JP2013234380A - 反応性dcスパッタ装置および成膜方法 - Google Patents

反応性dcスパッタ装置および成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な装置構成で、長時間に亘って成膜を安定に行うことができ、基板の損傷を抑えて良質な薄膜を形成できる反応性DCスパッタ装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】反応性DCスパッタ装置10は、ターゲット11と、ターゲット11に対向する基板保持部12と、ターゲット11の基板保持部12側に近接して設けられた環状のアノード電極13と、ターゲット11に接続されたパルスDC電源14と、成膜空間に不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段16Aとを備え、アノード電極13は、第1アパーチャ19と、該第1アパーチャ19の基板保持部12側に近接して積層された第2アパーチャ20とを有し、第2アパーチャ20は厚さ方向に貫通する複数の貫通孔20aを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、反応性DCスパッタ装置および成膜方法に関する。
RE−123系酸化物超電導体(REBaCu:REは希土類元素の内から選択される1以上の元素)は、液体窒素温度で超電導性を示し、電流損失が低いため、これを超電導線材に加工して電力供給用の超電導導体あるいは超電導コイルを製造することがなされている。
この種の酸化物超電導導体の一例構造として、金属製の基材の上に拡散防止層を形成後、IBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)による配向層を形成し、その上にキャップ層を形成し、更に酸化物超電導層を形成し、その上にAgの安定化層を形成した積層構造の酸化物超電導導体が知られている。なお、各層の構成材料として、例えば、拡散防止層をAl層とY層の積層構造から構成し、配向層をMgO層から構成し、キャップ層をCeO層から構成した構造が知られている。
ここで、これら各層のうちAl層は、例えば反応性DCスパッタ法により成膜することができる。反応性DCスパッタ法は、グロー放電によって発生させた不活性ガスのイオンを、ターゲットに衝突させてスパッタ粒子を叩き出し、このスパッタ粒子を反応性ガスと反応させ、基板上に堆積させることで絶縁膜などの化合物薄膜を成膜する方法である。
この反応性DCスパッタ法による成膜装置(反応性DCスパッタ装置)の一例を図9に示す。
図9に示す反応性DCスパッタ装置100は、ターゲットにマイナスのパルスDC電圧を印加して成膜を行うように構成されている。この反応性DCスパッタ装置100は、カソードとなる円盤状のターゲット101と、その外周部直上に近接配置された円環状のアパーチャ(アノード)102と、これらの上方に配置された基板保持部103と、基板保持部103のターゲット101側に保持された基板104と、ターゲット101に接続されたパルスDC電源105と、各部を収容するチャンバー106とを有している。チャンバー106には、上方に供給口107および排気口108が設けられ、供給口107にはガス供給手段が、排気口108には減圧手段が、それぞれ接続されている。また、アパーチャ102と基板保持部103は、接地線102a、103aにより、接地されている。
この反応性DCスパッタ装置100は、減圧状態とされたチャンバー106内に、ガス供給手段にて不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するとともに、パルスDC電源105によって、ターゲット101にマイナスのパルスDC電圧を供給してグロー放電を発生させ、ターゲット101の上方空間にプラズマを生成させる。このプラズマ中でイオン化した不活性ガスの原子を衝突させることでターゲット101からスパッタ粒子を弾き出し、スパッタ粒子と反応性ガスとの反応によって生成された化合物粒子を基板104上に堆積する。
このとき、不活性ガスのイオン化等に伴って発生した電子は、ターゲット101の中心から円弧を描くように周囲に流れてアパーチャ102に吸収される。このため、基板104にはほとんど電子が到達せず、電子の衝突によって基板104にダメージを与えることなく化合物薄膜を形成することが可能である。
しかしながら、以上のような成膜過程で生成される化合物粒子は、基板104上に堆積すると同時に、アパーチャ102の上面やチャンバー106の壁面等、他の箇所にも堆積してしまう。
ここで、アパーチャ102の上面に、酸化物や窒化物のような絶縁性の化合物薄膜が堆積されると、アパーチャ102に向かう電子の流れが阻害され、いわゆるアノード消失現象が発生する。
このとき、行き場を失った電子は上方に流れて基板104に衝突し、基板104にダメージを与えてしまう。特に、基板104自身が電気伝導性を有する場合には、電子が基板104内を流れ、基板104の各部に悪影響を与える可能性がある。
また、アパーチャ102の上面やその他の箇所に堆積した絶縁膜が電子によって帯電し、アーキングと呼ばれる異常放電が多数発生したり、プラズマが消失したりし、成膜条件が不安定になるといった問題も生じるおそれがある。
このようなアノード消失を回避するための成膜装置として、例えば、特許文献1に記載されたマグネトロンスパッタ装置がある。
このマグネトロンスパッタ装置は、陽極部(アノード)の上部を覆うように、陽極部へのスパッタ粒子の付着を防止する防着機構を配設するとともに、陰極(カソード)から発生する電子が防着機構を迂回して陽極に流入するような磁界を形成する補正磁気回路を用い、陽極部への電子の流入を阻害することなく、陽極部の着膜によるアノード消失を抑制しようとするものである。
特開2010−24532号公報
しかしながら、上述の構成の反応性DCスパッタ装置では、補正磁気回路が発生する磁界によってプラズマが周囲に拡大するため、プラズマの状態が不安定になるおそれがある。また、補正磁気回路を追加するため、成膜装置の構成が複雑になり、更に装置が大型化するという問題も生じる。よって、図9に示す構成の反応性DCスパッタ装置100において、装置を複雑にすることなくプラズマの安定性を長期間保持し、安定した成膜が可能な装置が望まれている。
本発明は、このような従来の実情に鑑みなされたものであり、簡単な装置構成で、長時間に亘って成膜を安定に行うことができ、基板のダメージを抑えて良質な薄膜を形成できる反応性DCスパッタ装置および成膜方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の反応性DCスパッタ装置は、減圧容器と、該減圧容器内に収容されたターゲットと、該ターゲットに対向するように設けられた基板保持部と、前記ターゲットの前記基板保持部側に近接して設けられた環状のアノード電極と、前記ターゲットに接続されたDC電源と、前記ターゲットと前記基板保持部との間に不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段とを備え、前記アノード電極が、前記ターゲット側に配された第1アパーチャと、該第1アパーチャの前記基板保持部側に近接して第1アパーチャを覆うように積層された第2アパーチャを備え、前記第2アパーチャには該第2アパーチャをその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする。
本発明によれば、第1アパーチャと第2アパーチャを積層してアノード電極を構成し、第1アパーチャを覆った第2アパーチャに複数の貫通孔を有するため、プラズマを生成させて成膜する過程で、プラズマに曝される領域は化合物粒子が経時的に堆積して電子を吸収する機能が減少するが、第1アパーチャと第2アパーチャの重なり領域でプラズマから陰になる部分は化合物粒子の付着が抑えられ、アノードとしての機能が維持される。
このため、長時間に亘る成膜過程においても、プラズマ中で発生した電子をアノード電極側に確実に吸収でき、電子による基板のダメージを抑え、アーキングやプラズマ消失を抑えて、安定な成膜条件で良質な薄膜を形成することが可能な反応性DCスパッタ装置を提供できる。
また、本発明の反応性DCスパッタ装置は、一般的な反応性DCスパッタ装置に第2アパーチャを付与しただけの簡単な構成である。即ち、本発明によれば、装置を複雑化、大型化することなく、電子による基板のダメージを抑制し、アーキングやプラズマ消失を抑え、安定な成膜条件で良質な薄膜を形成することが可能となる。
本発明において、前記第1アパーチャに対向する前記第2アパーチャの表面部分に、前記複数の貫通孔が均等に配置されることが好ましい。
貫通孔を均等に配置することにより、第1アパーチャと第2アパーチャにおいてプラズマから陰になる部分を均等に配置することができ、アノード電極側でプラズマからの電子を均等に吸収することができ、プラズマの形を良好な状態に保持できる。
本発明において、正のバイアス電圧を印加するバイアス電源が前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに電気的に接続されたことを特徴とする。
正のバイアス電圧を第1アパーチャまたは第2アパーチャに印加することで、アパーチャにおける電子の吸収効率を向上させ、基板側に飛来する電子を削減することができ、電子による基板ダメージを生じさせないようにしながら良質の成膜ができる。
本発明の成膜方法によれば、減圧容器と、該減圧容器内に収容されたターゲットと、該ターゲットに対向するように設けられた基板保持部と、前記ターゲットの前記基板保持部側に近接して設けられた環状のアノード電極と、前記ターゲットに接続されたDC電源と、前記ターゲットと前記基板保持部との間に不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段とを備え、反応性DCスパッタ法によって薄膜を成膜する成膜方法であって、前記アノード電極として、前記ターゲット側に配された第1アパーチャと、該第1アパーチャの前記基板保持部側に近接して第1アパーチャを覆うように積層された第2アパーチャを有し、前記第2アパーチャにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有する構成を用いて反応性DCスパッタを行うことを特徴とする。
本発明の成膜方法によれば、第1アパーチャと第2アパーチャとを有し、第2アパーチャとして複数の貫通孔を有し第1アパーチャを覆うものを用いるため、第1アパーチャと第2アパーチャにおいてプラズマから陰になる部分における反応生成物の堆積を抑え、長時間に亘る成膜過程においても、プラズマ中で発生した電子をアノード電極に確実に吸収でき、電子による基板のダメージ、アーキングやプラズマ消失を抑えて、安定な成膜条件で良質な薄膜を形成することが可能となる。
本発明において、成膜する薄膜として絶縁膜を選択できる。
成膜する薄膜が絶縁膜である場合、基板上に目的とする絶縁膜が成膜されるのと同時に、アノード電極にも絶縁膜が堆積するため、これが電極面に全面的に堆積するとアノード消失が生じる。これに対して、本発明では、アノード電極のうち、第1アパーチャと第2アパーチャの間においてプラズマから陰になる部分に絶縁膜の堆積が抑えられるため、長時間に亘る成膜過程においても、アノード電極の機能が維持される。このため、成膜する薄膜が絶縁膜である場合でも、アノード消失が回避され、安定な成膜条件で良質な絶縁膜を形成することが可能である。
本発明において、前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに正のバイアス電圧を印加することができる。
正のバイアス電圧を第1アパーチャまたは第2アパーチャに印加することで、アパーチャにおける電子の吸収効率を向上させ、基板側に飛来する電子を削減することができ、電子による基板ダメージを生じさせないようにしながら良質の成膜ができる。
本発明において、前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに印加するバイアス電圧を+10V以上、+40V以下の範囲にすることができる。
アパーチャに印加するバイアス電圧を上述の範囲とすることで、成膜速度を大きくしても表面粗さの小さい膜を成膜する場合に有利であって、膜厚が大きく、表面の平坦な膜を良好な成膜速度で形成できる方法を提供することができる。
本発明の反応性DCスパッタ装置によれば、第1アパーチャと第2アパーチャとを有し、第1アパーチャを覆う第2アパーチャに複数の貫通孔を有するため、プラズマを生成させて行う成膜過程で、プラズマに露出する領域は、化合物粒子が経時的に堆積して電子を吸収する機能が減少するが、第1アパーチャと第2アパーチャで挟まれた領域でプラズマから陰になる部分は、化合物粒子の付着が抑えられ、アノードとしての機能が維持される。このため、本発明の反応性DCスパッタ装置は、長時間に亘る成膜過程においても、プラズマ中で発生した電子がアノード電極に確実に吸収され、電子による基板のダメージを抑え、アーキングやプラズマ消失を抑えて、安定な成膜条件で良質な薄膜を形成することが可能である。
また、本発明の反応性DCスパッタ装置は、一般的な反応性DCスパッタ装置に第2アパーチャを付与しただけの簡単な構成である。すなわち、本発明の反応性DCスパッタ装置によれば、装置を複雑化、大型化することなく、前述の効果を得ることが可能である。
本発明に係る第1実施形態の反応性DCスパッタ装置を示す模式図。 図1に示す反応性DCスパッタ装置に適用する第2アパーチャの各種構成例を示すもので、図2(a)は第1の例を示す平面図、図2(b)は第2の例を示す平面図、図2(c)は第3の例を示す平面図、図2(d)は第4の例を示す平面図。 図1に示す反応性DCスパッタ装置において、第1アパーチャと第2アパーチャの近傍における電子の流れを示す模式図。 図1に示す反応性DCスパッタ装置において、ターゲットに印加するパルスDC電圧パターンの一例を示す模式図。 本発明に係る反応性DCスパッタ装置に適用する第2アパーチャの他の例を示すもので、図5(a)は第5の例を示す平面図、図5(b)は第6の例を示す平面図。 図1に示す反応性DCスパッタ装置で成膜する場合に対象とする酸化物超電導線材の一例構造を示す斜視図。 本発明に係る反応性スパッタ装置の第2実施形態を示す構成図。 実施例で使用した反応性DCスパッタ装置の概略構成を示す模式図。 一般的な反応性DCスパッタ装置の概略構成を示す模式図。
以下、本発明に係る反応性DCスパッタ装置および成膜方法について図面に基づいて説明するが本発明は以下の図面に示す形態に制限されるものではない。
まず、本発明に係る反応性DCスパッタ装置の第1実施形態の構造について説明する。
図1に本実施形態に係る反応性DCスパッタ装置の概略構成を示し、図2に図1に示す反応性DCスパッタ装置に備える第2アパーチャの各種構成例を示す。
図1に示す反応性DCスパッタ装置10は、水平に配置された円盤状のターゲット11と、該ターゲット11の上方に対向するように設けられた基板保持部12と、ターゲット11の基板保持部12側に近接して設けられた環状のアノード電極13と、ターゲット11に接続されたパルスDC電源(DC電源)14とを備えている。そして、ターゲット11と基板保持部12とアノード電極13が真空チャンバー等の減圧容器15の内部に収容されている。
減圧容器15は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。減圧容器15の構成材料には、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼のような金属材料等を用いることができる。
減圧容器15には、上部に供給口16および排気口17が設けられており、供給口16および排気口17を介して、減圧容器15の内部と外部が連通されている。供給口16にはガス供給手段16Aが、排気口17には真空ポンプ等の減圧手段17Aがそれぞれ接続されている。
ガス供給手段16Aは、プロセスガスと反応性ガスとの混合ガスを、供給口16から減圧容器15内に供給できるように構成されている。プロセスガスを減圧状態の減圧容器15内に導入してターゲット11に電力を投入すると、ターゲット11とアノード電極13および基板保持部12間にプラズマを発生させることができる。このようなプロセスガスとして、不活性ガス、例えば、Arガスを例示できる。反応性ガスは、ターゲット11から叩き出された粒子と反応して基板18の表面に化合物薄膜を形成する原材料となるものである。用いる反応性ガスは、特に限定しないが、酸化物の膜を堆積する場合はOガス、窒化物の膜を堆積する場合はNガス等が挙げられる。
ターゲット11は、減圧容器15の内底部に水平に配置されている。ターゲット11の構成材料は、目的とする薄膜の組成に応じて適宜選択される。例えば、目的とする薄膜がAl膜である場合には、Alのターゲットが用いられる。目的とする薄膜がAlNである場合は、Alのターゲットに反応性ガスとして窒素ガスを用い、目的とする薄膜がTiNである場合は、Tiのターゲットに反応性ガスとして窒素ガスを用いることができる。
ターゲット11の形状は、特に限定しないが、例えば、平面視で真円、楕円形、長円形のような円形、あるいは、長方形、正方形のような四辺形にされている。なお、本実施形態のターゲット11は円盤状に形成されている。
ターゲット11の底部中心には、パルスDC電源14が接続されている。パルスDC電源14は、ターゲット11に印加するマイナスのパルスDC電圧を発生する。これにより、ターゲット11にDC電圧を連続的に印加する場合に比べて、ターゲット11で発生するアーク放電が軽減し、高品位の成膜を実現することが可能となる。なお、本実施形態では、一例として図4に示す矩形波の連続パターンからなるパルスDC電圧をターゲット11に印加することができる。
基板保持部12は、ターゲット11に対向するように配設されている。基板保持部12は、平面視で基板18よりも十分大きな面積を有する板状をなし、チャック機構などにより、ターゲット11側の表面(保持面)に基板18を保持することができる。この基板保持部12は、接地線12aを介し接地されている。
基板18は、本実施形態の反応性DCスパッタ装置10により、その表面に化合物薄膜が形成されるものである。このような基板18としては、例えば、金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、シリコン基板、化合物半導体基板等が挙げられる。
アノード電極13は、ターゲット11側に配された第1アパーチャ19と、該第1アパーチャ19の基板保持部12側に第1アパーチャ19を覆うように積層された第2アパーチャ20によって構成されている。
第1アパーチャ19および第2アパーチャ20の構成材料としては、導電性およびプラズマに対する耐腐食性を有する材料が用いられる。また、特に、第2アパーチャ20には後述するように多数の貫通孔20aが設けられるため、その構成材料は加工性に優れることも求められる。そのような導電性材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルまたはこれらを含む合金等の金属材料が挙げられる。
第1アパーチャ19は、その外周がターゲット11よりも若干大きな円環状の薄板であり、周壁状のアパーチャ支持部21により、ターゲット11の外周部の直上に近接配置されている。第1アパーチャ19は、アパーチャ支持部21および接地線13aを介し接地されている。
第2アパーチャ20は、上方から見た平面視での外形および寸法が第1アパーチャ19と略等しい円環状の薄板であり、その厚さ方向を貫通する図2(a)に示す複数の貫通孔20aが均等に形成されている。第2アパーチャ20の外周縁部には肉厚部20Aが形成され、この肉厚部20Aを第1アパーチャ19の周縁部上に設置して第2アパーチャ20が第1アパーチャ19を覆うように、互いの間に若干の間隙をあけて設置されている。また、図3では略されているが、第2アパーチャ20の肉厚部20Aを上下に貫通して第1アパーチャ19の周縁部に形成されているねじ穴に螺合されるボルトにより第2アパーチャ20が第1アパーチャ19に一体化されている。第2アパーチャ20は、前記ボルト、第1アパーチャ19、アパーチャ支持部21および接地線13aを介し接地されている。
第2アパーチャ20の貫通孔の形状は、特に限定されないが、例えば図2(a)に示すように周回りに8等分弱の幅を有し、直径方向内側に徐々に小さくなる扇形環状体形状の複数の貫通孔20aが均等に配置された形状にすることができる。また、図2(b)に示すように、周回りに10等分弱の幅を有し、直径方向内側に徐々に小さくなる扇形環状体形状の複数の貫通孔20bが均等に配置された形状にすることができる。また、図2(c)に示すように、周回りに8等分の幅より小さい幅であって、直径方向に徐々に小さくなり、図2(a)に示す貫通孔20aより若干幅の小さな扇形環状体形状の複数の貫通孔20cが均等に配置された形状にすることができる。また、図2(d)に示すような円形の貫通孔20dが複数均等に分散された形状にすることができる。貫通孔20dの形状は、角形のドット状、スリット状等、任意の形状を採用できる。これらの貫通孔20a〜20cが円弧状である場合、各貫通孔は、略同じ角度範囲で形成され、径方向および周方向に一定間隔で並設されていることが好ましい。また、貫通孔20dがドット状である場合、各貫通孔20dは、平面視で略均一な分布となるように全面に均一に分散形成されていることが好ましい。これら貫通孔20a〜20dの形状により、アノード電極13の各箇所で同等の電子吸引機能を得ることができ、均質な薄膜を長時間形成できる。
以上のように構成された反応性DCスパッタ装置10は、ターゲット11の上方の空間にプラズマを発生できる。このプラズマ中の不活性ガスのイオンを衝突させることでターゲット11から粒子を叩き出すことができ、このスパッタ粒子と反応性ガスとの反応によって生成した化合物粒子を基板18上に堆積させて化合物薄膜を成膜できる。
このとき、不活性ガスのイオン化等に伴って発生した電子は、ターゲット11の中心から円弧を描くように流れてアノード電極13に吸収される。このため、基板18に到達する原子が少なくなり、電子の衝突によって基板18に損傷を与えることなく化合物薄膜を形成することが可能である。
特に、本発明の反応性DCスパッタ装置10では、第1アパーチャ19の上に第2アパーチャ20を若干の間隙をあけて第1アパーチャ19を覆うように積層配置していることによって、第1アパーチャ19に化合物粒子が付着するのを防止する遮蔽部材として第2アパーチャ20が機能する。これにより、次のような効果を得ることができる。
仮に第2アパーチャ20が設けられていない構成とした場合、第1アパーチャ19の全面がプラズマ雰囲気に曝されるため、プラズマ中で生成された化合物粒子が絶縁膜として第1アパーチャ19の上面に全面的に付着、堆積する。これにより、第1アパーチャ19に向かう電子の流れが阻害され、行き場を失った電子によって、基板18がダメージを受け、また、アーキングやプラズマ消失が発生することにより、成膜条件が不安定になる。
これに対し、第1アパーチャ19上に第2アパーチャ20を積層していると、第2アパーチャ20の上面および第1アパーチャ19において貫通孔20aを介してプラズマ側に露出する領域は、化合物粒子が経時的に堆積して電子を吸収する機能が減少する。しかし、第2アパーチャ20の下面、および、第1アパーチャ19において第2アパーチャ20で覆われた領域は、プラズマから陰になる部分となり、化合物粒子の付着が抑えられる。このため、化合物薄膜の堆積が進行しても、電子は、図3に示すように、第2アパーチャ20の貫通孔20aから、第1アパーチャ19と第2アパーチャ20との隙間に侵入する。そして、第1アパーチャ19の上面において第2アパーチャ20で覆われた部分、および第2アパーチャ20の下面から電子が円滑に取り込まれ、アノードの機能を維持できる。従って、本実施形態の反応性DCスパッタ装置1では、長時間に亘る成膜過程においても、プラズマ中で発生した電子をアノード電極13側に確実に吸収することができ、電子の乱れが少ないので、電子衝突による基板18のダメージを防止でき、アーキングやプラズマ消失を抑えて、安定な成膜条件で良質な薄膜を形成することができる。
また、本実施形態の反応性DCスパッタ装置10は、一般的な反応性DCスパッタ装置に第2アパーチャ20を付与しただけの簡単な構成である。即ち、本発明の反応性DCスパッタ装置10によれば、装置を複雑化、大型化することなく、前述のような効果を得ることができる。
第1アパーチャ19と第2アパーチャ20の面間隔は、1〜3mm程度であることが好ましい。両者の面間隔が小さ過ぎると、成膜条件によっては、第1アパーチャ19と第2アパーチャ20との隙間が化合物膜で埋まり易くなり、電子がアノード電極13に到達するのが困難になる。また、間隔が大きすぎると、第1アパーチャ19と第2アパーチャ20の隙間に化合物粒子が侵入して第1アパーチャ19および第2アパーチャ20に付着する確率が高くなり、アノードとしての機能を損なう可能性がある。
以上、本実施形態の反応性DCスパッタ装置10について説明したが、前記した各実施形態において、反応性DCスパッタ装置10を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、反応性DCスパッタ装置10が備えるターゲット11の形状は平面視で四辺形でも良く、第1アパーチャ19および第2アパーチャ20の形状は、四角枠状であっても構わない。
この場合、第2アパーチャ20Eに設ける貫通孔のパターンとして、例えば、図5(a)に示すように、四角枠状の第2アパーチャ20Eに対し複数の矩形状の貫通孔20eが列状に配置された形状、図5(b)に示すように、四角枠状の第2アパーチャ20Fに対し複数の矩形スリット状の貫通孔20fを各辺に沿って複数配列したパターン等が挙げられる。
また、本実施形態においてアパーチャは2枚構造である必要はなく、3枚以上のアパーチャを積層した構造であっても良い。
次に、本発明に係る成膜方法を、酸化物超電導導体についてAl拡散防止層を形成する場合を例として以下に説明する。
図6は、本発明に係る成膜方法によって拡散防止層が形成される酸化物超電導導体1の一例構造を示す図である。なお、図6に示す酸化物超電導導体は、本発明に係る成膜方法によって拡散防止層を形成する対象の一例であり、以下に説明する積層構造に限定されないのは勿論である。
この例の酸化物超電導導体1は、基材2の上方に、拡散防止層4aと配向層4とキャップ層5を含む中間層3と、酸化物超電導薄膜6と第1の安定化層7と第2の安定化層8をこの順に積層してなる。この酸化物超電導導体1はその周面を図示略の絶縁被覆層などで覆って酸化物超電導線材として利用される。
前記酸化物超電導導体1に適用される基材2は、通常の酸化物超電導導体の基材本体として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状やシート状あるいは薄板状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)等のニッケル合金等の各種耐熱性金属材料等が挙げられる。なお、基材2としてNi合金に集合組織を導入したNi−W合金のような配向性基材を用いても良い。基材2の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
中間層3は、以下に説明する拡散防止層4aと配向層4とキャップ層5からなる構造を一例として適用することができ、基材2と配向層4の間にベッド層を設けることもできる。
拡散防止層4aは、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
ベッド層を設ける場合、ベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。
配向層4として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。
配向層4は、単層でも良いし、複層構造でも良い。例えば、前記金属酸化物からなる層(金属酸化物層)は、IBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)などにより成膜されて結晶配向性を有していることが好ましく、複数層である場合には、最外層(最も酸化物超電導層6に近い層)が少なくとも優れた結晶配向性を有していることが好ましい。
キャップ層5は、前記配向層4の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層5は、前記配向層4よりも高い面内配向度、例えば単結晶としての面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層5の材質は、前記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層5の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。CeOのキャップ層の膜厚は50〜5000nmの範囲にすることができる。
酸化物超電導層6は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。前記キャップ層上に酸化物超電導層6を成膜することで単結晶状体の結晶配向性に優れた酸化物超電導層6が得られる。
酸化物超電導層6の上面を覆うように形成されている第1安定化層7は、Agからなり、その厚さは1〜30μm程度とされる。
第2安定化層7は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層6が超電導状態から常電導状態に転移した時に、第1安定化層7とともに、電流を転流するバイパスとして機能する。第2安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがらCuからなることが好ましい。なお、酸化物超電導導体1を超電導限流器に使用する場合は、第2安定化層は高抵抗金属材料より構成され、例えば、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。第2安定化層の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。
本実施形態に係る成膜方法では、以上のような酸化物超電導導体1を構成する各層のうち、Alよりなる拡散防止層4aを、図1に示す反応性DCスパッタ装置を用いて成膜する。
拡散防止層4aを形成するには、まず、基板18を基板保持部12に取り付け、Alターゲットを所定の位置に設置した後、減圧容器15の内部を排気して減圧する。
減圧容器15の減圧度は、0.1Pa以上、2Pa以下の範囲を選択することができる。この範囲であるならば、プラズマを生成させてDCスパッタ処理を実施し成膜を行うことができる。
なお、基板18が長尺の場合は、基板保持部12の両側にリールなどからなる基板18の送出機構と巻取機構を設け、基板18を連続的に一定の速度で基板保持部12側に送り出し、基板保持部12の位置において連続的に成膜できる装置を構成し、該装置を用いることが好ましい。
減圧容器15内を目的の圧力に減圧後、ガス供給手段16Aの作動により、Arガス(不活性ガス)とOガス(反応性ガス)との混合ガスを減圧容器15内に供給する。
次に、パルスDC電源14によりターゲット11にマイナスのパルスDC電圧を印加し、減圧容器15の内部にプラズマを発生させる。これにより、不活性ガスの原子をイオン化してターゲット11に衝突させ、ターゲット11からAlの粒子を叩き出す。ターゲット11からのAlの粒子は、Oガスと反応してAlとなり、基板18の表面に堆積する。その結果、基板の表面にAlの拡散防止層4aを形成できる。
この成膜方法では、アノード電極13として、第1アパーチャ19と、貫通孔20aを有する第2アパーチャ20との積層構造を用いるため、長時間に亘る成膜過程においても、アノード電極13が十分な機能を発揮し、プラズマ中で発生した電子をアノード電極13に確実に吸収できる。このため、電子による基板18の損傷を防止でき、アーキングやプラズマ消失を抑えて、安定な成膜条件で良質な拡散防止層4aを形成することが可能である。
また、基板18が数m〜数kmに及ぶ長尺の基板であった場合、成膜時間は、長くなるが、上述のように安定化した成膜条件で拡散防止層4aを形成できるので、長尺の基板18の場合であっても対応できる。このため、数m〜数kmに及ぶ長尺の酸化物超電導導体1を製造しようとする場合において、本実施形態に係る反応性DCスパッタ装置10を用いて拡散防止層4aの成膜に対応することができる。
なお、本実施形態では、本発明の成膜方法を、Alの拡散防止層を形成する場合を例にして説明したが、本発明の成膜方法によって成膜される薄膜は、これに限るものではなく、この他の各種金属酸化薄膜や金属窒化物薄膜等、反応性DCスパッタ法で成膜される各種化合物薄膜のいずれであっても対応が可能である。
図7は、本発明に係るDCスパッタ装置の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態のDCスパッタ装置30は、第1実施形態のDCスパッタ装置10と主要構造は同等であり、異なる点は、第1アパーチャ19に接続された接地線13aにバイアス電源25が組み込まれている点である。その他の構造は同等であるので、同一構成要素には同一符号を付してそれら同一構成要素の説明は省略する。
バイアス電源25は直流電圧を第1アパーチャ19と第2アパーチャ20に印加できる装置であり、例えば、一例として0V以上、50V以下の範囲で所望の電圧を印加できる装置として構成されている。このバイアス電源25が第1アパーチャ19に印加する電圧は、本実施形態では+10V以上、+40V以下の範囲に設定できることが好ましい。
バイアス電源25は接地線13aに組み込まれていればよいので、接地線13aが減圧容器15の外部まで引き出されて設置される場合、減圧容器15の外部に独立した直流電源装置を設置して接地線13aの途中に接続する形態で設置すればよい。
第2実施形態のDCスパッタ装置30を用いて成膜する場合、減圧容器15の内部を減圧し、パルスDC電源14によりターゲット11にマイナスのパルスDC電圧を印加し、減圧容器15の内部にプラズマを発生させる点については、先の第1実施形態のDCスパッタ装置10と同様である。これにより、不活性ガスの原子をイオン化してターゲット11に衝突させ、ターゲット11がAlである場合は、Alの粒子を叩き出すことができる。ターゲット11から発生されたAlの粒子は、Oガスと反応してAlとなり、基板18の表面に堆積する。その結果、基板の表面にAlの拡散防止層4aを形成できる点について、先の第1実施形態のDCスパッタ装置1と同様である。また、アパーチャ19、20を2重構造としている点についても同等であるので、先の実施形態で得られる効果と同等の効果を得ることができる。
本実施形態のDCスパッタ装置30では、この成膜時にアパーチャ19、20に正のバイアス電圧を印加しながら成膜することができる。このバイアス電圧を印加することにより、アパーチャ19、20は電子を効率良く吸収するので、基板18側に電子を飛来させるおそれが少なくなり、基板18に電子の衝突によるダメージを与えないようにしながら成膜できる効果を先の第1実施形態のDCスパッタ装置1より確実に得られるようになる。
また、バイアス電源25からアパーチャ19、20にバイアス電圧を印加する場合、バイアス電圧を+10V以上、+40V以下の範囲とすることが好ましい。アパーチャ19、20に印加するバイアス電位を+10V未満とする場合は効果が薄くなり、+40Vを超えると減圧容器15の内部でプラズマが生成できなくなるおそれがある。なお、減圧容器15の減圧度について、2Pa程度の圧力として成膜するならば、バイアス電圧を+50V程度として印加してもプラズマ生成可能となるが、バイアス電圧を高くしすぎると生成した膜を損傷させるので、望ましくない。
バイアス電圧を+10V以上、+40V以下の範囲で印加しながら成膜すると、製造した薄膜の表面粗さを小さくでき、表面凹凸の少ない表面の滑らかな薄膜を生成できる。また、バイアス電圧を印加しながら成膜することで表面凹凸の少ない薄膜をターゲットと基板間距離を小さくしても形成できるので、薄膜を製造する際の製造効率を高くすることができる利点も有する。
この点において、アパーチャ19、20にバイアス電圧を印加しないで成膜すると、バイアス電圧を印加する場合に比較し、生成した膜の表面粗さが粗くなる。また、バイアス電圧を印加しない場合に比較し、バイアス電圧を印加した場合の方が、ターゲット−基板間の距離を小さくして成膜レートを向上させて成膜しても製造した膜の表面粗さを小さくできる。
このため、アパーチャ19、20にバイアス電圧を印加しながら成膜することで、バイアス電圧を印加せずに成膜する場合と比較し、表面粗さの小さい平滑な膜を高い成膜レートで製造することができる効果を奏する。
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
図8に示す構造の反応性DCスパッタ装置10Aを用い、基板上にAl膜を成膜した。図8に示す反応性DCスパッタ装置10Aは、図1に示す反応性DCスパッタ装置10に対し基板保持部12の下方にシャッター22を設けたものである。実施例1では、シャッター22を常時開いた状態で成膜を行った。第1アパーチャと第2アパーチャは、ステンレス鋼板からなる外径172mm、
内径120mmのリング板状のものを上下に1mm離間して積層した2枚重ね構成を用いた、第2アパーチャには図2(a)に示すように対象形状の扇形環状体形状の貫通孔を24個形成したものを用いた。
成膜条件は、以下の通りである。
ターゲット:Alターゲット、導入ガス:不活性ガス;Ar、反応性ガス:O、動作真空度:0.45Pa、出力:1000W、ターゲット形状:円形(直径6インチ)、パルスDC電圧:周波数;100kHz、デューティー比;90%、ターゲット−基板間の距離:85mm、基板:ハステロイ(米国ヘインズ社商品名)、基板の表面粗さRa:2.5nm、成膜時間:3分。
「実施例2」
シャッター22を閉じた状態で、反応性DCスパッタ装置10Aを30分間稼働した後、シャッター22を開き、ハステロイ基板上にAl膜を成膜した。成膜条件は、実施例1と同様である。
「実施例3〜実施例5」
シャッター22を閉じた状態での反応性DCスパッタ装置10Aの稼働時間を、以下の表1に示すように変更した以外は、前記実施例2と同様にして、ハステロイ基板上にAl膜を成膜した。
「比較例1〜比較例5」
アノード電極が第1アパーチャのみから構成されている以外は、図9に示す装置と同様の構成の反応性DCスパッタ装置を用い、それぞれ、実施例1〜実施例5と同様にしてハステロイ基板上にAl膜を成膜した。
なお、実施例2〜実施例5および比較例2〜比較例5において、シャッター22を閉じた状態で反応性DCスパッタ装置を稼働させているのは、この間にアノード電極上にAl膜を堆積させ、Al膜を長時間成膜した後のアノード電極の状態を疑似的に再現するためである。
<評価>
各実施例および各比較例で成膜したAl膜について、膜厚および表面粗さRa(JIS B0601:2001に規定されている算術平均粗さ)を測定した。
Figure 2013234380
表1に示すように、実施例1〜実施例5において成膜されたAl膜は、いずれも表面粗さRaが小さく、良好な表面性を有している。これらに対し、比較例1〜比較例5の結果を見ると、シャッターを閉じた状態での反応性DCスパッタ装置の稼働時間が長くなる程、成膜されたAl膜の表面性が悪化している。これは、Al膜の堆積によってアノード消失が発生し、アノード電極に吸引されなかった電子が基板上のアルミナ膜にダメージを与えたか、プラズマが不安定となってスパッタ粒子の堆積が乱れたことなどによるものと思われる。
このことから、アノード電極を第1アパーチャと第2アパーチャの2枚重ね構造として構成することにより、表面粗さの小さい品質の優れた化合物薄膜を長時間に亘り安定成膜できるようになることがわかった。
なお、表1に示すように10時間連続成膜しても表面粗さの小さいAl膜を成膜できることから、現状の技術において酸化物超電導導体のAl膜製造技術に適用すると、1〜数km程度の長尺の超電導導体製造に適用できるために十分な性能と評価することができる。
「実施例6〜13」
図7に示すバイアス電源付きのDCスパッタ装置を用い、先の実施例1と同様に以下の条件にてAl膜を基板上に形成する試験を行った。
「成膜条件」
ターゲット:Alターゲット、導入ガス:不活性ガス;Ar、反応性ガス:O、動作真空度:0.45Pa、出力:1000W、ターゲット形状:円形(直径6インチ)、パルスDC電圧:周波数;100kHz、デューティー比;90%、ターゲット−基板間の距離:35〜100mm、基板:ハステロイ(米国ヘインズ社商品名)、基板の表面粗さRa:2.5nm、成膜時間:3分。第2アパーチャの貫通孔の形状は実施例1と同じ形状、大きさとした。
実施例6〜9の試験を実施する際、バイアス電源としてアパーチャ19、20に印加するバイアス電圧を+10V、+20V、+30V、+40Vにそれぞれ設定し、ターゲット−基板間の距離(T−S間距離)を種々変更してAl膜を成膜した。得られたAl膜の膜厚を以下の表2に示す。なお、バイアス電圧を+50Vに設定して成膜してみたが、プラズマを生成できなかった。
Figure 2013234380
次に、バイアス電位を+10V、+20V、+30V、+40Vにそれぞれ設定し、ターゲット−基板間の距離(T−S間距離)を種々変更して成膜を行い、各々の条件にて得られたAl膜の膜厚と、表面粗さ(Ra)の値を計測した。その結果を以下の表3に示す。
Figure 2013234380
表2に示す結果から、ターゲット−基板間の距離を小さくした方が厚い膜を形成できることが分かる。また、表3に示す結果から、ターゲット−基板間の距離について得られた膜の表面粗さRa(nm)に相関関係があり、例えば、表面粗さRa:3nm未満を狙うのであれば、基準例2の場合はターゲット−基板間の距離を80mm以上に設定する必要があることが分かる。
これに対し、実施例10の試料では、表面粗さRa:3nm未満を狙うのであれば、75mm以上に設定することが必要となり、実施例11の試料では、55mm以上に設定することが必要となり、実施例12、13では、45mm以上に設定することが必要となる。なお、ターゲット−基板間の距離を小さくできることは、表2に示す結果から、厚い膜を形成できることが分かっているので、必要な一定膜厚のAl膜を成膜する場合を想定すると、成膜速度を向上でき、生産効率を向上できることが分かる。
なお、表2、表3に示す結果から、Al膜を本発明に係るアパーチャを備えたDCスパッタ装置で成膜する場合、できるだけ良好な生産性を維持しつつ、表面粗さ(Ra)の値として3nm未満を狙うのであれば、両アパーチャに+10〜+40Vのバイアス電圧を印加しつつ、ターゲットと基板間の距離を35mm以上、75mm以下に設定することが望ましい。これは、表3に示すようにT−S間距離が80mm以上の例ではいずれも表面粗さ(Ra)が2.6nm、あるいはそれ以下であり、差がないのに対し、T−S間距離を75mm以下として基材搬送速度を向上させて成膜速度を上げ、生産性を向上させた場合、差が生じることからわかる。なお、T−S間距離を35mm未満とすると、成膜可能な膜厚は向上するが基材にダメージを与えるおそれが高くなるので、T−S間距離は35mm以上とすることが好ましい。
なお、先に説明した酸化物超電導導体を製造する場合、結晶配向性の特に優れた配向層を成膜するためには、Al膜の表面粗さを3nm未満にすることが一般的に好ましいとされているので、優れた超電導特性の超電導層を備えた酸化物超電導導体を得るためには、Al膜の表面粗さを3nm未満にすることが有利となる。この面から見て、アパーチャにバイアス電位を与えつつ成膜する場合、表面粗さを低く抑えるためには、バイアス電位として+10V以上、+40Vの範囲を選択することが有利であることが分かる。
10、10A…反応性DCスパッタ装置、11…ターゲット、12…基板保持部、13…アノード電極、13a…接地線、14…パルスDC電源(DC電源)、15…減圧容器、16…供給口、16A…ガス供給手段、17…排気口、17A…減圧手段、18…基板、19…第1アパーチャ、20a、20b、20c、20d、20e、20f…貫通孔、20、20E、20F…第2アパーチャ、22…シャッター、25…バイアス電源、30…反応性DCスパッタ装置。

Claims (7)

  1. 減圧容器と、該減圧容器内に収容されたターゲットと、該ターゲットに対向するように設けられた基板保持部と、前記ターゲットの前記基板保持部側に近接して設けられた環状のアノード電極と、前記ターゲットに接続されたDC電源と、前記ターゲットと前記基板保持部との間に不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段とを備え、
    前記アノード電極が、前記ターゲット側に配された第1アパーチャと、該第1アパーチャの前記基板保持部側に近接して第1アパーチャを覆うように積層された第2アパーチャとを備え、前記第2アパーチャには該第2アパーチャをその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする反応性DCスパッタ装置。
  2. 前記第1アパーチャに対向する前記第2アパーチャの表面部分に、前記複数の貫通孔が均等に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の反応性DCスパッタ装置。
  3. 正のバイアス電圧を印加するバイアス電源が前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに電気的に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の反応性DCスパッタ装置。
  4. 減圧容器と、該減圧容器内に収容されたターゲットと、該ターゲットに対向するように設けられた基板保持部と、前記ターゲットの前記基板保持部側に近接して設けられた環状のアノード電極と、前記ターゲットに接続されたDC電源と、前記ターゲットと前記基板保持部との間に不活性ガスと反応性ガスとの混合ガスを供給するガス供給手段とを備え、反応性DCスパッタ法によって薄膜を成膜する成膜方法であって、
    前記アノード電極として、前記ターゲット側に配された第1アパーチャと、該第1アパーチャの前記基板保持部側に近接して積層された第2アパーチャとを有し、前記第2アパーチャにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有するものを用いて反応性DCスパッタを行うことを特徴とする成膜方法。
  5. 成膜する薄膜を絶縁膜とすることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
  6. 前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに正のバイアス電圧を印加することを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
  7. 前記第1アパーチャまたは第2アパーチャに印加するバイアス電圧を+10V以上、+40V以下の範囲とすることを特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
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