以下に、本発明にかかる電動機の回転子、電動機、空気調和機、および電動機の回転子の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる電動機100の側面断面図である。図1に示される電動機100は、モールド固定子10と、回転子20(「電動機の回転子」と定義する)と、モールド固定子10の軸方向一端部に取り付けられる金属製のブラケット30とを備える。電動機100は、例えば、回転子20に永久磁石を有し、インバータで駆動されるブラシレスDCモータである。
図2は、モールド固定子10の側面断面図である。モールド固定子10には、軸方向一端部(図2の右側)に開口部10bが形成され、回転子20がこの開口部10bに挿入される。モールド固定子10の軸方向他端部(図2の左側)には、回転子20のシャフト23(図1)の径より若干大きい孔11aが開けられている。モールド固定子10のその他の構成については、後述する。
図3は、モールド固定子10に回転子20が挿入された状態を示す側面断面図である。モールド固定子10の軸方向一端部の開口部10b(図2参照)から挿入された回転子20は、シャフト23の負荷側(図3の左側)がモールド固定子10の軸方向他端部の孔11a(図2参照)から外部(図3の左側)に出される。そして、回転子20の負荷側転がり軸受21a(転がり軸受の一例)が、モールド固定子10の反開口部側の軸方向端部の軸受支持部11に当接するまで押し込まれる。このとき、負荷側転がり軸受21aは、モールド固定子10の反開口部側の軸方向端部に形成された軸受支持部11で支持される。モールド固定子10に回転子20が挿入された後、シャフト23の反負荷側(図1の右側)には、反負荷側転がり軸受21b(転がり軸受の一例)が取り付けられる(一般的には、圧入による)。なお、詳細は後述するが、反負荷側転がり軸受21bとシャフト23の反負荷側との間には、シャフト23に一体成形される絶縁軸部60が設けられる。
図4は、ブラケット30の側面断面図である。ブラケット30は、モールド固定子10の開口部10bを閉塞するとともに、反負荷側転がり軸受21bを支持するものであり、モールド固定子10に圧入される。軸受支持部30aは、反負荷側転がり軸受21bを支持する。ブラケット30のモールド固定子10への圧入は、ブラケット30の略リング状で、断面がコの字状の圧入部30bを、モールド固定子10の内周部10a(モールド樹脂部)の開口部10b側に圧入することでなされる。ブラケット30の圧入部30bの外径は、モールド固定子10の内周部10aの内径よりも、圧入代の分だけ大きくなっている。ブラケット30の材質は、金属製で、例えば、亜鉛メッキ鋼板である。但し、亜鉛メッキ鋼板には限定されない。
以下、モールド固定子10の構成を説明する。図2に示されるモールド固定子10は、固定子40と、モールド成形用のモールド樹脂50とからなる。モールド樹脂50には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される。固定子40は、後述する基板等が取り付けられ、強度的に弱い構造であるため低圧成形が望ましい。そのため、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
図5は、固定子40の斜視図である。図5に示される固定子40は、以下に示される構成である。
(1)厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層された帯状の固定子鉄心41を製作する。帯状の固定子鉄心41は、複数個のティース(図示せず)を備える。後述する集中巻のコイル42が施されている内側がティースである。
(2)ティースには、絶縁部43が施される。絶縁部43は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いて、固定子鉄心41と一体にまたは別体で成形される。
(3)絶縁部43が施されたティースに集中巻のコイル42が巻回される。複数個の集中巻のコイル42を接続して、例えば、三相のシングルY結線の巻線を形成する。但し、分布巻でもよい。
(4)三相のシングルY結線であるので、絶縁部43の結線側には、各相(U相、V相、W相)のコイル42が接続される端子44(電源が供給される電源端子44aおよび中性点端子44b)が組付けられる。電源端子44aは3個、中性点端子44bは3個である。
(5)基板45が結線側の絶縁部43(端子44を組付けられる側)に取り付けられる。リード線47を口出しするリード線口出し部品46が組付けられた基板45を絶縁部43に組付け、固定子40となる。固定子鉄心41に形成された絶縁部43の面取りされた角柱48が、基板45が備える角柱挿入穴(図示せず)に挿入されることにより、回転方向の位置決めがなされ、かつ、絶縁部43の基板設置面(図示せず)に基板45が設置されることにより軸方向の位置が決められる。また、基板45より突出する角柱48を熱溶着することで基板45と絶縁部43が固定され、かつ、固定子40が備える端子44の基板45より突出した部分を半田付けすることにより電気的にも接合される。基板45には、電動機100(例えば、ブラシレスDCモータ)を駆動するIC49a(駆動素子)、回転子20の位置を検出するホールIC49b(位置検出素子)等が実装されている。IC49aやホールIC49b等を「電子部品」と定義する。
次に、回転子20の構成を説明する。図6は回転子20の断面図、図7は負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bを取り外した回転子20−1の断面図、図8は負荷側から見た回転子20−1の側面図、図9はシャフト本体(負荷側軸部)23eの斜視図、図10は図9に示されるシャフト本体23eに絶縁軸部60が取り付けられたシャフト23の斜視図、図11は図10に示されるシャフト23の側面断面図、図12は回転子20の反負荷側端部の拡大断面図、図13は回転子20の樹脂マグネット22を示す図、図14は位置検出用樹脂マグネット25を示す図である。
図6、図7に示されるように、回転子20(もしくは回転子20−1)は、ローレット23a−1およびローレット23a−2が施されたシャフト23と、リング状の回転子の樹脂マグネット22(回転子のマグネットの一例)と、リング状の位置検出用樹脂マグネット25(位置検出用マグネットの一例)と、これらを一体成形する樹脂部24とで構成される。この樹脂部24は、シャフト本体23eに設けられたローレット23a−1を中心とした外周に形成される。
回転子の樹脂マグネット22、シャフト23、および位置検出用樹脂マグネット25は、縦型成形機により射出された樹脂部24で一体化される。このとき、樹脂部24は、図8に示されるように、シャフト23の外周に形成される中央筒部24g(回転子の樹脂マグネット22の内側に形成される)と、回転子の樹脂マグネット22を中央筒部24gに連結し、かつ、シャフト23を中心として半径方向に放射状に形成された軸方向の複数のリブ24jとを有する。リブ24j間には、軸方向に貫通した空洞24kが形成される。なお、樹脂部24には、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂が用いられ、これらの樹脂にガラス充填剤を配合したものが好適である。
シャフト23の反負荷側(図6の右側)には、反負荷側転がり軸受21bが取り付けられる(一般的には圧入による)。また、ファン等が取り付けられるシャフト23の負荷側(図6で左側)には、負荷側転がり軸受21aが取り付けられる。負荷側転がり軸受21aは、シャフト23に圧入される内輪21a−1と、モールド固定子10の軸受支持部11で支持される外輪21a−2と、内輪21a−1と外輪21a−2との間で転動する転動体21a−3とを備える。転動体21a−3には、球またはころが用いられる。反負荷側転がり軸受21bは、シャフト23の絶縁軸部60を介して圧入される内輪21b−1と、ブラケット30の軸受支持部30aで支持される外輪21b−2と、内輪21b−1と外輪21b−2との間で転動する転動体21b−3とを備える。転動体21b−3には、球またはころが用いられる。
本実施の形態にかかる回転子20は、金属製(導電性を有する)のブラケット30で支持される反負荷側転がり軸受21bとシャフト23との間に絶縁軸部60を介在させると共に、この絶縁軸部60をシャフト23に一体成形するように構成されている。このように構成することにより、反負荷側転がり軸受21bとシャフト23との間が絶縁軸部60で絶縁され、反負荷側転がり軸受21bとシャフト23との間における軸電流が抑制される。従って、負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bの電食の発生が抑制される。また、絶縁軸部60がシャフト23に一体成形されているため、シャフト23と絶縁軸部60との同軸度が向上する。従って、回転子20の回転偏心が抑えられ電動機100の性能向上を図ることが可能である。
図9〜図12に示されるようにシャフト23は、シャフト本体23eと絶縁軸部60とで構成され、絶縁軸部60は、絶縁性を有する樹脂材料であり、シャフト23の反負荷側に一体成形される。本実施の形態にかかる回転子20は、シャフト23と回転子の樹脂マグネット22と位置検出用樹脂マグネット25とが熱可塑性樹脂(樹脂部24)で一体成形されている。
図9〜図11において、シャフト本体23eの外周には、シャフト23と樹脂部24との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−1が施される。シャフト本体23eの反負荷側端部には、この反負荷側端部からシャフト本体23eの中心側に向かって突となる凹部23hが設けられている。凹部23hは、絶縁軸部60の小径部60bをシャフト本体23eに一体的に固定するためのものであり、凹部23hの内周面には、シャフト本体23eと絶縁軸部60との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−2が施されている。図10、11には、シャフト本体23eの反負荷側端面23bに絶縁軸部60が取り付けられた状態が示され、絶縁軸部60は、シャフト本体23eの反負荷側端面23bに、その負荷側端部60eが接するように設けられている。
図12において、絶縁軸部60は、シャフト本体23eの反負荷側端部において、絶縁性を有する樹脂材料で一体成形される。絶縁軸部60は、軸受嵌合部として機能する大径部60aと、凹部23hに形成されることによりシャフト本体23eと一体に形成される小径部60bとで構成される。上述したように、凹部23hに施されたローレット23a−2が回り止めおよび抜け止めとして機能するため、簡便な構造でシャフト本体23eと絶縁軸部60とを一体的に形成することができ、信頼性および品質が向上する。
大径部60aの外径d2は、シャフト本体23eの外径d1と概略同一の寸法となるように形成される。大径部60aには、反負荷側転がり軸受21bが圧入されて保持されるため、樹脂部24の中央筒部24gの絶縁軸部60側(反負荷側)端面から大径部60aの反負荷側端面60dまでの距離Lは、反負荷側転がり軸受21bの軸方向の長さよりも大きく形成されている。
絶縁軸部60の外周には、絶縁軸部60の負荷側端面から所定の幅tまで軸方向に伸び、かつ、大径部60aの外周面60fの延長線上から径方向に所定の高さhまで伸びて樹脂部24に埋設される樹脂注入口が設けられる。この樹脂注入口は、成形後に切断され、シャフト本体23eの軸中心から樹脂部24に向けて突状のゲート切断部60cとして外周面60fに残るものである。そして、樹脂部24の反負荷側に露出する絶縁軸部60の外周面60fには、反負荷側転がり軸受21bが挿入される。
なお、樹脂部24の反負荷側に露出する絶縁軸部60の外周面60fに突状のゲート切断部60cが残っている場合、反負荷側転がり軸受21bの挿入時に反負荷側転がり軸受21bの内径とゲート切断部60cとが接触して、想定外の応力が発生し、また、このゲート切断部60cが切断されてゴミとして付着することよる品質の低下が予想される。しかしながら、樹脂注入口を樹脂部24に埋設される部分に設けることにより、このような問題を解消できる。また、ゲート切断部60cが、シャフト本体23eの軸中心から樹脂部24に向けて突状(あるいは樹脂部24からシャフト本体23eの軸中心に向けて突状)に設けられている場合でも、樹脂が注入されることにより、ゲート切断部60cが絶縁軸部60の回り止めとして機能するため、品質の向上を図ることができる。
絶縁軸部60の材料には、鉄(シャフト本体23e)とほぼ同じ線膨張係数の樹脂材料を使用するのが好ましい。そのような樹脂材料として、例えば、熱硬化性樹脂のBMC樹脂が挙げられる。BMC(バルクモールディングコンパウンド)樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂に各種の添加剤が加えられた塊粘土状の熱硬化性樹脂である。BMC樹脂は、以下に示される特徴がある。
(1)エポキシ樹脂に比べ硬化時間が短いため生産性がよい。
(2)材料のコストと特性のバランスがよい。
(3)低圧での成形が可能。
(4)寸法の安定性が高い。
(5)表面硬さが高く、キズが付きにくい。
(6)金属に比べ軽く、複雑形状の成形性に優れ、かつ、吸振性にも優れている。
電動機の回転子において、熱の上昇、下降の熱履歴を受ける場合、鉄と樹脂の線膨張係数が異なる場合には、応力が発生する。そのため、樹脂にはクリープ現象(一定の荷重のもとで、材料の変形が時間とともに増加していく現象)が発生し、軸受が挿入される部分は、初期の寸法を維持できなくなることがある。その場合、軸受の内輪のクリープ(内輪と軸とに微小隙間が発生し1回転ごとに円周の差だけ接触位置がずれる現象)を引き起こす可能性があり、品質の低下が懸念される。これに対し、耐クリープ性の高い熱硬化性樹脂を使用することと、鉄と線膨張係数が近い熱硬化性樹脂のBMC樹脂を使用することで品質の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態の電動機100の回転子20では、ブラケット30で支持される反負荷側転がり軸受21bとシャフト本体23eとの間に絶縁軸部60が設けられ、この絶縁軸部60がシャフト本体23eと一体成形されてシャフト23が得られる。そして、絶縁軸部60により、反負荷側転がり軸受21bとシャフト本体23eとが絶縁され、軸電流が抑制され、負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bの電食の発生が抑制される。また、絶縁軸部60がシャフト本体23eに一体成形されているため、シャフト本体23eと絶縁軸部60との空転を防止し、同軸度が向上し、電動機100の品質および性能の向上を図ることが可能である。なお、本実施の形態では位置検出用樹脂マグネット25が用いられているが、本実施の形態の構造は、位置検出用樹脂マグネット25が用いられていない回転子20にも適用可能である。
また、本実施の形態では、絶縁軸部60の大径部60aの外径d2をシャフト本体23eの外径d1と概略同一に成形する場合の例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、外径d1より若干大きくなるように外径d2を成形しておき、シャフト23の組み立てが行われた後(すなわちシャフト本体23eへの絶縁軸部60成形後)の状態で、この外径d2を外径d1と概略同一となるように調整してもよい。この場合、ローレット23a−2が絶縁軸部60の回り止めになるので、機械加工等をしても絶縁軸部60がシャフト本体23eから空回りすることがなく、絶縁軸部60成形後に外径d2を調整可能である。絶縁軸部60成形後に外径d2を調整することで、寸法精度、ばらつきが小さくでき、品質が向上する。さらに、絶縁軸部60成形金型の寸法管理が容易で、金型製作費を低減できる。
なお、ゲート切断部60cは、1つに限定されるものではなく、大径部60aの負荷側端部60e付近、かつ、樹脂部24に埋設される部分にて複数設けてもよい。このことにより、回り止め、抜け止めがさらに確実になり、品質の向上を図ることができる。
また、絶縁軸部60を設けることによって反負荷側転がり軸受21bを流れる軸電流が小さくなり、これに伴い負荷側転がり軸受21aを流れる軸電流も小さくなるため、シャフト23の負荷側を絶縁しなくてもよい。
また、図12において、樹脂部24の中央筒部24g(樹脂部)の反負荷側端部には、シャフト23の絶縁軸部60へ反負荷側転がり軸受21bを挿入する際の軸方向の位置決めとなる軸受当接面24dが形成されている。また、中央筒部24gの外周部と軸受当接面24dとの間には、段差部24eが設けられる。段差部24eの直径d3は、反負荷側転がり軸受21bの外輪21b−2の内径よりも小さく形成する必要があり、図6に示されるように、反負荷側転がり軸受21bの内輪21b−1の外径と略同じか、若干小さく形成することが望ましい。
一般的に、転がり軸受は、転がり軸受の内部からグリースが外に漏れないように、もしくは外部からごみ等が浸入しないように外輪と内輪との間にカバーを設けている。このカバーは、転がり軸受の両端面より内側に位置する。そのため、段差部24eの直径d3を、反負荷側転がり軸受21bの内輪21b−1の外径よりも大きくしても、内輪21b−1の外径よりも大きい部分は、反負荷側転がり軸受21bに接触しない。従って、段差部24eの直径d3は、反負荷側転がり軸受21bの内輪21b−1の外径と略同じか、若干小さくする程度が実用的である。
また、段差部24eを設けることにより、シャフト23、回転子の樹脂マグネット22、および位置検出用樹脂マグネット25を樹脂で一体成形する際に、樹脂部24の中央筒部24gの軸受当接面24dをイレコで形成する場合、段差部24eまで前記イレコで形成する。そのため、金型の合わせ面は中央筒部24gの反負荷側端面24hに位置する。金型の合わせ面にバリが発生した場合でも、反負荷側転がり軸受21bは金型の合わせ面となる反負荷側端面24hに対して段差部24eの分だけ離れるため、このバリは、反負荷側転がり軸受21bに当接しない。従って、反負荷側転がり軸受21bに悪影響を及ぼす虞が少ない。
また、回転子20が、熱衝撃を受けると樹脂部24の中央筒部24gが割れる場合もある。そのような場合でも、中央筒部24gに段差部24eを設け、段差部24eの径方向の寸法は一定とし、両端の段差部24e(負荷側と反負荷側)間の中央筒部24gの径方向の厚さを大きくして対処することができる。
また、段差部24eの直径d3が、負荷側転がり軸受21aの外輪21a−2の内径よりも小さく、かつ、反負荷側転がり軸受21bの外輪21b−2の内径よりも小さく形成されているため、段差部24e間の中央筒部24gの径方向の厚さは、外輪21a−2、外輪21b−2の内径よりも大きくすることも可能である。
図13は回転子の樹脂マグネット22を示す図であり、図13(a)は左側面図、図13(b)は(a)のC−C断面図、図13(c)は右側面図である。回転子の樹脂マグネット22には、その内径の軸方向一端部(図13(b)では右側)に、樹脂成形時の型締め時にシャフト23と回転子の樹脂マグネット22との同軸を確保するための切欠き22aが形成されている。図13(c)の例では、切欠き22aは周方向に略等間隔で8箇所に形成されている。
また、回転子の樹脂マグネット22には、軸方向他端部(図13(b)では左側)の端面に、位置検出用樹脂マグネット25を据える台座22bが、周方向に略等間隔で形成されている。台座22bは、回転子の樹脂マグネット22の内径付近から外径に向かって形成され、台座22bの先端から位置決め用突起22cが径方向に回転子の樹脂マグネット22の外周部に向かって、その近くまで延びている。位置決め用突起22cは、樹脂部24による回転子のマグネット、位置検出用樹脂マグネット、およびシャフトの一体成形時に、回転子の樹脂マグネット22の周方向(回転方向)の位置決めに利用される。
図14は、位置検出用樹脂マグネット25を示す図であり、図14(a)は左側面図、図14(b)は正面図、図14(c)は(b)のD部拡大図である。位置検出用樹脂マグネット25は、内径側の軸方向両端部に段差部25bを備え、回転子20の軸方向端部側となる段差部25bには、樹脂部24の一部が充填され、この段差部25bは、位置検出用樹脂マグネット25の軸方向の抜け止めとして機能する。
図14には、両端部に段差部25bを備えた位置検出用樹脂マグネット25が示されているが、いずれか一方の端部に段差部25bがあり、それが回転子20の軸方向端部側に位置すればよい。なお、位置検出用樹脂マグネット25が両端部に段差部25bを備えている場合、回転子20の樹脂部24による一体成形時に、金型(下型)に位置検出用樹脂マグネット25をセットする際、裏表を気にせずにセットできるので作業性に優れる。
また、位置検出用樹脂マグネット25は、段差部25bに樹脂部24に埋設されると周方向の回り止めとなるリブ25a(断面が略三角)を周方向に略等間隔に8個備える。但し、リブ25aの数、形状、配置間隔は任意でよい。
なお、図6に示されるように、樹脂部24には、位置検出用樹脂マグネット25の内径を保持する金型の内径押さえ部24a、位置検出用樹脂マグネット25を金型(下型)にセットしやすくするためのテーパ部24b、および樹脂成形時の樹脂注入部24cが、樹脂成形後に形成される。
回転子の樹脂マグネット22は、熱可塑性樹脂に磁性材が混合され成形されたもので、図13に示される通り、内径に軸方向一端面からテーパ状に切欠き22aを設け、また、切欠き22aのある軸方向一端面の反対側の軸方向他端面に、位置検出用樹脂マグネット25を据える台座22bを備えている。シャフト23と一体に成形される回転子の樹脂マグネット22の台座22bによって、位置検出用樹脂マグネット25を回転子の樹脂マグネット22の端面から離すことが可能となり、位置検出用樹脂マグネット25の肉厚を最小、かつ、任意の位置に配置することが可能となり、回転子の樹脂マグネット22より安価な熱可塑性樹脂を充填することで、コストの低減が可能となる。
位置検出用樹脂マグネット25は、図14に示される通り、厚み方向の両側に段差部25bを持ち、かつ、樹脂で埋設されたとき回り止めとなるリブ25aを両側の段差部25bに備えている。また、位置検出用樹脂マグネット25の内径と位置検出用樹脂マグネット25の外径との同軸度は精度良く作られている。
なお、シャフト23と一体に成形される際、位置検出用樹脂マグネット25の外周にはテーパ状に樹脂(樹脂部24)が充填され、位置検出用樹脂マグネット25の外径のばらつきにも対応し、充填される樹脂は位置検出用樹脂マグネット25の片側の軸方向端面(外側)と回転子の樹脂マグネット22の軸方向両端面でせき止めるため、回転子の樹脂マグネット22の外径にバリが発生するのを抑えることが可能となり、品質の向上が図られている。
また、シャフト23との一体成形時のゲート口を回転子の樹脂マグネット22の内径よりもさらに内側に配置し、樹脂注入部24cを凸形状で配置することで、圧力の集中を緩和し、樹脂の充填が容易に、また、樹脂注入部24cの凸部を位置決めに利用することも可能となっている。
次に、変形例1の回転子20aを説明する。図15は、変形例1の回転子20aの側面断面図であり、図15(a)には回転子20aの全体が示され、図15(b)には、回転子20aの反負荷側端部が拡大して示されている。図16はシャフト本体(負荷側軸部)23e−1の斜視図、図17は図16に示されるシャフト本体23e−1に絶縁軸部70が取り付けられたシャフト23−1の斜視図、図18は図17に示されるシャフト23−1の側面断面図である。
図6に示される回転子20と比較するとシャフト23−1(絶縁軸部)の構成が異なる。図6に示される回転子20は、絶縁軸部60が、シャフト本体23eの凹部23hに一体成形で形成されている。これに対して図15に示される回転子20aでは、シャフト本体23eの反負荷側端部がシャフト本体23eの外径d1より小さい外径d4に形成され、この小径部(シャフト本体小径部23e−1a)に絶縁軸部70の負荷側端部70bが一体成形されている。
シャフト23−1は、シャフト本体23e−1と、シャフト本体小径部23e−1aに一体成形して形成される絶縁軸部70とを備える。シャフト本体23e−1の外周には、シャフト23−1と樹脂部24との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−1が施されている。シャフト本体小径部23e−1aの外周には、シャフト本体23e−1と絶縁軸部70との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−3が施されている。
図15(b)に示されるように、絶縁軸部70の負荷側端部70bには、絶縁軸部70の負荷側端面から反負荷側端面70gに向かって突となる凹部70hが設けられている。図17には、シャフト本体小径部23e−1aに絶縁軸部70が取り付けられた状態が示され、絶縁軸部70は、シャフト本体23e−1とシャフト本体小径部23e−1aとの段差部23e−1bに、絶縁軸部70の負荷側端面が接するように設けられている。
絶縁軸部70は、絶縁性を有する樹脂材料で、全体形状が略円柱状を成し、シャフト本体小径部23e−1aに負荷側端部70bの凹部70hが一体成形されることにより、シャフト本体23e−1と一体になる。負荷側端部70bの外径d5は、軸受嵌合部70aの外径d2より大きく形成され、負荷側端部70bと軸受嵌合部70aとの境界部には、段差部70dが設けられている。負荷側端部70bは、シャフト本体23e−1の端部、すなわち段差部23e−1bと当接し、かつ、シャフト本体小径部23e−1aを取り囲むように形成されている。シャフト本体小径部23e−1aの外周に施されたローレット23a−3が回り止めおよび抜け止めとして機能するため、簡便な構造でシャフト本体23e−1と絶縁軸部70とを一体的に形成することができ、信頼性および品質が向上する。
軸受嵌合部70aの外径d2は、シャフト本体23e−1の外径d1と概略同一、かつ、負荷側端部70bの外径d5より小さくなるように形成される。軸受嵌合部70aの外周面70fと負荷側端部70bの外周面は、段差部70dを介して連なり略円筒状に形成されている。この段差部70dは、樹脂部24に埋設され、絶縁軸部70の抜け止めとして機能する。
軸受嵌合部70aには、反負荷側転がり軸受21bが圧入されて保持されるため、樹脂部24の中央筒部24gの絶縁軸部70側(反負荷側)端面から軸受嵌合部70aの反負荷側端面70gまでの距離Lは、反負荷側転がり軸受21bの軸方向の長さよりも大きく形成されている。
絶縁軸部70の外周には、例えばシャフト本体小径部23e−1aの反負荷側端面23e−1cから反負荷側端面70gまでの間において所定の幅tで軸方向に伸び、かつ、絶縁軸部70の外周面70fの延長線上から径方向に所定の高さhまで伸びて樹脂部24に埋設される樹脂注入口が設けられる。この樹脂注入口は、成形後に切断され、シャフト本体23e−1の軸中心から樹脂部24に向けて突状のゲート切断部70cとして外周面70fに残るものである。そして、樹脂部24の反負荷側に露出する絶縁軸部70の外周面70fには、反負荷側転がり軸受21bが挿入される。
図6に示される回転子20と比較すると、図15に示される回転子20aは、シャフト本体23eの切削量、あるいは、切削工程を極力少なくすることが可能であり、このことによりコスト低減が図れる。すなわち、図9に示されるシャフト本体23eの反負荷側端面23bには、凹部23hが形成されているため、この端部を切削する必要があるのに対して、図15に示されるシャフト本体23e−1は、その反負荷側端部にシャフト本体小径部23e−1aが形成されるため、シャフト本体23e−1の外周部の一部を切削するだけでよいからである。
次に、変形例2の回転子20bを説明する。図19は、変形例2の回転子20bの側面断面図であり、図19(a)には回転子20bの全体が示され、図19(b)には、回転子20bの反負荷側端部が拡大して示されている。図20は、図19に示されるシャフト23−2の側面断面図である。
図6に示される回転子20と比較すると、シャフト23−2(絶縁軸部)の構成が異なる。図6に示される回転子20は、絶縁軸部60が、シャフト本体(負荷側軸部)23eの凹部23hに一体成形で形成されている。これに対して、図19に示される回転子20bでは、シャフト本体(負荷側軸部)23e−2の反負荷側端部に、絶縁軸部80の負荷側端部80bに設けられた凹部80hが一体成形されている。
変形例1の回転子20aと比較すると、図19(b)に示されるシャフト本体23e−2の負荷側端部23e−2aの外径d4が、図15(b)に示されるシャフト本体23e−1のシャフト本体小径部23e−1aの外径d4より大きく形成されている点が相違する。そして、負荷側端部23e−2aに絶縁軸部80が一体成形で形成されている。負荷側端部23e−2aと絶縁軸部80の凹部80hが一体になる点は、変形例1の回転子20aと同様である。
シャフト23−2は、シャフト本体23e−2と、反負荷側端部23e−2aに一体成形して形成される絶縁軸部80とを備える。シャフト本体23e−2の外周には、シャフト23と樹脂部24との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−1が施されている。反負荷側端部23e−2aの外周には、シャフト本体23e−2と絶縁軸部80との回り止めおよび抜け止めとして機能するローレット23a−4が施されている。
図19(b)に示されるように、絶縁軸部80の負荷側端部80bには、この負荷側端部80bから絶縁軸部80の反負荷側端面80gに向かって突となる凹部80hが設けられている。図20には、反負荷側端部23e−2aに絶縁軸部80が取り付けられた状態が示され、絶縁軸部80は、反負荷側端部23e−2aに一体成形で形成される。
絶縁軸部80は、絶縁性を有する樹脂材料で、全体形状が略円柱状を成し、シャフト本体23e−2の反負荷側端部23e−2aに負荷側端部80bの凹部80hが一体成形されることにより、シャフト本体23e−2と一体になる。負荷側端部80bの外径d4は、シャフト本体23e−2の外径d1と略同一、かつ、負荷側端部80bの外径d5より小さく形成される。
絶縁軸部80の負荷側端部80bの外径d5は、軸受嵌合部80aの外径d2より大きく形成され、負荷側端部80bと軸受嵌合部80aとの境界部には、段差部80dが設けられている。軸受嵌合部80aの外周面80fと負荷側端部80bの外周面は、段差80dを介して連なり略円筒状に形成されている。この段差80dは、絶縁軸部80が樹脂部24によってシャフト本体23e−2と一体化された後、樹脂部24に埋設されて絶縁軸部80の抜け止めとして機能する。
軸受嵌合部80aには、反負荷側転がり軸受21bが圧入されて保持されるため、樹脂部24の中央筒部24gの絶縁軸部80側(反負荷側)端面から軸受嵌合部80aの反負荷側端面80gまでの距離Lは、反負荷側転がり軸受21bの軸方向の長さよりも大きく形成されている。
絶縁軸部80の外周には、シャフト本体部23e−2の反負荷側端面23e−2bから反負荷側端面80gまでの間において所定の幅t軸方向に延び、かつ、絶縁軸部80の外周面80fの延長線上から径方向に所定の高さhまで伸びて樹脂部24に埋設される樹脂注入口が設けられる。この樹脂注入口は、成形後に切断され、シャフト本体23e−2の軸中心から樹脂部24に向けて突状のゲート切断部80cとして外周面80fに残るものである。そして、樹脂部24の反負荷側に露出する絶縁軸部80の外周面80fには、反負荷側転がり軸受21bが挿入される。
回転子20と比較すると、図19(a)に示される回転子20bは、シャフト本体23eの切削が不要であるため、コスト低減が図れる。また、絶縁軸部80に設けられた凹部80hがシャフト本体23e−2の外周に一体成形されるため、軸受嵌合部80aとシャフト本体23e−2との同軸度の確保がより容易なことから、品質の向上が図れる。
次に、変形例3の回転子20cを説明する。図21は、変形例3の回転子20cの側面断面図であり、図21(a)には回転子20cの全体が示され、図21(b)には、回転子20cの反負荷側端部が拡大して示されている。図22は、図21に示されるシャフト23−3の側面断面図である。
図6に示される回転子20と比較すると、シャフト23−3(絶縁軸部)の構成が異なる。図6に示される回転子20は、絶縁軸部60が、シャフト本体23eの凹部23hに一体成形で形成されている。これに対して図21に示される回転子20cでは、図15に示されるシャフト本体23e−1が用いられ、このシャフト本体23e−1のシャフト本体小径部23e−1aに、複数のリブ90eを備えた絶縁軸部90の凹部90bが一体成形されている。
絶縁軸部90の外周には、複数のリブ90eが形成されている。リブ90eは、絶縁軸部90の負荷側端面90hから所定の幅tまで軸方向に伸び、かつ、軸受嵌合部90aの外周面90fの延長線上から径方向に所定の高さhまで伸びる形状であり、樹脂部24に埋設される。リブ90eの一つは樹脂注入口になっていて、ゲート切断面90cが形成される。樹脂部24の反負荷側に露出する絶縁軸部90の外周面90fには、反負荷側転がり軸受21bが挿入される。所定の幅tは、例えば、凹部90bの軸方向長さL1よりも長く形成されている。すなわち、絶縁軸部90の負荷側端面90hから段差部90dまでの長さ(所定の幅tに相当)は、シャフト本体部23e−1の段差部23e−1bからシャフト本体部23e−1の反負荷側端面23e−1cまでの長さ(軸方向長さL1に相当)よりも大きくなるように形成されている。
絶縁軸部90の負荷側端面90hには、この負荷側端面90hから絶縁軸部90の反負荷側端面90gに向かって突となる凹部90bが設けられている。図22には、シャフト本体小径部23e−1aに絶縁軸部90が取り付けられた状態が示され、絶縁軸部90は、シャフト本体23e−1とシャフト本体小径部23e−1aとの段差部23e−1bに、絶縁軸部90の負荷側端面90hが接するように設けられている。
絶縁軸部90は、絶縁性を有する樹脂材料で、全体形状が略円柱状を成し、シャフト本体小径部23e−1aに負荷側端面90hの凹部90bと一体成形されることにより、シャフト本体23e−1と一体になる。リブ90eの外径d5は、軸受嵌合部90aの外径d2より大きく形成され、凹部90bと軸受嵌合部90aとの境界部には、段差部90dが設けられている。凹部90bは、シャフト本体23e−1の端部、すなわち段差部23e−1bと当接し、かつ、シャフト本体小径部23e−1aを取り囲むように形成されている。シャフト本体小径部23e−1aの外周に施されたローレット23a−3が回り止めおよび抜け止めとして機能するため、簡便な構造でシャフト本体23e−1と絶縁軸部90とを一体的に形成することができ、信頼性および品質が向上する。
軸受嵌合部90aの外径d2は、シャフト本体23e−1の外径d1と概略同一、かつ、リブ90eの外径d5より小さくなるように形成される。軸受嵌合部90aの外周面90fと凹部90bの外周面は、段差部90dを介して連なり略円筒状に形成されている。この段差部90dは、樹脂部24に埋設され、絶縁軸部90の抜け止めとして機能する。
軸受嵌合部90aには、反負荷側転がり軸受21bが圧入されて保持されるため、樹脂部24の中央筒部24gの絶縁軸部90側(反負荷側)端面から軸受嵌合部90aの反負荷側端面90gまでの距離Lは、反負荷側転がり軸受21bの軸方向の長さよりも大きく形成されている。
図21に示される回転子20cは、各リブ90eが径方向に伸び樹脂部24の中央筒部24gに内包されるため、絶縁軸部90のみで強度が確保される。従って、樹脂部24の成形条件のばらつきなどの外部要因を除くことができ、品質が安定し、品質の向上が図れる。
さらに、樹脂部24の金型にリブ90eを嵌め合わせることで、樹脂部24を成形する金型のシャフト受け部(図示せず)と樹脂部24との同軸を確保しておくことで、軸受嵌合部90aとシャフト本体23e−1との同軸が確保されるため、品質の向上が図れる。
また、各リブ90eは、樹脂部24に内包されるため、絶縁軸部90の回り止めおよび抜け止めとしても機能するため、品質が安定し、品質の向上が図れる。
このように、回転子20cは、シャフト本体23eの反負荷側端部小径状に形成されているため、シャフト本体23e−1の切削量、あるいは、切削工程を極力少なくすることが可能であり、このことによりコスト低減を図ることが可能である。さらに、回転子20cには絶縁軸部90の凹部90bに複数のリブ90eが形成されているため、絶縁軸部90のみで強度が確保され、品質が安定し、品質の向上を図ることが可能である。
次に、変形例4の回転子20dを説明する。図23は、変形例4の回転子20dの側面断面図である。回転子20dは、絶縁軸部60の反負荷側端部にセンタ穴60jを備える。それ以外は図6に示される回転子20と同様の構成である。金型(上型)には、センタ穴60jの中心との同軸度が合わされた突起が設けられ、シャフト23−4、回転子の樹脂マグネット22、および位置検出用樹脂マグネット25を樹脂部24で一体化(成形)する際に金型が閉じられたとき、金型の突起がシャフト23−4のセンタ穴60jに嵌まり込むことにより、回転子の樹脂マグネット22とシャフト23−4との同軸度が向上する。なお、センタ穴60jは、シャフト本体23eの負荷側端部にも形成してよい。
なお、図1には、モールド固定子10側が負荷側となり、ブラケット30側が反負荷側となるように構成された電動機100が示されているが、電動機100は、負荷側と反負荷側とが逆となるように構成して同様の効果を得ることができる。また、図6、図15、図19、図21、図23に示される回転子20は、永久磁石に熱可塑性樹脂に磁性材を混合して成形された回転子の樹脂マグネット22を使用したが、その他の永久磁石(希土類磁石(ネオジム、サマリウム鉄)、フェライト焼結等)を用いてもよい。また、位置検出用樹脂マグネット25も同様に、その他の永久磁石(希土類磁石(ネオジム、サマリウム鉄)、フェライト焼結等)を用いてもよい。既に述べたように、インバータを用いて電動機の運転を行なう場合、パワー回路内のトランジスタのスイッチングに伴って発生する電動機の騒音の低減を図るため、インバータのキャリア周波数が高い値に設定される。キャリア周波数を高く設定するに伴って、電動機のシャフトへの高周波誘導により発生する軸電圧が増大し、シャフトを支持している転がり軸受の内輪と外輪との間に存在する電位差が大きくなるので、転がり軸受に電流が流れ易くなる。この転がり軸受に流れる電流は、内輪、外輪両軌道並びに転動体(内外輪の間を転がる玉やころ)の転動面に電食と呼ばれる腐食を発生させて、転がり軸受の耐久性を悪化させる。
本実施の形態の回転子20では、絶縁軸部60により、負荷側転がり軸受21aまたは反負荷側転がり軸受21bとシャフト23との間が絶縁され、軸電流が抑制される。従って本実施の形態の回転子20は、インバータを用いて電動機100の運転を行う場合発生する軸電流の低減に特に有効である。
図24は、電動機100を駆動する駆動回路1の構成図である。図24に示されるように、電動機100の外部に設けられた商用交流電源2から交流の電力が駆動回路1に供給される。商用交流電源2から供給される交流電圧は、整流回路3で直流電圧に変換される。整流回路3で変換された直流電圧は、インバータ主回路4で可変周波数の交流電圧に変換されて電動機100に印加される。電動機100は、インバータ主回路4から供給される可変周波数の交流電力により駆動される。なお、整流回路3には、商用交流電源2から印加される電圧を昇圧するチョッパー回路や整流した直流電圧を平滑にする平滑コンデンサなどが設けられている。
インバータ主回路4は、3相ブリッジのインバータ回路であり、インバータ主回路4のスイッチング部は、インバータ主素子となる6つのIGBT6a〜6f(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、単にトランジスタと定義する)と6つのフライホイルダイオード(FRD)としてシリコンカーバイド(SiC)を用いたSiC−SBD7a〜7f(ショットキーバリアダイオード、単にダイオードと定義する)を備えている。FRDであるSiC−SBD7a〜7fは、IGBT6a〜6fが電流をONからOFFする時に生じる逆起電力を抑制する逆電流防止手段である。
なお、本実施の形態では、IGBT6a〜6fとSiC−SBD7a〜7fが同一リードフレーム上に実装されエポキシ樹脂でモールドされてパッケージされたICモジュールが用いられているものとする。IGBT6a〜6fは、シリコンを用いたIGBT(Si-IGBT)に代えてSiC、GaNを用いたIGBTであってもよい。また、IGBTに代えて、SiもしくはSiC、GaNを用いたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの他のスイッチング素子を使用してもよい。
整流回路3とインバータ主回路4の間には、直列に接続された2つの分圧抵抗8a、8bが設けられており、この分圧抵抗8a、8bによる分圧回路によって高圧直流電圧が低圧化される。駆動回路1には、この低圧化された電気信号をサンプリングし保持する直流電圧検出部8が設けられている。
また、電動機100には、本実施の形態にかかる回転子20(図6)およびモールド固定子10(図2)が用いられ、回転子20は、インバータ主回路4から供給される交流電力により回転子20を回転する。モールド固定子10には、回転子20の近傍に位置検出用樹脂マグネット25を検出するためのホールIC49bと、ホールIC49bからの電気信号を処理して回転子20の位置情報に変換する回転子位置検出部110とが設けられている。
回転子位置検出部110で検出される回転子20の位置情報は、出力電圧演算部120に出力される。この出力電圧演算部120は、駆動回路1の外部から与えられる目標回転数Nの指令(回転子20の回転速度を指令する速度指令信号)若しくは装置の運転条件の情報と、回転子20の位置情報とに基づいて、電動機100に加えられるべき最適なインバータ主回路4の出力電圧を演算する。出力電圧演算部120は、この出力電圧をPWM(Pulse Width Modulation)信号生成部130に出力する。PWM信号生成部130は、出力電圧演算部120から与えられた出力電圧となるようなPWM信号を、インバータ主回路4のそれぞれのIGBT6a〜6fを駆動する主素子駆動回路4aに出力し、インバータ主回路4のIGBT6a〜6fはそれぞれ主素子駆動回路4aによってスイッチングされる。なお、本実施の形態ではインバータ主回路4を3相ブリッジとしているが単相など他のインバータ回路でもよい。
ここでワイドバンドギャップ半導体について説明する。ワイドバンドギャップ半導体はSiよりもバンドギャップが大きい半導体の総称であって、SiC−SBD7a〜7fに使用しているSiCはワイドバンドギャップ半導体の1つであり、その他には窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドなどがある。さらにワイドバンドギャップ半導体、特にSiCはSiに比べて耐熱温度や絶縁破壊強度や熱伝導率が大きい。なお、本実施の形態1ではSiCをインバータ回路のFRDに用いる構成としているが、SiCに代えてその他のワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。
図25は回転子20の製造工程を示す図である。図25により、回転子20の製造工程について説明する。
(1)位置検出用樹脂マグネット25および回転子の樹脂マグネット22の成形、脱磁。シャフト本体23eの加工を行う。シャフト本体23eには、樹脂部24を成形する部分と反負荷側端部の凹部23hにローレット(23a−1〜23a−4)が施される(ステップ1)。
(2)シャフト本体23eを金型にセットし、BMC樹脂で絶縁軸部60を成形しシャフト23とする(ステップ2)。
(3)シャフト23の絶縁軸部外径をシャフト本体23e外径と概略同一に調整する(ステップ3)。
(4)位置検出用樹脂マグネット25を、段差部25bを有する端部を下にして下型にセットし、下型に設けられた内径押え部に位置検出用樹脂マグネット25の内径を保持させる(ステップ4)。
(5)回転子の樹脂マグネット22の位置決め用突起22cを下型に設けられた位置決め用突起挿入部に嵌め合わせて下型にセットする(ステップ5)。
(6)シャフト23を下型にセットし、回転子の樹脂マグネット22の切欠き22aを、上型の切欠き押さえ部で押し当てるように型締めする(ステップ6)。
(7)樹脂(樹脂部24)成形する(ステップ7)。回転子の樹脂マグネット22、位置検出用樹脂マグネット25、およびシャフト23を樹脂部24により一体に成形する際に、シャフト23の絶縁軸部60が反負荷側転がり軸受21bを圧入、保持できるように一体成形を行う。
(8)位置検出用樹脂マグネット25および回転子の樹脂マグネット22の着磁を行う(ステップ8)。
(9)シャフト23に、負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bを組付ける(ステップ9)。
上述の製造工程によれば、回転子の樹脂マグネット22、絶縁軸部60が一体成形されたシャフト23、および位置検出用樹脂マグネット25を樹脂(樹脂部24)にて一体にする際、全ての部品を金型にセットして樹脂成形することから、作業工程の低減により回転子20のコストの低減が図られる。
また、シャフト23の反負荷側端部の凹部23hにローレット23a−2を施し絶縁軸部60を一体成形しシャフト23としたので、絶縁スリーブの軸方向および周方向の移動を抑制することができる。
また、シャフト23としてから絶縁軸部60の外径を調整するので、例えば機械加工等をしても絶縁軸部60がシャフト23から空回りすることがなく、絶縁軸部成形後のシャフト23の外径を調整することができる。絶縁軸部成形後に外径を調整することで、寸法精度、ばらつきが小さくなり、品質が向上する。さらに、絶縁軸部成形金型の寸法管理が容易で、金型製作費を低減できる。
また、回転子の樹脂マグネット22の台座22bにより、位置検出用樹脂マグネット25を回転子の樹脂マグネット22の端面から離すことができ、位置検出用樹脂マグネット25の肉厚を最小、かつ、任意の位置に配置することが可能となり、回転子の樹脂マグネット22より安価な熱可塑性樹脂を充填することで、コストの低減が可能となる。
また、位置検出用樹脂マグネット25は厚み方向に対称であるため、向きを合わせることなく金型にセットすることが可能である。
また、下型の位置検出用樹脂マグネット25をセットする際、外径が通過する部分を開口部が広くなるテーパにしているため(樹脂部24のテーパ部24b)、下型に引っ掛かることなくセットが可能なため、作業工程が簡素化により生産性の向上に伴いコストの低減が可能となっている。
また、位置検出用樹脂マグネット25は下型にセットされた時、下型に備える内径押え部に内径を保持されることにより、シャフト23および回転子の樹脂マグネット22との同軸度の精度が確保される。
また、上型に備える切欠き押さえ部が、回転子の樹脂マグネット22の内径に備える切欠き22aを押し当てることにより、シャフト23と回転子の樹脂マグネット22との同軸度の精度が確保される。
図26は、空気調和機300の構成図である。空気調和機300は、室内機310と、室内機310と接続される室外機320とを備える。室内機310には室内機用送風機(図示せず)が搭載され、室外機320には室外機用送風機330が搭載されている。そして、室外機用送風機330および室内機用送風機には、その駆動源として本実施の形態の電動機100が使用されている。空気調和機300の主用部品である室外機用送風機330および室内機用送風機に電動機100を用いることにより、空気調和機300の耐久性を向上させることが可能である。
なお、本実施の形態にかかる電動機100は、空気調和機300以外の電気機器(例えば換気扇、家電機器、工作機など)に搭載して利用することができる。
以上に説明したように、本実施の形態にかかる電動機の回転子20は、回転子のマグネット(樹脂マグネット22)およびシャフト23が樹脂部24により一体化され、シャフト23に転がり軸受を配置する電動機100の回転子20であって、転がり軸受は、負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bで構成され、シャフト23は、負荷側転がり軸受21aに支持される負荷側軸部(シャフト本体23e)と、前記負荷側軸部の反負荷側端部に一体成形で形成されると共に反負荷側転がり軸受21bに支持される絶縁性の絶縁軸部(60、70、80、90)と、から成り、前記負荷側軸部の端面(反負荷側端部23bなど)は、樹脂部24の反負荷側軸方向端面(軸受当接面24d)よりも負荷側転がり軸受21a側に位置するようにしたので、絶縁軸部(60など)によって反負荷側転がり軸受21bとシャフト本体23eとが絶縁され、軸電流が抑制される。従って、負荷側転がり軸受21aおよび反負荷側転がり軸受21bの電食の発生が抑制される。また、絶縁軸部(60など)がシャフト本体23eに一体成形されているため、シャフト本体23eと絶縁軸部60との同軸度が向上する。さらに、絶縁軸部(60など)の軸方向および周方向の移動が抑制される。その結果、電動機100の品質および性能の向上を図ることが可能である。
また本実施の形態にかかる絶縁軸部(60など)は、反負荷側転がり軸受21bに支持される軸受嵌合部60aと、軸受嵌合部60aから負荷側軸部(シャフト本体23e)側に突出し、かつ、負荷側軸部の外径d1より小さい外径に形成された突出部(小径部60b)と、を有し、負荷側軸部の反負荷側端部には、前記突出部が嵌合する凹部23hが形成され、この凹部23hには、前記突出部が一体成形されているので、シャフト本体23eと絶縁軸部60との同軸度が向上すると共に、凹部23hへの樹脂の充填が容易化される。
また本実施の形態にかかる負荷側軸部(シャフト本体23e−1)の反負荷側端部には、負荷側軸部側から絶縁軸部(70、90)側に突出し、かつ、負荷側軸部の外径d1より小さい外径d4に形成された突出部(シャフト本体小径部23e−1a)が形成され、絶縁軸部(70、90)は、反負荷側転がり軸受21bに支持される軸受嵌合部(70a、90a)と、前記突出部が嵌合する凹部(70h、90b)が形成されたシャフト結合部(負荷側端部70b、ゲート切断面90c)と、を有し、前記凹部には、前記突出部が一体成形されているので、シャフト本体23e−1の切削量、あるいは、切削工程を少なくすることができ、コスト低減を図ることが可能である。
また本実施の形態にかかる絶縁軸部80は、反負荷側転がり軸受21bに支持される軸受嵌合部80aと、負荷側軸部(シャフト本体23e−2)の反負荷側端部23e−2aが嵌合する凹部80hが形成されたシャフト結合部(負荷側端部80b)と、を有し、凹部80hには、反負荷側端部23e−2aが一体成形されているので、シャフト本体23e−2の切削が不要であり、コスト低減を図ることが可能である。
また本実施の形態にかかる絶縁軸部(60など)の材料には、シャフト23と略同じ線膨張係数の樹脂材料が用いられているので、軸受内輪と絶縁軸部(60など)との間におけるクリープの発生が抑制され、電動機100の品質の向上を図ることができる。
また本実施の形態にかかる絶縁軸部(60など)の材料には、熱硬化性樹脂のBMC(バルクモールディングコンパウンド)樹脂が用いられているので、軸受内輪と絶縁軸部(60など)との間におけるクリープの発生が抑制され、電動機100の品質の向上を図ることができる。
また本実施の形態にかかる負荷側軸部(シャフト本体23e)には、絶縁軸部(60など)が配置される部分にローレット(23a−1〜23a−4)が施されているので、このローレットが絶縁軸部の回り止めになり、機械加工等をしても絶縁軸部がシャフト23から空回りすることがなく、絶縁軸部成形後に外径d2を調整可能であり、寸法精度、ばらつきが小さくなり、品質が向上する。さらに、絶縁軸部成形金型の寸法管理が容易で、金型製作費を低減できる。
また本実施の形態にかかる電動機100は、回転子20の磁極を位置検出素子(ホールIC49b)により検出する位置検出回路と、回転子20の回転速度を指令する速度指令信号と前記位置検出回路からの位置検出信号とに基づいて、インバータ駆動するためのPWM信号を生成する波形生成回路(PWM信号生成部130)と、前記波形生成回路の出力により駆動信号を生成するプリドライバ回路(主素子駆動回路4a)と、トランジスタとダイオードとを並列接続し、これらを直列接続したアームを有するパワー回路(インバータ主回路4)と、から構成されるインバータ方式の駆動回路1を備えるようにしたので、性能および品質を低下させることなく軸受の電食を抑制することができる。
また本実施の形態にかかる電動機の回転子20は、シャフト本体部23eの外周に形成される樹脂部24の中央筒部24gと軸受当接面24dとの間に、段差部24eを設けることにより、シャフト23、回転子の樹脂マグネット22、および位置検出用樹脂マグネット25を樹脂で一体成形する際に、樹脂部24の中央筒部24gの軸受当接面24dをイレコで形成する場合、段差部24eまで前記イレコで形成する。そのため、金型の合わせ面は中央筒部24gの反負荷側端面24hになるので、金型の合わせ面にバリが発生しても反負荷側転がり軸受21bは金型の合わせ面となる反負荷側端面24hに対して段差部24eの分離れているので、バリは反負荷側転がり軸受21bに当接しない。そのため、反負荷側転がり軸受21bに悪影響を及ぼす虞が少ない。
また、回転子20が、熱衝撃を受けると樹脂部24の中央筒部24gが割れる場合もあるが、中央筒部24gに段差部24eを設け、段差部24e間の中央筒部24gの径方向の厚さを大きくして対処することができる。
また、絶縁軸部60の樹脂注入口が樹脂部24に埋設される部分に設けられているので、樹脂注入口が絶縁軸部60の外周にあり、ゲート切断部60cが凸(突出部)として残る場合の懸念が払拭される。
また、絶縁軸部60の樹脂部24に埋設される複数の突起が設けられているので、絶縁軸部60の軸方向および周方向の移動をさらに抑制することができる。
なお、電動機をインバータ駆動する場合、電動機の騒音の低減を図る目的から、インバータのキャリア周波数を高く設定するようにしているが、キャリア周波数を高く設定するに伴って、電動機のシャフトへの高周波誘導により発生する軸電圧が増大し、シャフトを支持している転がり軸受の内輪と外輪との間に存在する電位差が大きくなるので、転がり軸受に流れる電流も増加する。従って、本実施の形態の回転子20は、電動機100を、インバータを用いて運転を行う場合の軸電流の低減に特に有効である。ここでは回転子20の位置検出用樹脂マグネット25の磁極を検出するためのセンサであるホールIC49bを用いて検出する方法を述べたが、位置検出用樹脂マグネット25、ホールIC49bを用いず、コイルを流れる電流を電流検出器(図示せず)にて検出し、波形生成回路にマイコンなどを用いて電動機を運転するセンサレス駆動方式においても同様の効果があることは言うまでもない。
なお、本発明の実施の形態にかかる電動機の回転子、電動機、空気調和機、および電動機の回転子の製造方法は、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略するなど、変更して構成することも可能であることは無論である。