JP2013256023A - 化粧シートとそれを用いた化粧部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】化粧シートを基材に接着するに際して化粧シートの延伸を伴う場合でも、デザイン性および耐久性の低下を抑えることができる化粧シートを提供する。
【解決手段】基材の表面に接着してなる化粧シート1である。この化粧シート1は、基材シート3の表面に、伸び率120%以上300%未満のアクリル樹脂層2を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、化粧シートとそれを用いた化粧部材に関する。
システムキッチン家具や内装建材の扉などの化粧部材としては、木質系基材や無機系基材からなる基材に、グラビア印刷などで柄印刷された絵柄層と表面保護層とを有する化粧シートを接着剤で貼り合せたものが利用されている。例えば、特許文献1記載の化粧シートでは、表面保護層として、シラノール基、エポキシ基、水酸基を含有したアクリル樹脂と金属キレート物を含む塗料の硬化塗膜を採用している。この硬化塗膜は、耐候性、耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性に優れている。
ところで近年では、デザイン性への趣向が高まり、色柄、デザイン柄、質感に加え、収まり、ディテール面に関するニーズが高まっている。例えば、扉部材の面部と周囲4側面の各側面を形成する端部(エッジ)との同調性や框扉など異形状扉に関する対応が強く求められている。扉部材の面部と端部(エッジ)との同調性を高める方法としては、例えば、真空成型などによって一枚の化粧シートを被接着物である基材に接着するなど、扉部材の面部と端部を一枚の化粧シートで形成する方法が採用される。この方法によれば、扉部材の面部および端部各々に対応する基材の部分が化粧シートで被覆される。そして、扉部材においては、面部と端部が一枚の化粧シートで形成されているため、同調性が高められる。異形状扉への対応についても、真空成型などによる方法で化粧シートを基材に接着する方法が採用される。
特開平10−86314号公報
真空成型などによって所定形状を有する基材に化粧シートを接着する方法においては、通常、化粧シートが延伸されて基材に接着される。例えば、上記した扉部材においては、化粧シートが面部と端部に跨るため、化粧シートが延伸されて基材に接着される。このように、化粧シートが延伸されて基材に接着されると、化粧シートの延伸に起因して、表面保護層に割れ、破れ、剥離が生じたり、表面硬度が低下したりするなど、デザイン性や耐久性が低下する場合があった。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、化粧シートを基材に接着するに際して化粧シートの延伸を伴う場合でも、デザイン性および耐久性の低下を抑えることができる化粧シートおよび化粧部材を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の化粧シートは、基材シートの表面に、伸び率120%以上300%未満のアクリル樹脂層を有することを特徴とする。
この化粧シートにおいては、前記アクリル樹脂層は、アクリル樹脂と、重量平均分子量が10000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物の層であることが好ましい。
また、本発明の化粧部材は、上記化粧シートが所定形状を有する基材の表面に前記基材の外形形状に沿って接着されていることを特徴とする。
本発明によれば、化粧シートを基材に接着するに際して化粧シートの延伸を伴う場合でも、デザイン性および耐久性の低下を抑えることができる化粧シートおよび化粧部材を得ることができる。
本発明の一実施形態である化粧シートの断面図である。 図1の化粧シートが基材の表面に形成されている化粧部材の断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である化粧シートの断面図である。図2は、図1の化粧シート1が基材14の表面に形成されている化粧部材10の断面図である。
図1の化粧シート1は、基材シート3の表面に、アクリル樹脂層2を備えている。このアクリル樹脂層2は、120%以上300%未満の伸び率を有しており、表面保護層として構成される。
ここで、「伸び率」とは、JIS A 6910に準拠して、塗料(硬化性樹脂組成物)を2mmに塗布し作製後、ダンベル状2号形に成形したものを試験片として測定した伸び率をいう。
伸び率120%以上のアクリル樹脂層2を有する化粧シート1は、後述するが、延伸を伴って基材14に接着される場合において、表面保護層に割れ、破れ、剥離が生じにくくなる。また、伸び率300%未満のアクリル樹脂層2を有する化粧シート1は、延伸を伴って基材14に接着される場合、表面硬度の低下を抑えることができる。このように伸び率120%以上300%未満のアクリル樹脂層2を有する化粧シート1は、延伸を伴って基材14に接着される場合において、表面保護層に割れ、破れ、剥離が生じにくくなり、また、表面硬度の低下を抑えることができる。これによって、得られる化粧部材10のデザイン性および耐久性の低下を抑えることができる。このようなデザイン性および耐久性の観点から、アクリル樹脂層2の伸び率は、好ましくは150%以上250%以下、より好ましくは180%以上230%以下であることが望ましい。
一方、伸び率120%未満のアクリル樹脂層を有する化粧シートは、延伸を伴って基材に接着される場合において、表面保護層に割れ、破れ、剥離が生じやすくなるので、デザイン性や耐久性を確保することが難しい。また、伸び率300%以上のアクリル樹脂層を有する化粧シートは、延伸を伴って基材に接着される場合において、表面硬度の低下を抑えることが難しいので、耐久性を確保することが難しい。
アクリル樹脂層2は、例えば、アクリル樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物の層である。この硬化性樹脂組成物を基材シート3上に塗布し、硬化させることで、硬化物塗膜としてのアクリル樹脂層2を形成することができる。
硬化性樹脂組成物中の含有成分の種類、量などを適宜設定することで、アクリル樹脂層2の伸び率を120%以上300%未満の範囲内に設定することができる。例えば、アクリル樹脂と、重量平均分子量(Mw)が10000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物を用いることができる。ここで、「重量平均分子量(Mw)」は、例えば、標準ポリスチレン換算によるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により算出される重量平均分子量である。
Mwが10000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂のMwの上限値は、例えば、500000である。活性エネルギー線硬化型樹脂のMwとして、より好ましくは、15000以上250000以下である。Mwが10000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂は、樹脂自体が柔軟性を有しており、表面硬度の低下をより効果的に抑えることができるので、好ましく用いられる。また、耐擦傷性や耐汚染性などの物性を向上させることもできる。
活性エネルギー線硬化型樹脂の代わりに、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化型樹脂を用いることができる。活性エネルギー線硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂と比べて、短時間で耐久性を有する緻密な硬化物塗膜を得ることができる。このため、活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましく用いられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂は、活性エネルギー線で硬化する樹脂であり、例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂の具体例としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基、又はチオール基を2個以上有する硬化性(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂が挙げられる。耐久性の観点から、アクリロイル基を有するものが好ましい。また、分子中に、例えば、イソシアヌレート環、トリアジン環などの環状骨格を有するものであってもよい。デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、スターバーストポリマーなど多分岐ポリマー構造を分子中に有することもできる。
活性エネルギー線硬化型樹脂は、硬化性樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、例えば、10重量部以上90重量部以下の割合で配合される。より好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂は、30重量部以上90重量部以下の割合で配合される。かかる範囲内で活性エネルギー線硬化型樹脂を配合することにより、良好な表面硬度を有する化粧部材10を得ることができる。また、耐汚染性を向上させた化粧部材10を得ることができる。さらにまた、化粧シート1を基材14に接着させる際の化粧シート1の加工適性を向上させることができる。なお、樹脂固形分とは、硬化物塗膜としてアクリル樹脂層2を形成する樹脂成分であり、アクリル樹脂や活性エネルギー線硬化型樹脂中の不揮発成分である。
活性エネルギー線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、公知の光重合開始剤を併用することができる。光重合開始剤としては、水素引き抜き型もしくは分子内開裂型のものを用いることができる。
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン/アミン系、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系、チオキサントン/アミン系の光重合開始剤等が挙げられる。
分子内開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン型、アセトフェノン型、ベンゾフェノン型、チオキサントン型、アシルフォスフィンオキサイド型の光重合開始剤などが挙げられる。中でも、反応性が高いアセトフェノン型の2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルなどが好ましい。また、長波長まで吸収端が伸びているアシルフォスフィンオキサイド型のモノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイドなどが好ましい。
光重合開始剤の配合量は、反応性を高め、かつ塗膜物性などを損なわないようにする観点からは、紫外線硬化型樹脂の不揮発成分100重量部に対して好ましくは1重量部以上10重量部以下、より好ましくは3重量部以上7重量部以下である。
硬化性樹脂組成物に含有されるアクリル樹脂は、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体である。このアクリル樹脂は、より高いガラス転移温度(Tg)を有するものが好ましく用いられる。具体的には、80℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上110℃以下のTgを有するアクリル樹脂である。80℃以上120℃以下の範囲内のTgを有するアクリル樹脂を用いることで、良好な表面硬度や耐汚染性を有する化粧部材10を得ることができる。また、化粧シート1を基材14に接着させる際の化粧シート1の加工適性を向上させることができる。
また、アクリル樹脂として、水酸基価40mgKOH/g以下のものが好ましく用いられる。かかる範囲内の水酸基価を有するアクリル樹脂を用いることで、良好な耐汚染性を有する化粧部材10を得ることができる。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。例えば、イソシアネート樹脂、シリカ、アルミナなどの微粉末からなる体質顔料(充填剤)、紫外線吸収剤などを添加することができる。
硬化性樹脂組成物には、粘度を調整するために、樹脂の成分を溶解可能な溶剤が含有されていてもよい。溶剤としては、芳香族炭化水素、ケトン類、酢酸エステル類、アルコール類、エーテル類およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。芳香族炭化水素の具体例としては、トルエン、キシレンなど、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど、酢酸エステル類としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどがある。また、アルコール類の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど、エーテル類としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどがある。
以上の硬化性樹脂組成物を基材シート3に塗工し、硬化させることによってアクリル樹脂層2を形成することができる。
硬化性樹脂組成物の塗工法としては、グラビア(ロール)コート、グラビアリバース(ロール)コート、スピンナーコート、グラビアオフセットコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコートなどを用いることができる。また、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート、ジェットインクなども用いることができる。
アクリル樹脂層2の厚み(硬化物塗膜としての膜厚)が最終的に3μm以上20μm未満、より好ましくは10μm以上15μm以下となるように塗工することが好ましい。3μm以上であれば、十分な耐久性を確保することができる。また、20μm未満であれば、十分な密着性を確保することができる。
硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、紫外線硬化型樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の場合には紫外線照射装置が用いられ、電子線硬化型樹脂を含む硬化性樹脂組成物の場合には電子線照射装置が用いられる。
紫外線照射装置としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどの光源が使用される。紫外線の波長としては、通常、190〜380nmの波長領域が主として用いられる。照射量は50〜1000mJ/cmの範囲が好ましい。紫外線照射量が50mJ/cm以上であれば、塗膜を十分に硬化させることができる。また、紫外線照射量が1000mJ/cm以下であれば、塗膜の黄変を抑えることができる。
電子線照射装置としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器が用いられる。電子線を照射する場合、加速電圧100〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVで照射する。吸収線量としては、通常、1〜300kGy(キログレイ)程度である。吸収線量が1kGy以上であれば、塗膜を十分に硬化させることができる。吸収線量が300kGy以下であれば、塗膜の黄変や損傷を抑えることができる。
基材シート3は、熱可塑性樹脂がシート状に形成されている熱可塑性フィルム層を有しており、例えば、隠蔽層としての不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4、絵柄層5、透明な熱可塑性樹脂フィルム層6が順次積層して構成されている。化粧部材10として求められる質感(光沢やマットなど)や、基材14の目止め隠蔽性と平滑性などを考慮して、透明な熱可塑性樹脂フィルム層6のない構成とすることもできる。
不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4は、基材14の目止め隠蔽性と絵柄層5の意匠性を向上させる目的で設けられる。不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4は、例えば、アクリル系樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂に、顔料などの着色剤が添加されて不透明に形成され、所定の厚さにシート化されている。不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4の厚みは、例えば、50μm以上100μm以下の範囲内とすることができる。
化粧部材10の質感にマットが求められる場合や基材14の平滑性が高い場合には、不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4の代わりに、着色インク層を隠蔽層として採用することができる。着色インク層は、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物で形成され、不透明に形成される。着色インク層は、例えば、公知のアクリル酸エステルモノマー、オリゴマー、酸化チタン、各種添加剤などを含む硬化性樹脂組成物の硬化物から構成される。着色インク層の厚みは、例えば、15μm以上70μm以下の範囲内とすることができる。着色インク層が採用される場合には、上記した絵柄層5とともに、上記した透明な熱可塑性樹脂フィルム層6を有する構成の基材シート3とすることが考慮される。
絵柄層5は、意匠性を付与するために設けられるものであり、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シート、インクジェット印刷など公知の印刷法を用いて形成される。絵柄層5の模様としては、木目模様、石目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、あるいは全面ベタ印刷などがある。絵柄層5は、不透明な熱可塑性樹脂フィルム層4や透明な熱可塑性樹脂フィルム層6に印刷してもよい。
透明な熱可塑性樹脂フィルム層6は、質感の向上および耐久性の向上の目的で設けられる。透明な熱可塑性樹脂フィルム層6は、例えば、アクリル系樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂などの熱可塑性樹脂で透明に形成され、所定の厚さにシート化されている。透明性の観点から、アクリル系樹脂やPET樹脂を用いることが好ましい。また、透明性を阻害しない範囲内で、必要に応じて、着色剤や顔料を熱可塑性樹脂に添加したり、透明な熱可塑性樹脂フィルム層6にエンボス加工などを施すこともできる。透明な熱可塑性樹脂フィルム層6の厚みは、例えば、50μm以上200μm以下の範囲内とすることができる。
アクリル樹脂層2は、基材シート3の透明な熱可塑性樹脂フィルム層6側の面に形成される。透明な熱可塑性樹脂フィルム層6を有しない構成の基材シート3の場合には、絵柄層5側の面に、アクリル樹脂層2が形成される。
化粧シート1は、公知の接着剤や粘着剤によって基材14の表面に接着され、図2に示されるように、基材14と一体的に複合化される。このとき、アクリル樹脂層2が外部に露出する部分となる。
基材14としては、平板状や曲面板状に形成された板材や、その面部や端部が凹凸部、R部、逆R部(凹部)の形状に加工されているものなど、所定形状を有する物品が対象となる。
基材14の厚みは、例えば、10mm以上30mm以下の範囲内とすることができる。10mm以上であれば、化粧シート1の基材14への接着加工が容易となるなど、加工性が向上する。30mm以下であれば、化粧シート1のアクリル樹脂層2の耐久性をより効果的に確保することができる。
基材14の材質としては、木質系、無機系などを例示できる。木質系基材の具体例としては、合板、HDF、MDF、パーティクルボードなどが挙げられる。無機系基材の具体例としては、珪酸カルシウム板、セメント板、石膏ボードなどが挙げられる。基材14として、低圧メラミン樹脂ボードなど、合成樹脂からなる基材を用いることもできる。
基材14には、必要に応じて、目止め処理、隠蔽処理、表面平滑性を出すための塗工処理を施すことができる。
化粧シート1と基材14との接着に用いられる接着剤や粘着剤の材料としては、化粧シート1や基材14の材質、必要となる耐久性に応じて適宜選定される。例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂を含有する材料が挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂を含有する材料は耐久性の観点から望ましい。
接着剤や粘着剤の塗布方法としては、接着剤や粘着剤を含む塗工液をスプレーなどでダイレクトに基材14に塗布する方法、化粧シート1のアクリル樹脂層2とは反対側の面にスプレーやロールなどで塗布する方法などが挙げられる。化粧シート1に塗布する方法では、後述する真空成型時の延伸を考慮し、材料を選定する必要がある。
化粧シート1を基材14に接着するに際しては、化粧シート1のアクリル樹脂層2とは反対側の面が基材14に対峙するように化粧シート1を配置する。次いで、真空成型、圧空成型、プレス成型などによって成型することにより、化粧シート1が基材14の外形形状に沿って延伸され、基材14の表面に化粧シート1が接着されてなる三次元成型品としての化粧部材10を得ることができる。図2の化粧部材10は、一例として扉部材11を示している。この扉部材11は、化粧シート1が基材14の外形形状に沿って形成されており、面部12と端部13が一枚の化粧シート1で形成されている。このように面部12と端部13が一枚の化粧シート1で形成されているので、面部12と端部13の同調性が高められている。化粧シート1は、表面保護層として、アクリル樹脂層2を有しているので、扉部材11においては、表面保護層に割れ、破れ、剥離が生じにくくなっており、デザイン性や耐久性の低下が抑えられている。また、扉部材11においては、アクリル樹脂層2によって表面硬度の低下が抑えられてもおり、この観点からも耐久性の低下が抑えられている。
図2では、化粧シート1を適用した化粧部材10の一例として扉部材11を示しているが、これに限定されるものではなく、各種の家具や内装建材が対象とされ、化粧シート1を適用できる。
以上のとおり、化粧シートは、基材シートの表面に、伸び率120%以上300%未満のアクリル樹脂層を有しているので、化粧シートを基材に接着するに際して化粧シートの延伸を伴う場合でも、デザイン性および耐久性の低下を抑えることができる。このようなアクリル樹脂層は、耐擦傷性、耐汚染性などの物性を向上させることもできる。また、このような化粧シートを用いることで、化粧部材ごとの塗装、乾燥、硬化などの作業工程と生産設備が不要となり、生産性および環境負荷を大きく低減することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(アクリル樹脂層の配合)
下記の材料を使用して、表1に示す配合1〜7の塗料(硬化性樹脂組成物)を調製した。なお、表1に示す各材料の配合量の単位は重量部である。
・活性エネルギー線硬化型樹脂(ポリマー型樹脂):RC29−120(DIC社製、重量平均分子量1万以上、不揮発成分(NV)50.0%)
・ウレタンアクリレート樹脂:17−806R(DIC社製、平均重量分子量1万未満、NV80.0%)
・高Tgアクリル樹脂:WBU1218(DIC社製、Tg100℃、NV30.5%)
・低Tgアクリル樹脂:LR2634(三菱レーヨン社製、Tg30℃、NV69.5%)
・光重合開始剤:IRGACURE184(チバ社製)
・艶消しシリカ:P−526(水澤化学社製、平均粒径5μm)
<実施例1>
不透明な熱可塑性樹脂フィルム層として、厚み80μmの着色アクリル樹脂シート(共和レザー(株)製)を用意し、グラビアインキ(昭和インク工業(株)製)を用いて木目模様をグラビア印刷して絵柄層を形成した。更にその絵柄層の上に、二液硬化型のポリウレタンからなるプライマー液を塗工して易接着層を形成し、透明な熱可塑性樹脂フィルム層として、厚み100μmの透明なPET樹脂を重ね合わせて積層体を得た。この積層体を加熱ロールを用いて加熱、加圧して熱融着した。次いで、熱融着した積層体の透明なPET樹脂の側の面に、硬化後の塗膜の厚みが12μmになるように塗料(配合1)を塗工し、高圧水銀ランプで500mJ/cmの条件で紫外線照射して塗膜を硬化させてアクリル樹脂層を形成し、化粧シートを得た。次いで、この化粧シートの裏面(アクリル樹脂層とは反対側の面)に、接着剤として二液硬化型のポリウレタンを塗布し、厚み18mmのMDF基材の表面に化粧シートを真空成型で接着することによって、シート複合扉を作製した。
<実施例2>
実施例1において塗料(配合1)の代わりに塗料(配合2)を用いた以外は、実施例1同様の方法で、シート複合扉を作製した。
<実施例3>
実施例1において塗料(配合1)の代わりに塗料(配合3)を用い、高圧水銀ランプによる紫外線照射の代わりに窒素雰囲気下中、120kv、30kGyの条件で電子線照射して塗料の塗膜を硬化した。それ以外は、実施例1同様の方法で、シート複合扉を作製した。
<実施例4>
不透明な熱可塑性樹脂フィルム層として、厚み80μmの着色アクリル樹脂シート(共和レザー(株)製)を用意し、インクジェットインキ(コニカミノルタ(株)製)を用いて木目模様をインクジェット(IJ)印刷して絵柄層を形成した。次いで、絵柄層の上に、硬化後の塗膜の厚みが12μmになるように塗料(配合4)を塗工し、高圧水銀ランプで500mJ/cmの条件で紫外線照射して塗膜を硬化させてアクリル樹脂層を形成し、化粧シートを得た。次いで、この化粧シートの裏面(アクリル樹脂層とは反対側の面)に、接着剤としての二液硬化型のポリウレタンを塗布した。次いで、厚み18mmで、あらかじめNCで框加工したMDF基材の表面に化粧シートを真空成型で接着することによって、シート複合扉を作製した。
<実施例5>
透明な熱可塑性樹脂フィルム層として、厚み100μmの透明なPET樹脂を用意し、インクジェットインキ(コニカミノルタ(株)製)を用いて木目模様をインクジェット印刷して絵柄層を形成した。次いで、同じ面に、UVエナメル白インク(UL−120、セイコーアドバンス社製)を膜厚40μmになるように塗布し、着色インク層を形成して、化粧シートを得た。次に、化粧シートの絵柄層とは反対側の面に、硬化後の塗膜の厚みが12μmになるように塗料(配合1)を塗工し、高圧水銀ランプで500mJ/cmの条件で紫外線照射して塗膜を硬化させてアクリル樹脂層を形成し、化粧シートを得た。次いで、この化粧シートの絵柄層−白インク面に、接着剤として二液硬化型のポリウレタンを塗布し、厚み18mmのMDF基材の表面に化粧シートを真空成型で接着することによって、シート複合扉を作製した。
<比較例1>
実施例1において塗料(配合1)の代わりに塗料(配合5)を用いた以外は、実施例1同様の方法で、シート複合扉を作製した。
<比較例2>
実施例1において塗料(配合1)の代わりに塗料(配合6)を用いた以外は、実施例1同様の方法で、シート複合扉を作製した。
<比較例3>
実施例1において塗料(配合1)の代わりに塗料(配合7)を用いた以外は、実施例1同様の方法で、シート複合扉を作製した。
このようにして得られた実施例及び比較例の化粧シートのアクリル樹脂層の伸び率を下記の方法で測定した。また、実施例及び比較例のシート複合扉について、下記のとおりの評価を行った。
[アクリル樹脂層の伸び率の測定]
JIS A 6910に準拠して、塗料を2mmに塗布し作製後、ダンベル状2号形に成形したものを試験片として測定した。
[真空成型性]
真空成型後の加工性と外観を下記基準により評価した。
◎:化粧シートの基材への追従性が良好で、端部巻込みが良好である
○:化粧シートの基材への追従性および端部巻込みがやや甘く、若干浮きが見られるが実用上問題なし
×:化粧シートの破れが発生し、十分に成型できていない
[初期密着性]
JIS K5400碁盤目試験方法に準ずる方法で評価した。なお、本実施例及び比較例では○と評価されたものはなかった。
◎:碁盤目2mmカット後、化粧シートにおいてアクリル樹脂層が剥離しない
〇:碁盤目2mmカット後、化粧シートにおいてアクリル樹脂層がやや剥離するが実用上問題なし
×:碁盤目2mmカット後、化粧シートにおいてアクリル樹脂層が剥離する
[耐アルコール性]
綿布にエタノール原液を付けて化粧シートの上に載せ、荷重0.5Nの負荷をかけて擦った後、目視で評価した。なお、本実施例及び比較例では○と評価されたものはなかった。
◎:エタノール原液によるラビング試験において30往復で白化が生じない
〇:エタノール原液によるラビング試験において30往復でやや白化が生じるが実用上問題なし
×:エタノール原液によるラビング試験において30往復で白化が生じる
[表面硬度]
◎:シート複合扉の化粧シートのアクリル樹脂層を鉛筆(H)で引っかいた後、キズが見られない
○:シート複合扉の化粧シートのアクリル樹脂層を鉛筆(H)で引っかいた後、キズが若干見られるが実用上問題なし
×:シート複合扉の化粧シートのアクリル樹脂層を鉛筆(H)で引っかいた後、キズが見られる
なお、本実施例及び比較例では○と評価されたものはなかった。
[耐光性(着色性の評価)]
シート複合扉に対してキセノンランプで48時間照射した後の着色性を、色差計で測定した色差ΔEで評価した。評価基準は下記のとおりである。なお、本実施例及び比較例では○、×と評価されたものはなかった。
◎:ΔE≦1
〇:1<ΔE<3
×:ΔE≧3
以上の測定結果、評価結果を表2に示す。
Figure 2013256023
Figure 2013256023
表2より、実施例1〜5で得られた化粧シートのアクリル樹脂層の伸び率は120%以上300%未満である。このような化粧シートを用いて作製されたシート複合扉は、真空成型性、初期密着性、耐アルコール性、表面硬度、耐光性のすべての評価において実用上問題ないレベルであることが確認された。一方、比較例1〜3で得られた化粧シートのアクリル樹脂層の伸び率は120%以上300%未満の範囲外である。このような化粧シートを用いて作製されたシート複合扉は、真空成型性、初期密着性、表面硬度、耐光性のすべての評価を満足しないことが確認された。
1 化粧シート
2 アクリル樹脂層
3 基材シート
10 化粧部材
14 基材

Claims (3)

  1. 基材シートの表面に、伸び率120%以上300%未満のアクリル樹脂層を有することを特徴とする化粧シート。
  2. 前記アクリル樹脂層は、アクリル樹脂と、重量平均分子量が10000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂とを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物の層であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 請求項1または2記載の化粧シートが所定形状を有する基材の表面に前記基材の外形形状に沿って接着されていることを特徴とする化粧部材。
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