JP2013234926A - セシウム吸着資材及びそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セシウムイオンに対する吸着性能が高く、取り扱いが簡便で、セシウムイオンの除去処理やセシウムイオンの拡散防止を効率的かつ経済性に行うことを可能にするセシウム吸着資材及びそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法を提供すること。
【解決手段】(A)難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物を、(B)透水性材料に担持したセシウム吸着資材。
【選択図】なし
【解決手段】(A)難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物を、(B)透水性材料に担持したセシウム吸着資材。
【選択図】なし
Description
本発明は、セシウム含有水中のセシウムイオンあるいはセシウム含有物から溶出するセシウムイオンを吸着する吸着資材とそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法に関する。
原子力発電所の事故等が発生すると、高濃度の放射性物質(主に放射性セシウム)を含む原子炉汚染水が施設外に漏出したり、放射性物質が河川・海水・地下水あるいは大気中などへ拡散することにより、周辺環境に放射性物質で汚染された水・土壌・草木類等が大量に生じる恐れがある。また、これら放射能汚染物が雨水等により下水道に流入すると、放射性物質により汚染された下水汚泥、あるいはその下水汚泥を焼却減容化することで放射性物質が濃縮された焼却灰が生じる。さらに、放射性物質で汚染された草木類や塵芥などの可燃性廃棄物がゴミ焼却場などで焼却減容化されると、放射性物質が濃縮されたゴミ焼却灰が生じる。
放射能汚染物は人体に有害な放射線(ガンマ線など)を放出するため、これらの放射能汚染物に対しては適切に除去・保管等の処置を行い、放射線被爆による健康被害を防ぐ必要がある。特に汚染規模が大きく、広い地域に大量の放射能汚染物が発生した場合には、放射能汚染物の除染処理(放射能汚染物からの放射性物質の除去処理、放射能汚染物の保管など)に膨大な手間と時間と費用が必要になるため、放射能汚染物からの放射性物質の除去処理(セシウムイオンの吸着除去)、あるいは、保管時の放射性物質の拡散防止(雨水等によるセシウムイオンの拡散防止)を効率的かつ経済的に行うことができる技術が求められていた。
放射能汚染物は人体に有害な放射線(ガンマ線など)を放出するため、これらの放射能汚染物に対しては適切に除去・保管等の処置を行い、放射線被爆による健康被害を防ぐ必要がある。特に汚染規模が大きく、広い地域に大量の放射能汚染物が発生した場合には、放射能汚染物の除染処理(放射能汚染物からの放射性物質の除去処理、放射能汚染物の保管など)に膨大な手間と時間と費用が必要になるため、放射能汚染物からの放射性物質の除去処理(セシウムイオンの吸着除去)、あるいは、保管時の放射性物質の拡散防止(雨水等によるセシウムイオンの拡散防止)を効率的かつ経済的に行うことができる技術が求められていた。
従来、セシウムイオンの除去方法としては、例えば、ウラン水溶液中のセシウムイオンをゼオライトで吸着分離する方法(特許文献1)、ヘキサシアノ鉄でセシウムイオンを吸着分離する方法(特許文献2)、脱窒菌又はセシウム蓄積菌でセシウムイオンを吸着除去する方法(特許文献3)等が報告されている。また、ゼオライトについては、フライアッシュや鋳物廃砂を原料として合成ゼオライトを製造する方法(特許文献4、5)等が報告されている。さらに、放射能汚染物保管時の放射性物質の拡散防止方法として、ゼオライトを含む核種吸着セメント組成物で放射能汚染物を固化して放射性物質の拡散を防止する方法(特許文献6)、希土類化合物を分散保持した無機繊維を用いて汚染土壌中の重金属を吸着する方法(特許文献7)等が報告されている。
しかしながら、これら従来の技術では、セシウムイオンの吸着除去性能が低い、高価なセシウム吸着剤を使用する必要がある、廃棄物原料を使用した吸着剤(合成ゼオライト)であるが水熱合成に手間と時間がかかるため製造コストが高くなる、放射性物質の拡散を防止するための放射能汚染物の固化処理に手間がかかる、セシウムイオンの拡散防止には効果がない等の問題があり、放射性セシウムによる汚染物を効率的かつ経済的に処理・保管するための技術としては不十分であった。
従って、本発明の課題は、セシウムイオンに対する吸着性能が高く、取り扱いが簡便で、セシウムイオンの除去処理やセシウムイオンの拡散防止を効率的かつ経済性に行うことを可能にするセシウム吸着資材及びそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法を提供することにある。
従って、本発明の課題は、セシウムイオンに対する吸着性能が高く、取り扱いが簡便で、セシウムイオンの除去処理やセシウムイオンの拡散防止を効率的かつ経済性に行うことを可能にするセシウム吸着資材及びそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題解決のため検討を重ねた結果、難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルミン酸カリウムおよび水を含有する混合物を焼成することで、セシウムイオンに対する吸着性能がゼオライトに比べて顕著に優れる焼成物が得られ、当該焼成物を透水性材料に担持させたセシウム吸着資材を用いることでセシウム含有水中のセシウムイオンの除去処理やセシウム含有物から溶出するセシウムイオンの拡散防止を効率的かつ経済性に行えることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[8]に係るものである。
[1](A)難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物を、(B)透水性材料に担持したセシウム吸着資材。
[2](A)焼成物の難水溶性珪酸質粉末が、パーライト発泡体の製造時に生じる珪酸質廃棄物、珪酸カルシウムボードを製造・加工する際に生じる珪酸カルシウム廃棄物、及びフライアッシュから選ばれる1種以上である[1]のセシウム吸着資材。
[3](A)焼成物のアルカリ金属珪酸塩が珪酸カリウムである[1]または[2]のセシウム吸着資材。
[4](A)焼成物のアルカリ金属アルミン酸塩がアルミン酸カリウムである[1]〜[3]のいずれかのセシウム吸着資材。
[5](A)焼成物原料の混合物の含水率が10〜70質量%であり、該混合物の焼成温度が200〜800℃である[1]〜[4]のいずれかのセシウム吸着資材。
[6]セシウム吸着資材の形状がシート状、マット状又は袋状である[1]〜[5]のいずれかのセシウム吸着資材。
[7][1]〜[6]のいずれかのセシウム吸着資材にセシウム含有水を通水してセシウムイオンを吸着除去することを特徴とするセシウム含有水の処理方法。
[8][1]〜[6]のいずれかのセシウム吸着資材を、セシウム含有物の底部または周囲に設置することを特徴とするセシウム含有物の保管方法。
[1](A)難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物を、(B)透水性材料に担持したセシウム吸着資材。
[2](A)焼成物の難水溶性珪酸質粉末が、パーライト発泡体の製造時に生じる珪酸質廃棄物、珪酸カルシウムボードを製造・加工する際に生じる珪酸カルシウム廃棄物、及びフライアッシュから選ばれる1種以上である[1]のセシウム吸着資材。
[3](A)焼成物のアルカリ金属珪酸塩が珪酸カリウムである[1]または[2]のセシウム吸着資材。
[4](A)焼成物のアルカリ金属アルミン酸塩がアルミン酸カリウムである[1]〜[3]のいずれかのセシウム吸着資材。
[5](A)焼成物原料の混合物の含水率が10〜70質量%であり、該混合物の焼成温度が200〜800℃である[1]〜[4]のいずれかのセシウム吸着資材。
[6]セシウム吸着資材の形状がシート状、マット状又は袋状である[1]〜[5]のいずれかのセシウム吸着資材。
[7][1]〜[6]のいずれかのセシウム吸着資材にセシウム含有水を通水してセシウムイオンを吸着除去することを特徴とするセシウム含有水の処理方法。
[8][1]〜[6]のいずれかのセシウム吸着資材を、セシウム含有物の底部または周囲に設置することを特徴とするセシウム含有物の保管方法。
本発明は、産業廃棄物等として発生する難水溶性珪酸質粉末を原料に使用した焼成物を透水性材料に担持したセシウム吸着資材であり、これを用いれば、セシウム含有水中のセシウムイオンの除去処理やセシウム含有物から溶出するセシウムイオンの拡散防止を簡便な処理・保管方法で効率的かつ経済的に行うことができる。
本発明のセシウム吸着資材に使用される(A)焼成物は、難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物であり、当該焼成物は例えば前記4成分を含有する混合物を焼成することにより得られる。
(A)焼成物に用いる難水溶性珪酸質粉末としては、水に対する溶解度が100mg/L未満の珪酸を主成分とする粉末であればよく、珪酸を主成分とする種々の天然物、合成物及び廃棄物が用いられる。ここで珪酸を主成分とするとは、珪酸又は難水溶性珪酸塩を60質量%以上含有することをいい、好ましくは80質量%以上含有することをいう。なお、アルカリ金属珪酸塩は、水に可溶であるから、難水溶性珪酸塩には含まれない。
難水溶性珪酸質粉末の具体例としては、黒曜石、真珠岩、松脂岩、珪藻土、珪酸塩白土、火山シラス、フライアッシュ、珪酸カルシウム、黒曜石や真珠岩を高温で熱処理してできる人工発泡体(パーライト発泡体)などが挙げられる。廃棄物資源の有効活用および製造コスト低減の観点から、パーライト発泡体の製造時に生じる珪酸質廃棄物(パーライト発泡体ダスト等)、珪酸カルシウムボードを製造・加工する際に生じる珪酸カルシウム廃棄物(珪酸カルシウムボードの切削粉等)、フライアッシュが特に好適に使用できる。これらの珪酸質粉末は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
難水溶性珪酸質粉末のかさ密度は、セシウムイオン吸着能の点から、0.8g/cm3以下が好ましく、0.5g/cm3以下がより好ましい。また、難水溶性珪酸質粉末の粒度はセシウムイオン吸着能の点から、0.6mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
本発明の(A)焼成物に用いるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムが挙げられる。珪酸ナトリウムとしては、水溶液状の1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウムなど、あるいは粉末状のメタ珪酸ナトリウムの1種または2種などが使用できる。また、珪酸カリウムとしては水溶液状の1号珪酸カリウムまたは2号珪酸カリウムなどが使用できる。これらアルカリ金属珪酸塩のなかでは、珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムが比較的安価であるため好ましく、珪酸カリウムを用いると(A)焼成物のセシウムイオンの吸着性能が向上するため特に好ましい。
本発明の(A)焼成物に用いるアルカリ金属アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸リチウムが挙げられる。アルミン酸ナトリウムとしては水溶液状または粉末状のいずれも使用できる。また、アルミン酸カリウムとしては水溶液状または粉末状(アルミン酸カリウム三水和物)いずれも使用できる。これらアルカリ金属アルミン酸塩のなかでは、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウムが比較的安価であるため好ましく、アルミン酸カリウムを用いると(A)焼成物のセシウムイオンの吸着性能が向上するため特に好ましい。
本発明の(A)焼成物は、例えば前述した難水溶性珪酸質粉末とアルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩と水を混合した後、該混合物を焼成して得られる。該混合物において、アルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩の配合割合は、セシウムイオン吸着能の点から、アルカリ金属珪酸塩100重量部に対してアルカリ金属アルミン酸塩を5〜60重量部配合するのが好ましく、10〜30重量部配合するのがより好ましい。
また、該混合物において、アルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩は、セシウムイオン吸着能及び経済性の点から、その合計量が難水溶性珪酸質粉末100重量部に対して10〜100重量部となるように配合するのが好ましく、30〜70重量部がより好ましい。
また、該混合物において、アルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩は、セシウムイオン吸着能及び経済性の点から、その合計量が難水溶性珪酸質粉末100重量部に対して10〜100重量部となるように配合するのが好ましく、30〜70重量部がより好ましい。
前記混合物において、水の配合割合は、難水溶性珪酸質粉末とアルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩の合計100重量部に対して、30〜150重量部となるように配合するのが好ましく、60〜100重量部がより好ましい。水の配合割合が少なすぎると難水溶性珪酸質粉末とアルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩を均一に混合することができなかったり、多すぎると混合後の混合物が分離するなどして、吸着剤の製造に支障が生じる場合があるため好ましくない。なお、水溶液状のアルカリ金属珪酸塩を用いる場合は、その水分量は水の配合量に含めるものとする。
本発明の(A)焼成物の製造において、難水溶性珪酸質粉末とアルカリ金属珪酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩および水の混合方法は特に限定されず、ホバート式モルタルミキサー、パン型ミキサー、強制二軸ミキサーなどの一般的なミキサーを用いて混合することができる。
本発明では、前記混合物を未乾燥の状態で焼成して(A)焼成物を製造するのが好ましい。焼成時の該混合物の含水率は10質量%以上が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。含水率が低すぎるとセシウムイオンに対する吸着性能が大幅に低下するため好ましくなく、含水率が高すぎると焼成時間が長くなり効率的・経済的な製造が困難となる恐れがある。そのため、該混合物は含水率が10質量%以上、さらに10〜70質量%の範囲に収まるように調整した後に焼成するのが好ましい。例えば、該混合物が含水率の高いスラリー状の混合物である場合は、型枠等に流し込んで一定期間養生し、変形しない程度まで固化した後に型枠等から取り外し、含水率が70質量%以下になるまで乾燥させてから焼成するのが好ましい。また、該混合物が含水率の低い粉粒状である場合は、ロールプレス等で圧縮成形してから焼成するのが好ましい。焼成時の該混合物の形状は特に限定されないが、混合物の形状(厚み)が大きすぎると均質な焼成物が得られ難くなる恐れがあるため、混合物の厚みは30mm以下程度にすることが望ましい。
前記混合物の焼成においては、セシウムイオン吸着能の点から、焼成温度を200〜800℃とするのが好ましく、300〜500℃がより好ましい。焼成時間は概ね5〜30分程度で良く、前記混合物の含水率が高い場合や焼成温度が低い場合には焼成時間を長めに設定する。本発明の(A)焼成物としては、前記混合物の含水率を20〜40質量%に調整して、300〜500℃の温度で焼成すると、20分程度の短い焼成時間で吸着性能の高い焼成物が得られるため、製造コスト(エネルギーコスト)低減の面から特に好ましい。焼成設備は特に限定されないが、焼成温度の管理が容易で簡便に使用できることから、電気炉や外熱式キルン等の焼成設備が好ましい。
本発明の(A)焼成物としては、セシウムイオン吸着能の点から、(A)焼成物の粒度を粒径0.05〜5mmになるように調整して用いることが好ましく、粒径0.1〜3mmが特に好ましい。本発明において、粒度の調整方法は特に限定されず、一般的な粉砕機器を用いて焼成物を粉砕した後にふるい等を用いて所定の粒度に調整することができる。粉砕機器として、回転刃で固形物を切断粉砕するミル式粉砕機や粉砕刃の反復運動で固形物を粉砕するジョークラッシャーを用いると0.05mm以下の微粉の発生を少なくすることができるため特に好ましい。
本発明に用いる(B)透水性材料とは、水不溶性の原料で形成され、かつ透水性のある材料であり、例えば水不溶性の有機又は無機繊維で形成された透水性材料が挙げられる。また透水性材料の形態は、織布状でも不織布状であってもよい。
本発明で用いる(B)透水性材料としては、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維などの有機繊維、あるいはガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウール、スラグウールなどの無機繊維を用いた織布又は不織布のシートやマット等が挙げられるが、耐久性があり、比較的安価であることから、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維又はロックウールの織布又は不織布を用いたものが好ましい。透水性材料の形成方法等は特に限定されないが、シート状の透水性材料を用いる場合は、不織布シートを用いると透水性を確保し易くなるため好都合であり、耐久性確保の面から目付(単位面積質量)が30g/m2以上の有機繊維の不織布シートが特に好ましい。また、マット状の透水性材料を用いる場合は、平均繊維径が7μm以下で、ショット(未繊維化の粒状物)含有量が4%以下の無機繊維を使用することが好ましい。
本発明のセシウム吸着資材は、前記透水性材料に前記焼成物を担持させて作成する。焼成物の担持方法は焼成物が漏出しないように透水性材料に保持される限り、特に限定されないが、透水性材料として不織布シートを用いる場合は、不織布シートを袋状に加工して焼成物を充填してセシウム吸着資材を作成することができる。また、マット状の透水性材料を用いる場合は、解砕した前記繊維を焼成物と混合し、焼成物を担持させるように混合物を集積・圧縮してマット状に成形することができる。また、透水性材料として織布を用いる場合は、袋状の透水材料中に焼成物を充填すればよい。
本発明で用いる(A)焼成物はセシウムイオンに対する吸着性能が高いため、セシウム含有物中のセシウムイオン濃度の50〜300倍程度の焼成物量でセシウムイオンに対して分な吸着効果を発揮する。しかし、本発明のセシウム吸着資材では、セシウムイオンと焼成物とを確実に接触させるため、シート状(袋状)またはマット状の吸着資材の面積に対し0.5〜10kg/m2程度の焼成物を担持するのが良く、1〜5kg/m2程度の担持量がより好ましい。焼成物の担持量が少なすぎるとセシウムイオンとの接触が不十分でセシウムイオンの吸着性能が低下する恐れがあり、多すぎると担持量では経済性が損なわれるため好ましくない。
本発明のセシウム吸着資材を、セシウム含有水からのセシウムイオンを吸着除去に使用する場合は、セシウム吸着資材にセシウム含有水を通水させるだけで良く、一般的なろ過フィルター等と同様に使用することができる。セシウム含有水の通水量はセシウム含有水中のセシウムイオン量とセシウム吸着資材に担持される焼成物の量に応じて調整する。通水量の上限は、通水するセシウム含有水中のセシウムイオン量が焼成物量の1/300〜1/50程度に達する水量とすることが好ましく、セシウムイオンの吸着を確実にするために1/1500〜1/250程度に達する水量とするのがより好ましい。例えば、2kg/m2の焼成物を担持するセシウム吸着資材を用いて、セシウムイオン濃度が10mg/Lのセシウム含有水を処理する場合、通水量の上限は130〜800Lとすることがより好ましい。ここでセシウム含有水には、セシウムを含有する廃水等の他、セシウム含有物を処理した水が含まれる。
本発明のセシウム吸着資材をセシウム含有物の保管(セシウムイオンの拡散防止)に用いる場合は、セシウム吸着資材をセシウム含有物の底部または周囲に設置することで、雨水などによりセシウム含有物から溶出するセシウムイオンをセシウム吸着資材に捕捉させて周囲への拡散を防止することができる。
本発明のセシウム吸着資材は、セシウム含有物からセシウムイオンが溶出する可能性のある面に接するように設置する。セシウム含有物がフレコン等の容器に保管されており、その底部からセシウムイオンが溶出する可能性がある場合は、セシウム含有物保管容器の底部にセシウム吸着資材を設置する。また、セシウム含有物を地盤内に埋設保管する場合には、セシウム含有物の周囲にセシウム吸着資材が接するように、あらかじめ埋設孔の内壁にセシウム吸着資材を設置してからセシウム含有物を埋設する。本発明のセシウム吸着資材は、シート状あるいはマット状で使用するほか、土嚢袋やフレコンのような袋状に加工して用いることで、セシウム含有物の保管をより簡便に行うことができる。
本発明のセシウム吸着資材は、セシウム含有物からセシウムイオンが溶出する可能性のある面に接するように設置する。セシウム含有物がフレコン等の容器に保管されており、その底部からセシウムイオンが溶出する可能性がある場合は、セシウム含有物保管容器の底部にセシウム吸着資材を設置する。また、セシウム含有物を地盤内に埋設保管する場合には、セシウム含有物の周囲にセシウム吸着資材が接するように、あらかじめ埋設孔の内壁にセシウム吸着資材を設置してからセシウム含有物を埋設する。本発明のセシウム吸着資材は、シート状あるいはマット状で使用するほか、土嚢袋やフレコンのような袋状に加工して用いることで、セシウム含有物の保管をより簡便に行うことができる。
セシウム吸着資材の設置量は、セシウム含有物から溶出する可能性のあるセシウムイオン量とおよびセシウム吸着資材に担持される焼成物の量に応じて調整する。セシウム吸着資材は、担持する焼成物の量がセシウムイオン量の50〜300倍以上となるように設置するのが好ましく、セシウムイオンの吸着を確実にするために250〜1500倍程度にするのがより好ましい。例えば、5000mgのセシウムイオンがセシウム含有物の底部(表面積1m2)から溶出する可能性があるセシウム含有物に対して拡散防止処理を行う場合には、1.25〜7.5kg/m2の焼成物を担持する面積1m2のセシウム吸着資材をセシウム含有物の底部に設置することが好ましい。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(セシウム吸着資材に用いる焼成物の製造)
以下のA1〜Dの材料を表1に示す割合で配合し、ホバート式モルタルミキサーを用いて3分間混合して混合物を得た。該混合物を内寸15×15×15mmの型枠に入れて成形し、1日後に脱型してから40℃の乾燥温度で一定時間乾燥し、その後、電気炉を用いて該混合物を焼成した。焼成後、焼成物を常温近傍まで炉外で自然冷却してからジョークラッシャーまたはミル式粉砕機を用いて粉砕し、ふるいを用いて所定の粒度に調整して粒子状焼成物を得た。焼成物の製造条件(使用した混合物No.、焼成前の混合物の含水率、焼成温度および焼成時間、粉砕・粒度調整した焼成物の粒度)を表2に示す。
以下のA1〜Dの材料を表1に示す割合で配合し、ホバート式モルタルミキサーを用いて3分間混合して混合物を得た。該混合物を内寸15×15×15mmの型枠に入れて成形し、1日後に脱型してから40℃の乾燥温度で一定時間乾燥し、その後、電気炉を用いて該混合物を焼成した。焼成後、焼成物を常温近傍まで炉外で自然冷却してからジョークラッシャーまたはミル式粉砕機を用いて粉砕し、ふるいを用いて所定の粒度に調整して粒子状焼成物を得た。焼成物の製造条件(使用した混合物No.、焼成前の混合物の含水率、焼成温度および焼成時間、粉砕・粒度調整した焼成物の粒度)を表2に示す。
(A1)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A2)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.6mm以下)
(A3)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.6〜0.8mm)
(A4)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.6g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A5)珪酸質粉末:未発泡パーライトダスト(かさ密度0.9g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A6)珪酸質粉末:珪酸カルシウムボード切削粉(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A7)珪酸質粉末:フライアッシュ市販品(かさ密度0.9g/cm3、粒径0.02mm以下)
(A2)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.6mm以下)
(A3)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.6〜0.8mm)
(A4)珪酸質粉末:パーライト発泡体ダスト(かさ密度0.6g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A5)珪酸質粉末:未発泡パーライトダスト(かさ密度0.9g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A6)珪酸質粉末:珪酸カルシウムボード切削粉(かさ密度0.4g/cm3、粒径0.3mm以下)
(A7)珪酸質粉末:フライアッシュ市販品(かさ密度0.9g/cm3、粒径0.02mm以下)
(B1)アルカリ金属珪酸塩:1号珪酸カリウム(富士化学社製、二酸化珪素27.5〜29%、酸化ナトリウム21〜23%)
(B2)アルカリ金属珪酸塩:1号珪酸ナトリウム(富士化学社製、二酸化珪素35〜38%、酸化ナトリウム17〜19%)
(B2)アルカリ金属珪酸塩:1号珪酸ナトリウム(富士化学社製、二酸化珪素35〜38%、酸化ナトリウム17〜19%)
(C1)アルカリ金属アルミン酸塩:アルミン酸カリウム三水和物(関東化学社製試薬)
(C2)アルカリ金属アルミン酸塩:アルミン酸ナトリウム(関東化学社製試薬)
(D)水:蒸留水
(C2)アルカリ金属アルミン酸塩:アルミン酸ナトリウム(関東化学社製試薬)
(D)水:蒸留水
(セシウム吸着資材の作成)
ポリプロピレン製不織布(前田工繊社製スプリトップ、不織布厚さ0.52mm、単位面積質量100g/m2)を直径110mmの円形袋状に加工し、袋内部に表2に示す焼成物ならびに天然ゼオライト(北海道産モルデン沸石、粒度0.15〜2.5mm)を封入してセシウム吸着資材を作成した。セシウム吸着資材に封入した焼成物又はゼオライトの種類と封入量を表3に示す。
ポリプロピレン製不織布(前田工繊社製スプリトップ、不織布厚さ0.52mm、単位面積質量100g/m2)を直径110mmの円形袋状に加工し、袋内部に表2に示す焼成物ならびに天然ゼオライト(北海道産モルデン沸石、粒度0.15〜2.5mm)を封入してセシウム吸着資材を作成した。セシウム吸着資材に封入した焼成物又はゼオライトの種類と封入量を表3に示す。
(セシウム含有水からのセシウムイオンの吸着除去試験)
関東化学社製のセシウム標準液(セシウムイオン濃度1000mg/L)を使用してセシウムイオン濃度10mg/Lのセシウム含有水を作成し、吸着除去試験の対象物とした。容量2000mLのろ過ビンに容量1000mLのブフナロートを接合し、ブフナロートの目皿上に表3のセシウム吸着資材を設置した。セシウム吸着資材の上面よりセシウム含有水を毎分200mLの速さで30分間(合計6L)通水した。通水開始10分後と30分後にろ過ビンに流出した液を採取し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して検液とし、セシウムイオン濃度をICP( 高周波誘導結合プラズマ)質量分析法で測定した。セシウムイオン濃度の測定結果を表4に示す。
関東化学社製のセシウム標準液(セシウムイオン濃度1000mg/L)を使用してセシウムイオン濃度10mg/Lのセシウム含有水を作成し、吸着除去試験の対象物とした。容量2000mLのろ過ビンに容量1000mLのブフナロートを接合し、ブフナロートの目皿上に表3のセシウム吸着資材を設置した。セシウム吸着資材の上面よりセシウム含有水を毎分200mLの速さで30分間(合計6L)通水した。通水開始10分後と30分後にろ過ビンに流出した液を採取し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して検液とし、セシウムイオン濃度をICP( 高周波誘導結合プラズマ)質量分析法で測定した。セシウムイオン濃度の測定結果を表4に示す。
表4の結果より、本発明のセシウム吸着資材は、天然ゼオライトまたは本発明以外の焼成物を封入した吸着資材を用いた場合に比べて、通水後のセシウムイオン濃度が低減されており、セシウムイオンに対する吸着除去効果が高いことが分かる。また、本発明のセシウム吸着資材を用いたものは、焼成物の封入量が少ない場合でもセシウム含有水中のセシウムイオンを効果的に吸着しており、セシウムイオンの除去処理を経済的に行うことができる。さらに、本発明のセシウム吸着資材を用いたものは、通水開始から終了までの間、セシウムイオン濃度の低減効果が保たれており、セシウム含有水に対するセシウムイオンの吸着除去効果を安定的に維持できることが分かる。
(セシウム含有土壌からのセシウムイオンの拡散防止試験)
セシウム含有土壌の保管を想定し、セシウム吸着資材を用いたセシウムイオンの拡散防止試験を以下の要領で実施した。
セシウム含有土壌の保管を想定し、セシウム吸着資材を用いたセシウムイオンの拡散防止試験を以下の要領で実施した。
(セシウム含有模擬汚染土壌の作成)
関東化学社製のセシウム標準液(セシウムイオン濃度1000mg/L)を使用してセシウムイオン濃度250mg/Lのセシウム水溶液を調整し、珪石粉(ブレーン比表面積3900cm2/g、宇部サンド工業社製)500gに対してセシウム水溶液200mLを添加・混合した後、40℃の温度で24時間乾燥してセシウムイオン含有量100mg/kgのセシウム含有模擬汚染土壌を作成した。
関東化学社製のセシウム標準液(セシウムイオン濃度1000mg/L)を使用してセシウムイオン濃度250mg/Lのセシウム水溶液を調整し、珪石粉(ブレーン比表面積3900cm2/g、宇部サンド工業社製)500gに対してセシウム水溶液200mLを添加・混合した後、40℃の温度で24時間乾燥してセシウムイオン含有量100mg/kgのセシウム含有模擬汚染土壌を作成した。
(模擬汚染土壌から流出した溶出液中のセシウムイオン量の測定)
容量2000mLの吸引ろ過ビンに容量1000mLのブフナロートを接合し、ブフナロートの目皿上に作成したセシウム吸着資材を設置し、その上にセシウム含有模擬汚染土壌200gを載せ、吸引ろ過ビンを−10KPaの圧力で吸引しながらセシウム含有模擬土壌上面に蒸留水を毎分100mLで60分間(合計6L)散水した。散水開始後、20分毎に吸引ろ過ビンに流出した溶出液を採取し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して検液とし、セシウムイオン濃度をICP( 高周波誘導結合プラズマ)質量分析法で測定した。セシウムイオン濃度の測定結果を表5に示す。
容量2000mLの吸引ろ過ビンに容量1000mLのブフナロートを接合し、ブフナロートの目皿上に作成したセシウム吸着資材を設置し、その上にセシウム含有模擬汚染土壌200gを載せ、吸引ろ過ビンを−10KPaの圧力で吸引しながらセシウム含有模擬土壌上面に蒸留水を毎分100mLで60分間(合計6L)散水した。散水開始後、20分毎に吸引ろ過ビンに流出した溶出液を採取し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して検液とし、セシウムイオン濃度をICP( 高周波誘導結合プラズマ)質量分析法で測定した。セシウムイオン濃度の測定結果を表5に示す。
表5の結果より、本発明のセシウム吸着資材は、吸着資材を設置しない場合あるいは天然ゼオライトまたは本発明以外の焼成物を封入した吸着資材を用いた場合に比べて、有模擬土壌から流出した溶出液のセシウムイオン濃度が低減されており、セシウムイオンの拡散防止効果が高いことが分かる。また、本発明のセシウム吸着資材を用いたものは、焼成物の封入量が少ない場合でも溶出するセシウムイオンを効果的に吸着しており、セシウム含有物の保管におけるセシウムイオンの拡散防止処理を経済的に行うことができる。さらに、本発明のセシウム吸着資材を用いたものは、散水開始から終了までの間、溶出液のセシウムイオン濃度の低減効果が保たれており、セシウム含有土壌の保管におけるセシウムイオンの拡散防止効果を安定的に維持できることが分かる。
Claims (8)
- (A)難水溶性珪酸質粉末、アルカリ金属珪酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩および水を含有する混合物の焼成物を、(B)透水性材料に担持したセシウム吸着資材。
- (A)焼成物の難水溶性珪酸質粉末が、パーライト発泡体の製造時に生じる珪酸質廃棄物、珪酸カルシウムボードを製造・加工する際に生じる珪酸カルシウム廃棄物、及びフライアッシュから選ばれる1種以上である請求項1に記載のセシウム吸着資材。
- (A)焼成物のアルカリ金属珪酸塩が珪酸カリウムである請求項1または2に記載のセシウム吸着資材。
- (A)焼成物のアルカリ金属アルミン酸塩がアルミン酸カリウムである請求項1〜3のいずれかに記載のセシウム吸着資材。
- (A)焼成物原料の混合物の含水率が10〜70質量%であり、該混合物の焼成温度が200〜800℃である請求項1〜4のいずれかに記載のセシウム吸着資材。
- セシウム吸着資材の形状がシート状、マット状、又は袋状である請求項1〜5のいずれかに記載のセシウム吸着資材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のセシウム吸着資材にセシウム含有水を通水してセシウムイオンを吸着することを特徴とするセシウム含有水の処理方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のセシウム吸着資材を、セシウム含有物の底部または周囲に設置することを特徴とするセシウム含有物の保管方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012107682A JP2013234926A (ja) | 2012-05-09 | 2012-05-09 | セシウム吸着資材及びそれを用いたセシウム含有物の処理・保管方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014173847A (ja) * | 2013-03-05 | 2014-09-22 | Toyokazutada Kk | 放射性元素吸着剤および放射性元素の除去方法、ならびに放射性元素を吸着した吸着剤の処理方法 |
JP2015217643A (ja) * | 2014-05-20 | 2015-12-07 | 公益財団法人名古屋産業科学研究所 | シート材、シート材の製造方法及び吸着処理方法 |
JP2017125828A (ja) * | 2016-01-15 | 2017-07-20 | 卯 石井 | ロックウール素材及びその成形体である放射線遮蔽低減体を用いた公衆被爆防護、職業被爆防護、医療被爆防護ならびに放射性廃棄物処理に関する。 |
-
2012
- 2012-05-09 JP JP2012107682A patent/JP2013234926A/ja active Pending
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