JP2013245327A - 石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法及び該方法を用いた石炭ガス化装置 - Google Patents

石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法及び該方法を用いた石炭ガス化装置 Download PDF

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Abstract

【課題】水砕スラグの堆積に影響されることなくクエンチ部の水位を安定して信頼性のあるクエンチ水位検出方法を提供する。
【解決手段】ガス化部6から流下する溶融スラグをクエンチ水11に落下させて急冷し破砕するクエンチ部10を備えた石炭ガス化装置において、クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対TC(1〜6)の検出温度を入力し、上下に隣り合う熱電対の検出温度の差が最大となる一対の熱電対を求め、該一対の熱電対の間にクエンチ部の水面が位置するものとしてクエンチ部の水位を検出する。ガス化部とクエンチ部との間に溶融スラグが流下する長方形の開口を有する絞り部9が設けられ、複数の熱電対は絞り部の長方形の開口の長辺側に対向するクエンチ部の壁面に設置する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法及び該方法を用いた石炭ガス化装置に関する。
石炭ガス化装置は、例えば特許文献1に記載されているように、微粉炭などの石炭と酸素などの酸化剤をガス化炉内に投入して、高温下で一酸化炭素(CO)と水素(H)を主成分とするガスにガス化する。このガス化ガスを生成ガスという。生成ガスにはガス化後に残った固形分のチャーも含まれる。ガス化に必要な加熱源(例えば、1300〜1600℃)は、微粉炭及び生成ガスから捕集したチャーのガス化部の高温部における酸化反応で発生する熱である。この酸化反応で残った石炭中の灰分は高温部の熱で溶融されガス化炉の側面を流下して、クエンチ水が貯留されているクエンチ部に落下される。クエンチ部に落下された溶融スラグは、急激に冷却されて固化し、このとき発生する熱衝撃で破砕される。この操作を水砕といい、破砕されたスラグを水砕スラグという。水砕スラグはクエンチ部の底部に一旦貯留され、適宜クエンチ水とともに系外に排出される。
このように構成される石炭ガス化装置のクエンチ部では、溶融スラグの冷却によりクエンチ水が蒸発されて水位が低下する。また、水砕スラグ排出の際においてもクエンチ水が排出されることから水位が低下する。これらのことから、クエンチ部の水位を検出して適宜、クエンチ水を補給するようにしている。特許文献1によれば、ガス化部とクエンチ部の底部との圧力を検出し、クエンチ部の水頭を求めて水位を検出している。しかし、クエンチ部の底部の圧力の測定座に貯留した水砕スラグが詰まると、水位を正確に測定できない場合があり、水位が上限を越えてガス化部まで達することがある。クエンチ部の水位がガス化部まで達すると、石炭ガス化装置の負荷を下げたり、運転中止を余儀なくされることから、信頼性の高いクエンチ部の水位検出方法が要望されている。
一方、石炭ガス化装置のクエンチ部の水位検出ではないが、容器内の水位又は液位を検出するために、容器内の高さ方向に複数の温度計を配置し、各温度計間の温度差が最も大きい位置に、水面又は液面があるとして、水位を検出している(特許文献2、特許文献3)。また、液体ではなく、粉粒体の流動層の表面位置を検出するために、同様に高さ方向に複数の温度計を配置し、各温度計間の温度差が最も大きい位置に流動層の表面位置があることを検出している(特許文献4)。同様に、アスファルト貯留槽の高さ方向に複数の温度計を配置して、温度差が最も大きい温度計間の位置にアスファルトの貯蔵表面があることを検出している(特許文献5)。さらに、廃プラスチックの溶融混合層の液位を検出するために、溶融混合層の高さ方向に複数の温度計を配置して温度差が最も大きい温度計間の位置に液位があると検出している(特許文献6)。
このように、液体や粉粒体などの貯留物の貯留高さ方向に適宜間隔を空けて複数の温度センサを配置し、高さ方向に隣り合う一対の温度センサの検出温度の差が最も大きい位置に、貯留物と気相との境界である貯留物の表面位置が存在するとして、貯留物の表面位置を検出することは、周知の技術である。
特開2006−206776号公報 特開昭63−71620号公報 特開2008−190951号公報 特開平7−19931号公報 特開平5−172608号公報 特開平9−21676号公報
しかしながら、上述した特許文献2〜6では、石炭ガス化装置のクエンチ部の高さ方向に適宜間隔を空けて複数の温度センサを配置して、クエンチ部の水位を検出することに伴う問題については何ら考慮されていない。すなわち、溶融スラグがクエンチ部に貯留されているクエンチ水に落下して急激に冷却されて水砕スラグが生成されると、クエンチ水が蒸発してクエンチ水が減少する。水砕スラグ排出においてもクエンチ水もともに排出されるのでクエンチ水が減少する。クエンチ水が減少すると落下した溶融スラグを安定して水砕できなくなるから、石炭ガス化炉の運転を停止しなければならないのでクエンチ水を補給する必要がある。逆に、補給によりクエンチ水の水位がガス化炉まで達すると、石炭ガス化炉の運転を停止しなければならなくなる。したがって、クエンチ水の水位を常時検出し、補給水を供給してクエンチ水を正常な水位に維持管理して、石炭ガス化炉を安全に、かつ連続運転することが望まれる。
しかし、特許文献1に記載のように、クエンチ部の水頭に基づいて水位を検出する方法では、クエンチ部の底部の水圧を検出する測定座に貯留した水砕スラグが堆積して詰まると、水位を正確に測定できないから、石炭ガス化炉を安全に、かつ連続運転することができない。そこで、貯留した水砕スラグの堆積の影響を受けないようにするためには、特許文献2〜6に記載されたように、温度センサをクエンチ部の高さ方向に複数の温度センサを設置し、上下に隣り合う2つの温度センサの検出温度差に基づいてクエンチ水の水位を検出することが望ましい。
ところが、クエンチ部には1300℃以上の溶融スラグが常時流下しているから、サーミスタなどの耐熱温度が低い温度センサを用いることはできず、熱電対を用いたとしてもかなり過酷な条件下になる。したがって、石炭ガス化装置の溶融スラグを水砕して安定に排出でき、かつ信頼性の高いクエンチ部の水位検出及び水位制御を、熱電対を用いて実現して石炭ガス化装置の連続運転及び安定運転を可能にすることが望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、石炭ガス化装置のクエンチ部の高さ方向に適宜間隔を空けて複数の熱電対を配置して、貯留した水砕スラグの堆積に影響されることなくクエンチ部の水位を安定して測定でき、信頼性のあるクエンチ水位検出方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は、石炭をガス化するガス化部から流下する溶融スラグをクエンチ水に落下させて急冷・破砕するクエンチ部を備えた石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法において、前記クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対の検出温度を入力し、上下に隣り合う熱電対の検出温度の差が最大となる一対の熱電対を求め、該一対の熱電対の間に前記クエンチ部の水面が位置するものとして前記クエンチ部の水位を検出することを特徴とする。
本発明によれば、石炭ガス化装置のクエンチ部の高さ方向に適宜間隔を空けて複数の熱電対を配置してクエンチ部の水位を検出しているから、貯留した水砕スラグの堆積に影響されることなくクエンチ部の水位を安定して測定でき、信頼性のあるクエンチ水位検出方法を提供することができる。これにより、クエンチ水の水面を正確に検知することでクエンチ水の水位及び水温の制御が可能となり、溶融スラグを確実に水砕できる。また、水砕スラグを系外へ安定して排出できることから石炭ガス化装置の信頼性向上を図ることができる。
なお、熱電対は、落下する高温の溶融スラグが直接当たると破損するおそれがあるが、耐熱性のある白金(Pt)系の熱電対は300℃以下の低温域では精度が低いため、水面下の100℃以下のクエンチ水の温度を正確に測定することができない。そこで、300℃以下の低温域でも計測が可能なK型あるいはR型の熱電対を使用して、100℃以下のクエンチ水の水面を精度よく検出することが好ましい。
また、本発明の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法において、前記ガス化部と前記クエンチ部との間に前記溶融スラグが流下する長方形の開口を有する絞り部が設けられ、前記複数の熱電対は、前記絞り部の長方形の開口の長辺側に対向する前記クエンチ部の壁面に設置することが好ましい。これによれば、ガス化部から流下する高温の溶融スラグは絞り部の開口縁に沿ってクエンチ水に落下するから、熱電対をその開口縁からできるだけ離れたクエンチ部の壁面に設置することにより、落下する高温のスラグが直接熱電対に当たらないようにすることができる。これにより、熱電対に溶融スラグが付着して大きな塊になって温度計測ができない状態を回避でき、かつ、スラグの大きな塊によってスラグ排出系が閉塞する問題を回避することができる。
さらに、本発明の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法において、前記クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対を1組として、前記クエンチ部の壁面の周方向に沿って間隔を空けて複数組配置し、各組の熱電対は垂直方向の高さ位置が同一の水平面に配置されてなり、前記水位検出部は、同一の水平面に設置された各組の熱電対の検出温度を平均して、この平均検出温度の差が最大の前記一対の熱電対を求めて前記水位を検出することが好ましい。
つまり、高温の溶融スラグがクエンチ水へ落下する際に発生する波、及び蒸気の気泡などによって水面が変動する。そのとき、水面位置の熱電対の検出温度は、水面の変動によって気相(ガス相)の温度とクエンチ水の温度との間で変動することになる。その水面変動の幅が大きいと、温度差が最大になる一対の熱電対が時間的に変動することがあり、安定して水面位置を検出することができない。この点、クエンチ部の壁面の周方向に沿って間隔を空けて複数組の熱電対を配置し、同一の水平面に設置された各組の熱電対の検出温度を平均して、この平均検出温度の差が最大の一対の熱電対を求めれば、溶融スラグのクエンチ水への落下による水面変動があっても、安定して水面位置を検出することができる。
また、本発明の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法においては、前記熱電対のシース材料をNi基合金あるいはNi基超合金とすることが望ましい。つまり、ガス化部の下部のクエンチ部の水面より上部の温度は、1000℃近く、あるいはそれ以上の温度にもなる高温雰囲気になる。また、石炭中には硫黄や塩素が含まれており、ガス化および燃焼の際にはガス中に放出されるから、クエンチ水の上方には硫黄や塩素が含まれるガスが存在し、かつ常にクエンチ水に接触しているためクエンチ水が腐食性を帯びている。そこで、熱電対のシース材料をNi基合金あるいはNi基超合金とすることにより、耐熱性及び耐食性を持たせることができる。
本発明によれば、石炭ガス化装置のクエンチ部の高さ方向に適宜間隔を空けて複数の熱電対を配置して、貯留した水砕スラグの堆積に影響されることなくクエンチ部の水位を安定して測定でき、信頼性のあるクエンチ水位検出方法を提供することができる。
本発明のクエンチ水位検出方法を適用した実施例1のクエンチ部の構成図である。 本発明の石炭ガス化装置の一実施形態の全体構成を示す図である。 実施例1によるクエンチ水位検出方法を説明する図である。 本発明のクエンチ水位検出方法を適用した実施例2の絞り部の上面図と熱電対の設置位置を説明する図である。 実施例2の絞り部の断面図を示す図である。 本発明のクエンチ水位検出方法に用いる実施例3の熱電対の構成を示す図である。 本発明のクエンチ水位検出方法を適用した実施例4のクエンチ水の水位及び温度の制御方法を説明する図である。 本発明のクエンチ水位検出方法を適用した実施例5の水位検出部の熱電対の配置構成図である。
以下、本発明の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法を実施形態に基づいて説明する。図2に示すように、石炭ガス化装置は、石炭をガス化するガス化炉1、ガス化炉1から排出される生成ガス2の熱を回収する熱回収ボイラ3、生成ガス2中のチャーを捕集するサイクロン4及びチャーフィルタ5が備えられている。ガス化炉1には、ガス化用バーナ7及びチャーバーナ8が設置され、微粉炭およびチャー等の微粉燃料を高温下で一酸化炭素(CO)と水素(H)を主成分とするガスにガス化する。微粉炭及びチャー中の灰をガス化炉1の下部の高温部で溶融し、ガス化炉1の側面を流下してガス化部6から絞り部9の開口9aを通ってクエンチ部10へ流入する。クエンチ部10には、クエンチ水11が貯留されており、クエンチ水11に落下した溶融スラグは急冷されて破砕され、水砕スラグ12として水と共に石炭ガス化装置から排出される。
一方、生成ガス2は熱回収ボイラ3で熱回収された後、生成ガス2中のチャーがサイクロン4で捕集され、サイクロン4で捕集できなかった微細なチャーはチャーフィルタ13で捕集される。捕集されたチャー14はホッパ15に回収されたあと、ロータリーバルブ16にて切り出され、チャー搬送管17により再度ガス化炉1へ投入される。図示をしていないが脱塵された生成ガス18は後流のガス精製装置へ送られた後、発電設備の燃料として使用される。
以下、本発明のクエンチ水位検出方法を適用してなるクエンチ部の実施例について説明する。
図1に、本発明のクエンチ水位検出方法を適用してなる実施例1のクエンチ部の構成を示す。図示のように、クエンチ部10には、側壁(周壁)に複数(図示例では、6個)の熱電対TC(TC1〜6)が垂直方向に適宜間隔を空けて配置されている。なお、垂直方向の熱電対の個数は本実施形態に限られるものではなく、必要に応じて適宜増やすことも、減らすこともできる。図1において、最も高い位置に設置された熱電対TC1は、クエンチ水の異常上限水位(HH)に対応して設けられ、最も低い位置に設置された熱電対TC6は重故障下限水位(LLL)に対応し、第2番目に低い位置に設置された熱電対TC5は異常下限水位(LL)に対応して設けられている。また、熱電対TC2は通常の水位制御に用いる上限水位(H)に対応し、熱電対TC4は通常の水位制御に用いる下限水位(L)に対応して設けられている。これらの熱電対TC1〜6の検出温度信号は制御装置20に入力されている。制御装置20は、熱電対TC6の検出温度信号に基づいてガス化炉1を緊急停止するようになっている。また、熱電対TC1とTC5の検出温度信号に基づいて、それぞれ警報を発するようになっている。
一方、ガス化部6とクエンチ部10の境に絞り部9が設けられ、絞り部9よりも下方のクエンチ部10の側壁から補給水供給弁21を介して補給水が供給されるようになっている。また、クエンチ部10の底部近傍の側壁からクエンチ水抜出弁22を介してクエンチ水11が抜き出されるようになっている。さらに、クエンチ部10の底部から水砕スラグ排出弁23を介して、クエンチ部10の底部に堆積した水砕スラグを水と一緒に排出するようになっている。なお、クエンチ水11の補給水としては、一般用水の他、石炭ガス化装置の後流にある排ガス処理装置で煤塵及び腐食性物質等を除去して再生されたリサイクル水を使用してもよい。なお、本実施例1の絞り部9の開口9aは円形に形成されている。
次に、このように構成される実施例1のクエンチ部10のクエンチ水の水面を検出する方法について説明する。例えば、図1に示すように、現在の水面位置は熱電対TC2と熱電対TC4の間にあったとする。そして、図3に示すように、熱電対TC1〜6の検出温度がそれぞれTC1:1000℃、TC2:900℃、TC3:90℃、TC4:85℃、TC5及びTC6:80℃であったとすると、隣接する上下の一対の熱電対の検出温度の差は、TC1とTC2では100℃、TC2とTC3では810℃、TC3とTC4では5℃、TC4とTC5では5℃、TC5とTC6では0℃となる。したがって、TC2とTC3との検出温度差が最も高く、これら熱電対の間にクエンチ水11とガスの境界があると推察できる。すなわち、水面(界面)がこれら熱電対TC2とTC3との間の位置に存在することが推察できる。また、TC3からTC6までのそれぞれの検出温度差が100℃以下で、かつ数度の差しかないことからTC3からTC6の位置は水中にあると判断できる。このように、複数の熱電対TC1〜6をクエンチ部10の垂直方向に適宜間隔を空けて設置し、各熱電対の位置が水中あるいはガス中にあるか否か判断すると共に、温度差が一番大きい一対の熱電対の間にクエンチ水11の水位があることを検知できる。
次に、実施例1によりクエンチ水11の温度制御方法について説明する。溶融スラグは、クエンチ水11へ入水直前の溶融スラグの温度とクエンチ水11の水温との温度差による熱衝撃で破砕される。クエンチ水11の温度が高温であるよりも低温の方が溶融スラグとの温度差が多くなり溶融スラグの破砕を良好にできる。本実施例1では、TC3からTC6の位置が水中にあると判断された。この熱電対TC3〜TC6の検出温度とクエンチ水11の設定温度とを制御装置20により比較して、検出温度が高い場合、補給水供給弁21を開けて補給水を供給するとともに、クエンチ水抜出弁22を開けてクエンチ水11を排出することにより、熱電対TC4〜TC6の温度を所定の温度に制御できる。制御に用いる検出温度は、水中に位置すると判断された複数の熱電対の平均値、あるいはそれらの最高温度を用いてもよい。
なお、本実施例1によれば、溶融スラグがクエンチ部10へ流入して急冷され、その時の溶融スラグの温度とクエンチ水11の水温との温度差で生じる熱衝撃で溶融スラグが粉砕され、水砕スラグとなってクエンチ部10の底部に堆積する。クエンチ部10の底部は、下部になるほど小さく絞ったコーン形状として、水砕スラグを排出し易いようになっている。
また、本実施例1では、ガス化運転で溶融スラグの水砕に必要なクエンチ水11の水位を設備容量により異なるが、通常の水位を底から1m以上とし、その水位を保つためにその付近には図示のように、熱電対TC2、TC3及びTC4の間隔を密に配置している。本実施例1では、熱電対TC2と熱電対TC3の間を制御水位としている。そして、一対の熱電対の検出温度差が最大となる位置にクエンチ水11の水面(界面)があり、それよりも下部の位置は水中にあると判断することができる。
図4及び図5を参照して、本発明のクエンチ水位検出方法を適用してなる実施例2について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、絞り部9の開口9aの形状及び熱電対TC1〜6のクエンチ部10の周壁回りの配置の構成にあり、その他の点は実施例1と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。図4(a)は、絞り部9の上面図であり、絞り部9の開口9aは実施例1では円形を前提として説明したが、本実施例2では長方形に形成されている。そして、絞り部9の上面9bは、ガス化部6とクエンチ部10の境の周壁から開口9aの長辺9cと短辺9dに向かって低くなる傾斜面として形成されている。そして、図4(b)の模式図に示すように、複数の熱電対TC1〜6は、絞り部9の長方形の開口9aの長辺9cに対向するクエンチ部10の壁面に設置する。すなわち、ガス化部6から流下する高温の溶融スラグは絞り部9の開口縁9aに沿ってクエンチ水11に落下するから、熱電対TC1〜6をその開口9aの縁からできるだけ離れたクエンチ部10の壁面に設置することにより、落下する高温のスラグが直接熱電対TC1〜6に当たらないようにすることができる。これにより、熱電対TC1〜6に溶融スラグが付着して大きな塊が形成されることによる温度計測ができない状態を回避でき、かつ、スラグの大きな塊が落下してスラグ排出系が閉塞する問題を回避することができる。
このことを、図5を参照して、さらに詳しく説明する。図5(a)は開口9aの長辺9c側のクエンチ部10の周壁周りと絞り部9の片側の断面図であり、同図(b)、(c)は短辺9d側のクエンチ部10の周壁周りと絞り部9の片側の断面図である。それらの図に示すように、開口9aの長辺9c側の突き出し長さ(庇の長さ)は、短辺9d側の突き出し長さ(庇の長さ)よりも長い。また、ガス化炉1の側面を流下する溶融スラグ27はガス化炉1下部の絞り部9の開口9aを通過してクエンチ部10へ流入する。ガス化炉1の断面形状が円であるのに対し,絞り部9の開口9aの形状が長方形となっている。そのため、溶融スラグ27のほとんどは 図4(a)に示すように、流下距離が短い絞り部9の短辺9dを目指した流れ25となって、クエンチ水11へ流れ落ちる。流下する溶融スラグ27の温度は1000℃以上の高温であり、溶融スラグ27が接触すると熱電対TCが焼損するおそれがある。また、熱電対TC1〜6に溶融スラグ27が固着すると正確に温度を測定することが困難となるばかりでなく、大きな塊となって落ちるとスラグ排出系が閉塞するおそれがある。
ここで、溶融スラグ27の粘度が高い場合、図5(b)に示すように、絞り部9の開口9aの短辺9d側は、クエンチ部10の側壁が近いから、絞り部9の庇の長さが短く、かつ長辺9c側よりも流下量が多いため、図示のようにクエンチ部10の側壁側に回り込んで流下するおそれがある。その結果、クエンチ部10の側壁に設置した熱電対TCに溶融スラグが直接接触する危険性がある。これに対し、図5(a)に示すように、開口9aの長辺9c側はクエンチ部10の側面からの距離が離れているため、絞り部9の庇の長さが長く、かつ流下量が少ないため、高温の溶融スラグ27が側壁側に回り込むことなく落下する。その結果、溶融スラグ27が高粘度であっても熱電対TCに接触する可能性が少ないから、焼損するおそれを回避でき、また熱電対TCに付着して大きな塊となって落下するおそれを回避できる。
さらに、絞り部9の開口9aの短辺9d側では、図5(c)に示すように、高温の溶融スラグ27が低温のクエンチ水11へ流れ落ちる際、落下による水面の変動に加え、水蒸気の発生によりクエンチ水11の水面が激しく波打ち、変動する水面の近傍に位置する熱電対TCの検出温度が大きく変動するおそれがある。
そこで、本実施例2では、絞り部9の開口9aの縁部までの流下距離が長く、溶融スラグ27が側壁側に回り込み難い開口9aの長辺9c側に対向するクエンチ部10の側壁に熱電対TCを設置することを特徴とする。さらに具体的には、図4(b)に示すように、開口9aの長方形の対角線19Aと19Bに挟まれる長辺9cに対向するクエンチ部10の側壁の範囲28に、熱電対TCを配置する。
本実施例2は、通常運転時に効果があるのはもちろんであるが、石炭ガス化炉1等の暖機段階であっても一定の効果が得られる。すなわち、石炭を投入してガス化を始める前に、炭化水素系の液体燃料や気体燃料の燃焼ガスを用いて石炭ガス化装置全体を暖機する。このとき、燃焼ガスの流れでクエンチ水11の水面変動が発生する。このような水面変動に対しても、本実施例2のように、絞り部9の開口9aの長辺9cに対向するクエンチ部10の周壁に、熱電対TCを複数垂直方向に配置することにより、水面変動による大きな変動を受けずクエンチ部10の水温を確実に測定でき、クエンチ水11の水位を正確に検知することができる。絞り部9の開口9aの形状が長方形の場合についてこれまで説明してきたが、開口9aの形状が長円形や楕円の場合でも同様に効果が得られることは容易に推測できる。
図6に、本発明のクエンチ水位検出方法に用いられる熱電対TCの実施例を実施例3として説明する。図6(a),(b)は、いずれも熱電対TCの先端の測温部の概略図を示している。同図(a)に示す熱電対TC−1は、先端が閉塞された管状のシース30に、絶縁物31を介して熱電対素線32が収容されて形成されている。シース30は、Ni基合金あるいはNi基超合金により形成されている。熱電対素線32は、300℃以下の低温域でも計測が可能なK型あるいはR型の熱電対が用いられる。これにより、100℃以下のクエンチ水の温度を測定でき、水面を精度よく検出することができる。また、Ni基合金あるいはNi基超合金は、石炭のガス化で発生する硫黄や塩素などの腐食性成分に強い材料であるから、これらの成分が溶け込んだクエンチ水11による熱電対TC−1のシース30の腐食量を少なくでき、長期にわたるガス化運転においても温度測定が可能となる。一方、同図(b)に示した熱電対TC−2は、一般的なSUS316等のステンレス材で形成したシース33の外側を、保護シース34で被服して形成したものである。SUS316等のステンレス材は、硫黄や塩素などの腐食性成分が溶解したクエンチ水11に対しては、長期使用により腐食してしまうおそれがある。保護シース34の材料としてNi基合金あるいはNi基超合金を用いてシース33を包囲することで、耐食性を持たせる。
図7に、本発明のクエンチ水位検出方法を適用してなる実施例1のクエンチ部におけるクエンチ水の水位及び温度の制御方法を示す。これらの制御は、制御装置20により行われる。図1の実施例1の熱電対TC2を水位の上限(H)、熱電対TC4を水位の下限(L)とし、この間をクエンチ水11水位の通常制御位置(N.W.L.)とする。また、本実施例4では、クエンチ水11の温度を90℃に制御するものとし、クエンチ水11の水位がN.W.L.にある時を制御点として図4に○印で示す。クエンチ水11の温度制御用の熱電対TCは、N.W.L.以下に設置された熱電対TCの内の1つを選択することができる。また、これに代えて、N.W.L.以下に設置された複数の熱電対TCの算術平均値を用いることができる。さらに、実施例1の水位検出方法で検出して求めた水位以下に設置された複数の熱電対TCの算術平均値を用いてもよい。図4中に示す矢印の意味は、流量の増減を表し、右上がりが流量の増加、右下がりが流量の減少、水平が流量の増減なしである。矢印が2本の場合は1本で表した流量よりもさらに多くの流量を増減することを意味し、例えば単純に倍の流量に増減すると考えてもよい。
まず、クエンチ水温度が制御温度90℃でクエンチ水11の水位が下限L以下の場合、補給水流量よりクエンチ水排水流量が多いことが考えられるので、クエンチ水抜出弁22の開度を調整して排水流量を低減させてクエンチ水の水位を保つ。クエンチ水11の水位が上限H以上の場合、水位が下限Lのときとは逆に補給水流量よりクエンチ水排水流量が少ないことが考えられるので、クエンチ水抜出弁22の開度を調整して排水流量を増加させてクエンチ水11の水位を保つ。
次に、クエンチ水温度が90℃以上になった場合を考える。図7のNo.2からNo.1へ条件が変わった場合である。クエンチ水温度が上昇しているため、補給水供給弁21を開いてクエンチ部10へ給水する低温の補給水24の流量を増加してクエンチ水温度を下げる。クエンチ水11の水位がN.W.L.位置にあるとき、補給水24の流量増加に伴いクエンチ水抜出弁22を開いてクエンチ水排水の流量を増加させて、クエンチ水11の水位をN.W.L.に保つ。クエンチ水11の水位が下限L以下の場合、補給水流量より排水流量が多いことから、クエンチ水抜出流量を変えないでクエンチ水11の水位をN.W.L.に保つ。クエンチ水11の水位が上限H以上の場合は補給水流量に対して排水流量が少ないことから、排水流量を補給水流量よりも増加して、クエンチ水11の水位をN.W.L.に保つ。
クエンチ水の温度が90℃以下、つまり図7No.3の場合について考える。クエンチ水11の熱量を考えると、クエンチ水温が90℃を下回っているので低温の補給水がクエンチ部10へ多く入っていると考えられる。したがって、補給水供給弁21を調整して補給水流量を低減させて水温を予め設定された制御温度(例えば、90℃)に調整する。クエンチ水11の水位の調整については、水位がN.W.L.にある場合、補給水流量の低減量と同じ排水流量の低減を行ない水位を保つ。水位がL以下の場合、排水流量が多いことから補給水流量の低減量よりもさらに多くの排水流量低減を行なうことでクエンチ水11の水位をN.W.L.に保つ。水位がH以上の場合、補給水流量に対して排水流量が少ないことから、補給水流量の低減のみで排水流量はそのままとしてクエンチ水11の水位をN.W.L.に保つ。
このようにして、クエンチ水11の水温と水位を制御する。これらの制御操作は、水砕スラグ排出弁23を開けて水砕スラグ12を抜き出した後のクエンチ水11の水位及びクエンチ水温度を調整する場合にも適用できる。したがって、実施例4の水位検出方法及び温度制御方法、並びにその装置でクエンチ水11の水位と温度を溶融スラグの水砕に好適な条件に制御することができる。
図8(a),(b)に、本発明のクエンチ水位検出方法を適用してなる実施例5のクエンチ部の構成を示す。本実施例が実施例1と異なる点は、クエンチ部10の周壁回りに複数の熱電対を配置した構成にあり、その他の点は実施例1と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。本実施例5は、同図に示すように、熱電対TCをクエンチ部10の高さ方向に複数段(図示例では3段)、適宜間隔を空けて配置するとともに、それらと同じ配置の熱電対TCを周方向に複数組(図示例では、8組)配置している。なお、同図(a)はクエンチ部10を模式的に表した斜視図であり、同図(b)はクエンチ部10を上から見た模式的な平面図である。本実施例の絞り部9の開口9aは、実施例1と同様に、円形に形成されているものとする。
このように形成されることから、各組の熱電対TC−A,TC−B,TC−Cは、実施例1と同様にその位置におけるクエンチ部10の検出温度を制御装置20に出力するようになっている。制御装置20は、上下方向に隣り合うTC−AとTC−B、及びTC−BとTC−Cの検出温度の差を求め、その検出温度の差がクエンチ水11とガス相との差と推察できるほど大きな差のときに、それらの熱電対の間にクエンチ水11の水面があるとして水位を検出することは実施例1と同様である。
本実施例5の特徴は、図5で説明したように、溶融スラグ27がクエンチ部10に落下してクエンチ水11に流下する際、クエンチ水11の水面に波が立つことがある。この波は、溶融スラグ27の落下の衝撃により発生する荒い波、高温の溶融スラグ27が流入したことで発生する蒸気による波、あるいはガス化部6のガス流れにより発生する波などが考えられる。その波の影響で、水面と熱電対TCとの相対位置が変化すると、熱電対TCの波の影響で変動するので、クエンチ水11の水位を特定することが困難となる場合がある。この点、本実施例5によれば、周方向に熱電対TC−A〜Cを複数組配置しているから、各組の同一の段における熱電対TC−A〜Cの検出温度の平均値を求めることにより、波の影響で変動する検出温度を抑えることができる。こうして、垂直方向の各段の平均検出温度を算出して実施例1と同様に、各熱電対TC−A〜Cの位置がクエンチ水中かガス中を判断することができ、クエンチ水11の水位を検知することができる。
すなわち、本実施例5によれば、クエンチ部10の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対TC−A〜Cを1組として、クエンチ部10の壁面の周方向に沿って間隔を空けて複数組配置し、各組の熱電対は垂直方向の高さ位置が同一の水平面に配置され、水位検出部を構成する制御装置20により、同一の水平面に設置された各組の同一段の熱電対TCの検出温度を平均して、各段間の平均検出温度の差が最大の一対の熱電対を求めて水位を検出することができる。これにより、高温の溶融スラグがクエンチ水へ落下する際に発生する波、及び蒸気の気泡によって水面が変動し、水面位置の熱電対の検出温度が、水面の変動によって気相(ガス相)の温度とクエンチ水の温度との間で変動しても、安定して水面位置を検出することができる。つまり、同一の水平面に設置された各組の熱電対の検出温度を平均して平均検出温度の差が最大の上下に隣り合う一対の熱電対を求めれば、溶融スラグのクエンチ水への落下による水面変動があっても、安定して水面位置を検出することができる。
以上、本発明のクエンチ水の水位検出方法を適用した実施例を説明したが、本発明によれば、貯留した水砕スラグの堆積による測定座閉塞の影響を受けず、ガス化炉の下部構造を考慮した熱電対配置によりクエンチ水へ流入する溶融スラグとの接触あるいは付着を防止し、溶融スラグの落下で発生する波、発生した蒸気および気泡による水面変動による温度変化を小さくし、高温部と接続したクエンチ部の腐食性を有したクエンチ水中に設置する熱電対の腐食を防ぎ、クエンチ水の水面位置を正確に検知することができる。
6 ガス化部
9 絞り部
9a 開口
10 クエンチ部
11 クエンチ水
12 水砕スラグ
TC(1〜6) 熱電対
20 制御装置
21 補給水供給弁
22 クエンチ水抜出弁
23 水砕スラグ排出弁
24 補給水

Claims (6)

  1. 石炭をガス化するガス化部から流下する溶融スラグをクエンチ水に落下させて急冷して破砕するクエンチ部を備えた石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法において、
    前記クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対の検出温度を入力し、上下に隣り合う熱電対の検出温度の差が最大となる一対の熱電対を求め、該一対の熱電対の間に前記クエンチ部の水面が位置するものとして前記クエンチ部の水位を検出することを特徴とする石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法。
  2. 前記ガス化部と前記クエンチ部との間に前記溶融スラグが流下する長方形の開口を有する絞り部が設けられ、前記複数の熱電対は、前記絞り部の長方形の開口の長辺側に対向する前記クエンチ部の壁面に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法。
  3. 前記クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対を1組として、前記クエンチ部の壁面の周方向に沿って間隔を空けて複数組配置し、各組の熱電対は垂直方向の高さ位置が同一の水平面に配置されてなり、
    前記水位検出部は、同一の水平面に設置された各組の熱電対の検出温度を平均して、平均検出温度の差が最大の前記一対の熱電対を求めて前記水位を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭ガス化装置のクエンチ水位検出方法。
  4. 石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化炉の下部に水を貯留したクエンチ部とを備えたガス化装置において、前記クエンチ部は、該クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて設置された複数の熱電対と、前記複数の熱電対による検出温度を入力して垂直方向に隣り合う2つの熱電対の検出温度の差を求め、該温度差が最大となる2つの熱電対の間に前記クエンチ部の水面が存在することを検出する水位検出部とを有することを特徴とする石炭ガス化装置。
  5. 前記ガス化部と前記クエンチ部との間に前記溶融スラグが流下する長方形の開口を有する絞り部が設けられ、前記複数の熱電対は、前記絞り部の長方形の開口の長辺側に対向する前記クエンチ部の壁面に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の石炭ガス化装置。
  6. 前記クエンチ部の垂直方向に間隔を空けて配置した複数の熱電対を1組として、前記クエンチ部の壁面の周方向に沿って間隔を空けて複数組配置し、各組の熱電対は垂直方向の高さ位置が同一の水平面に配置されてなり、
    前記水位検出部は、同一の水平面に設置された各組の熱電対の検出温度を平均して、平均検出温度の差が最大の前記一対の熱電対を求めて前記水位を検出することを特徴とする請求項4又は5に記載の石炭ガス化装置。
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JP2015137293A (ja) * 2014-01-21 2015-07-30 三菱日立パワーシステムズ株式会社 ガス化炉装置およびスラグ熱回収方法
CN110446774A (zh) * 2017-03-24 2019-11-12 洋马株式会社 气化装置
CN110462002A (zh) * 2017-03-24 2019-11-15 洋马株式会社 气化装置

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