JP2013253141A - フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 - Google Patents
フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2013253141A JP2013253141A JP2012128340A JP2012128340A JP2013253141A JP 2013253141 A JP2013253141 A JP 2013253141A JP 2012128340 A JP2012128340 A JP 2012128340A JP 2012128340 A JP2012128340 A JP 2012128340A JP 2013253141 A JP2013253141 A JP 2013253141A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- vinylidene fluoride
- polymer
- acidic substance
- slurry
- fluoride polymer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
Abstract
【課題】高温耐着色性を有するフッ化ビニリデン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、重合反応後の重合体スラリーに酸性物質を添加する酸添加工程と、重合反応後の重合体スラリーを脱水する脱水工程とを含み、酸添加工程では、脱水工程後の重合体スラリーにおける酸性物質の濃度が、脱水工程後の重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上となるように、酸性物質を添加する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、重合反応後の重合体スラリーに酸性物質を添加する酸添加工程と、重合反応後の重合体スラリーを脱水する脱水工程とを含み、酸添加工程では、脱水工程後の重合体スラリーにおける酸性物質の濃度が、脱水工程後の重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上となるように、酸性物質を添加する。
【選択図】なし
Description
本発明はフッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法に関する。
フッ化ビニリデン系重合体は、半結晶性ポリマーであり、様々な成形物に使用される。フッ化ビニリデン系重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合、および懸濁重合が知られている。このうち懸濁重合は、重合開始剤、連鎖移動剤、および懸濁安定剤などの助剤を用いた重合方法であり、熱安定性に優れたフッ化ビニリデン系重合体を製造することができる。しかしながらこれらの重合方法および重合助剤に起因して、製造したフッ化ビニリデン系重合体が黄色〜茶褐色に着色する現象が起こるため、初期着色性に劣り、商品価値を低下させるという問題がある。さらに、フッ化ビニリデン系重合体の着色原因物質の一つは、上記助剤に起因する低分子有機物質あるいは上記助剤とフッ化ビニリデンモノマーとの反応によるオリゴマー等であると考えられている。これら着色原因物質は、懸濁重合後のフッ化ビニリデン系重合体の繰り返し水洗や乾燥工程等の後処理、200℃以上で成形することによって低減できるが、除去しきれない物質が着色の原因となると考えられる。
耐着色性に優れたフッ化ビニリデン系重合体を得る製造方法として、特許文献1では、重合反応が実質的に終了した段階で反応混合物をpH7以上、温度30℃以上で処理することを特徴とする製造方法、特許文献2では、ポリマーの乾燥品の熱処理またはポリマースラリーにBa塩を添加した後水熱処理を行う製造方法について開示している。
しかしながら、特許文献1の方法では、反応混合物のpHを大きく変化させるため、反応液の安定性に欠ける。さらに耐着色性が十分とは言えない。また、特許文献2の方法では、熱処理に時間がかかる上、製品の熱安定性が低下する恐れがある。さらに、上述の着色原因物質が十分除去されない場合に着色を抑制する方法についてはいまだ知られていない。そのため、耐着色性に優れたフッ化ビニリデン系重合体を得る新たな製造方法の開発が望まれている。
上記の課題を解決するために、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを重合してフッ化ビニリデン系重合体を得るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法であって、重合反応後の重合体スラリーに酸性物質を添加する酸添加工程と、重合反応後の上記重合体スラリーを脱水する脱水工程とを含み、上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上となるように、上記酸性物質を添加する構成である。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法では、上記酸添加工程は、上記脱水工程に先立って行われることが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記酸性物質はクエン酸、酒石酸、シュウ酸、塩酸および酢酸のうちのいずれか1種類以上であることが好ましく、酢酸であることが特に好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上5000ppm未満となるように、上記酸性物質を添加することが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5ppm以上500ppm未満となるように、上記酸性物質を添加することが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデン成分の含有率が50重量%以上であることが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記重合体スラリー中に上記酸性物質を添加するときの上記重合体スラリーにおける溶媒は水であることが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記フッ化ビニリデン系重合体の重合方法は懸濁重合であることが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法において、上記酸添加工程および上記脱水工程の後に、上記重合体スラリーを50℃以上150℃未満に加熱して乾燥する乾燥工程をさらに含むことが好ましい。
また、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法では、上記酸添加工程は、上記脱水工程に先立って行われ、上記酸添加工程後、上記脱水工程の前に、50℃以下で上記重合体スラリーを保持する保持工程をさらに含むことが好ましい。
本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体は、上述のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法によって得られるフッ化ビニリデン系重合体である。
本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法により、高温着色耐性に優れたフッ化ビニリデン系重合体を提供することができる。
以下、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法の一実施形態について説明する。本実施の形態におけるフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、以下に示すフッ化ビニリデン系重合体の重合工程、酸添加工程、脱水工程、および乾燥工程を含む構成を有している。
〔1.重合工程〕
本工程は、フッ化ビニリデンを単独または共重合可能なモノマーとともに水性媒体中で重合反応を行い、フッ化ビニリデン系重合体を得る工程である。
本工程は、フッ化ビニリデンを単独または共重合可能なモノマーとともに水性媒体中で重合反応を行い、フッ化ビニリデン系重合体を得る工程である。
本明細書において「フッ化ビニリデン系重合体」とは、(i)フッ化ビニリデンの単独重合体、および(ii)フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体の総称である。
フッ化ビニリデン系重合体の重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合および懸濁重合を用いることができる。なかでも、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は懸濁重合を行う場合に特に好適に使用できるため、以下、懸濁重合による重合方法についてさらに詳しく説明する。
懸濁重合では、懸濁剤を用いてフッ化ビニリデンを単独または共重合可能なモノマーとともに水性媒体中に分散させ、生成したモノマーの液滴中に可溶な重合開始剤の存在下に重合を進行させる。例えば、フッ化ビニリデン系モノマー100重量部と、比較的少量の重合開始剤とを、水性媒体150〜500重量部中、より好適には200〜350重量部中に分散させて、重合温度まで昇温しつつ懸濁重合を開始させる。フッ化ビニリデン系モノマーは、初期に一括添加する場合のほか、その一部、例えば35〜80重量部のみを初期に添加し、残りを重合の継続とともに低下する系内圧力を臨界圧力以上に維持するように後添してもよい。また、連鎖移動剤を用いることによって重合体の分子量を調節してもよい。
重合温度は、好適には20〜80℃、より好適には25〜50℃である。重合時間は、好適には10〜30時間である。
重合反応終了後に、水洗によるフッ化ビニリデン系重合体の洗浄処理、および加熱による重合開始剤等の助剤の失活処理等を含んでいてもよい。
(フッ化ビニリデン系重合体)
フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、およびフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体の何れであってもよい。フッ化ビニリデン系重合体として好ましくは、重合体におけるフッ化ビニリデン成分が50重量%以上であり、より好ましくは重合体におけるフッ化ビニリデン成分が70重量%以上であり、さらに好ましくは重合体におけるフッ化ビニリデン成分が90重量%以上であり、最も好ましくは、フッ化ビニリデンの単独重合体である。
フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、およびフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体の何れであってもよい。フッ化ビニリデン系重合体として好ましくは、重合体におけるフッ化ビニリデン成分が50重量%以上であり、より好ましくは重合体におけるフッ化ビニリデン成分が70重量%以上であり、さらに好ましくは重合体におけるフッ化ビニリデン成分が90重量%以上であり、最も好ましくは、フッ化ビニリデンの単独重合体である。
(モノマー)
重合に用いられるモノマーとしては、(i)フッ化ビニリデン単独、または、(ii)フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーの混合物を用いることができる。本明細書では、これらを総称して「フッ化ビニリデン系モノマー」という。
重合に用いられるモノマーとしては、(i)フッ化ビニリデン単独、または、(ii)フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーの混合物を用いることができる。本明細書では、これらを総称して「フッ化ビニリデン系モノマー」という。
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびパーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有化合物が挙げられる。また、フッ素を含まない単量体として、エチレン、マレイン酸モノメチル、およびアリルグリシジルエーテル等も使用可能である。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよびジノルマルプロピルパーオキシカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類が挙げられる。重合開始剤の使用量は、フッ化ビニリデン系モノマー100重量部に対して好ましくは0.05〜2.0重量部であり、より好ましくは0.1〜1.0重量部である。
重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよびジノルマルプロピルパーオキシカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類が挙げられる。重合開始剤の使用量は、フッ化ビニリデン系モノマー100重量部に対して好ましくは0.05〜2.0重量部であり、より好ましくは0.1〜1.0重量部である。
(懸濁剤)
懸濁剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系化合物、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ならびにアクリル酸系重合体等が挙げられる。懸濁剤の使用量は、フッ化ビニリデン系モノマー100重量部に対して好ましくは0.01〜0.2重量部であり、より好ましくは0.03〜0.1重量部である。熱安定性の観点からは、懸濁剤はセルロース系化合物であることが好ましい。
懸濁剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系化合物、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ならびにアクリル酸系重合体等が挙げられる。懸濁剤の使用量は、フッ化ビニリデン系モノマー100重量部に対して好ましくは0.01〜0.2重量部であり、より好ましくは0.03〜0.1重量部である。熱安定性の観点からは、懸濁剤はセルロース系化合物であることが好ましい。
(連鎖移動剤)
重合工程においては、得られる重合体の分子量を調節する目的で、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、アセトン、および炭酸ジエチルが挙げられる。
重合工程においては、得られる重合体の分子量を調節する目的で、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、アセトン、および炭酸ジエチルが挙げられる。
(水性媒体)
重合反応時の水性媒体としては水を挙げることができ、特にイオン、有機物およびガスなどの不純物質を取り除いた純水が好ましい。不純物質の除去方法としてはイオン交換樹脂の使用、およびフィルターによる濾過などが挙げられる。
重合反応時の水性媒体としては水を挙げることができ、特にイオン、有機物およびガスなどの不純物質を取り除いた純水が好ましい。不純物質の除去方法としてはイオン交換樹脂の使用、およびフィルターによる濾過などが挙げられる。
〔2.酸添加工程〕
本工程は、重合工程によって得られたフッ化ビニリデン系重合体のスラリーに酸性物質を添加する工程である。なお、酸性物質は、後述する脱水工程後の重合体スラリーにおいて所定の濃度で添加されていればよく、本実施の形態では、脱水工程に先立って、酸性物質を重合体スラリーに添加している。しかしながら例えば、脱水工程後に、所定の濃度となるように添加するものであってもよい。
本工程は、重合工程によって得られたフッ化ビニリデン系重合体のスラリーに酸性物質を添加する工程である。なお、酸性物質は、後述する脱水工程後の重合体スラリーにおいて所定の濃度で添加されていればよく、本実施の形態では、脱水工程に先立って、酸性物質を重合体スラリーに添加している。しかしながら例えば、脱水工程後に、所定の濃度となるように添加するものであってもよい。
酸添加工程では、後述する脱水工程後の重合体スラリー(以下、ウエットポリマーという)における酸性物質の濃度が、ウエットポリマーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上となるように、酸性物質を添加すればよい。酸性物質の添加量に上限はないが、所望しない、あるいは予期しない副反応等が起こることを防ぐため、また、ウエットポリマーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5000ppm以上では効果に差が見られないため、酸添加工程では、ウエットポリマーにおける酸性物質の濃度が、ウエットポリマーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5000ppm未満となるように、酸性物質を添加することが好ましい。酸性物質の添加量を抑える観点から、より好ましくは、ウエットポリマーにおける酸性物質の濃度は、ウエットポリマーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5ppm以上500ppm未満である。なお、後述する実施例1に示した色差(b値)の測定方法により得られるb値が2.0まで許容できるという場合には、酸性物質の添加量を抑える観点から、ウエットポリマーにおける酸性物質の濃度がウエットポリマーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5ppm以上50ppm未満となるように、酸性物質を添加することが好ましい。
脱水工程においては、重合体スラリー中のフッ化ビニリデン系重合体の量はほとんど変化しない。また、添加した酸性物質は、除去される水性媒体と同じ比率で除去される。したがって、脱水工程に先立って酸性物質を重合体スラリーに添加する場合に、ウエットポリマー中での酸性物質の濃度を所定の濃度にするために必要な添加量は、脱水工程における脱水の程度、すなわち、脱水工程後の含水率に応じて、容易に算出することができる。例えば、重合体濃度20重量%のフッ化ビニリデン系重合体スラリー1000g(すなわち、フッ化ビニリデン系重合体200g、水性媒体800g)を脱水して含水率20重量%のウエットポリマー(すなわち、フッ化ビニリデン系重合体200g、水性媒体50g)を得る場合において、ウエットポリマー中の酸性物質の含有率をウエットポリマー中のフッ化ビニリデン系重合体に対して約150ppm(すなわち、約0.03g)とするには、脱水工程前のフッ化ビニリデン系重合体スラリーに、0.5gの酸性物質を添加すればよい。
酸性物質としては特に限定されず、有機酸および無機酸の何れも用いることができる。有機酸としては、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、および酢酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸が挙げられる。これらのなかでも酢酸が特に好ましい。また、これらの酸性物質を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
酸性物質は、重合体スラリーに添加された後に重合体スラリーが攪拌されることにより、重合体スラリー中に均一となるように混合される。
酸性物質を添加した後、重合体スラリーを、スラリー状態のまま50℃以下で保持することが好ましい。保持時間としては、例えば5分〜20時間であり、好適には1時間程度である。
酸性物質添加時の重合体スラリーにおける溶媒は水であることが好ましい。したがって、重合反応終了後、酸性物質添加前に、フッ化ビニリデン系重合体を洗浄する場合には、洗浄後に添加する溶媒を水とすることが好ましい。
〔3.脱水工程〕
本工程は、重合体スラリーを脱水して、ウエットポリマーを得る工程である。なお、重合反応終了後、フッ化ビニリデン系重合体を洗浄する際に脱水処理がなされる場合があるが、本明細書における脱水工程とは、後述する乾燥工程に用いるためのウエットポリマーを得る際の脱水処理の工程を指す。
本工程は、重合体スラリーを脱水して、ウエットポリマーを得る工程である。なお、重合反応終了後、フッ化ビニリデン系重合体を洗浄する際に脱水処理がなされる場合があるが、本明細書における脱水工程とは、後述する乾燥工程に用いるためのウエットポリマーを得る際の脱水処理の工程を指す。
ウエットポリマーの含水率に制限はないが、脱水効率および乾燥効率の観点から、ウエットポリマーの含水率は、5〜30重量%とすることが好ましく、10〜25重量%とすることがより好ましい。
脱水の方法としては、例えば、遠心脱水装置を用いた遠心脱水が挙げられる。
〔4.乾燥工程〕
本工程は、脱水工程に続いて、ウエットポリマーを加熱することにより乾燥して、フッ化ビニリデン系重合体の粉末を得る工程である。
本工程は、脱水工程に続いて、ウエットポリマーを加熱することにより乾燥して、フッ化ビニリデン系重合体の粉末を得る工程である。
乾燥方法に制限は無く、公知の方法を用いることができる。例えばオーブン中に静置して乾燥する場合、ウエットポリマーの加熱温度は、50℃以上150℃未満であることが好ましく、70℃以上100℃未満であることがより好ましい。また、加熱時間は2〜24時間であることが好ましく、4〜12時間であることがより好ましい。この他の乾燥方法としては、旋回気流式乾燥機を用いて100℃以上200℃未満の熱風で数秒〜数10秒の加熱によって乾燥させることも可能である。
以上の工程によれば、優れた高温耐着色性を有するフッ化ビニリデン系重合体を製造することができる。また、洗浄のみによっては着色原因物質が残存してしまう場合であっても、酸添加工程を含む本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体は、優れた高温耐着色性を有している。さらに、非常に少量の酸性性物質の添加で十分な高温耐着色性効果が得られるため、反応混合物のpHを変化させることがない。そのため、品質の安定性において優れたフッ化ビニリデン系重合体の製造を行うことができる。以上から、本発明に係るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体もまた、本願発明の範疇に含まれる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
〔実施例1〕
(1−1.重合体スラリーの調製)
内容量2Lのオートクレーブに、イオン交換水1,024g、メチルセルロース0.20g、酢酸エチル11.2g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、およびフッ化ビニリデン400gを仕込み、26℃まで1時間で昇温し、昇温開始から25.5時間、懸濁重合を行った。重合終了後、得られた重合体スラリーを脱水しつつ5Lのイオン交換水によって重合体を洗浄した。洗浄後の重合体にイオン交換水を添加して重合体濃度40重量%の重合体スラリーとし、これを98℃で1時間加熱して、重合体スラリーに含まれる残存重合開始剤を失活させた。その後、再度重合体スラリーを脱水しつつ5Lのイオン交換水によって重合体を洗浄し、洗浄後の重合体にイオン交換水を添加して最終的に重合体濃度20重量%のスラリーを得た。
(1−1.重合体スラリーの調製)
内容量2Lのオートクレーブに、イオン交換水1,024g、メチルセルロース0.20g、酢酸エチル11.2g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、およびフッ化ビニリデン400gを仕込み、26℃まで1時間で昇温し、昇温開始から25.5時間、懸濁重合を行った。重合終了後、得られた重合体スラリーを脱水しつつ5Lのイオン交換水によって重合体を洗浄した。洗浄後の重合体にイオン交換水を添加して重合体濃度40重量%の重合体スラリーとし、これを98℃で1時間加熱して、重合体スラリーに含まれる残存重合開始剤を失活させた。その後、再度重合体スラリーを脱水しつつ5Lのイオン交換水によって重合体を洗浄し、洗浄後の重合体にイオン交換水を添加して最終的に重合体濃度20重量%のスラリーを得た。
(1−2.酸性物質の添加による評価)
調製した重合体濃度20重量%であるフッ化ビニリデンの重合体スラリー1000gに、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、塩酸および酢酸のいずれか1種の酸性物質を0.5g添加してスラリー温度を40℃に保ちつつ約1時間攪拌し、その後遠心脱水を行って、含水率20重量%のフッ化ビニリデンウエットポリマー250gを得た。このとき、ウエットポリマー中の水分(50g)中には約0.03gの酸性物質が含まれている。すなわち、ウエットポリマーにおける酸性物質の含有率は、フッ化ビニリデン重合体(200g)に対して約150ppmであった(塩酸はHClとして150ppm)。このウエットポリマーを80℃のオーブンで10時間加熱し、乾燥したフッ化ビニリデン重合体の粉末を得た。
調製した重合体濃度20重量%であるフッ化ビニリデンの重合体スラリー1000gに、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、塩酸および酢酸のいずれか1種の酸性物質を0.5g添加してスラリー温度を40℃に保ちつつ約1時間攪拌し、その後遠心脱水を行って、含水率20重量%のフッ化ビニリデンウエットポリマー250gを得た。このとき、ウエットポリマー中の水分(50g)中には約0.03gの酸性物質が含まれている。すなわち、ウエットポリマーにおける酸性物質の含有率は、フッ化ビニリデン重合体(200g)に対して約150ppmであった(塩酸はHClとして150ppm)。このウエットポリマーを80℃のオーブンで10時間加熱し、乾燥したフッ化ビニリデン重合体の粉末を得た。
乾燥したフッ化ビニリデン重合体パウダーを240℃で10分間加熱溶融して50mm×50mm×3mmのプレスシートを成形し、その色差(b値)を測定した。色差の測定は、プレスシートの中心を色差計(日本電色工業(株)製 ZE2000)の開口部に当てて色調を測定することにより行われた。プレスシートのb値を測定した。結果を表1に示す。なお、本実施例において用いたb値は、L*a*b*表色系におけるb値であり、+の値が大なるほど黄色度が高く、−の値が大なるほど、青色度が高いことを示している。
表1に示すように、使用した全ての酸性物質において、加熱溶融後のフッ化ビニリデン重合体における着色を抑制できることが示された。特に、酢酸を使用することにより、着色を非常に良く抑制することができた。
〔実施例2〕
実施例1と同様の手順で調製したフッ化ビニリデン重合体スラリーに対して、ウエットポリマー中の酸性物質の濃度がフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して0.5〜5000ppmとなるように酢酸を添加した。酢酸添加後、実施例1と同様にして、攪拌および遠心脱水を行って、酢酸を上記の含有率で含むウエットポリマーを得た。ついで、実施例1と同様にして乾燥を行い、フッ化ビニリデン重合体パウダーを得た。得られたフッ化ビニリデン重合体パウダーを用いて50mm×50mm×3mmのプレスシートを成形し、その色差(b値)を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様の手順で調製したフッ化ビニリデン重合体スラリーに対して、ウエットポリマー中の酸性物質の濃度がフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して0.5〜5000ppmとなるように酢酸を添加した。酢酸添加後、実施例1と同様にして、攪拌および遠心脱水を行って、酢酸を上記の含有率で含むウエットポリマーを得た。ついで、実施例1と同様にして乾燥を行い、フッ化ビニリデン重合体パウダーを得た。得られたフッ化ビニリデン重合体パウダーを用いて50mm×50mm×3mmのプレスシートを成形し、その色差(b値)を測定した。結果を表2に示す。
ウエットポリマー中のフッ化ビニリデン重合体に対する酢酸濃度が0.5ppmの場合には着色抑制効果が得られなかったのに対し、1ppm以上の場合には、着色抑制効果が得られた。また、色差(b値)は酢酸濃度が5000ppm付近においてほぼ横ばい状態となることから、酢酸濃度が5000ppm以上の場合においては、着色抑制効果は頭打ちとなると考えられた。したがって、重合体スラリー中に添加する酸性物質の量はウエットポリマー中のフッ化ビニリデン重合体に対する濃度が、1ppm以上5000ppm未満となる量が好適であることがわかった。
本発明は、フッ化ビニリデン系重合体の製造に利用することができる。
Claims (12)
- フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを重合してフッ化ビニリデン系重合体を得るフッ化ビニリデン系重合体の製造方法であって、
重合反応後の重合体スラリーに酸性物質を添加する酸添加工程と、
重合反応後の上記重合体スラリーを脱水する脱水工程とを含み、
上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上となるように、上記酸性物質を添加することを特徴とするフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。 - 上記酸添加工程は、上記脱水工程に先立って行われることを特徴とする請求項1に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸性物質はクエン酸、酒石酸、シュウ酸、塩酸および酢酸のうちのいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸性物質は酢酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して1ppm以上5000ppm未満となるように、上記酸性物質を添加することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸添加工程では、上記脱水工程後の上記重合体スラリーにおける上記酸性物質の濃度が、上記脱水工程後の上記重合体スラリーに含まれるフッ化ビニリデン系重合体の重量に対して5ppm以上500ppm未満となるように、上記酸性物質を添加することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデン成分の含有率が50重量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記重合体スラリー中に上記酸性物質を添加するときの上記重合体スラリーにおける溶媒は水であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記フッ化ビニリデン系重合体の重合方法は懸濁重合であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸添加工程および上記脱水工程の後に、上記重合体スラリーを50℃以上150℃未満に加熱して乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 上記酸添加工程は、上記脱水工程に先立って行われ、
上記酸添加工程後、上記脱水工程の前に、50℃以下で上記重合体スラリーを保持する保持工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。 - 請求項1〜11に記載のフッ化ビニリデン系重合体のいずれか一項の製造方法によって得られるフッ化ビニリデン系重合体。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012128340A JP2013253141A (ja) | 2012-06-05 | 2012-06-05 | フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 |
CN201310149688.5A CN103467631B (zh) | 2012-06-05 | 2013-04-26 | 偏二氟乙烯系聚合物及其制造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012128340A JP2013253141A (ja) | 2012-06-05 | 2012-06-05 | フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013253141A true JP2013253141A (ja) | 2013-12-19 |
Family
ID=49792690
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012128340A Pending JP2013253141A (ja) | 2012-06-05 | 2012-06-05 | フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2013253141A (ja) |
CN (1) | CN103467631B (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015064327A1 (ja) * | 2013-10-29 | 2015-05-07 | ダイキン工業株式会社 | フィルム |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10676549B2 (en) * | 2014-09-17 | 2020-06-09 | Solvay Specialty Polymers Italy S.P.A. | Vinylidene fluoride polymers |
CN104448077B (zh) * | 2014-12-06 | 2017-01-04 | 常熟丽源膜科技有限公司 | 聚偏氟乙烯的生产工艺 |
CN104497190B (zh) * | 2014-12-29 | 2016-09-21 | 浙江孚诺林化工新材料有限公司 | 一种用于锂离子电池电极材料粘结剂的偏氟乙烯聚合物的制备方法 |
CN112409517B (zh) * | 2020-10-21 | 2023-03-31 | 浙江巨化技术中心有限公司 | 一种聚偏氟乙烯树脂的制备方法 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0229402A (ja) * | 1988-07-18 | 1990-01-31 | Shin Etsu Chem Co Ltd | フッ化ビニリデン系重合体の製造方法 |
JP2695085B2 (ja) * | 1992-01-22 | 1997-12-24 | セントラル硝子株式会社 | 軟質フッ素樹脂の安定化方法 |
FR2852017B1 (fr) * | 2003-03-03 | 2005-04-22 | Atofina | Procede de fabrication de pvdf thermiquement stable |
EP1820811B1 (en) * | 2004-12-08 | 2016-10-19 | Kureha Corporation | Vinylidene fluoride polymer and process for producing the same |
-
2012
- 2012-06-05 JP JP2012128340A patent/JP2013253141A/ja active Pending
-
2013
- 2013-04-26 CN CN201310149688.5A patent/CN103467631B/zh active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015064327A1 (ja) * | 2013-10-29 | 2015-05-07 | ダイキン工業株式会社 | フィルム |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CN103467631B (zh) | 2015-11-18 |
CN103467631A (zh) | 2013-12-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2013253141A (ja) | フッ化ビニリデン系重合体およびその製造方法 | |
TWI378105B (ja) | ||
JP6363071B2 (ja) | テトラフルオロエチレンコポリマー | |
JP5257360B2 (ja) | ポリテトラフルオロエチレン水性分散液及びその製造方法 | |
TWI384024B (zh) | 質子交換膜與其形成方法 | |
JP2004529873A (ja) | フッ素化カルボン酸の再生と再利用 | |
JPWO2005061567A1 (ja) | 非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン及びそのファインパウダー | |
JP3474307B2 (ja) | ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤 | |
CN104558363B (zh) | 一种用于水处理膜的含氟共聚物的制备方法 | |
JP2004189889A (ja) | ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤 | |
JP5793624B2 (ja) | エネルギー低消費の塩化ビニル系ラテックス及びその製造方法 | |
JP4683735B2 (ja) | フッ化ビニリデン重合体及びその製造方法 | |
KR20140101345A (ko) | 염소화 염화비닐계 수지의 제조방법 | |
TWI321137B (en) | Co-metering of organic initiators and protective colloids during polymerization reactions | |
KR101411098B1 (ko) | 부틸 아크릴레이트가 함유된 염화비닐 중합체의 제조방법 | |
JP4615153B2 (ja) | ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤 | |
WO2019207833A1 (ja) | 粒子 | |
JP4754112B2 (ja) | ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤 | |
JP5320227B2 (ja) | 耐酸着色性の優れたフッ化ビニリデン重合体の製造方法 | |
JP3164743B2 (ja) | 塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法 | |
KR101623623B1 (ko) | 가공성 및 생산성이 향상된 염화비닐계 수지의 제조방법 | |
KR20190046326A (ko) | 염화비닐계 중합체의 제조방법 | |
JPWO2019003914A1 (ja) | 炭素繊維前駆体繊維の製造方法ならびに炭素繊維の製造方法 | |
JP2006316242A (ja) | フルオロポリマー水性分散液の製造方法 | |
KR101591147B1 (ko) | 에너지 저소비 염화비닐계 라텍스 및 이의 제조방법 |