JP2013246361A - 2軸偏向電磁駆動型光偏向器 - Google Patents

2軸偏向電磁駆動型光偏向器 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザビーム等の光を2次元状に走査する2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、ジンバルフレーム部分のシリコンの厚みを薄くしても、必要な剛性を維持することを可能とし、安定した偏向動作及び制御動作を実現するとともに、装置構成の小型化を可能とする。
【解決手段】
空芯コイル9は、線材が複数回、複数層に渡って巻線され、それぞれの線材が接着され固定されて構成されており、ジンバルフレーム4は、空芯コイル9が貼り付けられることによって、この空芯コイル9に支持されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、レーザビーム等の光を反射させて偏向させ、2次元状に走査する2軸偏向電磁駆動型光偏向器に関する。
従来、電子写真式複写機、レーザビームプリンタ及びバーコードリーダ等の光学機器を構成する走査装置や、光ディスクのトラッキング制御装置を構成する光偏向装置などにおいては、光偏向器が使用されている。また、光偏向器は、光を偏向させ2次元的に走査することにより2次元の画像を表示する画像表示装置にも用いられる。
このような光偏向器は、レーザ光が照射されるミラーを有し、このミラーを揺動させることにより、このミラーにより反射させたレーザ光をスクリーン等の上に走査してゆく。レーザ光を2次元的に走査する場合、1次元走査を直交方向に組み合わせて2次元走査するのが一般的である。すなわち、画像を表示する場合には、光偏向器を2個使用し、1個目の光偏向器でY軸方向の走査を行い、この光を2個目の光偏向器に入射させてX軸方向の走査を行うことにより、2次元の画像を表示することができる。また、1個で2軸方向の走査を可能とした光偏向器も提案されている。
近年、特許文献1に記載されているように、シリコン基板を用いたマイクロミラーによる光偏向器が提案されている。このような光偏向器は、半導体プロセス技術と、MEMS技術(マイクロマシン技術)とを利用して作製される。
このような光偏向器は、レーザ光などの光束を所望の方向に偏向できるため、レーザプリンタやバーコードリーダ、光LANモジュールなど、種々の用途に使用されている。なかでも、2軸方向にレーザ光を偏向させて画像を投影するレーザディスプレイや、医療用途としての光干渉型断層検査装置(OCT)への応用が研究されている。
特に、MEMS技術により作製した光偏向器(MEMS光偏向器)は、小型化が可能であり、高速動作が可能であるというメリットがあるため、高解像度のレーザディスプレイや、医療器具として内視鏡に封入して光走査を行うことのできる内視鏡型OCTなどへの用途が期待されている。
このようなMEMS光偏向器は、図8に示すように、全体を保持する外周フレーム101を有し、この外周フレーム101により、ミラー102を揺動可能に支持して構成されている。外周フレーム101は、第1の遥動軸103により、ジンバルフレーム104を、第1軸X回りに揺動可能に支持している。ジンバルフレーム104は、第2の揺動軸105により、ミラー102を、第1軸Xに直交する第2軸Y回りに揺動可能に支持している。ミラー102の駆動には、静電力、電磁力、圧電力などから、駆動仕様(周波数等)や、ミラー102大きさ、構造などに応じて、適切に選択される。
このようなMEMS光偏向器をディスプレイに使用する場合には、ラスター走査方式で2次元偏向を行う必要がある。ラスター走査方式は、高速水平走査(数十kHz程度)と、低速垂直走査(数十Hz程度)とを組み合わせる走査方式である。画像の高解像度化には、少なくともいずれかの走査を、ランプ波(ノコギリ波)で行うことが望ましい。MEMS光偏向器においては、高速の水平走査は、共振周波数を用いたサイン波駆動で行い、低速の垂直走査は、ランプ波駆動で非共振制御動作をさせることが望ましい。そして、制御動作のためには、大きな駆動力が必要なので、電磁駆動力を用いることが望ましい。
非特許文献1には、ラスター走査方式の2次元駆動が可能なMEMS光偏向器が記載されている。このMEMS光偏向器においては、ミラーをジンバルフレームを介して支持し、水平走査はミラーの共振周波数で、垂直走査は60Hzの画像リフレッシュレートのランプ波動作で、2次元的にラスター走査を行う。垂直走査は、ジンバルフレーム上にパターン配線されたコイルにランプ波電流を流し、外部磁界との作用によるローレンツ力により行う。水平走査は、同じコイルにミラーの構造共振周波数のサイン波電流を重畳させて流して行う。
特開2000−214407
Urey et. Al.、Two-axis MEMS Scanner for Display and Imaging Applications、IEEE-LEOS Optical MEMS Conference, August 2005
前述のようなMEMS光偏向器においては、ミラーをジンバルフレームにより支持する構成が採られることが多い。また、MEMS光偏向器においては、外周フレームを厚く構成し、ミラーを薄く加工して、ハンドリングを安定させるとともに、ミラーの軽量化による共振周波数の高周波化を図っている。
このような構成を有するMEMS光偏向器においては、ジンバルフレームをミラーと同じ厚みに形成すると、ジンバルフレームの剛性が不足し、厚み方向の撓みが発生し易くなるので、ミラーが不安定となる。そのため、ジンバルフレームは、ミラーよりも厚く形成する必要がある。
ジンバルフレームをミラーよりも厚くするには、ジンバルフレーム部分のシリコンをミラー部分よりも多く残す方法が一般的であるが、製造工程が煩雑となり、装置構成の小型化が困難となるという問題がある。
なお、ジンバルフレーム上にパターン配線されるコイルの厚みを増すことにより、ジンバルフレームの剛性を高くすることも考えられる。しかし、めっきなどにより作成できる膜厚には限界があり、数百ミクロン程度の厚いコイルを一度のめっきで作成することは困難である。また、複数層のコイルを形成して厚みを増すことも考えられるが、製造コストが大きく上昇してしまう。
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、レーザビーム等の光を2次元状に走査する2軸偏向電磁駆動型光偏向器であって、ジンバルフレーム部分のシリコンの厚みを薄くしても、必要な剛性を維持することが可能であり、安定した偏向動作及び制御動作が実現されるとともに、装置構成の小型化が可能な2軸偏向電磁駆動型光偏向器を提供することを目的とする。
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器は、以下の構成を有するものである。
〔構成1〕
外周フレームと、外周フレームにより第1の遥動軸を介して第1軸回りに揺動可能に支持されたジンバルフレームと、ジンバルフレームにより第2の遥動軸を介して第1軸に直交する第2軸回りに揺動可能に支持されたミラーと、ジンバルフレームに取り付けられた空芯コイルと、空芯コイルを磁界中に位置させる磁気回路とを備え、空芯コイルは、線材が複数回、複数層に渡って巻線され、それぞれの線材が接着され固定されて構成されており、ジンバルフレームは、前記第1の揺動軸に直交する方向で平行な一対の棒状に形成されており、空芯コイルが貼り付けられることによって、この空芯コイルに支持されて一体化しており、少なくとも2本のアームを有し、これらアームの先端側において、各アームにほぼ直交する方向となされた少なくとも2本の第2の揺動軸によって、第2軸回りに前記ミラーを揺動可能に支持しており、ミラーは、各第2の揺動軸の対称軸を中心として、偏向動作することを特徴するものである。
構成1を有する本発明に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、空芯コイルは、線材が複数回、複数層に渡って巻線され、それぞれの線材が接着され固定されて構成されており、ジンバルフレームは、第1の揺動軸に直交する方向で平行な一対の棒状に形成されており、空芯コイルが貼り付けられることによって、この空芯コイルに支持されて一体化しており、少なくとも2本のアームを有し、これらアームの先端側において、各アームにほぼ直交する方向となされた少なくとも2本の第2の揺動軸によって、第2軸回りにミラーを揺動可能に支持しており、ミラーは、各第2の揺動軸の対称軸を中心として、偏向動作する。
したがって、この2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、ジンバルフレームの厚みがミラーと同程度の厚みであっても、空芯コイルが貼り付けられていることによって剛性が増しており、また、第1の遥動軸回りについて軽量化できるため、厚み方向の振動などの不安定振動を防ぐことができる。
また、第1の遥動軸回りの共振周波数を高く設定することができ、制御動作を安定化させることができる。
さらに、デバイスチップを小型化できるとともに、電磁駆動の駆動効率を向上させることが可能となる。
すなわち、本発明は、レーザビーム等の光を2次元状に走査する2軸偏向電磁駆動型光偏向器であって、ジンバルフレーム部分のシリコンの厚みを薄くしても、必要な剛性を維持することが可能であり、安定した偏向動作及び制御動作が実現されるとともに、装置構成の小型化が可能な2軸偏向電磁駆動型光偏向器を提供することができるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)及び側面図(b)である。 本発明の第1の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。 本発明の第3の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。 本発明の第3の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す斜視図である。 本発明の第4の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。 本発明の第4の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図(a)及び従来の2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図(b)である。 従来の2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)及び側面図(b)である。
本発明の第1の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器は、MEMS光偏向器であって、図1(a)に示すように、全体を保持する枠状の外周フレーム1を有し、この外周フレーム1により、ミラー2を揺動可能に支持して構成されている。外周フレーム1は、内側に、一対の第1の遥動軸3により、環状のジンバルフレーム4を、第1軸X回りに揺動可能に支持している。ジンバルフレーム4は、一対の第2の揺動軸5により、ミラー2を、第1軸Xに直交する第2軸Y回りに揺動可能に支持している。
これら外周フレーム1、ジンバルフレーム4、ミラー2及び各遥動軸3,5は、MEMS技術により、シリコン(SIO)基板をエッチングして作成されている。
ミラー2の駆動には、電磁力が用いられる。すなわち、外周フレーム1の両側には、一対のポール6,7が、外周フレーム1を挟むようにして配置されている。これらポール6,7は、図1(b)に示すように、マグネット8によって接続されており、磁気回路を構成している。マグネット8及び一対のポール6,7は、外周フレーム1の両側に、それぞれN極及びS極を位置させており、図1(a)中にBで示すように、第1の遥動軸3に直交する方向の磁界を形成している。ジンバルフレーム4は、一対のポール6,7の間に形成される磁界中に位置している。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図である。
ジンバルフレーム4の裏面には、空芯コイル9が配置されている。この空芯コイル9は、一対のポール6,7の間に形成される磁界中に位置している。この空芯コイル9に電流を流すことにより、図2に示すように、この電流と一対のポール6,7間の磁気ギャップに形成される磁界との電磁的作用(ローレンツ力)により、ミラー2が、第1軸X回り及び第2軸Y回りに駆動(揺動)される。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、ラスター走査方式の2次元駆動が可能である。すなわち、水平走査はミラー2の共振周波数で、垂直走査は、例えば、60Hzの画像リフレッシュレートのランプ波動作で、2次元的にラスター走査を行うことができる。垂直走査は、空芯コイル9に、ランプ波電流を流すことによって行う。水平走査は、空芯コイル9に、ミラー2の構造共振周波数のサイン波電流を重畳させて流すことによって行う。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、ミラー2、ジンバルフレーム4及び各揺動軸3,5は、同じ厚みで薄く形成されている。外周フレーム1は、2軸偏向電磁駆動型光偏向器の全体を保持するためのフレームであり、この2軸偏向電磁駆動型光偏向器を用いる装置の組み立てにおけるハンドリング等で破損しないように、ミラー2等よりも厚く形成され、適切な厚みを有している。
ミラー2を薄く形成するのは、ミラー2を軽くして共振周波数を上昇させるためである。また、各揺動軸3,5を薄く形成するのは、バネ定数を適切な値にするためである。シリコン材料では、厚さが数百ミクロン程度になると、硬すぎて、ミラー2を偏向させることができなくなってしまう。
ジンバルフレーム4は、必ずしも薄くする必要はないが、薄くすれば重量が少なくなり、外側の遥動軸(第1の揺動軸3)周りの偏向での共振周波数をより高くすることができ、制御動作時には、より安定した動作を行うことができる。
前述したように、従来の光偏向器においては、ジンバルフレーム上にパターン配線でコイルを形成しているので、コイル厚みによりジンバルフレームの剛性を確保することはできなかった。そのため、ジンバルフレーム自体の厚みを厚くして剛性を確保していた。
これに対し、本発明に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、空芯コイル9は、線材が複数回、複数層に渡って巻線され、それぞれの線材が接着され固定されて構成されている。このような空芯コイルは、ヘッドフォンのボイスコイルや、光ピックアップアクチュエータの駆動コイルとして、一般的に使用されているものと同様のものである。このような空芯コイルは、例えば、線材の被覆として接着剤が塗布してある自己融着線を用いて、機械で巻線しながら、アルコール、または、熱風により接着剤を軟化させ、線材同士を接着固定するなどの方法により、極めて簡単に作成することができる。このような空芯コイル9は、一定数の層数で線材同士を接着すれば、変形しにくい強固な構造の部材となる。
この空芯コイル9は、ジンバルフレーム4の形状及び大きさに合うように、例えば、四角形に巻線され、ジンバルフレーム4に対し、接着剤などによって貼り付けられている。ジンバルフレーム4は、空芯コイル9が貼り付けられていることにより、高剛性となり、厚み方向の撓みなどの余計な振動が生じ難くなり、安定した動作を実現することができる。
さらに、パターン配線によりコイルを作成する場合には、一度設計してしまうと、巻き数、線幅、コイル抵抗などの数値が決まってしまう。そのため、例えば、他の用途に対してコイル仕様を変更するときには、マスクパターンを全部変更しなければならず、極めて高いコストを要する。しかし、空芯コイルであれば、コイル仕様は容易に変更することができる。
また、光偏向器の組み立てにおいても、空芯コイルをチップに貼り付けて作成するという工程は、現在大量に量産されているヘッドフォンの振動板ユニット等と似たような工法により実施可能であり、極めて低コストで実施することができる。なお、振動板ユニットは、現在、直径8mmや直径5mmといった小型のものが量産されている。
なお、この2軸偏向電磁駆動型光偏向器における磁気回路及び空芯コイル9の配置では、主に、第1の遥動軸3周りに駆動させるための力が発生する。磁界の一部が第2の遥動軸5に直交する方向の成分も持つようにマグネットを配置するとともに、ミラー2の共振周波数の駆動信号を空芯コイル9に重畳することにより、ミラー2を2次元的に駆動させることが可能である。
また、ミラー2を共振周波数で動かす方向については、変位量は小さくても発生力の大きな圧電駆動を用い、2軸についてそれぞれを独立した駆動源で動作させ、2次元偏向させることも可能である。
以上のように、この実施の形態では、ジンバルフレーム4の厚みがミラー2と同程度の厚みであっても、空芯コイル9が貼り付けられていることによって剛性が増しており、また、第1の遥動軸3回りについて軽量化できるため、厚み方向の振動などの不安定振動を防ぐことができ、さらに、第1の遥動軸3回りの共振周波数を高く設定することができ、制御動作を安定化させることができる。
〔第2の実施の形態〕
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
この実施の形態における2軸偏向電磁駆動型光偏向器は、基本的な構成は、第1の実施の形態における2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成と同様である。外周フレーム1は、一対の第1の遥動軸3により、ジンバルフレーム4を、第1軸X回りに揺動可能に支持している。この実施の形態では、ジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10及び2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を支持している。すなわち、ジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10を有し、これらアーム10の先端側において、2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を、第1軸Xに直交する第2軸Y回りに揺動可能に支持している。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、アーム10は、基端側がジンバルフレーム4の内側部に接続され、先端側に第2の揺動軸5の基端側が接続されている。各アーム10と、各第2の揺動軸5とは、ほぼ直交する方向となされて接続されている。したがって、各アーム10に、例えば、圧電膜を形成し、ミラー2の共振周波数で電圧を印加すれば、各アーム10がユニモルフのように振動し、ミラー2は、各第2の揺動軸5の対称軸を中心として、偏向動作する。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、ミラー2、ジンバルフレーム4、フレーム10及び各揺動軸3,5は、同じ厚みで薄く形成されている。外周フレーム1は、2軸偏向電磁駆動型光偏向器の全体を保持するためのフレームであり、この2軸偏向電磁駆動型光偏向器を用いる装置の組み立てにおけるハンドリング等で破損しないように、ミラー2等よりも厚く形成され、適切な厚みを有している。
ジンバルフレーム4は、必ずしも薄くする必要はないが、薄くすれば重量が少なくなり、外側の遥動軸(第1の揺動軸3)周りの偏向での共振周波数をより高くすることができ、制御動作時には、より安定した動作を行うことができる。ジンバルフレーム4は、空芯コイル9が貼り付けられていることにより、高剛性となり、厚み方向の撓みなどの余計な振動が生じ難くなり、安定した動作を実現することができる。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、2次元のラスター走査を行うには、水平走査の動作には、アーム10に形成した圧電膜に、ミラー2の共振周波数の駆動電圧を印加する。水平走査の駆動方法としては、2組(計4本)のアーム10を、逆相の電圧で駆動する方法、または、2組(計4本)のアーム10のうち片側の1組(計2本)のアーム10のみを駆動する方法がある。2組(計4本)のアーム10に逆相電圧を印加する方が、片側のみに電圧を印加するよりも、同じ電圧でより大きく(約2倍程度)動作させることができる。一方、片側の1組(計2本)のアーム10のみを駆動する場合には、反対側のアーム10も共振振動によって動くので、その上の圧電膜は、動作に応じた電圧を出力する。この出力電圧は、共振動作の検出信号として用いることができる。この検出信号により、水平走査と画像信号との同期を取って、映像がずれないように制御することができる。なお、2組(計4本)のアーム10を駆動する場合には、他の部分、例えば、第2の揺動軸5等に圧電膜を形成し、この圧電膜から、共振動作の検出信号を得ることができる。
そして、垂直走査の動作には、空芯コイル9に、リフレッシュレートの周期の信号電流を印加する。すると、磁気回路における磁界との作用によりローレンツ力が発生し、ミラー2が動作する。垂直動作の動作検出を行うには、例えば、第1の遥動軸3にも圧電膜のパターンを形成しておく。この圧電膜から、動作時の第1の遥動軸3のねじれ変形による圧電効果で電圧が発生し、動作信号を検出することができる。
以上のように、この実施の形態においても、ジンバルフレーム4の厚みがミラー2と同程度の厚みであっても、空芯コイル9が貼り付けられていることによって剛性が増しており、また、第1の遥動軸3回りについて軽量化できるため、厚み方向の振動などの不安定振動を防ぐことができ、さらに、第1の遥動軸3回りの共振周波数を高く設定することができ、制御動作を安定化させることができる。
〔第3の実施の形態〕
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す斜視図である。
この実施の形態における2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、図4及び図5に示すように、外周フレーム1は、一対の第1の遥動軸3により、ジンバルフレーム4を、第1軸X回りに揺動可能に支持している。そして、ジンバルフレーム4は、環状ではなく、一対の第1の揺動軸3に直交する方向で平行な一対の棒状に形成されている。このジンバルフレーム4は、裏面に空芯コイル9が貼り付けられることによって、この空芯コイル9に支持されて、一体化している。
このジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10及び2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を支持している。すなわち、ジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10を有し、これらアーム10の先端側において、2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を、第1軸Xに直交する第2軸Y回りに揺動可能に支持している。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、アーム10は、基端側がジンバルフレーム4の内側部に接続され、先端側に第2の揺動軸5の基端側が接続されている。各アーム10と、各第2の揺動軸5とは、ほぼ直交する方向となされて接続されている。したがって、各アーム10に、例えば、圧電膜を形成し、ミラー2の共振周波数で電圧を印加すれば、各アーム10がユニモルフのように振動し、ミラー2は、各第2の揺動軸5の対称軸を中心として、偏向動作する。
この2軸偏向電磁駆動型光偏向器において、ミラー2、ジンバルフレーム4、フレーム10及び各揺動軸3,5は、同じ厚みで薄く形成されている。外周フレーム1は、2軸偏向電磁駆動型光偏向器の全体を保持するためのフレームであり、この2軸偏向電磁駆動型光偏向器を用いる装置の組み立てにおけるハンドリング等で破損しないように、ミラー2等よりも厚く形成され、適切な厚みを有している。
ジンバルフレーム4は、必ずしも薄くする必要はないが、薄くすれば重量が少なくなり、外側の遥動軸(第1の揺動軸3)周りの偏向での共振周波数をより高くすることができ、制御動作時には、より安定した動作を行うことができる。ジンバルフレーム4は、空芯コイル9が貼り付けられていることにより、高剛性となり、厚み方向の撓みなどの余計な振動が生じ難くなり、安定した動作を実現することができる。
ここで、アーム10は、圧電駆動により振動が発生するため、図5に示すように、ジンバルフレーム4の厚みを、アーム10の振動振幅よりも厚く形成することにより、アーム10の直下に空芯コイル9の2辺を位置させることができる。つまり、デバイスチップの大きさを、より小さくすることができる。デバイスチップが小さいと、シリコンウェハなどから作成する際に、ウェハ1枚当たりからのチップ取り数を増やすことができ、デバイスコストの低減につながる。
さらに、デバイスチップが小さいことは、磁気回路における磁気ギャップの幅を狭くすることが可能となるので、発生磁界強度を向上させることができる。したがって、ローレンツ力を用いた電磁駆動を行う場合に、駆動力を向上させることができる。
この実施の形態において、2次元のラスター走査を行う方法については、第2の実施の形態2と同様である。
以上のように、この実施の形態においても、ジンバルフレーム4の厚みがミラー2と同程度の厚みであっても、空芯コイル9が貼り付けられていることによって剛性が増しており、また、第1の遥動軸3回りについて軽量化できるため、厚み方向の振動などの不安定振動を防ぐことができる。
さらに、この実施の形態においては、第1の遥動軸3回りの共振周波数を高く設定することができ、制御動作を安定化させることができる。さらに、デバイスチップを小型化できるとともに、電磁駆動の駆動効率を向上させることが可能となる。
〔第4の実施の形態〕
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の構成を示す底面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
この実施の形態における2軸偏向電磁駆動型光偏向器においては、図6(a)に示すように、外周フレーム1は、一対の第1の遥動軸3により、ジンバルフレーム4を、第1軸X回りに揺動可能に支持している。そして、ジンバルフレーム4は、環状ではなく、一対の第1の揺動軸3に直交する方向で平行な一対の棒状に形成されている。このジンバルフレーム4は、裏面に空芯コイル9が貼り付けられることによって、この空芯コイル9に支持されて、一体化している。
このジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10及び2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を支持している。すなわち、ジンバルフレーム4は、2組(計4本)のアーム10を有し、これらアーム10の先端側において、2組(計4本)の第2の揺動軸5によって、ミラー2を、第1軸Xに直交する第2軸Y回りに揺動可能に支持している。
ジンバルフレーム4の両側には、一対のポール6,7が、外周フレーム1の裏面側に位置して配置されている。これらポール6,7は、図6(b)に示すように、マグネット8によって接続されており、磁気回路を構成している。マグネット8及び一対のポール6,7は、ジンバルフレーム4の両側に、それぞれN極及びS極を位置させており、図6(a)中にBで示すように、第1の遥動軸3に直交する方向の磁界を形成している。ジンバルフレーム4の裏面に貼り付けられた空芯コイル9は、一対のポール6,7の間に形成される磁界中に位置している。
この実施の形態における磁気回路においては、各ポール6,7の先端部が、外周フレーム1の裏面側に位置しているので、前述の第1乃至第3の実施の形態における磁気回路よりも、ギャップ幅が狭く、磁気ギャップにおける発生磁界をより強くすることができる。
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図(a)及び従来の2軸偏向電磁駆動型光偏向器の動作原理を示す側面図(b)である。
この実施の形態においては、磁気回路の磁界強度は強くなるものの、図7(a)に示すように、ジンバルフレーム4が偏向したとき、マグネット8から離れる方向に動作した空芯コイル9の部分は、磁気回路による発生磁界領域からはみ出してしまう。ここでいう“発生磁界領域からはみ出す”とは、図7(a)において、外周フレーム1とポール6との接触面と、外周フレーム1とポール7との接触面とを結ぶ仮想線よりも上側(外周フレーム1側)にはみ出すことを意味している。実際には、磁気回路による発生磁界領域は外側にも広がっており、磁界は働いているが、磁気ギャップ内よりも磁界強度は弱くなっている。
発生磁界が強い領域を矢印Bで示すと、図7(b)に示すように、従来の光偏向器においては、ジンバルフレーム104が偏向したときに、パターニングコイル109の片側部分が磁界から完全にはみ出してしまう。このとき、パターニングコイル109の片側におけるローレンツ力が低下し、駆動力が低下する。
これに対して、本発明の実施の形態の光偏向器においては、ジンバルフレーム4が偏向したときに、空芯コイル9の片側部分の一部分が磁界からはみ出すが、多くは依然として磁界中にある。このとき、空芯コイル9の片側におけるローレンツ力の低下は少なく、駆動力の低下も少ない。
つまり、従来の光偏向器においては、平面状のパターニングコイル109は、高さ方向の成分がほとんどないために、ジンバルフレーム104の偏向時にパターニングコイル109の1辺全体が磁界からはみ出してしまうのに対して、本発明に係る光偏向器においては、空芯コイル9は、複数層の高さで巻き線されているために、ジンバルフレーム4の偏向時には、空芯コイル9の1辺の一部のみが磁界からはみ出す。
このように、この実施の形態においては、外周フレーム1の裏面側に一対のポール6,7が位置する磁気回路を用いても、ジンバルフレーム4の偏向時のローレンツ力の低下が少ないので、磁界の強度を強めつつ、駆動力の低下を低減することができる。したがって、駆動力を向上させ、もしくは、低下させることなく、磁気回路を含めたデバイス全体を小型化することが可能である。
本発明は、レーザビーム等の光を反射させて偏向させ、2次元状に走査する2軸偏向電磁駆動型光偏向器に適用される。
1 外周フレーム
2 ミラー
3 第1の揺動軸
4 ジンバルフレーム
5 第2の揺動軸
6 ポール
7 ポール
8 マグネット
9 空芯コイル
10 アーム

Claims (1)

  1. 外周フレームと、
    前記外周フレームにより、第1の遥動軸を介して、第1軸回りに揺動可能に支持されたジンバルフレームと、
    前記ジンバルフレームにより、第2の遥動軸を介して、前記第1軸に直交する第2軸回りに揺動可能に支持されたミラーと、
    前記ジンバルフレームに取り付けられた空芯コイルと、
    前記空芯コイルを磁界中に位置させる磁気回路と
    を備え、
    前記空芯コイルは、線材が複数回、複数層に渡って巻線され、それぞれの線材が接着され固定されて構成されており、
    前記ジンバルフレームは、前記第1の揺動軸に直交する方向で平行な一対の棒状に形成されており、前記空芯コイルが貼り付けられることによって、この空芯コイルに支持されて一体化しており、少なくとも2本のアームを有し、これらアームの先端側において、各アームにほぼ直交する方向となされた少なくとも2本の第2の揺動軸によって、前記第2軸回りに前記ミラーを揺動可能に支持しており、
    前記ミラーは、各第2の揺動軸の対称軸を中心として、偏向動作する
    ことを特徴する2軸偏向電磁駆動型光偏向器。
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