JP2013234340A - 常中温域での成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.08〜0.35%、Si:0.01〜2.5%、Mn:1.0%〜3.5%を含有し、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.01%以下に限定され、残部Feおよび不可避的不純物からなり、鋼のミクロ組織として、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、フェライトをそれぞれ90%以下含有し、かつ、オーステナイトについて、20℃にて相当塑性歪0.1〜0.3を与えたときに残留するオーステナイト分率をf0、50〜250℃にて同様に相当塑性歪を与えたときに残留するオーステナイト分率をfaとしたとき、fa/f0の値が、1.2〜4.0となっているオーステナイトを面積率で5%以上含有する溶融亜鉛めっき鋼板。
【選択図】なし
Description
高強度鋼板の成形性を改善する技術として、温間での加工が注目されている。例えば、特許文献2に、残留オーステナイトの平均軸比を特定範囲に制御することで、温間での加工性が向上することが報告されている。
また、温度を用いた加工は、準安定オーステナイト系ステンレスにおいて用いられているが、オーステナイトの安定化にNi等の高価な元素を多量に入れている(例えば、非特許文献2参照)ことから、経済性に劣る。
以上のような背景から、温間での加工に適した比較的安価かつ製造方法が容易である鋼板が求められている。
その結果、成分を特定したうえで、常中温域での穴拡げ性や延性を向上させることができる高強度鋼板を製造することができることを見出した。
このようにしてなされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
C:0.08%以上0.35%以下、
Si:0.01%以上2.5%以下、
Mn:1.0%以上3.5%以下、
Al:0.005%以上2.0%以下
を含有し、かつ
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
N: 0.01%以下
に制限し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
さらに、鋼のミクロ組織として、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、フェライトをそれぞれ90%以下含有し、かつ、オーステナイトについて、20℃にて相当塑性歪0.1〜0.3を与えたときに残留するオーステナイト分率をf0、50〜250℃にて相当塑性歪0.1〜0.3を与えたときに残留するオーステナイト分率をfaとしたとき、fa/f0の値が、1.2〜4.0となっているオーステナイトを面積率で5%以上含有することを特徴とする常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(2) さらに、鋼中に質量%で、
Cr:0.05%以上2.0%以下、
Ni:0.05%以上2.0%以下、
Mo:0.05%以上1.0%以下、
Cu:0.05%以上2.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(3) さらに、鋼中に質量%で、
Nb:0.005%以上0.1%以下、
Ti:0.005%以上0.15%以下、
V:0.01%以上1.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(4) さらに、鋼中に質量%で、
B:0.0001%以上0.01%以下を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(5) さらに、鋼中に質量%で、
Ca:0.0005%以上0.01%以下、
Mg:0.0005%以上0.01%以下、
REM:0.0005%以上0.01%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
(7) (1)〜(5)のいずれかに記載の化学成分からなる鋳造スラブを、鋳造後直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱して熱間圧延し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際して、750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、その後、180℃以上かつ550℃以下の温度域にて5sec以上1000sec以下保持した後に、鋼板温度を(亜鉛めっき浴温度―40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に調整し、(6)の条件にて亜鉛めっきすることを特徴とする常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(8) (1)〜(5)のいずれかに記載の化学成分からなる鋳造スラブを、鋳造後直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱して熱間圧延し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際して、750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、その後、180℃以上かつ550℃以下の温度域にて、5sec以上1000sec以下保持した後に、鋼板温度を(亜鉛めっき浴温度―40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に調整し、(6)の条件にて亜鉛めっきした後、460℃以上600℃以下の温度で合金化処理を施した後、室温まで冷却することを特徴とする常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
C:Cは鋼の残留オーステナイトを安定化させる元素として添加されるものである。0.08%未満では成形性向上に必要な量の残留オーステナイトを確保することが困難であり、0.35%を超える過剰な添加は延性、溶接性、靭性などを著しく劣化させる。従って、C量は0.08〜0.35%とした。より好ましい範囲は0.15〜0.3%である。
S:Sは熱間加工性及び靭性を劣化させる不純物元素であり、低減させることが望ましい。したがって、上限を0.01%に制限した。
N:Nは粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。これは、Nが0.01%を超えると、この傾向が顕著となることから、N含有量の範囲を0.01%以下とした。加えて、溶接時のブローホール発生の原因になることから少ない方が良い。
本発明の鋼板のミクロ組織は、以下に定めるオーステナイトを含有し、ベイナイト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトの内、いずれか1種または2種以上を含有する。なお、それぞれの存在割合を表す%は面積率である。
このような特徴をもったオーステナイトが鋼板に5%未満しか含有しない場合、50〜250℃での、高い延性や穴拡げ性を得られないため、5%を含有量の下限とした。
後述する実施例では、フェライト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト、パーライトについて、鋼板圧延方向断面または圧延方向直角方向断面を腐食して、1000〜100000倍の走査型および透過型電子顕微鏡により定量化を行った。
焼き戻しマルテンサイトも、ラス状のマルテンサイトと炭化物より構成されるものの、焼き戻しマルテンサイト中には複数の方位関係を有する炭化物が析出することから、その内部に単一の方位関係しか持たない炭化物を含む下部ベイナイト組織とは容易に判別がつく。一方、フレッシュマルテンサイトとは、炭化物を含まないマルテンサイトを指し示す。
このように、組織の構成相の形態と炭化物の有無、更には、方位関係より、各組織の判別は可能である。各20視野の観察を行い、ポイントカウント法や画像解析により各組織の面積率を求めることができる。
上記の成分からなる鋼を常法で溶製し、鋳造し、熱間圧延する。更に、酸洗、冷間圧延を行い、熱処理を施す。
熱間圧延は、鋳造後のスラブを直接行ってもよいし、一旦冷却した後再加熱して行ってもよい。再加熱する場合は、偏析の影響を緩和し最終組織を均一にするために、加熱温度は1200℃以上とする。熱間圧延は常法にしたがってAr3変態点以上の温度で完了し、700℃以下の温度域にて巻き取る。この巻取り温度が700℃を超えると、熱延組織中に粗大なフェライトやパーライト組織が存在するため、焼鈍後の組織不均一性が大きくなり、最終製品の穴拡げ性が劣化する。
冷間圧延は、焼鈍後のミクロ組織を微細化するため、その圧下率を40%以上とする。しかし、70%を超えると、加工硬化によって負荷が高くなり、生産性を損なうと考えられる。従って、冷間圧延の圧下率は、40〜70%とする。
めっき浴表面には、スカムと呼ばれるZnやAlの酸化膜が浮遊している。鋼板表面に多量に外部酸化膜が存在している場合、鋼板をめっき浴に浸漬する時に、鋼板表面にスカムが付着し易いため、不めっきが発生し易い。加えて、鋼板に付着したスカムは、不めっきのみならず、合金化も遅延する。
噴流の流速を10m/min以上50m/min以下としたのは、10m/min未満では、噴流による不めっき抑制効果が得られないためであり、50m/min以下としたのは、不めっき抑制の効果が飽和するばかりでなく、過大な設備投資はコスト高を招くためである。
表1に示す組成の鋼を鋳造し、表2、3に示す条件で、圧延、熱処理及び溶融亜鉛めっきを行い、一部のものはさらに合金化処理を行い、鋼板を製造した。めっきを行う際のめっき浴温度は、460℃とした。特性評価に用いた鋼板の板厚は、1.4mmであった。
得られた鋼板のミクロ組織を調べ、ベイナイト、焼戻しマルテンサイト、フェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト、パーライトの面積率を測定した。また、めっき鋼板の外観を観察し、不めっきがあるものを「不めっき有」とした。
引張試験は、試験片を目的温度に加熱し、60秒保持を行い試験片の温度が一定となった後、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。引張試験の応力−歪曲線より、引張強度(TS)と全伸び(EL)を求めた。また、穴拡げ性試験は、試験片を常中温(50〜250℃)に加熱し目的温度に保持した後、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準拠して行い、λ値を求めた。
本発明では、TS×ELが20000MPa・%以上、TS×λが30000MPa・%以上を満たす鋼板を成形性に優れる鋼板とした。
Claims (8)
- 鋼組成が、質量%で、
C:0.08%以上0.35%以下、
Si:0.01%以上2.5%以下、
Mn:1.0%以上3.5%以下、
Al:0.005%以上2.0%以下
を含有し、かつ
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
N: 0.01%以下
に制限し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
さらに、鋼のミクロ組織として、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、フェライトをそれぞれ90%以下含有し、かつ、オーステナイトについて、20℃にて相当塑性歪0.1〜0.3を与えたときに残留するオーステナイト分率をf0、50〜250℃にて相当塑性歪0.1〜0.3を与えたときに残留するオーステナイト分率をfaとしたとき、fa/f0の値が、1.2〜4.0となっているオーステナイトを面積率で5%以上含有することを特徴とする常中温域での成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、鋼中に質量%で
Cr:0.05%以上2.0%以下、
Ni:0.05%以上2.0%以下、
Mo:0.05%以上1.0%以下、
Cu:0.05%以上2.0%以下
を少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、鋼中に質量%で、
Nb:0.005%以上0.1%以下、
Ti:0.005%以上0.15%以下、
V:0.01%以上1.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、鋼中に質量%で、
B:0.0001%以上0.01%以下を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、鋼中に質量%で、
Ca:0.0005%以上0.01%以下、
Mg:0.0005%以上0.01%以下、
REM:0.0005%以上0.01%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学成分及びミクロ組織を有する鋼板を溶融亜鉛めっきするに際して、流速10m/min以上50m/min以下にて流動する溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっきすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学成分からなる鋳造スラブを、鋳造後直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱して熱間圧延し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際して、750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、その後、180℃以上かつ550℃以下の温度域にて、5sec以上1000sec以下保持した後に、鋼板温度を(亜鉛めっき浴温度―40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に調整し、請求項6に記載の条件にて亜鉛めっきすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学成分からなる鋳造スラブを、鋳造後直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱して熱間圧延し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下の温度域にて巻き取り、酸洗後、圧下率40〜70%の冷間圧延を施し、連続溶融亜鉛めっきラインを通板するに際して、750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、その後、180℃以上かつ550℃以下の温度域にて、5sec以上1000sec以下保持した後に、鋼板温度を(亜鉛めっき浴温度―40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に調整し、請求項6に記載の条件にて亜鉛めっきした後、460℃以上600℃以下の温度で合金化処理を施した後、室温まで冷却することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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