JP2013240348A - γ−ポリグルタミン酸の糸引き性向上方法 - Google Patents

γ−ポリグルタミン酸の糸引き性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】納豆γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】納豆において、γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを1.8質量倍以上含むように含有させ、納豆γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる。
【選択図】なし

Description

本発明はγ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる技術に関する。詳しくは、γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを所定量以上含むように含有させることを特徴とする、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる技術に関する。
豆類の種子は栄養価が高く、小麦や米など穀類に比べて乾燥や寒さに強い種類が多い。そのため、世界中の様々な民族で、主食と混ぜて消費したり、加工食品として用いられたり、基本的な食材として用いられている。
特に‘大豆’は、植物では稀にタンパク質の含量が極めて高く、東アジアにおいては古くから食経験が豊富であり、多くの加工食品が発達している。
現在、我が国においては、レトルトされた煮豆など、保存性のある豆加工食品が商品として流通している
しかし、発酵食品である納豆は、その嗜好性の故にチルド(低温)の状態で流通されていることが一般的である。
また、納豆は、加熱等の殺菌を行うことができず、仮に殺菌すると、苦味が出たり、糸がなくなったり、アンモニア臭が出たりして好ましくないものとなる。さらに、製造工程においても、煩雑となる問題もある。
このような中、一般的に流通されている納豆とは異なる商品の提案として、インスタント納豆などが提案されている(特許文献1〜3)。
これらのインスタント納豆は、常温流通を可能とするものである。しかし以下のように、嗜好性の点で大きな問題がある。
具体的には‘特許文献1’に記載のものは、単に、納豆を真空乾燥法などで乾燥し、粉末化した粉末納豆に関するものである。そのため、通常の納豆の食感や風味からは程遠いものである。
また‘特許文献2’に記載のものは、納豆に水を加えて真空凍結乾燥したものであり、これを冷水にて復元して食するインスタント納豆に関するものである。
当該インスタント納豆は、大豆が真空凍結乾燥及び復元の工程を経るため、通常の納豆とは程遠い食感のものである。その上、復元のために10分間もの時間を要するという難点がある。
また‘特許文献3’に記載のものは、納豆を真空凍結乾燥した後、納豆の外層部と内層部を分離し、内層部に熱水を加えて復元した後、外層部を加えるインスタント納豆に関するものである。これも特許文献2と同様に、大豆が真空凍結乾燥及び復元の工程を経るために通常の納豆とは程遠い食感のものである。さらに、当該豆の内層部は、外皮が取り除かれているため、通常の納豆で感じられる大豆の張りのある食感を感じられないものとなっている。その上、復元のために熱水の用意と5分間の蒸らし工程を要するという難点がある。
特開平9−271346号公報 特開昭53−104755号公報 特開昭53−6450号公報
そこで、本発明では、上記従来技術の課題を解決し、従来の納豆よりも嗜好性の高い豆加工食品(特には、納豆様の豆加工食品)を製造する方法を提供することを目的とする。
さらに本発明では、所望により、従来の納豆では不可能であった常温流通を可能とする豆加工食品(特には、納豆様の豆加工食品)を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、煮豆とγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)を含有する組成物とを混合するだけで、食感や風味が極めて良好な(嗜好性が高い)納豆様の豆加工食品が製造できることを見出した。
そして本発明者は、前記煮豆とγ-PGA含有組成物とを、包装用容器にそれぞれ別途に密封充填し、これらを含むように梱包することによって、消費者が極めて簡便に食べることができる豆加工食品製造用セットが製造できることを見出した。
また、本発明者は、γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを所定量以上含むように含有させることにより、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
即ち、請求項1に係る本発明は、γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを1.8質量倍以上含むように含有させることを特徴とする、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる方法、に関するものである。
また、請求項2に係る本発明は、γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを3.7質量倍以下で含むように含有させるものである、請求項1に記載の方法、に関するものである。
また、請求項3に係る本発明は、γ-ポリグルタミン酸1gに対して7.5〜130gの水分を含むように含有させるものである、請求項1又は2に記載の方法、に関するものである。
また、請求項4に係る本発明は、デキストリンを含有することを特徴とする、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性向上用組成物、に関するものである。
また、請求項5に係る本発明は、醤油を含有するものである、請求項4に記載の組成物、に関するものである。
また、請求項6に係る本発明は、包装用容器に充填された液体状のものである、請求項4又は5に記載の組成物、に関するものである。
・本発明の豆加工食品
本発明は、従来の納豆よりも嗜好性の高い豆加工食品を提供する。具体的には、本発明は、納豆ではないが納豆っぽい風味・食感を有している納豆の代替品となる豆加工食品を提供する。また、本発明の豆加工食品は、豆の栄養分は確保されたままのものとなる。
また、本発明の豆加工食品は、煮豆をレトルト処理して流通させれば、常温流通が可能となり、従来の納豆には無かった画期的な商品流通形態を提供できる技術である。これは、防腐効果を高めた状態(防腐剤、防腐効果の高い調味料の使用など)で流通させても同様のことが可能となる。
なお、通常の納豆は、豆の発酵工程により苦味が出たり甘みが減るなどの問題点があるが、本発明の豆加工食品は発酵工程を伴わずに製造が可能であるので、このような問題でさえも解消したものとなる。
また、発酵を伴わないことより、豆そのものの張りが維持されるため、通常の発酵を経ている納豆よりも好まれる食感のものになる。
さらに、本発明は、消費者が極めて簡便に食べられる(通常の納豆を食する程度の手間で食べられる)形態の豆加工食品製造セットの提供を可能とする。
また本発明は、納豆のネバ成分を豆と別々に混合できるものなので、糸引き状態を自由に調整することが可能となる。
・特許文献1〜3との対比
また、上記特許文献1〜3のインスタント納豆は、一度納豆を製造することが工程上必須であるが、本発明の豆加工食品では、その工程を必須としないものである。
さらに本発明は、特許文献1〜3のように乾燥・復元などの工程(特に特許文献3では、豆の外皮と中身を分離している)を踏まないで製造が可能なので、豆らしい好ましい食感が味わえるものである。
なお、特許文献3のインスタント納豆は、粘物質を分離して後で混合する点では本発明の豆加工食品と似ているが、特許文献3の外層部には外皮も含まれるので、ざらつきのある食感(好ましくない食感)となる。
なお、当該外皮は、発酵を経ることで苦味を有するものとなり、混入すると味の点で好ましくないものとなる。
一方、本発明の豆加工食品では、煮豆に納豆のネバ成分だけを混合するものであるので、当該外皮のような食感や風味に悪影響を与える成分を含まないものとなる。また、風味等を考慮して、その他に混合するものを加えることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、包装用容器に充填された煮豆と、包装用容器に充填されたγ-ポリグルタミン酸含有組成物と、を含むように梱包してなる豆加工食品製造用セット、に関する。
〔煮豆〕
・豆の種類
本発明に用いる豆としては、煮豆として食することが可能な豆類の種子であれば、いかなるものをも用いることができる。
具体的には、大豆(ダイズ)、小豆(アズキ)、ササゲ、インゲンマメ、ベニハナインゲン、空豆(ソラマメ)、エンドウ、落花生(ラッカセイ)、リョクトウ、レンズマメ、ガラスマメ、ヒヨコマメ、などを挙げることができる。
特には、後述する糸引き成分との相性の観点から、大豆を用いることが望ましい。
また、豆の形状としては、食感等の点から豆をそのまま用いることが望ましいが、割砕等を行って引き割り状にしたものを用いることができる。
・煮豆調製
本発明における煮豆は、常法により製造(調製)できるが、以下の i)及び ii)に示す製造例を挙げることができる。
i)まず、乾燥豆を水中に6〜24時間程度浸漬した後、90〜100℃の湯で20〜50分煮込む方法を採用することができる。また、水分を含んだ豆(例えば、水に浸漬した豆など)を水切りして、100〜135℃の蒸気で10〜30分蒸煮処理するなどの方法も採用することができる。
得られた煮豆は、包装用容器に充填することで、本発明における豆加工食品製造セットの煮豆とすることができる。
なお、好ましくは、耐熱性の包装用容器に密封充填し、加熱処理(具体的には、レトルト処理)を行うことが望ましい。
ここで、レトルト処理とは、内容物を、耐熱性を有する包装用容器に密封充填した後、いわゆる商業的無菌状態になるよう通常110〜125℃で5〜40分程度の高温高圧処理を行う方法のことである。
当該レトルト処理(殺菌)を行うことによって、常温流通が可能な煮豆を得ることができる。
ii)また、水分を含んだ豆(例えば浸漬豆など)を耐熱性の包装用容器に充填した後、前記 i)の条件での加熱処理を行うことによっても、本発明における豆加工食品製造セットの煮豆を得ることができる。
なお、当該加熱処理をレトルト処理で行うことによって、常温流通が可能な煮豆を得ることができる。
・包装用容器
当該工程において、煮豆の充填に用いる包装用容器としては、充填(包装)が可能なものであればどんな容器を用いることができる。一般的にはナイロン、PET、ポリエチレン等を用いた合成樹脂性の袋状容器や、耐水性を有する紙製の容器(紙パック状容器)、などを用いることができる。
好ましくは、密封可能な形状のものが望ましいが、密封されない形状(例えば、納豆の発泡樹脂製容器)であっても採用することができる。
なお、前記 i)及び ii)の条件での加熱処理を行う場合には、耐熱性を有し且つ密封可能な包装用容器を用いることを要する。
このような包装用容器としては、金属製の缶、耐熱合成樹脂製の袋(パウチ)やトレー等を用いることができる。
〔γ-PGA含有組成物〕
・γ-PGA
本発明におけるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)とは、グルタミン酸がγ-アミド結合で重合したポリマーである。当該物質は、納豆の糸引き成分(ネバ成分)における主成分である。
本発明で用いることができるγ-PGAは、Bacillus属細菌の培養物から得ることができる。Bacillus属細菌は、培養の過程においてγ-PGAを産生し、菌体外に放出する性質を有する。
ここで、Bacillus属細菌としては、Bacillus subtilisに属する納豆菌や枯草菌などの細菌を挙げることができる。特には、豆加工食品に納豆らしい香り、風味を付与しやすい点で、納豆菌(例えば、宮城野菌、成瀬菌、高橋菌など)を用いることが好ましい。
I)本発明におけるγ-PGAを得る方法として、具体的には、Bacillus属細菌を培養液で培養し、培養後の培養液(液体培養物)から得る方法を挙げることができる。
ここで用いる培養液(液体培地)としては、グルタミン酸やグルコースを主原料とする合成培地や、大豆煮汁、豆乳などを含む培地を用いることができる。
また、大豆煮汁、豆乳などをそのまま培養液として用いることもできる。特に、煮大豆の製造過程で生じる大豆煮汁を用いた場合、廃物利用の観点から経済的であり且つ環境にもやさしい点で好ましい。
II)また、別の方法としては、Bacillus属細菌の固体培養物から得る方法を挙げることができる。
ここで、固体培養物としては、例えば大豆(大豆粉や脱脂加工大豆も含む)に、Bacillus属細菌を植菌し培養したもの、;前記培養液を寒天等で固めた固体培地にBacillus属細菌を植菌し培養したもの、;などを挙げることができる。特には、大豆に納豆菌を植菌して培養したもの(納豆そのもの)を用いることが望ましい。
本発明では、このような固体培養物を水溶性の液体(具体的には、水)に浸漬し、水溶性成分を抽出することによって、γ-PGAを含む成分を得ることができる。
本発明では、γ-PGAの生産効率が高い点を考慮すると、上記 I)の方法の液体培養物から得る方法が好適である。
・γ-PGA含有組成物
本発明における「γ-PGA含有組成物」とは、納豆の糸引き成分の主成分であるγ-PGAを含有させた組成物を指すものである。
当該組成物の形態としては、固体状(例えば、粉末状)の組成物、;半固形状の組成物(例えば、ゲル状)、;液体状の組成物など、;様々なものが採用できる。なお、いずれの形態であっても、水分を含んだ状態では、納豆様の糸引き(ネバ)を発生させる性質を有するものとなる。
当該組成物として具体的には、上記 I)の方法によって得られたγ-PGAを含む液体培養物、上記II)の方法によって得られたγ-PGAを含む抽出液、を乾燥して製造することができる。
ここでの乾燥方法は、特に限定されるものではないが、熱をかけると糸引きが弱くなるため、加熱が必須ではない乾燥方法によって行うことが好ましい。具体的には、凍結乾燥法、スプレー乾燥法、真空乾燥法などで行うことが好適である。
特に、凍結乾燥法によって調製した場合、粉末は多孔質状となるため、水分を加えた際に糸引きが強く速やかに再現され好ましいものとなる。
・調味料
また、本発明のγ-PGA含有組成物は、調味料を含有する組成物とすることもできる。
ここで、γ-PGA含有組成物中に含有させることができる調味料としては、例えば、醤油、だし類、食酢、酒類、食塩、糖類、旨味調味料、などを挙げることができる。
特に、本発明の豆加工食品は、醤油などを含んだ調味液で味付けして食すことより納豆のような風味を味わうことができるため、少なくとも醤油を含むことが望ましい。また、既存の納豆のたれ(もしくはその成分)を含有させることも望ましい。
調味料を含むγ-PGA含有組成物の形態としては、上記のように固体状、半固形上、液体状、など、様々な形態にすることができる。
例えば、γ-PGA含有粉末を液体の調味料に溶解したもの、;γ-PGA含有粉末と調味料粉末(液体調味料成分を粉末化したものを含む)を混合したもの、;γ-PGAを含む液体と液体の調味料を混合したもの、;γ-PGAを含む液体に調味料粉末を溶解させたもの、を挙げることができる。
なお、γ-PGAは高塩分や低pHの条件下での安定性が低い性質があるため、γ-PGAとの液体での共存が難しい調味料を含有させたい場合は、γ-PGA含有粉末と調味料粉末を混合する形態が有効である。
・糖類
また、本発明のγ-PGA含有組成物は、さらに糖類を含有する組成物とすることもできる。
本発明では、当該γ-PGA含有組成物中に糖類を含有させることによって、糸がよく伸びて切れにくくなる(γ-PGAの糸引きを向上させる)性質を付与することが可能となる。
ここで当該作用を有する糖類としては、具体的には、デキストリン、砂糖、ぶどう糖、果糖、水あめ、糖アルコールなど、を挙げることができる。特に、デキストリンが好適である。
糖類の含有量としては、γ-PGAの質量の1.8倍量以上とすると効果が高くなり好ましい。
なお、糖類含有量の上限は特に無く、煮豆との混合時に糖類が溶解して液状となる濃度であればよい。ただし、糖類によっては甘味を付与することになるため、求める風味に合わせて含有量を調整する必要がある。
糖類を含むγ-PGA含有組成物の形態としては、上記のように固体状、半固形上、液体状、など、様々な形態にすることができる。
例えば、PGA含有粉末と粉末状の糖類とを予め混合したもの、;γ-PGAを含む液体に粉末状の糖類を溶解させたもの、;γ-PGAを含む液体と糖液を混合したもの、;などを挙げることができる。
・包装用容器
上記のようにして調製したγ-PGA含有組成物は、包装用容器に充填することで、本発明における豆加工食品製造セットのγ-PGA含有組成物とすることができる。
当該包装用容器としては、充填(好ましくは密封充填)が可能なものであれば、どんな容器を用いることもできる。一般的にはナイロン、PET、ポリエチレン等を用いた合成樹脂性の袋状容器を用いることができる。また、小型のキャップ付き容器を用いることも可能である。
〔豆加工食品〕
本発明では、上記のようにして得たγ-PGA含有組成物と、前記煮豆と混合することによって、納豆のように糸引きのある豆加工食品(納豆様豆加工食品)を得ることができる。
本発明の豆加工食品は、醤油などを含んだ調味液で味付けして食すことより納豆のような風味を味わうことができる。
・煮豆とγ-PGA含有組成物との混合割合
煮豆とγ-PGA含有組成物との混合割合は、糸引き度合いの好みに合わせて調整することができるが、好ましくは、煮豆100質量部に対して、γ-PGA含有組成物中のγ-PGAの質量が0.05〜2.2質量部となるように調整することが好適である。さらには、0.07〜1.5質量部となるように調整することが望ましい。
γ-PGAの量が当該所定範囲より少ない場合、糸引きが感じにくくなり好ましくない。また、γ-PGAの量が当該所定範囲より多い場合、ネバの中に煮豆が浮いているような形となるため見た目も美しくなく、また大豆の食感を感じにくくなり好ましくない。
また、γ-PGA含有組成物の全体としての混合量としては、γ-PGA含有組成物の組成や性状(固体、半固形、液体など)に応じて一概には決められないものであるが、実質的には煮豆100質量部に対して、2〜200質量部程度(特に8〜50質量部)とすることが好ましい。
・水分
煮豆とγ-PGA含有組成物を混合する際において、一定範囲量の水分が含まれない場合、煮豆とγ-PGA含有組成物との混合が困難となる。例えば、γ-PGA含有組成物が固形状(例えば粉末状)の場合、水分を加えないで煮豆と混合することは極めて困難であり、納豆様の糸引きを十分に得ることはできない。
そこで、煮豆との混合の際には、γ-PGA 1g当たり、7.5〜130g(好ましくは15〜45g)の水分を同時に存在することが好ましい。当該値より水分が少ない場合、糸引きの粘性が強すぎて混ぜにくくなり、食感の点でも好ましくない。
また、これより水分が多い場合、糸引きが弱くなってしまい納豆様の食品と感じにくくなり、食感の点で好ましくない。
本発明では、γ-PGA含有組成物を予め液体の状態にすることで、前記水分範囲に調整することが可能となる。
また、γ-PGA含有組成物を粉末とする場合は、煮大豆やγ-PGA含有組成物とは、別途に包装用容器に充填された水を含む液体(水、調味料など)を供給することで、煮豆との混合時に前記水分条件を調整することが可能となる。
〔豆加工食品製造用セット〕
本発明では、前記包装用容器に充填された煮豆と、;前記包装用容器に充填されたγ-PGA含有組成物と、;を含むように梱包することで、豆加工食品製造セットを製造することが可能となる。
ここでの梱包とは、これらを格納できる包装容器にて梱包する形態に加えて、単にテープなどで一くくりにするなどの包装方法も含むものである。つまり、消費者が一つの商品として認識しうる程度に一体となっていれば足りるものである。
なお、γ-PGA含有組成物が、前記調味料、前記糖類、水分を含んでいない態様の場合、前記調味料、前記糖類、水を含む液体、(もしくは、これらの混合物)を、包装用容器に充填(好ましくは密封充填)したものを、豆加工食品製造用セットの内容物として一緒に梱包させることができる。
また、必要に応じて、カラシ、ワサビ、きざみノリ、フリーズドライしたネギ、炒りゴマなどの薬味を包装用容器に充填(好ましくは密封充填)して、一緒に梱包させることもできる。
なお、これらの包装用容器への充填は、前記γ-PGA含有組成物の段落で記載した方法と同様にして行うことができる。
また、本発明の豆加工食品製造用セットにおける梱包される内容物(煮豆、γ-PGA含有組成物、その他必要に応じた内容物など)は、それぞれを別々の包装用容器に充填する態様を採用することができるが、;1つの包装容器を用いてそれぞれの内容物を物理的に隔離された状態で充填する態様を採用することもできる。
例えば、隔離された包装空間を複数(例えば2〜3箇所)有する1つの包装用容器の別々の包装空間に、それぞれの内容物を充填することもできる。
本発明の豆加工食品製造用セットにおいて、前記煮豆を密封可能な容器に充填して加熱処理(特にレトルト処理)を行った場合には、常温での出荷流通(常温流通)が可能となり好適である。
なお、前記煮豆にレトルト処理を行わなかった場合や、密封充填が可能な包装容器を用いない場合でも、低温保存状態での出荷流通(従来通りのチルド流通)での供給が可能である。
本発明の豆加工食品製造用セットは、前記包装用容器の各包装を解き、前記煮豆や前記γ-PGA含有組成物、(さらには、その他必要に応じた内容物)、を混合することで、納豆様の豆加工食品を得ることができる。
当該混合は、それぞれを包装用容器から取り出して、小鉢等に移してから行ってもよいし、;ある内容物(例えば煮豆)が入っている包装用容器に、他の内容物(例えばγ-PGA含有組成物など)を移して、混合する態様を採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
〔測定例1〕 γ-PGA含量の測定
本実施例におけるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)含量の分析は、常法(例えば、日本食品工学会誌、142巻、11号、p.878〜886(1995年)参照)に準じて、以下のように行った。
下記実施例における各試料の粉末0.1gを水10mlに溶解し、4.2%トリクロロ酢酸溶液15mlを加えて撹拌し、遠心分離(12,000rpm、10分、4℃)し、上清を得た。
得られた上清20mlをビーカーにとり、NaOHでpHを7.0に調整後、25mlにフィルアップした。その液5mlとエタノール20mlを混和し、氷上で10分以上放置したのち遠心分離を行い、上清を捨てて沈殿を得た。
その沈殿に20mMリン酸緩衝液(pH7.0)(以下リン酸緩衝液)を10ml加え、溶解させたものを測定液とした。
そして、リン酸緩衝液2.4mlが入った試験管に、当該調製した測定液0.1mlを加え、撹拌した。その後、0.1Mセタブロン/1M NaCl溶液を0.5ml加えて撹拌し、30℃で20分放置したものを、400nmにおける吸光度を測定した。
γ-PGA標準品(シグマ社製)を0.1mg/mlになるようリン酸緩衝液に溶解したもので検量線を作成し、測定液のγ-PGA濃度を求めた。そして、当該測定値から、試料粉末中のγ-PGA含量を計算した。
〔実施例1〕 既存の納豆等との品質比較
(1)納豆様豆加工食品の調製
・γ-PGA含有粉末の調製
市販納豆「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)の納豆1000gに、水1000gを加え、スパーテルで時々攪拌しながら室温で2時間放置した。その後、豆をザルで濾して除き、ネバ成分を水抽出したγ-PGA含有液800gを得た。
そのうちの500gを凍結乾燥し、γ-PGA含有粉末30gを得た。得られた当該粉末3gを合成樹脂の小袋に充填した。
なお、当該粉末は、73mg/gのγ-PGAを含有するものであった。
・煮豆の調製
乾燥大豆を水に16時間浸漬し、水切りを行い、50gをレトルト用袋に充填して120℃で30分の高温高圧処理を行い、袋詰めされた煮大豆を得た。
・納豆のたれの調製
納豆のたれ(醤油13質量%、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖20質量%を含有)5.5gを合成樹脂製小袋に充填した。
・豆加工食品製造用セット
上記のようにして調製した包装用容器入りのγ-PGA含有粉末、煮大豆、納豆のたれを、合成樹脂製の袋に梱包し、豆加工食品製造用セットを製造した。
・豆加工食品の調製
そして、これらをそれぞれ包装用容器から出して小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料1-1)を調製した。
(2)通常の納豆(比較対照品)の調製
市販納豆の「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)の納豆部分50gと、上記(1)の納豆のたれ5.5gを小鉢の中で混ぜ合わせて、通常の納豆(試料1-2:比較対照品)を調製した。
(3)乾燥納豆復元品(比較対照品)の調製
特許文献3(特開昭53-6450号公報)に記載の方法に準拠し、市販納豆の「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)を凍結乾燥し、外層部と内層部を分離した。
そして、内層部23gに、熱水を加えて復元した後、外層部3g、水13g、上記(1)の納豆のたれ5.5g、を小鉢の中で混ぜ合わせて、乾燥納豆復元品(試料1-3:比較対照品)を調製した。
(4)官能評価
上記のようにして調製した納豆様食品(試料1-1)、;通常の納豆(試料1-2)、;乾燥納豆復元品(試料1-3)、;について、表1の各項目について、熟練した官能検査員により官能検査にて評価した。
なお、評価は、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の3段階で評価した。
その結果、当該納豆様食品(試料1-1)は、通常の納豆(試料1-2)や乾燥納豆復元品(試料1-3)に比べて、嗜好性の高い豆加工食品であることが明らかになった。
具体的には、‘香り’は納豆の香りに加えて煮豆の甘い香りを有する好適なものであった。また、‘食感’は、歯ごたえがあってもっちりしている好適なものであった。そして、‘味’は、甘く苦味がない好適なものであった。
Figure 2013240348
〔実施例2〕 γ-PGA含有粉末の必要量の検討
表2に記載の各所定量のγ-PGA含有粉末(実施例1(1)で調製したもの)を4質量倍の水に溶解した各液を得た。
次いで、当該γ-PGA含有粉末を溶解した各液と、実施例1(1)で調製した煮大豆50gとを小鉢に入れ、実施例1(1)で調製した納豆のたれ5gを加えて、はしで攪拌し、納豆様の食品ができるかどうかを調べた(試料2-1〜2-8)。
そして、表2の項目について、熟練した官能検査員により官能検査にて評価した。なお、評価は、「◎」:特に好ましい、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の4段階で評価した。
評価の結果、煮豆100質量部に対して0.05〜2.2質量部のγ-PGAを添加し攪拌することで、好適な納豆様の食品が得られることが明らかになった。また、当該添加量は、0.07〜1.5質量部の場合により好ましく、0.15〜0.44質量部の場合に最も好ましいことがわかった。
Figure 2013240348
〔実施例3〕 糖類添加の検討
実施例2のγ-PGA含有粉末3gを添加した試験区(試料2-5)において、表3に記載の各糖類を添加して、納豆様食品を調製した(試料3-2〜3-5)。なお、糖類は、デキストリン(松谷工業株式会社製パインデックス#6)、砂糖(伊藤忠製糖株式会社製上白糖)、水あめ(加藤化学株式会社製フジシラップA75S(水分25%含有))、ソルビトール(三菱商事フードテック株式会社製ソルビットL-70(水分30%含有))を使用した。
また、対照として、糖類を添加しないで、納豆様食品を調製した(試料3-1)。
そして、これらの試料について、糸引き(ネバの伸びの好ましさ)を評価した。なお、評価は、「◎」:特に好ましい、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の4段階で評価した。
その結果、糖類を添加した4試験区(試料3-2〜3-5)は、糖類を添加しない試験区(試料3-1)と比べていずれもネバがよく伸びて切れにくくなり好ましかった。中でもデキストリン(試料3-2)の糸引きが最も好ましかった。
Figure 2013240348
〔実施例4〕 糖類の添加量の検討
実施例2のγ-PGA含有粉末3gを添加した試験区(試料2-5)において、表4に記載のデキストリン(松谷工業株式会社製パインデックス#6)の量を変化させながら添加して、ネバの伸びの好ましさを評価した。なお、糸引き(ネバの伸びの好ましさ)の評価は、実施例3と同様にして行った。
その結果、デキストリンをγ-PGAに対して、1.8倍以上添加した場合にはネバがよく伸びて切れにくくなり、より好ましい糸引きとなることが分かった。
Figure 2013240348
〔実施例5〕 納豆菌培養液体培地からのγ-PGA含有粉末の製造
(1)納豆様豆加工食品の調製
・γ-PGA含有粉末の調製
乾燥大豆を水に16時間浸漬し、一度水切りをした後、乾燥大豆1質量部に対して合計が3質量部となるように水と浸漬大豆を鍋に入れた。加熱沸騰後、沸騰が継続する程度の弱火で1時間煮た後煮汁をざるで濾して大豆煮汁を得た。
その大豆煮汁20%、グルタミン酸ナトリウム1水和物4%、グルコース5%、リン酸2水素カリウム0.25%、酵母エキス0.5%、ビオチン0.1ppm、pH7.0に調整した滅菌培地に納豆菌(Bacillus subtilis OUV23481株)を植菌し、37℃、通気量1VVM、撹拌速度120rpmで3日間培養を行ったところ、γ-PGAを含有する培養液が得られた。
得られた培養液を凍結乾燥し、γ-PGA含有粉末を得た。得られた当該粉末3gを合成樹脂の小袋に充填した。
なお、当該粉末は、130mg/gのγ-PGAを含有するものであった。
・豆加工食品製造用セット
当該γ-PGA含有粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各包装用容器に充填されたγ-PGA含有粉末、煮大豆、納豆たれを、合成樹脂製の袋に梱包し、豆加工食品製造用セットを製造した。
・豆加工食品の調製
そして、これらをそれぞれ包装用容器から出して小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料5-1)を調製した。
(2)官能評価
上記のようにして調製した納豆様食品(試料5-1)について、実施例1(4)と同様の評価を行った。
その結果、当該納豆様食品は、実施例1(1)で調製した納豆様食品(試料1-1)と同様に、嗜好性が高く好ましい豆加工食品であることが確認できた。
〔実施例6〕 γ-PGA含有粉末が予めタレに混合された実施形態
(1)納豆様豆加工食品の調製
・γ-PGA含有粉末を溶解した納豆たれ
実施例1(1)におけるγ-PGA含有粉末3gと納豆のたれ5.5gを、予め混合して液体状のγ-PGA含有組成物を得、それを合成樹脂製小袋に充填した。
・豆加工食品製造用セット
当該γ-PGA含有粉末を溶解した納豆たれと、実施例1(1)と同様にして袋詰めされた煮大豆を、合成樹脂製の袋(パウチ)に充填し、豆加工食品製造用セットを製造した。
そして、これらをそれぞれ包装用容器から出して小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料6-1)を調製した。
(2)官能評価
上記のようにして調製した納豆様食品(試料6-1)について、実施例1(4)と同様の評価を行った。
その結果、当該納豆様食品は、実施例1(1)で調製した納豆様食品(試料1-1)と同様に、嗜好性が高く好ましい豆加工食品であることが確認できた。
本発明は、従来の納豆よりも食感及び風味が極めて好ましい豆加工食品(特に、納豆様の豆加工食品)を製造する方法を提供する。また、本発明では、煮豆のレトルト処理を行う場合には、常温流通が可能な豆加工食品(特に、納豆様の豆加工食品)を製造する方法を提供する。
これにより、本発明は、従来の豆加工食品(レトルト煮豆、通常の納豆、納豆加工食品など)には無かった画期的な商品を、提供できる技術となることが期待される。

Claims (6)

  1. γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを1.8質量倍以上含むように含有させることを特徴とする、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性を向上させる方法。
  2. γ-ポリグルタミン酸の質量に対してデキストリンを3.7質量倍以下で含むように含有させるものである、請求項1に記載の方法。
  3. γ-ポリグルタミン酸1gに対して7.5〜130gの水分を含むように含有させるものである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. デキストリンを含有することを特徴とする、γ-ポリグルタミン酸の糸引き性向上用組成物。
  5. 醤油を含有するものである、請求項4に記載の組成物。
  6. 包装用容器に充填された液体状のものである、請求項4又は5に記載の組成物。
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