JP4018554B2 - 熱分解溶融装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物あるいは産業廃棄物を熱分解処理する際に発生する熱分解残渣などの溶融対象物を溶融処理する熱分解溶融装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一般廃棄物や産業廃棄物を低酸素燃焼により熱分解処理し、燃料ガスを得る熱分解ガス化処理が行なわれている。この熱分解ガス化処理に伴って熱分解残渣が生じるが、この残渣は溶融炉で溶融処理される(例えば、特許文献1参照)。この残渣の溶融処理に関する従来技術を図4で説明する。
【0003】
熱分解残渣1は、残留炭素分と灰分が主成分である。この熱分解残渣1を溶融炉2で、高温で溶融処理することにより、炭素分はガス化して溶融ガスに変換し、灰分はスラグとして無害化、減容化する。溶融炉2は、燃焼物となる熱分解残渣1が吹き込まれる1300℃以上の高温の炉体3を有し、この炉体3内に図示していないが酸素を加えて、吹き込まれた熱分解残渣1を燃焼させる。熱分解残渣1は炉体3内において高温で燃焼、溶融されながら落下し、溶融炉2の底部にあるスラグプール4に着床してさらに加熱溶融され、溶融スラグとして出滓口5から流下する。流下した溶融スラグ6は、出滓口5よりも直径の大きいスラグシュート7を経由してスラグ水槽8まで自然落下し冷却固化される。
【0004】
また、燃焼時に発生する溶融ガスと飛灰は、スラグシュート7に連結された煙道9を経て、ガス洗浄装置10において洗浄され、飛灰の分離とガスの冷却とが行われる。飛灰を含んだ洗浄排水11は水処理設備12に送られ、固形分を含んだ処理水はフィルタープレス13で圧搾脱水され、固形分をフィルターケーキ14として分離する。
【0005】
ところが、上述した従来システムによると、出滓口5を流下した溶融スラグは粘性が高く、またスラグシュート7の温度は炉体3の内部より低いため、本来スラグシュート7の空間内を滴下すべき溶融スラグの一部が、スラグシュート7の上部壁面に沿って流れ、滞留してしまう。滞留した溶融スラグは壁面で凝固し、徐々に張り出して出滓口5を狭め、最終的には閉塞を招くおそれがある。このように、出滓の障害あるいは出滓口の閉塞に至った場合、処理を停止し、凝固スラグを除去しなければならないため、システムの操業に多大な影響を与える。
【0006】
また、フィルタケーキ14は、主成分の飛灰に重金属などの微量の有害成分が含まれている可能性があり、無害化処理を施す必要がある。さらに、フィルターケーキ14は相当の重量があるので、廃棄物として系外へ排出せずに再資源化することがリサイクルシステムには求められる。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−61813号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、溶融炉の底部に設けられた出滓口部に溶融物が付着し易く、出滓の障害や閉塞を招くことがあった。
【0010】
本発明の目的は、スラグシュート上部における、溶融スラグの滞留と凝固を防止した熱分解溶融装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による熱分解溶融装置は、溶融対象物を溶融させる溶融炉の底部に設けられた出滓口に対し、その開口面積より大きな横断面を有する筒状のスラグシュートを一体に連結した熱分解溶融装置であって、前記出滓口周囲のスラグシュート側の面に、この出滓口を囲む、縦断面が下方に向って鋭角に突起するエッジを、前記出滓口に対してそれぞれ同心状に複数条設けたことを特徴とする。
【0014】
また、複数状のエッジは、それぞれの内周面がほぼ垂直を成し、その垂直な内周面の下端から斜め上方に立ち上がる外周面により鋭角な縦断面を形成するものでもよい。
【0015】
これら複数状のエッジに対して、噴出方向が、それぞれエッジ外面への付着物を、エッジの内側下方に吹き飛ばすように設定されたノズルを設けるとよい。
【0016】
ノズルに対しては、酸化剤を供給する酸化剤供給設備を設ける。
【0017】
または、溶融対象物を溶融させるときに生じる溶融ガスを導入し、この溶融ガスをノズルに供給する溶融ガス導入設備を設けてもよい。
【0018】
さらに、ノズルに対し、酸化剤または溶融ガスのいずれかを選択供給させる切換手段を設けてもよい。
【0019】
また、エッジの先端部分に温度センサーを設置し、この温度センサーが設定温度以下を検出すると、酸化剤をノズルに供給するように構成してもよい。
【0022】
これらの発明では、出滓口周囲のスラグシュート側の面に、この出滓口を囲む、横断面が下方に向って鋭角に突起するエッジを形成したので、溶融スラグはこのエッジの先端からスラグシュート内の空間に滴下し、スラグシュートの天井面に沿って滞留・凝固することを有効に防止できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による熱分解溶融装置の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、熱分解残渣等の溶融対象物(以下、残渣として説明する)を高温で溶融させる溶融炉22の炉体23と、スラグシュート27との間に形成された出滓口25部分とを示している。図1において、残渣を溶融させる溶融炉22の底部には、溶融スラグを滞留させるスラグプール24を設けるとともに、これに隣接して出滓口25を設けている。また、この出滓口25に対し、その開口面積より大きな横断面を有する筒状のスラグシュート27が一体に連結されている。
【0026】
この出滓口25の周囲の、スラグシュート27側の面(スラグシュート27の天井面でもある)には、この出滓口25を囲むエッジ35を複数条、同心状に形成している。このエッジ35は、その縦断面が下方に向って鋭角に突起している。図の例では、エッジ35は、その内周面35aがほぼ垂直を成し、その垂直な内周面35aの下端から斜め上方に立ち上がる外周面35bにより、鋭角な縦断面を形成している。
【0027】
このように、出滓口25の周囲直下であるスラグシュート27の最上部に、中心軸方向下向きに傾斜したエッジ35を備えた液切り部36を設置している。エッジ35は、出滓口25とスラグシュート27の周壁との間に、前述したように複数条、数段に設置する。そして、各エッジ35は外周に行くに従って低くなるように配置する。
【0028】
上記構成において、溶融炉22内から出滓口25を流下した溶融スラグ26は、ほとんど出滓口25の直下に流下するものの、一部がスラグシュート27の上部に沿って裏漏りする。この場合、裏漏りした溶融スラグは最初のエッジ(最内周のエッジ)35に阻まれ、このエッジ35の先端部に集中し、ここから滴下する。沿面流下する液量が多い場合には、第一のエッジ35を乗り越えて第二のエッジ(一つ外側のエッジ)35に達し、ここから滴下する。さらに沿面流下の量が多い場合には、より外側のエッジ35に集液し、滴下させることができる。
【0029】
以上のように構成することにより、溶融スラグがスラグシュート27の上部壁面を伝って流れても、液切り部36のエッジ35から滞りなく滴下させることができる。このため、スラグシュート27の上部にスラグが凝固することを防止でき、出滓口25を閉塞させることなく、スムーズな出滓を継続することが可能になる。
【0030】
次に、図2で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、エッジ35に対して、ノズル37を設けたことを特徴とする。このノズル37は、その噴出方向が、エッジ35の外面への付着物を、エッジ35の内側(スラグシュート27の中心側)下方に吹き飛ばすように設定されている。
【0031】
すなわち、液切り部36の各エッジ35の下部断熱壁内にノズル37を埋設している。ノズル37は、上述のように、スラグシュート27の外周から中心軸方向にむけて配設し、噴出口はエッジ35の先端部に向けている。
【0032】
ノズル37の配管には酸素や空気等の酸化剤を供給する酸化剤供給設備38を接続し、これらの酸化剤を、流量を調節しながら噴出させる。また、残渣を溶融させるときに生じる溶融ガスを導入する溶融ガス導入設備39を設け、これをノズル37の配管に接続し、この溶融ガスをノズル37に供給できるように構成する。さらに、これらの配管には、ノズル37に対し、酸化剤または溶融ガスのいずれかを選択供給させる切換手段33を設ける。
【0033】
上記構成において、通常は、エッジ35からは溶融スラグ26が連続的に滴下しており問題はない。しかし、溶融炉22に投入する残渣の投入量が変動するなどの原因で、溶融スラグの温度が低下すると、エッジ35の付近で凝固してしまう場合も想定される。凝固スラグが厚みを増してくると、出滓口25の閉塞をひきおこすので、これを除去する必要がある。
【0034】
通常、溶融炉22において、残渣をガス化溶融する際、酸素不足燃焼で十分炉体23の温度を維持することができるため、発生した溶融ガスには可燃成分が多量に含まれている。そこで、ノズル37に接続された酸化剤供給設備38から酸化剤を供給すると、ノズル37から噴出した酸化剤は、溶融ガスの可燃成分と反応して火炎を噴出する。このため、エッジ35付近は高温に加熱され、凝固スラグを溶融し、滴下させることができる。
【0035】
また、溶融ガスは、溶融炉22内からスラッジシュート27内に向って出滓口25を通過した後、スラグシュート27の入口部で外側に広がって流れるので、流下する溶融スラグには外壁方向への力がかかり、壁面流下を助長する。そこで、ノズル37に接続された溶融ガス導入設備39から溶融ガスを導入し、中心軸方向にふきつけることによって、溶融スラグをできる限り鉛直方向に流下させることが可能になる。
【0036】
このように、液切り部36にノズル37を設置し、酸化剤を導入することによって、エッジ35に凝固するスラグを溶融し除去することが可能になる。また、ノズル37に溶融ガスを流すことで、壁面流下を抑制することもできる。酸化剤を用いて凝固スラグを燃焼させる場合には、燃料として溶融ガス中の可燃成分を利用するため、ランニングコストを低減することができる。
【0037】
次に、図3で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、エッジ35の先端部分に温度センサー40を設置し、この温度センサー40が設定温度以下を検出すると、酸化剤をノズル37に供給することを特徴とする
すなわち、エッジ35の内部に温度センサー40を設置し、エッジ35の温度を監視する。そして、エッジ35の温度低下を検知した場合は、コントローラ41により酸化剤供給設備38を動作させ、酸化剤をノズル37に供給するようにしている。
【0038】
上記構成において、エッジ35にスラグが凝固すると、表面に断熱層が形成されることになり、温度が低下する。これによって、液切り部36へのスラグの凝固を常時監視することが可能なる。したがって、温度センサー40によって温度低下を検知した場合には、コントローラ41によって酸化剤供給設備38から酸化剤をノズル37に供給して、固着したスラグを自動的に溶融除去することができる。なお、コントローラ41は、温度が復旧すると酸化剤の供給を停止する制御を行う。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融炉のスラグシュート上部で溶融スラグが滞留、凝固することを防止できるので、出滓の障害あるいは閉塞によるシステム停止に至ることのなく、安定操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱分解溶融装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1 溶融対象物
14 固形物
22 溶融炉
25 出滓口
27 スラッジシュート
33 切換手段
35 エッジ
35a 内周面
35b 外周面
37 ノズル
38 酸化剤供給設備
39 溶融ガス導入設備
40 温度センサー
Claims (7)
- 溶融対象物を溶融させる溶融炉の底部に設けられた出滓口に対し、その開口面積より大きな横断面を有する筒状のスラグシュートを一体に連結した熱分解溶融装置であって、
前記出滓口周囲のスラグシュート側の面に、この出滓口を囲む、縦断面が下方に向って鋭角に突起するエッジを、前記出滓口に対してそれぞれ同心状に複数条設けたことを特徴とする熱分解溶融装置。 - 複数状のエッジは、それぞれの内周面がほぼ垂直を成し、その垂直な内周面の下端から斜め上方に立ち上がる外周面により鋭角な縦断面を形成することを特徴とする請求項1に記載の熱分解溶融装置。
- 複数状のエッジに対して、噴出方向が、それぞれエッジ外面への付着物を、エッジの内側下方に吹き飛ばすように設定されたノズルを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱分解溶融装置。
- ノズルに酸化剤を供給する酸化剤供給設備を有することを特徴とする請求項3に記載の熱分解溶融装置。
- 溶融対象物を溶融させるときに生じる溶融ガスを導入し、この溶融ガスをノズルに供給する溶融ガス導入設備を有することを特徴とする請求項3に記載の熱分解溶融装置。
- ノズルに対し、酸化剤または溶融ガスのいずれかを選択供給させる切換手段を有することを特徴とする請求項3に記載の熱分解溶融装置。
- エッジの先端部分に温度センサーを設置し、この温度センサーが設定温度以下を検出すると、酸化剤をノズルに供給することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の熱分解溶融装置。
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