JP2013048573A - 納豆様豆加工食品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の納豆よりも嗜好性の高い納豆様豆加工食品を製造する方法を提供する。
【解決手段】煮豆にγ-ポリグルタミン酸含有組成物を添加する工程、又は、γ-ポリグルタミン酸含有組成物に煮豆を添加する工程、を含む納豆様豆加工食品の製造方法。該製造方法により得られた納豆様豆加工食品は、‘煮豆の風味と食感(通常は発酵によって失われる風味や食感)’と‘納豆の風味、ネバの食感’を併せ持つ。
【選択図】図1

Description

本発明は、嗜好性が極めて高い新規の納豆様豆加工食品を製造する方法に関する。
豆類の種子は栄養価が高く、小麦や米など穀類に比べて乾燥や寒さに強い種類が多い。そのため、世界中の様々な民族で、主食と混ぜて消費したり、加工食品として用いられたり、基本的な食材として用いられている。
特に‘大豆’は、植物では稀にタンパク質の含量が極めて高く、東アジアにおいては古くから食経験が豊富であり、多くの加工食品が発達している。
例えば、中国では、大豆を麹菌で発酵させた発酵食品であるトウチ(我国では同様の食品として寺納豆)が知られている。また、朝鮮半島では、‘清麹醤(チョングッチャン)’、タイやラオスでの‘トゥア・ナオ’、東南アジア諸国での‘テンペ’などの大豆発酵食品が知られている。
我国においては、大豆発酵食品として、大豆を納豆菌で発酵させた‘糸引き納豆’(いわゆる納豆)が、最も一般的に食されている。
納豆は、大豆タンパク質を豊富に含み栄養価が高く、また独特のネバ成分に由来する風味や食感を有し、白米を炊いたご飯との相性が抜群に良い。
ところが、納豆の発酵過程では、煮豆の甘味が失われ、代わりに発酵によるアンモニア臭や苦味が付与される傾向がある。このような独特な風味が、初めて食する場合の障壁となる場合がある。
そこで、大豆原料の種類、納豆菌の種類、発酵工程、などによって、納豆の味覚や風味に関して、様々な改良が試みられている。例えば、特許文献1には、アンモニア臭軽減のために特定の納豆菌を用いる技術が開示されている。
しかしながら、発酵工程により煮豆本来の風味等が失われる問題や、苦味が発生する問題を解決した技術は、未だ報告されていない。
また、一般的に流通されている納豆とは、異なる形態の納豆様の食品として、インスタント納豆などが提案されている(例えば、特許文献2〜4 参照)。
ところが、これらインスタント納豆は、一度通常の納豆を製造した後に、乾燥・復元などの工程(特に特許文献4では、豆の外皮と中身を分離している)を必須とするものであるので、豆らしい好ましい食感・風味を味わうことができない。また、納豆の風味や外観も失われたものとなり、納豆の代替品という性質が強いものである。
特開平8-154616号公報 特開平9-271346号公報 特開昭53-104755号公報 特開昭53-6450号公報
そこで、本発明では、上記従来技術の課題を解決し、従来の納豆よりも嗜好性の高い納豆様豆加工食品を製造する方法を提供することを目的とした。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、煮豆にγ-PGA含有組成物を添加するだけで、‘煮豆の風味と食感(通常は発酵によって失われる風味や食感)’と‘納豆の風味、ネバの食感’を併せ持つ、極めて嗜好性の良好な新規の納豆様豆加工食品を、製造できることを見出した。
さらに、本発明者は、納豆菌を用いての発酵工程を組み合わせることで、上記性質に加えてさらに‘納豆様の外観’をも有する、納豆様豆加工食品を製造できることを見出した。
また、外観や風味が通常の納豆に極めて近い納豆様豆加工食品を、通常の納豆の製造法に比べて大幅に短時間で、製造できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
即ち、〔請求項1〕に係る本発明は、煮豆にγ-ポリグルタミン酸含有組成物を添加する工程、又は、γ-ポリグルタミン酸含有組成物に煮豆を添加する工程、を含むことを特徴とする、納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項2〕に係る本発明は、前記煮豆が煮大豆である、請求項1に記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項3〕に係る本発明は、前記煮豆100質量部に対して、γ-ポリグルタミン酸が0.05〜2.2質量部となるように前記添加工程を行う、請求項1又は2に記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項4〕に係る本発明は、前記煮豆を納豆菌で発酵させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項5〕に係る本発明は、前記γ-ポリグルタミン酸1質量部に対して、糖類を1.8質量部以上となるように添加する、請求項1〜4のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項6〕に係る本発明は、前記γ-ポリグルタミン酸が、大豆煮汁を含む培地で納豆菌を培養した後の当該培地から得られたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
また、〔請求項7〕に係る本発明は、前記γ-ポリグルタミン酸が、納豆を液体中に浸漬して抽出されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法、に関するものである。
本発明は、‘煮豆の風味と食感’と‘納豆の風味、ネバの食感’を併せ持つ、極めて嗜好性の良好な新規の納豆様豆加工食品を、製造することを可能とする。
また、発酵を行うことによって、上記性質に加えてさらに‘納豆様の外観’をも備えた、納豆様食品を製造することを可能とする。
さらに、従来の納豆製造に要する通常の発酵時間(16時間程度)と比べて、大幅に短時間で、通常の納豆に極めて近い風味や外観を有する納豆様豆加工食品を、製造することが可能となる。
実施例6において製造した、本発明の納豆様豆加工食品の外観を撮影した写真像を示す。(A):未発酵(試料6-1)、(B):発酵後8時間(試料6-4)、(C):発酵後12時間(試料6-6)、(D)発酵後16時間(試料6-7)における外観を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、煮豆にγ-ポリグルタミン酸含有組成物を添加する工程、又は、γ-ポリグルタミン酸含有組成物に煮豆を添加する工程、を含むことを特徴とする、納豆様豆加工食品の製造方法に関する。
〔煮豆〕
本発明に用いる豆としては、煮豆として食することが可能な豆類の種子であれば、いかなるものをも用いることができる。
具体的には、大豆(ダイズ)、小豆(アズキ)、ササゲ、インゲンマメ、ベニハナインゲン、空豆(ソラマメ)、エンドウ、落花生(ラッカセイ)、リョクトウ、レンズマメ、ガラスマメ、ヒヨコマメ、などを挙げることができる。
特には、後述する糸引き成分(ネバ成分)との相性の観点から、大豆を用いることが望ましい。
また、豆の形状としては、食感等の点から豆をそのまま用いることが望ましいが、割砕等を行って引き割り状にしたものを用いることができる。
本発明における煮豆は、常法により製造(調製)できるが、以下に示す製造例を挙げることができる。
まず、乾燥豆を水中に6〜24時間程度浸漬した後、90〜100℃の湯で20〜50分煮込む方法を採用することができる。また、水分を含んだ豆(例えば、水に浸漬した豆など)を水切りして、100〜135℃の蒸気で10〜30分蒸煮処理するなどの方法も採用することができる。
〔γ-PGA含有組成物〕
本発明におけるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)とは、グルタミン酸がγ-アミド結合で重合したポリマーである。当該物質は、納豆の糸引き成分(ネバ成分)における主成分である。
本発明で用いることができるγ-PGAは、Bacillus属細菌の培養物から得ることができる。Bacillus属細菌は、培養の過程においてγ-PGAを産生し、菌体外に放出する性質を有する。
ここで、Bacillus属細菌としては、Bacillus subtilis に属する納豆菌や枯草菌などの細菌を挙げることができる。特には、豆加工食品に納豆らしい香り、風味を付与しやすい点で、納豆菌(例えば、宮城野菌、成瀬菌、高橋菌など)を用いることが好ましい。
本発明におけるγ-PGAを得る方法として、具体的には、(i) Bacillus属細菌を培養液で培養し、培養後の培養液(液体培養物)から得る方法を挙げることができる。
ここで用いる培養液(液体培地)としては、グルタミン酸やグルコースを主原料とする合成培地や、大豆煮汁、豆乳などを含む培地を用いることができる。
また、大豆煮汁、豆乳などをそのまま培養液として用いることもできる。特に、煮大豆の製造過程で生じる大豆煮汁を用いた場合、廃物利用の観点から経済的であり且つ環境にもやさしい点で好ましい。
また、別の方法としては、(ii) Bacillus属細菌の固体培養物から得る方法を挙げることができる。
ここで、固体培養物としては、例えば大豆(大豆粉や脱脂加工大豆も含む)に、Bacillus属細菌を植菌し培養したもの、;前記培養液を寒天等で固めた固体培地にBacillus属細菌を植菌し培養したもの、;などを挙げることができる。特には、大豆に納豆菌を植菌して培養したもの(納豆そのもの)を用いることが望ましい。
本発明では、このような固体培養物を水溶性の液体(具体的には、水)に浸漬し、水溶性成分を抽出することによって、γ-PGAを含む成分を得ることができる。
本発明では、γ-PGAの生産効率が高い点を考慮すると、上記(i)の方法の液体培養物から得る方法が好適である。
本発明における「γ-PGA含有組成物」とは、納豆の糸引き成分の主成分であるγ-PGAを含有させた組成物を指すものである。
当該組成物の形態としては、固体状(例えば、粉末状)の組成物、;半固形状の組成物(例えば、ゲル状)、;液体状の組成物など、;様々なものが採用できる。なお、いずれの形態であっても、水分を含んだ状態では、納豆様の糸引き(ネバ)を発生させる性質を有するものとなる。
ここで、γ-PGA含有組成物を「粉末状」として調製する場合、具体的には、上記(i)の方法によって得られたγ-PGAを含む液体培養物、上記(ii)の方法によって得られたγ-PGAを含む抽出液、を乾燥して製造することができる。
ここでの乾燥方法は、特に限定されるものではないが、熱をかけると糸引きが弱くなるため、加熱が必須ではない乾燥方法によって行うことが好ましい。具体的には、凍結乾燥法、スプレー乾燥法、真空乾燥法などで行うことが好適である。
特に、凍結乾燥法によって調製した場合、粉末は多孔質状となるため、水分を加えた際に糸引きが強く速やかに再現され好ましいものとなる。
また、γ-PGA含有組成物を「液体状」として調製する場合、具体的には、上記(i)の方法で得られた培養液、上記(ii)の方法で得られた抽出液をそのまま用いることができる。
また、調製した固体状や半固体状の組成物を、水や水溶液に溶解した液体を用いることができる。
〔γ-PGA含有組成物の添加工程〕
本発明では、上記のようにして得られた煮豆とγ-PGA含有組成物について、煮豆にγ-PGA含有組成物を添加する、又は、γ-PGA含有組成物に煮豆を添加することによって、嗜好性が極めて高い新規の納豆様豆加工食品を得ることが可能となる。
当該態様としては、例えば、上記煮豆に液体のγ-PGA含有組成物をかけただけの状態(不均一に混ざっている状態)も、本発明の態様に含まれる。
なお、ここで添加とは、‘製品製造時の添加’だけでなく‘喫食直前の添加’も含まれる。従って、喫食の直前に煮豆にγ-PGA含有組成物を添加する行為や、γ-PGA含有組成物に煮豆を添加する行為も、当該工程に含まれる。
また本発明には、添加工程を行った後、さらに混合工程を行う態様も含まれる。
ここで混合とは、‘製品製造時の混合’だけでなく‘喫食直前の掻き混ぜや攪拌による混合’も含まれる。また、混合の程度としては、均一に混合された状態だけでなく、不均一に粗く混合された状態も、本発明に含まれる。
・煮豆とγ-PGA含有組成物との割合
ここで、煮豆とγ-PGA含有組成物との配合割合は、喫食時に掻き混ぜる(攪拌する)際に生じる糸引き度合いの好みに合わせて、調整することができる。
好ましくは、煮豆100質量部に対して、γ-PGA含有組成物中のγ-PGAの質量が0.05〜2.2質量部となるように調整することが好適である。さらには、0.07〜1.5質量部となるように調整することが望ましい。
γ-PGAの量が当該所定範囲より少ない場合、糸引きが感じにくくなり好ましくない。また、γ-PGAの量が当該所定範囲より多い場合、ネバの中に煮豆が浮いているような形となるため見た目も美しくなく、また大豆の食感を感じにくくなり好ましくない。
また、γ-PGA含有組成物の全体としての配合量としては、γ-PGA含有組成物の組成や性状(固体、半固形、液体など)に応じて一概には決められないものであるが、実質的には煮豆100質量部に対して、2〜200質量部程度(特に8〜50質量部)とすることが好ましい。
・水分
煮豆とγ-PGA含有組成物を混合する際において、一定範囲量の水分が含まれない場合、煮豆とγ-PGA含有組成物との混合が困難となる。例えば、γ-PGA含有組成物が固形状(例えば粉末状)の場合、水分を加えないで煮豆と混合することは極めて困難となる。
そこで、煮豆との混合の際には、γ-PGA 1g当たり、7.5〜130g(好ましくは15〜45g)の水分を同時に存在することが好ましい。
当該値より水分が少ない場合、糸引きの粘性が強すぎて混ぜにくくなり、食感の点でも好ましくない。
また、これより水分が多い場合、糸引きが弱くなってしまい納豆様の食品と感じにくくなり、食感の点で好ましくない。
なお、別途に包装用容器に充填された水を含む液体(水、調味料など)を供給することで、喫食直前に水分条件を調整することも可能となる。
〔発酵工程〕
上記工程によって得られる納豆様豆加工食品(未発酵)は、通常は発酵によって失われる‘煮豆の風味や食感’を有すると同時に、‘納豆の風味やネバの食感’を併せ持つ、嗜好性の高い新規の食品を得ることができる。
さらに、本発明では、前記煮豆に対して発酵度合いを調整しつつ納豆菌を用いて発酵を行うことによって、‘煮豆の風味や食感’を維持しつつ、‘納豆の風味’と‘納豆に近い外観’が付与された食品とすることができる。
・納豆菌の添加
本発酵工程に用いる納豆菌としては、通常の納豆製造に用いることができる菌株であれば如何なるものも用いることができる。例えば、宮城野菌、成瀬菌、高橋菌などを用いることができる。
添加する納豆菌の形態としては、納豆菌の培養液(例えば、上記(i)の方法で得られた培養液)をそのまま添加して用いることができる。
また、固体培養物(例えば納豆)の粉砕物、培養液や固体培養物から集菌した納豆菌、固形納豆菌の胞子、を添加して用いることができる。なお、これらを溶液に懸濁して用いることができる。
また、添加(接種)する納豆菌の数としては、例えば103〜108 個/g(煮豆重量)となるように添加することができる。発酵時間を短くするためには、107〜108 個/g(煮豆重量)となるように添加するとよい。
納豆菌の接種は、前記煮豆に納豆菌を添加(散布などを含む)することによって行うことができる。なお、発酵を均一に行うため、煮豆と納豆菌が均一になるように接種することが好ましい。
当該納豆菌の接種は、前記煮豆とγ-PGA含有組成物の添加工程の前後いずれにも行うことができる。
また、前記γ-PGA含有組成物に納豆菌を含有させておき、煮豆, γ-PGA, 納豆菌を、同時に添加する方法を採用することができる。
・発酵条件
本発明では、上記のように納豆菌を接種した後、用いる納豆菌の菌株に適した温度・湿度条件(例えば、36〜43℃)を採用することができる。
また、発酵時間としては、例えば0〜24時間(好ましくは0〜16時間、さらに好ましくは0〜12時間)を採用することができる。
当該発酵処理は、前記γ-PGA含有組成物の添加工程前に行うことも可能であるが、当該添加工程後に行うことが好適である。
また、当該発酵処理は、納豆菌を接種した煮豆を包装用容器に充填し、包装用容器内にて直接行うことが好適である。
本発明における発酵度合いは、温度及び/又は時間によって調整(好ましくは時間によって調整)することが望ましい。
例えば、(I)発酵度合いが低い条件、例えば、42℃で6時間以下の発酵を行った場合、未発酵の煮豆が有していた‘煮豆の風味や食感’が失われず、‘納豆の風味やネバの食感’がさらに強められ、さらに‘納豆様の外観’もやや納豆に似た納豆様豆加工食品を製造することが可能となる。
また、(II)発酵度合いが中程度の条件、例えば、42℃で6時間より長い時間(好ましくは8時間以上)〜12時間以下で発酵させた場合、‘納豆の風味、ネバの食感、納豆様の外観’が通常の納豆に極めて近い納豆様豆加工食品を製造することが可能となる。
さらに、当該納豆様豆加工食品では、‘煮豆の風味’の一部は残存したものとなり、好適な風味を有する。
なお、当該納豆様豆加工食品では、同程度の品質(風味、ネバ、外観)の通常の納豆を製造する場合に比べて、発酵時間を2〜10時間程度短縮できる。また、通常の納豆では、煮豆の風味は完全に失われたものとなる。
また、(III)発酵度合いが高い条件、例えば、42℃で12時間より長い時間〜24時間以下(好ましくは16時間以下)で発酵させた場合、‘納豆の風味、ネバの食感、納豆様の外観’が通常の納豆よりさらに強められた納豆様豆加工食品を製造することが可能となる。
なお、当該納豆様豆加工食品では、‘煮豆の風味’は失われたものとなる。
〔他の添加物〕
・糖類
本発明では、さらに糖類を含有させることによって、混合時(具体的には、喫食の際に掻き混ぜたり攪拌をした時に)糸がよく伸びて切れにくくなる(γ-PGAの糸引きを向上させる)性質を付与することが可能となる。
ここで当該作用を有する糖類としては、具体的には、デキストリン、砂糖、ぶどう糖、果糖、水あめ、糖アルコールなど、を挙げることができる。特に、デキストリンが好適である。
糖類の含有量としては、γ-PGA 1質部に対して1.8質量部以上とすると効果が高くなり好ましい。
なお、糖類含有量の上限は特に無く、煮豆との混合時に糖類が溶解して液状となる濃度であればよい。ただし、糖類によっては甘味を付与することになるため、求める風味に合わせて含有量を調整する必要がある。
糖類の添加方法としては、前記煮豆に糖類を添加できれば、製造工程及び喫食前のいずれの段階であっても行うことができる。
例えば、前記煮豆とγ-PGA含有組成物との添加工程の前後のいずれでも(発酵工程を行う場合では、好ましくは発酵工程後)に、別途に糖類を添加する方法を採用することもできる。
また、別途に包装用容器に糖類を含む液体(水、調味料など)を供給することで、喫食直前に添加する方法を採用することができる。
また、本発明において好適には、前記γ-PGA含有組成物に糖類を含有させておき、製造時において煮豆, γ-PGA, 糖類を、同時に添加する方法を採用することができる。
・調味料
また、本発明の納豆様豆加工食品は、調味料を含有させた態様とすることができる。
ここで、用いることができる調味料としては、例えば、醤油、だし類、食酢、酒類、食塩、糖類、旨味調味料、などを挙げることができる。
特に、本発明の豆加工食品は、醤油などを含んだ調味液で味付けして食すことより納豆のような風味を味わうことができるため、少なくとも醤油を含むことが望ましい。また、既存の納豆のたれ(もしくはその成分)を含有させることも望ましい。
調味料の添加方法としては、前記煮豆に調味料を添加できれば、製造工程及び喫食前のいずれの段階であっても行うことができる。
例えば、前記煮豆とγ-PGA含有組成物との添加工程の前後のいずれでも(発酵工程を行う場合では、好ましくは発酵工程後)に、別途に調味料を添加する方法を採用することができる。
また、別途に包装用容器に調味料を含む液体を供給することで、喫食直前に添加する方法を採用することができる。
また、前記γ-PGA含有組成物に調味料を含有させておき、製造時において煮豆, γ-PGA, 調味料を、同時に添加する方法を採用することができる。
〔熟成工程〕
上記工程を経て製造した納豆様豆加工食品は、好ましくは低温にて熟成させることが好ましい。例えば、4〜10℃にて半日〜2日程度の熟成を行うことが好適である。
〔商品形態〕
(A) 上記のようにして製造した本発明の納豆様豆加工食品は、包装用容器に充填することで商品として流通させることができる。
当該包装用容器としては、充填が可能なものであれば、どんな容器を用いることもできる。一般的には納豆で一般に用いられるようなPET、PE、PP、PSP等を用いた合成樹脂性の容器や紙製の容器を用いることができる。
また、容器の形状として、当該容器を用いて直接、喫食のための掻き混ぜ(攪拌)ができるような形状を採用することもできる。
(B) また、前記煮豆とγ-PGA含有組成物を‘喫食直前に’添加することによって、納豆用豆加工食品を調製する場合は、煮豆とγ-PGA含有組成物とをそれぞれを包装用容器に充填し、セットとして一緒に梱包した商品とすることができる。
なお、前記糖類、調味料、水等を喫食直前に添加する態様の場合、これら(もしくは、これらの混合物)を包装用容器に充填(好ましくは密封充填)し、セットとして一緒に梱包させることができる。
また、必要に応じて、カラシ、ワサビ、きざみノリ、フリーズドライしたネギ、炒りゴマなどの薬味を包装用容器に充填(好ましくは密封充填)して、一緒に梱包させることもできる。
なお、ここでの梱包とは、これらを格納できる包装容器にて梱包する形態に加えて、単にテープなどで一くくりにするなどの包装方法も含むものである。つまり、需要者が一つの商品として認識しうる程度に一体となっていれば足りるものである。
また、梱包される内容物は、それぞれを別々の包装用容器に充填する態様を採用することができるが、1つの包装容器を用いてそれぞれの内容物を物理的に隔離された状態で充填する態様を採用することもできる。
例えば、隔離された包装空間を複数(例えば2〜3箇所)有する1つの包装用容器の別々の包装空間に、それぞれの内容物を充填することもできる。
〔喫食方法〕
本発明では、上記のようにして得た納豆様豆加工食品を、喫食直前に掻き混ぜる(攪拌する)ことによって、納豆のように糸引きのある食品を得ることができる。
本発明の納豆様豆加工食品は、調味液(特に醤油、つゆなどを含んだもの)で味付けして食すことより、納豆のような風味や食感を味わうことができる。
例えば、炊飯した白米と一緒に食したり、うどんや蕎麦などの麺類に入れて食したり、卵と混ぜて食したり、カレーに入れたり、他の粘りを有する食材(オクラ, めかぶ, 擂った山芋等)と混合したり、味噌汁に入れたりすることで、抜群の嗜好性が発揮される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
〔測定例1〕 「γ-PGA含量の測定」
本実施例におけるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)含量の分析は、常法(例えば、日本食品工学会誌、142巻、11号、p.878〜886(1995年)参照)に準じて、以下のように行った。
下記実施例における各試料10gに、4.2%トリクロロ酢酸溶液15mlを加えて撹拌し、遠心分離(12,000rpm、10分、4℃)し、上清を得た。
得られた上清20mlをビーカーにとり、NaOHでpHを7.0に調整後、25mlにフィルアップした。その液5mlとエタノール20mlを混和し、氷上で10分以上放置したのち遠心分離を行い、上清を捨てて沈殿を得た。
その沈殿に20mMリン酸緩衝液(pH7.0)(以下リン酸緩衝液)を10ml加え、溶解させたものを測定液とした。
そして、リン酸緩衝液2.4mlが入った試験管に、当該調製した測定液0.1mlを加え、撹拌した。その後、0.1Mセタブロン/1M NaCl溶液を0.5ml加えて撹拌し、30℃で20分放置したものを、400nmにおける吸光度を測定した。
γ-PGA標準品(シグマ社製)を0.1mg/mlになるようリン酸緩衝液に溶解したもので検量線を作成し、測定液のγ-PGA濃度を求めた。そして、当該測定値から、試料粉末中のγ-PGA含量を計算した。
〔実施例1〕 「納豆様豆加工食品と従来の納豆等との比較」
(1) 納豆様豆加工食品の調製
砂糖10%, グルタミン酸ナトリウム1水和物 2%, 粉末酵母エキス 1%, を水に溶解し、坂口フラスコに入れて、120℃で15分加熱滅菌し、原料液を調製した。
そこに、納豆菌N64株を植菌し、30℃で4日間振盪培養を行って培養液を得た。
得られた培養液は、γ-PGA含有量が14.6 mg/g、粘度が2,500 mPa・s、納豆菌の菌数が3.2×108個/gである、γ-PGAを含有する納豆菌液(γ-PGA含有組成物)であった。
次いで、乾燥大豆を水に16時間浸漬し、水切りを行い、50gをレトルト用袋に充填して120℃で30分の高温高圧処理を行って煮大豆を得た。
また、納豆のたれ(醤油13質量%、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖20質量%を含有)5.5gを調製した。
そして、上記調製したγ-PGA含有納豆菌液15g、煮大豆50g、及び納豆のたれ5.5gを、小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料1-1:煮豆100質量部に対してγ-PGA 0.438質量部)を調製した。
(2) 通常の納豆(比較対照品)の調製
市販納豆の「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)の納豆部分50gと、上記(1)の納豆のたれ5.5gを小鉢の中で混ぜ合わせて、通常の納豆(試料1-2:比較対照品)を調製した。
(3) 乾燥納豆復元品(比較対照品)の調製
特許文献4(特開昭53-6450号公報)に記載の方法に準拠し、市販納豆の「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)を凍結乾燥し、外層部と内層部を分離した。
そして、内層部23gに、熱水を加えて復元した後、外層部3g、水13g、上記(1)の納豆のたれ5.5g、を小鉢の中で混ぜ合わせて、乾燥納豆復元品(試料1-3:比較対照品)を調製した。
(4) 官能評価
上記調製した納豆様食品(試料1-1)、;通常の納豆(試料1-2)、;乾燥納豆復元品(試料1-3)、;について、表1の各項目について、熟練した官能検査員により官能検査にて評価した。なお、評価は、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の3段階で評価した。
その結果、当該納豆様食品(試料1-1)は、通常の納豆(試料1-2)や乾燥納豆復元品(試料1-3)に比べて、嗜好性の高い豆加工食品であることが明らかになった。
具体的には、‘香り’は納豆の香りに加えて煮豆の甘い香りを有する好適なものであった。また、‘食感’は、歯ごたえがあってもっちりしている好適なものであった。そして、‘味’は、甘く苦味がない好適なものであった。
〔実施例2〕 「γ-PGA含有組成物の必要量の検討」
表2に記載の各所定量のγ-PGA含有組成物(実施例1(1)で調製したγ-PGA含有納豆菌液)を用意した。
次いで、当該γ-PGA含有組成物と、実施例1(1)で調製した煮大豆50gとを小鉢に入れ、実施例1(1)で調製した納豆のたれ5.5gを加えて、はしで攪拌し、納豆様の食品ができるかどうかを調べた(試料2-1〜2-8)。
そして、表2の項目について、熟練した官能検査員により官能検査にて評価した。なお、評価は、「◎」:特に好ましい、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の4段階で評価した。
評価の結果、煮豆100質量部に対して0.05〜2.2質量部のγ-PGAを添加し攪拌することで、好適な納豆様の食品が得られることが明らかになった。また、当該添加量は、0.07〜1.5質量部の場合により好ましく、0.15〜0.44質量部の場合に最も好ましいことがわかった。
〔実施例3〕 「糖類添加の検討」
実施例2のγ-PGA含有組成物15gを添加した試験区(試料2-5:煮豆100質量部に対してγ-PGA 0.438質量部)において、表3に記載の各糖類を添加して、納豆様食品を調製した(試料3-2〜3-5)。なお、糖類は、デキストリン(松谷工業株式会社製パインデックス#6)、砂糖(伊藤忠製糖株式会社製上白糖)、水あめ(加藤化学株式会社製フジシラップA75S(水分25%含有))、ソルビトール(三菱商事フードテック株式会社製ソルビットL-70(水分30%含有))を使用した。
また、対照として、糖類を添加しないで、納豆様食品を調製した(試料3-1)。
そして、これらの試料について、糸引き(ネバの伸びの好ましさ)を評価した。なお、評価は、「◎」:特に好ましい、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の4段階で評価した。
その結果、糖類を添加した4試験区(試料3-2〜3-5)は、糖類を添加しない試験区(試料3-1)と比べていずれもネバがよく伸びて切れにくくなり好ましかった。中でもデキストリン(試料3-2)の糸引きが最も好ましかった。
〔実施例4〕 「糖類の添加量の検討」
実施例2のγ-PGA含有組成物15gを添加した試験区(試料2-5)において、表4に記載のデキストリン(松谷工業株式会社製パインデックス#6)の量を変化させながら添加して、ネバの伸びの好ましさを評価した。なお、糸引き(ネバの伸びの好ましさ)の評価は、実施例3と同様にして行った。
その結果、デキストリンをγ-PGAに対して、1.8倍以上添加した場合にはネバがよく伸びて切れにくくなり、より好ましい糸引きとなることが分かった。
〔実施例5〕 「γ-PGA含有組成物が予めタレに混合された実施形態」
(1) 納豆様豆加工食品の調製
実施例1(1)におけるγ-PGA含有組成物15gと納豆のたれ5.5gを、予め混合して液体状のγ-PGA含有組成物を得た。
そして、当該γ-PGA含有組成物を溶解した納豆たれと、実施例1(1)と同様にして調製した煮大豆を、小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料5-1)を調製した。
(2) 官能評価
得られた納豆様食品(試料5-1)について、実施例1(4)と同様の評価を行った。
その結果、当該納豆様食品は、実施例1(1)で調製した納豆様食品(試料1-1)と同様に、嗜好性が高く好ましい豆加工食品であることが確認できた。
〔実施例6〕 「納豆様豆加工食品の発酵品の調製」
(1) 納豆様豆加工食品の発酵
砂糖10%, グルタミン酸ナトリウム1水和物 2%, 粉末酵母エキス 1%, を水に溶解し、坂口フラスコに入れて、120℃で15分加熱滅菌し、原料液を調製した。
そこに、納豆菌N64株を植菌し、30℃で4日間振盪培養を行って培養液を得た。
得られた培養液は、γ-PGA含有量が14.6 mg/g、粘度が2,500 mPa・s、納豆菌の菌数が3.2×108個/gである、γ-PGAを含有する納豆菌液(γ-PGA含有組成物)であった。
次いで、浸漬した大豆を水切りし、1.65 kg/cm2で30分間加圧蒸煮した。蒸煮した大豆1gあたり、0.25gの上記γ-PGAを含有する納豆菌液を添加した。
軽く均一化した後、45gずつをPSPトレーに入れて蓋をし、4℃に冷却した後、冷蔵庫で28時間冷蔵熟成することで未発酵の納豆様食品(試料6-1:蒸煮大豆100質量部に対してγ-PGA 0.365質量部)。
なお、ここで用いたPSPトレーは、蒸煮大豆の上に薄い被膜をする必要のない形状のもの(例えば特開2009-161202号公報に開示されたもの)を用いた。
得られた上記未発酵の納豆様食品は、室温42℃及び高湿度下の納豆発酵室に入れ、4, 6, 8, 10, 12, 16時間の各時間だけ発酵を行った。そして、それぞれの時間が経過後に4℃に冷却した後、冷蔵庫で12〜24時間冷蔵熟成することで、発酵後の各納豆様食品(試料6-2〜試料6-7)を得た。
なお、図1に、未発酵(試料6-1)、発酵後8時間(試料6-4)、発酵後12時間(試料6-6)、発酵後16時間(試料6-7)の各納豆様食品の外観を撮影した写真像図を示す。
(2) 納豆(比較対照品)の調製
上記(1)と同様にして蒸煮大豆を得た。そして、納豆菌N64株の胞子を植菌し、45gずつPSPトレーに入れて蓋をし、4℃に冷却した後、冷蔵庫で28時間冷蔵熟成することで未発酵の納豆菌胞子添加蒸煮大豆を得た(対照6-1)。
その後、室温42℃及び高湿度下の納豆発酵室に入れ、4, 6, 8, 10, 12, 16時間の各時間だけ発酵を行った。そして、それぞれの時間が経過後に4℃に冷却した後、冷蔵庫で12〜24時間冷蔵熟成することで、発酵後の各納豆(対照6-2〜対照6-7)を得た。
なお、ここで16時間の発酵を行った対照6-7が、通常の納豆に相当する。
(3) 官能評価
調製した納豆様食品(試料6-1〜試料6-7)、;納豆(対照6-1〜対照6-7)、;について、表5,6の各項目について、熟練した官能検査員により官能検査にて評価した。なお、評価は、「◎」:特に好ましい、「○」:好ましい、「△」:やや好ましい、「×」:好ましくない、の4段階で評価した。
なお、‘納豆の外観’としては、攪拌前の状態で納豆として見えるかどうかの観点から評価を行った。また、‘納豆の風味’としては、発酵感、熟成感、納豆特有の香りなどの観点から評価を行なった。
納豆様食品(試料6-1〜試料6-7)の結果を表5に、通常の納豆(対照6-1〜対照6-7)の結果を表6に示す。なお、表中の「n.d.」はno dataの試料を示す。
・納豆風味の評価
その結果、表が示すように、当該納豆様食品は、未発酵の状態でもやや好ましい納豆風味を有し、6時間の発酵(通常の納豆の製造の約半分の発酵時間)で、好ましい納豆風味を有する食品が製造できることが示された。
一方、通常の納豆の製造では、未発酵状態では納豆風味が全くなく、好ましい風味の納豆が得られる迄に12時間の発酵時間を要した。
・納豆の外観の評価
当該納豆様食品は、6時間の発酵によって、やや納豆らしい外観を有するようになり、8時間の発酵によって、納豆らしい外観を有する食品が製造できることが示された
一方、通常の納豆の製造では、好ましい外観の納豆が得られる迄に12時間の発酵時間を要した。
・ネバ量の評価
当該納豆様食品は、未発酵の状態でも、十分な量のネバを有する食品であった(試料6-1)。また、発酵時間に関わらずネバの量は十分な状態であった(試料6-2〜試料6-7)。
一方、通常の納豆の製造では、十分な量のネバを有する迄に16時間を要した(対照6-7)。
・豆の柔らかさ
当該納豆様食品は、発酵時間に関わらず水分が多く、通常の納豆に比べて豆が軟らかい食品となることが示された。
これは、発酵前に添加したγ-PGAを含む溶液が粘性を有していたため、水分が煮豆に留まりやすくなり、柔らかさが実現されるためと推測される。
一方、通常の納豆の製造では、水を多く添加しても下部にのみ水が留まってしまい、豆の軟らかさを実現できなかった。
・煮豆の香りや甘味
当該納豆様食品と通常の納豆の両方において、発酵時間の経過と共に煮豆の香りと甘味が失われることが示された。また、両者での失われる程度に明確な差異が認められなかった。
なお、発酵が進んで煮豆の香り等が失われる代わりに、納豆の風味や外観、ネバが付与された。
(4) 総合評価
・試料6-1〜試料6-3の納豆様食品
当該納豆様食品のうち、試料6-1〜試料6-3の納豆様食品は、通常の納豆では失われてしまう‘煮豆の香りや甘味’や‘豆の柔らかさ’を併せ持ち、且つ、‘納豆の風味や混ぜた際のネバの量’を十分に有した食品であった。そして、納豆として食したとしても、何ら違和感のない優れた食品であると認められた。
なお、納豆菌の菌膜が不十分なため、トレーを開けたときに‘納豆としての外観上’は違和感が認められたが、新規の豆加工食品として見た場合では特に外観上の問題は認められなかった。
なお、6時間の発酵を行った試料6-3では、やや納豆の外観に近い食品となっていた。
一方、通常の納豆の製法で同時間の発酵を行った場合(対照6-1, 対照6-2)、単にぱらぱらした煮豆であり、外観、風味、ネバの全ての点で納豆の性質を有していなかった。
・試料6-4〜試料6-6の納豆様食品
当該納豆様食品のうち、6〜12時間発酵のもの(試料6-4〜試料6-6)は、‘通常の納豆に極めて近く’且つ‘煮豆の風味も一部有する’納豆様豆加工食品となった。
即ち、納豆菌の菌膜が生じ、‘納豆としての’外観上の違和感のない食品となった。また、納豆としての風味も十分に有する食品となった。
また、ネバの量を十分に有しており、より納豆として食した場合に何ら違和感のない食品と認められた。
なお、試料6-4〜試料6-6の納豆様食品は、煮豆の甘味は失われていたが、煮豆の香りを併せ持ち、且つ、豆の柔らかさも有する、優れた食品となることが示された。
一方、通常の納豆の製法で8時間の発酵を行った場合(対照6-4)、納豆風味、ネバを有しておらず、納豆らしさを有していなかった。
・試料6-7の納豆様食品
当該納豆様食品のうち、16時間発酵したもの(試料6-7)は、‘納豆としての’外観、風味がさらに納豆に近い食品となった。
なお、煮豆の甘味や香りは失われていたものの、ネバ量については、同時間の発酵を行った通常の納豆(対照6-7)よりも多く含まれ、さらに豆の柔らかさも有する、優れた食品となることが示された。
〔実施例7〕 「納豆抽出液からのγ-PGA含有組成物の調製」
(1) 納豆様豆加工食品の調製
市販納豆「金のつぶ ふっくらなっと」((株)ミツカン)の納豆1000gに、水1000gを加え、スパーテルで時々攪拌しながら室温で2時間放置した。その後、豆をザルで濾して除き、ネバ成分を水抽出したγ-PGA含有液800gを得た。
そのうちの500gを凍結乾燥し、γ-PGA含有粉末30gを得た。なお、当該粉末は、73mg/gのγ-PGAを含有するもの(γ-PGA含有組成物)であった。
次いで、乾燥大豆を水に16時間浸漬し、水切りを行い、50gをレトルト用袋に充填して120℃で30分の高温高圧処理を行って煮大豆を得た。
また、納豆のたれ(醤油13質量%、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖20質量%を含有)5.5gを調製した。
そして、上記調製したγ-PGA粉末3g、煮大豆50g、及び納豆のたれ5.5gを、小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料7-1:煮豆100質量部に対してγ-PGA 0.438質量部)を調製した。
(2) 官能評価
得られた納豆様食品(試料7-1)について、実施例1(4)と同様の評価を行った。
その結果、当該納豆様食品は、実施例1(1)で調製した納豆様食品(試料1-1)と同様に、嗜好性が高く好ましい豆加工食品であることが確認できた。
〔実施例8〕 「納豆菌培養液体培地からのγ-PGA含有組成物の調製」
(1) 納豆様豆加工食品の調製
乾燥大豆を水に16時間浸漬し、一度水切りをした後、乾燥大豆1質量部に対して合計が3質量部となるように水と浸漬大豆を鍋に入れた。加熱沸騰後、沸騰が継続する程度の弱火で1時間煮た後煮汁をざるで濾して大豆煮汁を得た。
その大豆煮汁20%, グルタミン酸ナトリウム1水和物4%, グルコース5%, リン酸2水素カリウム0.25%, 酵母エキス0.5%, ビオチン0.1ppm, pH7.0に調整した滅菌培地に納豆菌(Bacillus subtilis OUV23481株)を植菌し、37℃、通気量 1VVM、撹拌速度120rpmで3日間培養を行ったところ、γ-PGAを含有する培養液が得られた。
得られた培養液を凍結乾燥し、γ-PGA含有粉末を得た。なお、当該粉末は、130mg/gのγ-PGAを含有するもの(γ-PGA含有組成物)であった。
当該γ-PGA含有粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、γ-PGA含有粉末3g、煮大豆50g、納豆たれ5.5gを、調製した。
そして、これらを小鉢の中で混ぜ合わせて、納豆様食品(試料8-1: 煮豆100質量部に対してγ-PGA 0.78質量部)を調製した。
(2) 官能評価
得られた納豆様食品(試料8-1)について、実施例1(4)と同様の評価を行った。
その結果、当該納豆様食品は、実施例1(1)で調製した納豆様食品(試料1-1)と同様に、嗜好性が高く好ましい豆加工食品であることが確認できた。
本発明は、従来の納豆よりも風味及び食感が極めて好ましい納豆様豆加工食品を製造する方法を提供する。
これにより、本発明は、従来の豆加工食品(レトルト煮豆、通常の納豆、インスタント納豆等の加工食品など)には無かった画期的な商品を、提供できる技術となることが期待される。
さらに本発明は、納豆に極めて近い風味と外観を有する食品を、通常の納豆の製造方法に比べて、圧倒的に短時間で製造することを可能とする。

Claims (7)

  1. 煮豆にγ-ポリグルタミン酸含有組成物を添加する工程、又は、γ-ポリグルタミン酸含有組成物に煮豆を添加する工程、を含むことを特徴とする、納豆様豆加工食品の製造方法。
  2. 前記煮豆が煮大豆である、請求項1に記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
  3. 前記煮豆100質量部に対して、γ-ポリグルタミン酸が0.05〜2.2質量部となるように前記添加工程を行う、請求項1又は2に記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
  4. 前記煮豆を納豆菌で発酵させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
  5. 前記γ-ポリグルタミン酸1質量部に対して、糖類を1.8質量部以上となるように添加する、請求項1〜4のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
  6. 前記γ-ポリグルタミン酸が、大豆煮汁を含む培地で納豆菌を培養した後の当該培地から得られたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
  7. 前記γ-ポリグルタミン酸が、納豆を液体中に浸漬して抽出されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の納豆様豆加工食品の製造方法。
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