作部6による操作を受けた場合でも、調理室11内における調理動作を行わない。その場合、表示部9にて、調理室扉7が開いているため加熱調理を行わないこと、及び調理室扉7を閉めるように促す情報を表示する。また、調理室11内での加熱調理動作中に、例えばロック機構の損傷等によって誤って調理室扉7が開いてしまった場合には、制御手段は、調理室11内の加熱に関する動作を停止させ、調理室11の前面開口からの放射や熱風の漏れを抑制する。
図8は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す背面側斜視図である。
調理室11の後壁111の背面側には、加熱室20が設けられている。加熱室20の背面には、電動機21が配置されている。この電動機21は、DCモーターや誘導モーターであり、その回転軸には、加熱室20内に設けられた送風ファン22(図11参照)が取り付けられている。調理室11における加熱調理動作中は、コントロールユニット29内の制御手段により、電動機21の回転の有無や回転数等が制御される。なお、電動機21は、その仕様や動作環境、回転軸の軸受け寿命等との兼ね合い等に基づいて必要に応じて冷却される。例えば、電動機21の回転軸に、冷却用のファンを設けてもよい。
加熱室20の上方側面からは、加熱室20の内部に設けられた第二加熱手段24の端子部が露出している。第二加熱手段24の端子部は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に配線接続され、第二加熱手段24の加熱の有無や加熱量は、制御手段によって制御される。
調理室11の後壁111の背面下部には、左右一対のスライドレールカバー39が取り付けられている。スライドレールカバー39は、調理室11の後壁111から突出するスライドレールユニット30(後述する)の端部を覆う部材である。
図9は、実施の形態1に係る調理室11の上壁113と調理室扉7を取り外した状態の斜視図である。
調理室11の上方には、調理室11内を上方から加熱する第一加熱手段23が配置されている。本実施の形態1では、第一加熱手段23として、抵抗発熱体であるシーズヒーターを用いている。この第一加熱手段23は、幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、調理室11内の幅方向及び奥行き方向にわたる広範囲を加熱可能である。第一加熱手段23の端子部は、調理室11の後壁111に設けられた開口部から外側へ突出している。第一加熱手段23の端子部は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に配線接続され、制御手段により第一加熱手段23の加熱の有無や加熱量が制御される。
調理室11の両側の側壁112の内側には、奥行き方向に固定された左右一対のレール部301が設けられている。レール部301は、このレール部301に摺動可能に支持されるスライド部302(図12参照)とによって、左右一対のスライドレールユニット30が構成されている。調理室11の下方には、被加熱物を載置するための調理台26と、調理台26の下側に設けられ調理台26上の被加熱物から滴下する油や汁を受ける受皿27とが設けられている。
調理室11の背面を構成する後壁111には、調理室吸込口12と、この調理室吸込口12よりも低い位置に設けられた吹出口28が開口している。調理室11は、調理室吸込口12及び吹出口28を介して加熱室20と連通している。吹出口28は、後壁111において調理室11の左右の側壁112のそれぞれに近接した位置に、配置されている。本実施の形態1では、後壁111の高さ方向に2つの吹出口28が上下に所定間隔をあけて配置されている。なお、区別して説明する場合には上側の吹出口28を上側吹出口28a、下側の吹出口28を下側吹出口28bと称し、区別する必要のないときには吹出口28と称する。詳細は後述するが、調理室11内の空気は、調理室吸込口12から加熱室20内へと吸引され、加熱室20内で加熱され、吹出口28から調理室11内へと吹き出される。吹出口28から吹き出された気流は、コアンダ効果により調理室11の側壁112の表面に沿って前面側である調理室扉7へ向かう流れを形成する。
調理室11の内部には、調理室11内の温度を検出する調理室温度検知手段32が設けられている。調理室温度検知手段32としては、例えば白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対等が用いられる。なお、調理室温度検知手段32を必要に応じて複数設けてもよく、また、その配置も壁面に限らず、必要に応じて天面や底面、受皿27や調理台26に設けてもよい。また、被加熱物から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する非接触式の温度センサを、調理室温度検知手段32として設けてもよい。調理室温度検知手段32の出力は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装される制御手段に伝達される。制御手段は、操作部6にて設定された調理メニューや加熱条件、制御シーケンス、及び調理室温度検知手段32により検知される被加熱物の温度に基づいて、第一加熱手段23、第二加熱手段24、及び電動機21等の出力や動作を制御する。
なお、本実施の形態1では、第一加熱手段23としてシーズヒーターを設ける例を示したが、第一加熱手段23として遠赤外線ヒーターや近赤外性ヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。また、調理室11内に第一加熱手段23を設けるのではなく、調理室11の上壁113の上側に第一加熱手段23としてフラットヒーターや誘導加熱コイルを設け、これらにより調理室11の上壁113を加熱してもよい。調理室11内の被加熱物を放射や空気による熱伝達で上方から加熱できる手段であれば、第一加熱手段23として任意の構成を採用することができる。
図10は、実施の形態1に係る調理室11の調理室排気ダクト10、加熱室20に付帯する部品、スライドレールカバー39を取り外した状態の背面斜視図である。
調理室11の後壁111の背面(調理室11の外面)において、吹出口28の縁には、気流の上流側である後壁111の背面から突出する凸部42が設けられている。凸部42は、吹出口28の周囲を略筒状に囲んでおり、その内部には吹出口28に至る風路が形成される。凸部42は、例えばバーリング加工などのプレス加工により容易に形成可能である。
また、調理室11の後壁111の背面(調理室11の外面)において、上側吹出口28aの上方及び下方には、それぞれ、後壁111の背面から突出する板状の導風板43a、43bが設けられている。導風板43a、43bは、その平面が略水平方向に向くようにして設置されている。下側の導風板43bは、高さ方向に並べて配置された上側吹出口28aと下側吹出口28bとの間に設けられている。導風板43a、43bは、上方から見て凸部42と重なるように、後壁111の背面に接合されている。
また、本実施の形態1では、導風板43a、43bの外側の辺どうしが板状の接続板431によって接続されて一体化されており、導風板43a、43b、及び接続板431からなる一体の部材を導風部430と称する。導風部430の長軸方向(流れ方向)に直交する断面は、略コ字状である。導風板43aと導風板43bは、空気を略水平方向に上側吹出口28aへ導く機能を発揮する。
下側吹出口28bに対しては、上側吹出口28aと下側吹出口28bとの間に設けられた導風板43bが、下側吹出口28bの上方の導風面として機能する。また、下側吹出口28bは加熱室20内に収容されるが、この加熱室20の底板203が、下側吹出口28bの下方の導風面として機能する(図13参照)。このような構成により、下側吹出口28bに対して導風部430が不要となっている。なお、上側吹出口28aに対して設けた導風部430を、下側吹出口28bに対して設けてもよい。
調理室11の壁面は高温(例えば250℃以上)となるため、導風板43a、43bは、耐熱性のある金属を用いて構成されるのが好ましい。本実施の形態1では、上方と下方の導風面(導風板43a、43b)を接続板431により一体として導風部430を構成したので、部品コスト・組み立てコストを安価にすることができる。また、導風部430は、一枚の板を折り曲げて容易に形成できる形状であるので、部品コスト・組み立てコストを安価にすることができる。調理室11の後壁111と導風部430は、スポット溶接等の溶接やカシメによって高温に耐える接合手段で接合される。
また、調理室11の後壁111に設けられた開口部からは、スライドレールユニット30の背面端が突出している。
図11は、実施の形態1に係る加熱室20及び付帯部品を前面下方側から見た斜視図である。
加熱室20の内部には送風ファン22が配置されている。送風ファン22は、加熱室20の背面に配置された電動機21の回転軸と固定され、電動機21の動作により回転する。送風ファン22が回転すると、その中央部から空気が吸引され、吸引された空気は羽根の外周部より送出される。電動機21と送風ファン22は、調理室吸込口12から吸い込んだ調理室11内の空気を吹出口28へ送る送風手段として機能する。
加熱室20の後壁201には、調理室排気ダクト10が接続される加熱室排気口53が設けられている。調理室排気ダクト10内において、加熱室排気口53との接続側端部には、触媒体34が取り付けられている。触媒体34は、通風可能な小孔を有しており、加熱室20から調理室排気ダクト10を経て加熱調理器1外へ排気される空気に含まれる汚染物質の一部を吸着して酸化分解して排気の清浄度を高める機能を発揮する。
送風ファン22の概ね外周側には、第二加熱手段24が設けられている。第二加熱手段24は、本実施の形態1では、送風ファン22の概ね外周を囲むシーズヒーターで構成されている。また、第二加熱手段24の一部は、加熱室排気口53に対向するように配置されている。より詳しくは、加熱室排気口53に接続された調理室排気ダクト10内の触媒体34と、第二加熱手段24の一部とは、高さ方向及び左右幅方向において、少なくとも一部が重なるように配置されている。このようにすることで、調理室排気ダクト10に取り付けられた触媒体34に第二加熱手段24からの放射熱が直接的に届きやすく、触媒体34が効率よく加熱される。また、触媒体34を加熱するための専用の加熱手段が不要であるので、製品コストと消費電力を低減することができる。なお、本実施の形態1では、第二加熱手段24としてシーズヒーターを用いる例を示すが、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。
触媒体34には、酸化触媒が添着されており、通常は排気される高温空気の排熱により加熱され触媒活性を得て、排気が通過するときに油煙や臭気成分等の物質を吸着して酸化分解をおこない空気を浄化する。本実施の形態1では、第二加熱手段24により加熱されて排気される空気の温度が高く、また触媒体34自体も第二加熱手段24の放射により加熱される。このため、触媒体34の温度をより高めることができ、触媒体34での汚染物の分解に係る化学反応速度が速まり、より多くの汚染物質が除去され、排気の清浄度を高めている。なお、触媒体34に添着される酸化触媒として、白金、パラジウム、マンガン等のいずれかまたはすべてを含んだものが用いられる。低温活性の白金やマンガンを含む触媒を用いることで、より高い浄化性能を得ることができる。
送風ファン22から送出された空気の一部は、加熱室排気口53から調理室排気ダクト10へ流入し、調理室排気ダクト10の背面側の垂直部102の上端開口より排気される。排気される風量は、触媒体34の圧力損失を含め調理室排気ダクト10の流路断面積により適切な排気風量となるように調整される。適切な風量の排気により、調理室11内での良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下することはない。
第二加熱手段24の端子部は、加熱室20の上方側面より突出して配置されている。第二加熱手段24の端子部は、コントロールユニット29内の制御基板に配線接続されており、第二加熱手段24は制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
また、加熱室20には、加熱室温度検知手段44が設けられている。加熱室温度検知手段44としては、例えば、熱電対やサーミスタ等の耐熱性の温度検知素子を用いることができる。加熱室温度検知手段44により加熱室20内の温度検知が行われ、加熱室温度検知手段44からの出力は制御手段に伝達される。加熱室温度検知手段44が検知した温度は、調理室11における加熱制御に用いられる。例えば電動機21の故障等により送風が停止した場合には、加熱室20内が高温化しうるが、加熱室温度検知手段44により加熱室20内の高温化を検知すると、制御手段は、第一加熱手段23や第二加熱手段24への通電を停止し、安全性を高めている。
図12は、実施の形態1に係る調理室扉7と付帯部品を調理室11から引き出して取り外した状態の背面側斜視図である。
調理台26において被加熱物が載置される面である載置面261は、例えば左右方向に延びる棒状のステンレス鋼を複数並べて構成された、いわゆるストレートタイプの焼網で構成されている。調理台26の素材は、耐熱性のある素材で調理に適した毒性のない素材であればステンレス鋼以外でもよく、また、素材の表面に非粘着性や防汚性を備えた無機セラミックコーティング剤等を塗布してもよい。また、調理台26は、受皿27上に起立する脚部を有する。脚部は、載置面261と受皿27との間に所定高さの通風空間が形成されるように、所定の高さを有する。なお、調理台26の載置面261の形状は図示のものに限定されず、格子状の焼網や、前後方向に延びる棒状部材を備えた焼網、パンチングメタル等、任意のものを採用することができる。なお、調理台26の下側を流れる吹出口28からの気流が被加熱物の下面と接触することができるようにするため、載置面261は、平板形状ではなく、空気の流通が可能な穴(開口)が形成されているのが好ましい。
受皿27は、調理台26の下方に載置され、被加熱物から滴下する水分や油分等を受ける。受皿27の外周部には所定高さの周壁が設けられており、調理台26に載置される被加熱物である食材等から滴下する汁気を溜めることができる。
調理室扉7の調理室11側の外周部には、シリコン等の耐熱性を有する弾性部材で構成された気密部材33が配置されている。調理室扉7が閉められた状態では、調理室11の前面開口部の外周に気密部材33が接触して、調理室扉7と調理室11の前面開口部との隙間からの空気の漏れを抑制する。
調理室扉7には、ガラス等で構成された透過部を設け、調理室11内を目視できるようにしてもよい。
調理室扉7の調理室11側の左右両側には、スライドレールユニット30の可動部を構成するスライド部302が取り付けられている。各スライド部302の長手方向の端部近傍には、一方のスライド部302から他方のスライド部302に保持部41が掛け渡されている。この保持部41の上には、受皿27が着脱自在に載置され、受皿27の上には調理台26が着脱自在に載置される。
スライド部302は、調理室11内に設けられたレール部301(図9参照)上を摺動する。調理室扉7が引き出されると、これに伴って、スライド部302、保持部41に支持された受皿27、及び受皿27に載置された調理台26が、一体的にスライドして調理室11の外部に露出する。このような構成により、調理室11内への被加熱物の載置や搬出、及び調理台26や受皿27の着脱を容易に行うことができ、調理の作業性、メンテナンス性、清掃性が高い。
また、スライド部302は、調理室11内に取り付けられたレール部301(図9参照)に対して着脱自在に係合されている。このため、図12に示すような状態で、調理室扉7及びその付帯部品を調理室11から取り外すことができ、洗浄等のメンテナンスが容易な構造である。
スライドレールユニット30の固定側であるレール部301と、可動側であるスライド部302の背面側端部には、それぞれ、磁石(図示せず)が取り付けられている。調理室扉7が閉状態に近づくと、磁石間の引力により調理室扉7を閉方向に付勢して調理室扉7を調理室11の前面開口に密着させ、これにより調理室11の気密性を高めている。
図13は、実施の形態1に係る調理室11の、加熱室20位置の断面から見た背面図である。
加熱室20は、調理室11の後壁111の背面側において、吹出口28及び調理室吸込口12を内包する。そして、加熱室20を区画形成する壁のうち、前壁に相当する壁は、調理室11の後壁111である。すなわち、調理室11と加熱室20は、本実施の形態1では後壁111を共有している。したがって、加熱室20は、吹出口28及び調理室吸込口12を介して、調理室11内と連通する。
調理室吸込口12は、調理室11の高さ方向中央より上側の領域にも開口しており、調理室11内の上方の空気を吸引可能な構成である。調理室吸込口12は、本実施の形態1では、送風ファン22の吸込み部位である回転中心と概ね対向するように設けられた弧状の複数のスリットで構成されている。なお、調理室吸込口12の開口部の具体的形状は、図示のものに限定されない。
吹出口28は、それぞれ、概ね円形の開口部であり、調理室11の調理室扉7と対向する壁部である後壁111に設けられている。吹出口28は、後壁111の左右の側壁112側の近傍に、複数設けられている。本実施の形態1では、高さ方向に2つの吹出口28が並べて配置されている。本実施の形態1では、吹出口28は、調理台26の載置面261の幅方向の外側の、側壁112の近傍に設けられている。そのようにすることで、吹出口28から吹き出される気流が、側壁112に沿って流れやすい。
下側吹出口28bは、調理台26の載置面261と、受皿27の間の高さ位置に開口している。
上側吹出口28aは、下側吹出口28bよりも上側であって、調理室吸込口12の開口部の上端よりも低い位置に配置されている。
第二加熱手段24の一部は、送風ファン22の外周側の左右それぞれの側方において高さ方向に延びており、当該部分を垂直部241と称する。垂直部241は、加熱室20の左右の側壁202よりも送風ファン22に近い位置であって、吹出口28よりも上方に設けられている。
また、第二加熱手段24の垂直部241の下部は、送風ファン22から離れる方向に略水平方向に延びており、当該部分を水平部242と称する。水平部242は、送風ファン22の外周側よりも加熱室20の左右の側壁202に近い側まで延びる長さであって、後壁111の左側に設けられた吹出口28(上側吹出口28a及び下側吹出口28b)と、後壁111の右側に設けられた吹出口28(上側吹出口28a及び下側吹出口28b)との間に配置されている。
また、第二加熱手段24の一部は、送風ファン22の下側において略水平方向に延びており、当該部分を底面側水平部243と称する。底面側水平部243は、水平部242に連なり、送風ファン22の外周側よりも加熱室20の左右の側壁に近い側まで延びる長さであって、左右の吹出口28の間に配置されている。
送風ファン22から送出される気流のうち概ね吹出口28よりも上方から送出される気流は、送風ファン22の側方且つ下方に配置された吹出口28へ流れる過程で、第二加熱手段24の垂直部241と水平部242にそれぞれ接触する。このように、送風ファン22から送出された気流が第二加熱手段24に2度接触するので、気流の加熱効率が高まる。
また、送風ファン22から送出される気流のうち概ね吹出口28よりも下方から送出される気流は、水平部242と底面側水平部243とに挟まれた領域を通過する過程で、水平部242及び底面側水平部243により加熱される。このように、水平部242及び底面側水平部243により加熱されるため、加熱効率が高い。
このように、送風ファン22から送出される気流は効率よく加熱されるため、吹出口28からより高温の気流を吹き出すことができ、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、第二加熱手段24は、導風板43a、43bに近接して配置される。例えば、上面、正面、及び側面のいずれかから見たときに、第二加熱手段24と導風板43a、43bとが重なるように配置し、第二加熱手段24からの放射が導風板43a、43bに届きやすい構成とする。このようにすることで、第二加熱手段24によって導風板43a、43bが加熱される。そして、送風ファン22から送出されて吹出口28へ向かう流速の速い気流は、導風板43a、43bにより形成される風路を通過する過程で導風板43a、43bに接触して加熱される。このように吹出口28の上流側の直近にて導風板43a、43bにて気流が加熱されるので、より高温の気流を吹出口28から吹き出すことができ、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
図14は、実施の形態1に係る加熱調理器1の調理室11略中央位置の側面断面図である。
調理室11の上壁113、底面、及び側壁112と、調理室収納部19との間には空隙52が設けられており、空隙52には、調理室収納部19の収納部通風口36(図6参照)から流入した気流が流れるように構成されている。この空隙52を流れる気流により、調理室11から調理室収納部19内へ漏洩する熱を排気する。このようにすることで、調理室収納部19外への熱漏洩を抑制して、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。また、吹出口28から吹き出される気流の圧力や加熱調理中の被加熱物からの水蒸気爆発や揮発により調理室11内の圧力が高まった場合に、調理室11の壁の接合部等から油煙や炭化物等が漏れ、調理室収納部19内に油分や汚れが付着しうる。調理室収納部19に付着した油分や汚れは、故障や発煙の要因となりえるが、収納部通風口36から流入する気流が空隙52を流れて調理室収納部19内の空気を換気することにより、油煙や炭化物等の汚染物が排気され、内部の汚れの堆積を抑制できる。
調理室11の上面、底面、及び側面は、空隙35を介して二枚の壁が配置された二重壁構造により構成されている。この空隙35は、調理室11からの熱漏洩を抑制する断熱機能を発揮する。空隙35によって調理室11からの熱漏洩を抑制することで、調理室11内の加熱効率を高めるとともに、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。本実施の形態1においては、空隙35による空気断熱を行っているが、必要に応じて空隙35内にグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入してもよい。そのようにすることで、断熱性能を高めることができ、加熱効率や冷却効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態1では、空隙35による空気断熱を行う例を示すが、必要に応じて空隙35にグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入してもよい。このように断熱性能を高めることで、加熱効率や冷却効率を高めることができる。
[加熱調理器の動作]
次に、実施の形態1に係る加熱調理器1の動作を説明する。
(トッププレート上での加熱調理)
ユーザーがトッププレート4上の載置部8に対応する操作部6を操作すると、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装された制御手段が、トッププレート4下方の誘導加熱コイルユニット18やラジエントヒーター17に電力を供給する。これにより、トッププレート4の上に載置された被加熱物の加熱調理が行われる。また、制御手段は、冷却ファン37を駆動し、冷却ファン37から供給される冷却風によって上記のような加熱調理器1内の各部の冷却が行われる。
(調理室での加熱調理)
表示部9には、調理室11での加熱調理のために設定可能な調理モード、調理メニュー、加熱条件等が表示される。ユーザーが、表示部9に表示される情報を確認しながら操作部6を操作して所望の設定を行うと、設定内容に対応する制御シーケンスが記憶手段(図示せず)から呼び出され、制御手段は、調理室温度検知手段32、加熱室温度検知手段44から得る温度情報や、内蔵する計時手段(図示せず)により計測した時間に基づき、制御シーケンスにしたがって第一加熱手段23、第二加熱手段24、及び電動機21の制御を行う。
図15は、実施の形態1に係る調理室11の空気の流れを説明する概略図である。図15(A)は調理室11を側面から見た図、図15(B)は上面から見た図であり、調理室11の主要構成を示している。また、図15(A)では、上側吹出口28aからの空気の流れを実線矢印で概念的に示し、下側吹出口28bからの空気の流れを破線矢印で概念的に示している。また、調理室11を上面から見ると、上側吹出口28a、下側吹出口28bからの空気の流れはほぼ同様であるため、図15(B)では上側吹出口28aからの空気の流れを実線矢印で概念的に示している。図15、図14を参照して、実施の形態1の調理室11の作用を説明する。
まず、制御手段が第一加熱手段23に通電すると、第一加熱手段23の放射により、調理台26に載置された被加熱物の主に上面が加熱される。
また、制御手段が第二加熱手段24に通電すると、第二加熱手段24の放射伝熱により、加熱室20内の空気が加熱される。
そして、制御手段が電動機21を駆動すると、電動機21に連結された送風ファン22が回転する。
電動機21の動作により送風ファン22が回転すると、送風ファン22に対向して開口している調理室吸込口12に吸引力が生じる。そうすると、調理室11内の空気の一部は、調理室吸込口12から加熱室20内へと吸い込まれる。加熱室20内に吸い込まれた空気は、送風ファン22の回転中心に吸い込まれ、羽根の外周へと送出される。送風ファン22の羽根から送出された気流は、送風ファン22の外周に配置された第二加熱手段24によって加熱され、導風板43a、43bの間に形成される空間を通り、上側吹出口28aから調理室11内へと吹き出される。また、第二加熱手段24によって加熱された空気は、導風板43bと加熱室20の底板203との間に形成される空間を通り、下側吹出口28bから調理室11内へと吹き出される。
下側吹出口28bから調理室11内に吹き出された気流は、調理室11の側壁112の表面に沿って概水平に前方(調理室扉7側)に向かって流れ、調理室扉7に到達した後、調理室扉7により流れ方向を曲げられ、後壁111側に向かう気流となる。後壁111側に向かう気流は、調理室吸込口12に生じる吸引力により、後壁111に向かって斜め上向きの気流となり、気流の一部は調理台26の載置面261を通過して載置される被加熱物の下面を加熱する。
また、上側吹出口28aから調理室11内に吹き出された気流は、調理室11の側壁112の表面に沿って概水平に前方(調理室扉7側)に向かって流れ、調理室扉7に到達した後、調理室扉7により中央側に向きを曲げられ、背面側に向かう気流となる。
ここで、上側吹出口28aの配置位置は調理台26よりも高い位置であるため、上側吹出口28aから吹き出されて調理室11の後壁111側に向かう気流は、調理室吸込口12の上端側に吸引され、気流の多くは調理台26の載置面261を通過しない。しかし、上側吹出口28aからの気流は、下側吹出口28bからの気流が上方へ向かうのを抑制するので、下側吹出口28bから吹き出された気流が調理台26の載置面261を通過する割合を高め、被加熱物の下方の加熱効率を高めることができる。
また、加熱室20内において上側吹出口28aの上方と下方に、それぞれ、平板が略水平方向に向くようにして導風板43aと導風板43bを設けた。また、下側吹出口28bの上方には導風板43bが設けられ、下側吹出口28bの下方においては加熱室20の底板203が導風板として機能する。このため、上側吹出口28a、下側吹出口28bからの気流の水平性が高められ、調理室扉7から後壁111に向かう斜め上向きの気流の形成が補助される。したがって、気流が調理台26の載置面261を通過するのを促し、被加熱物の加熱効率をさらに高めることができる。
吹出口28から吹き出された気流は、調理室11内を流れ、再び調理室吸込口12に吸い込まれて加熱室20に流入する。
加熱室20内の空気の一部は、加熱室排気口53を通って調理室排気ダクト10に流入し、触媒体34で浄化され、調理室排気ダクト10内を流れて筐体排気口13から外部へと流出する。このような気流の流れを、図14に破線矢印で概念的に示す。
調理室吸込口12から吸い込まれて吹出口28から吹き出されるという気流の動きに伴い、調理室11内の空気の一部が、加熱室20を介して排気される。なお、このようにして調理室11内の空気の一部が排気されるが、排気されたその分の空気は、調理室扉7と調理室11との隙間(図示せず)や、吸気のために別途設けられた開口部(図示せず)から吸引されて補われる。
次に、魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードを例に、調理室11における加熱調理の調理工程の具体例を説明する。
(1)第一調理工程
魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードの調理工程が開始されると、第一加熱手段23と第二加熱手段24は、ともに加熱量が最大となるように制御され、電動機21は停止するように制御される。調理工程の開始時において電動機21が停止していることにより、調理室排気ダクト10からの排気は自然排気のみとなり、排気量は最少となる。このため、排気に伴う排熱が抑制され、調理室11及び加熱室20内の昇温速度が速まるとともに、被加熱物の加熱にあまり寄与しない低温の気流が吹出口28から吹き出されて被加熱物に接触することによる被加熱物の乾燥を抑制することができる。
加熱室温度検知手段44により、加熱室20内の温度が所定の第一温度(例えば200℃)まで昇温したことが検知されると、次の工程に進む。
なお、本実施の形態においては、加熱室温度検知手段44の検知温度により低温の気流の吹き出しを抑制する時間(すなわち、第一工程の時間)を制御しているが、計時手段を備え、加熱室20及び近傍における熱容量及び熱漏洩と第二加熱手段24の出力とにより算出される第一温度(例えば200℃)に到達するまでの所定時間を計時手段でカウントし、その後に次の調理工程に進むようにしても同様の効果が得られる。
(2)第二調理工程
制御手段は、電動機21を駆動して送風ファン22を回転させる。そうすると、送風ファン22が回転すると、送風ファン22に対向して開口する調理室吸込口12に吸引力が生じ、調理室11内の空気の一部は、調理室吸込口12から加熱室20内へと吸い込まれ。加熱室20内へ吸い込まれた空気は第二加熱手段24によって加熱されて高温の気流となり、吹出口28から調理室11内へと吹き出される。
調理台26の上に載置された被加熱物の上面は、第一加熱手段23からの放射と、調理室11内の空気からの伝熱により加熱される。また、調理台26の上に載置された被加熱物の下面は、主に調理室扉7側から調理室11の後壁111側に向かって斜め上方に向かう気流からの伝熱により加熱される。
ここで、第一加熱手段23からの放射分布により、調理台26上の被加熱物の調理台26の外周壁面側は、中央部に比べて加熱量が少なくなる傾向にある。しかし、本実施の形態1では、吹出口28から吹き出された高温の気流は、コアンダ効果によって調理室11の左右の壁面に沿って流れる。したがって、調理台26上の被加熱物の外周壁面側の加熱不足が補われ、被加熱物の加熱ムラが軽減される。
調理室温度検知手段32より、調理室11内の温度が所定の第二温度(例えば250℃)まで昇温したことが検知されるまでは、第一加熱手段23と第二加熱手段24ともに最大出力で加熱を行う。このように加熱の初期には高出力で加熱することで、より短時間で70℃程度まで上昇させて被加熱物の表層部のタンパク質を凝固させ、内部の水分等の揮発を抑制して内部のジューシーさを保持することができる。
また、調理初期、例えば第一調理工程及び第二調理工程の初期(数十秒〜3分程度)において、制御手段は、それ以降の工程(第二調理工程〜第四調理工程)の時間や加熱手段の火力を含む制御シーケンスの設定を行う。具体的には、制御手段は、計時手段により計時された調理初期の加熱時間や調理室温度検知手段32により検出された調理室11内の温度の変化等に基づいて、被加熱物の量や初期の被加熱物の温度を算出し、その情報に基づいて第二調理工程〜第四調理工程における調理時間等の制御シーケンスを設定する。以降は、設定した制御シーケンスにしたがって各部を制御する。
調理室11内が所定の第二温度に達すると、その後は、次の調理工程に進む。
本実施の形態1においては、第一調理工程後に第二調理工程が開始されるが、第一調理工程を省略して第二調理工程より調理工程を開始しても、前述した第二工程の作用効果を得ることができる。
また、上記説明では、調理室温度検知手段32より検知される調理室11内の温度が所定の第二温度(例えば250℃)に達するまで、第一加熱手段23と第二加熱手段24ともに最大出力で加熱する第二調理工程を実行することを説明した。しかし、第二調理工程の時間を、調理室温度検知手段32の検知温度により決定するのではなく、予め実験等により被加熱物が所定温度(例えば70℃)に達するまでの時間を求めておき、その時間だけ第二調理工程を実行するようにしてもよい。また、予め定めた時間と調理室温度検知手段32の検知温度の両方に基づいて、第二調理工程の時間を決定してもよい。
(3)第三調理工程
第三調理工程では、被加熱物の上面・下面・内部の焼き加減が適切になるように、各部が制御される。
調理台26に設置された被加熱物を加熱する気流は、主に、調理室扉7から後壁111側に向かう気流であるので、吹出口28から吹き出され調理室扉7に向かう気流と比べて流速が遅く、被加熱物の乾燥は抑制される。したがって、被加熱物の表面の乾燥を抑制すべく電動機21による風量の制御を行わなくとも、良好な調理効果・仕上がりをえることができる。しかし、電動機21の回転数を制御して風量を制御してもよい。風量を制御することで、よりきめ細かな調理効果・仕上がりをコントロールすることができ、また、排気風量の調整を行うことができる。
被加熱物の上面を主に加熱する第一加熱手段23の放射伝熱による加熱過程では、時間の経過に伴って昇温速度は徐々に小さくなるが、表面温度は上昇しつづける。
また、被加熱物の下面を主に加熱する吹出口28からの気流による対流熱伝達による加熱過程では、気流の温度(調理室11内の空気温度とほぼ同等)よりやや遅れて表面温度は高くなり、調理室11の空気温度に近づく傾向がある。
このように加熱過程に違いがあるため、第一加熱手段23と、第二加熱手段24は、それぞれ、以下のように制御される。
まず、第一加熱手段23での加熱を続けると、被加熱物上面の温度は高くなりすぎて焦げてしまい食味を損なうことから、調理室11内の温度が所定値となったときに、第一加熱手段23の加熱を停止する。なお、第一加熱手段23の加熱を停止するのではなく、被加熱物の表面温度が焦げるほど上昇しない程度に、第一加熱手段23の出力を低減させてもよい。
また、被加熱物の下面の表面温度及び被加熱物の内部温度になるまでの所定の時間は、庫内温度が所定温度を超えない範囲で、第二加熱手段24の出力が第一加熱手段23より高い出力となるように制御される。
(4)第四調理工程
この調理モードの終盤である第四調理工程では、所定時間、第一加熱手段23の出力を、第二加熱手段24の出力よりも高める。このように調理室11内での加熱調理の終了前の所定時間、第一加熱手段23の出力を高めることで、被加熱物の表面に適切な(美味しそうな)焼色を付けるとともに、表面の水分を揮発させパリッとさせ、見た目も食味も良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
一連のシーケンスが完了すると、第一加熱手段23及び第二加熱手段24による加熱は停止する。そして、調理室扉7のロック解除条件が満たされると、表示部9にて調理完了を報知するとともにブザーや音声による報知を行い、制御手段は調理室扉7のロックを解除する。そうすると、ユーザーは、調理室扉7を開けて被加熱物を調理室11から取り出すことができる。
上記のような魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モードのほか、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室11内で調理する連携調理モードでの加熱調理も可能である。
具体的には、例えば、表示部9に表示される調理モードのうち『連携調理』モードが操作部6により選択され、さらに、表示部9に表示される調理メニューのうち『シチュー』や『ハンバーグ』等の調理メニューが操作部6に選択されると、設定された調理モードと調理メニューに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出される。
ユーザーは、食材を調理容器に入れ、トッププレート4上の載置部8で下準備の加熱調理を行う。例えば、ハンバーグであれば、表面に焦げ目が付く程度に、トッププレート4上で加熱する。また、シチューであれば、トッププレート4上にて、食材を炒める。そのような下準備の加熱調理が終了すると、ユーザーは、食材を調理容器ごと調理室11の調理台26上に載置する。そして、操作部6にて調理室11内での加熱開始が指示されると、制御手段は、ハンバーグであれば表面の焦げ目以降のハンバーグ内部の加熱の自動調理を、シチューであれば煮込みの自動調理を行うように、第一加熱手段23、第二加熱手段24、及び電動機21を制御シーケンスにしたがって制御する。
調理台の下方に電気ヒーター等の加熱手段が配置された従来の調理室では、被加熱物を収容可能な調理室内の有効高さ寸法が低いため、フライパンや鍋等の調理容器の収納は難しかった。このため、調理室内でトッププレート上の加熱調理と連携した調理はできなかった。しかし、本実施の形態1によれば、吹出口28の一部を調理台26の載置面と受皿27との間に配置して調理台26の下方に電気ヒーター等の加熱手段を配置しないため、調理室11内の高さ寸法を確保することができ、比較的高さのある調理容器であっても調理室11内に収容することができる。このように、本実施の形態1に係る加熱調理器1によれば、トッププレート4上と調理室11内とで連携調理が可能であるので、多彩な調理を実現でき、ユーザーの調理作業を軽減する効果を得られる。
以上のように本実施の形態1では、加熱室20で加熱された気流を吹き出す吹出口28を、調理室扉7と対向する壁面である後壁111に設けた。また、吹出口28を、その少なくとも一部が調理台26の載置面261よりも下側に開口するように設けた。そして、吹出口28からは、吹出口28が配置された後壁111と隣接する側壁112の面に沿って流れるように気流が吹き出される。このため、吹出口28から吹き出された気流は、側壁112の面に沿って流れて調理室扉7によって向きを変えられて、調理室扉7側から調理室吸込口12へ向かう斜め上向きの気流となる。この調理室扉7側から調理室吸込口12へ向かう斜め上向きの気流は、調理台26の載置面261を通過する過程で被加熱物の下面を加熱することができる。
また、被加熱物を載置する調理台26の下方に加熱手段を配置しないことから、被加熱物の下方のスペースを狭くでき、調理室11の有効調理高さ寸法(調理台26の上方の高さ)を拡大することができる。このため、厚い被加熱物の加熱調理を行うことができる。また、被加熱物から滴下する油脂分が、電気ヒーター等の加熱手段に接触することもないので、調理室11内での発煙・発火が抑制される。また、調理室内に被加熱物を下方から加熱する電気ヒーター等の加熱手段を設けないことから、調理室内のメンテナンス性・清掃性を高める効果がある。
また、調理室11内の上方に設けられ主に被加熱物の上面を加熱する第一加熱手段23と、主に被加熱物の下面を加熱する気流の温度を上昇させる第二加熱手段24の出力を、個別に制御するようにした。このため、被加熱物の上面と下面をそれぞれ適切な加熱量にて加熱することができ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、被加熱物に接触する主な気流は、吹出口28から吹き出された直後の気流ではなく、調理室扉7側から後壁111に形成された調理室吸込口12へ向かう気流である。この調理室扉7側から調理室吸込口12へ向かう気流は、拡散・分散されて流速が低くなる。したがって、気流が被加熱物に衝突することによる被加熱物の乾燥を抑制することができる。また、気流が拡散・分散することで、調理室11内の気流の温度も均一に近づく傾向があることから、加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、吹出口28から調理室11内に吹き出された気流が、調理室11の両側の側壁112の壁面に沿う流れを形成するようにした。このため、第一加熱手段23からの放射による加熱が少ない被加熱物の外周側の加熱が補われ、加熱ムラが低減されて良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。また、吹出口28からの気流は両側壁112の壁面に沿う流れであることから、吹き出された熱風は受皿27の底面と直接接触しにくいので、被加熱物から受皿27に滴下した油分や汁気が加熱されることによる煙や臭気の発生を抑制する効果がある。
また、吹出口28からの気流が両側壁112の壁面に沿って流れるようにし、気流を、調理室11の後壁111と調理室扉7の面に沿わせないようにした。気流が壁面に沿って流れると、その壁面は気流の熱により高温化するため、仮にユーザーが接触する可能性のある調理室扉7に沿って気流を流すと、調理室扉7が高温になってユーザーに火傷等を生じさせるおそれがある。しかし、調理室11の側壁112の表面に沿って気流を流すことで、調理室扉7の温度上昇は軽減され、安全性を高めることができる。また、調理室扉7は加熱調理器1の外部の空気と接触しているため、断熱性を高めることが難しく、また高温になると熱漏洩が大きくなって加熱効率が低下する。しかし、本実施の形態1のように両側壁112に対しては、空隙35等の断熱手段を設けることができ、これによって熱漏洩を抑制して加熱効率を高める効果がある。
また、複数の吹出口28を、調理室11の一つの壁面に配置したので、構造が容易であり、低コストで信頼性の高い加熱調理器とすることができる。
また、吹出口28を、後壁111に隣接する側壁112の近傍に設けた。より詳しくは、本実施の形態1では、幅方向において調理台26よりも外側の側壁112の近傍に吹出口28を設けた。このため、側壁112に沿った気流を良好に形成することができ、また、不必要な渦等による気流の乱れを抑制することができるので、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、高さ方向に並べて複数の吹出口28を設けた。このため、上側吹出口28aからの気流は、下側吹出口28bからの気流が上昇するのを押さえ込む作用を発揮し、下側吹出口28bが上方に向きすぎるのを抑制することができる。このため、調理台26の載置面261近傍を通過する気流の割合を高まり、被加熱物の下方の加熱効率を高めることができる。なお、本実施の形態1では、上下に2個の上側吹出口28a、下側吹出口28bを設けた例を示したが、高さ方向に3個以上の吹出口28を設けてもよく、同様の効果を得ることができる。
また、上側吹出口28aの上方と下方にそれぞれ、平板面が略水平を向くように配置された導風板43a、43bを設けた。また、下側吹出口28bの上方に導風板43bを設け、下側吹出口28bの下方においては加熱室20の底板203が導風板として機能する配置とした。このように、上側吹出口28a、下側吹出口28bの上方と下方に導風板を設けたので、上側吹出口28a、下側吹出口28bからの気流の水平性を高めることができ、上側吹出口28a、下側吹出口28bから調理室扉7に向かう気流は、概ね調理室11の底部近傍を進みやすい。このため、調理室扉7から後壁111の調理室吸込口12に向かう気流は、斜め上向きの流れとなりやすく、これによって気流が調理台26の載置面261を通過する割合が高まり、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、吹出口28の上流側の外周を囲む凸部42を設けるとともに、上側吹出口28aの上方と下方に導風板43a、43bを設けた。そして、この導風板43を、上方から見て凸部42と重なるように、後壁111の背面に接合した。このため、導風板43と後壁111の背面との間に隙間が生じた場合でも、その隙間より侵入した気流によって吹出口28からの気流の水平性が阻害されるのを抑制する効果がある。また、吹出口28の外周に凸部42を設けることで、導風板43を後壁111に接合する際の位置決めを容易にすることができる。
また、上側吹出口28aの上方と下方にそれぞれ設けられた導風板43a、43bを一体化した部材として構成した。このため、部品コストと組み立てコストを低減する効果がある。
また、第二加熱手段24と導風板43とを近接させて設けたので、第二加熱手段24によって導風板43が加熱され、導風板43から気流へ熱が伝わる。このため、導風板43を設けることで気流への伝熱面積を広くすることができる。また、導風板43には吹出口28に向かう流速の速い気流を接触させるので、気流の加熱効率を高めることができ、被加熱物の加熱効率を向上させることができる。
また、加熱室20と外部とを連通する調理室排気ダクト10に触媒体34を設けた。そして、第二加熱手段24からの放射が直接届く位置に、触媒体34を配置した。このため、触媒体34を加熱する専用の加熱手段が不要となって低コストに製造できる。また、触媒体34の温度を高めて調理室排気ダクト10からの排気の清浄度を増すことができるので、快適な調理空間・環境が得られる加熱調理器とすることができる。
また、送風手段として送風ファン22を備えた。そして、第二加熱手段24は、吹出口28より上方にて、加熱室20の左右壁面よりも送風ファン22の外周側の近くに配置された垂直部241を備えた。また、第二加熱手段24は、垂直部241の下方に設けられ、送風ファン22の外周側よりも加熱室20の左右壁面の近くまで延び、左右の吹出口28どうしの間に配置された水平部242を備えた。このため、送風ファン22から吹き出されて吹出口28に至る気流を効率よく加熱でき、加熱効率の高い加熱調理器とすることができる。
また、調理室11を収容する調理室収納部19を加熱調理器1内に設け、冷却ファン37から送られる気流を調理室収納部19内に流入させる収納部通風口36を調理室収納部19に設けた。このため、調理室収納部19内の熱気が排気され、調理室収納部19の外側に配置された他の部品の温度上昇を抑制することができる。また、調理室11から調理室収納部19内に放出された油分や炭化物等も排気されて汚れの堆積が抑制されるので、信頼性が高く耐久性が高い加熱調理器とすることができる。
また、加熱調理器1に操作部6を設け、この操作部6によって調理室11内で加熱を行う所定の加熱調理メニューの実行が指示されると、加熱調理工程の初期段階(加熱開始段階)である第一調理工程では、第一加熱手段23と第二加熱手段24はともに加熱するように制御されるが、電動機21は停止するように制御されるようにした。調理室11と加熱室20が比較的低温である加熱開始時期において、電動機21が停止状態であるため、調理室排気ダクト10からの排気は自然排気のみとなって排気量は最少となるので、排気に伴う排熱が抑制され、調理室11及び加熱室20内の昇温速度が速まる。また、被加熱物の加熱への寄与が低い比較的低温の気流が吹出口28から吹き出されて接触することによる、被加熱物の乾燥を抑制することができるので、良好な調理効果を得ることができる。
また、調理室11内で加熱を行う所定の加熱調理メニューの序盤の調理工程(実施の形態1の第二調理工程)においては、第一加熱手段23と第二加熱手段24が最大出力で加熱するようにした。また、中盤の調理工程(実施の形態1の第三調理工程)では、調理室11内が所定温度に維持されるように第二加熱手段24の出力が第一加熱手段23の出力より大きくなるようにした。また、終盤の調理工程(実施の形態1の第四調理工程)では、第一加熱手段23の出力が第二加熱手段24の出力よりも大きくなるようにした。このため、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、調理室扉7の開閉を検知する開閉検知手段を備えた。そして、操作部6から調理動作指示が出力された場合に、調理室扉7が開状態であれば加熱調理を行わず調理室扉7を閉めるよう表示部9報知するようにした。また、加熱調理中に調理室扉7の開動作が検知された場合は、すべての加熱手段と送風手段である電動機21を停止して調理室扉7が開いたため加熱調理を停止したことを報知するようにした。このため、吹出口28からの熱風が加熱調理器1の外へ吹き出されるのが抑制され、ユーザーの火傷等のリスクを軽減できることから、安全性の高い加熱調理器を得ることができる。
また、加熱調理器1は、調理室11のほかに、トッププレート4と、トッププレート4に載置される被加熱物を加熱する加熱手段である誘導加熱コイルユニット18とラジエントヒーター17を備えた。このため、トッププレート4上では鍋やフライパン等の調理容器を用いた加熱調理ができ、調理室11ではグリル、ロースター、オーブン、スチーム調理等ができることから、一台の加熱調理機で同時に多様な調理が行え、省スペースで多機能な加熱調理器にできる効果がある。
また、制御手段によって実行される調理モードの一つとして、トッププレート4上で加熱調理を行う工程と、調理室11内で加熱調理を行う工程とを含み、両工程において共通の調理容器を使用可能な連携調理モードを備えた。このため、調理のレパートリーを広げることができ、ユーザーの調理作業を軽減する効果を得ることができる。
実施の形態2.
図1、図4〜図6、図12、図16〜図19を用いて、実施の形態2を説明する。本実施の形態2は、実施の形態1の調理室11の構成の一部を変更したものであり、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図1、図4〜図6、図12に示す構成は、実施の形態1と同様である。
図16は、実施の形態2に係る加熱調理器1から筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5を取り外した斜視図である。
実施の形態2の調理室排気ダクト10Aは、冷却風排気ダクト15の内側に配置されるという点では実施の形態1と同様である。しかし、実施の形態1で示した図2と図16とを対比して分かるように、本実施の形態2では、冷却風排気ダクト15の流路断面積に占める調理室排気ダクト10Aの流路断面積の比率が、実施の形態1で示したものよりも低減されている。また、冷却風排気ダクト流入口16の下方に占める調理室排気ダクト10の領域も縮小されており、冷却風排気ダクト流入口16から筐体排気口13に至る冷却風の通過に伴う圧力損失が低減されている。このため、冷却ファン37の送風負荷が軽減されるので、冷却ファン37の動作騒音も低減される。
図17は、実施の形態2に係る調理室11の上壁113を取り外した状態の斜視図である。図18は、図17の調理室吸込ダクト45近傍の構成を説明する図である。なお、図18では、調理室吸込ダクト45に設けられる触媒体54の記載を省略している。
第一加熱手段23の端子部は、調理室11の後壁111の右側に寄った位置を貫通して設置されている。本実施の形態2では、第一加熱手段23の端子部を右側に寄せた例を示しているが、端子部を左側に寄せてもよい。すなわち、図17に示す第一加熱手段23を左右反転させて設けてもよい。
調理室11の後壁111には、調理室吸込ダクト45が設けられている。調理室吸込ダクト45は、後壁111との間に風路を形成する部材であり、下方から上方に向かって調理室11の内部方向(前面方向)に突出するように傾斜した傾斜面を構成する吸込ダクト前壁451と、この吸込ダクト前壁451の側端部から後方に向かって延び後壁111に接続される吸込ダクト側壁452とを備えている。調理室吸込ダクト45の上端において後壁111との間に形成される開口部が、調理室吸込口12Aである。調理室吸込口12Aは、調理室11の高さ方向中心よりも上側に配置され、また、上方に向かって開口している。
調理室吸込口12Aの近傍の調理室吸込ダクト45と後壁111との間には、触媒体54が取り付けられている。触媒体54は、実施の形態1で示した触媒体34と同様に排気を清浄化するためのものであり、機能的には触媒体34と同様の構成である。触媒体54は、第一加熱手段23からの放射が直接的に届く位置・角度で取り付けられるのが好ましい。より具体的には、触媒体54は、第一加熱手段23の少なくとも一部と、高さ方向及び左右幅方向において重なる位置に取り付けられるのが好ましい。このようにすることで、第一加熱手段23の放射により触媒体54が加熱されて触媒活性が高まる。調理室吸込ダクト45に吸い込まれる気流は、第一加熱手段23の近傍を通過してから調理室吸込ダクト45に流入することで、加熱効率高く昇温されて触媒体54の近傍を通過するとともに、第一加熱手段23の放射により触媒体54はより高温に加熱される。これにより、触媒体54に添着される酸化触媒は触媒活性され、調理室11内の空気に含まれる油煙や臭気成分等の汚染物質の一部を吸着して酸化分解を行い浄化する。調理室11内の空気の一部は、調理室排気ダクト10Aから排気される一部の空気を除いて循環するため、調理室11内の空気は循環しながら何度も触媒体54を通過することで浄化率が高まる。このため、実施の形態1のように調理室排気ダクト10を通過する過程で排気が一度だけ触媒体54を通過する構成と比較して、本実施の形態2の調理室11内や調理室排気ダクト10からの排気の浄化率は高い傾向にある。なお、実施の形態1で示した触媒体34を調理室排気ダクト10内に設けてもよい。
汚染物質が酸化分解する化学反応の過程において反応熱が発生するが、この熱は通過する気流をさらに加熱し、加熱された気流は高温の循環気流として吹出口28より調理室11内に吹き出される。このように、気流が触媒体54を通過することにより生じる反応熱は、被加熱物の加熱調理に利用される。
調理室11の後壁111の両側面の近傍には、複数の吹出口28Aが設けられている。本実施の形態2では、後壁111の左右の側壁112のそれぞれに寄った位置に、2つの吹出口28Aが左右に所定間隔を開けて並べて配置されている。なお、区別して説明する場合には側壁112に近い側の吹出口28Aを側壁側吹出口28c、側壁112から離れた方の吹出口28Aを中央側吹出口28dと称し、区別する必要のないときには吹出口28Aと称する。
調理室11の両側面の空隙35には、例えばグラスウールや真空断熱材等の断熱材40が充填されている。断熱材40を設けることで、調理室11内からの熱漏洩を低減して加熱効率を高めるとともに、周囲の部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。
図19は、実施の形態2に係る調理室11の上壁113、スライドレールカバー39、加熱室20及び付帯する部品を取り外した状態の背面側斜視図である。
調理室11の後壁111には、加熱室流入口46が開口している。この加熱室流入口46の調理室11の内部側には、加熱室流入口46と対向するようにして、図17、図18で示した調理室吸込ダクト45が取り付けられる。調理室11内の空気は、調理室吸込口12Aから調理室吸込ダクト45に流入し、加熱室流入口46を経て加熱室20に吸い込まれる。
吹出口28の外周には、凸部42が設けられている。
調理室11の後壁111の外面(加熱室20側の面)において、吹出口28Aの外側には、吹出口接続ダクト47が設けられている。吹出口接続ダクト47は、略角筒形状を有し、吹出口28の外周側を囲んでいる。凸部42は、吹出口接続ダクト47の内側に嵌め込まれる。加熱室20内の空気は、吹出口接続ダクト47を通って吹出口28から調理室11内へ供給される。吹出口接続ダクト47による整流効果で、吹出口28から所定の方向に気流を吹き出すことができる。
本実施の形態2においては、吹出口28Aから略水平に側壁112に略平行な気流を吹き出すように、吹出口接続ダクト47によって気流を整流する。このように吹出口接続ダクト47を設けることで、送風ファン22から送出される気流の遠心方向成分や旋回成分によって、吹き出す気流が下方向に向いたり左右に向いたりするのを抑制することができる。このため、調理室11の両側壁112の壁面に沿った気流が形成され、吹出口28Aからの気流が調理室扉7まで到達しやすくなり、これによって調理室11内を循環する気流を形成する効果がある。
図20は、実施の形態2に係る吹出口接続ダクト47の構成例を示す図であり、図20(A)は斜視図、図20(B)は分解図である。
図3に例示する吹出口接続ダクト47は、接合代のある略L字の部品471と、吹出口接続ダクト47の側壁及び底壁に相当する部分を形成するように凸凹形状(波板形状)に折り曲げられた部品472とを、溶接やカシメ等で接合して一体化して構成されている。このように構成された吹出口接続ダクト47は、調理室11の後壁111の背面に、溶接等で接合される。複数の吹出口28Aの吹出口接続ダクト47を一つの部品としているので、部品コスト・組み立てコストを低減することができる。
また、吹出口接続ダクト47の内側に凸部42を嵌め合せることで、吹出口接続ダクト47と調理室11の後壁111との接合部分に生じた隙間から侵入した気流が、直接的に吹出口28Aに到達するのを抑制することができる。したがって、隙間からの気流により吹出口接続ダクト47による気流の整流効果が阻害されるのを防ぐことができる。また、吹出口接続ダクト47の取り付け面の熱変形や組み立てのバラツキによる気流への影響を抑制して、吹出口28Aから吹出口接続ダクト47の管路方向に進む直進性の高い吹き出し気流を安定して形成する効果がある。
図21は、実施の形態2に係る加熱室20及び付帯部品の斜視図である。
加熱室20の内部には送風ファン22が配置されている。送風ファン22は、加熱室20の背面に配置された電動機21の回転軸と固定され、電動機21の動作により回転して、中央部から吸引した空気を外周部より送出する構成であり、実施の形態1と同様である。
加熱室20の背面の上方には、調理室排気ダクト10Aが接続される加熱室排気口53が設けられている。本実施の形態2においては、実施の形態1と異なり、調理室排気ダクト10Aの加熱室20との接続端には、触媒体は取り付けられていない。このため、同じ排気風量を得る場合に、実施の形態1で示した調理室排気ダクト10と比較して、調理室排気ダクト10Aの風路断面積を小さく形成でき、省スペース化することできる。
加熱室20内に加熱室温度検知手段44が配置されるのは実施の形態1と同様である。
送風ファン22より送出された空気の一部は、加熱室排気口53から調理室排気ダクト10Aへ流入してする。調理室排気ダクト10Aに流入した空気は、水平部101と垂直部102からなる略L字状の風路を流れ、垂直部102の上端開口より排気される。排気される風量は、調理室排気ダクト10Aの流路断面積によって、適切な排気風量となるように調整される。適切な風量の排気により、調理室11内での良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下するのを抑制することができる。
第二加熱手段24Aの端子部は、加熱室20の背面より突出して配置される。第二加熱手段24Aの端子部とコントロールユニット29内の制御基板間は配線接続され、第二加熱手段24Aは、制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
図22は、実施の形態2に係る調理室11の、加熱室20位置の断面から見た背面図である。
本実施の形態2では、第二加熱手段24Aは、略水平方向に延びる中央部分から左右端部に向かって上昇するように傾斜した形状である。第二加熱手段24Aは、送風ファン22の中心よりも低い位置に、左右方向にわたって配置されており、送風ファン22から送出されて水平方向に向かう気流に沿うようにして設けられている。このようにすることで、送風ファン22から送出される気流の加熱効率を高めている。
また、第二加熱手段24Aは、高さ方向において吹出口28Aと一部重なるように配置されており、送風ファン22から送出されて水平方向に向かう気流が、第二加熱手段24Aを横切った直後に吹出口28Aから吹き出される構成である。このようにすることで、送風ファン22から送出される気流の加熱効率を高めることができる。また、熱ロスを少なくして高温の吹き出し気流を生成することができ、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、左側面側と右側面側の吹き出し気流の温度差を軽減されるので、調理室11内の左右の温度差を軽減でき、被加熱物の左右間の加熱ムラを抑制することができる。
また、第二加熱手段24Aの一部は、吹出口接続ダクト47に近接して設けられている。吹出口接続ダクト47に近接して第二加熱手段24Aを配置することで、吹出口接続ダクト47を第二加熱手段24Aにより加熱し、吹出口接続ダクト47を空気への伝熱板として機能させることができる。このため、吹出口28Aに向かう流速の速い気流が吹出口接続ダクト47内を通過する際、吹出口接続ダクト47によって気流を加熱し、加熱効率高く高温の吹出し気流を生成している。
また、加熱室20の背面の上方に調理室排気ダクト10Aが接続されているのに対し、第二加熱手段24Aは送風ファン22の中心より低く下方を通過するように配置されている。このため、送風ファン22から調理室排気ダクト10Aに流れる気流は、第二加熱手段24Aとの接触が少ないので、排気する空気を無駄に加熱することなく加熱効率を高めている。
吹出口28Aは、調理室扉7と対向する調理室11の後壁111に設けられている。吹出口28Aは、後壁111と隣接する両側の側壁112それぞれの近傍に、左右方向に並べて2つずつ配置されている。中央側吹出口28dは、側壁側吹出口28cに対して内側かつ下側に配置されている。吹出口28Aの高さ位置は、いずれも、調理台26の載置面261と受皿27との間である。また、中央側吹出口28dの左右位置は、調理台26の載置面261の幅方向の範囲内であり、調理台26の載置面261の下側に中央側吹出口28dが設けられている。
側壁側吹出口28cと中央側吹出口28dを、所定の間隔(吹出口直径相当の6倍以下が望ましい)をおいて配置することで、吹き出される気流の周囲に発生する負圧による誘引作用によって、側壁側吹出口28cからの気流は両側壁112の壁面に沿って付着する流れを形成し、中央側吹出口28dからの気流は側壁側吹出口28cとの誘引作用により、両側壁112の壁面に沿った付着流れを形成する。
側壁側吹出口28cと中央側吹出口28dに高低差を設けることにより、各吹出口からの気流の両側壁112の壁面への付着する高さ方向の位置をずらすことができる。このため、二つの気流の衝突が軽減され、側壁面付近での気流の乱れを抑制して良好な付着流れの形成し調理室前方まで気流を到達させている。
また、中央側吹出口28dを側壁側吹出口28cよりも低い位置に設けたことで、調理台26の外周部に載置される被加熱物との距離を設け、外周部下方が極端に加熱されることを抑制するとともに、第一加熱手段23では加熱されにくい外周部の加熱を適切に行い、被加熱物全体の加熱ムラを軽減して良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、吹出口28Aからの気流が調理室扉7付近に到達して背面側へ戻る気流で被加熱物を加熱するのは実施の形態1と同様であるが、実施の形態2では側壁側吹出口28cと中央側吹出口28dのすべてを調理台26の載置面261よりも低い位置に配置することで、戻る気流が載置面261の下方から上方へ通過する比率が高まり、被加熱物下方の加熱効率を高めている。
図23は、実施の形態2に係る調理室11の側面断面図である。
調理室11の上面と底面の空隙35には、断熱材40が充填されており、調理室11内からの熱漏洩を低減して加熱効率を高めるとともに、周囲の部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。
また、調理室吸込口12Aは、調理室11内の上方に開口しており、調理室吸込口12Aから調理室11内の上部の空気を吸引することができる。このため、調理室11の上方に溜まった熱気や煙・油煙を優先的に吸引することができ、調理室11内の空気の清浄度を高めることができ、被加熱物への着色や臭いの移行が軽減され、より良好な調理の仕上がりを得ることができる。
このように構成された実施の形態2の調理室11の作用を説明する。
図24は、実施の形態2に係る調理室11の空気の流れを説明する概略図である。図24(A)は調理室11を側面から見た図、図24(B)は上面から見た図であり、調理室11の主要構成を示している。また、図24(A)、(B)では、側壁側吹出口28cからの空気の流れを実線矢印で概念的に示し、中央側吹出口28dからの空気の流れを破線矢印で概念的に示している。
電動機21の動作により送風ファン22が回転すると、送風ファン22に対向して開口している加熱室流入口46に吸引力が生じる。そうすると、調理室吸込ダクト45と調理室11の後壁111との間に形成される風路を介して調理室吸込口12Aに吸引力が生じ、調理室11内の上方の空気が、調理室吸込口12Aから調理室吸込ダクト45と後壁111との間の風路内に吸い込まれる。調理室吸込口12Aから吸い込まれた空気は、触媒体54を通過する際に煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱され、加熱室流入口46から加熱室20内に流入して、送風ファン22により送出される。
加熱室20内で送風ファン22より送出された気流の一部は、調理室排気ダクト10Aを経て、排気される。
加熱室20内で送風ファン22より送出された気流の多くは、第二加熱手段24Aにより加熱され、吹出口接続ダクト47を通り、吹出口28から調理室11内へ吹き出される。吹出口28から吹き出された気流は、調理室11の側壁112の表面に沿って調理室扉7側へ向かって流れ、調理室扉7に到達した後、調理室扉7により幅方向中央側に向かって流れ方向を曲げられ、調理室吸込口12Aに生じる吸引力の作用によって後壁111に向かう気流となる。
本実施の形態2では、調理室吸込口12Aは調理室11内の上方に開口していてこの調理室吸込口12Aに吸引力が生じるので、調理室扉7の下側から後壁111の上方に向かって斜め上方向に上昇する気流が形成される。このため、調理室扉7から調理室吸込口12Aに向かって進む気流が調理台26の載置面261の下側を通過しつつ被加熱物の下面との成す角が垂直に近い状態で載置面261の上方に向かって流れ、加熱効率が高まる。また、調理室扉7の下側から後壁111の上方に向かって斜め上方向に上昇する気流により、調理室11内の温度ムラが軽減され、被加熱物の加熱ムラを抑制して良好な調理効果をえることができる。
なお、実施の形態2の調理室11では、実施の形態1と同様に、制御手段が所定の制御シーケンスにしたがって第一加熱手段23、第二加熱手段24A、及び電動機21の動作を制御する。実施の形態1で示した調理室11内における加熱調理(例えば、魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モード、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室11内で調理する連携調理モード)については、本実施の形態2においても同様にして実施可能である。
以上のように本実施の形態2では、吹出口28の少なくとも一部(本実施の形態2では中央側吹出口28d)を、調理台26の載置面261の水平範囲の下方に配置した。このため、調理台26の載置面261近傍を、下方から上方に向かって通過する気流の比率が高まり、被加熱物の加熱効率を高めることができる。また、中央側吹出口28dを、側壁側吹出口28cよりも低い位置に設けたことで、第一加熱手段23からの放射が届きにくい調理台26の左右端部近傍に配置された被加熱物への熱風の接触を増やし、加熱ムラを改善して良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、吹出口28Aの上流側である加熱室20内に、吹出口28Aの外周を囲む吹出口接続ダクト47を設けたので、吹出口接続ダクト47により整流された気流を吹出口28Aから吹き出すことができる。また、吹出口接続ダクト47は、調理室11内には突出していないので、調理室11内の清掃性が低下することもない。また、ユーザーが触れる可能性のある調理室11内に突起物である吹出口接続ダクト47を設けないので、ユーザーが突起物に接触して受賞するのを防止でき、安全性を高める効果がある。
また、隣接する吹出口28Aの配置高さを変えたことにより、各吹出口28Aから吹き出される気流の側壁面への付着位置をずらすことができる。このようにすることで、吹出口28Aからの気流どうしの衝突を抑制して、乱れの少ない付着流れを形成することができる。したがって、調理室扉7近傍まで気流を到達させ背面側へ戻る良好な循環気流を安定的に形成でき、被加熱物を風速・温度ムラの少ない気流により加熱することで、良好な調理効果・仕上がりを得られる。
また、吹出口28Aの外周に凸部42を設けるとともに、隣接する吹出口28Aの吹出口接続ダクト47を一体化して吹出口28Aが形成された後壁111の背面に接合した。これにより、部品コスト・組み立てコストを低減でき安価な加熱調理器とすることができる。
また、吹出口接続ダクト47に近接させて第二加熱手段24Aを配置したことにより、吹出口接続ダクト47を気流への伝熱手段として利用できる。吹出口接続ダクト47内の気流は流速が速く、気流へ効率よく熱伝達できるとともに、吹出口接続ダクト47で加熱された空気は吹出口28から熱ロス少なく高温で吹き出されるので、被加熱物の加熱効率を高め調理時間を短縮する効果がある。
また、加熱室20と連通する調理室吸込ダクト45を備え、調理室吸込ダクト45の端部を調理室11の上方にて開口させてこの開口部を調理室吸込口12Aとした。このため、調理室11の上方に溜まった熱気や煙・油煙を優先的に吸引することができ、調理室11内の空気の清浄度が増し、被加熱物への着色や臭いの移行が軽減されより良好な調理の仕上がりを得られるとともに、調理室11内の温度ムラが軽減され加熱被加熱物の加熱ムラが抑制され良好な調理効果が得られる。
また、調理室吸込口12Aに触媒体54を備え、触媒体54は第一加熱手段23からの放射が直接届く位置に配置した。このため、調理室排気ダクト10Aからの排気の浄化率を高め、調理室11内においては煙や油煙による被加熱物への着色や臭い移りが軽減され、反応熱により循環気流を加熱することで加熱効率が高まる。また、調理室排気ダクト10に触媒体を別途取り付ける必要が無くなり、調理室排気ダクト10の流路断面が小さくでき冷却ファン37の騒音を低減する効果がある。
また、送風手段として送風ファン22を加熱室20内に備え、加熱室20の上方に調理室排気ダクト10Aを接続するとともに、加熱室20の下方であって送風ファン22の下側に第二加熱手段24Aを設けた。このため、送風ファン22により送出されて送風ファン22の下方、加熱室20の下方を、加熱室20の両側面へ向かって略水平方向に流れる気流は、第二加熱手段24Aに沿って流れることとなり、効率よく加熱される。
また、第二加熱手段24Aの少なくとも一部は、吹出口28Aの少なくとも一部と高さが重なるように配置されている。このため、送風ファン22から送出された気流は、第二加熱手段24Aを横切った直後に吹出口28Aから吹き出され、さらに加熱効率を高めることができるとともに熱ロスを低減することができる。また、左側面側と右側面側の吹出気流温度差が軽減され、被加熱物の加熱効率を高めるとともに加熱ムラを軽減して省エネで調理時間が短く良好な調理効果が得られる加熱調理器を得ることができる。
実施の形態3.
図1、図4〜図6、図12、図16、図25〜図32を用いて、実施の形態3を説明する。本実施の形態3は、実施の形態1及び実施の形態2とは調理室11の構成の一部が異なるものであり、ここでは、実施の形態1、2と異なる部分を中心に説明する。
図1、図4〜図6、図12、図16は、実施の形態2と同様である。
図25は、実施の形態3に係る調理室11の上壁113を取り外した斜視図である。
実施の形態3の調理室吸込ダクト56は、実施の形態2と異なり、調理室11の後壁111との間に隙間を介して対向する吸込ダクト前壁561と、調理室11の上壁113の後壁111側の一部を隙間を介して覆う吸込ダクト上壁562とを備える。調理室吸込口12Bは、調理室11の上壁113と対向する吸込ダクト上壁562において下方に無糧開口している(図31、図32参照)。本実施の形態3では、調理室吸込口12Bは複数の開口部によって構成されている。この調理室吸込口12Bを構成する複数の開口を囲む領域の少なくとも一部は、上方から見て第一加熱手段23と重なる位置に配置されている。
調理室吸込口12Bが形成された調理室吸込ダクト56の吸込ダクト上壁562の上には、上下方向に空気の流通が可能な通気孔を有する触媒体54が設けられており、触媒体54には、第一加熱手段23の放射が届く。触媒体54を第一加熱手段23の放射が届く位置に配置したことで、実施の形態2と同様の作用効果が得られる。また、本実施の形態3では、触媒体54は調理室11の天井面と略平行に配置されている。このため、触媒体54の通風方向の面積を広くとることができ、通過風速を低減して圧力損失を低下させることができる。したがって、調理室11と加熱室20とを循環する循環風量を増加させることができ、第二加熱手段24B(図28参照)から気流への加熱効率、及び気流から被加熱物への加熱効率を高めることができる。また、気流と触媒体54との接触面積が拡大されるとともに気流の通過風速が低下するため、空気に含まれる油煙や臭気成分の吸着・分解性能が高まり、調理室11内の空気や排気の清浄度を高めることができる。また、触媒体54における酸化分解による浄化の反応熱も増え、この反応熱の加熱調理への寄与も高まり、加熱調理の省エネルギー化を図ることができる。
図26は、実施の形態3に係る調理室11の上壁113、調理室吸込ダクト56、触媒体54を取り外した斜視図である。
調理室11の後壁111には、加熱室20に連通する加熱室流入口46が設けられている。加熱室流入口46は、本実施の形態3では、後壁111において左側に寄った位置に設けられている。加熱室流入口46の調理室11側は、所定の間隔をおいて調理室吸込ダクト56によって覆われる。
また、吹出口28Bは、実施の形態1、2と異なり、調理室11の後壁111において側壁112からやや離れた位置に、2つの吹出口28Bが配置されている。なお、区別して説明する場合には側壁112に近い側の吹出口28Bを側壁側吹出口28e、側壁112から離れた方の吹出口28Bを中央側吹出口28fと称し、区別する必要のないときには吹出口28Bと称する。
図27は、実施の形態3に係る調理室11の上壁113、加熱室20と付帯部品を取り外した状態の背面側斜視図である。
調理室11の後壁111の背面(加熱室20側の面)において、吹出口28Bの外周には、凸部42が設けられている。
調理室11の後壁111の外面(加熱室20側の面)において、吹出口28Bの外側には、吹出口接続ダクト55が設けられている。吹出口接続ダクト55は、略角筒形状を有し、吹出口28Bの外周側を囲んでいる。なお、凸部42は、吹出口接続ダクト55の内側に嵌め込まれ、実施の形態2と同様に吹出口接続ダクト55と後壁111との間に隙間が生じた場合でも、その隙間から侵入する気流によって吹出口接続ダクト55の整流効果が阻害されるのを抑制できる。
本実施の形態3の吹出口接続ダクト55は、吹出口28Bからの気流が、調理室11の側壁112に向かうような形状、取り付け構造となっている。なお、吹出口接続ダクト55の形状、取り付け構造については、後述する。
吹出口接続ダクト55は、例えば板金で一体的な部品として構成され、調理室11の後壁111に溶接・カシメ等で固定される。このようにすることで、安価に製造・組み立てを行うことができる。
加熱室20内側に吹出口接続ダクト55を配置することで、調理室11の内側に吹出口接続ダクト55を突出させることなく所定の方向に気流を吹出すことができ、調理室11内における清掃性を向上させることができる。また、ユーザーが触れる可能性のある調理室11内に突起物である吹出口接続ダクト55を設けないので、ユーザーが突起物に接触して受傷するのを防止でき、安全性を高める効果がある。
図28は、実施の形態3に係る加熱室20と付帯する部品の斜視図である。
第二加熱手段24Bは、送風ファン22の下方を通過するように配置されている。本実施の形態3の第二加熱手段24Bは、加熱室20内において略水平方向に延びる略U字状である。また、実施の形態2と同様に、調理室排気ダクト10は、加熱室20の上方に接続される。第二加熱手段24Bと調理室排気ダクト10との接続口とを、高さ方向において重ならないように離して設けているので、実施の形態2と同様に、排気される空気を無駄に加熱せず加熱効率を高めることができるという効果を有する。
図29は、実施の形態3に係る調理室11の、加熱室20位置の断面から見た背面図である。
第二加熱手段24Bは、加熱室20の左右片側の側壁面側に端子部をまとめ概水平に配置され、対向する側壁面付近で折り返した上下に2段の形状となっている。端子部を片側端にまとめることで組み立て性を高める効果がある。
また、実施の形態2と同様に、第二加熱手段24Bは、送風ファン22の中心より低い位置であって、送風ファン22の下方を通過するように配置されている。また、第二加熱手段24Bは、高さ方向において吹出口28Bと一部重なるように配置されている。
また、加熱室20は、左右一対のスライドレールユニット30の間に配置されている。このようにすることで、吹出口28を調理台26の載置面261からより下方に配置することができ、調理室扉7側からの背面に向かう気流の載置面261を通過する比率が高まり、被加熱物の下方の加熱効率を高め、省エネ・調理時間短縮を促進する効果がある。
また、実施の形態2と同様に、吹出口接続ダクト55に近接して第二加熱手段24Bを配置しており、吹出口接続ダクト55を第二加熱手段24Bにより加熱することができる。
ここで、中央側吹出口28fに設けられる吹出口接続ダクト55を中央側吹出口接続ダクト55f、側壁側吹出口28eに設けられる吹出口接続ダクト55を側壁側吹出口接続ダクト55eと称し、両者を区別する必要のないときには吹出口接続ダクト55と称する。側壁側吹出口接続ダクト55eと中央側吹出口接続ダクト55fは、所定距離をあけて取り付けられている。
第二加熱手段24Bの端子側においては、中央側吹出口接続ダクト55fの上方及び下方に第二加熱手段24Bの一部が近接配置されており、上方から見ると中央側吹出口接続ダクト55fと第二加熱手段24Bとが重なっている(図31参照)。また、第二加熱手段24Bの折り返し側においては、中央側吹出口接続ダクト55fの上方、下方、及び片方の側面側に第二加熱手段24Bの一部が近接配置されており、上方及び側方から見ると中央側吹出口接続ダクト55fと第二加熱手段24Bとが重なっている(図31参照)。このように、中央側吹出口接続ダクト55fの複数方向の近傍に、第二加熱手段24Bが近接配置されることで、中央側吹出口接続ダクト55fへの伝熱が高まり、その内部を通過する気流への加熱効率を高め、高温の吹き出し気流を生成することができる。高温の吹き出し気流を調理室11内に供給することで、被加熱物の加熱効率を高め、省エネルギーで調理時間を短縮する効果が得られる。
また、吹出口接続ダクト55を伝熱板として吹出口28Bに向かう流速の速い気流が吹出口接続ダクト55内を通過する際に加熱されることで、加熱効率高く高温の吹き出し気流を生成している。
また、実施の形態2と同様に、加熱室20の背面の上方に調理室排気ダクト10Aが接続されているのに対し、第二加熱手段24Bは送風ファン22の中心より低く下方を通過するように配置されている。このため、送風ファン22から調理室排気ダクト10Aに流れる気流は、第二加熱手段24Bとの接触が少ないので、排気する空気を無駄に加熱することなく加熱効率を高めている。
吹出口28Bは、調理室扉7と対向する調理室11の後壁111に設けられている。吹出口28Bは、後壁111の中央よりも左右の側壁面それぞれに寄った位置に、左右方向に並べて2つずつ配置されている。本実施の形態3の吹出口28Bは、実施の形態1、2における吹出口28よりも、調理室11の側壁112の表面から離れた位置に配置されている。中央側吹出口28fは、側壁側吹出口28eに対して内側かつ下側に配置されている。吹出口28Bの高さ位置は、いずれも、調理台26の載置面261と受皿27との間である。また、実施の形態2と異なり、側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fの左右位置は、いずれも、調理台26の載置面261の幅方向の範囲内であり、調理台26の載置面261の下側に側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fが設けられている。
調理室11の後壁111の加熱室20側の面において、中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eの外周には、それぞれ吹出口接続ダクト55が設けられている。
図30は、実施の形態3に係る吹出口接続ダクト55の中心軸Xの方向を説明する図であり、図30(A)は吹出口接続ダクト55及び周辺部材の平面模式図、図30(B)は吹出口接続ダクト55の側面模式図である。
本実施の形態3では、吹出口接続ダクト55の中心軸Xの方向により、吹出口28Bからの吹き出し方向を調整している。
まず、中心軸Xの水平方向について説明する。図30(A)に示すように、吹出口接続ダクト55の中心軸Xは、吹出口28Bから向かって調理室11の側壁112の表面と鋭角の角度θで交わる。角度θは45度以下が望ましく、このようにすることで側壁面への付着流れを良好に形成することができる。なお、本実施の形態3では、吹出口接続ダクト55e、55fともに、角度θを30度としている。
次に、中心軸Xの垂直方向について説明する。図30(B)に示すように、側壁側吹出口28eについては概ね水平に吹出口接続ダクト55eが接続されている。一方、中央側吹出口28fについては、中央側吹出口28fに遠い側から近い側に向かって上昇する向きで吹出口接続ダクト55fが接続されている。
また、側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fの吹出口接続ダクト55の中心軸Xの延長線は、いずれも、調理台26の載置面261と受皿27の側面上端との間を通過するように、かつ、調理室11の側壁112の表面と交差する高さが他方の中心軸Xの延長線と異なる高さとなるように、吹出口接続ダクト55の角度が調整されている。これにより、調理台26の載置面261上の被加熱物に、側壁側吹出口28e、中央側吹出口28fから吹き出された気流が直接的に接触するのを抑制して、局所的な加熱による加熱ムラを抑制している。また、吹出口28Bから吹き出した気流が受皿27に接触するのを抑制して、受皿27の加熱を軽減している。受皿27の加熱が軽減することで、受皿27に溜まった被加熱物からの油分・汁気が加熱されることによる油煙や臭気の発生を抑制し、被加熱物の着色や臭い移りによる仕上がりの低下を抑制するとともに、排気の清浄度を高めて良好な調理環境を得る効果がある。
また、調理室11の側壁112の表面と吹出口接続ダクト55の中心軸Xの延長線とが交差する高さを、中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eとで異なるように構成したことで、側壁に沿って流れる付着流れの乱れを軽減して、調理室11内に良好な循環気流を形成することができる。このため、加熱ムラが少なく被加熱物が乾燥しにくく、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。また、本実施の形態3においては、吹出口接続ダクト55の中心軸Xの垂直方向の角度を、中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eとで異ならせているが(図30(B)参照)、垂直方向の角度は両者ともに同じ角度として水平方向の角度のみ中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eとで違えてもよい。このようにして調理室11の側壁112と吹出口接続ダクト55の中心軸Xの延長線とが交差する位置を、中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eとで異ならせても、類似の効果を得ることができる。
側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fを、所定の間隔(吹出口直径相当の6倍以下が望ましい)をおいて配置することで、吹き出される気流の周囲に発生する負圧による誘引作用によって、側壁側吹出口28eからの気流は側壁面に沿って付着する流れを形成し、中央側吹出口28fからの気流は側壁側吹出口28eとの誘引作用により、側壁面に沿った付着流れを形成することができる。
また、側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fの開口位置に高低差を設けることにより、各吹出口からの気流が、調理室11の側壁112の表面へ付着する高さ方向の位置をずらすことを容易として、吹出口接続ダクト55の接続角度の自由度を拡げ、設計の自由度を高めることができる。このため、より適切な循環気流を形成する設計が容易となり、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、中央側吹出口28fを側壁側吹出口28eよりも低くしたことで、調理台26の背面側に載置される被加熱物との距離を設けることができ、被加熱物の背面側の下方が極端に加熱されることを抑制すること可能となって良好な調理効果・仕上がりを得ることがきる。
また、吹出口28からの気流が調理室扉7付近に到達して背面側へ戻る気流で被加熱物を加熱するのは、実施の形態2と同様であるが、実施の形態3では側壁側吹出口28eと中央側吹出口28fを載置面261の幅方向範囲の下方に配置することで、戻る気流が載置面261の下方から上方へ通過する比率を高め、被加熱物の下方の加熱効率を高めている。
図31は、実施の形態3に係る調理室11の下面断面図である。
調理室11の上壁113と対向する調理室吸込ダクト56の吸込ダクト上壁562は、調理室11の天井面の一部を構成しており、複数の開口部からなる調理室吸込口12Bが設けられている。調理室吸込口12Bは、下方に向けて開口しており、調理室吸込口12Bを構成する複数の開口の外周で囲まれる領域は、第一加熱手段23の一部と重なる位置に配置されている。このため、調理室吸込口12Bの開口を介して、第一加熱手段23からの放射は調理室吸込口12Bの上方に配置される触媒体54に直接到達し、触媒の温度を上昇させ触媒活性を高め浄化性能を高めている。また、調理室吸込口12Bに向かう流速の速い気流の近傍に第一加熱手段23が配置され、触媒体54へ流入する空気温度を上昇させており、これによって触媒活性を高め、空気の浄化性能を高めている。
図32は、実施の形態3に係る調理室11の側面断面図である。
調理室吸込口12Bは、調理室11の天井面に設けられ下方に開口され、調理室11の上方の空気を吸引する。本実施の形態3の構成によれば、実施の形態2と比較して、調理室扉7から調理室吸込口12Bの方向に戻る気流の、調理台26の載置面261の下方から上方へ通過する角度が、被加熱物下面と垂直に近づくので、さらに加熱効率を向上させることができる。
このように構成された実施の形態3の調理室11の作用を説明する。
図33は、実施の形態3に係る調理室11の空気の流れを説明する概略図である。図33(A)は調理室11を側面から見た図、図33(B)は上面から見た図であり、調理室11の主要構成を示している。また、図33(A)、(B)では、側壁側吹出口28eからの空気の流れを実線矢印で概念的に示し、中央側吹出口28fからの空気の流れを破線矢印で概念的に示している。
電動機21の動作により送風ファン22が回転すると、送風ファン22に対向して開口している加熱室流入口46に吸引力が生じる。そうすると、調理室吸込ダクト56と調理室11の後壁111との間に形成される風路を介して調理室吸込口12に吸引力が生じ、調理室11内の上方の空気が、調理室吸込口12から調理室吸込ダクト56と後壁111との間の風路内に吸い込まれる。調理室吸込口12から吸い込まれた空気は、触媒体54を通過する際に、煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱され、加熱室流入口46から加熱室20内に流入し、送風ファン22により送出される。
加熱室20内で送風ファン22より送出された気流の一部は、調理室排気ダクト10Aを経て、排気される。
加熱室20内で送風ファン22より送出された気流の多くは、第二加熱手段24Bにより加熱され、吹出口接続ダクト55を通り、吹出口28Bから調理室11内へ吹き出される。吹出口28Bから吹き出された気流は、吹出口28Bから調理室11の側壁112に向かって斜め前方方向に向かい、さらに調理室11の側壁112の表面に沿って調理室扉7側へ向かって流れ、調理室扉7に到達した後、調理室扉7により幅方向中央方向に向かって流れ方向を曲げられ、調理室吸込口12に生じる吸引力によって後壁111に向かう気流となる。調理室扉7から後壁111に向かって流れ方向が曲げられた気流は、調理台26の載置面261の下側を通過しつつ被加熱物の下面との成す角が垂直に近い状態で載置面261の上方に向かって流れるので、加熱効率が高まる。
また、調理室吸込口12は、調理室11の天井面の一部を構成する調理室吸込ダクト56に設けられ、下方に向かって開口しているので、調理室11の上方に溜まった熱気や煙・油煙を優先的に吸引する効果が、実施の形態2と比較してもさらに高い。このため、調理室11内の空気の清浄度が増し、被加熱物への着色や臭いの移行が軽減され、より良好な調理の仕上がりを得られるとともに、調理室11内の温度ムラが軽減されるため加熱被加熱物の加熱ムラが抑制され、良好な調理効果が得られる。
なお、実施の形態3の調理室11では、実施の形態1と同様に、制御手段が所定の制御シーケンスにしたがって第一加熱手段23、第二加熱手段24B、及び電動機21の動作を制御する。実施の形態1で示した調理室11内における加熱調理(例えば、魚や肉等の食材を調理台26に直接載置して加熱する調理モード、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室11内で調理する連携調理モード)については、本実施の形態2においても同様にして実施可能である。
以上のように本実施の形態3では、吹出口28Bは、吹出口28Bが設けられた後壁111と隣接する側壁面と所定の間隔だけ離して設けた。そして、吹出口28Bの上流側に吹出口接続ダクト55を設け、吹出口接続ダクト55の中心軸Xの延長線が調理室11の側壁112と45度以下の鋭角で交差するようにした。このため、調理室11の側壁112の表面に沿って流れる付着流れが良好に形成され、調理室扉7側から後壁111側へ向かう速度ムラ・温度ムラの少ない気流を形成することができるので、被加熱物の加熱ムラや被加熱物の乾燥が軽減された調理効果を得ることができる。また、調理台26の載置面261のうち後壁111に近い領域は、第一加熱手段23からの放射が弱く相対的に加熱されにくいが、この領域の加熱を吹出口28Bからの気流によって補うことができ、加熱ムラが軽減された調理効果を得ることができる。また、吹出口28Bは、実施の形態1、2と比較して調理室11の側壁112の表面から離して配置することができ、そのようにすることで調理台26の載置面261を下方から上方に向かって通過する気流の比率が高まり、被加熱物の下方の加熱効率を高める効果がある。また、加熱室20側に吹出口接続ダクト55を配置して調理室11内にはダクトを設けない構成としたので、調理室11内の清掃性や安全性を高める効果がある。
また、隣接する中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eの配置高さを違えたことにより、調理室11の側壁112に沿って流れる付着流れの乱れを軽減して、調理室11内に適切な循環気流を形成することができる。このため、加熱ムラ・被加熱物の乾燥を軽減する調理効果を高めることができる。
また、隣接する中央側吹出口28fと側壁側吹出口28eのそれぞれに設けられた吹出口接続ダクト55の中心軸Xの、上下方向及び水平方向のいずれかまたは両方の角度を違えた。このため、調理室11の側壁112に沿って流れる付着流れの乱れを軽減して、調理室11内に適切な循環気流を形成することができる。このため、加熱ムラ・被加熱物の乾燥を軽減する調理効果を高めることができる。
また、吹出口接続ダクト55の外周の複数方向に対し、第二加熱手段24Bを近接して配置したので、吹出口接続ダクト55が加熱されやすく、吹出口接続ダクト55からその内部を流れる気流への伝熱効果が高まる。このため、吹出口28Bから調理室11内へ効率よくより高温の気流を吹き出すことができるので、被加熱物の加熱効率が高まり、エネルギー消費を低減して調理時間を短縮する効果がある。
また、加熱室20と連通する調理室吸込ダクト56を備え、調理室吸込ダクト56に設けられた調理室吸込口12の少なくとも一部は、上面視において第一加熱手段23の一部と重なるように配置した。このような構成によって調理室吸込ダクト56の下方より調理室11空気を吸引することで、調理室11上方に溜まった熱気を吸引することができ、調理室11内の温度ムラを軽減することができる。また、調理室吸込口12から調理室吸込ダクト56内に吸い込まれる気流を、第一加熱手段23でさらに加熱して加熱室20内に吸引するので、吹出口28Bからの吹出温度を高め被加熱物の加熱効率が高まり、エネルギー消費量を低減して調理時間を短縮する効果がある。
また、調理室吸込口12内に触媒体54を備え、この触媒体54は第一加熱手段23からの放射が直接届く位置である。したがって触媒体54は第一加熱手段23からの放射を直接的に受けることができる。また、調理室11の上方に溜まった煙を優先的に吸引でき、調理室11内の空気の清浄度をあげて良好な調理効果を得ることができる。また、触媒体を加熱する専用の加熱手段が不要であり、酸化熱を利用することによってエネルギー消費量を低減できる。また、排気の清浄度が高まり、調理環境を良好に保つことができる。
また、調理室11の両側に調理室扉7を開閉する一対のスライドレールユニット30を備え、加熱室20はスライドレールユニット30の間に配置した。このため、吹出口28Bを調理台26の載置面261からより下方に配置可能であり、加熱ムラの少ない良好な調理効果を得ることができる。また、加熱効率の向上により省エネ性と調理時間短縮の効果が得られる。
また、加熱室20に外径の大きな送風ファン22を搭載できる。大きな送風ファン22を設けることで送風量を増加させ、調理室11内の空気がより多く循環され加熱ムラが軽減されるとともに加熱効率が高まり、より良好な調理効果・仕上がりを得られるとともに省エネで短時間調理とすることができる。