JP2013249242A - 光学素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガラス素材の成形時に発生する熱応力を緩和し、面精度の向上と屈折率分布の低減とを両立した光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】
軟化状態にあるガラス素材を成形用型部材を用いてプレス成形して、成形用型部材の成形面に対応した光学機能面をガラス素材に転写する光学素子の製造方法において、軟化状態にあるガラス素材を成形用型部材を用いてプレス成形する工程と、プレス成形されたガラス素材を冷却する工程と、ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの状態で、ガラス素材に荷重を負荷しない状態で一定温度に保持する工程と、同一温度に保持する工程の後に、ガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの状態で冷却プレスして、ガラス素材を再度冷却する工程と、ガラス素材を再度冷却して得られた光学素子を取り出す工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ガラス素材の温度を保持する工程と、冷却プレスする工程に特徴を有する光学素子の製造方法に関する。
近年、デジタルカメラでは、より高機能な製品として薄型化、高倍率化が求められており、それに伴い使用されるレンズにおいてもより薄肉化、高精度化が求められている。面精度の向上と屈折率分布(以下、「GI」と記載する。)の低減とを両立したレンズもその一つであり、形状を問わず、より高精度なレンズを成形することが求められている。
ガラス素材の成形時に内部に発生する熱応力により、面精度の低下やGIの不均衡が発生する。これらを防止するために、特許文献1では、ガラス光学素子の冷却工程において、圧力負荷状態でガラス転移点以上屈伏点以下の一定温度に所定時間保持することにより熱応力を緩和している。同様の目的で、特許文献2では、ガラス光学素子の冷却工程において、圧力負荷状態でガラス転移点以下の温度に冷却した後に、無圧力状態で歪点以上ガラス転移点以下の温度下で一定時間同一温度に保持することにより熱応力を緩和している。
特開平7−267658号公報 特開2003−335528号公報
特許文献1ではガラスに圧力を負荷しながら一定時間同一温度に保持しているので、特に中心肉厚が薄く肉厚差の大きな凹レンズ(以下、「薄肉凹レンズ」と記載する。)の場合においては、面精度は良好だが内部の応力分布が拡大しGIが増大してしまう。また、特許文献2ではガラスへの圧力を解除した後に一定時間保持することにより、特に薄肉凹レンズの場合において、GIは低減できるが応力解放により面精度が低下してしまう。
特許文献1および特許文献2に開示された技術では、特に薄肉凹レンズの場合において、面精度とGIを両立することが難しい。
本発明は、薄肉凹レンズのような形状難易度の高いレンズにおいても、ガラス素材の成形時に発生する熱応力を緩和し、面精度の向上とGIの低減とを両立した光学素子を得ることができる光学素子の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、軟化状態にあるガラス素材を成形用型部材を用いてプレス成形して、前記成形用型部材の成形面に対応した光学機能面を前記ガラス素材に転写する光学素子の製造方法において、
前記軟化状態にあるガラス素材を前記成形用型部材を用いてプレス成形する工程と、
前記プレス成形されたガラス素材を冷却する工程と、
前記ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの状態で、前記ガラス素材に荷重を負荷しない状態で一定温度に保持する工程と、
前記同一温度に保持する工程の後に、前記ガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの状態で冷却プレスして、前記ガラス素材を再度冷却する工程と、
前記ガラス素材を再度冷却して得られた光学素子を取り出す工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法に関する。
本発明の光学素子の製造方法は、ガラス素材の成形時に発生する熱応力を緩和し、面精度の向上とGIの低減とを両立した光学素子を製造できる。
本発明で用いる成形装置の一例である。 本発明の製造工程の概要を示す図である。 実施例1で成形した光学素子形状の概略図である。 実施例1の粘度(温度)プロセス及び荷重プロセスを示した図である。 実施例1及び比較例1で成形した光学素子のGIの結果である。 実施例2で成形した光学素子形状の概略図である。 実施例2の粘度(温度)プロセス及び荷重プロセスを示した図である。 実施例3で成形した光学素子形状の概略図である。 実施例3の粘度(温度)プロセス及び荷重プロセスを示した図である。
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の光学素子の製造方法は、軟化状態にあるガラス素材を成形用型部材を用いてプレス成形して、前記成形用型部材の成形面に対応した光学機能面を前記ガラス素材に転写する光学素子の製造方法に関する。
本発明の製造方法では、前記軟化状態にあるガラス素材を前記成形用型部材を用いてプレス成形する工程を有する。なお、軟化状態にあるガラス素材は、ガラス素材を軟化する温度以上で加熱することによって得られる。
プレス成形された後、冷却プレス成形する前に、ガラス素材のガラス転移点より高い温度、ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの状態で、前記ガラス素材に荷重を負荷しない状態で一定温度に保持する工程を有する。そして、一定温度に保持する工程の後に、ガラス素材のガラス転移点より高い温度からプレス成形を開始して、ガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの状態で冷却プレスして、前記ガラス素材を再度冷却する工程を有する。その後、ガラス素材を再度冷却して得られた光学素子を取り出す工程を有する。
本発明の製造方法は、ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの状態で、荷重を負荷しない状態で同一温度に保持することにより、GIを効率的に低減させることができる。これは、冷却開始から保持温度までに型とガラスとの線膨張係数の差により発生した熱応力を緩和することによる。また、冷却工程においてガラス転移点以上の温度からガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの状態で冷却プレスをすることで、冷却プレスによりGIは増大するが、良好な面精度を確保することができる。したがって、本発明の光学素子の製造方法は、薄肉凹レンズ形状のような形状難易度の高いレンズにおいても、ガラス素材の成形時に発生する熱応力を緩和し、面精度の向上とGIの低減とを両立した光学素子を製造することができる。
本発明は、面精度の向上とGIの低減とを両立することが難しい凹レンズ形状や凹メニスカス形状のレンズにおいても、面精度が良好でGIを低減した光学素子を製造することができる。
次に、図1を用いて、本発明の成形用型部材について説明する。図1は、上型1と下型2によるガラス素材3のプレス動作が終了し、ガラスレンズの成形が略完了した状態を示している。図1において、胴型4と上型1と下型2で構成される型セット10は、窒素で満たされた不図示の密閉チャンバー内に置かれている。
略直方体の胴型4は、支持基板6を介して光学素子の成形装置の基台7上に載置されている。胴型4の中心には、この胴型4を貫通した状態で貫通穴4a、4bが形成されている。
これらの貫通穴のうち上側の貫通穴4aには、円柱状に形成された上型1が、嵌合した状態で上下方向に沿って摺動可能に挿入されている。また、上型1の下面には、ガラス素材3を押圧してその上表面に所望の形状を転写して光学機能面を形成するための成形面が形成されている。
なお、上型1の上方には、ガラス素材3に印加するプレス圧を伝えるための略円柱形の押圧部材8が上型1の上面に当接可能に設置されている。押圧部材8は、上方に設置された不図示のプレス軸を介して、不図示の駆動源に接続されている。したがって、前記プレス軸が動作されて押圧部材8が下方に向けて押し出し動作されることにより、ガラス素材3にプレス圧P1が印加される。
一方、胴型4の下側の貫通穴4bには、上型1と同様に円柱状に形成された下型2が、嵌合した状態で上下方向に沿って摺動可能に挿入されている。そして下型2の上面には、ガラス素材3を押圧してその下表面に所望の形状を転写して光学機能面を形成するための成形面が形成されている。
また、下型2の下方には、ガラス素材3に印加するプレス圧を伝えるための略円柱形の押圧部材9が、支持基板6の穴部6aを通って下型2の下面に当接可能に設置されている。この押圧部材9は、下方に設置された不図示のプレス軸を介して、不図示の駆動源に接続されている。なお、下型2の下方に設置された不図示の駆動源は、プレス工程で上型1がガラス素材3を押圧変形させた後の冷却過程において、下型2を介してガラス素材3にプレス圧P2を印加するためのものである。冷却過程でガラス素材3に圧力を印加(以下、「冷却プレス」と記載する。)する目的は、ガラス素材3を成形した成形品の面形状が崩れるのを防止するためである。
なお、胴型4の側面には、窓部4cが形成されておりこの窓部を介して、上型1、下型2の間にガラス素材3が供給されると共に、成形完了後のレンズが外部へと取り出される。
さらに、胴型4内には、胴型4、上型1、下型2を加熱するためのヒーター5が設置されている。また、型セット10の外部には、下型2の上に載置されたガラス素材3を加熱するための不図示の素材加熱ヒーターが設置されている。そして、不図示の駆動手段により胴型4の窓部4cより胴型4内部に前記素材加熱ヒーターを挿入し、ガラス素材3を上方から加熱し、加熱後は胴型4の外部に退避するように成形装置は構成されている。
次に、図2を用いて、上記の成形装置によりレンズを成形する工程について説明する。図2は、製造工程の概要を示す図である。
まず、型セット10がヒーター5により所定の温度に加熱され、上型1が図2(a)に示すように上方に引き上げられた状態で、不図示の搬送手段により窓部4cを介して下型2の上にガラス素材3が載置される。
そして、不図示の素材加熱ヒーターが胴型4内部に挿入され、胴型4内のヒーター5と共に、ガラス素材3および型セット10を加熱する。ガラス素材3と型セット10が所定のプレス温度まで到達すると、不図示の素材加熱ヒーターが胴型4の外部に退避する。
素材加熱ヒーターの退避後、不図示の上方の駆動源の動作により上型1が下降し、押圧部材8が上型1の上面に当接してガラス素材3にプレス圧P1が印加され押圧成形が開始される。最終的には、図2(b)に示した状態となりプレス動作が終了する。そして突き当てた状態の上型1への圧力はそのまま保持されP1=0となる。この状態において、ガラス素材3の上下面には、上型1と下型2のそれぞれの成形面の形状が転写された光学機能面が形成されて、ガラス素材3の肉厚は所望の肉厚に成形される。
その後、適宜時間を置いた後に冷却工程へと移行する。成形されたガラス素材3は徐々に冷却され、ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの温度まで冷却した時点で所定の時間温度を一定に保ち、ガラス素材3内の冷却によって発生した熱応力をガラス特有の応力緩和作用によって一定量緩和させる。
その後、再度冷却を開始しガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズになる温度まで温度が低下した時点で、図2(c)に示すように、面形状が崩れないように下方の不図示の駆動源を動作させて下型2よりガラス素材3に冷却プレス圧P2を印加する。さらに冷却を行い、所定の温度まで温度が低下した時点で、図2(d)に示すように下方の不図示の駆動源による冷却プレス圧P2を解除する。それと共に、上方の不図示の駆動源を動作させて上型1を上昇させ、不図示の搬送手段により成形品11の取り出しを行う。
(実施例1)
実施例1では、図3に示すような上面R6mm、下面R78mm、外径Φ14mm、中心肉厚0.7mm、肉厚比5の凹メニスカスレンズを製造した。
ガラス素材3には高屈折率低分散ガラス(屈折率nd=1.85,アッベ数νd=40,ガラス転移点Tg=612℃(1013.3ポアズに相当)、屈伏点At=652℃)のプリフォームを使用した。
図4に粘度(温度)プロセスと荷重プロセスを示す。ここで、荷重については成形中にガラス素材3に加わる荷重を表している。
まずガラス素材3を下型2上に載置した状態で、ヒーター5と不図示の素材加熱ヒーターによりガラス素材3と型セット10がガラス粘度で109.5ポアズに相当する温度(665℃)になるまで加熱を行った。次に、上型1側の不図示の駆動源を600kgfの力で押し出しプレス動作を開始し、ガラス素材3の上下表面に、上型1と下型2のそれぞれの光学機能面をプレス成形して転写した。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ3.9kgf/mmである。上型1が胴型4に突き当たるとプレス動作が終了し、このときの上型1の位置により中心肉厚0.7mmが決定される。
そして、プレス成形終了から適宜時間を置いた後に冷却を開始した。冷却速度は80℃/分で行い、保持粘度η(保持温度Tk)になった時点で保持時間tの間、荷重を負荷しない状態で温度を一定に保った。本実施例における保持粘度η(保持温度Tk)は1010.8ポアズ(645℃)、1011.5ポアズ(635℃)、1012.3ポアズ(625℃)、の3条件で行った。また、保持時間tは10秒、30秒、60秒、100秒の4条件で行った。
その後、再度冷却速度80℃/分で冷却を開始しガラス粘度で1013.1ポアズに相当する温度(615℃)になった時点で150kgfの力で冷却プレスを開始した。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ1.0kgf/mmである。そしてガラス粘度で1018.9ポアズに相当する温度(560℃)になった時点で冷却を終了して、冷却プレスを解除し、上型1を上昇させて成形品11を取り出した。
実施例1で製造したレンズのGIを研磨ホモジニティ測定法によって調べた結果を図5に示す。
図5から明らかなように、保持粘度(保持温度)を1010.8ポアズ(645℃)、1011.5ポアズ(635℃)、1012.3ポアズ(625℃)として定温保持を行った場合のすべてにおいて、定温保持を実施しない場合よりGIが低減されている。
レンズの面形状を測定したところ、保持温度をガラス素材の粘度が1010.8ポアズ(645℃)、1011.5ポアズ(635℃)、1012.3ポアズ(625℃)のすべての場合においてアス、クセ0.15μm以下の良好な面精度の光学素子を得ることができた。なお、レンズの成形を繰り返し行ってもすべての場合においてアス、クセ0.15μm以下の良好な面精度の光学素子を得ることができた。
冷却プレスの開始温度をガラス粘度で1013.1ポアズに相当する温度(615℃)としたが、これを1012.6ポアズに相当する温度(620℃)としても同じ効果が得られた。
(比較例1)
比較例1では、保持粘度η(保持温度Tk)を1010.2ポアズ(655℃)、1013.1ポアズ(615℃)とした以外は実施例1と同様にしてレンズを製造した。比較例1で製造したレンズのGIを研磨ホモジニティ測定法によって調べた結果を図5に示す。
比較例1では、保持粘度(保持温度)を1010.2ポアズ(655℃)で定温保持を実施しても、定温保持を実施しない場合と比較してGIに大きな差が見られず効果は得られなかった。さらに、保持粘度(保持温度)を1013.1ポアズ(615℃)のようなガラス転移域に近い温度域で定温保持を実施すると、定温保持を実施しない場合よりもGIを低減させるためにはしばらく時間が必要であった。この温度域で長い時間定温保持を実施しても、これより高温で同じ時間だけ定温保持を行った場合よりGIの低減量は小さかった。
次に、保持粘度η(保持温度Tk)を1010.2ポアズ(655℃)、1010.8ポアズ(645℃)、1011.5ポアズ(635℃)、1012.3ポアズ(625℃)、1013.1ポアズ(615℃)として、冷却プレスの開始温度を変更してレンズを製造した。冷却プレスの開始温度をガラス粘度で1012.3ポアズに相当する温度(625℃)として成形を繰り返し行い、面形状を測定したところ、アス、クセ0.15μm以下となるレンズを安定して製造することができなかった。また、冷却プレスの開始温度をガラス粘度で1014ポアズに相当する温度(605℃)のようなガラス転移点より低温として成形を行い、面形状を測定したところ、アス、クセ0.15μm以下となる成形品を得ることができなかった。
(評価)
実施例1と比較例1の結果から、同一温度に保持する保持温度は、ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの範囲が好適であることが分かった。
また、1010.8乃至1012.3ポアズの保持粘度(温度)範囲において、より低粘度(高温)での定温保持の方がガラスの応力緩和作用が大きく、短時間の保持でGIを大きく低減することができた。同一温度に保持する工程は、冷却開始から保持温度までに発生した型とガラスとの線膨張係数の差により発生した熱応力を緩和する作用であると考えられる。つまり、上記保持に適した粘度域(温度域)のなかでも、より高粘度(低温)での保持の方が冷却開始から保持温度までに発生した熱応力が大きいために、その分長い時間をかけて保持することにより低減できるGIは大きくなると考えられる。実施例1においては、1012.3ポアズ(625℃)での定温保持において最大でGIを70×10−5低減できた。
しかし、ガラス内の熱応力が完全に緩和した後においても定温保持を続けても、GIは低減しない。ガラス素材を冷却開始した後、ガラス素材に荷重を負荷しない状態で同一温度に保持する工程を有する光学素子の製造方法において、同一温度に保持する工程は、同一時間に保持する時間t(s)が下記式(1)で示される時間τ(s)以下であることが好ましい。
[式1]
τ=50×log{(η/η)/E×1010} (1)
(η:同一温度に保持する温度におけるガラス素材の粘性係数、η:プレス成形されたガラス素材の冷却を開始した温度におけるガラス素材の粘性係数、E:ガラス素材のヤング率)
光学素子の外径が16.0mm以下である場合、この条件を満たした場合に、効率的にGIを低減することができる。
実施例1においては、同一温度に保持する温度におけるガラス素材の粘性形成が1010.8ポアズ(645℃)の場合には25秒以内、1011.5ポアズ(635℃)の場合には95秒以内、1012.3ポアズ(625℃)の場合には170秒以内と計算される。同一温度に保持する温度、同一温度に保持する保持時間tは、成形品のGIを考慮して、決定することが好ましい。
実施例1と比較例1の冷却プレスを開始する温度を比較すると、冷却プレスを開始する温度は、ガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの範囲であると高い面精度が得られることが分かった。
実施例1では、同一温度に保持する温度、冷却プレスを開始する温度を制御することにより、良好な面精度を維持したままGIを低減した成形品を得ることができた。
(実施例2)
実施例2では、図6に示すような上面R5mm、下面R40mm、外径Φ12.7mm、中心肉厚1.05mm、肉厚比3、5の凹メニスカスレンズの成形を行った。ガラス素材は実施例1と同じものを用いた。型構成やプレス動作については実施例1と同一条件で行った。粘度(温度)プロセスと荷重プロセスについては図7に記載する条件で、以下に記載するプロセスで行った。
実施例2では、プレスの温度は実施例1と同一でガラス粘度で109.5ポアズに相当する温度(665℃)とし、上型のプレス荷重は500kgfとした。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ3.9kgf/mmである。冷却速度は80℃/分で行い、保持粘度(保持温度)はガラス粘度が1010.8ポアズ(645℃)で、保持時間は10秒で行った。また、保持後の冷却速度は実施例1と同一で80℃/分で冷却を開始し、ガラス粘度で1012.7ポアズに相当する温度(620℃)になった時点で150kgfの力で冷却プレスを開始した。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ1.2kgf/mmである。そしてガラス粘度で1018.9ポアズに相当する温度(560℃)になった時点で冷却を終了して、冷却プレスを解除し上型1を上昇させて成形品11を取り出した。
以上の手順によって成形したレンズのGIを研磨ホモジニティ測定法によって調べた結果は114×10−5であった。また、レンズの面形状を測定したところ、アス、クセ0.15μm以下の良好な面精度であった。
(比較例2)
比較例2では、同一温度に保持することを行わなかった以外は実施例2と同様にして成形品を製造した。比較例2のレンズのGIは、140×10−5であった。
(評価)
実施例2と比較例2の結果から明らかなように、本発明の方法による短時間の定温保持によってGIが低減されていることが分かった。
実施例2では、実施例1と同様に、面精度とGIを両立した高光学性能を有するレンズを得ることができた。
(実施例3)
実施例3では、図8に示すような上面R6mm、下面R108mm、外径Φ14.2mm、中心肉厚0.7mm、肉厚比5の凹メニスカスレンズの成形を行った。ガラス素材は実施例1と同じものを用いた。型構成やプレス動作については実施例1と同一条件で行った。粘度(温度)プロセスと荷重プロセスについては図9に記載する条件で、いかに記載するプロセスで行った。
プレスの温度はガラス粘度で109.2ポアズに相当する温度(670℃)とし、上型のプレス荷重は600kgfとした。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ3.8kgf/mmである。冷却速度は80℃/分で行い、保持粘度(保持温度)はガラス粘度が1011.2ポアズ(640℃)で保持時間は15秒で行った。また、実施例1、実施例2と異なり保持後の冷却速度を20℃/分で冷却を開始し、ガラス粘度で1012.7ポアズに相当する温度(620℃)になるまで冷却を行った。次に、この温度になった時点で150kgfの力で冷却プレスを開始すると同時に冷却速度を80℃/分として更に冷却を行った。なお、この際にガラスに加わる荷重を単位面圧で表すとおよそ0.9kgf/mmである。そして、ガラス粘度で1018.9ポアズに相当する温度(560℃)になった時点で冷却を終了して、冷却プレスを解除し、上型1を上昇させて成形品11を取り出した。
以上の手順によって成形したレンズのGIを研磨ホモジニティ測定法によって調べた結果は170×10−5であった。また定温保持後の冷却速度を成形品取り出しまで80℃/分で行ったレンズのGIは185×10−5であった。
実施例3の製造方法で作製された成形品の面形状を測定したところ、アス、クセ0.15μm以下の良好な面精度の光学素子を得ることができた。
(比較例3)
比較例3では、実施例3で同一温度に保持しなかった以外は実施例3と同様にして成形品を製造した。比較例3で製造された成形品のGIは205×10−5であった。
(評価)
実施例3及び比較例3の結果より、定温保持後から冷却プレス開始までの温度域を徐冷することにより、単に定温保持のみで成形した際よりもGIをさらに低減可能なことが分かった。
実施例3では、面精度の向上とGIの低減とを両立した高光学性能を有する成形品を得ることができた。以上の結果から、GIの低減された光学素子を製造するには、定温保持後から冷却プレス開始までの温度域を徐冷することが好ましいことが分かった。
(実施態様)
本発明の実施態様は、上記実施例に記載された製造条件に限定されるものではない。
本発明は、例えば、薄肉凹レンズの製造に好適に用いることができるが、高精度なレンズを製造する際にも有効であり、レンズの形状や外径に対しても限定されずに用いることができる。
1 上型
2 下型
3 素材
4 胴型
4c 窓部
5 ヒーター
6 支持基板
7 基台
8,9 押圧部材
10 型セット
11 成形品

Claims (6)

  1. 軟化状態にあるガラス素材を成形用型部材を用いてプレス成形して、前記成形用型部材の成形面に対応した光学機能面を前記ガラス素材に転写する光学素子の製造方法において、
    前記軟化状態にあるガラス素材を前記成形用型部材を用いてプレス成形する工程と、
    前記プレス成形されたガラス素材を冷却する工程と、
    前記ガラス素材の粘度が1010.8乃至1012.3ポアズの状態で、前記ガラス素材に荷重を負荷しない状態で一定温度に保持する工程と、
    前記同一温度に保持する工程の後に、前記ガラス素材の粘度が1012.6乃至1013.1ポアズの状態で冷却プレスして、前記ガラス素材を再度冷却する工程と、
    前記ガラス素材を再度冷却して得られた光学素子を取り出す工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記光学素子が凹レンズ形状であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記光学素子が凹メニスカス形状であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記ガラス素材に荷重を負荷した状態で一定の温度に保持する工程は、前記ガラス素材のガラス転移点より高い温度で保持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記同一温度に保持する工程は、同一時間に保持する時間t(s)が、下記式(1)で示される時間τ(s)以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
    τ=50×log{(η/η)/E×1010} (1)
    (η:同一温度に保持する温度におけるガラス素材の粘性係数、η:プレス成形されたガラス素材の冷却を開始した温度におけるガラス素材の粘性係数、E:ガラス素材のヤング率)
  6. 前記光学素子の外径が16.0mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
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